その場CNT成長用繊維の表面処理及びバリア・コーティングのためのシステム及び方法
繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システムは、カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるために前記繊維材料の表面を改質するのに適用された表面処理システム、前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するのに適用された、前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システム、及び、CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための、前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムを含んで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン・ナノチューブ(CNT)成長、より詳しくは、繊維基材上のCNT成長に関する。
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は、2009年3月3日出願の米国仮出願第61/157,096号及び2009年3月29日出願の米国仮出願第61/182,153号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものであり、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし。
【背景技術】
【0004】
繊維をベースとする複合材料では、繊維は、補強材としての機能を果たす。マトリックス材料は、繊維を局部集中し、ある場合には、それらの配向を制御する。また、マトリックス材料も、複合材料における繊維間の負荷伝達媒体としての機能を果たす。それらの優れた機械特性により、カーボン・ナノチューブ(CNTs)は、繊維複合材料を更に強化するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維上及び/又は複合材料内のCNTsの合体及び配列には、問題がある。繊維上にカーボン・ナノチューブを成長させる現在の方法は、カーボン・ナノチューブの低い重量パーセント/濃度を有する、もつれたそして未調整のカーボン・ナノチューブをもたらす。更に、繊維をベースとする基材の中には、CNTsが成長する温度に敏感なものもある。この温度感受性は、CNT成長温度で繊維材料の固有不安定性として現れる。また、CNT成長プロセスにおける温度感受性も、繊維表面上でのナノ粒子の移動度によるCNTナノ粒子触媒焼結の結果である。
【0006】
異なる繊維をベースとする基材上におけるカーボン・ナノチューブのその場成長のための改善された方法は、他の機械的、温度的及び電気的なアプリケーションと同様に、より一層強い複合材料を生産する上で有用である。本発明は、この必要性を満たすと共に関連する利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ(CNT)を合成するためのシステムに関するものであり、カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるために繊維材料の表面を改質するのに適用された表面処理システムと、前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するのに適用された、前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システムと、CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための、前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムと、を含んで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用基材の準備システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用繊維トウの準備システムの概略図である。
【図3】本発明の一態様によるバリア・コーティングとの接着を促進するための繊維表面を処理するためのプロセスフロー及びバリア・コーティング及び触媒粒子を塗布するためのプロセスフローを示す図である。
【図4】低温プラズマ処理システムの一実施形態の概略図である。
【図5】湿式表面処理システムの一実施形態の概略図である。
【図6】噴射バリア・コーティング塗布システムの一実施形態の概略図である。
【図7】本発明の別の実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用繊維トウの準備システムの概略図である。
【図8】本発明の別の態様によるバリア・コーティングとの接着を促進するため繊維表面を処理するためのプロセスフロー及びバリア・コーティング及び触媒粒子の塗布のためのプロセスフローを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による図7のシステムで処理された基材の断面図である。
【図10】本発明の別の実施形態による図2のシステムで処理された基材の断面図である。
【図11】基材上に等角的に付着されたバリア・コーティング内に埋め込まれたナノ粒子を示す図である。
【図12】バリア・コーティング内に埋め込まれ、基材と表面接触しているナノ粒子を示す図である。
【図13】図11に示す埋め込まれたナノ粒子上のカーボン・ナノチューブの例示的な成長を示す図である。
【図14】強化されたシグネチャー・コントロール(signature control)特性を有する高温セラミック繊維複合材料を生成するためのシステムを示す図である。
【図15】炭素繊維上でCNTsを生成するためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、1つには、繊維材料(さもなければ、高温等のCNT成長に関連する厳しい条件と適合しない繊維材料を含む)上のカーボン・ナノチューブの成長方法に対してなされるものである。本発明方法は、ナノ粒子焼結を抑制又は防ぐために及び/又は温度感受性繊維材料をCNT成長に関連する高温から保護するために、バリア・コーティングを用いる。本発明方法は、遊離したCNTs、付着物上のCNTs(低いCNT密度を示すCNT浸出繊維及び/又はCNT配向に対する制御が不十分であるCNT浸出繊維を含む)を用いることで達成されたこれらを超える重量パーセンチのカーボン・ナノチューブを有する複合材料製品を提供するために、複合材生産に組み込めるCNT浸出繊維を製造する。このようにして、本発明方法は、繊維軸に対して略垂直に配向されたカーボン・ナノチューブの成長のための条件を提供する。
【0010】
本発明方法は、CNTナノ粒子触媒の被毒も防ぐ。高い成長温度では、触媒ナノ粒子は、若干の繊維材料組成物の表面と反応することもあり得る。例えば、炭素又は有機組成物からなる繊維材料は、触媒ナノ粒子を汚染し、その結果、CNT成長を抑制する。理論に拘束されるものではないが、そのような基材−ナノ粒子の相互作用の結果、触媒ナノ粒子に炭素ラジカルを過剰供給するということが示唆されている。更に、カーボン・ナノチューブの核生成に先立つ炭素又は有機繊維から触媒ナノ粒子内への表面炭素の拡散は、CNT成長を妨げる。ある実施形態では、本明細書で用いられる方法は、繊維材料の表面と触媒ナノ粒子の相互作用を防ぐか又は抑制し、これによって、繊維上のカーボン・ナノチューブの配列強化に加え、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの成長収率の増加も可能となる。
【0011】
また、本発明方法は、繊維材料の表面上のナノ粒子の焼結も抑制する。CNTナノ粒子触媒を含む繊維材料を加熱すると、触媒ナノ粒子は繊維材料表面上で拡散する。的確な繊維組成次第では、ナノ粒子表面移動によって、ナノ粒子の焼結は望ましくない量となり、CNTの成長を抑制することになる。このナノ粒子間の相互作用は、本発明のバリア・コーティングを用いることによって減少される。
【0012】
ある実施形態では、本発明方法で用いられるバリア・コーティングは、液状で繊維上に塗布され、その後に硬化される。例えば、液状のバリア・コーティング内に混合させる等して、CNTナノ粒子触媒は、バリア・コーティングと略同時に繊維上に付着される。ある実施形態では、前記触媒は、バリア・コーティングを塗布した後、繊維上に塗布される。そのような実施形態では、バリア・コーティングは、CNTナノ粒子触媒の付着に先立って選択的、部分的に硬化される。
【0013】
液状でバリア・コーティングを塗布することによって、コーティング厚さを容易に制御することができ、更に後で説明されるように、ナノ粒子は鋳型のいかなる影響も受けずに密に充填できる。バリア・コーティングとナノ粒子触媒が繊維材料上に塗布されると、バリア・コーティングは、完全に硬化され、そして、ナノ粒子を所定の位置に「固定(locking)」する。触媒を含んだ繊維材料は、この時点でカーボン・ナノチューブ合成に対しての準備が整っている。繊維材料、バリア・コーティング及びCNTナノ粒子触媒の構造は、1)ナノ粒子焼結の抑制又は防止、2)断熱バリア・コーティングによる繊維材料の保護、3)ナノ粒子−基材間の相互作用の抑制又は防止、の1つ以上を備える。
【0014】
本明細書では、用語「等角的付着」とは、基材へのバリア・コーティングの塗布に関して用いられる場合、基材形状に拘わらず、基材上、そして基材と面接触してバリア・コーティングを被覆するプロセスを指す。ナノ粒子が既に付着した基材上のバリア・コーティングの等角的付着は、必要な(desirec)場合、ナノ粒子表面の少なくとも一部の露出を妨げない。そのような実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に封入することなくナノ粒子間の空洞を埋めることが可能である。これは、バリア・コーティングの液状の濃度及び/又は粘度を変えることによって達成できる。
【0015】
本明細書では、用語「バリア・コーティング」とは、好ましくないナノ粒子間の相互作用(例えば、基材面上における焼結や凝集等)を抑制又は防止するために用いられるあらゆるコーティングを指す。また、前記用語は、好ましくないナノ粒子−基材間の相互作用を抑制又は防止するために用いられるコーティングも含む。「バリア・コーティング」は、更に、特定の基材への付着力のため、及び/又は、ナノ粒子が触媒、種物質又は反応物質として用いられる反応に使用される反応環境から基材を保護するために選択される。本発明のバリア・コーティングは、例えば、ゲル、懸濁液及び分散液等の液状で基材に塗布可能な熱的絶縁物である。液状でバリア・コーティングを与えることによって、その後に、部分的又は完全な硬化が可能となる。前記硬化プロセスは、一般的に、加熱を含む。例示的なバリア・コーティングは、例えば、スピン・オン・グラス又はアルミナを含む。
【0016】
本明細書では、用語「凝集」とは、基材上に付着したナノ粒子を融合させるあらゆるプロセスを指す。凝集条件は、ナノ粒子の全体又は例えばその表面等ナノ粒子の一部を融点まで加熱することを含む。更に、凝集は、基材上のナノ粒子の表面拡散を早める条件を指し、加熱することを含む。後者の条件に関しては、用語「凝集」は、用語「焼結」と同じ意味で使われる。
【0017】
本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、球の等価直径が約0.1〜約100ナノメートルの間のサイズの粒子をいうが、NPsは球形である必要はない。そのようなナノ構造体の物質は、あらゆる次元に関して大きなアスペクト比を欠いたあらゆる配列を含む。
【0018】
本明細書では、用語「有効径(effective diameter)」とは、略球状のナノ粒子のナノ粒子直径の平均値を指す。
【0019】
本明細書では、用語「埋め込み(emdedding)」とは、バリア・コーティング内のナノ粒子に関連して用いられる場合、基材との表面接触を含めあらゆる深さにまで液状のバリア・コーティングでナノ粒子を取り囲む及び/又はナノ粒子を完全に封入するプロセスを指す。バリア・コーティング内における本発明のナノ粒子の「埋め込み」及びバリア・コーティングの硬化は、ナノ粒子を所定の位置に機械的に固定して、それらの移動及びその後の凝集を防ぐ。バリア・コーティング内におけるナノ粒子の「埋め込み」は、バリア・コーティングが付着した基材と表面接触する深さにまでバリア・コーティング内にナノ粒子を設置することを含むが、まだ、ナノ粒子の表面は露出したままである。また、ナノ粒子は、基材上にナノ粒子を設置した後、バリア・コーティングを塗布することによっても「埋め込まれた」状態になる。また、ナノ粒子は、同時にバリア・コーティングとナノ粒子を塗布することによってもバリア・コーティング内に埋め込まれる。
【0020】
本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」又は「CNT」とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、二層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)を含むフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のあらゆるものをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は終端が開口していてもよい。CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0021】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属」には、遷移金属元素ベースの塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物、アセテート等)も含まれる。
【0022】
本明細書では、用語「基材」とは、本明細書で記載された方法を用いるカーボン・ナノチューブの成長によって改質が可能な表面を有するあらゆる部材を指す。例示的な基材は、例えばテープ、ヤーン(yarns)、トウ(tows)、ロービング(rovings)、リボン等を含む繊維材料、及び、例えばプライ、織物(fabrics)、3次元織布及び不織布構造、マット等のような高規則構造を含む。また、基材は、例えばシリコンウエハ、グラファイトシート、高温プラスチックシート等を含む表面が平坦なシートも含む。
【0023】
ある実施形態では、本発明は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成するためのシステムを提供するが、これは、1)カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるための繊維材料の表面を改質するために適用された表面処理システム、2)前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するために適用された前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システム、及び、3)CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムを含んで構成される。
【0024】
また、繊維材料上にCNTを合成するためのシステムは、CNT成長触媒ナノ粒子を付着させるための触媒塗布システムも含んで構成される。触媒ナノ粒子は、ある実施形態では、あらゆるd‐ブロックの遷移金属である。ある実施形態では、CNT成長触媒ナノ粒子は、鉄、酸化鉄及びこれらの混合物を含む。
【0025】
触媒塗布システム及びバリア・コーティング塗布システムは、いくつかの方法で構成されている。ある実施形態では、両システムは、触媒ナノ粒子とバリア・コーティングの同時付着用に構成されている。このような実施形態では、浸漬又は噴霧塗布用の液体として供給されるバリア・コーティングを、触媒ナノ粒子と混合する。別の実施形態では、両者は、2つの異なる噴霧塗布によって略同時に供給される。
【0026】
ある実施形態では、触媒塗布システムは、バリア・コーティングシステムの上流にある。そのような実施形態では、触媒をプラズマ処理等の後に繊維材料に塗布する。理論に拘束されるものではないが、触媒ナノ粒子は、後述するように、「粗面化(roughening)」プロセスによって作られたナノスケールのピット(pit)又はウエル(well)内に付着させる。この構成では、バリア・コーティングを、触媒を含んだ繊維材料に付着させ、その後、バリア・コーティングされた繊維材料を部分的に硬化する。部分的に硬化すると、ナノ粒子は再分配が可能となり、その表面領域の少なくともある部分で現れて、下流のCNT合成が可能になるということが示唆されている。
【0027】
更に別の構成では、触媒塗布システムは、バリア・コーティングシステムの下流にある。そのような実施形態では、触媒を、バリア・コーティングを部分的に硬化した後に塗布する。部分的に硬化されたバリア・コーティングは、等角コーティングとしての「粘着(sticky)」表面を提供して、付着したナノ粒子を捕らえ、そして、いかなる望ましい程度にもナノ粒子が埋め込まれるようにできる。
【0028】
本発明のCNT合成システムには、更に、カーボン・ナノチューブの化学気相成長(CVD)又はプラズマCVD成長用の炭素原料供給源を装備するCNT成長チャンバーを含むCNT成長システムが含まれる。CNT成長チャンバーは、CNT成長に使用される反応性炭素種を効果的に利用するための小さな空洞チャンバーである。炭素原料は、当該技術分野で用いられるあらゆるタイプのものであってよく、例えば炭化水素、CO、合成ガス、メタノール、アセチレン、エチレン等を含む。
【0029】
本発明のこれらのシステムは、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの連続合成用に構成される。これによって、スプール又はマンドレル上に巻き取り可能な長さで提供された繊維材料は、表面処理システムの上流の繰り出しシステムによって与えられ、そして、CNT合成後、繊維材料は、CNT成長システムの下流で再度巻き取られる。ある実施形態では、CNT成長システムから出て来た繊維材料は、再度巻き取る前にレジン浴内で処理される。
【0030】
図1に、本発明の例示的な実施形態による繊維材料の表面処理用システム100の概略図を示す。図示された実施形態において、システム100は、表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120及びバリア・コーティング硬化システム130を含んで構成される。システム110,120,130と通信するコントローラ190は、種々のシステムパラメータと繊維材料の表面上でカーボン・ナノチューブを成長させるための繊維材料の準備プロセスを監視及び/又は制御するように機能する。
【0031】
表面処理システム110は、上流の基材供給源(図示せず)から繊維材料を受け取る。1つの構成では、表面処理システム110は、金属繊維、有機繊維等あらゆる繊維タイプが使用されるが、ここでは、例えば、アラミド繊維、セラミック繊維或いはガラス繊維等、炭素繊維を受け取る。この例示的な実施形態では、供給源からの炭素繊維の送り速度は、コントローラ190によって制御される。表面処理システム110は、繊維表面の化学的性質を変えるために適用され、繊維材料表面の湿潤性と接着性の少なくとも1つを改善する。繊維材料表面の湿潤性と接着性の改善は、繊維材料表面にバリア・コーティングのより一層の受容性と保持性を与える。
【0032】
例示的な実施形態では、表面処理システム110における繊維表面の表面処理は、繊維の低温プラズマ処理を含む。図4に示す1つの構成では、表面処理システム110は、コロナ放電によるプラズマ処理システム400の形態をとる。ほんの一例として、繊維430はシステム400のプラズマ処理筐体を、与えられた速度(例えば約4フィート/分)で通過する。システム400の筐体を通過する繊維430は、第1ガスと第2ガスの混合ガスに晒される。システムへのガス混合物の供給速度と他の変数は、コントローラ190によって制御される。第1ガスの機能は、コロナ放電を受けた時にプラズマを点火又は発生させることである。当該技術分野で周知のように、コロナ放電は、導体周囲の流体の電離によって生じる電気的な放電であり、電流が流れ、所定の閾値を超えるポテンシャル勾配を生成する。第1ガスは、ガス混合物内に浸かった導体を通って電流が流れたときに、イオン化されてプラズマを発生させる。第2ガスの機能は、繊維表面と反応して、繊維表面の湿潤性及び接着性のうちの少なくとも1つを高めることである。理論に拘束されるものではないが、プラズマ処理は、繊維材料表面に例えば窪み(valley)等のナノスケールの機構を作り出す「粗面化された(roughened)」表面を提供する。また、プラズマは、繊維材料及びバリア・コーティング間を強固に結合する官能基手段も作り出す。繊維430は、プラズマヘッド410からのプラズマ420の排出流に晒される。コントローラ190は、プラズマヘッド410からのプラズマの放電速度を制御する。第1ガスの例としては、例えばヘリウム及びアルゴンである。第2ガスの例としては、例えば酸素である。第2ガスの選択は、処理される繊維材料のタイプによって決まる。例えば、酸素は、炭素繊維の処理用第2ガスに有用である。
