説明

しわ又はたるみの予防又は改善剤

【課 題】新たなしわ又はたるみの予防又は改善剤を提供する。
【解決手段】パラオ共和国のウルクタープル島の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ又はたるみの予防又は改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ及び/またはたるみの予防又は改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
老化による皮膚の形態的変化の代表とも言える皺やたるみは、中高年女性層の大きな関心事である。皮膚は外側から角層、表皮層、基底膜及び真皮より構成されており、真皮はその中でも最も領域の広い部分である。この真皮は、90%以上をコラーゲンが占めており、コラーゲンの皺やたるみに及ぼす影響は大きい。特に光老化では、生理的老化皮膚に比べてコラーゲン量が著しく減少しており、これが皺やたるみの大きな原因と考えられている(辻卓夫、フレグランスジャーナル、17(1)、34−39(1989))
老化による肌の皺やたるみは、主に、紫外線により真皮中のコラーゲンやエラスチンが変性したり、破壊されることにより生じる。従来、皺やたるみの解消術として、皮膚にコラーゲンを注入する方法が採用されているが、注入されたコラーゲンは皮膚から速やかに消失してしまう。また、本人の幹細胞から得た線維芽細胞を皮膚に移植する治療も試みられているが、移植された線維芽細胞は定着し難い。
【0003】
コラーゲンは、真皮中の線維芽細胞により生産される。このため、近年、皺やたるみを解消する化粧品成分として、真皮中の線維芽細胞の増殖を促進する天然成分の探索が盛んに行われている。このような天然成分としては、クロレラ水抽出物、アロエベラ抽出物、ウチワサボテン抽出物、キョウニン抽出物、パッションフラワー抽出物などの植物成分が多く報告されている。
【0004】
ここで、パラオ共和国のウルクタープル島にある白色の海泥の熱水、熱アルコール、又は熱水と熱アルコールとの混液による抽出物がチロシナーゼ阻害活性を有することが報告され、皮膚外用剤への応用が試みられている(特許文献1、特許文献2参照)。また、造礁サンゴの化石であるコーラルサンドを含有する化粧品パック料は皮膚の艶、湿潤感、清浄感、透明感を向上させることが報告されている(特許文献3参照)。しかし、これらの文献には、皮膚のしわ又はたるみに対する上記海泥抽出物の作用は一切記載されていない。
【特許文献1】特開2002−338452号公報
【特許文献2】特開2005−281228号公報
【特許文献3】特開2000−344654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たなしわ又はたるみの予防又は改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物がしわ又はたるみの予防又は改善剤として好適であることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のしわ又はたるみの予防又は改善剤を提供する。
項1. 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤。
項2. 溶媒が熱溶媒である項1に記載の剤。
項3. 溶媒が、水、エタノール、又は水とエタノールとの混液である項1又は2に記載の剤。
項4. 真皮中のコラーゲン量を増やすことによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項5. 線維芽細胞の増殖促進によりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項6. 真皮中のコラーゲンゲルの収縮を促進することによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項7. 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を、その乾燥重量に換算して、全体に対して0.001〜20重量%含む項1〜6のいずれかに記載の剤。
【発明の効果】
【0007】
コラーゲンは結合組織の基質の主成分で、動物の真皮、腱、軟骨などに繊維状で存在し、集合して膠原線維を形成する。本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤の有効成分である海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物は、真皮中のコラーゲン量を増加させる効果に優れる。老化による皮膚の形態的な変化である皺やたるみは、真皮中のコラーゲン量が減少することによって生じる為、本発明の剤はコラーゲンの減少に伴う皺やたるみの発生を防止したり、すでに生じた皺やたるみの改善に好適である。
【0008】
線維芽細胞(本発明において、「線維芽細胞」には、「繊維芽細胞」と表記されるものも含まれる。)は主に皮膚、特に真皮に存在して、コラーゲン合成を促進し、またコラーゲン線維を束にすることにより真皮構造を形成する役割を果たす細胞である。本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤の有効成分である海泥抽出物は、皮膚に発生した癌細胞や前癌状態の細胞の増殖を促進しない範囲で線維芽細胞の増殖を促進することができる。このため、皮膚癌の副作用を生じることなく、肌に張りや弾力を与え、皺やたるみを効果的に防止又は改善することができる。なお、細胞の増殖のメカニズムは細胞の種類によって異なり、いずれの細胞を増殖させることができるかは一般に予測し難いことである。
