説明

さし歯構造、および、さし歯方法

一体化された台座歯冠(22)が台座部分(24)を有し、台座部分(24)が中央部分(24a)を有し、該中央部分(24a)が、植設部材の穴に受容可能な柱状部分(24b)と頭部との間にあり、該頭部が、鼻状部分(24c)と、前記中央部分の外周部から前記鼻状部分まで延在する棚状部分(24d)とを含む。台座部分(24)には、前記頭部の前記鼻状部分および前記棚状部分上に直接付与される歯冠部材料(26)を支持するための滑らかに湾曲する表面が形成されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年9月16日に出願された仮出願第60/410753号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、広義の意味で、修復歯科学に係わり、具体的に云えば、補綴構造、および、かかる補綴構造を用いる方法に関するものである。
【0003】
人の自然歯は、歯科疾患または外傷の結果として失われる可能性があり、そのような歯は、1つ以上の補綴手段で置き換えることが望まれる。補綴手段の一例が、下顎または上顎歯槽骨内に外科的に設置されるさし歯である。
【0004】
或る形式のさし歯は、患者の歯槽骨の骨切除部位に配設される第一植設部材を有する。治療後には、通常、台座(abutment)と称する頭部部材が第一植設部材に装着され、また、擬似歯補綴または歯冠が台座に付与される。この種の成功した構造が、米国特許第4738623号(特許文献1)に開示されている。この特許では、肩部によって取り囲まれる雌穴が形成された第一端部または外端部を有するとともに、外側に延びるフィン等の好適なアンカー手段を有する第一植設部材または歯根部材が、好適な外科器具と技術を用いて、歯槽骨に形成された骨切除部位または植設部材受容穴に配設される。第一植設部材は、植設部材受容穴の開口部よりも下(すなわち、歯槽骨の頂部より下)の選択された距離(例えば、2〜3mm)に第一植設部材の上部が位置するように植設部材受容穴内に挿入される。その際、治療栓が第一植設部材の雌穴内に挿入され、天然および/または合成の骨成長刺激移植材料が植設部材の肩部周囲の穴内に詰め込まれ、次いで、傷口が塞がれる。
【0005】
治療に続いて、歯科医は、治療栓を取り出して台座と置き換える。台座は、前記雌穴内に受容される雄部と、中間に位置する概ね半球形の外側表面部分(この部分は、歯肉表面を経て、また、好適には、歯槽骨(歯槽骨は、植設部材受容穴を形成する時に、相補形状を与えるように予めリーマー加工されている)の頂部表面を経て拡がる)とを有する。次いで、補綴手段と、歯肉縁上または最良の審美眼では歯肉縁下にある(すなわち、歯肉組織によって覆われる)台座との間の界面で、台座の半球状表面部分を有する滑らかで連続する表面を形成する台座に、補綴手段を付与できる。補綴手段の製作は、典型的には、インプレッションの作製(一般的には、全体が円弧状のインプレッションの作製)と、台座頭部の、特にポジ複製物またはダイを作る模型の注入を伴う。その後、製造技術者は、補綴が作られるコアとしてのダイ上で白金箔を磨く。補綴の完成および焼成時に、白金が剥ぎ取られる。この作業は容認されているが、その結果の有効性は製造技術者の技能に依存し、高度に労働集約的であって時間がかかる。代替的に、製造技術者は、磁器粉末が表面に付され、炉内で溶融せしめられる金属(通常、金−パラジウム合金)から成る中心コアを用いるロストワックス技術によって補綴を製作することができるだろう。
【0006】
米国特許第6290500号(特許文献2)に開示され、かつ、請求の範囲に記載された台座によれば、製造手順、付随費用および時間遅れが実質的に削減される。前記特許(その主題事項を引用によって本明細書に援用する)では、柱状部分と頭部の間に中央部分を有するさし歯の台座が開示され、頭部には周囲に延在する棚状部分分が頭部の基部と中央部分の間に形成され、該中央部分は、頭部の長手方向軸線に直角な平面と約0〜30°の範囲の角度を作る。スリーブ・コアを含んでもよく、または、含まなくてもよい補綴が、頭部に密嵌され、また、台座の肩部分に合致する頭部受容穴の入口に端面を有する。