【0033】
ほんの一例として、ガス混合物は、約30リットルの第1ガスと約0.3リットルの第2ガスを含む。繊維は、電界の存在下で約30.3リットル/分の流速の前述のガス混合物に晒される。ガス混合物中の酸素は、繊維表面に結合した炭素と反応して、例えばカルボキシル基及びカルボニル化合物(例えばケトンやアルデヒド等)等の種々の有機官能基を形成する。論理に拘束されるものではないが、酸素は、表面からいくつかの炭素原子を除去して、炭素繊維材料表面のネットワーク内に反応性炭素原子を更に生成する傾向もあると示唆されている。このようにして、繊維表面に形成されたカルボキシルとカルボニル化合物は、未処理の炭素繊維表面と比べてバリア・コーティングを受入れる傾向が高い。この改善されたバリア・コーティングの接着性は、例えばプラズマによって形成された界面活性官能基に付随する水素結合受容体及び水素結合供与体等の非結合相互作用の結果である。このようにして、繊維表面は、バリア・コーティングの塗布のために準備される。
【0034】
図5に示す別の例示的な実施形態では、システム110における繊維の表面処理は、湿式コーティング処理システム500を含む。システム500は、上流の繊維供給源から繊維430を受入れる。繊維430を、繊維430の表面を処理するために浴容器510内の化学溶液520に浸す。繊維430は、2つの案内ローラ540,550によって導かれる。浴ローラ530は、溶液520内に繊維430を浸す。1つの構成では、化学溶液は、溶媒(例えば水)中に体積比で約1%の溶質(例えば、ジメチルイソプロピルシラン(dimethylisopropylsilane)、メチルシルコシロキサン(methylcylcosiloxane)、ポリシロキサン(polysiloxanes)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane),ポリジフェニルシロキサン(polydiphenylsiloxane)、ポリカルボシラン(polycarbosilanes)、アルモクサン(alumoxane)、メチルシロキサン(methylsiloxane)、シラン(silane)、及び/又はアルコキシシラン(alkoxysilanes)等)を含む。オキシシラン(oxysilanes)は、繊維430の表面で反応し、それによって、バリア・コーティングをより受容可能な化合物を形成する。少なくとも2つの異なる官能基の組が、表面上に形成される。官能基の第2の組がバリア・コーティングとうまく結合するのに対して、官能基の第1の組は、繊維とうまく結合する。これら化合物は、集団で繊維表面とバリア・コーティングに接着するする傾向があり、これによって、繊維表面とバリア・コーティング間の接着性を強化する。表面処理後、繊維430は、コーティング処理システム500から出て、下流のバリア・コーティングシステム120へ入る。バリア・コーティングシステム120は、処理された繊維表面上にバリア・コーティングを塗布する働きをする。例示的な実施形態では、バリア・コーティングは約10ナノメートル(nm)から約100ナノメートル(nm)の厚さに塗布される。バリア・コーティングのタイプは、繊維と触媒の化学的性質によって決まる。バリア・コーティング材料は、繊維を触媒粒子との相互作用から保護するために選択される。例示的な実施形態では、炭素繊維用のコーティングは、アルモキサン、アルミナナノ粒子、又はその他のアルミナコーティング溶液等のアルミナコーティングを含む。別の実施形態では、炭素繊維用のコーティングは、スピン・オン・ガラス、ガラスナノ粒子等のガラスコーティング、又はメチルシロキサンを主成分とする溶液等のその他のガラスコーティング溶液を含む。そのような境界コーティング及びバリア・コーティングは、その他の基材(例えば、ガラス繊維、ケルバー(商標登録)(アラミド繊維タイプ))や他の有機繊維上にも用いられる。例えば、アルモキサンは、カーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて直面する高温から繊維を保護するためにケルバー上に用いられる。バリア・コーティング材料の選択のための基準の1つは、与えられた繊維材料表面にどのようにしてうまく接着するかである。別の基準は、コーティングが、カーボン・ナノチューブ成長触媒ナノ粒子の繊維表面との相互作用を軽減する度合である。
【0035】
本発明の例示的な実施形態では、バリア・コーティング120は、浸漬コーティングシステムを含んで構成される。浸漬コーティングシステムは、図5に示された湿式コーティング処理システム500と類似している。システム500は、上流の表面処理システム110から表面処理された繊維430を受入れる。1つの構成では、メチルシロキサンを主成分とする溶液と例えばイソプロピルアルコール等の溶媒とが体積比で約1対約120のコーティング溶液が用いられる。繊維材料430、例えば炭素繊維は、約15秒の与えられた継続時間tdの間に、溶液中へと与えられた速度(例えば約4フィート/分)で送り込まれる。これにより、繊維材料430の表面に塗布されたバリア・コーティングは、ある実施形態では、約10nmから約100nmの厚さを有し、別の実施形態では、約10nmから約20nmの厚さを有する。溶液中における繊維材料の前記浸漬時間又は滞留時間は、繊維表面上に均一のバリア・コーティングを得るために調整される。また、滞留時間は、異なるタイプの繊維及びそれに対応するバリア・コーティング材料によっても変わる。得られるバリア・コーティングの厚さは、溶液の濃度の関数であり、従って、コーティング溶液520の濃度を調節することによって変わる。その他のコーティング材料は、例えばアルモキサン、アルミナナノ粒子等のアルミナを主成分とするコーティング材料、及び例えばスピン・オン・ガラスやガラスナノ粒子等のガラスを主成分とするコーティング材料を含む。バリア・コーティングの塗布後、繊維は下流のバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。
【0036】
図6に示す別の例示的な実施形態では、バリア・コーティングシステム120は、噴霧コーティングシステム600を含んで構成される。コーティングシステム600は、処理システム110から表面処理された繊維430を受入れる。上述した、流体容器610からのメチルシロキサン‐イソプロピルアルコール溶液は、1つ以上の噴霧ノズル630を介して、繊維430の表面上にバリア・コーティングを塗布するために用いられる。溶液650は、繊維430上に均一に噴霧される。繊維供給速度、ノズル配向及び噴霧速度と圧力は、コントローラ190によって制御される。十分な厚さのバリア・コーティングが繊維430の表面に噴霧されると直ちに、繊維430は、下流のバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。バリア・コーティング硬化システム130は、バリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出すために部分的にバリア・コーティングを硬化するよう機能する。システム130は、バリア・コーティング塗布ステーション120を通過した処理済み繊維を受入れる。この時点では、モノリシック固形コーティングへのバリア・コーティングの変化がまだ完全でないため、新たに塗布されたバリア・コーティングは、繊維に恒久的に付着されるような十分な構造的硬直性に欠けている。システム130は、CNT触媒ナノ粒子を受入れて保持し、そしてバリア・コーティングを繊維表面にしっかりと付着させておくために、その構造的硬直性を増大するよう繊維のバリア・コーティングを部分的に硬化する働きをする。ある実施形態では、CNT触媒ナノ粒子は、部分的な硬化に先立って塗布され、ある実施形態では、CNT触媒ナノ粒子は、バリア・コーティングの塗布と略同時に塗布される(バリア・コーティング溶液内に触媒ナノ粒子を混合することを含む)。
【0037】
1つの構成では、システム130は、局所的に浄化された空気中で約250℃の温度に繊維をさらす加熱チャンバーを含む。例示的な実施形態では、窒素(N2)ガスが、繊維材料表面上に新たに塗布されたバリア・コーティングのあらゆる大気汚染を軽減する局所的に浄化された空気を作り出すために用いられる。繊維材料は、所定の速度(例えば約4フィート/秒)でシステム130を通過する。バリア・コーティングによる繊維の部分的硬化は、その後に塗布される触媒ナノ粒子の受入れ可能な状態を保ちながらも、繊維表面に付着したままの状態にするために、バリア・コーティングの擬似硬化状態又はゲル状状態を作り出す。上述したが、触媒は、バリア・コーティングと略同時に塗布される
【0038】
バリア・コーティングの塗布後、繊維は、繊維材料上に触媒ナノ粒子を塗布するために触媒コーティングシステムへ供給される。触媒粒子は、湿式浸漬法或いは化学浴法を用いて処理された繊維上に塗布される。塗布された触媒ナノ粒子は、擬似的に硬化されたバリア・コーティングに付着する。バリア・コーティングと同時に付着する場合では、触媒ナノ粒子は、バリア・コーティング層全体にわたって付着する。
【0039】
ある実施形態では、バリア・コーティングされた繊維は、カーボン・ナノチューブの合成用成長チャンバーを通過し、比較的高温で、繊維表面のバリア・コーティングを完全に硬化する。ある実施形態では、バリア・コーティングの十分な硬化は、CNT成長チャンバーとは別に行われる。CNT成長中、触媒ナノ粒子は比較的高温でより一層反応し、同時に完全に硬化されるバリア・コーティング内にそれ自身を埋め込む。同時に、バリア・コーティング内に埋め込まれた触媒ナノ粒子が、適切な条件の下で、分解炭素供給ガスに晒されたときに核生成を開始するのでCNT形成が起こる。例えば、成長チャンバー内の温度は、約500℃以上である。従って、バリア・コーティングは、触媒の被毒をもたらす触媒ナノ粒子に対する有害な繊維表面の相互作用を軽減することによって繊維表面を保護すると同時に、炭素繊維上のカーボン・ナノチューブのその場成長を促進する。また、バリア・コーティングは、繊維材料表面上のナノ粒子の凝集及び焼結も防止する。
【0040】
コントローラ190は、基材供給速度、プラズマガス混合物供給速度及び硬化温度の1つ以上を含むシステムパラメータを、独立して、感知、監視、制御するために適用される。コントローラ190は、統合された自動電子システムコントローラであり、パラメータデータを受信し、制御パラメータの種々の自動調整又は手動調整を実行する。
【0041】
図2に、本発明の別の実施形態による基板の表面処理用システム200の概略図を示す。示された実施形態では、システム200は、繊維分離システム240、表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120、バリア・コーティング硬化システム130、及び触媒コーティングシステム250を含んで構成される。例えばトウ(又はロービング又はヤーン)等の繊維束が処理される場合、繊維分離システム240は、その繊維を分離するために用いられる。例示的なトウは約1000から約12000のファイバ(fibers)を含む。例示的な実施形態では、広げられ、正の空気圧を用いて平坦化される。別の実施形態では、トウは広げられ、真空又は減圧等の負の空気圧を用いて平坦化される。例示的な実施形態では、繊維分離システム240は、エアー・ナイフ(air knife)である。当該技術分野において周知であるように、エアー・ナイフは、圧縮空気が層状パターンで排出する一連の孔又は連続的なスロットを含む圧縮空気プレナムである。その他の実施形態では、他のよく知られた技術及び装置が、繊維トウの繊維束を広げるか分離するために用いられる。
【0042】
繊維が広げられるか又は分離されたなら、繊維は、上述したように、下流の表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120及びバリア・コーティング硬化システム130へ搬送される。その後、バリア・コーティングを施された繊維は、下流の触媒コーティングシステム250へ供給される。1つの構成では、触媒コーティングシステム250は、酸化鉄又は酸化ニッケル等の触媒粒子のコロイダルナノ粒子溶液である。バリア・コーティングを施された繊維は、触媒粒子が擬似硬化されたバリア・コーティング内に埋め込まれた溶液内に浸漬される。その後、触媒がコーティングされた繊維は、適切な炭素供給ガスと共に適切な温度の成長チャンバー内に導入される。炭素供給ガスの分離で生じる遊離炭素ラジカルは、繊維材料表面上で触媒ナノ粒子の存在下でカーボン・ナノチューブの成長を開始する。
【0043】
図3には、カーボン・ナノチューブの成長のために、例えば繊維トウ等の繊維束を準備するためのプロセスフローが、本発明のいくつかの実施形態に従って示されている。ブロック310では、繊維束又はトウが、繊維表面領域を露出することによって繊維の表面処理を容易にするために広げられる。ブロック320では、繊維は、バリア・コーティング塗布用の繊維表面を準備するために表面処理プロセスを受ける。表面処理プロセスは、繊維表面の化学性質を変えてバリア・コーティングの湿潤性と接着性の少なくとも1つを改良する。ブロック330では、バリア・コーティングを繊維に塗布する。バリア・コーティングは、繊維を保護し、カーボン・ナノチューブの成長に有害な触媒粒子と繊維表面との間の相互作用を軽減する。バリア・コーティングは、繊維を高温酸化と分解からも保護する。ブロック340では、バリア・コーティングを、部分的に硬化してバリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出す。バリア・コーティングの擬似硬化状態において、触媒粒子は、バリア・コーティング内に埋め込まれる。
【0044】
図10には、図3のプロセスで生じる例示的な基材1010の横断面図が示されている。バリア・コーティング1020は、繊維基材1010に塗布される。その後に、バリア・コーティングがコーティングされた基材1010には触媒ナノ粒子が塗布され、その結果、バリア・コーティング1020には、触媒ナノ粒子が埋め込まれる。バリア・コーティング1020は、触媒ナノ粒子1030と基材1010との間及び触媒ナノ粒子間の相互作用を最小限にする働きをする。
【0045】
図7に、本発明の更に別の例示的な実施形態により基材の表面を処理するためのシステム700の概略図を示す。システム700の構成要素は、図2に示されたシステム200の構成要素と同様である。システム200では、バリア・コーティングが繊維に塗布されて部分的に硬化された後に、触媒ナノ粒子を繊維に塗布する。これとは対照的に、システム700では、表面処理システム110から届いた表面処理された繊維に、触媒粒子を塗布する。触媒粒子を繊維表面に塗布した後に、繊維は、バリア・コーティングを塗布するためにバリア・コーティングシステム1200に供給され、その後、バリア・コーティングを硬化するためにバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。
【0046】
繊維は、プラズマ処理やウエット化学エッチング等の技術を用いて表面処理システム110で表面処理される。その後、表面処理された繊維は、触媒ナノ粒子を受入れ、そして保持できる状態になる。次に、表面処理された繊維は、触媒塗布システム250へ供給され、そこで触媒粒子が繊維表面に塗布される。触媒粒子は、化学的及び/又は機械的に繊維表面に結合される。繊維の表面処理は、繊維表面と触媒粒子との機械的連結の他に、繊維表面へのバリア・コーティングの接着もまた可能にするピットや溝等のナノスケールの機構を含む好ましい形態を生成するということが示唆されている。更に、触媒粒子と硬化されたバリア・コーティングとの間の化学的結合は、それらの間に形成される共有結合及び/又はπ‐π(pi‐pi)相互作用の結果として起こることが示唆されている。
【0047】
図8に、本発明の別の態様に従いカーボン・ナノチューブの成長用繊維束(例えば繊維トウ)を準備するためのプロセスフローを示す。ブロック810では、繊維束又はトウを広げ、繊維表面領域を露出することによって繊維の表面処理を容易にする。ブロック820では、バリア・コーティング塗布用の繊維表面を準備するために、繊維を表面処理プロセスに晒す。表面処理プロセスは、繊維表面の化学性質を変えて、バリア・コーティングの湿潤性と接着性の少なくとも1つを改良する。ブロック830では、触媒粒子を、表面処理した繊維に塗布する。触媒粒子は、繊維表面に機械的及び/又は化学的に結合される。
【0048】
ブロック840では、バリア・コーティングを繊維に塗布する。バリア・コーティングは、繊維を保護し、カーボン・ナノチューブの成長に有害な触媒粒子と繊維表面との間の相互作用を軽減する。バリア・コーティングは、繊維を高温酸化と分解からも保護する。ブロック840では、バリア・コーティングを、バリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出すために少なくとも部分的に硬化する。ある実施形態では、バリア・コーティングが少なくとも部分的に硬化されている間に、繊維表面に塗布された触媒ナノ粒子が、バリア・コーティングを貫いて表面に出現する。バリア・コーティングから浮かび上がった触媒ナノ粒子は、カーボン・ナノチューブ合成のための核生成場所を提供し、この時に、繊維材料は、CNT成長チャンバー内に導入される。また、バリア・コーティングは、触媒粒子を有する繊維表面の化学的相互作用を軽減すると同時に、繊維表面に触媒ナノ粒子を固定するよう作用する。
【0049】
図9に、図8のプロセスから生じる典型的な基材910の横断面図を示す。触媒粒子930は、基材910に塗布される。その後、バリア・コーティング920は基材1010に塗布される。バリア・コーティング920が少なくとも部分的に硬化されるため、触媒粒子930は、バリア・コーティング920を貫いて出現し、そしてカーボン・ナノチューブの核生成場所を提供する。バリア・コーティング920は、触媒粒子930と基材910との間の相互作用を最小限に抑える働きをするが、これによって、触媒粒子930の被毒を軽減する。また、バリア・コーティング930は、触媒粒子930間の相互作用を最小限にする上でも役立つ。
【0050】
触媒塗布ステップとバリア・コーティング塗布ステップの順序に拘わらず、繊維材料は、触媒ナノ粒子が散在するバリア・コーティングでコーティングされる。触媒ナノ粒子は、バリア・コーティングから突き出ており、カーボン・ナノチューブ合成のための核生成場所を提供する。そのような基材は、成長チャンバー内に導入され、カーボン・ナノチューブ合成に用いられる高温に晒されると、バリア・コーティングは、高温に対する基材表面の露出を効果的に減らす。言い換えれば、この減らされた露出は、基材表面と触媒粒子との好ましくない化学反応を抑え、それによって、触媒粒子の被毒を減少させる。触媒被毒の減少により、成長チャンバー内のCNT合成中にCNT収率は改善する。
【0051】
繊維上にCNTを生成するための従来方法に比べて、本発明の方法及びシステムは、より大きな重量パーセントでカーボン・ナノチューブを生成できる。例えば、触媒の化学的性質を変える現在の方法の場合、達成される表面上の繊維の収率は極めて低く、例えば、複合材料質量のわずか約0.5%から約1.0%に過ぎない。本明細書に記載された方法は、約3%から約5%より大きい標準的な収率を達成するが、場合によっては、樹脂マトリックスで最大で複合材料質量の約20%まで達成することもある。しかしながら、本発明方法を、意図的に重量をより低くするために用いることもできる。従って、例えば、約0.1%までにも低い重量を達成できる。ある実施形態では、繊維上の浸出CNTsの重量パーセント範囲は、約0.1から約20%の間で、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%及び20%と、この間のあらゆる端数を含む。
【0052】
本発明方法は、整然と並んだ、基材に対して垂直である基材上のカーボン・ナノチューブを提供する。ナノチューブ上のCNT成長は、それらが絡まる及び/又はそれらが共通のCNT壁を共有するような十分な密度及び/又は長さを有する。その他の実施形態では、CNTsは、基材と垂直で平行に成長するが、どのCNT壁も共有しない。CNT浸出生成物における、繊維に対するカーボン・ナノチューブの増大された付着力は、カーボン・ナノチューブ及び基材表面の界面を通して改善された伝達荷重に変換する。
【0053】
