説明

うつ伏寝用マット

【課題】
うつ伏寝の際に体の下に敷かれて体を安定させ胸,背中等を痛めるのを確実に防止する。
【解決手段】
敷かれた状態で長手方向が首から腰骨の上部までに対応する長さaとされ短手方向が肩幅に対応する長さbとされる平面形状に形成され、弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の低い上層部1と弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の高い下層部2とを備えている。上層部1は、長手方向の一端部が顎を係止させることができる程度の圧縮変形性を有し短手方向の中央部に両側部から傾斜面12aをもって凹んだ凹部12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ伏寝の際に体の下に敷くうつ伏寝用マッに係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、網膜剥離の治療にうつ伏寝が有効であるとの研究が発表され、この療法が広範に実施されるようになってきている。この療法では、1週間から10日間程度の長期のうつ伏寝の継続が要求される。このため、うつ伏寝の際に、体の下にマットを敷いて胸,背中等を痛めるのを防止することが行われている。
【0003】
従来、うつ伏寝の際に体の下に敷くマットとしては、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1には、頭の下に敷かれる頭部マットと胸の下に敷かれる胸部マットとを備え、胸部マットの厚さを下半身方向へ向けて順次薄くなるようにしたうつ伏寝用マットが記載されている。
【0004】
特許文献1に係るうつ伏寝用マットは、呼吸によって相対的に大きく変動する胸の上半身側を胸部マットの厚さの厚い部分で支え、呼吸によって相対的に小さく変動する胸の下半身側を胸部マットの厚さの薄い部分で支えることで、胸,背中等を痛めるのを有効に防止しようとするものである。
【特許文献1】実開平4−80521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るうつ伏寝用マットでは、胸部マットの厚さを異ならせて長手方向(上下半身方向)の胸の支えに工夫が凝らされているものの、胸以外の部位と体の短手方向(左右半身方向)との支えに考慮がなされていないため、体が不安定になりやすく胸,背中等を痛めるのを確実に防止することができないという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、うつ伏寝の際に体の下に敷かれて体を安定させ胸,背中等を痛めるのを確実に防止することのできるうつ伏寝用マットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するため、本発明に係るうつ伏寝用マットは、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0008】
即ち、請求項1では、敷かれた状態で長手方向が首から腰骨の上部までに対応する長さとされ短手方向が肩幅に対応する長さとされる平面形状に形成され、弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の低い上層部と弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の高い下層部とを備え、上層部は長手方向の一端部が顎を係止させることができる程度の圧縮変形性を有し短手方向の中央部に両側部から傾斜面をもって凹んだ凹部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この手段では、相対的に圧縮変形性が低く凹部のある上層部によって首から腰骨の上部までの全体がソフトなコルセットのように半固定的に支持され、上層部への顎の係止でさらに頭までも半固定的に支持され、上層部の支持状態の荷重が相対的に圧縮変形性が高い下層部で吸収され、体に掛かる圧力が上層部の全面に分散される。特に、重力で横方向の押広げられる胸の脇腹部分が上層部の凹部の傾斜面で支えられる。
【0010】
また、請求項2では、請求項1のうつ伏寝用マットにおいて、上層部の凹部は胸が対面する部分が他の部分よりも短手方向に広く下層部方向に深くなっていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、上層部の凹部が呼吸によって大きく変動する胸を支える部分において拡張されている。
【0012】
また、請求項3では、請求項1または2のうつ伏寝用マットにおいて、上層部の凹部は胸から上腹部までの湾曲形状に対応して湾曲されていることを特徴とする。
【0013】
この手段では、上層部の凹部の傾斜面が胸から上腹部までの湾曲形状にフィットするように湾曲される。
【0014】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかのうつ伏寝用マットにおいて、上層部は下層部と同等以上に圧縮変形性の高い最上層部で覆われていることを特徴とする。
【0015】
この手段では、最上層部の圧縮変形が上層部へのフィットを補助する。
【0016】
また、請求項4では、請求項1〜4のいずれかのうつ伏寝用マットにおいて、全体が防水性の下カバー材で覆われ、下カバー材が肌接触性の良好な材質の上カバー材で覆われていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、下カバー材,上カバー材で最上層部,上層部,下層部を一体化させて無用の変形を阻止するとともに、上カバー材で直接の感触を避けた下カバー材で汗の吸収によるカビの発生阻止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るうつ伏寝用マットは、相対的に圧縮変形性が低く凹部のある上層部によって首から腰骨の上部までの全体がソフトなコルセットのように半固定的に支持され、上層部への顎の係止でさらに頭までも半固定的に支持され、上層部の支持状態の荷重が相対的に圧縮変形性が高い下層部で吸収され、体に掛かる圧力が上層部の全面に分散されるため、うつ伏寝の際に体の下に敷かれて体を安定させ胸,背中等を痛めるのを確実に防止することができる効果がある。また、重力で横方向の押広げられる胸の脇腹部分が上層部の凹部の傾斜面で支えられ、脆弱な肋骨の変形が軽減されるため、胸の脇腹部分の局所的な痛みの発生を防止することができる効果がある。