【0009】
また、本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤の有効成分である海泥抽出物は、線維芽細胞によるコラーゲンゲルの収縮を促進させる効果を有する。皮膚中では線維芽細胞がコラーゲン繊維を引き寄せることにより、皮膚の張りが保たれると考えられる。線維芽細胞がコラーゲン線維を引き寄せることは、皮膚に張りや弾力を与え、皺やたるみの発生の防止又は改善効果につながる。
【0010】
このように海泥抽出物は、線維芽細胞によるコラーゲン生成促進作用とコラーゲンゲル収縮促進作用を併せ持つことから、本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は化粧品用途として好適に使用でき、肌に張りを与えるための化粧品用途にも好適に使用できる。
【0011】
また、本発明の線維芽細胞増殖促進剤は、皮膚のメラニン色素量を低下させつつ、肌に張りや弾力を与え、皺を防止又は解消することができる。このため、肌が着色することなく、肌に張りや弾力を与え、皺を防止又は解消することができる。
また、本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、線維芽細胞に1回接触させるだけでこの細胞の増殖を促進し、コラーゲン生成を促進し、コラーゲンゲルを収縮させることができるため、1日に1〜2回の使用が前提となる化粧品用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
海泥
本発明において、「海泥」はパラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイ(Milky Way)にある白色の海泥(White Clay)を指す。「ミルキーウェイ」はパラオ共和国の湾の正式な地名であり、湾内にあるひょうたん型の島で区切られた領域の内側がミルキーウェイに該当する。ミルキーウェイの湾内の海中に堆積している鉱物類は単一色の白い泥だけである。その他に海中に存在しているものがあるとすれば植物の破片のようなものだけであり、白泥と紛らわしい鉱物類は一切存在しない。また、海岸線は岩盤で形成されており、海岸線と堆積した白泥との間には白泥と紛らわしい鉱物類は一切存在しない。さらに、白泥の堆積領域はひょうたん型の島で区切られた外側にも広がっているので、ミルキーウェイの海中を掬えば白色の海泥だけが採取される状態である。
この海泥を採取し、必要により水で洗浄して夾雑物を除き、必要により加熱滅菌したものを使用することができる。なお、この海泥は、サンゴ等が化石化して堆積されたものと考えられている。
この海泥の採取については、パラオ共和国から採取許可を得ているパシフィックサンライズ社から分譲が可能である。また、直接、パラオ共和国に採取許可を申請し採取することも出来る。
【0013】
抽出物
本発明で使用される海泥の抽出物は、海泥を、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒により抽出したものである。以下、この抽出物を「海泥溶媒抽出物」と略称することがある。抽出に用いる溶媒は、水、又は水とエタノールとの混液が好ましく、水がより好ましい。また、溶媒は熱溶媒であることが好ましい。また溶媒の沸点を超えない範囲で、できるだけ高い温度が好ましい。抽出溶媒として水を用いる場合の水の温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃程度がさらにより好ましい。また、抽出は1時間以上とすればよく、好ましくは1時間程度とすればよい。抽出の際の溶媒の使用量は、海泥1重量部に対し2〜10重量部程度が好ましく、3〜5重量部程度がより好ましい。
このようにして得られる海泥溶媒抽出液は、そのまま又は濃縮して使用することができる。また、ろ過により不溶物を除去したものをそのまま又は濃縮して使用してもよい。さらに、ろ液を自然乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライ法等により乾燥した乾燥品を使用してもよい。液体化粧品にする場合に濁りがないことが好ましいため、海泥溶媒抽出液のろ液又はその乾燥品が好ましく、ろ液の乾燥品がより好ましい。
【0014】
製剤
本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、海泥溶媒抽出物を配合した化粧品(薬事法が定める薬用化粧品も含む)、又は皮膚外用剤の形態にすることができる。
化粧品の形態は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、パックのような顔用の基礎化粧品;メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、ファンデーション(乳液状、クリーム状、又は軟膏型)のようなメイク下地化粧品;アイカラー、チークカラー、リップカラーのようなメイクアップ化粧品;ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローションのような身体用化粧品などの形態にすることができる。このような肌に塗る形態の他、入浴剤、ボディソープ、石鹸等の形態とすることもできる。本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、特に顔用の基礎化粧品の形態とすることが好ましい。
【0015】
