説明

ごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋

【課題】 カラスを忌避させるに好適なごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂に唐辛子を混練りすることにより得られることを特徴とするごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物。
用いることができる熱可塑性樹脂としては、市販の種々の性状のものを使用することができ、好ましくは、安価で環境への負荷が小さいことを考慮し、ポリオレフィン系樹脂又は生分解性樹脂を採用することが望ましい。
また、本発明のごみ袋は、上記ごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋に関し、特に、カラスを忌避させるに好適なごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生ごみ等動物の好むものが入っているごみ袋等の袋は、ネズミ、ネコ、イヌ、カラス等が餌をあさりにきた場合に、袋を破り、内容物を散乱させるため、臭気が漂ったり、汚くなったりして不衛生になり、また、回収作業にも問題が生じるものである。特に最近では、カラスの被害が大きな問題になってきている。
【0003】
これらの問題を解決するため、化学合成や唐辛子から抽出したカプサイシンをごみ袋に噴霧、塗布する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、唐辛子をマイクロカプセル化して、ごみ袋に坦持させる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの技術でも、依然として動物がごみ袋をあさるのを抑制できないという課題がある。また、上記の技術では、忌避成分をごみ袋に坦持させる前に、カプサイシンの合成、抽出や唐辛子のマイクロカプセル化という工程を経る必要があり、高価になるという課題もある。
【特許文献1】特開2000−212014号公報
【特許文献2】特開2003−63602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、動物、特にカラスに対する忌避効果の高いごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討を行った結果、粉砕した唐辛子を熱可塑性樹脂中に混錬したごみ袋用樹脂組成物及びごみ袋が動物、特にカラスに対する忌避効果が高く、しかも、安価で環境負荷の低いごみ袋を提供できることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)に存する。
(1) 熱可塑性樹脂に唐辛子を混練りすることにより得られることを特徴とするごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物。
(2) 上記(1)記載のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするごみ袋。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、安価で、かつ動物、特に、カラスに対して忌避効果の高いごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物及びごみ袋が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と唐辛子とを含有してなり、必要に応じて、通常、樹脂製ごみ袋用に用いられるその他の添加成分(任意成分)を含有することができる。
【0010】
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、市販の種々の性状のものを使用することができるが、安価で環境への負荷が小さいことを考慮し、ポリオレフィン系樹脂又は生分解性樹脂を採用することが好ましい。
【0011】
用いることができるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー等が挙げられる。更に、ポリエチレンとしては、高圧法で製造される低密度ポリエチレン、チーグラーナッタ触媒を用いて製造される高密度ポリエチレン、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒を用い、エチレンとα−オレフィンを共重合して製造される直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0012】
また、用いることができる生分解性樹脂としては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の化学合成系樹脂、澱粉、キチン、キトサン等の天然物を変性した樹脂、ヒドロキシ酪酸/ヒドロキシ吉草酸共重合体等の微生物系樹脂が挙げられ、これらの樹脂を1種又は2種以上ブレンドしたものも用いることができる。
【0013】
本発明に用いる唐辛子の種類としては、特に制限されるものではなく、何れの種類の唐辛子であっても使用することができる。
すなわち、唐辛子は、その産地により、カプサイシン含有量の違いにより、カプサイシン含有量の多い辛口タイプである中国産の「天鷹」、その含有量の少ない甘口タイプである韓国又は中国産の「八房」、「益都」等、或いはこれらの亜種等が挙げられるが、これらの種類、その辛みの強さ、大きさ、色の違いは問わない。
また、用いる唐辛子は、乾燥後、カッターミキサー、グラインダー、ハンマーミル、ボールミルあるいはジェットミル等の微粉砕器で粉砕したものを使用するが、熱可塑性樹脂との混練性、混練後の表面外観等の点から、平均粒径としては、0.1〜70μmが好ましく、更に好ましくは、1μm〜50μmの範囲のものが望ましい。
【0014】
本発明において、用いる唐辛子の含有量としては、特に制限はなく、ごみ袋の用途に応じて適宜選択することができるが、本発明の樹脂組成物の合計100質量部に対し、唐辛子の乾燥後の質量として、1〜30質量部が好ましく、更に好ましくは、2部〜20質量部が望ましい。
この唐辛子の含有量が1質量部未満であると、カラスに対する忌避効果が低下することがあり、一方、30質量部を越えると、ごみ袋を成形する際の成形性が低下する懸念があり、好ましくない。
【0015】
更に、本発明の樹脂組成物には、所望により他の任意成分として、例えば、充填剤、着色剤、分散剤、香料、防腐剤、滑剤、剥離剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤、難燃剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で、適宜量含有することができる。
【0016】
本発明のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリオレフィン樹脂あるいは前記生分解性樹脂と唐辛子とその他の任意成分とを、適宜選択した公知の方法により混合、混練することにより製造することができ、例えば、溶融混練してペレット状コンパウンドとすることができる。
前記ペレット状コンパウンドとする方法としては、特に制限はなく、通常の樹脂組成物の混合、混錬に用いられる装置、設備を用いて容易に製造することができる。具体的には、前記熱可塑性樹脂と前記唐辛子とを予めタンブラー、又はヘンシェルミキサーなどの混合機で均一混合した後、該混合物を1軸又は二軸の押出機に供給して溶融混練する方法、または、前記熱可塑性樹脂を1軸又は、2軸押出機に供給して溶融混練した後、前記唐辛子をサイドフィーダーから供給する方法などにより、ペレット化した後、成形に供してもよく、また、直接成形してもよい。
【0017】
前記溶融混練する際の処理温度は、前記熱可塑性樹脂成分が軟化する温度より10〜80℃高い温度が好ましく、更に好ましくは、30〜60℃高い温度であることが望ましい。
前記処理温度が高温すぎると、樹脂の分解や異常反応を誘発することがある。また、前記溶融混練する際の処理時間は、30秒〜10分が好ましく、更に好ましくは、1〜5分が望ましい。
【0018】
本発明のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物は、上述の製造方法により容易に得ることができるものである。得られた樹脂組成物は、直接あるいはペレットを経由したインフレーション成形などの公知の成形方法によってごみ袋に成形することができる。
得られるごみ袋の形状、大きさ、厚さなどは、特に限定されるものではなく、ごみ袋の用途により任意の形状、大きさ、厚さが設定されるものであり、厚さとしては80〜200μmである。
本発明のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物は、唐辛子を練り込むことにより得られるものであるが、塗布、散布等と比べて、製造が容易であり、かつ、効果の持続性も長い点に特徴を有する。
また、本発明において、高温の練り込み操作により、唐辛子の忌嫌成分(カプサイシンと思われる)が分解することなく、かつ、カラスの忌避効果を発揮するに足る量の揮散が樹脂表面で生じていることは予想外であった。
【0019】
更に、本発明に用いる唐辛子は、唐辛子を含む辛しん料等の製造工程で発生する産業廃棄物である廃唐辛子を用いても、同様に十分カラス忌避効果を発揮する。この廃唐辛子としては、例えば、七味唐辛子の製造工程で発生する唐辛子の微粉末が挙げられ、また、カレー用ルーの製造工程で発生するチリペッパーの粉末や、明太子製造工程で発生する唐辛子エキスを脱塩して乾燥した粉末なども用いることができる。
更に、本発明では、このような動物忌避効果を利用して、本発明の唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物を成形して、農園芸用シート、農園芸用袋とすることもできる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0021】
(実施例1〜5及び比較例1)
〔ごみ袋の製造〕
以下の手順に従って、ごみ袋を作製した。
まず、中国産「天鷹」500gを100℃、5時間の条件で乾燥した。次いで、ジェットミル(増幸産業社製、セレンミラーMKCL)を用いて微粉化し、平均粒径40μmとした。
【0022】
次に、同方向2軸押出機NRII(ナカタニ機械社製、ダイ口径36mm)を用い、前記押出機の元のホッパーより予めブレンドしたポリオレフィン樹脂と、前記唐辛子微粉末の混合物とを定量フィーダーにて供給し混練り温度180℃にて処理時間2分で混練押出しして、唐辛子含有コンパウンドを得た。更に、これを80℃迄冷却後、ペレタイザーを用いて円柱状ペレット(直径2mm、長さ2〜4mm)とした。
【0023】
ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE 出光石油化学(株)製、640UF、軟化温度124℃)を使用した。また、唐辛子微粉末の含有量は、下記表1に示すように、樹脂組成物の合計100質量部に対し、0.0質量部、1.0質量部、2.0質量部、5.0質量部、10.0質量部、30.0質量部とした。
【0024】
各配合比における混合物をインフレーション成形機(東洋精機(株)製25mmスパイラルIND−25S)を用いて厚さ100μmの円柱状フィルムを作製し、ヒートシールによって縦200mm、横150mmの袋を作製した。
【0025】
得られた実施例1〜5及び比較例1の各ごみ袋について、下記各評価方法によりカラス忌避効果、袋成形性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0026】
(カラス忌避効果の評価方法)
得られた各ごみ袋に、100gの市販の唐揚げを入れ、ヒートシールにより密閉した。この餌の入った袋をカラスの集まるごみ集積場にひもで固定し5時間放置して、下記評価基準でカラス忌避効果を評価した。
評価基準:
○:破袋せず。
×:破袋した。
【0027】
(袋成形性の評価方法)
インフレーション成形の際の袋成形性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:良好
△:やや不良
×:不良
【0028】
【表1】

