説明

その場で再充填可能な眼用移植物

多くの従来の眼用移植物は、治療剤を、上記眼の表面より実質的に下にある位置へ送達する能力を欠いている。本発明は、レザバ(14)および放出制御機構(24)と連絡した状態にある再充填ポート(28)を有する、その場で再充填可能な眼用移植物(10)に関する。本発明はまた、上記眼用移植物を形成し、使用するための方法に関する。好ましくは、上記制御放出機構は、上記レザバから、上記開口部を通って、眼への、薬学的眼用組成物、特に治療剤の受動的経路(passive passage)を提供する開口部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は、米国特許法§119に基づき、米国仮特許出願第61/142,242号(2009年1月2日出願)に対する優先権を主張する。この仮特許出願の全内容は参照により、本明細書に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、再充填ポートおよび放出制御機構を有するその場で再充填可能な眼用移植物に関する。本発明はまた、上記眼用移植物を形成しかつ使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
緑内障、加齢性黄斑変性、2次性白内障などのような多くの眼の状態について、眼内の特定の位置に治療剤を提供し、長期間(例えば、数週間、数ヶ月もしくはさらには数年)にわたってそれら薬剤を提供することは、しばしば望ましい。眼用移植物は、治療剤をこの様式で提供するための少なくとも1つの機構を提供する。このように、製薬産業は、このような移植物の開発において、かなりの資源を捧げてきた。
【0004】
特許文献1(Weinerら)は、柱およびヘッドを有する鋲形状のデバイスを記載している。上記柱は、チャンバを形成する透過性膜を含み得、上記チャンバは、上記膜を通過することによって、眼へ送達される液体薬物が充填されている。
【0005】
特許文献2(Oguraら)は、鞏膜プラグ(これは、乳酸ユニットおよびグリコール酸ユニットの乳酸コポリマーから少なくともその一部が形成され、かつ薬物を含むものを有する)を記載する。上記プラグの物質は、薬物が経時的に徐々に放出されるように、生分解性である。
【0006】
特許文献3(Santini,Jrら)は、眼の表面への適用に適切であり、治療剤を上記眼へ制御可能に放出するように設計された可撓性マイクロチップデバイスを記載する。
【0007】
眼用移植物の分野においては多くの前進があったが、従来の長期間放出眼用移植物を悩ませる多くの欠点は依然として存在する。これら欠点の一例として、多くの従来の眼用移植物は、眼内の移植の際に、ある特定の量の治療剤のみを有し、いったんその量の薬剤が送達されてしまったら、交換されなければならなかった。これら欠点の別の例として、多くの従来の眼用移植物は、経時的に放出される薬物の量を制御するための信頼の置ける機構を欠いているか、または上記従来の移植物は、薬物放出を制御するために過剰に複雑な機構を含み得る。これら欠点のさらに別の例として、多くの従来の眼用移植物は、治療剤を、上記眼の表面より実質的に下にある位置へ送達する能力を欠いている。
【0008】
上記に鑑みれば、本発明は、眼用移植物および上記移植物を適用および/もしくは使用するための方法を提供し、ここで上記移植物および/もしくは方法は、上記の欠点もしくは従来の眼用移植物と一般に関連づけられる他の欠点のうちの1つ以上を克服する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,466,233号明細書
【特許文献2】米国特許第5,707,643号明細書
【特許文献3】米国特許第6,976,982号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、その場で再充填可能な眼用移植物に関する。上記移植物は、代表的には、本体部分、充填部分および放出制御機構を含む。上記本体部分は、治療剤を含む薬学的組成物の受容に適したレザバを規定する。上記充填部分は、上記薬学的組成物を、上記レザバ内に反復して位置づけることを可能にするために、上記レザバと流体連絡した状態にある充填ポートを規定する。上記放出制御機構は、長期間にわたって上記眼への上記薬学的組成物の制御された受動的放出を提供するに適した少なくとも1個の開口部を含む。上記眼への上記移植物の適用の際に、上記放出制御機構は、代表的には、上記眼内(例えば、上記眼の硝子体)に位置づけられ、上記充填部分は、上記充填ポートが、上記眼の硝子体の外側に、かつ上記鞏膜、核膜もしくは両方のおそらく外側にもアクセス可能なままであるように、上記眼の鞏膜もしくは核膜に隣接して位置づけられる。
【0011】
