説明

さく孔装置用アダプタおよびさく孔装置

【課題】汎用ビットを使用可能とし、また、汎用ビットを用いた場合であっても、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能なさく孔装置用アダプタおよびさく孔装置を提供する。
【解決手段】このアダプタ10Aは、個別に着脱可能な複数の汎用ビット21,22から構成されるさく孔用ビット20を、さく岩機ユニット(さく孔装置)1のロッド6の先端に装着するためのものであり、複数の汎用ビット21,22のうち、第一のビット21を、軸心CLと同軸に配置し、複数の第二のビット22を、第一のビット21に沿って前記軸心CLの同心円CC上での周方向に等配するとともに、第一のビット21よりもその軸方向での基端側に配設するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル建設現場等において、主に発破工法や割岩工法を用いる際のさく孔用として好適なさく孔装置用アダプタおよびさく孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネル建設現場では、岩盤等の硬岩部でのトンネルの掘削工法として、発破工法や割岩工法が採用されることが多い。例えば発破工法は、トンネルの切羽の中心にさく孔装置で心抜き(心貫き)孔をさく孔し、さらに、その周囲に形成した爆薬装填孔内にダイナマイト等の爆薬を装填し、これを爆破させて掘削を行う。
この種の掘削工法で心抜き孔をさく孔する際には、通常、さく孔装置のロッド先端に対し、親ビット、子ビットなどの特殊ビットやアダプタ等を適宜換装して所望のさく孔が行われている(例えば特許文献1での図5参照)。
【特許文献1】特開平11−21846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような特殊ビットは汎用ビットと比較して高価であり、また、その入手が困難な場合がある。さらに、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて適切な特殊ビットに換装する手間も掛かる。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、汎用ビットを使用可能とし、また、汎用ビットを用いた場合であっても、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能なさく孔装置用アダプタおよびさく孔装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、個別に着脱可能な複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットが先端に装着されるロッドを備え、前記さく孔用ビットにさく孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能なさく孔装置に用いられ、前記さく孔用ビットを前記ロッドの先端に装着するためのアダプタであって、前記複数の汎用ビットのうち、第一のビットを、前記ロッドの軸心と同軸に配置し、複数の第二のビットを、前記第一のビットに沿って前記軸心の同心円上での周方向に等配するとともに、前記第一のビットよりもその軸方向での基端側に配設するようになっていることを特徴としている。
【0005】
第一の発明に係るさく孔装置用アダプタによれば、さく孔用ビットを、個別に着脱可能な複数の汎用ビットから構成可能になっているので、例えば大口径のさく孔に一般的に用いられる専用の親子ビットを用いなくとも、比較的安価な汎用ビットを複数用い、その複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットによって大口径のさく孔が可能である。したがって、経済性に優れている。
【0006】
そして、このさく孔用ビットを構成する複数の汎用ビットは、個別に着脱可能なので、例えばこれを構成する複数の汎用ビット個々の消耗や損傷の程度に応じて個別に交換が可能であり、また、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて、装着する汎用ビットの種類(例えば、ボタンビット、クロスビット、超硬チップの硬度等)を適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能である。
【0007】
特に、このさく孔装置用アダプタによれば、複数の汎用ビットを、ロッドの軸心と同軸に配置される第一のビットと、その第一のビットに沿ってその周囲に等配される複数の第二のビットとによって構成するようになっているので、中心に位置する第一のビットを適切な種類の他の汎用ビットに交換したり、あるいは、第二のビットを適切な種類の他の汎用ビットに交換したりすることによって、岩盤等の硬岩部の状況に合わせた好適なビット構成とする上で好適である。