【0007】
一実施形態において、台座の頭部の外表面に正確に一致するネガ像の内部構造を有し、頭部に正確に嵌合させることのできるスリーブを設けることによって、一体化された台座歯冠が形成される。スリーブは、同一の頭部構造を有するとともに、骨切除部位に位置する植設穴に取り外し可能に挿入される柱状体を有する暫定的または取り外し可能な台座の頭部に設置される。モールド成形可能な材料からなるインプレッションが、取り外し可能な台座または骨切除部位に隣接する領域に設けられる。インプレッションは、これに残留するスリーブと共に患者の口から取り除かれる。同一の構造をした頭部を有する転写台座がスリーブ内に設置され、転写台座は植設部材相似体に挿入される。次いで、モールド成形材料をインプレッションに注入して、骨切除部位に隣接する領域の模型または複製物を、該模型にロックされた植設部材相似体を用いて形成する。模型がインプレッションから取り除かれ、スリーブが取り外されて模型内の転写台座上に位置づけられる。次に、好適な材料を追加して補綴がスリーブ上に作られ、上記材料は、成形されて、歯の間の空き空間内または骨切除部位に連続して対合する補綴内に合致する。それから、補綴は、セメントで固めたり接着したりして、同一の構造をした頭部を有する恒久的な台座に取り付けられ、一体化された台座歯冠を形成する。その後、セメントが接着手段として使用された後に、仕上げされた台座を植設穴に挿入できると、一体化された台座歯冠を口腔外で研磨して、異質のセメントを除去できる。台座の柱状体および植設穴が自己保持テーパと一致すると、一体化された台座歯冠の角度位置を所望のいずれかの方向に調整した後、一体化された台座歯冠を選択された力で軽く叩いて所定の位置にロックすることができる。特許文献2に記載のように、テーパのない円筒状柱状体を用いて、角度を調整した後に、植設内にセメントまたは接着剤で固めることもできる。
【0008】
被冠部分の表面を傷付けないように、柱状部分および植設穴の長手方向軸線と事実上同一線上にある力によって、ロック力が一体化された台座歯冠に与えられることを確保するために、前記特許では、自己保持台座の取付システムで使用する特別の治具が用意されている。
【0009】
変形の実施形態において、スリーブ・コアを用いてまたは用いることなく、取り外し可能な付属部品の頭部に配設するために、予め製作された歯冠部材が選択される。空所、予め製作された歯冠部材に設けられるかまたは形成されて、前記のように、台座の頭部またはスリーブを収容するように構成され、また、外部構造が連続した対合歯の間にまたは骨切除部位に相対する補綴に合致するように構成されて、仕上げされた歯冠を形成する。仕上げされた歯冠は、次いで、自己保持テーパのある柱状体を有する台座に口腔外で付与され、骨切除部位内に位置する自己保持テーパのある穴に一致した植設内にこの後挿入する一体化された台座歯冠を形成する。一体化された台座歯冠は、口腔外で研磨され、植設部材内に挿入されて、その角度位置が調整されかつ正しい位置に固定ロックされる。
【特許文献1】米国特許第4738623号
【特許文献2】米国特許第6290500号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術よりも、さらに特許文献2に記載のものより一層効果的に、製造手順および付随する費用と時間の遅延とを極力低減する植設構造と方法を提供することにある。別の目的は、従来技術より優れた効率で患者に挿入できる一体化された台座歯冠を製作する装置および方法の提供にある。さらに別の目的は、使用中に体験される各種の咀嚼力、歯ぎしりおよび軽い外傷性傷害に耐え得る最適な能力を備えた歯冠材料の支持に特に適合する植設用台座およびその作製方法の提供にある。なお別の目的は、患者の骨切除部位に着座する植設穴への取付時に、台座歯冠の角度方向の調整を可能にする上記台座歯冠の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔に述べると、本発明によれば、植設穴に収容可能な柱状部分と歯冠材料を支持する頭部との間に配置された中央部分を有する台座部分を取り込むことによって、一体化された台座歯冠が形成される。