本開示は、1つには、高温でのナノ粒子の焼結や凝集を実質的に減少するよう基材上や繊維表面上の適所に分散されたナノ粒子を「固定する(lock)」ために、あらゆる基材(繊維をベースとする基材を含む)上にバリア・コーティングを用いる方法に対してなされる。本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、ナノ粒子と接触している。ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全には封入せず、これによって、ナノ粒子の焼結や凝集を防止しながら、望ましい反応環境にナノ粒子を露出させている。ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に封入する。このような実施形態では、ナノ粒子は、例えば、高いエネルギ放射を吸収する手段として機能する。そのような吸収に伴う熱は、バリア・コーティングがない場合にナノ粒子の焼結を引き起こすには十分である。バリア・コーティングとナノ粒子は、順序には拘わらず連続して基材表面上に付着するか、又は、同時に基材に塗布される。
【0054】
本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、バリア・コーティング自体が、反応性プロファイル(reactivity profile)及び/又はナノ粒子による一連の触媒又は種付け反応には影響を及ぼさないような十分に薄い層(効果的なナノ粒子径以下)として与えられる。例えば、整列されたCNT成長のためにナノチャネル(nanochannel)のテンプレート部材に埋め込まれたCNT成長触媒を用いる場合、前記テンプレート部材はCNTの大きさ(CNT成長の幅及び方向を含む)に影響を与える(Li et al. App. Phys. Lett. 75(3):367−369(1999))。
【0055】
ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に埋め込む。また、ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を埋め込むが、その一方で、埋め込まれたナノ粒子へ接触ができるようにバリア・コーティングを通してある程度の拡散を可能にする。本発明方法は、予め形成されたテンプレートの種類の制約なしに、高密度配列のバリア・コーティング内にナノ粒子を埋め込む。これにより、より高いナノ粒子密度がもたらされると同時に、ナノ粒子のより均一な密度も可能となる。これらの利点は、バリア・コーティングがナノ粒子の大きさに適合するように、液状でバリア・コーティングを提供することによって実現される。これは、焼結が防止され、CNT形態は、CNTが存在する所定のチャネル(channel)よりもむしろナノ粒子自体によって制御されるため、これはCNT合成アプリケーションには、特に有益である。
【0056】
本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、ナノ粒子間の相互作用を防止することにより、高い移動状態の下で、ナノ粒子の焼結及び凝集を防止するための手段を提供する。また、バリア・コーティングは、図11に例示されたように、バリア・コーティング内におけるナノ粒子の物理的分離と機械的連結によってナノ粒子と基材間の相互作用も防止する。例えば、金属ナノ粒子は、金属基材と合金を形成する。バリア・コーティングは、そのような合金の形成を防止する。同様に、CNT成長領域では、バリア・コーティングは、遷移金属触媒と炭素に富んだ基材との間におけるナノ粒子と基材間の相互作用を防止する。そのようなナノ粒子と基材間の相互作用は、CNT成長状態の下で原料である炭素を過剰に供給することによって、遷移金属ナノ粒子触媒を被毒させる。更に、一般的には、本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、その他のやり方ではバリア・コーティングがない場合に適合しない基材でナノ粒子の使用を容易にする。
【0057】
ある実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、ナノ粒子と基材間の相互作用を依然として回避或いは抑制しながらも、図12に示すように基材と表面接触している。例えば、バリア・コーティングは、基材とナノ粒子との間の接触領域を最小限にするために用いられる。ある実施形態では、ナノ粒子と基材との間にまだ相当の接触領域がある場合でさえ、十分な厚さのバリア・コーティングにより、熱障壁が提供されるため、ナノ粒子と基材の接触界面は、あらゆる有害な相互作用を回避するのに十分な低温である。ある実施形態では、ナノ粒子が基材表面と接触している場合、バリア・コーティングの厚さにより、ナノ粒子は封入されるが、それでも、バリア・コーティングを通して反応物質の拡散は依然として可能であり、これによってナノ粒子触媒の反応が生じ得る。例えば、CVDCNT成長の場合では、CVD炭素原料からの炭素原子は、適切なバリア・コーティング物質を通して拡散する。そのような実施形態では、ナノ粒子触媒の有効径と略同じか又はわずかに大きいバリア・コーティング厚さを有することが望ましい。
【0058】
バリア・コーティングのさらなる利用は、高温及び/又は埋め込まれたナノ粒子の反応と関連して用いられる反応環境から、デリケートな基材を保護することである。例えば、ある炭素をベースとする基材は、高い反応温度の下や種々の反応条件(例えば強烈な酸化環境等)に晒される場合、安定しない。
【0059】
また、本発明は、1つには、バリア・コーティング内に埋め込まれた複数のナノ粒子を有する基材の少なくとも1つの表面に、等角的に付着されたバリア・コーティングを有する基材を含む生産品も対象としている。そのような生産品は、基材と従ってその生産品の特性を変えるための更なる反応にも用いられる。例えば、CNTsは、遷移金属ナノ粒子を用いる場合、図13に例示したように、基材表面上で成長される。そのようなCNTsは、改善されたラマン分光法(Raman)アプリケーションや超小型電子構造の表面、複合材料における補強物質や、例えばEMI遮蔽、シグネチャー・コントロール及び落雷防止等、その他の複合材料用途の生成に用いられるための整列されたCNTの製造に役立つ。また、本発明の生産品は、ナノ粒子が、高温が用いられる他の反応のための触媒として機能はするが生産品は変化しない、埋め込まれたナノ粒子を有するバリア・コーティングされた基材が挙げられる。例えば、生産品は、触媒コンバータに用いられるような、燃焼反応用の固定化した触媒ナノ粒子を含む。
【0060】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に、液状で提供されるバリア・コーティングを等角的に付着させること、(b)バリア・コーティング内に複数のナノ粒子を選択された深さに埋め込んで、複数のナノ粒子のそれぞれの埋め込まれた部分を作ること、及び(c)複数のナノ粒子を埋め込んだ後にバリア・コーティングを十分に硬化すること、を含む方法を提供する。複数のナノ粒子のそれぞれの埋め込まれた部分は、硬化されたバリア・コーティングと連続的に接触する。バリア・コーティングは、そこに埋め込まれた複数のナノ粒子の配列に影響を及ぼさない。従って、バリア・コーティングは、ナノ粒子の相対的配置を決定するテンプレートとしては作用しない。このプロセスの結果、更に以下で述べるように、ナノ粒子の的確な選択及び用いられる基材により、種々の状況に応じて用いられる、固定されたナノ粒子を有するバリア・コーティングされた基材となる。ある実施形態では、バリア・コーティングを等角的に付着し、複数のナノ粒子を埋め込むステップは、同時に行われる。従って、バリア・コーティング材料も、バリア・コーティングとナノ粒子物質の両方を含む溶液(混成溶液)を介して、ナノ粒子と一緒に基材にその場塗布される。
【0061】
ある実施形態では、本明細書で開示された方法は、種々の形状物上の粒子分散を制御する。これは繊維又は織物等の複合材料や不規則形状材料をコーティングする効果的な手段を含む。更には、本発明方法は、NPの拡散及び/又は焼結を招きかねない条件に晒された場合でさえも、基材表面上のナノ粒子密度を制御し維持する。
【0062】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に、バリア・コーティングを等角的に付着すること、及び(b)複数のナノ粒子の有効径と略同じ又はそれより厚いバリア・コーティング内に複数のナノ粒子を埋め込むこと、を含む方法を提供する。そのような実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略等しいものから有効径より最大5,000%厚いものまでである。従って、バリア・コーティングの厚さは、この径より0.01%厚いか又は0.1%、又は、複数のナノ粒子の有効径より0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、500%、1,000%、1,500%、2,000%等、5,000%までと、この間の値及びその端数を含む厚さである。
【0063】
ある実施形態では、ナノ粒子は、例えば熱に晒された場合、凝集できない。ある実施形態では、複数のナノ粒子を封入するバリア・コーティングは、NPsへの反応アクセスがなされないアプリケーションには有用である。例えば、電磁妨害(EMI)遮蔽アプリケーションでは、バリア・コーティングは、電磁放射を透過するが、NPsは、EM放射を効果的に吸収できる。この吸収により、NPsは熱くなる。それゆえ、バリア・コーティングは、そのような場合に焼結を防止できる。ある実施形態では、バリア・コーティングは、例えば、多孔質のバリア・コーティングが用いられた場合、粒子へのアクセスを拒否せずに複数のNPsを封入できる。そのような実施形態では、粒子は、技術的に封入されるが、バリア・コーティングの多孔質性が、NPのデリケートな表面へのアクセスを許可する。
【0064】
ある実施形態では、図1に示されるように、複数のナノ粒子は、バリア・コーティング内に部分的に埋め込まれ、ナノ粒子と基材との間には物理的境界がもたらされる。その他の実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、図12に示されるように、基材と表面接触している。更に別の実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、基材から分離された第1の部分と第2の部分の混合物であり、基材と表面接触している。ある実施形態では、基材とナノ粒子との間の直接的な表面接触を回避するのは有益である。例えば、金属基材と金属ナノ粒子に関して、ナノ粒子の部分的な埋め込みは、ナノ粒子が高温に晒される場合、合金の形成を回避するのに役立つ。同様に、遷移金属ナノ粒子触媒を有するCNT成長の場合、ナノ粒子と反応する炭素に富んだ基材から触媒を分離するのは有用である。
【0065】
ある実施形態では、ナノ粒子は、バリア・コーティング内に完全に封入されるが、露出表面が、この後に続く多くのプロセスを通して生成される。例えば、バリア・コーティングを完全に硬化した場合、いくつかの材料は、コーティング内のナノ粒子付近に亀裂を形成するが、これにより、ナノ粒子と反応環境との間には境界がもたらされる。その他のバリア・コーティング材料は、多孔質の硬化構造の形成を通してナノ粒子への必要なアクセスを作り出す。
【0066】
ある実施形態では、完全に封入されたナノ粒子は、プラズマで処理されてバリア・コーティングの表面を粗面化し、露出されたナノ粒子表面を生成する。同様に、封入されたナノ粒子を有するバリア・コーティングは、ナノ粒子の表面の一部分を露出するのに十分な間、湿式化学エッチング剤で処理される。
【0067】
更に別の実施形態では、完全に封入されたナノ粒子は、ナノ粒子の表面の一部を露出するために、機械的粗面化条件の下で処理される。これは、あらゆる物理的研磨方法(例えばサンドブラスト、レーザ切断、ボールミル、プラズマエッチング等)によって行われる。
【0068】
ナノ粒子がバリア・コーティングに埋め込まれる程度にかかわらず、バリア・コーティングは、熱に晒された場合にそれらの凝集又は焼結を防止するために、ナノ粒子を機械的に固定する働きをする。理論に拘束されるものではないが、これは、NPの拡散を抑える基材表面上のナノ粒子の動きを制限することによって達成される。従って、ナノ粒子間の相互作用は、バリア・コーティングの存在によって、実質的に抑制又は排除される。
【0069】
また、バリア・コーティングは、低融点基材を用いるための熱障壁も提供する。これに関して、バリア・コーティングは、複数のナノ粒子と基材との間の接触する表面積を零にまで最小化又は低減し、これによって、ナノ粒子を加熱する温度への基材の露出の影響を軽減し、又は、より一般的には、複数のナノ粒子が少なくとも部分的に露出される反応環境への基材の露出を回避する。
【0070】
ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、一般的に、複数のナノ粒子の有効径と略等しいか、それ未満、又はそれよりわずかに薄くなるように選択されるため、反応環境への実質的な露出のためにむき出しになったナノ粒子表面が存在する。その他の実施形態では、その厚さは、ナノ粒子の露出表面を生成するために上述したあらゆる技術を用いることによって、ナノ粒子の有効径より厚くにもなる。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約0.1nmから約100nmの範囲である。ある実施形態では、その厚さは、10nm未満(例えば、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nmと、その間のあらゆる値を含む)である。バリア・コーティングの厚さの的確な選択は、複数のナノ粒子の有効径と略一致するかそれ未満となるように選択される。ある実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は、ナノ粒子が基材と表面接触している場合でさえ、露出した表面を維持する。ある実施形態では、バリア・コーティング層の厚さは、ナノ粒子の表面積の略半分を覆うほどである。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、ナノ粒子表面積の約10%を覆い、一方、その他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、ナノ粒子の表面積の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、及び100%(この範囲の全ての値を含む)を覆う。更に別の実施形態では、バリア・コーティングは、追加の処理又は多孔質バリア・コーティングの選択によって露出された一部のナノ粒子を除いて塗布されたときに、ナノ粒子を覆う。
【0071】
ある実施形態では、本発明方法は、等角的にバリア・コーティングを付着する前にプラズマで基材を処理することを含む。プラズマプロセスにおける基材処理は、官能基の生成と基材表面の粗面化の2重の役割を果たす。これによって、その有効表面積は増大し、その結果、基材の湿潤性を改善し、従って、バリア・コーティングの等角的な付着が改善する。基材表面の改善は、種々の異なるガス(これらに限定しないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素等)の任意の1つ以上のプラズマを用いて達成される。
【0072】
ある実施形態では、バリア・コーティングの付着ステップは、浸漬コーティング及び噴霧から選択された技術によって遂行される。従って、バリア・コーティングは、溶液をベースにしたものであり、浸漬浴形態、噴霧方法、又はいくつかの実施形態と同様のものを介して塗布される。方法の的確な選択は、多くの要因(例えば、基材の形状等)によって決定される。不規則な形状の基材に対しては、例えば噴霧塗布等のような一方向に塗布されるバリア・コーティングの使用を避ける浸漬法を使用することが有効である。例えば、ウエハ等のような片側をコーティングする必要のある基材に対しては、確実に片側だけにコーティングするために、噴霧又は関連技術(例えばネブライザー)でバリア・コーティングを塗布するのが有効である。バリア・コーティングを塗布する際に考慮すべきその他の要因は、例えば、溶液を作る能力又は浸漬か噴霧コーティングのための均質な懸濁液等バリア・コーティング材料自体に依存するものである。
【0073】
浸漬法又は噴霧法によってバリア・コーティングを塗布する場合、例えば、バリア・コーティングの厚さを、希釈剤を用いて制御できる。希釈剤は、基材物質とナノ粒子物質の両方と相性のよい溶媒であればどのようなものでもよい。浸漬コーティングの場合、特に、バリア・コーティングの厚さは、バリア・コーティング材料の濃度と浸漬浴内の滞留時間の関数である。また、滞留時間は、そのコーティングの均質性を提供するのにも役立つ。また、均質性は、多重の浸漬浴を用いることによっても保証される。
【0074】
バリア・コーティングは、シロキサン、シラン、アルミナ、炭化ケイ素セラミック、金属、及び、これらの混合物から選択される物質である。ある実施形態では、バリア・コーティングの選択は、基材への付着能力で選択される。多くのタイプのバリア・コーティング材料があり、例えば、シロキサンベースのもの、シランベースのもの、アルミナベースのもの、炭化ケイ素ベースのセラミック、及び金属ベースのもの等である。アルミナベースの物質は、例えば、アルモキサン、アルミナナノ粒子、及びアルミナコーティング溶液(例えば、Rigidizer/Hardener タイプ AL−R/HのようなZircar Ceramics社から入手できるアルミナベースのコーティング等)を含む。ある実施形態では、ガラスコーティング(例えば、スピン・オン・ガラス、ガラスナノ粒子、又は、例えば、イソプロピルアルコール内のメチルシロキサンのようなシロキサンベースの溶液等)は、バリア・コーティング剤として用いられる。本発明で有用な金属バースのバリア・コーティングは、例えば、モリブデン、アルミニウム、銀、金、及び白金等である。炭化ケイ素ベースのセラミックは、例えば、Starfire社から入手可能な、SMP−10、RD−212a、ポリアラミック(Polyaramic)RD−684a、及びポリアラミックRD−688a等である。
【0075】
また、バリア・コーティングは、特別な用途に合わせて多機能なコーティングとしての機能を果たす。バリア・コーティングの特別なタイプは、焼結防止及び基材への付着促進双方に合わせて選択される。複合材料アプリケーションに関して、バリア・コーティングは、焼結防止及び複合マトリックス材料との良好な結合にあわせて選択される。更に別の実施形態では、バリア・コーティング物質は、基材と複合マトリックス材料の両方に対する付着性で選択される。更に別の実施形態では、2つ以上のバリア・コーティングが用いられる。第1のバリア・コーティングは、基材表面への付着能力で選択される。第2のバリア・コーティングは、複合材料マトリック物質(例えば、レジン、セラミック、金属等)への付着能力で選択される。
【0076】
ある実施形態では、本発明方法は、複数のナノ粒子を埋め込む前にバリア・コーティングを部分的に硬化することを含む。バリア・コーティングの部分的な硬化は、粒子間の相互作用を最小化するために塗布されたナノ粒子の動きを妨げると同時に埋め込まれたナノ粒子に「粘着性にある(sticky)」表面を提供する。また、部分的な硬化は、バリア・コーティングへナノ粒子を供給するために用いられる方法によっても生じる。部分的硬化の温度は、一般的に、標準の硬化温度より低く、標準硬化温度の約50から75%の範囲であり、滞留時間については秒オーダーである。
【0077】
ある実施形態では、本発明方法は、原料物質の存在下で、原料物質から複数のナノ構造体の成長を促進する温度まで、埋め込まれた複数のナノ粒子の周囲の環境を加熱することを、更に、含んで構成される。ある実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は、ナノ構造体の成長を触媒する。ある実施形態では、ナノ粒子は、本来の触媒として機能することなく、ナノ構造体の成長のための種としてふるまう。更に別の実施形態では、ナノ粒子は、基材、バリア・コーティング、又はナノ粒子を変えない反応を触媒する。従って、ナノ粒子は、例えば、粒子が気相内に残り、気相反応を触媒する。ある実施形態では、所定の反応温度は、バリア・コーティングがない場合、複数のナノ粒子の凝集を引き起こすのに十分である。従って、バリア・コーティングは、焼結を防ぐための有効な手段を提供する。
【0078】