上記移植物は、種々のさらなるもしくは代替の成分もしくは特徴を含み得、種々のさらなるもしくは代替の形態(configuration)によって特徴付けられ得る。上記本体部分、上記充填部分もしくはこれらの組み合わせは、上記眼への上記移植物の適用の際に、上記鞏膜上に配置される接触表面を規定し得る。上記放出制御機構の上記少なくとも1個の開口部は、複数の開口部を含み得る。ここで上記複数の開口部は、上記治療剤の制御された放出をもたらすような大きさにされている。上記放出制御機構は、上記硝子体へ治療剤の放出を提供するように遠隔に開閉し得るドアを含み得る。上記制御放出機構は、上記少なくとも1個もしくは複数の開口部が貫通して延びるケイ素ディスクから構成され得る。上記本体部分は、上記制御放出機構の上に覆われて成形され得る。上記充填部分は、上記ポートと関連づけられたダイヤフラムを含み得、上記ダイヤフラムは、下記のような注射デバイスを介しての上記レザバの充填を可能にするために、ニードルもしくは他の細長い注射デバイスによって貫通可能であり、上記ダイヤフラムはまた、上記ニードルを外した後に、自己密封式であり得る。上記充填部分は、キャップ部分を含み得、上記キャップ部分は、上記移植物の移植の際に、上記結膜の下にありかつ上記鞏膜上にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に従う例示的眼用移植物の側面図である。
【図2】図2は、個体の眼に適用される図1の例示的移植物の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、眼用移植物の適用および上記移植物を移植および/もしくは使用するための方法に基づく。上記移植物は、代表的には、薬学的組成物の受容に適したレザバを規定する本体部分を含む。上記移植物はまた、代表的には、上記移植物レザバが、上記薬学的組成物で最初に充填されることを可能にする充填部分を含み、代表的には、上記移植物が眼に移植された後に、上記移植物レザバが再充填されることを可能にする。上記移植物はまた、代表的には、上記眼への薬学的組成物放出の量を信頼が置けるように制御し得る放出制御機構を含む。
【0014】
図1および図2を参照すると、本発明に従う、例示的なその場で再充填可能な眼用移植物10が図示される。上記移植物10は、本体部分12を含むように図示され、上記本体部分12は、上記移植物10内のレザバ14を規定する。図示される実施形態において、上記移植物10は、軸18の周りに概して対称的であり、上記軸18は、上記移植物10、上記本体部分12もしくは両方の長さ(L)にそって延びる。
【0015】
充填部分22は、上記移植物10の長さ(L)の一方の端部に含まれ、放出制御機構24は、上記移植物10の長さ(L)の反対側の端部に含まれる。上記充填部分22は、上記移植物10の上記レザバ14へ薬学的組成物を受容するのを補助するために適したポート28を有するように図示される。上記充填部分22はまた、上記本体部分12から延びるキャップ32を含むように図示される。
【0016】
上記キャップ32は、上記本体部分12と一体化してかつ同じ材料から形成され得る。しかし、図示される実施形態において、上記キャップ32は、上記本体部分12とは別個の材料から形成され、上記本体部分12に取り付けられる。上記キャップ32は、種々の固定機構のうちのいずれかを使用して本体部分12に取り付けられ得るが、好ましくは、上記本体12へと部分的に延びている上記キャップ32の一部、もしくは上記本体12の周りに外側へ延びている上記キャップ32の一部と締まりばめ(interference fit)を伴う。
【0017】
好ましい実施形態において、上記キャップ32は、上記ヒトの眼と生体適合性の比較的軟らかい材料(例えば、ポリマー物質)から形成される。好ましい材料の例としては、シリコーン、パリレン、アクリル物質などが挙げられるが、これらに限定されない。図示される実施形態において、上記ポート28は、上記キャップ32を貫通して中心へ延び、上記キャップ32は、上記ポート28の周りに環状である。
【0018】
上記充填部分22の上記キャップ32は、上記移植物10が上記眼に外科的に適用された後に、上記眼の硝子体、上記眼の鞏膜もしくは両方を含む眼球の外側にありかつ外側に離れて面するように設計される外側表面36を含む。上記外側表面36は、概して凸状であるように図示されている。有利なことには、使用される場合、上記キャップ32の上記凸状表面および材料は、上記移植物10が、重大な刺激も不快さも引き起こさずに、上記眼内にその意図された位置で存在することを可能にするのを補助し得る。
【0019】