以下の説明のためおよび添付の図面に見られるように、頭部は柱状部分の上方にあると述べかつそのように図示されているが、しかし、使用時の実際の方向は骨切除部位に依存して変化することが理解されるであろう。中央部分の外周辺から中央部分を基点として上方に延びる鼻状部分にかけて延在する棚状部分が形成されている。棚状部分は、頭部の長手方向軸線に対して任意の角度をなしてもよいけれど、中央部分の外周辺から鼻状部分に向かって軸線に対して約10〜40°の角度で上方に傾斜することが好ましい。棚状部分の外周辺は、鼻状部分の自由端に対する中央部分の外周縁の高さが一様であるか、あるいは、後記の患者の歯肉の輪郭等の解剖学的特徴に合わせて変化してもよい。棚状部分は鼻状部分と共に滑らかで湾曲した表面を形成し、部材の支持力を高める。鼻状部分は、丸みを帯びた自由端が形成され、概ね円錐形状であるか、あるいは歯冠材料を支持する任意の他の好適な外形をなしてもよい。各種の植設部材取付機構を採用できるものの、好適な機構は、植設部材に設置するための角度方向を調整可能にする自己保持またはロック用テーパである。
【0012】
本発明によれば、頭部の表面をサンドブラストして、そこに付与される歯冠材料に対する接着性を高める。歯冠材料は、彩色的かつ審美的に隣在歯と同様となるように、また、使用に関連して各種の咀嚼力、歯ぎしりおよび軽い外傷性傷害に耐え得る性能を有するように選択される。かかる材料としては、セラミックと磁器材、ポリマー、ポリセラミック樹脂、ガラス・アイオノマー、および他の複合材料が挙げられる。好ましい方法において、歯冠は、ポリセラミック樹脂層を付与して材料を光硬化させて、台座部分の頭部に作られる。本発明によれば、選択される歯冠材料の付与および硬化方法には、頭部への十分な接着性を確保しながら、歯冠材料または台座を傷つけない温度に加熱することにより、処理し得るものが包含される。
【0013】
本発明の別の目的および特徴は、一部が以下の説明に示され、かかる説明から一部が自明であろう。本発明の目的および利点は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される手段、組合せおよび方法によって、明確に理解され、達成されるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
明細書の一部に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明の好ましい実施例を示し、明細書の説明と共に、本発明の目的、利点および原理の説明に役立つ。
【0015】
図1は、患者の顎の骨切除部位に配設された植設部材10を含む従来技術のシステムを示す。植設部材10は、自己保持テーパが形成された穴12を有し、これに一致する自己保持テーパが形成された柱状部分16を備えた台座14を穴に取り付けて、柱状部分の長手方向軸線に沿って少なくとも選択された力で台座を軽く叩くことによって、正しい位置に台座をロックすることができる。台座14は、滑らかで湾曲した外表面構造が形成された中央部分または基部18と、その上に補綴を取り付けるのに役立つ頭部20とを有する。特許文献1の引用により更なる詳細を得ることができ、特許文献1の保護の対象物は本明細書に援用される。
【0016】
従来技術によれば、図1に示されるような連続した歯または補綴と対合歯または補綴(図示せず)との間の空き空間内に合致させるために、その後作製され成形される台座の頭部上で白金箔の光沢処理を伴う比較的労働集約的で時間を消費する工程によって、歯冠または他の補綴が典型的に製作される。補綴の完成後、補綴が植設部材に取り付けられた台座に恒久的に接着可能になる前に、こすり処理などで箔を取り除かなければならない。台座への接着にセメントを用いる場合、歯肉に刺激を与える外表面に異質のセメントが存在しないように、注意を払わなければならない。
【0017】