【0008】
ここで、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタにおいて、前記第一および第二のビットは、いずれも当該アダプタを介して前記ロッドの先端に装着されるようになっていることは好ましい。このような構成であれば、さく孔用ビットを構成する第一および第二のビットが共にアダプタに装着されるので、例えばさく孔長を多くとりたい場合に好適である。
【0009】
なおまた、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタにおいて、前記第一のビットは、前記ロッドの先端に直接装着され、前記第二のビットは、当該アダプタを介して前記ロッドの先端に装着されるようになっていることは好ましい。このような構成であれば、第一のビットについてはロッドの先端に直接装着されるので、アダプタを含め、装置の構成を簡素にする上で好適である。
【0010】
また、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタにおいて、前記複数の第二のビットは、前記ロッドに対し、その軸方向では所定の範囲で相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着されるようになっていることは好ましい。このような構成であれば、当該アダプタの着脱が容易なので、アダプタの換装やそのメンテナンス作業を容易とする上で好適である。
【0011】
また、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタにおいて、前記複数の第二のビットそれぞれは、自転可能に装着されるようになっていることは好ましい。このような構成であれば、例えばTBM(トンネルボーリングマシン)やシールドマシンのカッタと同様に、第一のビットに沿ってその周囲に等配される第二のビットが個別に自転可能なので、さく孔性能を向上させる上で好適である。
【0012】
また、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタにおいて、装着可能な前記複数の第二のビットの等配数が4であり、その軸方向から見た形状が十文字形状になっていることは好ましい。このような構成であれば、当該アダプタの軸方向から見た形状が十文字形状になっているので、隣接する複数の第二のビット同士の間に軸方向に沿った隙間を設けることができる。そのため、この軸方向に沿った隙間から繰粉を効率よく排出させることができる。したがって、繰粉の排出性を向上させる構成とする上で好適である。
【0013】
また、本発明のうち第二の発明は、さく孔用ビットが先端に装着されるロッドと、前記さく孔用ビットを前記ロッドの先端に装着するためのアダプタとを備え、前記さく孔用ビットにさく孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能なさく孔装置であって、前記アダプタとして、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタを用いていることを特徴としている。
【0014】
第二の発明に係るさく孔装置によれば、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタを用いているので、さく孔用ビットを、個別に着脱可能な複数の汎用ビットから構成可能である。そのため、例えば大口径のさく孔に一般的に用いられる専用の親子ビットを用いなくとも、比較的安価な汎用ビットを複数用い、その複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットによって大口径のさく孔をすることができる。また、第一の発明に係るさく孔装置用アダプタを用いているので、さく孔用ビットを構成する複数の汎用ビットを個別に着脱することができる。そのため、例えばこれを構成する複数の汎用ビット個々の消耗や損傷の程度に応じて個別に交換が可能であり、また、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて、装着する汎用ビットの種類を適切な種類の汎用ビットに適宜交換することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明によれば、汎用ビットを使用可能とし、また、汎用ビットを用いた場合であっても、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能なさく孔装置用アダプタおよびさく孔装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は本発明に係るさく孔装置の第一の実施形態であるさく岩機ユニットの要部の説明図である。
