説明

しみ部位亢進遺伝子群を指標とした皮膚しみ形成予知方法、皮膚しみ形成抑制剤のスクリーニング方法

【課題】皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法の提供。
【解決手段】表皮中のMLSTD1,MOGAT1,FADS2,FADS1,HSD3B1,ELOVL3,BG1,PECR,FABP7,FA2H,HAO2,ALOX15B,PDE6A,LZTS1,SEC14L4,BAMBI,CIDEA,TERE1,GAL,THRSP,INSIG1,CUTL2から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進している場合、もしくはRBBP6,MSMB,WIF1,ANKRD12,FLG,SYNE2,SCEL,NKTR,AMBPから選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が低下している場合、当該皮膚が、しみ形成し易い皮膚であると判断する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線やホルモンのアンバランス、精神的ストレスなどによりメラノサイト(色素形成細胞)内の酵素チロシナーゼの働きが異常に活性化されると、メラニン色素が次々とつくりだされて周辺の表皮細胞に送られてしまう。メラニン色素のつくりだされるペースが速く、また紫外線等の影響でターンオーバーが正常でなくなると、メラニン色素が外へ排出されず、肌に残ってしまい、その結果肌にしみができてしまうものと考えられる。
【0003】
しみができてしまったら、できるだけ早くその手入れをすることが好ましく、そのために美容技術者による視感(視覚)によるしみの官能評価や、皮膚状態の撮像装置、測色計等の機器を用いるしみの定量的評価により、しみの有無の早期判定が望まれる(特開2003−144393号公報)。
【0004】
一旦しみができてしまうと、その除去は容易ではなく、肌の新陳代謝を良くして不要なメラニンを早く追い出し、余計なメラニンを作らないようにするなどの手入れが必要となる。従って、しみができる前に肌の手入れを行うことが好ましい。しかしながら、しみのでき易さには個体差があり、またその原因となる条件も様々であるため、しみができることを予知することは一般に困難である。よって、しみができる前にしみができ易い状態であるか否かを予知できる手段があればしみ予防対策として極めて有効である。
【0005】
表皮正常部位のサンプルを採取し、それぞれについてNT−3、ADAM9またはHB−EGFを検出することを指標にして上記評価を目指した報告がある(特開2003−245097)。またc―KITやETの阻害を持ってシミ対策を目指した報告がある(特開2004−83551)。しかしシミ生成の複雑な生体病理反応が完全に解明されていないうえ、複数の色素合成刺激経路が知られている現状では、少数の遺伝子に着目してシミ生成の判断をしたり対処をしたりする場合、完全な解決が行えているかは懸念がつきまとう。そこで、広範囲の遺伝子の変動を検出して、それらを診断の指標とする報告が出てきている(特開2004−205246)。ただしこの報告は皮膚への日光暴露による変動遺伝子をSAGE法という方法で検出したもので、シミ自体への広範な解析に基づく判断や対処方法の確立が求められていた。
【0006】
そこで我々は、シミモデルマウスのシミ部位と正常部位をマイクロアレイにより比較することにより、シミ部位特徴的な慢性炎症状態をつきとめた(特開2005−106745、特開2005−110505)。そして今回ヒトにおいて典型的なしみの一つである、老人性色素斑部位と正常部位の比較により、前記特徴に加え、シミ部位での皮脂腺関連遺伝子の亢進、角化関連遺伝子の抑制などを見出した。
【0007】
【特許文献1】特開2003−144393号公報
【特許文献2】特開2003−245097号公報
【特許文献3】特開2004−83551号公報
【特許文献4】特開2004−205246号公報
【特許文献5】特開2005−106745号公報
【特許文献6】特開2005−110505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は上記問題を鑑み、肌にしみができる前に肌がしみのでき易い状態であるか否かを予知できる手段を提供できるかを鋭意検討した。そして、本発明者は老人性色素斑部位と正常コントロール部位の11例の表皮及び真皮上層由来のRNAのマイクロアレイ解析の結果、老人性色素斑部位において下記の遺伝子の発現が特異的に亢進または抑制されていることを見出した。従って、ヒトの皮膚において、下記の遺伝子の発現を調べることで、しみ形成し易い皮膚であると判断することが可能であることが明らかとなった。
【0009】
(1)脂質関連の亢進遺伝子
【表1】

【0010】
(2)情報伝達関連の亢進遺伝子
【表2】

【0011】
(3)発現抑制遺伝子群
【表3】

【0012】