前記のように、特許文献2の教示によれば、台座相似体を利用した歯冠を最初に形成することによって、補綴の製作が簡素化される。台座相似体および恒久的な台座には、頭部の直立部と歯冠の間に延びる同一の棚状部分が形成される。スリーブ・コアを用いるかまたは用いることなく、歯冠は台座相似体上で別途作成され、歯冠には、例えば同じ傾斜角を有する肩部の形状と一致するように選ばれた形状をなす端面が形成される。次いで、歯冠は台座上に設置されてセメントで固められ、これによって歯冠と台座とを一体化するので、補綴を口腔外で仕上げ研磨できる。これによって、歯肉組織を刺激するはみ出しまたは過剰のセメントがないので、歯肉縁下へのセメント接合部の配置を容易にする。好ましくは自己保持テーパを備えた柱状部分を有するでき上がりの一体化された台座歯冠は、その後植設部材に挿入されて、その角度方向が所望の通り調整され、最終的に、特別に製作された着座素子を利用した単一のユニットとして、植設部材に軽く叩かれてロック・嵌合する。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態によれば、歯冠と台座部分の間のセメントの余白は、以下に述べるように、全て除去される。
図2に関して、本発明に従って製作される一体化された台座歯冠22は、台座部分24および破線で示される歯冠部分26を有するものとして示されている。
【0019】
台座部分24は、チタンまたはチタン合金等の好適な生体適合性材料で形成され、典型的には水平断面が環状である(図面に示される通り)が、楕円形等の他の形状であってもよい滑らかで湾曲した表面をなす中央部分24aを有する。以下の説明において、中央部分はある特定の実施例では環状とみなされる。中央部分24aは、例えば図1に示される植設部材の穴に収容され、下方に(図面に示された方向を参照)延びる柱状部分24bを備える。台座部分を植設部材に取り付けるには様々な取付手段を採用できるけれど、前記引用の特許のように、植設部材の穴の自己保持テーパに一致する自己保持テーパを有する概ね円筒状の柱状体が好ましい。
【0020】
鼻状部分24cは中央部分24aから上方に延び、棚状部分24dは、中央部分の最大円周部から鼻状部分24cに延び、滑らかで湾曲した表面によって鼻状部分に合流される。鼻状部分は、概ね円錐形をなすが、歯冠材料を支持するいかなる好適な形状をとることができ、滑らかな湾曲した表面で形成された自由端24eを有する。湾曲した滑らかな表面は、以下に述べられるが、応力の集中を極力抑制する各種の補綴材料の増大する化学的および機械的な追加を容易にする。棚状部分の外部は、その円周縁の高さが一様であってもよく、すなわち、鼻状部分の遊離部の先端からの距離がその周縁で一定であってもよく、あるいは、破線24fで示されるように変化して、歯肉の輪郭に追随するなど解剖学的特徴に合わせてもよい。棚状部分の外周部が鼻状部分24cの長手方向軸線に直角な平面とで作り出す角度は、任意の選択された角度であってもよいが、棚状部分は上記平面と約10〜40°の角度で鼻状部分に向かって上方に傾斜することが好ましい。
歯冠部分26は、鼻状部分24cおよび棚状部分24dを含む頭部表面に直接くっつけられる。
【0021】
図3において、例えば、コネチカット州ブランフォード(Branford)所在のDRM・リサーチ・ラボラトリーズ社(以下、DRMという)等の様々な市販元の1つから入手可能なポリセラミック材料を用いて、一体化された台座歯冠を製作する好ましい方法の1つによれば、肩部のない(non−shouldered)好適な台座部分が選定され、少なくとも隣在歯および対合歯を含む骨切除部位の型中の相似体植設部材から分離される。例えば、同時継続中の共譲渡された2002年3月7日出願の(米国特許)出願第10/093991号に示され、その対象物が本明細書に援用される植設部材相似体を台座部分として使用することができる。歯肉の高さに印が付けられて肩部24dが形成されるか、あるいは、予め形成された肩部を有する好適な台座部分が選定される。台座部分の頭部は、好ましくは、50μmのアルミナ等の好適な媒体でサンドブラストされた後、超音波浴中で95%のエチルアルコールで約5分間洗浄される。台座部分は、無オイルの圧縮空気源により、入手できないならばヘアドライヤーを用いて、空気乾燥される。
【0022】