図1に示すさく岩機ユニット1は、例えばドリルジャンボに装備されて、トンネル内の所定の空間位置に移動可能に構成されている。そして、このさく岩機ユニット1には、さく孔時に不図示のガイドシェル上をフィードされる、公知の油圧式のドリフタ2がガイドシェルの基端側に搭載されている。このドリフタ2の先端には、さく岩機の長手方向に沿って延びるロッド6が配設され、その基端側はドリフタ2に回転可能に保持されており、軸方向へのスライド移動および軸まわりに回転自在に支持されている。
【0017】
ここで、このロッド6は、基端側がドリフタに保持されるシャンクロッド3と、そのシャンクロッド3と同軸にその先端に装着されるスリーブ4とを有して構成されている。そして、このスリーブ4には、これと同軸にその先端に、ロッド6の軸心CLに沿って延びる横断面が六角形形状の角形軸部5bをもつロッド本体5が装着されている。さらに、このロッド本体5には、その先端にアダプタ10Aが取り付けられており、このアダプタ10Aに、さく孔用ビット20が装着されている。
【0018】
次に、上記さく孔用ビット20、およびこれをロッド6(ロッド本体5)の先端に装着するためのアダプタ10Aについてより詳しく説明する。
図1に示すように、このさく孔用ビット20は、複数の汎用ビット21,22から構成されており、これら複数の汎用ビット21,22が、アダプタ10Aに個別に着脱可能に装着されるようになっている。ここで、このさく孔用ビット20は、複数の汎用ビット21,22として、ロッド6の軸心CLと同軸に配置される第一のビット21と、それ以外の複数の第二のビット22とから構成されるが、特に、このアダプタ10Aは、これら第一および第二のビット21,22を、いずれも当該アダプタ10Aを介してロッド6(ロッド本体5)の先端に装着するようになっている。
【0019】
詳しくは、図1に示すように、このアダプタ10Aは、軸心CLと同軸に配置されるセンタアダプタ12と、そのセンタアダプタ12にその外側から嵌合するアウタアダプタ14と、そのアウタアダプタ14に形成された装着部に装着される複数のインサートピン16Aと、各インサートピン16Aをアウタアダプタ14に保持するためのナット18とを備えて構成されている。そして、このアダプタ10Aは、第一のビット21を、軸心CLと同軸に配置し、複数の第二のビット22を、第一のビット21に沿って軸心CLの同心円CC上での周方向に等配するとともに、第一のビット21よりもその軸方向での基端側に配設するようになっている。
【0020】
上記センタアダプタ12は、図2(a)に示すように、その基端側(同図での右側)から順に、略円筒状の大径部12aと、横断面が六角形形状の角形軸部12bと、雄ねじ12cとを、軸心CLと同軸に有して形成されている。なお、このセンタアダプタ12は、貫通孔12eがその軸心に沿って貫通形成されている。
そして、センタアダプタ12の雄ねじ12cは、第一のビット21の基端側に形成された雌ねじ21a(図1参照)に螺合可能になっている。また、センタアダプタ12の大径部12aは略円筒状をなし、その内部には、ロッド6(ロッド本体5)の先端に形成された雄ねじ5a(図1参照)に螺合可能な雌ねじ12dが軸心CLと同軸に形成されている。さらに、角形軸部12bは、アウタアダプタ14の装着部になっている。ここで、この角形軸部12bの外形の最大寸法は、前記大径部12aの外径よりも小さい寸法になっている。これにより、大径部12aの先端側端面12fがいわば鍔部となり、この先端側端面12fが、アウタアダプタ14の基端側端面14fに軸方向で当接することで、アウタアダプタ14の基端側への移動を拘束可能に構成されている。
【0021】
一方、アウタアダプタ14は、その中心部に、横断面が六角形形状の貫通孔14bを軸心CLに沿って有している。この六角形形状の貫通孔14bは、上記角形軸部12bの六角形形状に対し、これよりも僅かに大きい相似形である。これにより、このアウタアダプタ14がセンタアダプタ12の角形軸部12bに外側から嵌合可能であり、また、外側から嵌合したときに、角形軸部12b上において、その軸方向では相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着可能に構成されている。
【0022】
さらに、このアウタアダプタ14は、図2(b)に示すように、上記インサートピン16Aを装着するための装着部として、その周方向に90°の等間隔に且つ径方向に張り出す張出し部14hを4箇所有しており、これにより、その軸方向から見た形状が十文字形状に形成されている。そして、これらの各張出し部14hには、円形の貫通孔14aが周方向に90°の等間隔にそれぞれ形成されている。各貫通孔14aは、前記軸心CLの同心円CC上の位置に且つ軸心CLと平行に形成されている。そして、各張出し部14hの貫通孔14aに、図3に示すインサートピン16Aがそれぞれ装入されるようになっている。なお、各張出し部14hそれぞれの端部は、円形の貫通孔14aと同心円形状に形成されて丸くなっている。
【0023】