上記遺伝子のいずれも、皮膚色素関連の報告は存在しない。従って、しみとの関係でこれら遺伝子の発現が亢進又は抑制されることは極めて驚くべき事実である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の観点において、本発明は皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法を提供する。この方法は、皮脂腺系遺伝子が、表皮中の遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進している場合、しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする。ここで、しみとは、皮膚に現われる茶褐色ないし濃褐色の平面状斑紋をいう。なかでも今回表記するしみは、主に老人性色素斑をさす。
【0014】
好適な態様において、皮脂腺系遺伝子の内の発現の亢進される表皮中の遺伝子は表1から成る群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子である。
【0015】
第二の観点において、本発明は皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法であって、表2から成る群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進している場合、しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする方法を提供する。
【0016】
第三の観点において、本発明は皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法であって、表3の発現が正常な表皮中の発現に比べて低下している場合、しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする方法を提供する。
【0017】
好適な態様において、上記表皮中の遺伝子の発現の変動は、表皮中の前記タンパク質の量を測定することにより決定される。
さらに好適には、上記測定は上記タンパク質に特異的な抗体を利用するELISA法又はRIA法により行われる。
別の好適な態様において、上記表皮中の前記遺伝子の発現の変動は、表皮から抽出された前記タンパク質をコードするmRNAの量を測定することにより決定される。好ましくは、上記mRNAの測定はポリメラーゼ連鎖反応法により行われる。
【0018】
第四の観点において、本発明は皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子をスクリーニングする方法であって、候補化合物を上記遺伝子の発現及び/又はその遺伝子産物たるタンパク質の活性を阻害又は亢進する能力について評価し、当該阻害又は亢進能力を有するインヒビター又はアクチベーターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として選定することを特徴とする方法を提供する。
【0019】
好適な態様において、この方法は上記阻害又は亢進能力を有するインヒビター又はアクチベーターを皮膚モデルに適用し、皮膚しみ形成抑制及び/又は皮膚しみ除去効果を有する薬剤を選定することを含んで成る。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上述の通り、上記遺伝子に関し皮膚色素関連の報告は存在しない。本発明者は老人性色素斑部位と正常部位各々の皮膚由来のRNAのマイクロアレイ解析の結果、非しみ部位と比べ、しみ部位の表皮において上記各遺伝子の発現が特異的に亢進もしくは抑制されていることを見出した。従って、これら遺伝子を遺伝子を指標とすることで、皮膚しみ形成を予知することができるものと推認できる。
【0022】
皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法
本発明は、皮膚、好ましくはヒト皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法を提供する。この方法は、対象表皮における表1、2、3から成る群から選ばれる遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進もしくは低下している場合、しみ形成のし易い皮膚であると判断することを特徴とする。その評価基準として、例えば表皮中の上記遺伝子の発現がコントロール表皮中のそれらと比べ10%以上、又は20%以上、又は30%以上、又は50%以上、又は70%以上、又は100%以上亢進していたなら「しみ形成のし易い皮膚である」と判断する、としてよい。
【0023】
検査すべき皮膚は、例えば顔、首、腕、肢、背中など、しみができやすく、またしみ形成の気になるあらゆる部分の表皮であってよい。しみ形成のない正常表皮、即ちコントロール表皮としては、例えば同一個体のシミの近傍正常部や、紫外線に曝されにくく、比較的しみのできにくい部位の表皮、例えば腹部、臀部の表皮であってよい。表皮からサンプルを採取する方法は、検出対象や検出方法の種類に応じて定法に従って採取すればよく、好ましくはバイオプシの手法に準じて採取する。