ある実施形態では、ナノ粒子は、遷移金属を含む。触媒繊維金属ナノ粒子は、上述したようにd‐ブロックのあらゆる遷移金属である。加えて、ナノ粒子は、元素形態又は塩形態のd‐ブロック金属の合金及び非合金混合物、及びその混合物を含む。そのような塩形態は、酸化物、炭化物、及び窒化物を含むが、これらに限定されるものではない。例示的な遷移金属NPsは、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、及びAgとこれらの塩形態(例えば、アセテート及び塩化物)、及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施形態では、遷移金属は、CNT形成触媒として用いられる。多くのこれら遷移金属触媒は、種々のサプライヤー(例えば、Ferrotec Corporation(Bedford,NH)等)から容易に市販で入手できる。
【0079】
ある実施形態では、原料物質は、炭素源であり、それは、前述の遷移金属との結合に用いられる場合に、カーボン・ナノチューブ(CNTs)のようなナノ構造体の合成を可能にする。これらCNTsは、単層、二層、又はその他の多層のCNTsである。当業者は、ナノ粒子サイズと成長するCNTsのタイプとの間の関連を認識するであろう。例えば、単層CNTsは、標準的に、約1nm未満のナノ粒子触媒で得られやすい。CNT成長条件は、通常は、約500から約1000℃の間で、焼結が観察される温度であり、思い通りのCNT成長に影響を与える温度である。
【0080】
炭素やステンレス鋼等、多くの基材タイプは、標準的に、触媒ナノ粒子だけが表面に供給された場合、高レベルの焼結のために、高収率のCNT成長には適していない。しかしながら、バリア・コーティングは、これら困難な基材上でさえも、高収率のCNT成長に有用である。
【0081】
基材表面上において、触媒ナノ粒子のCNT成長の核となる能力は、焼結を実質的に抑制又は防止するために基材表面の場所に十分なバリア・コーティングが存在するか否かによって決まる。CNT成長は、触媒ナノ粒子をバリア・コーティング前に基材に塗布する場合に遂行される(「リバース・オーダー(reverse order)」)。「リバース・オーダー」プロセスの利点は、バリア・コーティングが触媒を基材上に固定しておくため、基材表面へCNTsを固定することが可能となる点である。理論に拘束されるものではないが、触媒コーティングの前にバリア・コーティングが塗布された場合、CNTナノ粒子触媒は、CNT合成の先端に追従する傾向がある、即ち、先端成長が生じる。「リバース・オーダー」コーティングは、基底成長(base−growth)を促進する。
【0082】
ある実施形態では、原料は、例えば燃焼過程で得られるその他のガスと混合された炭素源である。そのような実施形態では、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、セリウム、マンガン、鉄、ニッケル、又は銅等の埋め込まれた遷移金属ナノ粒子は、炭素源の酸化を調整するために用いられる。多量のナノ粒子に有利な表面積は、燃焼過程で触媒能力を改善する。このタイプの反応は、例えば、触媒コンバータに用途を見出す。また、例えば精製等の種々の工業的な石油処理や油井の穴内における石油の高度回収のための重質炭化水素の分解を触媒する作業にも役立ち、このようにして、形成の生産性を最大限に高める。
【0083】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子のその他の用途は、FePtナノ粒子を用いる高密度磁気記録媒体の製造が挙げられる。当業者は、有用な面心正方構造のFePtを得るために相変化を誘導しようする場合に、FePtナノ粒子の焼結に問題があるということを認識する。この相変化は、一般的に、約550℃で加熱することによって行われ、焼結を伴う。本明細書で開示されたバリア・コーティングは、この焼結を防止するのに役立つ。
【0084】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、脱硫処理に利用される。例えば、ニッケルとモリブデン触媒は、ビチューメンの脱硫に利用されてきた。そのような処理は、酸化ウランのような高価なサポート(supports)が、触媒の再生中に焼結を防止するために用いられる。バリア・コーティングを用いる本発明方法は、高価なサポート物質の使用を避けると同時に、焼結を防止するために用いられる。
【0085】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、合成ガス製造処理に用いられる。Rh‐CeO2触媒内のCeO2の焼結は、この触媒システムの使用を制限するということが分かっている。本明細書で開示された方法に用いられるバリア・コーティングは、この焼結を防止し、例えば、合成ガス変化のためのバイオマスを高める。
【0086】
ある実施形態では、ナノ粒子は、例えば、セラミックや、亜鉛、チタン、アルミニウム等の酸化物、炭化物、ホウ化物等、その他の金属を含有する物質を含む。例えば粘土、シリカ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩等の遷移金属を含まないその他の物質も用いられる。
【0087】
前述のナノ粒子のあらゆるものは、約0.1nmから約100nmまでとサイズに幅がある。ある実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約1から約75nmまで、その他の実施形態では約10から約50nmまでと、それぞれサイズに幅がある。ある実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約0.1から約1nmまでサイズに幅がある。その他の実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約2から約10nmまでサイズに幅がある。更に別の実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約10から約20nmまで、約20から約30nmまで、約30から約40nmまで、約40から約50nmまで、約50から約60nmまで、約60から約70nmまで、約70から約80nmまで、約80から約90nmまで、約90から約100nmまで、そして、その間の全ての値を含んで、サイズに幅がある。サイズの選択は、用途に依存する。上述したように、触媒処理において、容積に対して大きな表面積から利益を享受するために、より小さい粒子を利用することが望ましい。より一般的には、ナノ粒子スケールで、当業者は、ナノ粒子の特性が有する量子化された本質を認識し、適切なサイズが理論的な考察及び計算を通して決定されるということを認識する。例えば、特定の粒子サイズは、放射線の特定波長を吸収するために設計される。
【0088】
金属を含むナノ粒子の焼結速度は、それが付着した基材に応じて変化する。しかしながら、本発明方法にバリア・コーティングを用いることによって、あらゆるタイプの基材が用いられる。例えば、基材は、金属、セラミック、シリカウエハ、繊維、グラファイトシート、高温プラスチック(例えばポリイミド、PEEK、PEI等)を含む。
【0089】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に複数のナノ粒子を付着させること、(b)基材と複数のナノ粒子それぞれの少なくとも一部分を覆ってバリア・コーティング(バリア・コーティングは液状で与えられる)を等角的に付着させ、これにより、複数のナノ粒子それぞれの埋め込まれた部分を生成すること、及び(c)バリア・コーティングを十分に硬化すること、を含む方法を提供する。複数のナノ粒子は、そのような実施形態では表面で基材と接触し、複数のナノ粒子それぞれの埋め込まれた部分は、硬化されたバリア・コーティングと連続的に接触する。これは、上述した「リバース・オーダー」プロセスとして図2に示されている。この構成では、バリア・コーティングは、熱に晒された場合に複数のナノ粒子の凝集も防止する。上述したように、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略同じか又はわずかに薄く、これにより、複数のナノ粒子はこれらの表面の露出部分の維持が可能となる。または、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径より厚い。ある実施形態においては、上述したバリア・コーティングの後の取り扱い方法は、バリア・コーティングがナノ粒子を完全に封入する場合に用いられる。
【0090】
「リバース・オーダー」プロセスを用いる場合、基材は、複数のナノ粒子を付着する前にプラズマで処理される。これは、上述したように、露出した基材表面に良好な湿潤性を与える。同様に、バリア・コーティングを付着するステップは、上述したように、浸漬コーティグと噴霧から選択された技術によって達成される。更に、上述の用途、条件、及び全般的な考察のいずれもが、本発明の「リバース・オーダー」方法に等しく適用される。
【0091】
本発明方法は、基材の少なくとも1つの表面上に等角的に付着したバリア・コーティングとバリア・コーティングに埋め込まれた複数のナノ粒子を有する基材を含む生産品を作るために用いられる。バリア・コーティング機能は、熱又は化学的及び/又は物理的処理に晒された場合に複数のナノ粒子の凝集を防止することである。
【0092】
本発明の生産品におけるバリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略同じか又はわずかに薄く、これによって、ナノ粒子が選択的に基材と表面接触する場合に、ナノ粒子はこれらの表面の露出部分を維持することが可能となる。特定の実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は基材と表面接触している。本発明の生産品は、上述したように、金属、セラミック、シリカウエハ、繊維、グラファイトシート及び高温プラスチックである基材を含む。
【0093】
上述したナノ粒子のあらゆるタイプ及びサイズは、本発明の生産品と関連して使用される。ある実施形態では、本発明の生産品は、マトリックス材料と繊維に浸出したカーボン・ナノチューブを有する複合材料を含む。燃焼や関連した触媒用途では、本発明の生産品は、a)触媒コンバータ、b)例えば精製、合成ガス製造、脱硫等に用いられる触媒反応床、c)石油回収に用いられる油井穴用ツール(downhole tools)、及びd)高密度記憶媒体が挙げられる。
【0094】
本発明の種々の実施形態の活動に実質的に影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供された発明の定義の範囲に含まれることを理解すべきである。従って、下記の実施例は、説明を目的とするもので、本発明を限定するものではない。
【0095】
実施例1
この実施例は、強化されたシグネチャー・コントロール特性のためにセラミック繊維に塗布された鉄ナノ粒子の焼結を防止するために、どのように、障壁層がセラミック繊維複合材料構造で用いられるかを示す。
【0096】
図14は、本発明の具体例に従って改善されたシグネチャー・コントロール特性を有する高温セラミック繊維複合材料を生成するためのシステム400を示す。システム400は、図示のように相互に関連した、セラミック繊維402、バリア・コーティング溶液槽404、ナノ粒子溶液槽406、コーティング硬化システム408、フィラメント巻き取りシステム410、及びレジン浸出システム412を含んで構成される。
【0097】
用いたセラミック繊維402は、シリコン・カーバイド・シルラミック(Silicon Carbide Sylramic)(登録商標)繊維トウ(1600デニール−直径10ミクロン)(COI Ceramics,Inc.)である。
【0098】
Starfire社のSMP−10、RD−212a溶液からなるバリア・コーティング404は、浸漬プロセスを介してセラミック繊維402に塗布される。SMP−10とイソプロピルアルコールが1対10の希釈液が、2−4nmの厚さのコーティグを塗布するために浸漬プロセスで用いられる。
【0099】
用いたナノ粒子溶液406は、トルエン溶液に酸化鉄ナノ粒子が混合された、GTP9700(Nano Chemonics)である。ナノ粒子溶液は、バリア・コーティング404の表面上に均一に分散する酸化鉄ナノ粒子を塗布するために用いられる。容積で酸化鉄が10重量%未満含有の溶液が、20−40nmのナノ粒子間間隔を有するナノ粒子コーティングを生成するために用いられる。
【0100】
一連のヒーターからなるコーティング硬化システム408は、結合障壁とナノ粒子コーティング409を硬化するために用いられる。コーティングされた繊維は、硬化システムを助けるために白金を主成分とする触媒と共に、2時間の間、200℃の温度に晒される。
【0101】
硬化されたコーティングは、所定位置にナノ粒子を固定し、コーティングされた繊維は、フィラメント巻き取りシステム410を用いて構成要素内に巻き取られる。
【0102】
構成要素に巻き取られたフィラメント411は、その後、レジン浸出システム412を用いてビスマレイミド・マトリックスで浸出される。
【0103】
最終の硬化された高温セラミック繊維複合材料構造413は、分散した酸化鉄ナノ粒子コーティングにより与えられたシグネチャー・コントロール特性を維持しながら、600℃もの高温露出に耐えることができる。このナノ粒子コーティングは、硬化されたバリア・コーティングとの相互作用の結果として焼結しない。
【0104】
実施例2
この実施例は、鉄ナノ粒子触媒の焼結を防止するために、どのように、カーボン・ナノチューブがバリア・コーティングを用いて炭素繊維の表面に成長するかを示す。
【0105】
図15は、本発明の具体例による炭素繊維(800のテックス値を持つサイジング剤が塗布されていない炭素繊維トウ34−700 12k,Grafil Inc.,Sacramento,CA)上にCNTsを生成するシステム500を示す。システム500は、図示するように相互に関連された、炭素繊維材料繰り出し及び張力調整ステーション505、プラズマ処理ステーション515、バリア・コーティング塗布ステーション520、空気乾燥ステーション525、触媒塗布ステーション530、溶媒フラッシュ−オフ(flash−off)ステーション535、CNT成長ステーション540、及び炭素繊維材料取り込みボビン550を含んで構成される。
【0106】
繰り出し及び張力調整ステーション505は、繰り出しボビン506及びテンショナー507を含む。繰り出しボビンは、サイジング剤の塗布されていない炭素繊維材料560をプロセスへ送る。この際、繊維はテンショナー507を介して張力がかけられる。例えば、炭素繊維は、2フィート/分のラインスピードで処理される。
【0107】
サイジング剤が塗布されていない繊維560は、プラズマ処理ステーション515へ送られる。この例として、大気プラズマ処理は、開炭素繊維材料から1mmのからの「ダウンストリーム(downstream)」法に利用される。ガス状の原料は100%ヘリウムからなる。
【0108】
プラズマ強化繊維565は、バリア・コーティング・ステーション520へ送られる。この具体例では、シロキサンベースのバリア・コーティング溶液が浸漬コーティングに用いられる。前記溶液は、「AccuglassT−11スピン・オン・ガラス」(Honeywell International Inc.,Morristown,NJ)を、容積で40対1の希釈割合で、イソプロピルアルコールで希釈したものである。その結果、生じる炭素繊維材料上のバリア・コーティングの厚さは、略40nmである。バリア・コーティングは、周囲環境において室温で塗布される。
【0109】
バリア・コーティングされた炭素繊維590は、ナノスケールのバリア・コーティングの部分的硬化のために空気乾燥ステーション525へ送られる。空気乾燥ステーションは、炭素繊維スプレッドの全域にわたって加熱空気の流れを送る。使用される温度は、100℃から500℃の範囲である。
【0110】
空気乾燥後、バリア・コーティングされた炭素繊維590は、触媒塗布ステーション530へ送られる。この実施例では、酸化鉄ベースのCNT形成触媒溶液は、浸漬コーティング構成に用いられる。その溶液は、「EFH−1」(Ferrotec Corporation,Bedford,NH)を、容積比で200対1の希釈割合で、ヘキサンで希釈したものである。触媒コーティングの単分子層が、炭素繊維材料上に得られる。希釈前の「EFH−1」は、容積で3−15容積%のナノ粒子濃度範囲にある。この酸化鉄ナノ粒子は、Fe2O3とFe3O4との組成からなり、直径が略8nmである。
【0111】
触媒を含んだ炭素繊維材料595は、溶媒フラッシュ−オフ・ステーション535へ送られる。溶媒フラッシュ‐オフ・ステーション535は、炭素繊維スプレッドの全域にわたって空気の流れを送る。この例では、室温の空気が、触媒を含んだ炭素繊維材料上に残った全てのヘキサンを蒸発(flash−off)するために用いられる。
【0112】
溶媒蒸発後、触媒を含んだ繊維595は、最終的に、CNT成長ステーション540へ送られる。この実施例では、12インチの成長ゾーンを有する方形状の反応炉が、大気圧でCVD成長に用いられる。総ガス流量の98.0%が不活性ガス(窒素)であり、その残り2%は炭素原料(アセチレン)である。成長ゾーンは、750℃で保持される。上述の方形状反応炉の場合、750℃は比較的高い成長温度である。バリア・コーティングの付加は、CNT成長温度で触媒ナノ粒子の焼結を防止し、炭素繊維の表面上の効果的な高密度のCNT成長を可能にする。
【0113】
CNTコーティグ繊維597は、保管のために取り込み繊維ボビン550に巻き取られる。CNTコーティング繊維597は、長さ略50μmのCNTsを含み、従って、複合材料で利用できる状態にある。
【0114】
当然のことながら、前述の実施形態は単に本発明の具体例にすぎず、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない限りは、前述の実施形態の多くの変形例を考え出すことができる。例えば、本明細書において、数々の具体的詳細が、本発明の例示の実施形態の説明及び理解を完全にするために提供されている。しかしながら、当業者であれば、本発明の1以上の詳細がなくても、又は他の処理、材料、構成要素等を用いて本発明を実施でき得ることを認識するであろう。
【0115】
また、場合によっては、周知の構造、材料、又は工程を図示しないか、又は詳細に説明しないことにより、例示の実施形態の態様が曖昧になることを避けている。当然のことながら図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。本明細書全体にわたって「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「ある実施形態(実施形態の中には)」についての言及は、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ということを意味する。従って、本明細書の全体にわたって様々な箇所で見られる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。更に、特定の機能、構造、材料、又は特徴は、1以上の実施形態においてあらゆる適切な方法により組み合わせることができる。従って、このような変形は、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン・ナノチューブ(CNT)成長、より詳しくは、繊維基材上のCNT成長に関する。
【0002】
(関連出願の参照)
本出願は、2009年3月3日出願の米国仮出願第61/157,096号及び2009年3月29日出願の米国仮出願第61/182,153号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものであり、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし。
【背景技術】
【0004】
繊維をベースとする複合材料では、繊維は、補強材としての機能を果たす。マトリックス材料は、繊維を局部集中し、ある場合には、それらの配向を制御する。また、マトリックス材料も、複合材料における繊維間の負荷伝達媒体としての機能を果たす。それらの優れた機械特性により、カーボン・ナノチューブ(CNTs)は、繊維複合材料を更に強化するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、繊維上及び/又は複合材料内のCNTsの合体及び配列には、問題がある。繊維上にカーボン・ナノチューブを成長させる現在の方法は、カーボン・ナノチューブの低い重量パーセント/濃度を有する、もつれたそして未調整のカーボン・ナノチューブをもたらす。更に、繊維をベースとする基材の中には、CNTsが成長する温度に敏感なものもある。この温度感受性は、CNT成長温度で繊維材料の固有不安定性として現れる。また、CNT成長プロセスにおける温度感受性も、繊維表面上でのナノ粒子の移動度によるCNTナノ粒子触媒焼結の結果である。
【0006】