肌に塗るタイプの化粧品とする場合は、公知の化粧品製造方法で、海泥の上記溶媒による抽出物を化粧品に含有させることにより製造することができる。例えば、液体状又は乾燥品の海泥溶媒抽出物を水や化粧品基剤に溶解させ、又はこれらと混合することにより製造することができる。
化粧品基剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤、油剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、香料、保湿剤、生理活性成分、紫外線吸収剤、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、中和剤・pH調整剤、昆虫忌避剤、及び酵素等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
陰イオン性界面活性剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような陰イオン性界面活性剤として、アルキル硫酸塩、ココイルメチルタウリン塩、脂肪酸塩、ヤシ油脂肪酸又はその塩、アルキルリン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸塩又は硫酸塩等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
両性界面活性剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような両性界面活性剤として、アルキルベタイン、ホスホベタイン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、これらのリゾ体、及びホスファチジン酸又はその塩等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
【0017】
非イオン性界面活性剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような非イオン性界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸は、代表的には炭素数12〜18の脂肪族飽和脂肪酸が挙げられる。
【0018】
増粘剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような増粘剤として、アクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、セルロース、ケラチン、コラーゲン又はその誘導体(イソステアロイル加水分解コラーゲンなど)、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ポリビニルアルコール、ローメトキシルペクチン、グァーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、天然ゴムラテックス、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、及びデキストラン等が挙げられる。
【0019】
油剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような油剤として、セタノール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノールのような高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸のような脂肪酸;ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、パルミチン酸セチル、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルのようなエステル類;ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、分岐脂肪酸コレステリルのようなコレステロールエステル;流動パラフィン、ワセリン、スクワランのような炭化水素;ラノリン、還元ラノリンのようなラノリン類;水素添加大豆リン脂質のようなリン脂質;ミツロウ、カルナバロウのようなロウ;ホホバ油、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油のような油脂、;及びメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンのようなシリコーン油等が挙げられる。
【0020】
粉体は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような粉体として、例えば赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキのようなレーキ色素;ナイロンパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末のような樹脂;黄酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青のような有色顔料;酸化亜鉛、酸化チタンのような白色顔料;タルク、マイカ、セリサイト、カオリンのような体質顔料;雲母チタンのようなパール顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウムのような金属塩;シリカ、アルミナのような無機粉体;ベントナイト;スメクタイト;及び窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状は特に限定されず、球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等の形状にすることができる。