インサートピン16Aは、図3に示すように、その基端側(同図での右側)から順に、小径の雄ねじ部16dと、上記アウタアダプタ14の貫通孔14aよりも僅かに径の小さな第一の軸部16aと、軸方向での略中央部に位置して最も径の大きな部分である鍔部16tと、第二のビット22の基端側に形成された雌ねじ22a(図1参照)が螺着可能な雄ねじ部16cとを同軸に有して形成されている。ここで、第一の軸部16aの長さL1は、図2(a)に示すアウタアダプタ14の幅T1よりも長い(L1>T1)。
【0024】
次に、図4を適宜参照しつつ、上記アダプタ10Aおよびさく孔用ビット20を、さく岩機ユニット1のロッド6(ロッド本体5)の先端に装着する方法およびその装着状態における構造について説明する。
まず、上記さく孔用ビット20を使用する前の状態において、さく岩機ユニット1のロッド6の先端に、単孔用のビットとして第一のビット21が装着されている場合には、この第一のビット21を一旦取り外す。
【0025】
そして、上記アダプタ10Aおよびさく孔用ビット20を、さく岩機ユニット1のロッド6(ロッド本体5)の先端に装着する際は、まず、図4(a)に示すように、アウタアダプタ14の貫通孔14bに対し、センタアダプタ12をその雄ねじ12c側から挿入し、アウタアダプタ14を、センタアダプタ12の角形軸部12bの位置に外側から嵌合した状態にする。次いで、各インサートピン16Aを、上記アウタアダプタ14の各貫通孔14aに、その雄ねじ部16d側から挿入し、さらに、その第一の軸部16aがアウタアダプタ14の貫通孔14a内に位置した状態で、挿入側とは反対の側から雄ねじ部16dにナット18を螺合することでアウタアダプタ14に装着する。
【0026】
次いで、図4(b)に示すように、各インサートピン16Aの雄ねじ部16cに、複数の第二のビット22をそれぞれ螺着する。ここで、各インサートピン16Aの第一の軸部16aは、上述のように、アウタアダプタ14の貫通孔14aよりも僅かに径が小さく、且つ、アウタアダプタ14の幅T1よりもその第一の軸部16aの長さL1が長いので、各インサートピン16Aは、アウタアダプタ14に対し、それぞれ自転可能に装着され、これにより、各アウタアダプタ14に装着される第二のビット22それぞれは、各軸まわりに自転可能に装着されるようになっている。
【0027】
次いで、図4(c)に示すように、上記の装着状態において、ロッド6(ロッド本体5)の先端に形成された雄ねじ5aに対し、センタアダプタ12をその大径部12aの雌ねじ12dによって螺着する。最後に、センタアダプタ12先端の雄ねじ12cに、上記単孔用のビットとして用いていた第一のビット21を、その基端側に形成された雌ねじ21aによって螺着することで、図1に示すように、複数の汎用ビット21,22から構成されたさく孔用ビット20がアダプタ10Aを介してロッド6(ロッド本体5)の先端に装着される。
【0028】
これにより、このアダプタ10Aは、そのアウタアダプタ14が、センタアダプタ12の角形軸部12bに外側から嵌合した装着状態において、これにインサートピン16Aを介して装着される複数の第二のビット22を、第一のビット21に沿って前記軸心CLの同心円CC上での周方向での4箇所に等配するとともに、第一のビット21よりもその軸方向での基端側に配設するようになっている。
【0029】
次に、この第一の実施形態のアダプタ10Aおよびこれを用いたさく岩機ユニット1の作用・効果について説明する。
このさく岩機ユニット1を用いて、一連のさく孔作業を行なって心抜き孔のさく孔をする場合には、まず、図5(a)に示すように、さく孔をすべき位置付近までさく岩機ユニット1を移動させる。そして、壁面Fに対し、さく孔をするのに必要な位置にさく岩機ユニット1を位置決めし、ドリフタ2を駆動してさく孔作業を開始する。
【0030】
次いで、図5(b)に示すように、ロッド6を回転させつつ、ガイドシェル上でドリフタ2をフィードすることにより、ロッド6先端のさく孔用ビット20で心抜き孔Rのさく孔を行なうことができる。
ここで、このさく岩機ユニット1によれば、そのアダプタ10Aは、さく孔用ビット20を、個別に着脱可能な複数の汎用ビット21,22から構成可能になっているので、例えば大口径のさく孔に一般的に用いられる専用の親子ビットを用いなくとも、比較的安価な汎用ビットを複数用い、その複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットによって大口径DAのさく孔が可能である。したがって、経済性に優れている。
【0031】
そして、このアダプタ10Aによれば、さく孔用ビット20を構成する複数の汎用ビット21,22は、個別に着脱可能なので、例えばこれを構成する複数の汎用ビット個々の消耗や損傷の程度に応じて個別に交換が可能であり、また、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて、装着する汎用ビット21,22の種類(例えば、ボタンビット、クロスビット、超硬チップの硬度等)を適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能である。
