説明

おしめ交換等強臭気脱臭方法および装置

【課題】 寝たきり病人、病院入院患者などのおしめ交換の汚物臭は臭気成分が高濃度で処理が難しい。これら臭気処理及びおしめ交換時の周辺への臭気拡散を防止する。ホスピスなどでの入院患者のベット周辺の臭気処理を行う可動式臭気処理装置に関する。
【解決手段】 高濃度臭気成分が周囲へ拡散しないように軽くてやわらかい幌で囲い空気通路をもうけてバッテリーで稼動する循環用送風機で幌内部に空気を送り幌を膨らませると同時に循環させる臭気拡散防止工程と、空気通路に硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトを用いた多孔質フィルターと光触媒酸化チタンを用いた多孔質フィルターとこれを励起させるための紫外線ランプより構成された脱臭処理工程とを組み合わせたキャスター付の可搬式を特徴とした臭気処理で対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきり病人、病院入院患者などのおしめ交換の汚物臭は臭気成分が高濃度で処理が難しい、これら臭気処理及びホスピスなどでの入院患者のベット周辺の臭気処理を行う可動式臭気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の病院、ホスピスなどでの一部の病室が病室内の空気を清浄にするために、生物(微生物)脱臭処理方法とか、オゾンを用いた脱臭方法とか、臭気成分を吸着させる吸着剤として、活性炭、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどを用いた空気清浄化装置が用いられている例がある程度である。
近年、60歳以上の高齢者が人口の1/4を占める社会構造となり、看護師などのケアする人が少なくなり、これを解消するためフィリピンなどからの外国人の雇用を求める状況になっている。従って、人手のかからないおしめの使用が急増している。
特に、おしめ交換、入浴、患者の移動など看護人の労働負担の軽減が要求されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
おしめ交換時は重労働に加え、汚物臭は一瞬ではあるがその臭気成分は高濃度で処理が難しいのが現状である。汚物中の主に尿が元になる臭気成分としてはアンモニア臭と、糞便が元となる臭気成分としてはメチルメルカプタン臭、インドール臭、スカトール臭、メタン臭、硫化水素臭があり、しかもこれら汚物臭気は拡散が早く、臭気が部屋中に瞬時に広がって部屋に同居している方々へ多大の迷惑を掛けることになる。
従って、発生源である汚物の臭気成分の除去処理と周囲への拡散を防止すると言う課題を解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願人は長年光触媒用酸化チタンを用いた脱臭方法、脱臭装置の研究を行ってきて、前記課題に記載されている臭気成分であるアンモニア臭およびメチルメルカプタン臭、インドール臭、スカトール臭、メタン臭、硫化水素臭が処理されることはよく理解している。但し、高濃度のアンモニア成分が多いと光触媒用酸化チタンに吸着されて脱臭処理能力が低下することも経験している。
一般的に、良く知られているアンモニアが水によく溶ける性質を利用して高濃度臭気成分中のアンモニアを事前に処理してその他臭気成分を光触媒用酸化チタンで処理すると酸化チタンの寿命が大幅に伸びることを確認した。しかし、水等の液体への吸着処理では装置が大掛かりとなり、実用的でない。
そこで、気体のアンモニアを選択的に吸着するゼオライトを選び、ゼオライトのアンモニア吸着機能を維持させながら、更に吸着力をあげ、吸着容量を増やすために、ゼオライトの表面をアンモニアと結合しやすいリン酸や硫酸などの化合物で表面修飾を行いリン酸基や硫酸基化を行い、ゼオライトの細孔と硫酸基の双方の相互作用によりアンモニアの吸着が行われ、吸着力の向上と吸着容量の増加が行われる。こうした新たなアンモニア吸着剤をフィルターに担持することにより、直接、気体のアンモニアを吸着除去する安価な材料である。
具体的には、気体状のアンモニアを吸着処理するための材料であって、ゼオライトの孤立表面水酸基と硫酸を反応させ1水素硫酸基として表面修飾させた吸着機能を有する材料の製造工程において、天然ゼオライトの化合物に珪素とアルミニウムが含まれるクリノプチロライトを主成分とした天然ゼオライトまたはシャバサイトおよびモルデナイトを主成分とする天然ゼオライトを硫酸水溶液で表面修飾を行う際、硫酸濃度は0.05重量パーセントから35重量パーセントであり、好ましくは5重量パーセントから20重量パーセントであることと、表面修飾反応で処理する温度は160℃から350℃であり、好ましくは230℃から250℃であることを特徴とする硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトの製造方法である。
前記、天然ゼオライトとしてはアンモニア分子が入る大きさの細孔を有するもので、細孔は3〜7オングストロ−ムのもの、好ましくは3〜5オングストロ−ムであることを特徴とする硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトの製造方法である。