【0021】
保湿剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような保湿剤として、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール200〜600、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、マルチトール、及びマンニトール等が挙げられる。
【0022】
生理活性成分は、海泥溶媒抽出物による本発明の効果を阻害しないものであれば、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような生理活性成分として、グリチルリチン酸又はその塩、塩酸ジフェンヒドラミン、胎盤抽出物、アルブチン、コラーゲン、アラントイン、及びdl−α−トコフェロール等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
溶媒は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような溶媒として、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル、精製水、及び低級アルコール等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような紫外線吸収剤として、オキシベンゾン、サリチル酸フェニル、シノキサート、及び2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0023】
酸化防止剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような酸化防止剤として、カテコール、酢酸dl−α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
キレート剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このようなキレート剤として、エデト酸又はその塩類、クエン酸又はその塩等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
【0024】
防腐剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような防腐剤として、安息香酸及びその塩類、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルクレゾール、クロルフェネシン、クロロブタノール、ソルビン酸又はその塩類、デヒドロ酢酸又はその塩類、パラオキシエチレン安息香酸エステル、ハロカルバン等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
中和剤・pH調整剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような中和剤・pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられる。
昆虫忌避剤としては、ジエチルトルアミド等が挙げられる。
酵素としては、塩化リゾチーム等が挙げられる。
【0025】
皮膚外用剤とする場合の剤型は特に限定されず、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等の公知の剤型とすることができる。
また、入浴剤とする場合の剤型は特に限定されず、系散剤、顆粒剤、錠剤、軟カプセル剤、液剤などの公知の剤型とすることができる。
また、ボディソープ、石鹸等とする場合の形態は特に限定されず、固体、液体、ジェル状などの公知の形態とすることができる。
【0026】
化粧品(入浴剤、ボディソープ、石鹸等を除く)とする場合の海泥溶媒抽出物の含有比率は、乾燥重量に換算して、化粧品全体に対して、0.001〜20重量%程度が好ましく、0.01〜5重量%程度がより好ましい。上記範囲であれば、通常1日1〜2回塗布される化粧品の通常塗布量(通常肌に塗られる化粧品量)で、皮膚のしわ及び/またはたるみの予防又は改善効果を発揮して、肌に張りを与え、皺を予防、改善又は解消することができる。また上記範囲であれば、メラノサイトの増殖によるメラニン色素の沈着や、皮膚癌の発症を回避することができる。
【0027】
また、皮膚外用剤とする場合の海泥溶媒抽出物の含有比率も、上記と同様の範囲とすることができる。入浴剤とする場合の海泥溶媒抽出物の含有比率は、乾燥重量に換算して、使用時の湯水の全体に対して、0.001〜20%(w/v)程度となる量が好ましく、0.01〜5%(w/v)程度となる量がより好ましい。ボディソープや石鹸とする場合の海泥溶媒抽出物の含有比率は、乾燥重量に換算して、0.001〜20重量%程度となる量が好ましく、0.01〜5重量%程度となる量がより好ましい。
【0028】
使用対象
本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、どのような年齢の人でも使用できるが、特に、しわやたるみを有する例えば40歳以上の中高年齢の人が好適に使用できる。また、健常人の他、皮膚(特に真皮)に損傷を受けた人も好適に使用できる。
【0029】
本発明にいう予防は、しわやたるみを完全に抑えることのほか、しわやたるみの症状の進行を抑制することを含み、改善は、しわやたるみを完全に解消することのほか、症状を軽減することを含む。