【0019】
さらに、請求項2として、上層部の凹部が呼吸によって大きく変動する胸を支える部分において拡張されているため、うつ伏寝の窮屈感を解消することができる効果がある。
【0020】
さらに、請求項3として、上層部の凹部の傾斜面が胸から上腹部までの湾曲形状にフィットするように湾曲されるため、上層部のソフトなコルセットのような半固定的な支持の機能が高められる効果がある。
【0021】
さらに、請求項4として、最上層部の圧縮変形が上層部へのフィットを補助するため、種々の体型の人でも使用することのできる汎用性が得られる効果がある。
【0022】
さらに、請求項5として、下カバー材,上カバー材で最上層部,上層部,下層部を一体化させて無用の変形を阻止するとともに、上カバー材で直接の感触を避けた下カバー材で汗の吸収によるカビの発生阻止するため、良好な使用感での長期の使用が可能になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図4は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第1例を示すものである。
【0025】
第1例では、網膜剥離の治療でうつ伏寝の際に体の下に敷くのに有効なものを示してある。
【0026】
第1例は、図1に示すように、長手方向の長さaが首から腰骨の上部までとされ、短手方向の長さbが肩幅とされ、敷かれた状態で平面形状が方形になるように形成されている。そして、図2に示すように、上層部1,下層部2,下カバー材3,上カバー材4の各部で構成されている。
【0027】
上層部1は、弾力復元性のある発泡性の合成樹脂材(例えば、スポンジ)等で下層部2よりも低い圧縮変形性に設定されて異形のブロック体に形成されている。上層部1の長手方向の一端部に顎を係止させることができる湾曲した係止部11が設けられ、短手方向の中央部に凹部12が設けられ両側部に凸部13が設けられている。凹部12は、凸部13から湾曲した傾斜面12aをもって底面12bに延びるように凹んだ形状に形成され、基本的に上半身側から下半身側に向けても下降傾斜しているが、胸が対面する部分Aが他の部分Bよりも短手方向に広く下層部2方向に深くなっている。即ち、凹部12は、胸から上腹部までの湾曲形状に対応して湾曲されていることになる。凸部13は、凹部12の形状から、胸から上腹部までの脇に達する隆起となっている。
【0028】
下層部2は、弾力復元性のある発泡性の合成樹脂材(例えば、スポンジ)等で上層部1よりも高い圧縮変形性に設定されて方形のブロック体に形成されている。下層部2は、上層部1の下側に位置される。
【0029】
下層部2については、上層部1の下側部分を加工して圧縮変形性を高めることもできるし、別個形成したものを上層部1の下面に接合させることもできる。
【0030】
下カバー材3は、防水性を有する合成樹脂シート等からなるもので、上層部1,下層部2の全体を覆っている。
【0031】
下カバー材3については、上層部1,下層部2が接着されない別体の場合に両者を一体化させる機能を奏させる。なお、抗菌剤,芳香剤等を混入させることもできる。
【0032】
上カバー材4は、吸湿性のある布地等の肌接触性の良好な材質からなるもので、下カバー材3の全体を覆っている。
【0033】
下カバー材3,上カバー材4については、チャック等を取付けて上層部1,下層部2を取出すことができるようにするのが好ましい。
【0034】
第1例によると、網膜剥離の治療でうつ伏寝の際に体の下に敷くと、相対的に圧縮変形性が低く凹部12のある上層部1によって、首から腰骨の上部までの全体がソフトなコルセットのように半固定的に支持されることになる。この支持は、上層部1の両側部に隆起した格好となる凸部13によって横ずれが阻止されて保持される。そして、上層部1へ係止部11への顎の係止でさらに頭までも半固定的に支持されることになる。さらに、首から腰骨の上部までの荷重が上層部1が少しの圧縮変形で吸収されるとともに、上層部1の支持状態の荷重が下層部2の大きな圧縮変形で吸収される。従って、網膜剥離の治療のような長期であっても、体に掛かる圧力が上層部1の全面に分散されるため、うつ伏寝の際に体の下に敷かれて体を安定させ胸,背中等を痛めるのを確実に防止することができる。なお、額に枕をあてがうとより頭を安定化させることができる。特に、重力で横方向の押広げられる胸の脇腹部分が上層部1の凹部12の傾斜面12aで支えられ、脆弱な肋骨の変形が軽減されるため、胸の脇腹部分の局所的な痛みの発生を防止することができる。
【0035】
また、上層部1の凹部12が呼吸によって大きく変動する胸に対面して支える部分Aにおいて拡張されているため、うつ伏寝の窮屈感を解消することができる。また、下カバー材3,上カバー材4で上層部1,下層部2を一体化させて無用の変形を阻止し、上カバー材4で直接の感触を避けた下カバー材3で汗の吸収によるカビの発生阻止するため、良好な使用感での長期の使用が可能になる。
【0036】
図5は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第2例を示すものである。
【0037】
第2例では、上層部1の凹部12の胸に対面する部分Aの傾斜面12aから底面12にかけての部分に女性の乳房に対応する補助凹部12cが設けられている。そして、補助凹部12cを埋めるためのパット5が備えられている。
【0038】
第2例によると、パット5を取外して使用することで、女性の乳房の窮屈感を解消することができる。また、パット5を取付けて使用することで、男性が胸付近に違和感を感じするのを避けることができる。従って、女性,男性の共用が可能で汎用性が高くなる。
【0039】