上記充填部分22の上記キャップ32はまた、上記移植物10が上記眼に適用された後に、上記鞏膜もしくは結膜と接触するように設計されている接触表面40を含むことが示される。好ましい実施形態において、上記接触表面40は、上記鞏膜もしくは結膜のよりよい調節のためにわずかに凸状であり得る。具体的な一実施形態において、上記キャップ32、上記充填部分22もしくは両方は、角膜縁の上もしくはその付近にある、眼の毛様体扁平部内にもしくはその上に配置される。
【0020】
アクセスエレメント44は、代表的には、上記ポート28を介した流体の動きを選択的に制限するために、上記ポート28と関連づけられる。上記アクセスエレメント44は、除去可能なプラグ、ドア、バルブもしくは他のそのようなエレメントであり得る。好ましい一実施形態において、上記アクセスエレメント44は、ダイヤフラムであり、上記ダイヤフラムは、ニードルもしくは他の送達デバイスによる穿通を介して開かれ得るが、同様に、上記ニードルもしくは他の送達デバイスを上記ダイヤフラムから外した後に、流体の流れを再び制限するように閉じる。このような実施形態において、上記キャップ32および上記アクセスエレメント44(すなわち、上記ダイヤフラム)は、同じ材料の単一のパーツとして一体化して形成され得ることが企図される。このような実施形態において、シリコーン(例えば、非コーニング(non−coring)シリコーン)、パリレンもしくは別の材料が、理想的には使用され得、上記キャップ32の薄い部分は、ダイヤフラム44として作用する。有利なことには、ニードルもしくは他のデバイスは、これら材料を貫通して延び得、および上記ニードルによって作製される任意の開口部は、上記ニードルもしくは他のデバイスの除去後に、代表的には、自己閉鎖(self close)および/もしくは自己封鎖する。
【0021】
上記本体部分12は、上記レザバ14を規定するために、環状であるように、より具体的には円筒状であるように図示される。上記本体部分12は、上記ヒトの眼と生物学的に適合性である種々の材料(例えば、ポリマー材料もしくは金属材料)から形成され得る。例示的な適切な材料としては、パリレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリイミド、エチレンビニルアセテート、アクリルポリマー、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上記制御放出機構24は、代表的には、材料(例えば、治療剤を含む流体)が貫通して通過し得る1個以上の開口部50を含む。複数の開口部50の使用は、一般に好ましく、代表的には、少なくとも3個、より代表的には、少なくとも6個、およびさらにより代表的には、少なくとも10個の開口部が存在し、代表的には、1000個以下、より代表的には、200個以下、およびさらにより代表的には、50個以下の開口部が存在する。
【0023】
上記制御放出機構24は、上記開口部50を介する、材料の受動的経路のために形作られ得ることが好ましい。従って、上記開口部50をとおる流れは、自然の拡散機構および/もしくは平衡機構を介して生成もしくは駆動される。上記制御放出機構は、上記開口部50および上記開口部が貫通して延びる材料からなり得るか、もしくはこれらから本質的になり得る。あるいは、上記制御放出機構24は、上記開口部50を介する材料の受動的経路を選択的に阻害するかもしくは可能にするために、機械的機構を含み得る。このような機構の例としては、バルブもしくはドアを含み、これらは、上記開口部50を介する材料の経路を可能にし、そして阻害するように、それぞれ選択的にかつさらには遠隔に(例えば、ラジオ周波数シグナル伝達を介して)開閉され得る。本明細書で使用される場合、上記制御放出機構に言及する場合に、用語、開閉されるとは、部分的および完全な開放もしくは閉鎖を含む。さらに、上記機構の部分的開放もしくは閉鎖は、上記開口部50を介して流体の拡散もしくは移動の量をさらに制御するために使用され得、それによって、上記眼への上記薬学的組成物の送達をさらに制御することが企図される。
【0024】
材料、特に眼用薬学的組成物および眼房水は、代表的には、上記レザバ14の中および外へ自由に流れそして/または拡散するようにされるとともに、上記開口部50のサイズは、上記レザバ14の中および外への流速および/もしくは拡散を制御するのを補助する。上記開口部50は、特に、受動的システムのために、物質(特に、治療剤)が、上記レザバから、および上記眼へ流れる速度を制御する断面積を有する。その断面積は、代表的には、少なくとも8μm、より代表的には、少なくとも15μmおよびさらにより代表的には、少なくとも50μmである。その同じ断面積はまた、代表的には、4000μm以下、より代表的には、2000μm以下、およびなおより代表的には、500μm以下である。上記開口部の断面積は、本明細書で使用される場合、上記開口部の任意の断面積である。ここで上記開口部の外周は、上記制御放出機構の材料によって完全に規定され、上記レザバ14の中もしくは外へ上記開口部を通過する流体については、上記断面積をも貫通しなければならない。