【0029】
上記表1の結果から明らかなように、比較例1の唐辛子を練り込まない樹脂よりなるごみ袋はカラス忌避効果がないことが判る。これに対して、本発明範囲となる実施例1〜5は、いずれも、カラス忌避効果を発揮すると共に、袋成形性も良好であった。
【0030】
(実施例6〜10及び比較例2)
熱可塑性樹脂をポリオレフィン樹脂から環境負荷が更に小さい生分解性樹脂に変更して混練温度120℃、処理時間2分とした以外は、上記実施例1等と同様の方法で混練押出及び袋成形を行って、上記評価方法によりカラス忌避効果、袋成形性の評価を行った。
用いた生分解性樹脂は、変性澱粉樹脂(日本コーンスターチ(株)製コーンポールCPR−F3A、軟化温度68℃)を使用した。
これらの評価結果を下記表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
上記表2の結果も、表1の結果と同様に、比較例2の唐辛子を練り込まない樹脂よりなるごみ袋はカラス忌避効果がなく、一方、本発明範囲となる実施例6〜10は、いずれも、カラス忌避効果を発揮すると共に、袋成形性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の樹脂組成物は、動物、特にカラスを忌避させるごみ袋に好適に利用できる。また、農園芸用シート及び農園芸用袋としても利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に唐辛子を混練りすることにより得られることを特徴とするごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のごみ袋用唐辛子含有熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするごみ袋。


【公開番号】特開2006−111656(P2006−111656A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297708(P2004−297708)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】