更に、これら硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライト材料をPVA(ポリビニールアルコール)等のバインダーを用いてフィルターに担持した気体状アンモニア吸着剤とすることである。
これら上記記載の製造方法は、硫酸基を付与したアンモニア吸着用の天然ゼオライトとその製造方法として「引用特許」に記載の出願番号で既に出願済みである。
【引用特許】
出願番号:特願2008−110702
出願日:平成20年3月26日
こうして作成された1水素硫酸基として表面修飾されたクリノプチロライトを主成分とした天然ゼオライトは吸着量が元のクリノプチロライトを主成分とした天然ゼオライトの3倍以上で吸着力は2倍持つものであり、モルデナイトを主成分とした天然ゼオライトの吸着量は元のクリノプチロライトを主成分とした天然ゼオライトの半分程度である。モルデナイトを主成分とした天然ゼオライトでも無処理での材料の倍の吸着量を示している。
更に、これら硫酸基を付与されたゼオライト材料を不織布に担持したフィルターはアンモニアの除去能が改善される。
これら硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトで予めアンモニアを前処理した高濃度臭気成分を更に光触媒用酸化チタンで処理すると安価で長時間処理が可能なことを実施例で示しながら説明する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、光触媒用酸化チタンを保護しながら高濃度臭気成分が長時間処理可能になり、ランニングコストの低減に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に高濃度臭気を発生するおしめ等を交換する脱臭方法の模式図を示したが、最初に循環送風機6を稼動して空気通路を確保した後、脱臭装置8および温度調節器7を稼動しして温度が一定(25℃±2℃)になった後、ベット3上におしめ等の交換を必要とする人1およびおしめ等を交換する人2に対して可動式脱臭ユニット4を移動させて、臭気成分が不透過性の軽くてやわらかい幌10で全体を囲う。おしめ等の交換作業が終了後、幌内の循環空気の臭いを感じなくなった時点で、温度調節器7、脱臭装置8、循環送風機6の順序で停止して幌を幌収納カゴ9に収納して一連の作業を終了する。
【実施例】
【0007】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を説明する。
【実施例1】
【0008】
図2に示す、脱臭装置8を構成する一段目のゼオライト層13には、硫酸基を付与した天然ゼオライトであって、細孔が3〜7オングストロームのものを硫酸水溶液で表面修飾を行う際の硫酸濃度は0.05重量パーセントから35重量パーセントであり、好ましくは5重量パーセントから20重量パーセントのものを用いた。次に、表面修飾反応で処理する温度は160℃から300℃であり、好ましくは230℃から250℃で製造されたものを用いる。
クリノプチロライトを主成分とした天然ゼオライト、粒度100μm〜200μmを比較試料とし「試料1」とする。次に、この粒度100μm〜200μmを100部に対し、100部の0.5重量パーセントの硫酸水溶液を加え、良くかき混ぜる。この状態で静置後、250℃の電気炉に入れ、水を蒸発させ、濃縮された硫酸と天然ゼオライト中に含まれる珪素あるいはアルミニウムの水酸基との縮合反応により天然ゼオライト表面に1水素硫酸基を修飾する。反応に要する時間は8時間程度である。この試料を不織布にPVAを用いて担持して「試料2」とする。次に、5重量パーセントの硫酸水溶液で処理して、250℃で8時間程度処理する。この試料を不織布にPVAを用いて担持して「試料3」とする。
これらの試料のアンモニア処理性を表1に示した。
【表1】


尚、上記表1の結果をグラフ化して、図3に示した。アンモニアの除去性能が非常に向上されていることが認められる。
【実施例2】
【0009】
前記、図1を用いて、おしめ等を交換する脱臭方法を説明したが、先ず、図4に脱臭装置8の空気通路入り口側の硫酸基を付与した天然ゼオライトをPVAで担持した不織布のゼオライト層13を外して撮影した写真で写真奥に循環用送風機6が見える写真を示した。図5は脱臭装置8の紫外線ランプ12の一部をはずして光触媒酸化チタン層14を組み付けた状態がみられる写真を示した。脱臭装置8は風路通路11の途中に設置され、ゼオライト層13→紫外線ランプ(4本)12→光触媒酸化チタン層14→紫外線ランプ12→光触媒酸化チタン層14の順で配列されている。脱臭装置8はステンレス製300W×350D×400Hmmで、自家製ゼオライト担持した不織布のゼオライト層13は厚み5mmで脱臭装置8の内枠にはめ込み、紫外線ランプ12はブラックライト蛍光ランプで型式FL8BLB、8W、 0.17Aを4本1列が2列で構成されている。光触媒酸化チタン層14は自家製光触媒セラミックスフィルターで、寸法:150×150×10tmmのものが4枚一組で2組で構成されている。