異なる繊維をベースとする基材上におけるカーボン・ナノチューブのその場成長のための改善された方法は、他の機械的、温度的及び電気的なアプリケーションと同様に、より一層強い複合材料を生産する上で有用である。本発明は、この必要性を満たすと共に関連する利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様において、本明細書に開示された実施形態は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ(CNT)を合成するためのシステムに関するものであり、カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるために繊維材料の表面を改質するのに適用された表面処理システムと、前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するのに適用された、前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システムと、CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための、前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムと、を含んで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用基材の準備システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用繊維トウの準備システムの概略図である。
【図3】本発明の一態様によるバリア・コーティングとの接着を促進するための繊維表面を処理するためのプロセスフロー及びバリア・コーティング及び触媒粒子を塗布するためのプロセスフローを示す図である。
【図4】低温プラズマ処理システムの一実施形態の概略図である。
【図5】湿式表面処理システムの一実施形態の概略図である。
【図6】噴射バリア・コーティング塗布システムの一実施形態の概略図である。
【図7】本発明の別の実施形態によるカーボン・ナノチューブのその場成長用繊維トウの準備システムの概略図である。
【図8】本発明の別の態様によるバリア・コーティングとの接着を促進するため繊維表面を処理するためのプロセスフロー及びバリア・コーティング及び触媒粒子の塗布のためのプロセスフローを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による図7のシステムで処理された基材の断面図である。
【図10】本発明の別の実施形態による図2のシステムで処理された基材の断面図である。
【図11】基材上に等角的に付着されたバリア・コーティング内に埋め込まれたナノ粒子を示す図である。
【図12】バリア・コーティング内に埋め込まれ、基材と表面接触しているナノ粒子を示す図である。
【図13】図11に示す埋め込まれたナノ粒子上のカーボン・ナノチューブの例示的な成長を示す図である。
【図14】強化されたシグネチャー・コントロール(signature control)特性を有する高温セラミック繊維複合材料を生成するためのシステムを示す図である。
【図15】炭素繊維上でCNTsを生成するためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、1つには、繊維材料(さもなければ、高温等のCNT成長に関連する厳しい条件と適合しない繊維材料を含む)上のカーボン・ナノチューブの成長方法に対してなされるものである。本発明方法は、ナノ粒子焼結を抑制又は防ぐために及び/又は温度感受性繊維材料をCNT成長に関連する高温から保護するために、バリア・コーティングを用いる。本発明方法は、遊離したCNTs、付着物上のCNTs(低いCNT密度を示すCNT浸出繊維及び/又はCNT配向に対する制御が不十分であるCNT浸出繊維を含む)を用いることで達成されたこれらを超える重量パーセンチのカーボン・ナノチューブを有する複合材料製品を提供するために、複合材生産に組み込めるCNT浸出繊維を製造する。このようにして、本発明方法は、繊維軸に対して略垂直に配向されたカーボン・ナノチューブの成長のための条件を提供する。
【0010】
本発明方法は、CNTナノ粒子触媒の被毒も防ぐ。高い成長温度では、触媒ナノ粒子は、若干の繊維材料組成物の表面と反応することもあり得る。例えば、炭素又は有機組成物からなる繊維材料は、触媒ナノ粒子を汚染し、その結果、CNT成長を抑制する。理論に拘束されるものではないが、そのような基材−ナノ粒子の相互作用の結果、触媒ナノ粒子に炭素ラジカルを過剰供給するということが示唆されている。更に、カーボン・ナノチューブの核生成に先立つ炭素又は有機繊維から触媒ナノ粒子内への表面炭素の拡散は、CNT成長を妨げる。ある実施形態では、本明細書で用いられる方法は、繊維材料の表面と触媒ナノ粒子の相互作用を防ぐか又は抑制し、これによって、繊維上のカーボン・ナノチューブの配列強化に加え、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの成長収率の増加も可能となる。
【0011】
また、本発明方法は、繊維材料の表面上のナノ粒子の焼結も抑制する。CNTナノ粒子触媒を含む繊維材料を加熱すると、触媒ナノ粒子は繊維材料表面上で拡散する。的確な繊維組成次第では、ナノ粒子表面移動によって、ナノ粒子の焼結は望ましくない量となり、CNTの成長を抑制することになる。このナノ粒子間の相互作用は、本発明のバリア・コーティングを用いることによって減少される。
【0012】
ある実施形態では、本発明方法で用いられるバリア・コーティングは、液状で繊維上に塗布され、その後に硬化される。例えば、液状のバリア・コーティング内に混合させる等して、CNTナノ粒子触媒は、バリア・コーティングと略同時に繊維上に付着される。ある実施形態では、前記触媒は、バリア・コーティングを塗布した後、繊維上に塗布される。そのような実施形態では、バリア・コーティングは、CNTナノ粒子触媒の付着に先立って選択的、部分的に硬化される。
【0013】
液状でバリア・コーティングを塗布することによって、コーティング厚さを容易に制御することができ、更に後で説明されるように、ナノ粒子は鋳型のいかなる影響も受けずに密に充填できる。バリア・コーティングとナノ粒子触媒が繊維材料上に塗布されると、バリア・コーティングは、完全に硬化され、そして、ナノ粒子を所定の位置に「固定(locking)」する。触媒を含んだ繊維材料は、この時点でカーボン・ナノチューブ合成に対しての準備が整っている。繊維材料、バリア・コーティング及びCNTナノ粒子触媒の構造は、1)ナノ粒子焼結の抑制又は防止、2)断熱バリア・コーティングによる繊維材料の保護、3)ナノ粒子−基材間の相互作用の抑制又は防止、の1つ以上を備える。
【0014】
本明細書では、用語「等角的付着」とは、基材へのバリア・コーティングの塗布に関して用いられる場合、基材形状に拘わらず、基材上、そして基材と面接触してバリア・コーティングを被覆するプロセスを指す。ナノ粒子が既に付着した基材上のバリア・コーティングの等角的付着は、必要な(desirec)場合、ナノ粒子表面の少なくとも一部の露出を妨げない。そのような実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に封入することなくナノ粒子間の空洞を埋めることが可能である。これは、バリア・コーティングの液状の濃度及び/又は粘度を変えることによって達成できる。
【0015】
本明細書では、用語「バリア・コーティング」とは、好ましくないナノ粒子間の相互作用(例えば、基材面上における焼結や凝集等)を抑制又は防止するために用いられるあらゆるコーティングを指す。また、前記用語は、好ましくないナノ粒子−基材間の相互作用を抑制又は防止するために用いられるコーティングも含む。「バリア・コーティング」は、更に、特定の基材への付着力のため、及び/又は、ナノ粒子が触媒、種物質又は反応物質として用いられる反応に使用される反応環境から基材を保護するために選択される。本発明のバリア・コーティングは、例えば、ゲル、懸濁液及び分散液等の液状で基材に塗布可能な熱的絶縁物である。液状でバリア・コーティングを与えることによって、その後に、部分的又は完全な硬化が可能となる。前記硬化プロセスは、一般的に、加熱を含む。例示的なバリア・コーティングは、例えば、スピン・オン・グラス又はアルミナを含む。
【0016】
本明細書では、用語「凝集」とは、基材上に付着したナノ粒子を融合させるあらゆるプロセスを指す。凝集条件は、ナノ粒子の全体又は例えばその表面等ナノ粒子の一部を融点まで加熱することを含む。更に、凝集は、基材上のナノ粒子の表面拡散を早める条件を指し、加熱することを含む。後者の条件に関しては、用語「凝集」は、用語「焼結」と同じ意味で使われる。
【0017】
本明細書では、用語「ナノ粒子」若しくはNP(複数ではNPs)、又はその文法的な同等物とは、球の等価直径が約0.1〜約100ナノメートルの間のサイズの粒子をいうが、NPsは球形である必要はない。そのようなナノ構造体の物質は、あらゆる次元に関して大きなアスペクト比を欠いたあらゆる配列を含む。
【0018】
本明細書では、用語「有効径(effective diameter)」とは、略球状のナノ粒子のナノ粒子直径の平均値を指す。
【0019】
本明細書では、用語「埋め込み(emdedding)」とは、バリア・コーティング内のナノ粒子に関連して用いられる場合、基材との表面接触を含めあらゆる深さにまで液状のバリア・コーティングでナノ粒子を取り囲む及び/又はナノ粒子を完全に封入するプロセスを指す。バリア・コーティング内における本発明のナノ粒子の「埋め込み」及びバリア・コーティングの硬化は、ナノ粒子を所定の位置に機械的に固定して、それらの移動及びその後の凝集を防ぐ。バリア・コーティング内におけるナノ粒子の「埋め込み」は、バリア・コーティングが付着した基材と表面接触する深さにまでバリア・コーティング内にナノ粒子を設置することを含むが、まだ、ナノ粒子の表面は露出したままである。また、ナノ粒子は、基材上にナノ粒子を設置した後、バリア・コーティングを塗布することによっても「埋め込まれた」状態になる。また、ナノ粒子は、同時にバリア・コーティングとナノ粒子を塗布することによってもバリア・コーティング内に埋め込まれる。
【0020】
本明細書では、用語「カーボン・ナノチューブ」又は「CNT」とは、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、二層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)を含むフラーレン群からなる多数の円筒形状の炭素同素体のあらゆるものをいう。CNTsは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は終端が開口していてもよい。CNTsには、他の物質を封入するものが含まれる。
【0021】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属」には、遷移金属元素ベースの塩形態(例えば、酸化物、炭化物、窒化物、アセテート等)も含まれる。
【0022】
本明細書では、用語「基材」とは、本明細書で記載された方法を用いるカーボン・ナノチューブの成長によって改質が可能な表面を有するあらゆる部材を指す。例示的な基材は、例えばテープ、ヤーン(yarns)、トウ(tows)、ロービング(rovings)、リボン等を含む繊維材料、及び、例えばプライ、織物(fabrics)、3次元織布及び不織布構造、マット等のような高規則構造を含む。また、基材は、例えばシリコンウエハ、グラファイトシート、高温プラスチックシート等を含む表面が平坦なシートも含む。
【0023】
ある実施形態では、本発明は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成するためのシステムを提供するが、これは、1)カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるための繊維材料の表面を改質するために適用された表面処理システム、2)前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するために適用された前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システム、及び、3)CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムを含んで構成される。
【0024】
また、繊維材料上にCNTを合成するためのシステムは、CNT成長触媒ナノ粒子を付着させるための触媒塗布システムも含んで構成される。触媒ナノ粒子は、ある実施形態では、あらゆるd‐ブロックの遷移金属である。ある実施形態では、CNT成長触媒ナノ粒子は、鉄、酸化鉄及びこれらの混合物を含む。
【0025】
触媒塗布システム及びバリア・コーティング塗布システムは、いくつかの方法で構成されている。ある実施形態では、両システムは、触媒ナノ粒子とバリア・コーティングの同時付着用に構成されている。このような実施形態では、浸漬又は噴霧塗布用の液体として供給されるバリア・コーティングを、触媒ナノ粒子と混合する。別の実施形態では、両者は、2つの異なる噴霧塗布によって略同時に供給される。
【0026】
ある実施形態では、触媒塗布システムは、バリア・コーティングシステムの上流にある。そのような実施形態では、触媒をプラズマ処理等の後に繊維材料に塗布する。理論に拘束されるものではないが、触媒ナノ粒子は、後述するように、「粗面化(roughening)」プロセスによって作られたナノスケールのピット(pit)又はウエル(well)内に付着させる。この構成では、バリア・コーティングを、触媒を含んだ繊維材料に付着させ、その後、バリア・コーティングされた繊維材料を部分的に硬化する。部分的に硬化すると、ナノ粒子は再分配が可能となり、その表面領域の少なくともある部分で現れて、下流のCNT合成が可能になるということが示唆されている。
【0027】
更に別の構成では、触媒塗布システムは、バリア・コーティングシステムの下流にある。そのような実施形態では、触媒を、バリア・コーティングを部分的に硬化した後に塗布する。部分的に硬化されたバリア・コーティングは、等角コーティングとしての「粘着(sticky)」表面を提供して、付着したナノ粒子を捕らえ、そして、いかなる望ましい程度にもナノ粒子が埋め込まれるようにできる。
【0028】
本発明のCNT合成システムには、更に、カーボン・ナノチューブの化学気相成長(CVD)又はプラズマCVD成長用の炭素原料供給源を装備するCNT成長チャンバーを含むCNT成長システムが含まれる。CNT成長チャンバーは、CNT成長に使用される反応性炭素種を効果的に利用するための小さな空洞チャンバーである。炭素原料は、当該技術分野で用いられるあらゆるタイプのものであってよく、例えば炭化水素、CO、合成ガス、メタノール、アセチレン、エチレン等を含む。
【0029】
本発明のこれらのシステムは、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの連続合成用に構成される。これによって、スプール又はマンドレル上に巻き取り可能な長さで提供された繊維材料は、表面処理システムの上流の繰り出しシステムによって与えられ、そして、CNT合成後、繊維材料は、CNT成長システムの下流で再度巻き取られる。ある実施形態では、CNT成長システムから出て来た繊維材料は、再度巻き取る前にレジン浴内で処理される。
【0030】
図1に、本発明の例示的な実施形態による繊維材料の表面処理用システム100の概略図を示す。図示された実施形態において、システム100は、表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120及びバリア・コーティング硬化システム130を含んで構成される。システム110,120,130と通信するコントローラ190は、種々のシステムパラメータと繊維材料の表面上でカーボン・ナノチューブを成長させるための繊維材料の準備プロセスを監視及び/又は制御するように機能する。
【0031】
表面処理システム110は、上流の基材供給源(図示せず)から繊維材料を受け取る。1つの構成では、表面処理システム110は、金属繊維、有機繊維等あらゆる繊維タイプが使用されるが、ここでは、例えば、アラミド繊維、セラミック繊維或いはガラス繊維等、炭素繊維を受け取る。この例示的な実施形態では、供給源からの炭素繊維の送り速度は、コントローラ190によって制御される。表面処理システム110は、繊維表面の化学的性質を変えるために適用され、繊維材料表面の湿潤性と接着性の少なくとも1つを改善する。繊維材料表面の湿潤性と接着性の改善は、繊維材料表面にバリア・コーティングのより一層の受容性と保持性を与える。
【0032】
例示的な実施形態では、表面処理システム110における繊維表面の表面処理は、繊維の低温プラズマ処理を含む。図4に示す1つの構成では、表面処理システム110は、コロナ放電によるプラズマ処理システム400の形態をとる。ほんの一例として、繊維430はシステム400のプラズマ処理筐体を、与えられた速度(例えば約4フィート/分)で通過する。システム400の筐体を通過する繊維430は、第1ガスと第2ガスの混合ガスに晒される。システムへのガス混合物の供給速度と他の変数は、コントローラ190によって制御される。第1ガスの機能は、コロナ放電を受けた時にプラズマを点火又は発生させることである。当該技術分野で周知のように、コロナ放電は、導体周囲の流体の電離によって生じる電気的な放電であり、電流が流れ、所定の閾値を超えるポテンシャル勾配を生成する。第1ガスは、ガス混合物内に浸かった導体を通って電流が流れたときに、イオン化されてプラズマを発生させる。第2ガスの機能は、繊維表面と反応して、繊維表面の湿潤性及び接着性のうちの少なくとも1つを高めることである。理論に拘束されるものではないが、プラズマ処理は、繊維材料表面に例えば窪み(valley)等のナノスケールの機構を作り出す「粗面化された(roughened)」表面を提供する。また、プラズマは、繊維材料及びバリア・コーティング間を強固に結合する官能基手段も作り出す。繊維430は、プラズマヘッド410からのプラズマ420の排出流に晒される。コントローラ190は、プラズマヘッド410からのプラズマの放電速度を制御する。第1ガスの例としては、例えばヘリウム及びアルゴンである。第2ガスの例としては、例えば酸素である。第2ガスの選択は、処理される繊維材料のタイプによって決まる。例えば、酸素は、炭素繊維の処理用第2ガスに有用である。
【0033】
ほんの一例として、ガス混合物は、約30リットルの第1ガスと約0.3リットルの第2ガスを含む。繊維は、電界の存在下で約30.3リットル/分の流速の前述のガス混合物に晒される。ガス混合物中の酸素は、繊維表面に結合した炭素と反応して、例えばカルボキシル基及びカルボニル化合物(例えばケトンやアルデヒド等)等の種々の有機官能基を形成する。論理に拘束されるものではないが、酸素は、表面からいくつかの炭素原子を除去して、炭素繊維材料表面のネットワーク内に反応性炭素原子を更に生成する傾向もあると示唆されている。このようにして、繊維表面に形成されたカルボキシルとカルボニル化合物は、未処理の炭素繊維表面と比べてバリア・コーティングを受入れる傾向が高い。この改善されたバリア・コーティングの接着性は、例えばプラズマによって形成された界面活性官能基に付随する水素結合受容体及び水素結合供与体等の非結合相互作用の結果である。このようにして、繊維表面は、バリア・コーティングの塗布のために準備される。
【0034】