【0030】
本願発明は、産業の振興を企図するパラオ共和国からの提案により、海泥を研究した結果、完成されたものである。本発明において使用する海泥をパラオ共和国で採取する時には、現地のダイバー等に案内や採取を依頼するため、海泥の利用によって生じる利益はパラオ共和国へも還元されている。
【0031】
実施例
以下、本発明の実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ヒト線維芽細胞に対する作用の検討
<海泥溶媒抽出物の調製>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥を採取したもの(パシフィックサンライズ社)を、1時間静置して上澄みをデカンテーションにより除去した。次いで、沈殿物を水で洗浄し1時間静置して上澄みをデカンテーションにより除去する操作を2回行った。これにより、採取した泥に混入していた植物の葉などの夾雑物が除去された。このようにして得られた白泥1kgに、精製水3Lを加え、100℃で1時間加熱した後、2号ろ紙を用いてろ過した。ろ液を、減圧濃縮後、凍結乾燥して、海泥溶媒抽出物とした。海泥に対する溶媒抽出物の収率は1.5%であった。
【0032】
<ヒト線維芽細胞に対する作用の確認>
上記操作で得られた海泥溶媒抽出物を、濃度3.2mg/mL(乾燥重量)になるようにD−MEM培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mLペニシリン、及び100μg/mLストプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物濃度3.2mg/mL、1.6mg/mL、及び0.8mg/mLの3段階の溶液を調製した。
ヒト新生児線維(繊維)芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)をD−MEM培地で37℃で48時間培養したものをトリプシン処理してD−MEM培地に5×10個/mLになるように懸濁した懸濁液を、96穴プレートに100μLづつ播種した。各ウェルに海泥溶媒抽出物溶液を100μL添加し、37℃で44時間培養した。各ウェルの細胞懸濁液中の海泥溶媒抽出物最終濃度は1.6mg/mL、0.8mg/mL、及び0.4mg/mLの3段階である。対照ウェルには、海泥溶媒抽出物溶液に代えてD−MEM培地を100μL添加し、同様にして培養した。各抽出物濃度及び対照をそれぞれ3セット設けた。
各ウェルにMTT試薬(リン酸緩衝液-食塩水に最終濃度5mg/mLとなるように3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミドを溶解させたもの)を20μL加え、さらに4時間培養した。上澄み液を吸引除去した後、青色に着色した細胞が残ったウェルに0.04N HCl含有2−プロパノール200μLを添加して細胞を溶解し、溶解物の波長570nmにおける吸光度を測定した。
MTT試薬は、細胞内に取り込まれ還元されて青色発色物質に変換される試薬であることから、MTT試薬と反応させた後の細胞の溶解液の570nmにおける吸光度は生細胞数に比例する。対照細胞の上記吸光度に対する、海泥溶媒抽出物と接触させた細胞の上記吸光度の相対値は、生細胞数の相対値を示す。各濃度の海泥溶媒抽出物と接触させた場合の線維芽細胞の生細胞数の相対値、及び570nmにおける吸光度を以下の表1に示す。
【表1】

【0033】
<結果>
表1から、海泥溶媒抽出物は、ヒト線維芽細胞の増殖を用量依存的に促進したことが分かる。また、570nmにおける吸光度は、海泥溶媒抽出物濃度1.6mg/mlの場合に対照に比べて有意に高かった(p<0.01)。
【0034】
(2)ヒト線維肉腫細胞に対する作用の検討
(1)において、ヒト新生児線維芽細胞NB1RGBに代えて、ヒト線維(繊維)肉腫細胞HT1080を用いた他は、(1)と同様の操作を行った。線維肉腫細胞は線維芽細胞が癌化した細胞であり、皮膚癌細胞として一般的なものである。細胞ヒト線維肉腫細胞HT1080は、財団法人HSRRBから購入した。
<結果>
各濃度の海泥溶媒抽出物と接触させた場合のヒト線維肉腫細胞の生細胞数の相対値、及び570nmにおける吸光度を以下の表2に示す。
【0035】
【表2】

表2から、海泥溶媒抽出物は、ヒト線維肉腫細胞の増殖を促進しないことが分かる。
【0036】
(3)コラーゲン生成促進作用の検討
<海泥溶媒抽出物の調整>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、(1)と同様の操作により海泥溶媒抽出物を抽出した。最終濃度が6.4mg/mLになるようにD−MEM培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。その後、D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物最終濃度6.4mg/mL、3.2mg/mL、1.6mg/mL、及び0.8mg/mLの4段階の溶液を調製して使用した。
【0037】
<コラーゲン生成促進作用の確認>
ヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)を用いて検討した。
即ち、NB1RGB細胞をD−MEM培地(10%ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に4×10個/mLになるように懸濁し、48穴プレートに200μLずつ播種した。各濃度に調製した海泥溶媒抽出物を200μL添加し、48時間培養後、培養上清液200μLをペプシン処理した後、ビオチン標識ヒトI型コラーゲン抗体を用いた競合EIA法(ヒトI型コラーゲンELISA定量キット;コスモバイオ(株))によって定量した。