循環用送風機6はモーター部が日本電産シバウラ株式会社製で型式:SFN−100−4Uで、ファンはファンテック製のシロッコファンで型式:20−50R(φ200)が組み込まれている。
ファンの送風量は5m/minで空気抵抗を加味して空気通路での風量は4〜4.5m/minで循環している。
ベット3:1000W×2000D×800Hを囲うように幌10を被せ、幌の高さが約1mの高さになるように空気で膨らませ固定したのちアンモニアボンベよりアンモニアガスをガステック製検知管、型式:3L、測定範囲:1〜30ppmを用いて約5ppmになるまで注入して確認後、循環用送風機6及び脱臭装置8を稼動させて、幌内のアンモニア濃度を前記検知管で測定した。約20分後、検知管での測定結果は不検出となった。
【実施例3】
【0010】
前記、実施例2で用いた装置で、次にポリエチレン容器に保管した使用済み「おむつ」5個をベットの上におき、循環用送風機6及び脱臭装置8を稼動させて、幌10を被せ、10分間放置する。この5個を回収後、約3分後、検知管での測定結果は不検出となった。更に三点比較式臭気袋法での検査結果は良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用するおしめ等を交換する脱臭方法を説明する模式図
【図2】脱臭装置を構成する硫酸基を付与したゼオライト層、紫外線ランプ、光触媒酸化チタン層の構成図及び空気の流れ
【図3】各種ゼオライト試料の経過時間のアンモニアの処理性を示すグラフ
【図4】脱臭装置本体正面より視た写真
【図5】脱臭装置本体に光触媒酸化チタンフィルターをセットした写真
【符号の説明】
【0012】
1 おしめ等の交換を必要とする人
2 おしめ等の交換を支援する人
3 ベット
4 可動式脱臭ユニット
5 バッテリ−
6 循環用送風機
7 温度調節器
8 脱臭装置
9 幌収納かご
10 幌
11 風の流れ
12 紫外線ランプ
13 ゼオライト層
14 光触媒酸化チタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度臭気の処理工程において、
臭気発生源の臭気成分が周囲へ拡散しないように軽くてやわらかい幌で囲い空気通路をもうけてバッテリーで稼動する循環用送風機で幌内部に空気を送り幌を膨らませると同時に循環させる臭気拡散防止工程と、
空気通路に硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトを用いた多孔質フィルターと光触媒酸化チタンを用いた多孔質フィルターとこれを励起させるための紫外線ランプより構成された脱臭処理工程とを、
組み合わせたキャスター付可搬式であることを特徴とする高濃度臭気の処理方法。
【請求項2】
前記、天然ゼオライトの細孔が3〜7オングストロームであって、クリノプチロライトまたはシャバサイトおよびモルデナイトを主成分とする天然ゼオライトを硫酸水溶液で表面修飾を行う際の硫酸濃度が0.05重量パーセントから35重量パーセントであり、好ましくは5重量パーセントから20重量パーセントであることと、
表面修飾反応で処理する温度は160℃から300℃で行い、好ましくは230℃から250℃で行うことを特徴とする請求項1記載の高濃度臭気の処理方法。
【請求項3】
高濃度臭気の処理工程において、
臭気発生源の臭気成分が周囲へ拡散しないように軽くてやわらかい幌で囲い空気通路をもうけてバッテリーで稼動する循環用送風機で幌内部に空気を送り幌を膨らませると同時に循環させる臭気拡散防止工程と、
空気通路に硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライトを用いた多孔質フィルターと光触媒酸化チタンを用いた多孔質フィルターとこれを励起させるための紫外線ランプより構成された脱臭処理工程とを、
組み合わせたキャスター付可搬式であることを特徴とする高濃度臭気の処理装置。
【請求項4】
前記、天然ゼオライトの細孔が3〜7オングストロームであって、クリノプチロライトまたはシャバサイトおよびモルデナイトを主成分とする天然ゼオライトを硫酸水溶液で表面修飾を行う際の硫酸濃度が0.05重量パーセントから35重量パーセントであり、好ましくは5重量パーセントから20重量パーセントであることと、
表面修飾反応で処理する温度は160℃から300℃で行い、好ましくは230℃から250℃で行うことを特徴とする請求項3記載の高濃度臭気の処理装置。
【請求項5】
硫酸基を付与したアンモニア吸着用天然ゼオライト材料および光触媒用酸化チタン材料をPVA(ポリビニールアルコール)等のバインダーを用いて不織布等に担持させた多孔質フィルターを用いた請求項3,4記載の高濃度臭気の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−261866(P2009−261866A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137260(P2008−137260)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(390039619)株式会社ピュアレックス (19)
【Fターム(参考)】