2滴の金属発色剤(DRMの#C313)が、撹拌され、ブラシ等の好適な器具を用いて頭部に4〜6層の薄膜を形成しながら付与される。各被膜に空気を吹き付け、過剰の液体を除去して、被膜を穏やかに乾燥する。幾分曇っているかミルク状の外観は十分に被覆されていることを示す。空気乾燥に付された後、台座部分は、約120℃で5分間真空でないオーブンで焼成される。
【0023】
その後、台座部分は、不透明な中性の金属粉末(DRMの#C421)で不透明化される。この工程は、所定のシェード(shade)の付与に必要であり、その他のシェードについては任意である。約2滴の不透明な金属液状物(DRMの#C318)とヘラ先端に盛られた一杯の不透明な中性の金属粉末(DRMの#C421)とが、追加の3工程で液状物に取り込まれる粉末状として採取され、ヘラ状にして平坦なクリーム・ミックスを生成する。一様な被膜を付与した後、台座部分を約120℃で5分間好ましくは真空中で焼成して、接着力を高める。セラモ発色剤(DRMの#B204)を付与して穏やかに空気乾燥する。セラモ発色剤は不透明な2層間に必要である。台座部分は1分間ベンチ冷却され(bench cooled)、第二の金属不透明層を付与ことがない場合、造形液体(DRMの#C312)の薄膜を付与する。
【0024】
適切なシェードを付与する第二の金属不透明層を付与してもよい。第一の金属不透明層の付与におけるように、2滴の不透明な液体が、追加の3工程でヘラ先端に盛られた一杯の不透明な中性粉末に取り込まれ、ヘラ状にして平坦なクリーム・ミックスを生成する。一様な被膜をブラシで付与する。混合の程度は重要でないものの、被膜を素早く付与すべきである。次いで、台座部分を約120℃で5分間真空のオーブンで焼成し、再度の真空は、不可欠でないが、接着力を高めることになる。次に、台座部分を1分間ベンチ冷却した後、セラモ発色剤を付与して穏やかに空気乾燥する。造形液体(DRMの#C312)を付与し、2分間光硬化する。
【0025】
その後、歯冠は下記の4つの付与工程を経て製作される、
a)全歯冠の40%〜70%の不透明歯質;
b)全歯冠の10%〜40%の歯質;
c)全歯冠の15%のエナメル質;および
d)全歯冠の5%の切縁(incisal)。
不透明歯質、歯質およびエナメル質の特異的な同一性は、選ばれる特定のシェードに応じて変化する。一例として、履歴シェードA3について下記の付与法を掲載する。この例で選ばれた切縁は切縁クリアである。
【0026】
付与工程a)において、不透明歯質(DRMのA3−#C338)の扁平な片をガラス板上で軽く叩いて潰し; 空気の内包を避けながら、台座部分全周の歯頸縁に広がる表面に不透明歯質を付与し; この付与を歯冠の厚さの40%〜70%になるまで繰り返し; その後4分間光硬化する。
付与工程b)において、歯質(DRMのA3−#C328)の扁平な片をガラス板上で軽く叩いて潰し; 歯質を不透明層に直接付与して、解剖学的特徴を判別し; 必要に応じて内因性着色剤(intrinsic stains)を混合し; その後2分間光硬化する。
【0027】
付与工程c)において、エナメル質(DRMのA3−#C377)の扁平な片をガラス板上で軽く叩いて潰し; エナメル質を歯質層に直接付与し; 形態(morphology)を成形して、接触部および余白部を付与し; 内因性特徴付けを完成すると、エナメル質を2分間光硬化する。
付与工程d)において、切縁(DRMのClear−#311)をエナメル質に直接付与して、異なった不透明度で特徴付け; 形態を成形して、咬合を調整し; 着色剤のあばた付け、裂溝付け等を行った後、切縁を2分間光硬化する。
【0028】
高級ダイアモンド微粉末でカットされたカーバイド製棘を用いて仕上げが行われ、最終製品の未研磨歯冠を得る。その後、酸化物層および切れ目を除去するシリコーン製ディスク、表面を滑らかにするナイロン製毛ブラシ、および糊付けされた砥ぎ車を用いて、研磨処理が施される。
光硬化およびそれに続く研磨によるように、不透明化された頭部への後の接着のために品質管理された環境において行われることのできる、少なくとも部分的に輪郭合わせされ予め製作された補綴ブランクの形態で、少なくとも、不透明層を補綴材料が収容される頭部に付与することは、本発明の範囲内にある。
【0029】