【0024】
表皮中の上記遺伝子の亢進又は抑制は、例えば表皮中の当該遺伝子によりコードされるタンパク質の量を測定することにより決定される。好ましくは、この測定は上記タンパク質に特異的な抗体を利用し、当業界において周知の方法、例えば蛍光物質、色素、酵素等を利用する免疫染色法、ウェスタンブロット法、免疫測定方法、例えばELISA法、RIA法等、様々な方法により実施できる。また、表皮からRNAを抽出し、当該遺伝子をコードするmRNAの量を測定することにより決定することもできる。mRNAの抽出、その量の測定も当業界において周知であり、例えばRNAの定量は定量ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により行われる。
【0025】
表皮中の上記遺伝子に対し高ストリンジェント条件下でハイブリダイゼーション可能なポリヌクレオチドの発現は、表皮からRNAを抽出し、上記ポリヌクレオチドに対応するmRNAの量を測定することにより決定することもできる。mRNAの抽出、その量の測定も当業界において周知であり、例えばRNAの定量は定量ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により行われる。
【0026】
上述の通り本発明は、しみ部位及び非しみ部位の各々の皮膚由来のRNAのマイクロアレイ解析の結果、非しみ部位と比べ、しみ部位の表皮において上記遺伝子の発現が特異的に亢進もしくは抑制されていることを見出したことに基づく。従って、表皮中の上記遺伝子の発現及び/もしくはその遺伝子産物たる上記タンパク質の活性を抑えるもしくは亢進することを指標として、皮膚のしみ形成を抑える及び/又は形成されたしみを除去することができる薬剤の開発が行えるものと推認される。
【0027】
従って、本発明は上記遺伝子の発現を阻害するインヒビターもしくは亢進するアクチベーターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として含んで成る医薬又は皮膚外用組成物を提供する。本発明に係る組成物は皮膚のしみ形成を予防又はしみを除去することができる。
【0028】
本発明の医薬又は皮膚外用組成物は、例えば水溶液、油液、その他の溶液、乳液、クリーム、ゲル、懸濁液、マイクロカプセル、粉末、顆粒、カプセル、固形剤等の形態で適用される。従来から公知の方法でこれらの形態に調製したうえで、ローション製剤、乳液剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾール剤、水−油2層系、水−油−粉末3層系、注射剤、内服剤(錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等)、坐剤等として、身体に塗布、貼付、噴霧、注射、飲用、挿入することができる。当該組成物は上記インヒビターもしくはアクチベーターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として、特に限定することなく、組成物全量に基づき例えば0.001mM〜1M、好ましくは0.01〜100mM、より好ましくは0.1〜10mM程度含有するであろう。
【0029】
これらの剤型の中でも、ローション製剤、乳液剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾール剤等の皮膚外用剤が、本発明の目的に適する剤型である。なお、ここで記す皮膚外用剤には、医薬品、医薬部外品(軟膏剤等)、化粧料[洗顔料、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧品;ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧品;口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等]が含まれる。特に本発明の医薬又は皮膚外用組成物は、しみ予防の化粧料としての適用が好適である。
【0030】
本発明の医薬又は皮膚外用組成物においては、所望する剤型に応じて従来公知の賦形剤や香料等をはじめ、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料等の粉末成分、紫外線防御剤、保湿剤、酸化防止剤、pH調整剤、洗浄剤、乾燥剤、乳化剤等が適宜配合される。さらにこの他の薬効成分を本発明の医薬又は皮膚外用組成物に配合することは、その配合により所期の効果を損なわない範囲内で可能である。
【0031】
皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子をスクリーニングする方法
