説明

たわみ計測装置、ならびにたわみおよび軸ねじれ計測装置

【課題】簡単かつ安価に回転軸体の軸線方向に直角な方向のたわみ量や軸ねじれを非接触にて測定できる計測装置を提供する。
【解決手段】被計測物である回転軸体10の外周面に設けられてその回転とともに回転運動するターゲット体11a、11bによって前記回転軸体10の軸線方向に略平行に照射される発光部3からの光線の光路を周期的に横切らせ、当該ターゲット体11a、11bにより遮光されない光線または反射光を受光・演算表示部4で受光するようにしておき、前記回転軸体10のたわみ変形に起因する前記ターゲット体11a、11bの被照射面における前記光線の照射位置の変化を検出し、当該検出結果に基づいて前記回転軸体10のたわみ量を計測するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸体のたわみ量を光学的に非接触にて計測可能なたわみ計測装置、ならびに回転軸体のたわみ量および軸ねじれの大きさを光学的に非接触で計測可能なたわみおよび軸ねじれ計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水や蒸気の保有するエネルギーを利用してタービンを回転させて発電を行なう発電タービンプラントなどでは、高効率であるとともに、高い運用性および安全性が要求される。特に高速回転するタービンにたわみや軸ねじれなどの変形が生じた場合には、非常に危険な事態を引き起こしかねず、前記のような安全性などを確保するためにも、タービンなどの回転軸体のたわみ量や軸ねじれを確実に把握し、異常が認められた場合には所定の対策を講じることが重要であり、そのためにこれらを簡単かつ高い精度にて計測可能な計測装置や計測方法が望まれている。
【0003】
従来の回転軸体のたわみ測定技術は、例えば特許文献1において提案されている。特許文献1記載の技術は、回転軸体の曲げモーメント測定装置に関するものであり、回転軸体の曲げモーメントを求めるために、当該回転軸体の外周面に取り付けられた円板とその端面に対向して設けられ、当該円板までの距離を測定する距離測定器とを備えており、前記回転軸体の回転中にこれにたわみが生じたことによる前記距離の変化から当該円板の傾き角(前記回転軸体のたわみ角)を求めるようにしたものである。
【0004】
また、回転軸体のトルク計測装置は、例えば特許文献2、3などにおいて提案されている。特許文献2記載のトルク計測装置は、回転軸体の外周面にその軸線方向に沿って直線状の光反射部を設けるとともに、この光反射部と対向配置された発光素子および受光素子からなる第1および第2の検出部を前記軸線方向2箇所に設け、各検出部より出力される受光信号のタイミングずれに基づいてトルクを算出する制御装置を設けた構成とされている。また、特許文献3記載のトルク計測装置は、発光する発光部と、光線を複数の光線に分岐し、各光線のビーム径をそれぞれ調整して回転軸体に照射するビーム調整手段と、前記回転軸体の表面に取り付けて前記複数の光線の反射状態をそれぞれ変化させる複数の反射手段と、前記複数の光線のそれぞれの反射光の強度変化を検知する複数の検知手段と、これらの検知手段の出力信号に基づいて回転周期を計算して前記回転軸体のトルクを求める信号処理手段とを備えた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−12338号公報
【特許文献2】特開2003−261808号公報
【特許文献3】特開2000−205977号公報
【特許文献4】特開2002−333376号公報
【特許文献5】特開2006−84462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の技術では、直接距離測定器によって回転軸体外周面の円板までの距離を測定するので、回転軸体が回転中にたわみを伴わずにその軸線方向に直角な方向に軸振れを生じる場合には、当該軸触れを検出するのは困難である。また、回転軸体のたわみ角が小さい場合には距離測定器によって非常に微小な距離を測定しなければならず、そのため当該測定器に高い測定精度が必要とされ、結果として距離測定器が高額になってしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2、3などに記載のトルク計測装置は、回転軸体に加えられるトルクを測定するには良好な方法であるが、そもそも回転中に生じる回転軸体のたわみ量を測定することを想定したものではなく、当該たわみ量を測定できないといった問題がある。
【0008】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は簡単かつ安価に回転軸体の軸線方向に直角な方向の軸振れやたわみ量を非接触にて測定できるたわみ計測装置、ならびに当該たわみ計測装置を応用した回転軸体のたわみ量および軸ねじれ計測装置を提供することにある。なお、本明細書では以下、「たわみ」または「たわみ変形」という場合には、軸振れを含む意味で使用する。また「たわみ量」という場合には、回転軸体の軸線方向所定の位置でのたわみ変形および軸振れに起因する当該回転軸体の径方向における変位量(変位量の当該方向における成分を含む。)を指すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のたわみ計測装置は、被計測物である回転軸体の外周面に設けられてその回転とともに回転運動するターゲット体によって前記回転軸体の軸線方向に略平行に照射される発光部からの光線を周期的に遮られ、当該ターゲット体により遮光されない光線またはそこからの反射光を受光・演算表示部によって受光するようにしておき、前記回転軸体のたわみ変形に起因する前記ターゲット体の被照射面における前記光線の照射位置の変化を検出し、当該検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量を計測するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明のたわみ計測装置は、回転軸体の外周面に設けられたターゲット体の被照射面の形状を利用し、前記回転軸体のたわみ変形に起因する当該被照射面における光線の照射位置の変化を検出し、その検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量を計測する。このようなターゲット体としては、
(1)被照射面の全面または一部に設けられた反射面によって前記光線を前記回転軸体軸体の外側に反射させるように前記光線の光路に対して傾斜させて取り付けられるようにした平板若しくは湾曲板、
(2)前記回転軸体の外周面に嵌装可能とされ、前記回転軸体の軸線方向に平行な断面が略半円形または略半楕円形を呈し、外面の被照射面の全面または一部に反射部が設けられた環状体、または
(3)前記回転軸体の外周面に取り付け可能であり、当該外周面からの径方向の高さ距離に応じて一定の割合で回転方向の幅が変化するように形成された幅変化部を備える遮光板または反射板、
(4)前記回転軸体の外周面に取り付け可能であり、当該外周面からの径方向の高さ距離に応じて一定の割合で回転方向の幅が変化する開口からなる幅変化部がその中央領域に形成されてなる遮光板、
(5)前記回転軸体の側方において発光部からの光線を外側に反射させるように前記光線の光路に対して斜めに傾斜させて取り付け可能とされ、前記(3)に示す幅変化部を有する反射板、