【0025】
図示される実施形態において、上記制御放出機構24は、上記開口部50が貫通して延びるプレート54である。上記プレート54は、向かい合っている実質的に平行な表面を有し、そこを貫通して、上記開口部50は延びている。示される実施形態において、上記開口部50は、あるいは形状が円筒状であるが、それらは別なふうに形作られてもよい。上記開口部50は、代表的には、少なくとも約0.2μm、より代表的には、少なくとも約2μmおよびさらにより代表的には、少なくとも約8μmの直径を有する。図示される上記開口部の直径はまた、代表的には、約100μm以下、さらにより代表的には、40μm以下、およびさらにより代表的には、約25μm以下である。上記プレート54の表面を覆う上記開口部50の概して均一な分布は望ましいが、上記開口部50の他の不均一な分布も可能であることが理解される。上記プレートの適切な厚みは、代表的には、少なくとも約0.05mm、より代表的には、少なくとも約0.08mmであり、代表的には、0.5mm以下、およびより代表的には、0.3mm以下である。
【0026】
図示される実施形態において、上記移植物10の長さ(L)は、代表的には、約15mm未満、より代表的には、10mm未満、およびさらにより代表的には、8mm未満である。また、図示される実施形態において、上記移植物10の上記本体部分12の外径は、代表的には、7mm未満、より代表的には、4mm未満、およびさらにより代表的には、2.5mm未満である。上記移植物の長さは、代表的には、それが、視力もしくは眼の視野を妨げないように十分小さい。
【0027】
上記制御放出機構24、および特に、上記プレート54は、種々の材料(例えば、金属もしくはポリマー材料)から形成され得る。しかし、好ましい実施形態において、それは、上記開口部50が上記材料へとエッチングされることを可能にするエッチング可能な材料(例えば、ケイ素)から形成される。
【0028】
上記制御放出機構24、および具体的には、上記プレート54は、締まりばめもしくは他の固定技術を使用して、上記移植物10の上記本体部分12へ取り付けられ得る。好ましい一実施形態において、上記本体部分12は、上記54を上記本体部分12へ取り付けるために、上記プレート54上に覆われて成形される。他の適切な固定技術は、封鎖部材、接着剤、締め具、具体的には、指し示された取り付け部材などの使用を伴い得る。上記本体部分12および上記制御放出機構24は、同じ材料から一体的に形成され得ることが、さらに企図される。
【0029】
移植のために、上記移植物10は、代表的には、眼における外科的切開部へと挿入される。いったん移植されると、上記移植物10は、縫合もしくは他の機構で適所に保持され得る。さらに、もしくは代わりに、上記移植物10の上記本体部分12もしくは他の部分は、上記移植物10を、上記眼内の適所に維持するのを補助するような形状にされ得ることが企図される。一例として、上記本体部分12は、上記本体部分12自体が、上記移植物10を、上記眼中の適所に実質的に維持するように、螺旋状の形状を有し得る。このようならせん形状の例は、米国特許第6,719,750号(Varnerら)(これは全ての目的で本明細書に完全に参考として援用される)に図示される。
【0030】
一般に、上記移植物10は、上記眼内の種々の位置に位置づけられ得る。好ましい一実施形態において、上記移植物10は、上記本体部分12が上記眼の硝子体へと延び、上記充填部分22(具体的には、上記キャップ)が、上記眼の結膜と、上記眼の硝子体との間に位置づけられるように、外科的に配置される。非常に好ましい実施形態において、上記キャップ22は、上記眼の結膜の下にあり、上記キャップ22の表面40は、上記眼の鞏膜に接触し、上記本体部分12は、上記眼の鞏膜を貫通して延びる。
【0031】
上記移植物10内に提供される薬学的組成物は、代表的には、治療剤を含み、その薬剤は、薬学的ビヒクル内に提供されてもよいし、そうでなくてもよい。本発明の治療剤は、上記移植物内に種々の形態で提供され得、使用される場合、種々の異なる薬学的ビヒクル(例えば、水単独、もしくはさらなる成分と混合)とともに提供され得る。上記薬剤は、上記移植物内で、固体、半固体もしくは液体であり得る。一例として、上記治療剤は、液体(例えば、水性)懸濁物内で固体として提供され得る。別の例として、上記治療剤は、いかなるビヒクルも全くなしで、オイルとして提供され得る。
【0032】