【0032】
また、このアダプタ10Aによれば、複数の汎用ビット21,22を、軸心CLと同軸に配置される第一のビット21と、その第一のビット21に沿ってその周囲に等配される複数の第二のビット22とによって構成するようになっているので、中心に位置する第一のビット21を適切な種類の他の汎用ビットに交換したり、あるいは、第二のビット22を適切な種類の他の汎用ビットに交換したりすることによって、岩盤等の硬岩部の状況に合わせた好適なビット構成とする上で好適である。
【0033】
さらに、このアダプタ10Aによれば、第一のビット21および第二のビット22は、いずれも当該アダプタ10Aを介してロッド6の先端に装着されるようになっているので、さく孔用ビット20を構成する第一のビット21および第二のビット22が共にアダプタ10Aに装着される。そのため、さく孔長を多くとりたい場合に好適である。
また、このアダプタ10Aによれば、複数の第二のビット22は、ロッド6に対し、その軸方向では所定の範囲Sで相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着されるようになっているので、当該アダプタ10Aの着脱が容易である。そのため、アダプタの換装やそのメンテナンス作業を容易とする上で好適である。
【0034】
また、このアダプタ10Aによれば、複数の第二のビット22それぞれは、自転可能に装着されるようになっている。つまり、例えばTBM(トンネルボーリングマシン)やシールドマシンのカッタと同様に、第一のビット21に沿ってその周囲に等配される第二のビット22が個別に自転可能なので、さく孔性能を向上させる上で好適である。
また、このアダプタ10Aによれば、これに装着可能な複数の第二のビット22の等配数が4であり、その軸方向から見た形状が十文字形状になっているので、隣接する複数の第二のビット22同士の間に、軸方向に沿った隙間を設けることができる。そのため、この軸方向に沿った隙間から繰粉を効率よく排出させることができる。したがって、繰粉の排出性を向上させる構成とする上で好適である。
【0035】
以上説明したように、このアダプタ10Aおよびこれを用いたさく岩機ユニット1によれば、汎用ビットを使用可能とし、また、汎用ビットを用いた場合であっても、岩盤等の硬岩部の状況に合わせて適切な種類の汎用ビットに適宜交換することができる。
次に、本発明の第二の実施形態について、図6ないし図10を適宜参照しつつ説明する。なお、上記説明した第一の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0036】
図6は本発明に係るさく孔装置の第二の実施形態であるさく岩機ユニットの要部の説明図である。
同図に示すように、この第二の実施形態のさく岩機ユニット1は、そのロッド6には、その先端にアダプタ10Bが取り付けられ、また、さく孔用ビット20が装着されている。ここで、上記第一の実施形態では、さく孔用ビット20を構成する第一および第二のビット21,22は、いずれもアダプタ10Aを介してロッド6(ロッド本体5)の先端に装着されるようになっている例を説明したが、この第二の実施形態では、第一のビット21は、ロッド6(ロッド本体5)の先端に直接装着され、複数の第二のビット22は、アダプタ10Bを介してロッド6(ロッド本体5)の先端に装着されるようになっている点が上記第一の実施形態とは異なっている。
【0037】
詳しくは、図6に示すように、この第二の実施形態のアダプタ10Bは、上記第一の実施形態でのセンタアダプタ12を有していない。そして、アウタアダプタ14は、その貫通孔14bが、ロッド本体5のもつ六角形形状の角形軸部5bに相似かつ僅かに大きい形状になっており、このアウタアダプタ14が、ロッド本体5に対しその外側から直接嵌合するようになっている。そして、このアウタアダプタ14とスリーブ4との間には、ディスタンスカラー40が介装されるようになっている。
【0038】
このディスタンスカラー40は、略筒状の部材であり、ロッド本体5に沿った筒状の本体部40aと、その本体部40aの両端にそれぞれ設けられて径方向に張り出す円環状の鍔部40bとを有して構成されている。本体部40aの内形は、ロッド本体5のもつ六角形形状の角形軸部5bに相似かつ僅かに大きい形状に形成されており、ロッド本体5にこれと同軸に外側から嵌合可能になっている。なお、ディスタンスカラー40の全長は、アウタアダプタ14を装着するために必要な部分を除き、ロッド本体5のもつ六角形形状の角形軸部5bの部分を覆う長さになっている(図9(b)参照)。
【0039】
そして、この第二の実施形態のアウタアダプタ14には、図7に示すように、上記第一の実施形態同様に、各張出し部14hの貫通孔14aに、図8に示すインサートピン16Bがそれぞれ装入されるようになっている。