(6)前記回転軸体の外周面に嵌装可能とされ、その軸線方向に平行な断面が略半円形または略半楕円形を呈し、外面の被照射面の全面または一部に円周方向に沿って前記幅変化部と同様の形状を有する反射部が配設された環状体、
などが含まれる。これらのターゲット体は、いずれも回転軸体の円周方向に等間隔に複数個設ける(前記(2)および(6)の環状体の場合には、これら各項記載の反射部を外周の被照射面にその円周方向に等間隔に複数個設ける)ことができる。ここで、前記(3)および(5)に示した幅変化部は、このような回転方向の遮光幅が直線的に変化(増加または減少)するように形成されたものに限定されず、回転方向の遮光幅が指数関数的に変化(増加または減少)するように(反比例の関係も含む)形成されたものなどであってもよい。
【0011】
また、本発明のたわみ量および軸ねじれ計測装置は、第1ターゲット体と、被計測物である回転軸体の外周面からの径方向の距離に応じて一定の割合で回転方向の幅が変化するように形成された幅変化部を有する第2ターゲット体とを回転軸体の外周面にその軸線方向に所定の距離だけ離して設け、前記回転軸体の回転に伴い回転運動するこれら1組のターゲット体によって当該回転軸体の軸線に略平行に照射される発光部からの光線の光路を周期的に横切らせ、前記1組のターゲット体によって遮光されない光線または第2ターゲット体からの反射光を受光・演算表示部で受光するようにしておき、前記回転軸体の軸ねじれやたわみ変形に起因する前記第2ターゲット体の前記第1ターゲット体に対する円周方向の相対的ずれおよび前記第2ターゲット体の幅変化部における前記光線の走査位置の変化を検出し、これらの検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量および軸ねじれの大きさを計測することを特徴とする。
【0012】
前記第1ターゲット体および前記第2ターゲット体は、前記回転軸体の外周面に規則的に複数組設けることができる。これら1組のターゲット体は、それぞれ環状に形成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のたわみ計測装置は、被計測物である回転軸体の外周面に設けられたターゲット体にて遮光されない光線または当該ターゲット体からの反射光を受光することにより前記回転軸体のたわみ変形に起因して生じる前記ターゲット体における前記光線の照射位置の変化を検出し、当該検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量を計測するようにしたので、簡単かつ安価に回転軸体のたわみ量を非接触にて測定できる。しかも、本発明のたわみ計測装置では、回転軸体がたわみを伴わない軸振れをも計測することが可能となる。特に、所定形状の幅変化部または開口を備えるターゲット体を用い、光線がこれらの所定の高さ位置を回転方向に走査するように設定することで、当該走査線上における遮光幅または透光幅の変化を前記回転軸体のたわみ変形や軸振れによるターゲット体における径方向の照射位置の変化に変換でき、受光・演算表示部においてこの変化を検出、演算することで、前記回転軸体のたわみ量をより簡単かつ安価に求めることが可能となる。
【0014】
また、本発明のたわみおよび軸ねじれ計測装置によれば、基準となる第1ターゲット体と、前記所定形状の幅変化部を有する第2ターゲット体とを回転軸体の軸線方向所定の距離だけ離して両者が所定の位置関係となるようにそれぞれ配置し、前記発光部からの光線が前記第2ターゲット体における幅変化部の所定の高さ位置を走査するように前記第1ターゲット体に照射することとしたので、回転中の前記回転軸体の軸触れを含むたわみ量に伴う光線の走査高さ位置の変化を前記幅変化部における回転方向の遮光幅などの変化として検出し、その結果から当該回転軸体のたわみ量を計測し、それと同時に前記光線の走査高さ位置における前記基準となる第1ターゲット体と前記第2ターゲット体との相対的な位置関係の変化から当該回転軸体の軸ねじれを計測することができる。
【0015】
このように、本発明のたわみ計測装置は、回転軸体の周囲に発光部および受光・演算表示部を配置するとともに、回転軸体の外周面にターゲット体を設けるだけで、簡単にかつ安価に非接触にて回転軸体のたわみ量を計測でき、さらに当該ターゲット体とともに基準となるターゲット体を別個に設けることで、回転軸体のたわみ量および軸ねじれの計測を同時に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のたわみ計測装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図2に示すたわみ計測装置の測原理を示す図である。
【図3】本発明のたわみ計測装置の一実施形態を示す図である。
【図4】図1に示すたわみ計測装置の計測原理を示す図である。
【図5】図1のたわみ計測装置において第2ターゲット体を変更した場合の計測原理を示す図である。
【図6】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置の別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図9】図6に示すたわみおよび軸ねじれ計測装置において、回転軸体にたわみおよび軸ねじれが生じた場合の出力信号の波形を示す図である。
【図10】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図11】図10に示すたわみおよび軸ねじれ計測装置において、回転軸体にたわみおよび軸ねじれが生じた場合の出力信号の波形を示す図である。
【図12】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図13】図12に示すたわみおよび軸ねじれ計測装置において、回転軸体にたわみおよび軸ねじれが生じた場合の出力信号の波形を示す図である。
【図14】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図15】図14に示す計測装置において、第2ターゲット体の形状を変更した場合の出力信号の波形を示す図である。
【図16】図14に示す計測装置において、第2ターゲット体の形状を変更した場合の出力信号の波形を示す図である。
【図17】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【図18】図16に示すたわみおよび軸ねじれ計測装置において、回転軸体にたわみおよび軸ねじれが生じた場合の出力信号の波形を示す図である。
【図19】本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のたわみ計測装置、およびたわみおよび軸ねじれ計測装置の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、本明細書では以下、回転軸体の「回転」というときは、一定速度での回転の意味で使用する。
(1)回転軸体のたわみ計測装置
まず、本発明のたわみ計測装置の実施形態のいくつかの例について説明する。なお、以下の各図では、同一または共通の各部については同一の符号を用いて示しており、重複した説明は以下では省略する。
[実施形態1]