一般に、上記薬学的組成物は、シリンジで注射可能であることが好ましい。従って、上記治療剤が、完全にもしくは実質的に完全に固体(例えば、懸濁された固体)であり得る場合にすら、上記薬学的組成物が、液体もしくは半固体であることは好ましい。このような液体もしくは半固体の組成物は、上記移植物10を眼内に挿入する前に、および/もしくは上記移植物10を眼内に挿入した後に、シリンジで上記移植物10へと注射され得る。従って、上記移植物10は、充填され得、次いで、1回もしくは複数回再充填され得る。
【0033】
本発明のための潜在的な眼用治療剤の非限定的例としては、以下が挙げられる:抗緑内障剤、抗血管新生剤;抗感染剤;抗炎症剤;増殖因子;免疫抑制剤;および抗アレルギー剤。抗緑内障剤としては、β遮断薬(例えば、ベタキソロールおよびレボベタキソロール);炭酸脱水素酵素インヒビター(例えば、ブリンゾラミドおよびドルゾラミド);プロスタグランジン(例えば、トラボプロスト、ビマトプロスト、およびラタノプロスト);セロトニン作動剤;ムスカリン作動剤;ドパミン作働性アゴニストが挙げられる。抗血管新生剤としては、酢酸アネコルタブ(RETAANETM,Fort Worth,Tex.のAlconTM Laboratories,Inc.)およびレセプターチロシンキナーゼインヒビター(RTKi)が挙げられる。抗炎症剤としては、非ステロイド系およびステロイド系の抗炎症剤(例えば、トリアムシノロンアクチニド、スプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、ネパフェナク、リメキソロン、およびテトラヒドロコルチゾール)が挙げられる。増殖因子としては、EGFもしくはVEGFが挙げられる。抗アレルギー剤としては、オロパタジンおよびエピナスチンが挙げられる。上記眼用薬物は、薬学的に受容可能な塩の形態で存在し得る。
【0034】
有利なことには、上記移植物10の上記開口部50は、上記薬学的組成物(具体的には、上記治療剤)の放出を経時的に制御するための単純な機構として作用し得る。好ましい実施形態において、上記移植物10は、上記で議論した断面積をを含むような大きさにされた開口部50を含む。このような実施形態において、上記開口部50は、少なくとも48時間、より代表的には、少なくとも7日間、およびさらにより代表的には、少なくとも60日間であるが、5年以下、より代表的には、1年以下、およびなおより代表的には、6ヶ月以下である期間にわたって、上記移植物10内に位置した治療剤の量のうちの少なくとも50%、より代表的には、少なくとも80%およびさらにより代表的には、少なくとも90%を放出するように機能し得る。
【0035】
治療剤を含む薬学的組成物の最初の量は、上記移植物10の組み立ての間もしくはそれ以降に上記レザバ14内に配置され得る。上記移植物10に再充填するために、デバイス(例えば、シリンジ)が、上記アクセスエレメント44、上記ポート28もしくは両方をニードルが貫通して延び、薬学的組成物を上記レザバ14へ押し込むように使用される。再充填を補助するために、1つのデバイス(例えば、シリンジ)を使用して、物質(例えば、眼房水)を上記レザバ14から吸引し、もう1つのデバイス(例えば、シリンジ)を使用して、その後、薬学的組成物を上記レザバ14へと押し込むことは望ましいことであり得る。代わりに、単一のシリンジデバイスは、上記レザバ14から流体を同時に吸引し、その間にその流体を薬学的眼用組成物と置き換えるように作られ得る。
【0036】
全ての引用される参考文献の内容全体は、全ての目的で本開示へと具体的に参考として援用される。さらに、量、濃度または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲もしくは好ましい上限値および好ましい下限値の列挙として与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かに拘わらず、任意の範囲上限もしくは好ましい値と、任意の範囲下限もしくは好ましい値との任意のペアから形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で記載される場合、別段示されなければ、上記範囲は、その終点、および上記範囲内の全ての整数および有理数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に記載される特定の値に限定されることは意図されない。
【0037】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書で開示される本発明の実施を考慮することから、当業者に明らかである。本明細書および実施例は、例示として考えられるに過ぎず、本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その場で再充填可能な眼用移植物であって、
レザバを規定する本体部分;