前記材料は歯科補綴業界において公知であるけれど、かかる材料が、台座部分に直接付与されたことはなく、むしろ、例えば台座に順次連結される特許文献2におけるようなスリーブ・コア上に、歯冠部分を製作するために使用されてきた。
【0030】
現存の一体化された台座歯冠の矯正については、前記のように、必要に応じて存在する材料を低減し、その際95%のエチルアルコールで洗浄して空気乾燥し、セラモ発色剤を付与して乾燥した後、造形液体を付与し、1分間光硬化し、適切な材料を添加することによって、口腔内で行うことができる。かかる矯正は、接触点の追加、歯冠輪郭の変更、変色した柱状体の色彩の修正、隣接ユニットの接合、および、割れ目またはシーティング・ディベット(seating divet)の矯正の必要性に起因することがある。
シーティング・ディベットの矯正に関する最後のパラグラフで暗示したように、指向性装着土台を設けるために、本発明により製作される角度のある一体化された台座歯冠に切り込みを入れることができる。引き続き、補綴の装着後に得られる窪みに再び輪郭付けを行うことができる。
【0031】
前記のように、例えば、隣在歯と彩色的にかつ審美的に同様とすることが可能であるばかりでなく、各種の咀嚼力、歯ぎしりおよび軽い外傷性傷害に耐え得る能力を有することが可能である、セラミックと陶材、ポリマー、ポリセラミック樹脂、ガラス・アイオノマー、および他の複合材料等のセメントを用いることなく、化学的または機械的手段で材料を直接結合または接着することによって、各種の材料を歯冠の製作に使用することができ、これらの材料は、台座部分に十分な結合力を持ちながら、歯冠材料または台座に傷付けることがない手段によって硬化され得る。必要に応じて、選択される具体的な材料に合わせて特定の付与工程が調整されることが、明確に理解されるであろう。
【0032】
本発明は、また、スリーブを必要としないので台座部分の頭部の一部にのみ補綴材料を追加する能力、ならびに、スリーブ型システムでは不可能な台座部分の輪郭の高さ以下に補綴材料を追加する能力を提供する。
本発明は、材料が種々の形態で異なった特徴をもたらす際に使用できる一体化された台座歯冠、ならびに、臨床の実態に合致した寸法を有する台座部分を供与する方法を提供する。
【0033】
本発明の具体例について説明したが、当業者にとって、その変形および修正は自明であろう。例えば、品質管理の方法で予め部分的または完全に製作された好適な補綴材料を台座部分に接着して、補綴の製作の効率および精度を容易にすることができる。前記のように、所望ならば台座に予め棚状部分を形成することもできる。例えば、異なった要件に適合するように、幾つかの標準偏差を用意することができる。この手法は、より容易に管理された高品質の環境で台座の製作を可能にし、歯冠材料の追加を簡便かつより迅速にさせることが可能であろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、上記変更および変形の全てを包含するように、従来技術を考慮に入れて、できるだけ広く解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】特許文献1の教示に従って、連続した歯群に沿って骨切除部位内の植設部材に位置する台座を示す顎の一部切欠き正面断面図。
【図2】破線の歯冠材料で示される本発明の一体化された台座歯冠における台座部分の正面図。
【図3】歯冠材料を台座部分に付与する好ましい方法の工程を示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部、第二端部、および、該第一の端部を通る長手方向軸線を有する植設部材と共に用いる台座であって、
前記植設部材が、前記第一端部を貫通して形成されて長手方向軸線に沿って延在する穴を有し、
前記台座が、柱状部分と頭部の間の中央部分を含み、
該柱状部分が、長手方向軸線を有するとともに、前記植設部材の前記穴内に受容可能であり、
前記中央部分には、比較的大きな直径部分から次第に下方に向かって、中央部分と柱状部分とが合する小直径部分まで延在する滑らかに湾曲した外表面が形成され、
前記頭部は、長手方向軸線を有するとともに、該長手方向軸線に沿って丸みを与えられた自由端まで延在する鼻状部分を有し、