ここで、このインサートピン16Bは、図8に示すように、その基端側(同図での右側)から順に、上記アウタアダプタ14の貫通孔14aよりも僅かに径の小さな第一の軸部16aと、軸方向での略中央部に位置して最も径の大きな部分である鍔部16tと、第二のビット22が外側から嵌合可能な第二の軸部16fとを同軸に有して形成されている。つまり、このインサートピン16Bは、上記第一の実施形態でのインサートピン16Aに比べ、小径の雄ねじ部16dを有しておらず、また、上記雄ねじ部16cに変えて第二の軸部16fを有している点が異なっている。なお、この第二の実施形態では、第二のビット22の基端側の雌ねじ22aを、第二の軸部16fに対し外側から嵌合するとともに、その軸回りに回転可能な内径を有する有底穴として用いており、この雌ねじ22aによる有底穴が上記第二の軸部16fに外側から嵌合するようになっている。
【0040】
次に、図9を適宜参照しつつ、上記アダプタ10Bおよびさく孔用ビット20を、この第二の実施形態のさく岩機ユニット1のロッド6(ロッド本体5)の先端に装着する方法およびその装着状態における構造について説明する。
上記アダプタ10Bおよびさく孔用ビット20を、さく岩機ユニット1のロッド6(ロッド本体5)の先端に装着する際は、まず、図9(a)に示すように、ロッド本体5に対し、ディスタンスカラー40を挿入する。
【0041】
次いで、図9(b)に示すように、アウタアダプタ14の貫通孔14bに対し、各インサートピン16Bの第一の軸部16aを先端側から挿入し、次いで、各インサートピン16Bの第二の軸部16fに対し、第二のビット22を、その雌ねじ22aを用いた有底穴によって外側から嵌合させる。
ここで、各インサートピン16Bの第一の軸部16aは、アウタアダプタ14の貫通孔14aよりも僅かに径が小さく、且つ、アウタアダプタ14の貫通孔14bに挿入されるだけなので、各インサートピン16Bは、アウタアダプタ14に対し、それぞれ自転可能である。そして、第二のビット22は、各インサートピン16Bの第二の軸部16fにその軸まわりに回転可能に外側から嵌合されるだけなので、複数の第二のビット22それぞれは、各軸まわりに自転可能に装着される。
【0042】
次いで、図4(c)に示すように、上記アウタアダプタ14をロッド本体5の角形軸部5bに外側から嵌合し、さらに、ロッド6(ロッド本体5)の先端に形成された雄ねじ5aに対し、第一のビット21を、その基端側に形成された雌ねじ21aによって直接螺着する。これにより、図1に示すように、複数の汎用ビット21,22から構成されたさく孔用ビット20がロッド6(ロッド本体5)の先端に装着される。
【0043】
このような構成であっても、この第二の実施形態のアダプタ10Bは、そのアウタアダプタ14が、ロッド本体5の角形軸部5bに外側から嵌合した装着状態において、これにインサートピン16Bを介して装着される複数の第二のビット22を、第一のビット21に沿って前記軸心CLの同心円CC上での周方向での4箇所に等配するとともに、第一のビット21よりもその軸方向での基端側に配設可能である。
【0044】
ここで、この装着状態において、複数の第二のビット22が装着される同心円CCの位置は、第一のビット21先端の大径の部分は、複数の第二のビット22先端の大径の部分に対し、上記第一の実施形態同様に、軸方向の先端側において当接(干渉)する位置になっている。一方、この第二実施形態では、軸方向の後端側においては、ディスタンスカラー40の円環状の鍔部40bにアウタアダプタ14が当接することで、軸方向の後端側への移動が拘束される。これにより、上記第一の実施形態同様に、角形軸部5b上でのアウタアダプタ14を装着するために必要な部分における所定の範囲内に軸方向での移動が拘束される。つまり、複数の第二のビット22は、その軸方向において、図6(b)に示す符号Sを所定の範囲として、この所定の範囲Sにて軸方向での相対移動が可能であり、相対回転は拘束されるように装着される。
【0045】
次に、この第二の実施形態のアダプタ10Bおよびこれを用いたさく岩機ユニット1の作用・効果について説明する。
この第二の実施形態のさく岩機ユニット1を用いて、一連のさく孔作業を行なって心抜き孔のさく孔をする場合には、上記第一の実施形態同様に、まず、図10(a)に示すように、さく孔をすべき位置付近までさく岩機ユニット1を移動させる。そして、壁面Fに対し、さく孔をするのに必要な位置にさく岩機ユニット1を位置決めし、ドリフタ2を駆動してさく孔作業を開始する。
【0046】
次いで、図10(b)に示すように、ロッド6を回転させつつ、ガイドシェル上でドリフタ2をフィードすることにより、ロッド6先端のさく孔用ビット20で心抜き孔Rのさく孔を行なうことができる。