図5に示す別の例示的な実施形態では、システム110における繊維の表面処理は、湿式コーティング処理システム500を含む。システム500は、上流の繊維供給源から繊維430を受入れる。繊維430を、繊維430の表面を処理するために浴容器510内の化学溶液520に浸す。繊維430は、2つの案内ローラ540,550によって導かれる。浴ローラ530は、溶液520内に繊維430を浸す。1つの構成では、化学溶液は、溶媒(例えば水)中に体積比で約1%の溶質(例えば、ジメチルイソプロピルシラン(dimethylisopropylsilane)、メチルシルコシロキサン(methylcylcosiloxane)、ポリシロキサン(polysiloxanes)、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane),ポリジフェニルシロキサン(polydiphenylsiloxane)、ポリカルボシラン(polycarbosilanes)、アルモクサン(alumoxane)、メチルシロキサン(methylsiloxane)、シラン(silane)、及び/又はアルコキシシラン(alkoxysilanes)等)を含む。オキシシラン(oxysilanes)は、繊維430の表面で反応し、それによって、バリア・コーティングをより受容可能な化合物を形成する。少なくとも2つの異なる官能基の組が、表面上に形成される。官能基の第2の組がバリア・コーティングとうまく結合するのに対して、官能基の第1の組は、繊維とうまく結合する。これら化合物は、集団で繊維表面とバリア・コーティングに接着するする傾向があり、これによって、繊維表面とバリア・コーティング間の接着性を強化する。表面処理後、繊維430は、コーティング処理システム500から出て、下流のバリア・コーティングシステム120へ入る。バリア・コーティングシステム120は、処理された繊維表面上にバリア・コーティングを塗布する働きをする。例示的な実施形態では、バリア・コーティングは約10ナノメートル(nm)から約100ナノメートル(nm)の厚さに塗布される。バリア・コーティングのタイプは、繊維と触媒の化学的性質によって決まる。バリア・コーティング材料は、繊維を触媒粒子との相互作用から保護するために選択される。例示的な実施形態では、炭素繊維用のコーティングは、アルモキサン、アルミナナノ粒子、又はその他のアルミナコーティング溶液等のアルミナコーティングを含む。別の実施形態では、炭素繊維用のコーティングは、スピン・オン・ガラス、ガラスナノ粒子等のガラスコーティング、又はメチルシロキサンを主成分とする溶液等のその他のガラスコーティング溶液を含む。そのような境界コーティング及びバリア・コーティングは、その他の基材(例えば、ガラス繊維、ケルバー(商標登録)(アラミド繊維タイプ))や他の有機繊維上にも用いられる。例えば、アルモキサンは、カーボン・ナノチューブ成長プロセスにおいて直面する高温から繊維を保護するためにケルバー上に用いられる。バリア・コーティング材料の選択のための基準の1つは、与えられた繊維材料表面にどのようにしてうまく接着するかである。別の基準は、コーティングが、カーボン・ナノチューブ成長触媒ナノ粒子の繊維表面との相互作用を軽減する度合である。
【0035】
本発明の例示的な実施形態では、バリア・コーティング120は、浸漬コーティングシステムを含んで構成される。浸漬コーティングシステムは、図5に示された湿式コーティング処理システム500と類似している。システム500は、上流の表面処理システム110から表面処理された繊維430を受入れる。1つの構成では、メチルシロキサンを主成分とする溶液と例えばイソプロピルアルコール等の溶媒とが体積比で約1対約120のコーティング溶液が用いられる。繊維材料430、例えば炭素繊維は、約15秒の与えられた継続時間tdの間に、溶液中へと与えられた速度(例えば約4フィート/分)で送り込まれる。これにより、繊維材料430の表面に塗布されたバリア・コーティングは、ある実施形態では、約10nmから約100nmの厚さを有し、別の実施形態では、約10nmから約20nmの厚さを有する。溶液中における繊維材料の前記浸漬時間又は滞留時間は、繊維表面上に均一のバリア・コーティングを得るために調整される。また、滞留時間は、異なるタイプの繊維及びそれに対応するバリア・コーティング材料によっても変わる。得られるバリア・コーティングの厚さは、溶液の濃度の関数であり、従って、コーティング溶液520の濃度を調節することによって変わる。その他のコーティング材料は、例えばアルモキサン、アルミナナノ粒子等のアルミナを主成分とするコーティング材料、及び例えばスピン・オン・ガラスやガラスナノ粒子等のガラスを主成分とするコーティング材料を含む。バリア・コーティングの塗布後、繊維は下流のバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。
【0036】
図6に示す別の例示的な実施形態では、バリア・コーティングシステム120は、噴霧コーティングシステム600を含んで構成される。コーティングシステム600は、処理システム110から表面処理された繊維430を受入れる。上述した、流体容器610からのメチルシロキサン‐イソプロピルアルコール溶液は、1つ以上の噴霧ノズル630を介して、繊維430の表面上にバリア・コーティングを塗布するために用いられる。溶液650は、繊維430上に均一に噴霧される。繊維供給速度、ノズル配向及び噴霧速度と圧力は、コントローラ190によって制御される。十分な厚さのバリア・コーティングが繊維430の表面に噴霧されると直ちに、繊維430は、下流のバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。バリア・コーティング硬化システム130は、バリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出すために部分的にバリア・コーティングを硬化するよう機能する。システム130は、バリア・コーティング塗布ステーション120を通過した処理済み繊維を受入れる。この時点では、モノリシック固形コーティングへのバリア・コーティングの変化がまだ完全でないため、新たに塗布されたバリア・コーティングは、繊維に恒久的に付着されるような十分な構造的硬直性に欠けている。システム130は、CNT触媒ナノ粒子を受入れて保持し、そしてバリア・コーティングを繊維表面にしっかりと付着させておくために、その構造的硬直性を増大するよう繊維のバリア・コーティングを部分的に硬化する働きをする。ある実施形態では、CNT触媒ナノ粒子は、部分的な硬化に先立って塗布され、ある実施形態では、CNT触媒ナノ粒子は、バリア・コーティングの塗布と略同時に塗布される(バリア・コーティング溶液内に触媒ナノ粒子を混合することを含む)。
【0037】
1つの構成では、システム130は、局所的に浄化された空気中で約250℃の温度に繊維をさらす加熱チャンバーを含む。例示的な実施形態では、窒素(N2)ガスが、繊維材料表面上に新たに塗布されたバリア・コーティングのあらゆる大気汚染を軽減する局所的に浄化された空気を作り出すために用いられる。繊維材料は、所定の速度(例えば約4フィート/秒)でシステム130を通過する。バリア・コーティングによる繊維の部分的硬化は、その後に塗布される触媒ナノ粒子の受入れ可能な状態を保ちながらも、繊維表面に付着したままの状態にするために、バリア・コーティングの擬似硬化状態又はゲル状状態を作り出す。上述したが、触媒は、バリア・コーティングと略同時に塗布される
【0038】
バリア・コーティングの塗布後、繊維は、繊維材料上に触媒ナノ粒子を塗布するために触媒コーティングシステムへ供給される。触媒粒子は、湿式浸漬法或いは化学浴法を用いて処理された繊維上に塗布される。塗布された触媒ナノ粒子は、擬似的に硬化されたバリア・コーティングに付着する。バリア・コーティングと同時に付着する場合では、触媒ナノ粒子は、バリア・コーティング層全体にわたって付着する。
【0039】
ある実施形態では、バリア・コーティングされた繊維は、カーボン・ナノチューブの合成用成長チャンバーを通過し、比較的高温で、繊維表面のバリア・コーティングを完全に硬化する。ある実施形態では、バリア・コーティングの十分な硬化は、CNT成長チャンバーとは別に行われる。CNT成長中、触媒ナノ粒子は比較的高温でより一層反応し、同時に完全に硬化されるバリア・コーティング内にそれ自身を埋め込む。同時に、バリア・コーティング内に埋め込まれた触媒ナノ粒子が、適切な条件の下で、分解炭素供給ガスに晒されたときに核生成を開始するのでCNT形成が起こる。例えば、成長チャンバー内の温度は、約500℃以上である。従って、バリア・コーティングは、触媒の被毒をもたらす触媒ナノ粒子に対する有害な繊維表面の相互作用を軽減することによって繊維表面を保護すると同時に、炭素繊維上のカーボン・ナノチューブのその場成長を促進する。また、バリア・コーティングは、繊維材料表面上のナノ粒子の凝集及び焼結も防止する。
【0040】
コントローラ190は、基材供給速度、プラズマガス混合物供給速度及び硬化温度の1つ以上を含むシステムパラメータを、独立して、感知、監視、制御するために適用される。コントローラ190は、統合された自動電子システムコントローラであり、パラメータデータを受信し、制御パラメータの種々の自動調整又は手動調整を実行する。
【0041】
図2に、本発明の別の実施形態による基板の表面処理用システム200の概略図を示す。示された実施形態では、システム200は、繊維分離システム240、表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120、バリア・コーティング硬化システム130、及び触媒コーティングシステム250を含んで構成される。例えばトウ(又はロービング又はヤーン)等の繊維束が処理される場合、繊維分離システム240は、その繊維を分離するために用いられる。例示的なトウは約1000から約12000のファイバ(fibers)を含む。例示的な実施形態では、広げられ、正の空気圧を用いて平坦化される。別の実施形態では、トウは広げられ、真空又は減圧等の負の空気圧を用いて平坦化される。例示的な実施形態では、繊維分離システム240は、エアー・ナイフ(air knife)である。当該技術分野において周知であるように、エアー・ナイフは、圧縮空気が層状パターンで排出する一連の孔又は連続的なスロットを含む圧縮空気プレナムである。その他の実施形態では、他のよく知られた技術及び装置が、繊維トウの繊維束を広げるか分離するために用いられる。
【0042】
繊維が広げられるか又は分離されたなら、繊維は、上述したように、下流の表面処理システム110、バリア・コーティングシステム120及びバリア・コーティング硬化システム130へ搬送される。その後、バリア・コーティングを施された繊維は、下流の触媒コーティングシステム250へ供給される。1つの構成では、触媒コーティングシステム250は、酸化鉄又は酸化ニッケル等の触媒粒子のコロイダルナノ粒子溶液である。バリア・コーティングを施された繊維は、触媒粒子が擬似硬化されたバリア・コーティング内に埋め込まれた溶液内に浸漬される。その後、触媒がコーティングされた繊維は、適切な炭素供給ガスと共に適切な温度の成長チャンバー内に導入される。炭素供給ガスの分離で生じる遊離炭素ラジカルは、繊維材料表面上で触媒ナノ粒子の存在下でカーボン・ナノチューブの成長を開始する。
【0043】
図3には、カーボン・ナノチューブの成長のために、例えば繊維トウ等の繊維束を準備するためのプロセスフローが、本発明のいくつかの実施形態に従って示されている。ブロック310では、繊維束又はトウが、繊維表面領域を露出することによって繊維の表面処理を容易にするために広げられる。ブロック320では、繊維は、バリア・コーティング塗布用の繊維表面を準備するために表面処理プロセスを受ける。表面処理プロセスは、繊維表面の化学性質を変えてバリア・コーティングの湿潤性と接着性の少なくとも1つを改良する。ブロック330では、バリア・コーティングを繊維に塗布する。バリア・コーティングは、繊維を保護し、カーボン・ナノチューブの成長に有害な触媒粒子と繊維表面との間の相互作用を軽減する。バリア・コーティングは、繊維を高温酸化と分解からも保護する。ブロック340では、バリア・コーティングを、部分的に硬化してバリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出す。バリア・コーティングの擬似硬化状態において、触媒粒子は、バリア・コーティング内に埋め込まれる。
【0044】
図10には、図3のプロセスで生じる例示的な基材1010の横断面図が示されている。バリア・コーティング1020は、繊維基材1010に塗布される。その後に、バリア・コーティングがコーティングされた基材1010には触媒ナノ粒子が塗布され、その結果、バリア・コーティング1020には、触媒ナノ粒子が埋め込まれる。バリア・コーティング1020は、触媒ナノ粒子1030と基材1010との間及び触媒ナノ粒子間の相互作用を最小限にする働きをする。
【0045】
図7に、本発明の更に別の例示的な実施形態により基材の表面を処理するためのシステム700の概略図を示す。システム700の構成要素は、図2に示されたシステム200の構成要素と同様である。システム200では、バリア・コーティングが繊維に塗布されて部分的に硬化された後に、触媒ナノ粒子を繊維に塗布する。これとは対照的に、システム700では、表面処理システム110から届いた表面処理された繊維に、触媒粒子を塗布する。触媒粒子を繊維表面に塗布した後に、繊維は、バリア・コーティングを塗布するためにバリア・コーティングシステム1200に供給され、その後、バリア・コーティングを硬化するためにバリア・コーティング硬化システム130へ供給される。
【0046】
繊維は、プラズマ処理やウエット化学エッチング等の技術を用いて表面処理システム110で表面処理される。その後、表面処理された繊維は、触媒ナノ粒子を受入れ、そして保持できる状態になる。次に、表面処理された繊維は、触媒塗布システム250へ供給され、そこで触媒粒子が繊維表面に塗布される。触媒粒子は、化学的及び/又は機械的に繊維表面に結合される。繊維の表面処理は、繊維表面と触媒粒子との機械的連結の他に、繊維表面へのバリア・コーティングの接着もまた可能にするピットや溝等のナノスケールの機構を含む好ましい形態を生成するということが示唆されている。更に、触媒粒子と硬化されたバリア・コーティングとの間の化学的結合は、それらの間に形成される共有結合及び/又はπ‐π(pi‐pi)相互作用の結果として起こることが示唆されている。
【0047】
図8に、本発明の別の態様に従いカーボン・ナノチューブの成長用繊維束(例えば繊維トウ)を準備するためのプロセスフローを示す。ブロック810では、繊維束又はトウを広げ、繊維表面領域を露出することによって繊維の表面処理を容易にする。ブロック820では、バリア・コーティング塗布用の繊維表面を準備するために、繊維を表面処理プロセスに晒す。表面処理プロセスは、繊維表面の化学性質を変えて、バリア・コーティングの湿潤性と接着性の少なくとも1つを改良する。ブロック830では、触媒粒子を、表面処理した繊維に塗布する。触媒粒子は、繊維表面に機械的及び/又は化学的に結合される。
【0048】
ブロック840では、バリア・コーティングを繊維に塗布する。バリア・コーティングは、繊維を保護し、カーボン・ナノチューブの成長に有害な触媒粒子と繊維表面との間の相互作用を軽減する。バリア・コーティングは、繊維を高温酸化と分解からも保護する。ブロック840では、バリア・コーティングを、バリア・コーティングの擬似硬化状態を作り出すために少なくとも部分的に硬化する。ある実施形態では、バリア・コーティングが少なくとも部分的に硬化されている間に、繊維表面に塗布された触媒ナノ粒子が、バリア・コーティングを貫いて表面に出現する。バリア・コーティングから浮かび上がった触媒ナノ粒子は、カーボン・ナノチューブ合成のための核生成場所を提供し、この時に、繊維材料は、CNT成長チャンバー内に導入される。また、バリア・コーティングは、触媒粒子を有する繊維表面の化学的相互作用を軽減すると同時に、繊維表面に触媒ナノ粒子を固定するよう作用する。
【0049】
図9に、図8のプロセスから生じる典型的な基材910の横断面図を示す。触媒粒子930は、基材910に塗布される。その後、バリア・コーティング920は基材1010に塗布される。バリア・コーティング920が少なくとも部分的に硬化されるため、触媒粒子930は、バリア・コーティング920を貫いて出現し、そしてカーボン・ナノチューブの核生成場所を提供する。バリア・コーティング920は、触媒粒子930と基材910との間の相互作用を最小限に抑える働きをするが、これによって、触媒粒子930の被毒を軽減する。また、バリア・コーティング930は、触媒粒子930間の相互作用を最小限にする上でも役立つ。
【0050】
触媒塗布ステップとバリア・コーティング塗布ステップの順序に拘わらず、繊維材料は、触媒ナノ粒子が散在するバリア・コーティングでコーティングされる。触媒ナノ粒子は、バリア・コーティングから突き出ており、カーボン・ナノチューブ合成のための核生成場所を提供する。そのような基材は、成長チャンバー内に導入され、カーボン・ナノチューブ合成に用いられる高温に晒されると、バリア・コーティングは、高温に対する基材表面の露出を効果的に減らす。言い換えれば、この減らされた露出は、基材表面と触媒粒子との好ましくない化学反応を抑え、それによって、触媒粒子の被毒を減少させる。触媒被毒の減少により、成長チャンバー内のCNT合成中にCNT収率は改善する。
【0051】
繊維上にCNTを生成するための従来方法に比べて、本発明の方法及びシステムは、より大きな重量パーセントでカーボン・ナノチューブを生成できる。例えば、触媒の化学的性質を変える現在の方法の場合、達成される表面上の繊維の収率は極めて低く、例えば、複合材料質量のわずか約0.5%から約1.0%に過ぎない。本明細書に記載された方法は、約3%から約5%より大きい標準的な収率を達成するが、場合によっては、樹脂マトリックスで最大で複合材料質量の約20%まで達成することもある。しかしながら、本発明方法を、意図的に重量をより低くするために用いることもできる。従って、例えば、約0.1%までにも低い重量を達成できる。ある実施形態では、繊維上の浸出CNTsの重量パーセント範囲は、約0.1から約20%の間で、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%及び20%と、この間のあらゆる端数を含む。
【0052】
本発明方法は、整然と並んだ、基材に対して垂直である基材上のカーボン・ナノチューブを提供する。ナノチューブ上のCNT成長は、それらが絡まる及び/又はそれらが共通のCNT壁を共有するような十分な密度及び/又は長さを有する。その他の実施形態では、CNTsは、基材と垂直で平行に成長するが、どのCNT壁も共有しない。CNT浸出生成物における、繊維に対するカーボン・ナノチューブの増大された付着力は、カーボン・ナノチューブ及び基材表面の界面を通して改善された伝達荷重に変換する。
【0053】
本開示は、1つには、高温でのナノ粒子の焼結や凝集を実質的に減少するよう基材上や繊維表面上の適所に分散されたナノ粒子を「固定する(lock)」ために、あらゆる基材(繊維をベースとする基材を含む)上にバリア・コーティングを用いる方法に対してなされる。本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、ナノ粒子と接触している。ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全には封入せず、これによって、ナノ粒子の焼結や凝集を防止しながら、望ましい反応環境にナノ粒子を露出させている。ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に封入する。このような実施形態では、ナノ粒子は、例えば、高いエネルギ放射を吸収する手段として機能する。そのような吸収に伴う熱は、バリア・コーティングがない場合にナノ粒子の焼結を引き起こすには十分である。バリア・コーティングとナノ粒子は、順序には拘わらず連続して基材表面上に付着するか、又は、同時に基材に塗布される。
【0054】
本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、バリア・コーティング自体が、反応性プロファイル(reactivity profile)及び/又はナノ粒子による一連の触媒又は種付け反応には影響を及ぼさないような十分に薄い層(効果的なナノ粒子径以下)として与えられる。例えば、整列されたCNT成長のためにナノチャネル(nanochannel)のテンプレート部材に埋め込まれたCNT成長触媒を用いる場合、前記テンプレート部材はCNTの大きさ(CNT成長の幅及び方向を含む)に影響を与える(Li et al. App. Phys. Lett. 75(3):367−369(1999))。
【0055】
ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を完全に埋め込む。また、ある実施形態では、バリア・コーティングは、ナノ粒子を埋め込むが、その一方で、埋め込まれたナノ粒子へ接触ができるようにバリア・コーティングを通してある程度の拡散を可能にする。本発明方法は、予め形成されたテンプレートの種類の制約なしに、高密度配列のバリア・コーティング内にナノ粒子を埋め込む。これにより、より高いナノ粒子密度がもたらされると同時に、ナノ粒子のより均一な密度も可能となる。これらの利点は、バリア・コーティングがナノ粒子の大きさに適合するように、液状でバリア・コーティングを提供することによって実現される。これは、焼結が防止され、CNT形態は、CNTが存在する所定のチャネル(channel)よりもむしろナノ粒子自体によって制御されるため、これはCNT合成アプリケーションには、特に有益である。
【0056】
本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、ナノ粒子間の相互作用を防止することにより、高い移動状態の下で、ナノ粒子の焼結及び凝集を防止するための手段を提供する。また、バリア・コーティングは、図11に例示されたように、バリア・コーティング内におけるナノ粒子の物理的分離と機械的連結によってナノ粒子と基材間の相互作用も防止する。例えば、金属ナノ粒子は、金属基材と合金を形成する。バリア・コーティングは、そのような合金の形成を防止する。同様に、CNT成長領域では、バリア・コーティングは、遷移金属触媒と炭素に富んだ基材との間におけるナノ粒子と基材間の相互作用を防止する。そのようなナノ粒子と基材間の相互作用は、CNT成長状態の下で原料である炭素を過剰に供給することによって、遷移金属ナノ粒子触媒を被毒させる。更に、一般的には、本明細書で開示された方法で用いられるバリア・コーティングは、その他のやり方ではバリア・コーティングがない場合に適合しない基材でナノ粒子の使用を容易にする。