図1は、本発明のたわみ計測装置の実施形態の一例を示しており、(a)はその全体構成図、(b)は正面図である。この図に示す実施形態のたわみ計測装置1は、被計測物である回転軸体10の外周面に取り付けられたターゲット体11a、11bと、回転軸体10の軸線方向両端の領域にそれぞれ対向して配置された発光部3および受光・演算表示部4とを備えている。回転軸体10は、不図示の回転軸体駆動源からの回転駆動作用により図中の矢印方向に回転可能とされている。また、発光部3および受光・演算表示部4は、前者から後者に至る光線の光路が回転軸体10の軸線方向に略平行になるように配置されており、回転軸体10の回転に伴い移動するターゲット体11a、11bが当該光路を遮るようになっている。
【0018】
回転軸体10の外周面に取り付けられるターゲット体11a、11bは、これに照射された光線21、22をその厚さ方向に透過しない遮光板で構成されている。これらのターゲット体11a、11bは、図1(b)に示すように、回転軸体10の径方向に延びる辺(台形の下底に相当)と、当該辺に平行な辺(台形の上底に相当)と、これらに鋭角に交わる斜辺と、回転軸体10の外周面に接合される辺とから形成される略台形の平面形状を有している。斜辺と上底に想到する辺とによって形成される三角形の領域は、回転軸体10の外周面からの径方向の距離の増大に伴い、回転方向の幅(遮光幅)が直線的に減少しており、幅変化部を構成している。前記の径方向に延びる辺と斜辺とのなす角度は、各ターゲット体の回転軸体10の外周面からの高さ制限などを考慮し、極力小さい鋭角に設定するのが好ましい。これにより、斜辺を光線が回転軸体10の回転軸体方向に走査する際の各ターゲット体における遮光状態と遮光されない状態とのタイミングの判定が容易となる。なお、図1ではターゲット体11a、11bをそれぞれ略台形形状として示したが、これに限定されず、例えば略三角形状とすることもできる。また、各ターゲット体における幅変化部は、回転軸体1の外周面からの高さ距離に応じて回転方向の幅が直線的に減少するように形成されたものに限定されず、指数関数的に(反比例の関係も含む)幅が減少するように形成されたものなどであってもよい。また、ターゲット体11a、11bは、その被照射面を反射面によって形成することもできる。この場合、受光・演算表示部4を例えば発光部3に近接した位置に併設することで、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0019】
ターゲット体11a、11bは、前記光線の光路に平行な方向から見て幅変化部が形成されれば、回転軸体10の軸線に対して適宜の傾き角でその外周面上に取り付けることができるが、好ましくは後述する発光部からの光線の光路に対して略直角(回転方向に略平行)に取り付けるのがよく、より好ましくは直角に取り付けるのがよい。また、ターゲット体11a、11bは、回転軸体10の側方からこれらを見た場合に、その外周面から略垂直に立設されているのが好ましい。
【0020】
図1に示す発光部3は、2本の光線を互いに平行にそれぞれ出射する2つの光線出射口を備えている。各光線出射口は、これらから出射される2本の光線の光路が回転軸体10の軸線方向に略平行、好ましくは平行となるように配置されている。また、回転軸体10の軸線に直交する断面においてその軸心(回転中心)とこれら各光線の光路とを結ぶ2本の直線のなす角度が略直角、好ましくは直角となるように発光部3の一面に配置されている。回転軸体10に対して発光部3の2つの光線出射口をこのように配置することで、回転軸体10の軸心を通る直交座標軸(この直交座標を構成する座標軸を、以下では、便宜上、x軸およびy軸と呼ぶことにする。)上のx軸方向およびy軸方向におけるたわみ量を計測でき、その結果、より複雑な回転軸体のたわみ変形も検出可能となる。なお、発光部に配置される光線出射口の数は図1の例の2つに限定されず、3つ以上であってもよく、回転軸体10のある径方向におけるたわみ量を簡易に計測する場合には、1つのみであってもよい。回転軸体の外周に沿ってその軸線方向に平行にさらに複数の光線を照射する場合には、光線出射口の個数が同じかまたは異なる発光部を適宜組み合わせて用いることができる。
【0021】
発光部3の光源としては、好適には連続発光可能なものが使用される。この光源としては、受光部で受光可能な種類の光線を発光できるものであれば特に制限されず、各種のレーザー、発光ダイオードなどの光電変換素子、または常用のランプなどが挙げられる。発光部2はまた、このような光源とレンズ、スリット、ピンホールなどを適宜組み合わせて連続発光可能に構成したものであってもよい。これらのうちでは、指向性を有する各種レーザーを用いるのが好ましい。
【0022】
発光部3からの2本の光線L1、L2は、回転軸体10の外周面から所定の高さ位置をそれぞれ通過し、回転軸体10の軸線方向反対側において光路上に設置された受光・演算表示部4にて受光されるように構成されている。これらの光線L1、L2の光路上を回転軸体10の回転に伴い回転移動するターゲット体11a、11bが横切り、光線L1、L2を断続的に遮るようになっている。各光線L1、L2は、各ターゲット体11a、11bの幅変化部における所定の高さレベルを見掛け上走査することになる。なお、発光部3は回転軸体10の周囲の適宜の位置に設置しておき、そこから出射される光線を光ファイバーケーブルなどの光伝送手段を用いてターゲット体11a、11bの被照射面に照射し、また受光・演算表示部4についても同様に回転軸体10の周囲の適宜の位置に配置し、前記光伝送手段を介してターゲット体11a、11bによって遮光されない光線を受光するように誘導することができる。
【0023】
受光・演算表示部4は、図1では、受光部5と、演算表示部6と、これらを電気的に接続する信号線7とを備えている。受光部5としては、光線L1、L2をそれぞれ受光して、光電変換により電気信号を出力可能な公知の光電変換素子やこれらを含む機器などが使用できる。このような光電変換素子の具体例としては、フォトダイオード、フォトトランジスタなどの公知のものが挙げられる。また、受光部5としてCCDカメラなどの撮像機器などを使用することもできる。この受光部3は、回転軸体10の側方領域において誘導手段22からの反射光を受光可能な位置に配置されている。なお、受光部5は、図1に示すように、2本の光線をそれぞれ受光可能な構成に限定されるものではなく、1本の光線のみを受光可能な構成であってもよく、また必要であれば、さらに複数本の光線を受光可能な構成であってもよい。複数本の光線を受光する必要がある場合には、これらの受光部を適宜組合せて用いることができる。
【0024】
演算処理部6としては、信号線7を通して受光部5からの電気信号の入力を受け、後述するように回転軸体10に加わるトルクを演算、表示し、必要であれば外部に演算結果に対応する信号を出力する機能を備えたものが使用できる。なお、受光部5と演算処理部6とはそれぞれ別体で構成してもよく、一体に構成してもよい。
【0025】
発光部3から連続的に出射された光線L1、L2が回転運動するターゲット体11a、11bの幅変化部によって遮られていない間は、受光部5は光線L1、L2を受光し、所定の大きさの電気信号を演算表示部6に対して出力する。その一方、光線L1,L2がターゲット体11a、11bによって遮られている間は、受光部5は受光せず、電気信号を出力しないことから、結果として受光部5から出力される電気信号はパルス波形を呈することになる。演算表示部6では、受光部5から入力を受けたこの電気パルス信号の波形から、当該信号から遮光時間をそれぞれ求めるように構成されている。そして、回転軸体10の回転中にたわみ変形が生じた場合には、ターゲット体11a、11bの幅変化部における光線の走査高さ位置が回転軸体10の径方向に変化し、結果として前記遮光時間が変化するので、これを利用して回転軸体10に生じたたわみ量を演算することが可能となる。なお、演算表示部6では、さらに回転軸体10の回転数信号の入力を受けるようにし、回転軸体10の回転速度が一定であるか否か(回転速度のばらつきが所定の範囲内にあるか否か)を判定するようにしてもよい。