【0038】
<結果>
結果を以下の表3に示す。
【表3】

海泥溶媒抽出物は、用量依存的にヒト線維芽細胞培養液中のコラーゲン生成を促進させることが確認された。
【0039】
(4)線維芽細胞によるコラーゲンゲル収縮促進作用の検討
<海泥溶媒抽出物の調整>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、(1)と同様の操作により海泥溶媒抽出物を抽出した。最終濃度が4.0mg/mLになるようにD−MEM培地(0%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。その後、D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物最終濃度0.8mg/mL、0.4mg/mL、0.2mg/mL、及び0.1mg/mLの4段階の溶液を調製して使用した。
【0040】
<線維芽細胞コラーゲンゲル収縮促進作用の確認(1)>
0.3%コラーゲン溶液(フナコシ株式会社、IAC−03);5倍量D−MEM培地(シグマアルドリッチ(株));50mM 水酸化ナトリウム、260mM 炭酸水素ナトリウム、200mMHEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)溶液の7:3:1混液を氷冷しながら混合しコラーゲンゲルを作成した。
このコラーゲンゲル溶液にヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)を1×10個/mLとなるように懸濁し、24穴プレートに400μLずつ播種した。37℃、5%COの条件下で30分間培養後、上記のようにして調製した海泥溶媒抽出物を400μL添加し、コラーゲンゲルをプレートから剥離した。15日間、21日間、及び35日間培養後、コラーゲンゲルの直径を測定し以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率=[(B+C)/2A]×100
A:24穴プレートの穴の直径
B:コラーゲンゲルの一方向の直径
C:Bの方向に正交する方向のコラーゲンゲルの直径
【0041】
<結果>
結果を以下の表4に示す。また35日後のコラーゲンゲルの写真を図1に示す。
【表4】

【0042】
<線維芽細胞コラーゲンゲル収縮促進作用の確認(2)>
さらに、ミルキーウェイの上記(1)とは異なる場所から採取した白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、同様の操作を行い、24時間、48時間後のコラーゲンゲルの直径を測定し、収縮率を算出した。各ウェル中の海泥溶媒抽出物の最終濃度は4.0mg/mL、2.0mg/mL、0.8mg/mL、0.4mg/mL及び0.2mg/mLである。
【0043】
<結果>
結果を以下の表5に示す。
【表5】

表4、表5、及び図1に示すように、海泥溶媒抽出物は、用量依存的にヒト線維芽細胞存在下で培養したコラーゲンゲルの収縮を促進させることが確認された。また、ミルキーウェイの異なる場所から採取した白泥を用いても、同様の収縮促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、線維芽細胞の増殖やコラーゲン生成、さらにはコラーゲンゲルの収縮を促進することにより主に真皮において真皮構造の形成を促進する。このため、肌に張りを与え、皺やたるみを予防又は解消し、アンチエイジング化粧品や、皮膚損傷の治療用の皮膚外用剤として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】海泥抽出物によるコラーゲンゲル収縮促進作用を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤。
【請求項2】
溶媒が熱溶媒である請求項1に記載の剤。
【請求項3】
溶媒が、水、エタノール、又は水とエタノールとの混液である請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
真皮中のコラーゲン量を増やすことによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
線維芽細胞の増殖促進によりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
【請求項6】
真皮中のコラーゲンゲルの収縮を促進することによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
【請求項7】
海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を、その乾燥重量に換算して、全体に対して0.001〜20重量%含む請求項1〜6のいずれかに記載の剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−133256(P2008−133256A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173478(P2007−173478)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本薬学会第127年会 社団法人日本薬学会 平成19年3月30日
【出願人】(501256498)株式会社ロータス・二一 (2)
【Fターム(参考)】