本発明はさらに、皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子をスクリーニングする方法も提供する。この方法は、候補化合物を上記遺伝子の発現及び/もしくその遺伝子産物たる上記タンパク質の活性を抑える阻害又は亢進能力について評価し、当該阻害能力を有するインヒビターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として選定することを特徴とする。
好適な態様において、上記スクリーニング方法は更に、上記阻害又は亢進能力を有するインヒビターもしくはアクチベーターを皮膚モデルに適用し、皮膚しみ形成抑制及び/又は皮膚しみ除去効果を有するインヒビターもしくはアクチベーターを選定することを含んで成る。
【0032】
上記インヒビターもしくはアクチベーターの皮膚しみ形成抑制及び/又は皮膚しみ除去効果についての確認する工程はこのインヒビターもしくはアクチベーターを皮膚モデル、例えば、皮膚細胞単層培養、共培養、3次元培養、しみモデルマウス(特願2003−343549)を利用して実施することができる。好適な態様においては、このインヒビターもしくはアクチベーターの溶液、例えば水溶液を調製してから皮膚しみモデル動物の皮膚に繰り返し塗布し、しみの形成を評価することで、上記効果の有無を判定することができる。
【0033】
以下、具体例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
老人性色素斑サンプル
老人性色素斑はインフォームドコンセントを行った40代以上の男性のボランティア16名の背中にあるシミのうち、老人性色素斑を皮膚科医の鑑別により選定し、表皮及び真皮上層を局所麻酔下3mmバイオプシにより採取した。採取に当っては資生堂倫理委員会によるガイドラインに従った。
【0035】
皮膚からのRNA採取
老人性色素斑及びコントロールとして近傍正常部及び臀部より採取した皮膚片を液体窒素で凍結し破砕後、ISOGEN(日本ジーン社、メーカー推奨プロトコル)によりRNAを抽出、RNeasy(Qiagen社)により精製した。RNAはバイオアナライザー(アジレントテクノロジー社)で電気泳動し、品質、精製度を確認した。
【0036】
マイクロアレイ用サンプルの反応
サンプルの調製及びハイブリダイゼーションはアジレント社推奨プロトコルに準じた。トータルRNA100〜300ngから、Low RNA Input リニア増幅&ラベル化キット(アジレント社)を用いてラベルcRNAを合成した。RNeasy(Qiagen社,メーカー推奨プロトコル)にて精製後、Whole Human Genomeオリゴアレイ(アジレント社、G4112A)とハイブリダイゼーション、洗浄し、アジレント社スキャナーによりデータ読み取りを行った。
【0037】
解析結果
約40000種の遺伝子の発現を網羅的に解析した結果、老人性色素斑皮膚においては9例の臀部の非露光部コントロールと比べると、メラノサイト関連遺伝子の亢進に加えて、炎症系の遺伝子の亢進が特徴的であった。このシミ/非露光部の比較はシミモデルマウスでの解析に相当し、結果も合致したものとなった。次に老人性色素斑近傍の正常部との11例の比較においてはメラノサイト関連、炎症系遺伝子等各種亢進遺伝子とともに、表1,2に示したような脂質関連遺伝子や情報伝達系遺伝子の発現の亢進と、表3に示したような角化関連遺伝子を含む遺伝子群が抑制されていることが特徴的であった。
【0038】
脂質系亢進遺伝子の皮膚での発現分布を調べるためin situハイブリダイゼーションを行った(図1)。マイクロアレイ解析で亢進していた脂質系遺伝子のうち調べたFADS2, ALOX, ZAP128は、表皮での発現が認められ、かつシミ部位での亢進傾向が確認された。
【0039】
発現低下遺伝子の中で多数を占めていた角層構成タンパクのうち、顆粒層で発現するフィラグリン及びインボルクリンの皮膚内での発現分布を免疫染色により調べた(図2)。シミ部位でこれらタンパクの発現低下傾向が確認された。
【0040】
角層構成タンパクの低下から角層自体の変化が予想されたため、角層を可視化してその枚数を数えた(図3)。その結果シミ部位で角層枚数が多いことが示された。これは角層剥離の低下を示している。角層構成タンパクと角層剥離の低下からケラチノサイトの分化の低下が示唆された。
【0041】
そこでケラチノサイトの増殖はどうか見たところ(図4)シミ部位基底層で明らかに増殖細胞が少ないことが観察された。これらはほとんどが基底層のケラチノサイトと考えられる。つまりケラチノサイトの増殖低下、角層形成と剥離の低下がシミ部位で起き、結果としてターンオーバーの低下が生じていると考えられる。これに加え、シミ部位では脂質系の遺伝子の過剰亢進が起き、ケラチノサイトの分化異常が生じていると考えられる。このような状況に加え、露光部位で特徴的だった慢性炎症傾向によるメラノサイトの刺激などが加わり、メラニンの過剰生産、ターンオーバーの低下によるメラニン滞留が生じ、色素沈着が形成されていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】脂質系亢進遺伝子の皮膚での分布in situハイブリダイゼーションによる脂質系亢進遺伝子のシミ部位と近傍正常部位での発現差分布の結果を示す。白矢印部分の紺色がシグナルの検出された表皮部位。各遺伝子ともシミ部位の表皮で亢進傾向があることが示されている。