【0026】
図2は、回転軸体10に生じるたわみ変形の有無によるターゲット体11aの幅変化部上を光線が走査する高さ位置(同図(a))と受光部3が出力する電気パルス信号(同図(b)〜(d))との関係を示した図である。回転軸体10にたわみが生じていない状態では、図2(c)に示すように、発光部3からの光線の光路をターゲット体11a(または11b)が遮っている間は、当該ターゲット体11a(または11b)上を光線が走査する高さ位置(この高さ位置は回転軸体10の外周面からの径方向の距離で規定してもよく、ターゲット体11aの先端からの距離で規定してもよいが、図5では後者の距離で規定している。)をxとし、その間受光部5が受光しないことで電気信号を出力しない時間(以下、遮光時間という。)Tを求めることができる。
【0027】
回転軸体10にたわみ変形が生じると、図2(a)に示すように、そのたわみ変形の方向に応じて前記光線がターゲット体の幅変化部上を走査する高さ位置が当該回転軸体の径方向内外(図に向って上下方向)に変化し、それに伴って回転方向における遮光幅も変化する結果、遮光時間が変化する。例えば、回転軸体10の図に向って右側の部分に下向きにたわみ変形が生じた場合、ターゲット体11a上における光線の走査する高さ位置はxからxに変化し、それに伴い遮光時間はTからTと短くなる(図2(d)参照)。また、回転中に回転軸体10の図に向って右側の部分に上向きにたわみ変形が生じた場合、光線が走査する高さ位置はxからxに変化し、それに伴い遮光時間はTからTと長くなる(図2(e)参照)。このようにたわみ変形前後の遮光時間求め、さらにターゲット体の幅変化部における光線の走査高さ位置の変化を検出することにより、回転軸体10のたわみ量は、次の式(式1または式2)で求めることができる。
【0028】
【数1】

【数2】

【0029】
また、図1において、2つのターゲット体11a、11bのそれぞれの幅変化部における光線L1、L2の走査高さ位置がそれぞれ変化し、それによってそれぞれの遮光時間も変化する場合には、各ターゲット体の取付方向であるx軸方向およびy軸方向におけるたわみ量成分を前記式によってそれぞれ求め(仮に、x軸方向およびy軸方向のたわみ量成分をそれぞれx、yとする)、式3に基づいてこれらのベクトル和を求めることで、回転軸体10に生じるたわみ量の動的な挙動(動的たわみ量)(z)を求めることができる。
【0030】
【数3】

【0031】
[実施形態2]
図3は、本発明のたわみ計測装置の実施形態の別の例を示す図である。この図に示すたわみ計測装置1は、被計測物である回転軸体10の外周面に取り付けられた2つのターゲット体8、9と、回転軸体10の周囲に配置された発光部3および受光・演算表示部4、4とから構成されている。
【0032】
ターゲット体8、9は、図3に示すように、一方向にのみ湾曲し、その凸面側に光を反射する被照射面(反射面)が形成された同形、同サイズの湾曲板である。これらターゲット体8、9が発光部2側に凸面からなる被照射面を向けて回転軸体10の外周面に取り付けられている。ターゲット体8,9の回転軸体10の軸線方向に対する取付角度は、略直角、好ましくは直角に設定され、これらのターゲット体8,9はそれぞれ、回転軸体10の外周面に略垂直に、好ましくは垂直に立設されることが好ましい。2つのターゲット体8,9の取付角度は互いに異ならせて設定できるが、略同等に設定するのが好ましい。
【0033】
発光部3は、回転軸体10の軸線方向に沿って2本の平行な光線L1、L2を照射可能とされており、光線L1、L2のそれぞれと回転軸体10の回転中心とを結ぶ直線が直角に交差するように回転軸体10の一端部の外側領域に配置される。この発光部3としては、連続発光可能な光源を備える前記実施形態1に示したようなものが好適に使用できる。
【0034】
また、受光・演算表示部4は、回転軸体10の速報領域においてターゲット体8、9からの反射光を受光可能な位置に配置されている。受光・演算表示部4は、反射板7、8からの反射光をそれぞれ受光可能であり、前記反射光の受光位置の相対的な変化を検出できるものであれば特に限定されない。この受光・演算表示部4、4として、図3では、その動作についての理解を容易にするために、一面にスケール部4aを備え、回転軸体10の軸線方向に沿って配置された板状体で模式的に示すが、実際にはこのような装置に代えてCCDカメラなどの撮像装置を含む公知の画像処理装置などを好適に使用できる。この場合、CCDカメラにおいて回転軸体10へのたわみ変形の状態による反射光の受光位置の変化を画素数による座標位置の変化量に変換して回転軸体10のたわみ量を演算し表示させることができる。
【0035】
図4は、図3に示す本実施形態の計測原理を説明するための図である。この図では、2つの光線のうち光線L1についてのみ図示するが、もう1つの光線L2についても同様に図示することができる。回転軸体10にたわみ変形が生じていない状態で、発光部3からの光線L1がターゲット体8の被照射面に向けて照射され、そこからの反射光が受光・演算表示部4にて受光される。図3および図4では、この状態での受光・演算表示部4における受光位置をスケール部4aの「0」で示している)。
【0036】
図3において、回転軸体10の右側の部分に図に向かって上方向にたわみ変形が生じて回転軸体10が10aの状態となった場合、ターゲット体8は該たわみ変形に伴い発光部3側に起き上がる(図中、符号8a参照)。この反射板8aの被照射面に光線L1に照射されると、その入射角度および反射角度がたわみ変形のない場合のそれらから変化する。その結果、反射光21aは受光・演算表示部4のスケール部4aにおいてたわみ変形のない場合よりも発光部3側で受光されることになる。また、回転軸体10の右側の部分に図に向って下方向にたわみ変形が生じて回転軸体10が10bの状態となった場合には、ターゲット体8はさらに倒れた状態となる(図中、符号8b参照)。それに伴い、ターゲット体8上の照射位置における光線L1の入射角度および反射角度がそれぞれ変化し、反射光21bは受光・演算表示部4のスケール部4aの発光部3側において受光されることになる。このように回転軸体10にたわみ変形が生じていない場合とたわみが生じている場合の受光・演算表示部3での反射光の受光位置の変化をスケール部4aによって求めることで、反射板7の設置位置での回転軸体10のたわみ量を容易に、しかもターゲット体8とスケール4aとの距離によってはスケール部4a上では増幅された状態で知ることができる。
【0037】
また、回転軸体10のたわみ量を求めたい位置と反射板8、9の設置位置との関係が分かれば、当該たわみ量を求めたい位置での回転軸体10のたわみ量を求めることもできる。さらに、この反射板を回転軸体10の周方向に等間隔に複数設けることで、当該回転軸体10の回転中におけるたわみ量の動的変化(たわみ変形の状況)を知ることができる。
【0038】
なお、本実施形態に用いられるターゲット体8、9としては、例えば図5に示すような湾曲のない平板状であってもよく、また直交する各方向に凹凸いずれかに湾曲する反射面としての被照射面を備えた湾曲板であってもよい。これらのターゲット体を用いた場合でも、本実施形態の計測原理は前記と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0039】