【0057】
ある実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、ナノ粒子と基材間の相互作用を依然として回避或いは抑制しながらも、図12に示すように基材と表面接触している。例えば、バリア・コーティングは、基材とナノ粒子との間の接触領域を最小限にするために用いられる。ある実施形態では、ナノ粒子と基材との間にまだ相当の接触領域がある場合でさえ、十分な厚さのバリア・コーティングにより、熱障壁が提供されるため、ナノ粒子と基材の接触界面は、あらゆる有害な相互作用を回避するのに十分な低温である。ある実施形態では、ナノ粒子が基材表面と接触している場合、バリア・コーティングの厚さにより、ナノ粒子は封入されるが、それでも、バリア・コーティングを通して反応物質の拡散は依然として可能であり、これによってナノ粒子触媒の反応が生じ得る。例えば、CVDCNT成長の場合では、CVD炭素原料からの炭素原子は、適切なバリア・コーティング物質を通して拡散する。そのような実施形態では、ナノ粒子触媒の有効径と略同じか又はわずかに大きいバリア・コーティング厚さを有することが望ましい。
【0058】
バリア・コーティングのさらなる利用は、高温及び/又は埋め込まれたナノ粒子の反応と関連して用いられる反応環境から、デリケートな基材を保護することである。例えば、ある炭素をベースとする基材は、高い反応温度の下や種々の反応条件(例えば強烈な酸化環境等)に晒される場合、安定しない。
【0059】
また、本発明は、1つには、バリア・コーティング内に埋め込まれた複数のナノ粒子を有する基材の少なくとも1つの表面に、等角的に付着されたバリア・コーティングを有する基材を含む生産品も対象としている。そのような生産品は、基材と従ってその生産品の特性を変えるための更なる反応にも用いられる。例えば、CNTsは、遷移金属ナノ粒子を用いる場合、図13に例示したように、基材表面上で成長される。そのようなCNTsは、改善されたラマン分光法(Raman)アプリケーションや超小型電子構造の表面、複合材料における補強物質や、例えばEMI遮蔽、シグネチャー・コントロール及び落雷防止等、その他の複合材料用途の生成に用いられるための整列されたCNTの製造に役立つ。また、本発明の生産品は、ナノ粒子が、高温が用いられる他の反応のための触媒として機能はするが生産品は変化しない、埋め込まれたナノ粒子を有するバリア・コーティングされた基材が挙げられる。例えば、生産品は、触媒コンバータに用いられるような、燃焼反応用の固定化した触媒ナノ粒子を含む。
【0060】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に、液状で提供されるバリア・コーティングを等角的に付着させること、(b)バリア・コーティング内に複数のナノ粒子を選択された深さに埋め込んで、複数のナノ粒子のそれぞれの埋め込まれた部分を作ること、及び(c)複数のナノ粒子を埋め込んだ後にバリア・コーティングを十分に硬化すること、を含む方法を提供する。複数のナノ粒子のそれぞれの埋め込まれた部分は、硬化されたバリア・コーティングと連続的に接触する。バリア・コーティングは、そこに埋め込まれた複数のナノ粒子の配列に影響を及ぼさない。従って、バリア・コーティングは、ナノ粒子の相対的配置を決定するテンプレートとしては作用しない。このプロセスの結果、更に以下で述べるように、ナノ粒子の的確な選択及び用いられる基材により、種々の状況に応じて用いられる、固定されたナノ粒子を有するバリア・コーティングされた基材となる。ある実施形態では、バリア・コーティングを等角的に付着し、複数のナノ粒子を埋め込むステップは、同時に行われる。従って、バリア・コーティング材料も、バリア・コーティングとナノ粒子物質の両方を含む溶液(混成溶液)を介して、ナノ粒子と一緒に基材にその場塗布される。
【0061】
ある実施形態では、本明細書で開示された方法は、種々の形状物上の粒子分散を制御する。これは繊維又は織物等の複合材料や不規則形状材料をコーティングする効果的な手段を含む。更には、本発明方法は、NPの拡散及び/又は焼結を招きかねない条件に晒された場合でさえも、基材表面上のナノ粒子密度を制御し維持する。
【0062】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に、バリア・コーティングを等角的に付着すること、及び(b)複数のナノ粒子の有効径と略同じ又はそれより厚いバリア・コーティング内に複数のナノ粒子を埋め込むこと、を含む方法を提供する。そのような実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略等しいものから有効径より最大5,000%厚いものまでである。従って、バリア・コーティングの厚さは、この径より0.01%厚いか又は0.1%、又は、複数のナノ粒子の有効径より0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、500%、1,000%、1,500%、2,000%等、5,000%までと、この間の値及びその端数を含む厚さである。
【0063】
ある実施形態では、ナノ粒子は、例えば熱に晒された場合、凝集できない。ある実施形態では、複数のナノ粒子を封入するバリア・コーティングは、NPsへの反応アクセスがなされないアプリケーションには有用である。例えば、電磁妨害(EMI)遮蔽アプリケーションでは、バリア・コーティングは、電磁放射を透過するが、NPsは、EM放射を効果的に吸収できる。この吸収により、NPsは熱くなる。それゆえ、バリア・コーティングは、そのような場合に焼結を防止できる。ある実施形態では、バリア・コーティングは、例えば、多孔質のバリア・コーティングが用いられた場合、粒子へのアクセスを拒否せずに複数のNPsを封入できる。そのような実施形態では、粒子は、技術的に封入されるが、バリア・コーティングの多孔質性が、NPのデリケートな表面へのアクセスを許可する。
【0064】
ある実施形態では、図1に示されるように、複数のナノ粒子は、バリア・コーティング内に部分的に埋め込まれ、ナノ粒子と基材との間には物理的境界がもたらされる。その他の実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、図12に示されるように、基材と表面接触している。更に別の実施形態では、埋め込まれたナノ粒子は、基材から分離された第1の部分と第2の部分の混合物であり、基材と表面接触している。ある実施形態では、基材とナノ粒子との間の直接的な表面接触を回避するのは有益である。例えば、金属基材と金属ナノ粒子に関して、ナノ粒子の部分的な埋め込みは、ナノ粒子が高温に晒される場合、合金の形成を回避するのに役立つ。同様に、遷移金属ナノ粒子触媒を有するCNT成長の場合、ナノ粒子と反応する炭素に富んだ基材から触媒を分離するのは有用である。
【0065】
ある実施形態では、ナノ粒子は、バリア・コーティング内に完全に封入されるが、露出表面が、この後に続く多くのプロセスを通して生成される。例えば、バリア・コーティングを完全に硬化した場合、いくつかの材料は、コーティング内のナノ粒子付近に亀裂を形成するが、これにより、ナノ粒子と反応環境との間には境界がもたらされる。その他のバリア・コーティング材料は、多孔質の硬化構造の形成を通してナノ粒子への必要なアクセスを作り出す。
【0066】
ある実施形態では、完全に封入されたナノ粒子は、プラズマで処理されてバリア・コーティングの表面を粗面化し、露出されたナノ粒子表面を生成する。同様に、封入されたナノ粒子を有するバリア・コーティングは、ナノ粒子の表面の一部分を露出するのに十分な間、湿式化学エッチング剤で処理される。
【0067】
更に別の実施形態では、完全に封入されたナノ粒子は、ナノ粒子の表面の一部を露出するために、機械的粗面化条件の下で処理される。これは、あらゆる物理的研磨方法(例えばサンドブラスト、レーザ切断、ボールミル、プラズマエッチング等)によって行われる。
【0068】
ナノ粒子がバリア・コーティングに埋め込まれる程度にかかわらず、バリア・コーティングは、熱に晒された場合にそれらの凝集又は焼結を防止するために、ナノ粒子を機械的に固定する働きをする。理論に拘束されるものではないが、これは、NPの拡散を抑える基材表面上のナノ粒子の動きを制限することによって達成される。従って、ナノ粒子間の相互作用は、バリア・コーティングの存在によって、実質的に抑制又は排除される。
【0069】
また、バリア・コーティングは、低融点基材を用いるための熱障壁も提供する。これに関して、バリア・コーティングは、複数のナノ粒子と基材との間の接触する表面積を零にまで最小化又は低減し、これによって、ナノ粒子を加熱する温度への基材の露出の影響を軽減し、又は、より一般的には、複数のナノ粒子が少なくとも部分的に露出される反応環境への基材の露出を回避する。
【0070】
ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、一般的に、複数のナノ粒子の有効径と略等しいか、それ未満、又はそれよりわずかに薄くなるように選択されるため、反応環境への実質的な露出のためにむき出しになったナノ粒子表面が存在する。その他の実施形態では、その厚さは、ナノ粒子の露出表面を生成するために上述したあらゆる技術を用いることによって、ナノ粒子の有効径より厚くにもなる。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約0.1nmから約100nmの範囲である。ある実施形態では、その厚さは、10nm未満(例えば、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nmと、その間のあらゆる値を含む)である。バリア・コーティングの厚さの的確な選択は、複数のナノ粒子の有効径と略一致するかそれ未満となるように選択される。ある実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は、ナノ粒子が基材と表面接触している場合でさえ、露出した表面を維持する。ある実施形態では、バリア・コーティング層の厚さは、ナノ粒子の表面積の略半分を覆うほどである。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、ナノ粒子表面積の約10%を覆い、一方、その他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、ナノ粒子の表面積の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、及び100%(この範囲の全ての値を含む)を覆う。更に別の実施形態では、バリア・コーティングは、追加の処理又は多孔質バリア・コーティングの選択によって露出された一部のナノ粒子を除いて塗布されたときに、ナノ粒子を覆う。
【0071】
ある実施形態では、本発明方法は、等角的にバリア・コーティングを付着する前にプラズマで基材を処理することを含む。プラズマプロセスにおける基材処理は、官能基の生成と基材表面の粗面化の2重の役割を果たす。これによって、その有効表面積は増大し、その結果、基材の湿潤性を改善し、従って、バリア・コーティングの等角的な付着が改善する。基材表面の改善は、種々の異なるガス(これらに限定しないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素、及び窒素等)の任意の1つ以上のプラズマを用いて達成される。
【0072】
ある実施形態では、バリア・コーティングの付着ステップは、浸漬コーティング及び噴霧から選択された技術によって遂行される。従って、バリア・コーティングは、溶液をベースにしたものであり、浸漬浴形態、噴霧方法、又はいくつかの実施形態と同様のものを介して塗布される。方法の的確な選択は、多くの要因(例えば、基材の形状等)によって決定される。不規則な形状の基材に対しては、例えば噴霧塗布等のような一方向に塗布されるバリア・コーティングの使用を避ける浸漬法を使用することが有効である。例えば、ウエハ等のような片側をコーティングする必要のある基材に対しては、確実に片側だけにコーティングするために、噴霧又は関連技術(例えばネブライザー)でバリア・コーティングを塗布するのが有効である。バリア・コーティングを塗布する際に考慮すべきその他の要因は、例えば、溶液を作る能力又は浸漬か噴霧コーティングのための均質な懸濁液等バリア・コーティング材料自体に依存するものである。
【0073】
浸漬法又は噴霧法によってバリア・コーティングを塗布する場合、例えば、バリア・コーティングの厚さを、希釈剤を用いて制御できる。希釈剤は、基材物質とナノ粒子物質の両方と相性のよい溶媒であればどのようなものでもよい。浸漬コーティングの場合、特に、バリア・コーティングの厚さは、バリア・コーティング材料の濃度と浸漬浴内の滞留時間の関数である。また、滞留時間は、そのコーティングの均質性を提供するのにも役立つ。また、均質性は、多重の浸漬浴を用いることによっても保証される。
【0074】
バリア・コーティングは、シロキサン、シラン、アルミナ、炭化ケイ素セラミック、金属、及び、これらの混合物から選択される物質である。ある実施形態では、バリア・コーティングの選択は、基材への付着能力で選択される。多くのタイプのバリア・コーティング材料があり、例えば、シロキサンベースのもの、シランベースのもの、アルミナベースのもの、炭化ケイ素ベースのセラミック、及び金属ベースのもの等である。アルミナベースの物質は、例えば、アルモキサン、アルミナナノ粒子、及びアルミナコーティング溶液(例えば、Rigidizer/Hardener タイプ AL−R/HのようなZircar Ceramics社から入手できるアルミナベースのコーティング等)を含む。ある実施形態では、ガラスコーティング(例えば、スピン・オン・ガラス、ガラスナノ粒子、又は、例えば、イソプロピルアルコール内のメチルシロキサンのようなシロキサンベースの溶液等)は、バリア・コーティング剤として用いられる。本発明で有用な金属バースのバリア・コーティングは、例えば、モリブデン、アルミニウム、銀、金、及び白金等である。炭化ケイ素ベースのセラミックは、例えば、Starfire社から入手可能な、SMP−10、RD−212a、ポリアラミック(Polyaramic)RD−684a、及びポリアラミックRD−688a等である。
【0075】
また、バリア・コーティングは、特別な用途に合わせて多機能なコーティングとしての機能を果たす。バリア・コーティングの特別なタイプは、焼結防止及び基材への付着促進双方に合わせて選択される。複合材料アプリケーションに関して、バリア・コーティングは、焼結防止及び複合マトリックス材料との良好な結合にあわせて選択される。更に別の実施形態では、バリア・コーティング物質は、基材と複合マトリックス材料の両方に対する付着性で選択される。更に別の実施形態では、2つ以上のバリア・コーティングが用いられる。第1のバリア・コーティングは、基材表面への付着能力で選択される。第2のバリア・コーティングは、複合材料マトリック物質(例えば、レジン、セラミック、金属等)への付着能力で選択される。
【0076】
ある実施形態では、本発明方法は、複数のナノ粒子を埋め込む前にバリア・コーティングを部分的に硬化することを含む。バリア・コーティングの部分的な硬化は、粒子間の相互作用を最小化するために塗布されたナノ粒子の動きを妨げると同時に埋め込まれたナノ粒子に「粘着性にある(sticky)」表面を提供する。また、部分的な硬化は、バリア・コーティングへナノ粒子を供給するために用いられる方法によっても生じる。部分的硬化の温度は、一般的に、標準の硬化温度より低く、標準硬化温度の約50から75%の範囲であり、滞留時間については秒オーダーである。
【0077】
ある実施形態では、本発明方法は、原料物質の存在下で、原料物質から複数のナノ構造体の成長を促進する温度まで、埋め込まれた複数のナノ粒子の周囲の環境を加熱することを、更に、含んで構成される。ある実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は、ナノ構造体の成長を触媒する。ある実施形態では、ナノ粒子は、本来の触媒として機能することなく、ナノ構造体の成長のための種としてふるまう。更に別の実施形態では、ナノ粒子は、基材、バリア・コーティング、又はナノ粒子を変えない反応を触媒する。従って、ナノ粒子は、例えば、粒子が気相内に残り、気相反応を触媒する。ある実施形態では、所定の反応温度は、バリア・コーティングがない場合、複数のナノ粒子の凝集を引き起こすのに十分である。従って、バリア・コーティングは、焼結を防ぐための有効な手段を提供する。
【0078】
ある実施形態では、ナノ粒子は、遷移金属を含む。触媒繊維金属ナノ粒子は、上述したようにd‐ブロックのあらゆる遷移金属である。加えて、ナノ粒子は、元素形態又は塩形態のd‐ブロック金属の合金及び非合金混合物、及びその混合物を含む。そのような塩形態は、酸化物、炭化物、及び窒化物を含むが、これらに限定されるものではない。例示的な遷移金属NPsは、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、及びAgとこれらの塩形態(例えば、アセテート及び塩化物)、及びこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施形態では、遷移金属は、CNT形成触媒として用いられる。多くのこれら遷移金属触媒は、種々のサプライヤー(例えば、Ferrotec Corporation(Bedford,NH)等)から容易に市販で入手できる。
【0079】
ある実施形態では、原料物質は、炭素源であり、それは、前述の遷移金属との結合に用いられる場合に、カーボン・ナノチューブ(CNTs)のようなナノ構造体の合成を可能にする。これらCNTsは、単層、二層、又はその他の多層のCNTsである。当業者は、ナノ粒子サイズと成長するCNTsのタイプとの間の関連を認識するであろう。例えば、単層CNTsは、標準的に、約1nm未満のナノ粒子触媒で得られやすい。CNT成長条件は、通常は、約500から約1000℃の間で、焼結が観察される温度であり、思い通りのCNT成長に影響を与える温度である。
【0080】
炭素やステンレス鋼等、多くの基材タイプは、標準的に、触媒ナノ粒子だけが表面に供給された場合、高レベルの焼結のために、高収率のCNT成長には適していない。しかしながら、バリア・コーティングは、これら困難な基材上でさえも、高収率のCNT成長に有用である。
【0081】
基材表面上において、触媒ナノ粒子のCNT成長の核となる能力は、焼結を実質的に抑制又は防止するために基材表面の場所に十分なバリア・コーティングが存在するか否かによって決まる。CNT成長は、触媒ナノ粒子をバリア・コーティング前に基材に塗布する場合に遂行される(「リバース・オーダー(reverse order)」)。「リバース・オーダー」プロセスの利点は、バリア・コーティングが触媒を基材上に固定しておくため、基材表面へCNTsを固定することが可能となる点である。理論に拘束されるものではないが、触媒コーティングの前にバリア・コーティングが塗布された場合、CNTナノ粒子触媒は、CNT合成の先端に追従する傾向がある、即ち、先端成長が生じる。「リバース・オーダー」コーティングは、基底成長(base−growth)を促進する。
【0082】
ある実施形態では、原料は、例えば燃焼過程で得られるその他のガスと混合された炭素源である。そのような実施形態では、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、セリウム、マンガン、鉄、ニッケル、又は銅等の埋め込まれた遷移金属ナノ粒子は、炭素源の酸化を調整するために用いられる。多量のナノ粒子に有利な表面積は、燃焼過程で触媒能力を改善する。このタイプの反応は、例えば、触媒コンバータに用途を見出す。また、例えば精製等の種々の工業的な石油処理や油井の穴内における石油の高度回収のための重質炭化水素の分解を触媒する作業にも役立ち、このようにして、形成の生産性を最大限に高める。
【0083】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子のその他の用途は、FePtナノ粒子を用いる高密度磁気記録媒体の製造が挙げられる。当業者は、有用な面心正方構造のFePtを得るために相変化を誘導しようする場合に、FePtナノ粒子の焼結に問題があるということを認識する。この相変化は、一般的に、約550℃で加熱することによって行われ、焼結を伴う。本明細書で開示されたバリア・コーティングは、この焼結を防止するのに役立つ。