前記中央部分と前記鼻状部分との間に棚状部分が形成されており、該棚状部分が外側部分と内側部分を有し、前記外側部分が前記頭部の長手方向軸線に直角な平面との間で選択された角度を作り、前記内側部分が前記鼻状部分と共に滑らかに湾曲した表面を形成し、
前記棚状部分と前記鼻状部分が、これらの上に設けられる歯冠材料を支持するようになされている台座。
【請求項2】
前記中央部分が外周部を有し、前記鼻状部分の前記自由端と前記棚状部分の前記外側部分との間の距離が、前記中央部分の前記外周部の周囲で事実上一定である請求項1に記載された台座。
【請求項3】
前記中央部分が外周部を有し、前記鼻状部分の前記自由端と前記棚状部分の前記外側部との間の距離が、選択された歯肉輪郭に合わせて前記中央部分の前記外周部の周囲で変化している請求項1に記載された台座。
【請求項4】
前記頭部と前記柱状部分の長手方向軸線が、事実上、同一線上にある請求項1に記載された台座。
【請求項5】
前記頭部と前記柱状部分の長手方向軸線が同一線上にない請求項1に記載された台座。
【請求項6】
前記植設部材の穴に自己保持テーパが形成され、該植設部材の穴に合致して収容される自己保持テーパが台座の前記柱状部分に形成されている請求項1に記載された台座。
【請求項7】
前記柱状部分が、テーパのない円筒形であって、接着媒体によって植設部材に取着可能である請求項1に記載された台座。
【請求項8】
前記台座表面に直接付与される補綴材料の保持力を高めるために、前記頭部に粗面が与えられている請求項1に記載された台座。
【請求項9】
前記台座が補綴材料を更に含み、
該補綴材料が、前記頭部に付設された不透明層を含み、また、後の接着のために前記頭部に合致するように成形された歯形状補綴部片を含み、特別な臨床用に合致するように最終の輪郭づけと研磨に適する請求項1に記載された台座。
【請求項10】
前記頭部に付与される補綴材料を更に含む請求項1に記載された台座。
【請求項11】
台座上に歯冠を形成する方法であって、
前記台座が、柱状部分と頭部の間の中央部分と、内外周辺部を有する棚状部分とを有し、
前記頭部が鼻状部分を有し、
前記棚状部分が、前記中央部分の周囲で、前記鼻状部分と前記中央部分の間に延在している前記台座上に歯冠を形成する方法において、
前記鼻状部分と、前記中央部分の外周部の全体に亘って前記棚状部分とに補綴材料を直接付与して、整形する段階と、
前記補綴材料の外側表面と、隣接部である外表面を研磨する段階とを含む、台座上に歯冠を形成する方法。
【請求項12】
前記補綴材料の付与作業および整形作業に先立って、前記頭部の表面を粗面化して、前記台座に対する前記補綴材料の保持力を向上させる段階を更に含む請求項11に記載された台座上に歯冠を形成する方法。
【請求項13】
前記表面の粗面化作業が、酸化アルミニウム粒子を用いたサンドブラストによって行われたものである請求項11に記載された台座上に歯冠を形成する方法。
【請求項14】
前記棚状部分が、前記鼻状部分と共に滑らかで湾曲した表面を形成する請求項11に記載された台座上に歯冠を形成する方法。
【請求項15】
前記補綴材料が、セラミックと磁器材、ポリマー、ポリセラミック、およびガラス・アイオノマーから成る群から選ばれる請求項11に記載された台座上に歯冠を形成する方法。
【請求項16】
前記補綴材料がポリセラミック材料であり、該ポリセラミック材料を光硬化させる工程を更に含む請求項11に記載された台座上に歯冠を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505649(P2007−505649A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526159(P2006−526159)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028378
【国際公開番号】WO2005/032392
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(503430773)デビー、エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】