[実施形態3]
本発明のたわみ計測装置はまた、実施形態1および実施形態2にそれぞれ示した例を組み合わせた構成とすることもできる。具体的には、実施形態2におけるターゲット体8、9に実施形態1に示したターゲット体11a、11bと同様に幅変化部を形成し、ターゲット体8、9から反射する反射光とこれによって遮光されない光線とをそれぞれの位置に設置した受光・演算表示部4、4によって受光するように構成することができる。このような構成とすることで、前記実施形態1および2で示した方法を適宜変更してそれぞれの計測方式で回転軸体10のたわみ量を求めることができ、測定精度の向上が図られるという利点がある。
【0040】
(2)回転軸体のたわみ量および軸ねじれ計測装置
次に、本発明の回転軸体のたわみ量および軸ねじれ計測装置の実施形態について説明する。以下の実施形態に示すたわみ量および軸ねじれ計測装置は、いずれも被計測物である回転軸体の外周面にその軸線方向に所定の距離だけ離して取り付けられた少なくとも1組のターゲット体(以下、第1ターゲット体および第2ターゲット体という。)を設け、前記回転軸体の軸線方向に略平行にその外周面から所定の高さ位置を通過する光線をこれらの第1および第2ターゲット体で遮るように構成されている。また、発光部は、前記実施形態1の場合と同様、所定の位置に配置された2つの光線出射口から同方向に互いに平行な2本の光線を出射するタイプを使用するものとする。また、前記2本の光線は、前記回転軸体の外周面上、前記実施形態と同様の位置を通過し、該回転軸体の軸心を通るx、y直交座標軸上にてたわみ量などを計測できるものする。なお、以下の各図において、同一または共通する各部については同一の符号を用い、これら各部の重複する説明は省略する。
【0041】
[実施形態4]
図6は、本発明のたわみおよび軸ねじれ計測装置の実施形態の一例の構成を示す図である。また、図7は、図6に示す回転軸体上の第1ターゲット体11a〜11dおよび第2ターゲット体12a〜12dのそれぞれの配置を示しており、(a)は斜視図、(b)は正面図である。これらの図に示す実施形態では、回転軸体10の軸線方向両端部の外周面にその円周方向に等間隔にそれぞれ取り付けられた第1ターゲット体11a、11b、11c、11dおよび第2ターゲット体12a、12b、12c、12dと、回転軸体10の両端領域に対向して配置される発光部3と、受光・演算表示部4とから構成されている。発光部3から受光・演算表示部4に向けて照射される光線L1、L2は、それぞれ回転軸体10の軸線に略平行に(好ましくは平行に)その外周面から所定の高さ位置を通過するようにその光路が設定されている。
【0042】
第1ターゲット体11a、11b、11c、11dは、各2つの長辺および短辺からなる略矩形の平面形状を有する同形、同サイズの遮光板である。2つの長辺は、図6では、互いに平行に図示されているが、必ずしも平行に限定されるものではなく、例えば2つの長辺間の距離が一端から他端に向けて一方向に連続的に増加する扇状などのように配置形成することもできる。この第1ターゲット体11a〜11dは、その長さ方向または幅方向の一端部を回転軸体10の外周面に取り付けるようにする。それぞれの第1ターゲット体11a〜11dの取付に当たっては、回転軸体10の外周面から略放射状に延びる2つの長辺または短辺のうち少なくとも一方は回転軸体10の径方向にその向きを一致させることが好ましい。図6に示す例では、回転軸体10の回転方向後方側の長辺の向きが径方向(法線方向)に一致するように構成されている。なお、第1ターゲット体11a〜11dの取付は、回転軸体10の外周面に直接または該外周面からその内部に埋め込んだ上で公知の接着、溶接などの方法を用いて行なうことができる。
【0043】
第2ターゲット体12a、12b、12c、12dは、いずれも同形、同サイズの三角形、好適には直角三角形の平面形状を備え、その短辺を回転軸体10の外周面に公知の方法で固着した場合に回転軸体10の外周面からの径方向の距離の増加に伴って回転軸体10の回転方向の幅が小さくなる幅変化部によってその全体が構成されている。これらの第2ターゲット体12a〜12dは、図7(b)に示すように、回転軸体10の回転方向前方側の端辺(回転軸体10の軸船方向からこれを見た場合に第1ターゲット体11a〜11d寄りの端辺)の向きが回転軸体10の径方向(法線方向)に合致している。ここで、回転方向後方側の斜辺と前方側の端辺とのなす角度は、前記したように受光、遮光のタイミングの判定を容易にするために極力小さく設定されていることが好ましい。第2ターゲット体12a〜12dの回転軸体10への取付もまた、第1ターゲット体11a〜11dの場合と同様に溶接、接着などの公知の方法を用いて行うことができる。
【0044】
図8は、図7において第1ターゲット体の平面形状を変更した変形例を示す図である。この図に示すように、第1ターゲット体11a〜11dとして、三角形(好適には直角三角形)の平面形状の遮光板を使用できる。この場合、第1ターゲット体11a〜11dの回転軸体10から外方に向けて延びる2つの端辺のうちの一方の向きは、当該回転軸体10の径方向(法線方向)に合致するように配置するのが好ましい。図7では、回転軸体10の外側から軸線方向に沿ってこれを見た場合に第1ターゲット体11a〜11dの第2ターゲット体12a〜12d寄りの端辺の向きは当該回転軸体10の径方向(法線方向)に合致させている。
【0045】
第1ターゲット体11a〜11dのそれぞれと第2ターゲット体12a〜12dのそれぞれとは、この順に互いに組をなすように回転軸体10の外周面に配置される。図7および図8に示すように、第1ターゲット体11a〜11dおよび第2ターゲット体12a〜12dのそれぞれ対応する各組は、回転軸体10の外側から軸線方向に沿ってこれを見た場合に、これらの互いに向き合い、回転軸体10の径方向に合致する端辺間に所定の大きさの間隙が設けられ、両者が互いに重なり合わないように配置される。この端辺間の間隙は、回転軸体10の回転力などから予測される軸ねじれ量よりも大きい値に設定するのがよい。
【0046】
図9は、図7に示した実施形態のたわみ量および軸ねじれの計測原理を示す図である。この図において、(a)〜(c)は回転軸体10の外周面に設けられた第1ターゲット体11aと第2ターゲット体12aとの位置関係およびこれらのターゲット体の被照射面における光線の走査高さ位置を、また(d)〜(l)は(a)〜(c)における2つのターゲット体間の位置関係および光線の捜査高さ位置のそれぞれに対応する受光部3から出力される電気信号の波形をそれぞれ示している。そして、(a)、(d)、(g)、(l)の列が回転軸体10に軸ねじれが生じておらず、たわみ変形のみが生じた場合、(b)、(e)、(h)、(k)の列が回転軸体10に回転方向とは反対方向に軸ねじれが生じ、たわみ変形も生じた場合、残りの列が回転軸体10に回転方向に軸ねじれが生じ、たわみ変形も生じた場合をそれぞれ示している。なお、この図(a)〜(c)では、前記1組のターゲット体の位置関係および光線の走査高さ位置を簡略化して示すために、回転軸体10の軸線方向に直角な方向の断面円弧状の外周面を平面として図示している。
【0047】