そして、この第二の実施形態のアダプタ10Bについても、上記第一の実施形態同様に、さく孔用ビット20を、個別に着脱可能な複数の汎用ビット21,22から構成可能になっているので、例えば大口径のさく孔に一般的に用いられる専用の親子ビットを用いなくとも、比較的安価な汎用ビットを複数用い、その複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットによって大口径DAのさく孔が可能である。したがって、経済性に優れている。
【0047】
また、このアダプタ10Bによれば、さく孔用ビット20を構成する複数の汎用ビット21,22は、個別に着脱可能なので、上記第一の実施形態同様に、適切な種類の汎用ビットに適宜交換可能である。
また、このアダプタ10Bによれば、複数の汎用ビット21,22を、軸心CLと同軸に配置される第一のビット21と、その第一のビット21に沿ってその周囲に等配される複数の第二のビット22とによって構成するようになっているので、上記第一の実施形態同様に、岩盤等の硬岩部の状況に合わせた好適なビット構成とする上で好適である。
【0048】
また、このアダプタ10Bによれば、第一のビット21は、ロッド6(ロッド本体5)の先端に直接装着され、第二のビット22は、当該アダプタ10Bを介してロッド6の先端に装着されるようになっているので、上記第一の実施形態でのセンタアダプタ12を不要とすることができる。また、インサートピン16Bについても、上記第一の実施形態でのナット18を用いることなく、アウタアダプタ14の貫通孔14aに挿入するだけなので、アダプタを含め、装置の構成を簡素にする上で好適である。
【0049】
また、このアダプタ10Bによれば、複数の第二のビット22についても、インサートピン16Bの第二の軸部16fに、自転可能に装着されるようになっているので、上記第一の実施形態同様に、さく孔性能を向上させる上で好適である。
また、このアダプタ10Bによれば、これに装着可能な複数の第二のビット22の等配数が4であり、その軸方向から見た形状が十文字形状になっているので、上記第一の実施形態同様に、繰粉の排出性を向上させる構成とする上で好適である。
【0050】
なお、本発明に係るさく孔装置用アダプタおよびさく孔装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では、複数の第二のビット22は、ロッド6に対し、その軸方向では所定の範囲Sで相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着されるようになっている例で説明したが、これに限定されず、例えば軸方向での移動をも拘束して装着する構成としてもよい。しかし、アダプタの着脱を容易とし、アダプタの換装やそのメンテナンス作業を容易とする上では、上記各実施形態のように、複数の第二のビットは、ロッドに対し、その軸方向では所定の範囲で相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着されるようになっていることは好ましい。
【0051】
また、例えば、上記各実施形態では、複数の第二のビット22それぞれは、自転可能に装着されるようになっている例で説明したが、これに限定されず、複数の第二のビット22それぞれを自転させない固定構造としてもよい。しかし、さく孔性能を向上させる上では、複数の第二のビットそれぞれは、自転可能に装着されるようになっていることは好ましい。
【0052】
また、例えば、上記各実施形態では、このアダプタ10A,10Bに装着可能な複数の第二のビット22の等配数が4であり、その軸方向から見た形状が十文字形状になっている例で説明したが、これに限定されず、複数の第二のビット22の等配数を3としてよいし、また、等配数を5以上としてもよい。しかし、上記各実施形態のように、装着可能な複数の第二のビットの等配数を4とし、その軸方向から見た形状を十文字形状に構成すれば、繰粉の排出性を向上させる構成とする上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るさく孔装置の第一の実施形態であるさく岩機ユニットの要部の説明図である。なお、同図(a)は同図(b)でのA−A断面図であり、また、同図(b)は、さく岩機ユニット要部の正面図であり、同図では軸線よりも下側を、その軸線を含む断面で示している。
【図2】本発明に係るさく孔装置用アダプタの第一の実施形態を説明する図であり、同図(a)はそのアダプタを構成するセンタアダプタおよびアウタアダプタを説明するための正面図であり、同図では、アウタアダプタを軸線を含む断面で示している。また、同図(b)は同図(a)での右側面図である。
【図3】本発明に係るさく孔装置用アダプタの第一の実施形態を説明する図であり、同図はそのアダプタを構成するインサートピンを説明するための正面図である。
【図4】第一の実施形態に係るアダプタおよびさく孔用ビットを、さく岩機ユニットのロッドの先端に装着する方法およびその装着状態における構造を説明する図である。