図6は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第3例を示すものである。
【0040】
第3例では、上層部1が下層部2と同等以上に圧縮変形性の高い最上層部6で覆われている。
【0041】
第2例によると、最上層部6の圧縮変形が上層部1へのフィットを補助することになる。従って、種々の体型の人でも使用することができ汎用性が高くなる。
【0042】
図7は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第4例を示すものである。
【0043】
第3例では、上層部1の凹部12の一部(底面12bの一部)を下層部2の代替する構造としてある。
【0044】
第3例によると、下層部2の荷重の吸収機能を一部で上層部1を介さずに直接的に作用させることができる。従って、感触が柔らかくなるため、女性,老人,子供等の使用に好適となる。
【0045】
図8は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の製造例を示すものである。
【0046】
この製造例では、下層部2に設けたU字形に近似した形状の収容溝21に上層部1を埋込むようにしている。
【0047】
この製造例によると、上層部1,下層部2を簡単に一体化させることができ、最上層部6を被せることで外観的に体裁の良い方形のブロック体とすることができるため、下カバー材3,上カバー材4を省略することもできる。なお、下層部2,最上層部6の圧縮変形によって、上層部1の凹部12は確実に形成される。
【0048】
図9は、本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の他の製造例を示すものである。
【0049】
この製造例では、下層部2に設けた収容溝21を上層部1の凹部12に相当する部分まで拡張した方形としてある。
【0050】
この製造例によると、図8の製造例よりも確実に上層部1の凹部12が形成される。
【0051】
以上、図示した各例の外に、持運用の取手やうつ伏寝の状態で手を掛ける溝等を追加することも可能である。
【0052】
さらに、下層部2を圧縮変形性の異なる2層以上とすることも可能である。
【0053】
さらに、上層部1の係止部11を顎から顔の頬までをも係止させる深い溝形とすることも可能であり、逆に上層部1の端部に特別な加工を施さずに端部自体を係止部11として機能させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るうつ伏寝用マットは、網膜剥離の治療に最も有効性を発揮するが、単なるうつ伏寝用としても使用が可能である。また、仰向寝の枕や横向寝の補助物等として多目的に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第1例の平面図である。
【図2】図1の中央縦断面図であり、(A)に敷いた状態が示され、(B)に使用状態が示されている。
【図3】図2のX−X線断面図であり、(A)に敷いた状態が示され、(B)に使用状態が示されている。
【図4】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第2例の断面図である。
【図5】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第3例の断面図である。
【図6】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の第4例の断面図である。
【図7】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の製造例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るうつ伏寝用マットを実施するための最良の形態の他の製造例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 上層部
12 凹部
12a 傾斜面
2 下層部
3 下カバー材
4 上カバー材
6 最上層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷かれた状態で長手方向が首から腰骨の上部までに対応する長さとされ短手方向が肩幅に対応する長さとされる平面形状に形成され、弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の低い上層部と弾力復元性を有し相対的に圧縮変形性の高い下層部とを備え、上層部は長手方向の一端部が顎を係止させることができる程度の圧縮変形性を有し短手方向の中央部に両側部から傾斜面をもって凹んだ凹部が設けられていることを特徴とするうつ伏寝用マット。
【請求項2】
請求項1のうつ伏寝用マットにおいて、上層部の凹部は胸が対面する部分が他の部分よりも短手方向に広く下層部方向に深くなっていることを特徴とするうつ伏寝用マット。
【請求項3】
請求項1または2のうつ伏寝用マットにおいて、上層部の凹部は胸から上腹部までの湾曲形状に対応して湾曲されていることを特徴とするうつ伏寝用マット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのうつ伏寝用マットにおいて、上層部は下層部と同等以上に圧縮変形性の高い最上層部で覆われていることを特徴とするうつ伏寝用マット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのうつ伏寝用マットにおいて、全体が防水性の下カバー材で覆われ、下カバー材が肌接触性の良好な材質の上カバー材で覆われていることを特徴とするうつ伏寝用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−148327(P2009−148327A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326677(P2007−326677)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(507415314)
【Fターム(参考)】