【0084】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、脱硫処理に利用される。例えば、ニッケルとモリブデン触媒は、ビチューメンの脱硫に利用されてきた。そのような処理は、酸化ウランのような高価なサポート(supports)が、触媒の再生中に焼結を防止するために用いられる。バリア・コーティングを用いる本発明方法は、高価なサポート物質の使用を避けると同時に、焼結を防止するために用いられる。
【0085】
ある実施形態では、遷移金属ナノ粒子は、合成ガス製造処理に用いられる。Rh‐CeO2触媒内のCeO2の焼結は、この触媒システムの使用を制限するということが分かっている。本明細書で開示された方法に用いられるバリア・コーティングは、この焼結を防止し、例えば、合成ガス変化のためのバイオマスを高める。
【0086】
ある実施形態では、ナノ粒子は、例えば、セラミックや、亜鉛、チタン、アルミニウム等の酸化物、炭化物、ホウ化物等、その他の金属を含有する物質を含む。例えば粘土、シリカ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩等の遷移金属を含まないその他の物質も用いられる。
【0087】
前述のナノ粒子のあらゆるものは、約0.1nmから約100nmまでとサイズに幅がある。ある実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約1から約75nmまで、その他の実施形態では約10から約50nmまでと、それぞれサイズに幅がある。ある実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約0.1から約1nmまでサイズに幅がある。その他の実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約2から約10nmまでサイズに幅がある。更に別の実施形態では、ナノ粒子のサイズは、約10から約20nmまで、約20から約30nmまで、約30から約40nmまで、約40から約50nmまで、約50から約60nmまで、約60から約70nmまで、約70から約80nmまで、約80から約90nmまで、約90から約100nmまで、そして、その間の全ての値を含んで、サイズに幅がある。サイズの選択は、用途に依存する。上述したように、触媒処理において、容積に対して大きな表面積から利益を享受するために、より小さい粒子を利用することが望ましい。より一般的には、ナノ粒子スケールで、当業者は、ナノ粒子の特性が有する量子化された本質を認識し、適切なサイズが理論的な考察及び計算を通して決定されるということを認識する。例えば、特定の粒子サイズは、放射線の特定波長を吸収するために設計される。
【0088】
金属を含むナノ粒子の焼結速度は、それが付着した基材に応じて変化する。しかしながら、本発明方法にバリア・コーティングを用いることによって、あらゆるタイプの基材が用いられる。例えば、基材は、金属、セラミック、シリカウエハ、繊維、グラファイトシート、高温プラスチック(例えばポリイミド、PEEK、PEI等)を含む。
【0089】
ある実施形態では、本発明は、(a)基材の少なくとも1つの表面上に複数のナノ粒子を付着させること、(b)基材と複数のナノ粒子それぞれの少なくとも一部分を覆ってバリア・コーティング(バリア・コーティングは液状で与えられる)を等角的に付着させ、これにより、複数のナノ粒子それぞれの埋め込まれた部分を生成すること、及び(c)バリア・コーティングを十分に硬化すること、を含む方法を提供する。複数のナノ粒子は、そのような実施形態では表面で基材と接触し、複数のナノ粒子それぞれの埋め込まれた部分は、硬化されたバリア・コーティングと連続的に接触する。これは、上述した「リバース・オーダー」プロセスとして図2に示されている。この構成では、バリア・コーティングは、熱に晒された場合に複数のナノ粒子の凝集も防止する。上述したように、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略同じか又はわずかに薄く、これにより、複数のナノ粒子はこれらの表面の露出部分の維持が可能となる。または、バリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径より厚い。ある実施形態においては、上述したバリア・コーティングの後の取り扱い方法は、バリア・コーティングがナノ粒子を完全に封入する場合に用いられる。
【0090】
「リバース・オーダー」プロセスを用いる場合、基材は、複数のナノ粒子を付着する前にプラズマで処理される。これは、上述したように、露出した基材表面に良好な湿潤性を与える。同様に、バリア・コーティングを付着するステップは、上述したように、浸漬コーティグと噴霧から選択された技術によって達成される。更に、上述の用途、条件、及び全般的な考察のいずれもが、本発明の「リバース・オーダー」方法に等しく適用される。
【0091】
本発明方法は、基材の少なくとも1つの表面上に等角的に付着したバリア・コーティングとバリア・コーティングに埋め込まれた複数のナノ粒子を有する基材を含む生産品を作るために用いられる。バリア・コーティング機能は、熱又は化学的及び/又は物理的処理に晒された場合に複数のナノ粒子の凝集を防止することである。
【0092】
本発明の生産品におけるバリア・コーティングの厚さは、複数のナノ粒子の有効径と略同じか又はわずかに薄く、これによって、ナノ粒子が選択的に基材と表面接触する場合に、ナノ粒子はこれらの表面の露出部分を維持することが可能となる。特定の実施形態では、埋め込まれた複数のナノ粒子は基材と表面接触している。本発明の生産品は、上述したように、金属、セラミック、シリカウエハ、繊維、グラファイトシート及び高温プラスチックである基材を含む。
【0093】
上述したナノ粒子のあらゆるタイプ及びサイズは、本発明の生産品と関連して使用される。ある実施形態では、本発明の生産品は、マトリックス材料と繊維に浸出したカーボン・ナノチューブを有する複合材料を含む。燃焼や関連した触媒用途では、本発明の生産品は、a)触媒コンバータ、b)例えば精製、合成ガス製造、脱硫等に用いられる触媒反応床、c)石油回収に用いられる油井穴用ツール(downhole tools)、及びd)高密度記憶媒体が挙げられる。
【0094】
本発明の種々の実施形態の活動に実質的に影響を及ぼさない変更も、本明細書で提供された発明の定義の範囲に含まれることを理解すべきである。従って、下記の実施例は、説明を目的とするもので、本発明を限定するものではない。
【0095】
実施例1
この実施例は、強化されたシグネチャー・コントロール特性のためにセラミック繊維に塗布された鉄ナノ粒子の焼結を防止するために、どのように、障壁層がセラミック繊維複合材料構造で用いられるかを示す。
【0096】
図14は、本発明の具体例に従って改善されたシグネチャー・コントロール特性を有する高温セラミック繊維複合材料を生成するためのシステム400を示す。システム400は、図示のように相互に関連した、セラミック繊維402、バリア・コーティング溶液槽404、ナノ粒子溶液槽406、コーティング硬化システム408、フィラメント巻き取りシステム410、及びレジン浸出システム412を含んで構成される。
【0097】
用いたセラミック繊維402は、シリコン・カーバイド・シルラミック(Silicon Carbide Sylramic)(登録商標)繊維トウ(1600デニール−直径10ミクロン)(COI Ceramics,Inc.)である。
【0098】
Starfire社のSMP−10、RD−212a溶液からなるバリア・コーティング404は、浸漬プロセスを介してセラミック繊維402に塗布される。SMP−10とイソプロピルアルコールが1対10の希釈液が、2−4nmの厚さのコーティグを塗布するために浸漬プロセスで用いられる。
【0099】
用いたナノ粒子溶液406は、トルエン溶液に酸化鉄ナノ粒子が混合された、GTP9700(Nano Chemonics)である。ナノ粒子溶液は、バリア・コーティング404の表面上に均一に分散する酸化鉄ナノ粒子を塗布するために用いられる。容積で酸化鉄が10重量%未満含有の溶液が、20−40nmのナノ粒子間間隔を有するナノ粒子コーティングを生成するために用いられる。
【0100】
一連のヒーターからなるコーティング硬化システム408は、結合障壁とナノ粒子コーティング409を硬化するために用いられる。コーティングされた繊維は、硬化システムを助けるために白金を主成分とする触媒と共に、2時間の間、200℃の温度に晒される。
【0101】
硬化されたコーティングは、所定位置にナノ粒子を固定し、コーティングされた繊維は、フィラメント巻き取りシステム410を用いて構成要素内に巻き取られる。
【0102】
構成要素に巻き取られたフィラメント411は、その後、レジン浸出システム412を用いてビスマレイミド・マトリックスで浸出される。
【0103】
最終の硬化された高温セラミック繊維複合材料構造413は、分散した酸化鉄ナノ粒子コーティングにより与えられたシグネチャー・コントロール特性を維持しながら、600℃もの高温露出に耐えることができる。このナノ粒子コーティングは、硬化されたバリア・コーティングとの相互作用の結果として焼結しない。
【0104】
実施例2
この実施例は、鉄ナノ粒子触媒の焼結を防止するために、どのように、カーボン・ナノチューブがバリア・コーティングを用いて炭素繊維の表面に成長するかを示す。
【0105】
図15は、本発明の具体例による炭素繊維(800のテックス値を持つサイジング剤が塗布されていない炭素繊維トウ34−700 12k,Grafil Inc.,Sacramento,CA)上にCNTsを生成するシステム500を示す。システム500は、図示するように相互に関連された、炭素繊維材料繰り出し及び張力調整ステーション505、プラズマ処理ステーション515、バリア・コーティング塗布ステーション520、空気乾燥ステーション525、触媒塗布ステーション530、溶媒フラッシュ−オフ(flash−off)ステーション535、CNT成長ステーション540、及び炭素繊維材料取り込みボビン550を含んで構成される。
【0106】
繰り出し及び張力調整ステーション505は、繰り出しボビン506及びテンショナー507を含む。繰り出しボビンは、サイジング剤の塗布されていない炭素繊維材料560をプロセスへ送る。この際、繊維はテンショナー507を介して張力がかけられる。例えば、炭素繊維は、2フィート/分のラインスピードで処理される。
【0107】
サイジング剤が塗布されていない繊維560は、プラズマ処理ステーション515へ送られる。この例として、大気プラズマ処理は、開炭素繊維材料から1mmのからの「ダウンストリーム(downstream)」法に利用される。ガス状の原料は100%ヘリウムからなる。
【0108】
プラズマ強化繊維565は、バリア・コーティング・ステーション520へ送られる。この具体例では、シロキサンベースのバリア・コーティング溶液が浸漬コーティングに用いられる。前記溶液は、「AccuglassT−11スピン・オン・ガラス」(Honeywell International Inc.,Morristown,NJ)を、容積で40対1の希釈割合で、イソプロピルアルコールで希釈したものである。その結果、生じる炭素繊維材料上のバリア・コーティングの厚さは、略40nmである。バリア・コーティングは、周囲環境において室温で塗布される。
【0109】
バリア・コーティングされた炭素繊維590は、ナノスケールのバリア・コーティングの部分的硬化のために空気乾燥ステーション525へ送られる。空気乾燥ステーションは、炭素繊維スプレッドの全域にわたって加熱空気の流れを送る。使用される温度は、100℃から500℃の範囲である。
【0110】
空気乾燥後、バリア・コーティングされた炭素繊維590は、触媒塗布ステーション530へ送られる。この実施例では、酸化鉄ベースのCNT形成触媒溶液は、浸漬コーティング構成に用いられる。その溶液は、「EFH−1」(Ferrotec Corporation,Bedford,NH)を、容積比で200対1の希釈割合で、ヘキサンで希釈したものである。触媒コーティングの単分子層が、炭素繊維材料上に得られる。希釈前の「EFH−1」は、容積で3−15容積%のナノ粒子濃度範囲にある。この酸化鉄ナノ粒子は、Fe2O3とFe3O4との組成からなり、直径が略8nmである。
【0111】
触媒を含んだ炭素繊維材料595は、溶媒フラッシュ−オフ・ステーション535へ送られる。溶媒フラッシュ‐オフ・ステーション535は、炭素繊維スプレッドの全域にわたって空気の流れを送る。この例では、室温の空気が、触媒を含んだ炭素繊維材料上に残った全てのヘキサンを蒸発(flash−off)するために用いられる。
【0112】
溶媒蒸発後、触媒を含んだ繊維595は、最終的に、CNT成長ステーション540へ送られる。この実施例では、12インチの成長ゾーンを有する方形状の反応炉が、大気圧でCVD成長に用いられる。総ガス流量の98.0%が不活性ガス(窒素)であり、その残り2%は炭素原料(アセチレン)である。成長ゾーンは、750℃で保持される。上述の方形状反応炉の場合、750℃は比較的高い成長温度である。バリア・コーティングの付加は、CNT成長温度で触媒ナノ粒子の焼結を防止し、炭素繊維の表面上の効果的な高密度のCNT成長を可能にする。
【0113】
CNTコーティグ繊維597は、保管のために取り込み繊維ボビン550に巻き取られる。CNTコーティング繊維597は、長さ略50μmのCNTsを含み、従って、複合材料で利用できる状態にある。
【0114】
当然のことながら、前述の実施形態は単に本発明の具体例にすぎず、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない限りは、前述の実施形態の多くの変形例を考え出すことができる。例えば、本明細書において、数々の具体的詳細が、本発明の例示の実施形態の説明及び理解を完全にするために提供されている。しかしながら、当業者であれば、本発明の1以上の詳細がなくても、又は他の処理、材料、構成要素等を用いて本発明を実施でき得ることを認識するであろう。
【0115】
また、場合によっては、周知の構造、材料、又は工程を図示しないか、又は詳細に説明しないことにより、例示の実施形態の態様が曖昧になることを避けている。当然のことながら図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。本明細書全体にわたって「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「ある実施形態(実施形態の中には)」についての言及は、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ということを意味する。従って、本明細書の全体にわたって様々な箇所で見られる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。更に、特定の機能、構造、材料、又は特徴は、1以上の実施形態においてあらゆる適切な方法により組み合わせることができる。従って、このような変形は、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるために繊維材料の表面を改質するのに適用された表面処理システムと、
前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するのに適用された、前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システムと、
CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための、前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムと、
を含んで構成される繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項2】
CNT成長触媒ナノ粒子を付着させるための触媒塗布システムを、更に含んで構成される請求項1に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項3】
前記CNT成長触媒ナノ粒子は、鉄を含む請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項4】
前記触媒塗布システムとバリア・コーティング塗布システムは、触媒ナノ粒子とバリア・コーティングの同時付着用に構成される請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項5】
前記触媒塗布システムは、前記バリア・コーティング塗布システムの上流側である請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項6】
前記触媒塗布システムは、前記バリア・コーティング塗布システムの下流側である請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項7】
カーボン・ナノチューブの化学気相成長(CVD)又はプラズマCVD成長用の炭素原料供給源を装備するCNT成長チャンバーを含んで構成されるCNT成長システムを、更に含んで構成される請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項8】
前記繊維材料が、前記表面処理システムの上流側の繰り出しシステムからスプール又はマンドレル上に巻き取り可能な長さで供給され、前記CNT成長システムの下流側で再度巻き取られる繊維材料上のカーボン・ナノチューブの連続合成用に構成された請求項7に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項1】
カーボン・ナノチューブが成長するバリア・コーティングを受入れるために繊維材料の表面を改質するのに適用された表面処理システムと、
前記処理された繊維材料表面に前記バリア・コーティングを塗布するのに適用された、前記表面処理システム下流側のバリア・コーティング塗布システムと、
CNT成長触媒ナノ粒子の受入れを強化するため前記塗布されたバリア・コーティングを部分的に硬化するための、前記バリア・コーティング塗布システム下流側のバリア・コーティング硬化システムと、
を含んで構成される繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項2】
CNT成長触媒ナノ粒子を付着させるための触媒塗布システムを、更に含んで構成される請求項1に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項3】
前記CNT成長触媒ナノ粒子は、鉄を含む請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項4】
前記触媒塗布システムとバリア・コーティング塗布システムは、触媒ナノ粒子とバリア・コーティングの同時付着用に構成される請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項5】
前記触媒塗布システムは、前記バリア・コーティング塗布システムの上流側である請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項6】
前記触媒塗布システムは、前記バリア・コーティング塗布システムの下流側である請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項7】
カーボン・ナノチューブの化学気相成長(CVD)又はプラズマCVD成長用の炭素原料供給源を装備するCNT成長チャンバーを含んで構成されるCNT成長システムを、更に含んで構成される請求項2に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【請求項8】
前記繊維材料が、前記表面処理システムの上流側の繰り出しシステムからスプール又はマンドレル上に巻き取り可能な長さで供給され、前記CNT成長システムの下流側で再度巻き取られる繊維材料上のカーボン・ナノチューブの連続合成用に構成された請求項7に記載の繊維材料上のカーボン・ナノチューブ(CNT)合成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−519643(P2012−519643A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552995(P2011−552995)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025654
【国際公開番号】WO2010/101784
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025654
【国際公開番号】WO2010/101784
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]