【0043】
【図2】角層構成タンパクの皮膚内での分布蛍光免疫染色による角層構成タンパクのシミ部位と近傍正常部位での発現差分布の結果を示す。白矢印部分の緑色がシグナルの検出された顆粒層部位。各遺伝子ともシミ部位の表皮で低下傾向があることが示されている。
【0044】
【図3】角層枚数の比較角層をサフラニン染色後、アルカリで膨潤させて可視化し、角層枚数を数えた結果を示す。写真はその一例を示している。6サンプルの各4箇所ずつの角層枚数の平均値をグラフに示した。シミ部位では近傍正常部位と比べ角層枚数が多いことが示されている。
【0045】
【図4】増殖細胞の数の比較分裂期の細胞を特異的に染色するKi-67抗体によってシミ部位と近傍正常部位での分裂細胞を比較した結果を示す。3例の蛍光免疫染色写真が示されておりシミ部位で陽性細胞が少ないことが示されている。この蛍光がメラニンによってマスクされているのではないことを示すため、透過光像との結合写真が示されている。さらに組織1mmあたりの陽性細胞数を数え、グラフにまとめてある。その平均値は有意にシミ部位で増殖細胞が少ないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法であって、MLSTD1,MOGAT1,FADS2,FADS1,HSD3B1,ELOVL3,BG1,PECR,FABP7,FA2H,HAO2,ALOX15Bから成る群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進している場合、しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする方法。
【請求項2】
皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法であって、PDE6A,LZTS1,SEC14L4,BAMBI,CIDEA,TERE1,GAL,THRSP,INSIG1,CUTL2から成る群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて亢進している場合、しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする方法。
【請求項3】
皮膚しみ形成を予知するための皮膚検査方法であって、RBBP6,MSMB,WIF1,ANKRD12,FLG,SYNE2,SCEL,NKTR,AMBPから成る群から選ばれるタンパク質をコードする遺伝子の発現が正常な表皮中の発現に比べて低下している場合しみ形成し易い皮膚であると判断することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記表皮中の前記遺伝子の発現の亢進が、表皮から抽出された前記タンパク質をコードするmRNAの量を測定することにより決定される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子をスクリーニングする方法であって、候補化合物を請求項1〜2のいずれか1項に規定する遺伝子の発現及び/又は当該遺伝子のタンパク質産物の活性を阻害する能力について評価し、当該阻害能力を有するインヒビターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として選定することを特徴とする方法。
【請求項6】
更に、前記阻害能力を有するインヒビターを皮膚モデルに適用し、皮膚しみ形成抑制及び/又は皮膚しみ除去効果を有するインヒビターを選定することを含んで成る、請求項5記載の方法。
【請求項7】
皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子をスクリーニングする方法であって、候補化合物を請求項3に規定する遺伝子の発現及び/又は当該遺伝子のタンパク質産物の活性を亢進する能力について評価し、当該亢進能力を有するアクチベーターを皮膚しみ形成抑制因子及び/又は皮膚しみ除去因子として選定することを特徴とする方法。
【請求項8】
更に、前記亢進能力を有するアクチベーターを皮膚モデルに適用し、皮膚しみ形成抑制及び/又は皮膚しみ除去効果を有するアクチベーターを選定することを含んで成る、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−289063(P2007−289063A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120479(P2006−120479)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】