【図5】第一の実施形態に係るさく孔装置用アダプタを備えるさく岩機ユニットでのさく孔作業の説明図である。
【図6】本発明に係るさく孔装置の第二の実施形態であるさく岩機ユニットの要部の説明図である。なお、同図(a)は同図(b)でのB−B断面図であり、また、同図(b)は、さく岩機ユニット要部の正面図であり、同図では軸線よりも下側を、その軸線を含む断面で示している。
【図7】本発明に係るさく孔装置用アダプタの第二の実施形態を説明する図であり、同図(a)はそのアダプタを構成するアウタアダプタを説明するための正面図であり、同図では、その軸線を含む断面で示している。また、同図(b)は同図(a)での右側面図である。
【図8】本発明に係るさく孔装置用アダプタの第二の実施形態を説明する図であり、同図はそのアダプタを構成するインサートピンを説明するための正面図である。
【図9】第二の実施形態に係るアダプタおよびさく孔用ビットを、さく岩機ユニットのロッドの先端に装着する方法およびその装着状態における構造を説明する図である。
【図10】第二の実施形態に係るさく孔装置用アダプタを備えるさく岩機ユニットでのさく孔作業の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 さく岩機ユニット(さく孔装置)
2 ドリフタ
3 シャンクロッド
4 スリーブ
5 ロッド本体
6 ロッド
10A,10B (さく孔装置用)アダプタ
12 センタアダプタ
14 アウタアダプタ
16A,16B インサートピン
18 ナット
20 さく孔用ビット
21 第一のビット(汎用ビット)
22 第二のビット(汎用ビット)
40 ディスタンスカラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に着脱可能な複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットが先端に装着されるロッドを備え、前記さく孔用ビットにさく孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能なさく孔装置に用いられ、前記さく孔用ビットを前記ロッドの先端に装着するためのアダプタであって、
前記複数の汎用ビットのうち、第一のビットを、前記ロッドの軸心と同軸に配置し、複数の第二のビットを、前記第一のビットに沿って前記軸心の同心円上での周方向に等配するとともに、前記第一のビットよりもその軸方向での基端側に配設するようになっていることを特徴とするさく孔装置用アダプタ。
【請求項2】
前記第一および第二のビットは、いずれも当該アダプタを介して前記ロッドの先端に装着されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のさく孔装置用アダプタ。
【請求項3】
前記第一のビットは、前記ロッドの先端に直接装着され、前記第二のビットは、当該アダプタを介して前記ロッドの先端に装着されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のさく孔装置用アダプタ。
【請求項4】
前記複数の第二のビットは、前記ロッドに対し、その軸方向では所定の範囲で相対移動可能であり、相対回転は拘束されるように装着されるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のさく孔装置用アダプタ。
【請求項5】
前記複数の第二のビットそれぞれは、自転可能に装着されるようになっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のさく孔装置用アダプタ。
【請求項6】
装着可能な前記複数の第二のビットの等配数が4であり、その軸方向から見た形状が十文字形状になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のさく孔装置用アダプタ。
【請求項7】
複数の汎用ビットから構成されるさく孔用ビットが先端に装着されるロッドと、前記さく孔用ビットを前記ロッドの先端に装着するためのアダプタとを備え、前記さく孔用ビットにさく孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能なさく孔装置であって、
前記アダプタとして、請求項1〜6のいずれか一項に記載のさく孔装置用アダプタを用いていることを特徴とするさく孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−106527(P2008−106527A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290828(P2006−290828)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(594149398)古河ロックドリル株式会社 (50)
【Fターム(参考)】