図9(a)において回転軸体10に軸ねじれやたわみ変形が生じていない状態では、光線は第1ターゲット体11aおよび第2ターゲット体12aの両被照射面の高さ位置23(第2ターゲット体12aの先端からの距離x)を図中の矢印で示す回転方向に沿って走査する。また、光線が第1ターゲット体11aと第2ターゲット体12aとの間の間隙を通過し受光部5によって受光される間、当該受光部5からは電気信号が所定の時間だけ出力される。図9では、このパルス信号の波形における受光時間をT20で示している(図9(d)、(g)、(j)参照)。この状態から回転軸体10に軸ねじれのみが生じた場合、仮に回転軸体10の回転方向とは反対方向に軸ねじれが生じた場合、回転軸体10の軸線方向に沿って外側からこれを見たとすると、第1ターゲット体11aに対して第2ターゲット体12aが近接する方向にずれ、両者間の間隙は小さくなり、結果として当該間隙に対応するパルス信号における受光時間は短くなり、T20からT21に変化する(図9(e)、(h)、(k)参照)。反対に、回転軸体10に回転方向に軸ねじれが生じた場合には、第1ターゲット体11aに対して第2ターゲット体12aが離隔する方向にずれ、両者間の間隙が大きくなり、結果として当該間隙に対応するパルス波形における受光時間は長くなり、T20からT22に変化する(図9(f)、(i)、(l)参照)。また、これらの受光時間を求めるのとは別に、演算表示部6において前記出力パルス信号の周期的に繰り返される波形から回転軸体10の回転周期を求め、式3によって角速度ωを演算しておく。
【0048】
【数4】

ここで、式3中、Tは回転軸体10の回転周期を示す。
【0049】
前記の受光時間T21、T22および角速度ωの各値を用い、以下の式5または式6によって軸ねじれdnを求めることができる。このように一定速度で回転する回転軸体10に生じる軸ねじれは、外周面上において個々の第1ターゲット体に対応する第2ターゲット体の円周方向の位置変化(ずれ)となって現れるから、1組の第1ターゲット体11aおよび第2ターゲット体12aの互いに向き合った端辺間の間隙の大小の変化を検出することで求めることができる。
【0050】
【数5】

【数6】

【0051】
次に、回転軸体10にたわみ変形のみが生じた場合については、すでに説明したように、各組の第2ターゲット体が備える被照射面(幅変化部)上において光線の走査高さ位置が回転軸体10の径方向に変化するので、回転軸体10の径方向のたわみ量を第2ターゲット体の幅変化部上を光線が回転方向に走査する距離の変化に変換することができる。よって、この光線の第2ターゲット体における走査距離の変化を検出することで、回転軸体10に生じるたわみ量を求めることができるようになる。具体的には、図9において回転軸体10の第2ターゲット体12a側の端部にたわみ変形が生じると、当該たわみ変形の向きが上下方向いずれかによって第2ターゲット体12aにおける光線L1の走査高さ位置が23から24または25(第2ターゲット体12aの先端からの距離では、xからxまたはx)に変化する。これにより、第2ターゲット体12aの被照射面における光線L1の回転方向に走査する距離が変化し、この距離の変化に伴い受光部5が出力する出力が0となる遮光時間がT30からT31またはT32に変化する(図9(d)、(g)、(j)参照)。遮光時間および第2ターゲット体12aの先端からの距離の値を式7または式8に代入することで、回転軸体10に生じたたわみ量を計測することができる。
【0052】
【数7】

【数8】

【0053】
また、回転軸体10に軸ねじれおよびたわみ変形がともに生じている場合には、受光部5での出力パルス信号波形から、前記と同様に受光時間および遮光時間をそれぞれ求めることで、回転軸体10に生じた軸ねじれおよびたわみ量をそれぞれ独立して求めることができる。例えば、回転軸体10の回転方向に軸ねじれが生じ、第2ターゲット体12aが設置された側の端部に下方向にたわみ変形が生じた場合を例にとって説明する。この場合、前記軸ねじれによって第1ターゲット体11aと第2ターゲット体12aとの間の間隙に相当するパルスの立ち上がり時間はT20からT22に変化する。また、前記たわみによって第2ターゲット体12aの幅変化部における光線の走査高さ位置(先端からの距離)はxからxに、光線の走査距離に対応する遮光時間はT30からT31に変化する(図9(i)参照)。これらの変化前後の数値から、それぞれ別個独立に回転軸体10に生じたたわみ量および軸ねじれの大きさを計測することができる。このような方法によりたわみ量またはこれと軸ねじれの大きさとを発光部3からの2本の光線のそれぞれについて周期的に計測することを継続することで、回転軸体10の軸線に直交する断面におけるx,y直交座標軸上でのたわみ量の変化を追跡できるとともに、軸ねじれについての計測精度がより向上する。
【0054】
なお、前記式7および式8において、遮光時間T30、T31およびT32のそれぞれに式3で求めた角速度ωを乗じることで、幅変化部における光線の走査距離を求めることができるので(仮にこの走査距離を順にy、y、yとする)、これらの式におけるT30、T31およびT32にy、yおよびyを代入することで、同様に回転軸体10に生じるたわみ量を求めることができる。このように、第2ターゲット体に幅変化部を設けることで、1組のターゲット体を用いた従来のトルク計測技術ではなし得なかったたわみ量の計測を軸ねじれの計測と同時に行なうことができる利点がある。
【0055】
[実施形態5]
図10は、回転軸体の外周面に設けられる第2ターゲット体の形状および当該第2ターゲット体と第1ターゲット体との回転方向における位置関係を変更した本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置の実施形態の別の例を示しており、(a)は斜視図、(b)は正面図である。この図では、実施形態1と同様の基本的構成を備えた発光部および受光・演算表示部(受光部、演算表示部)を実施形態4と同様の位置に配置するものとし、これらの図示を省略している(以下の図12、14、17も同様)。
【0056】
図10に示す第2ターゲット体12a〜12dは略矩形形状の遮光板であり、その長さ方向が回転軸体10の外周面の接線方向に向くように配置固定されている。第2ターゲット体12a〜12dのそれぞれの中央領域における回転方向後方側には、光線が厚さ方向に透過可能な三角形状の透孔13、14、・・・がそれぞれ設けられている。なお、第1ターゲット体11a〜11dの外形形状については、図7に示した実施形態と本質的に変わるところはないが、その回転方向前方側の端辺の向きが回転軸体10の径方向に合致するように第一ターゲット体11a〜11dのそれぞれを当該回転軸体10の外周面に配置固定しておくのが好ましい。
【0057】
第1ターゲット体11a〜11dと、これらのそれぞれに対応する第2ターゲット体12a〜12dとの位置関係については、図10(b)に示すように、回転軸体10の軸線方向からこれらを見た場合に、第1ターゲット体11a〜11dが、第2ターゲット体12a〜12dの回転方向前方側において重なり合い、かつ第2ターゲット体12a〜12dのそれぞれが備える三角形状の透孔13、14、・・・を塞ぐことがないように配置されている。回転軸体10の軸ねじれがその回転方向および当該方向の反対方向に生じる可能性があることから、好ましくは第1ターゲット体11a〜11dの回転方向後方側の端辺が第2ターゲット体12a〜12dの回転方向前方側の端辺と透孔13、14、・・・の当該方向前方側の端辺との略中間に位置するようにしておくのがよい。
【0058】