薬学的組成物がレザバ内に反復して位置づけられることを可能にするための該レザバと流体連絡した状態にある充填ポートを規定する充填部分であって、該薬学的組成物は、治療剤を含む、充填部分;
長期間にわたる眼への該薬学的組成物の制御された受動的放出を提供するに適した少なくとも1個の開口部を有する放出制御機構;
を含み、
ここで該眼への該移植物の適用の際に、該放出制御機構は、該眼内に位置づけられ、該充填部分は、該充填ポートが、該眼の硝子体の外側にアクセス可能なままであるように、該眼の鞏膜に隣り合う該硝子体の外側に位置づけられる、
移植物。
【請求項2】
前記本体部分、前記充填部分もしくはこれらの組み合わせは、前記眼への前記移植物の適用の際に、前記鞏膜を覆って配置される接触表面を規定する、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記放出制御機構の前記少なくとも1個の開口部は、複数の開口部を含み、該複数の開口部は、前記治療剤の制御された放出を実現する大きさにされている、請求項1または2に記載の移植物。
【請求項4】
前記放出制御機構は、前記硝子体への治療剤の放出を提供するに遠隔によって開閉し得るドアを含む、請求項1または2に記載の移植物。
【請求項5】
前記本体部分は、第2の端部の反対側にある第1の端部とともに延び、前記充填部分は、該第1の端部に位置し、前記放出制御機構は、該第2の端部に位置する、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項6】
前記治療剤は、眼内の眼内圧を低下させる、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項7】
前記制御放出機構は、前記少なくとも1個の開口部が貫通して延びるケイ素ディスクを含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項8】
前記本体部分は、前記制御放出機構の上に覆われて成形されている、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項9】
前記本体部分、前記充填部分もしくはその両方は、ポリマー状物質から形成される、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項10】
前記ポート内に位置した取り外し可能なプラグをさらに備える、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項11】
前記ポートと関連づけられたダイヤフラムをさらに含み、該ダイヤフラムは、下記のような注射デバイスを介しての前記レザバの充填を可能にするために、ニードルもしくは他の細長い注射デバイスによって貫通可能である、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項12】
移植の際に、前記移植物のキャップ部分は、結膜の下にありかつ鞏膜上にある、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項13】
移植の際に、前記放出制御機構は、眼の硝子体内に位置する、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項14】
前記少なくとも1個の開口部もしくは前記複数の開口部の各々は、少なくとも8μmであるが、4000μm以下である断面積を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項15】
前記少なくとも1個の開口部もしくは前記複数の開口部の各々は、少なくとも15μmであるが、2000μm以下である断面積を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項16】
個体の眼に治療剤を提供するための方法であって、該方法は、
該眼内に、前述の請求項のいずれか1項に記載の移植物を外科的に移植する工程;および
該外科的移植の後に、薬学的組成物を、該移植物のレザバへ提供する工程、
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514493(P2012−514493A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544477(P2011−544477)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068613
【国際公開番号】WO2010/078063
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】