図11は、本実施形態5の1組のターゲット体11a、12aの位置関係(同図(a))と、これらを光線が通過する際に受光部5が出力する電気パルス信号の波形((b)〜(d))との関係を示した図である。回転中の回転軸体10にこれにたわみ変形が生じた場合、当該たわみ変形の方向に応じてこれら2つのターゲット体11a、12aの被照射面上の光線の走査高さ位置がたわみ編変形のない状態の位置23から24または25へと図の上下方向に変化する。これにより、図11(b)〜(d)に示すように、透孔13を通過して受光部3が受光する受光時間(図中、「たわみ」と表示したピークの幅)が変化するので、その変化から前記の方法によって回転軸体10に生じたたわみ量を求めることができる。また、回転軸体10の回転中に生じた軸ねじれについては、第1ターゲット体11aに対して第2ターゲット体12aの位置が回転方向または当該方向の反対方向(図中の矢印Sの方向)にずれ、第1ターゲット体11aおよび第2ターゲット体12aの被小斜面照射による遮光時間(透孔13を通過した光線の受光による受光時間を一部に含む。図11中、「トルク」と表示している。)が増減するので、この時間を求めることで、前記式を用いて回転軸体10に生じる軸ねじれを計測することができる。また、回転軸体10に軸ねじれおよびたわみ変形がともに生じた場合には、前記と同様、受光部5から出力されるパルス信号の波形から求めた受光時間および遮光時間によって軸ねじれおよびたわみ量をそれぞれ別個に計測することができる。この場合についても、発光部3からの2本の光線のそれぞれについて周期的にたわみ量などを計測することを継続することで、回転軸体10の軸線に直交する断面におけるx,y直交座標軸上でのたわみ量の変化を追跡できるとともに、軸ねじれについての計測制度がより向上する。
【0059】
[実施形態6]
図12は、回転軸体の外周面に設けられる第1ターゲット体の外形形状を変更した本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置の実施形態の別の例を示しており、(a)は斜視図、(b)は正面図である。この図の実施形態における第1ターゲット体11a〜11dは、略矩形形状の遮光板であり、それぞれの長さ方向が回転軸体10の外周面におけるそれぞれの取付位置での接線方向に略平行となるように配置固定されている。第1ターゲット体11a〜11dのそれぞれには、回転軸体10の外周面から所定の高さ位置の中央領域にその接線方向に平行に厚さ方向に貫通するスリット11e、11f、・・・がそれぞれ穿設されている。回転軸体10の回転中、発光部(不図示)から出射された光線がこれらのスリット11e〜11h内を通過するように前記光線の光路が設定される。なお、第2ターゲット体12a〜12dの外形形状については、図7に示すものと本質的に変わるところはない。
【0060】
第1ターゲット体11a〜11dと、これらのそれぞれと組をなす第2ターゲット体12a〜12dとの位置関係は、この回転軸体10を正面(回転軸体10の軸線方向に沿ってその外側)から見た場合に、前者のスリット11e〜11hの長手方向の略中間の位置に第2ターゲット体12a〜12dが配置されるようにするのが好ましい。これにより、第1ターゲット体11a〜11dの回転運動により各スリット11e~11hを長手方向に走査する光線が、その途中で第2ターゲット体12a〜12dによって遮光されるようになり、結果として第1ターゲット体11a〜11dに対して第2ターゲット体12a〜12dの位置が回転軸体10の回転方向またはそれとは反対方向にずれた場合でも、このずれの変化によって軸ねじれを計測することができる。
【0061】
図13は、本実施形態6における1組のターゲット体11a、12aの位置関係(同図(a))と受光部(不図示、図6参照)が出力する電気パルス信号の波形(同図(b)〜(d))との関係を示している。走査高さ位置23を走査し、受光部で受光される光線は、回転軸体10の回転に伴い、第1ターゲット体11aの回転方向前方側(図に向って左側)の端辺から被照射面の縁部に入射しこれを照射し始めるとともに、受光部では遮光状態となり、光線がスリット11eに達して再び受光部にて受光されるようになる。次に、光線が第2ターゲット体12aの回転方向前方側の端辺からその被照射面を照射し始め、これによって光線は遮られて受光部に到達しない状態となった後、第2ターゲット体12aを通過することで、再び受光部で受光されるようになる。そうして、光線が第1ターゲット体11の回転方向後方側の被照射面の縁部に達し、これによって遮られることで、再び受光部では受光しない状態となり、その後この縁部を通過することで、受光部はまた光線を受光するようになる。
【0062】
回転軸体10に軸ねじれが生じた場合、当該軸ねじれの方向に応じて円周方向(図中の矢印Sのいずれかの方向に第2ターゲット体12aがずれ、スリット11eの回転方向前方側(図に向って左側)の端辺から第2ターゲット体12aの回転方向前方側(図に向って左側)の端辺までの距離が変化し、当該変化に伴い受光部における受光時間(図13(b)に示す「トルク」と記したパルスの幅に相当)も変化する。この受光時間を求めることで、回転軸体10に生じる軸ねじれを計測することができる。また、回転軸体10の回転中にたわみ変形が生じた場合、第1ターゲット体11aのスリット通過時には光線は図中の走査高さ位置23を通過するが、第2ターゲット体12aに照射する際には、前記たわみの方向に応じて光線の走査高さ位置がたわみのない状態の位置23から図の上下方向に移動し、光線の走査高さ位置は24または25の位置に変化する。その結果、光線の第2ターゲット体12aの被照射面における走査距離が長短いずれかの方向に変化し、それに伴いこの遮光によって受光部3が受光しない時間(遮光時間)が図13(c)または(d)のように変化する。受光部3からの電気パルス信号の入力を受けた演算表示部(不図示、図4参照)では、この遮光時間の変化から、前記式によって回転軸体10のたわみ量を計測することができる。また、本実施形態においても、発光部3からの2本の光線のそれぞれについて前記のたわみ量などの計測を継続することで、2方向におけるたわみ量の変化を追跡できるとともに、軸ねじれの計測制度の向上を図ることができる。
【0063】
[実施形態7]
図14は、本発明のたわみ及び軸ねじれ計測装置の実施形態のさらに別の例として、前記実施形態5に示した第2ターゲット体12aに代えて、先端側に幅変化部として山形に形成された山形形状部121を備える第2ターゲット体12を用いたものである。この山形形状部121は、先端の頂点から回転軸体10の外周面に下ろした垂線を中心として左右対称に形成されているのが好ましい。第1ターゲット体11としては、図13に示したような中央領域にスリットを備えたものと同様のものを用いることができる。なお、図14では、説明の便宜上、回転軸体10の軸線方向両端に第1ターゲット体11および第2ターゲット体12を各1つ配置しただけとし、図8または図10などのように回転軸体10の円周方向に等間隔に第1ターゲット体11および第2ターゲット体12を複数組配置した状態を逐一示していないが、そのような配置を採用可能であることは言うまでもない。
【0064】
これら1組のターゲット11、12は、図15(a)に示すように、第2ターゲット体12における山形形状部121の頂点から回転軸体10の外周面に向けて下ろした垂線が第1ターゲット体11におけるスリット11eの長さ方向略中間を通るような位置関係に配置されている。高さ位置23を通過し、受光部(不図示)にて受光されていた光線は、回転軸体10の回転に伴い、第1ターゲット体11aの回転方向前方側(図に向って左側)の端辺から被照射面の縁部に入射しこれを照射し始め、受光部では遮光状態となるが、光線がスリット11eに達することで再び受光部にて受光されるようになる。次に、光線が第2ターゲット体12aの回転方向前方側の端辺からその被照射面を照射し始めることによって受光部では遮光状態となり、第2ターゲット体12aを通過することで、受光部にて再び受光されるようになる。その後、光線が第1ターゲット体11の回転方向後方側の縁部に達し、その被照射面を照射することで、再び受光部では遮光状態となり、またこの縁部を通過することで、受光部はまた光線を受光するようになる。このような受光部での受光、遮光の状態を当該受光部から出力される電気パルス信号の波形として示したのが図15(b)である。
【0065】
図15(b)において、回転軸体10の回転中にこれにたわみ変形が生じた場合、前記のように、たわみ変形の方向により第1ターゲット体11(光線の走査高さ)に対して第2ターゲット体12の位置が回転軸体10の径方向上下に変化するので、回転軸体10の円周方向における光線の遮光距離が変化し、それに伴い第2ターゲット体12による光線の遮光時間tもまた長短いずれかに変化する。この変化前後の遮光時間tを用い、前記式1によって回転軸体10にたわみ変形が生じた後の頂点から走査線までの高さ位置を求めることで、回転軸体のたわみ量を計測することができる。また、走査高さ位置23において、光線が回転方向に沿ってスリット11e内を通過し始め、第2ターゲット体12の山形形状部の頂点から下ろした垂線に達するまでの時間tを求めることで、回転軸体に生じる軸ねじれを計測することもできる。
【0066】
図15(c)に示す第2ターゲット体12は、同図(a)に示すそれの中央領域に長さ方向を回転軸体10の径方向に向けた略矩形形状のスリット13を穿設したものである。このスリット13はその長さ方向が光線の走査線と略直角に交差していればよく、第2ターゲット体12の中央領域のどの位置に設けることもできるが、好ましくは図15(c)に示すように、山形形状部121の頂点から下ろした垂線を中心として左右対称となるように細長に穿設されているのがよい。それ以外の構成は、図14および図15(a)に示した形態と本質的に変わるところはない。このようなスリット13を第2ターゲット体12の中央領域に設けることで、光線がスリット11e内を通過し始めてからターゲット体12により遮られ、スリット13に達し受光部によって受光されるまでの時間、およびスリット13に達し、第1ターゲット体11の図に向って右側の被照射の縁部に遮られるまでの時間を検出することで、前記の方法により回転軸体の円周方向に生じる軸ねじれの大きさとともにその向きを簡単に求めることができる。
【0067】
図16は、実施形態6におけるさらに2つの第2ターゲット体12の変形例を示している。この図(a)に示す第2ターゲット体12は、図14および図15(a)に示した第2ターゲット体12の山形形状部121の高さを略一定にして2つの斜辺の傾斜角を大きくした山型形状部121と、これに隣接し、回転軸体10の径方向に突設した略矩形の平面形状を有する突出片17とをそれぞれ先端側に備えている。この突出片17は、図16(a)では、山型形状部121の回転方向後方側(図に向って右側)に設けられているが、この位置に限定されるわけではなく、山形形状部121の前方側(図に向って左側)に設けることもできる。
【0068】
図16(a)に示す第2ターゲット体12を用いることで、回転軸体の回転中にこれにたわみ変形が生じた場合には、第1ターゲット体11のスリット11eを通過する光線が第2ターゲット体12の山型形状部121によって遮ぎられる時間(遮光時間)の変化を検出することで、回転軸体に生じたたわみ量を計測することができる。また、回転軸体の回転に伴い、光線が第1ターゲット体11の図に向って左側の被照射面の縁部からスリット11e内を通過し始めた時から第2ターゲット体12の突出片17の図に向って左側の端辺に達するまでの時間を図16(b)のパルス波形から求めることで、前記したように回転軸体に生じる軸ねじれを検出することができる。
【0069】
図16(c)に示す第2ターゲット体12では、被照射面の先端側に山形形状部121の代わりに、略V字状の切り込み122が形成されている。このような形状の第2ターゲット体12では、第1ターゲット体11のスリット11e内を通過する光線は、その走査高さ位置23においてこのV字状の切り込み122を円周方向に通過する際に受光部において受光されるので、この受光時間の変化を検出することで、回転軸体のたわみ変形の方向およびたわみ量を求めることができる。また、第1ターゲット体11におけるスリット11eの長さ方向両端の端辺と第2ターゲット体12の同方向両端の端辺との間隙を光線が通過して受光部において受光される受光時間をそれぞれ求めることで、回転軸体の回転中における軸ねじれの大きさおよび向きを得ることができる。
【0070】
[実施形態8]
図17は、本発明のたわみおよび軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示している。この図に示す実施形態では、回転軸体10の軸線方向両端部の外周面にそれぞれ第1ターゲット体11、11、・・・とこれらのそれぞれと組をなす第2ターゲット体12、12、・・・とを当該回転軸体の円周方向に図6に示したこれらのピッチよりも小さいピッチで等間隔に配置している。各組の第1ターゲット体11および第2ターゲット体12は、図6に示した2種類の第2ターゲット体11a、12aと同様の外形形状を備え、それぞれ互いに千鳥状に配置されている(図18(a)参照)。発光部および受光・演算表示部などのその他の構成については、図6に示す実施形態と本質的に代わるところはない。
【0071】
このように回転軸体10の外周面に所定の距離だけ離してこのように複数組配置した2種類のターゲット体11、12によって、発光部3(図6参照)からの回転軸体10に平行な2本の光線L1、L2を断続的に遮るように構成する。これら2本の光線は、ターゲット体11、12によって遮光されない状態でそれぞれ受光部にて受光されることで、それぞれの方向における回転軸体10のたわみ量の経時変化の計測が可能となる。
【0072】
図18(b)は、回転軸体10の軸心(回転中心)を通り、2本の光線の光路とそれぞれ直交するx軸およびy軸からなる直交座標と時間軸tとの3次元の座標系において、それぞれの光線の第2ターゲット体への照射による遮光時間から求めた各x軸方向およびy軸方向におけるたわみ量の経時変化をそれぞれプロットしている。図18(b)において、時間tにおけるx軸方向のたわみ量はxであり、y軸方向のたわみ量はyであるので、前記式3にこれらのたわみ量を代入してベクトル和を計算することで、時刻t1おける回転軸体10の動的たわみ量を求めることができる。また、時刻t2におけるx軸方向のたわみ量xとy軸方向のたわみ量yとを同様に前記式3に代入してこれらのベクトル和を演算することで時間tにおける動的たわみ量を求めることができる。このようにしてx軸方向およびy軸方向の方向におけるたわみ量の計測をそれぞれ継続することで、任意の時点における回転軸体10の動的たわみ量をも算出することができるようになる。また、回転軸体10に配置される2つのターゲット体の組数をさらに増すことで、当該回転軸体10に生じるたわみ量および軸ねじれの動的な変化をより細密に知ることができるようになる。
【0073】
[実施形態9]
図19は、本発明のたわみおよび軸ねじれ計測装置のさらに別の実施形態を示している。この図に示す実施形態では、回転軸体10の外周にその長さ方向所定の距離だけ離して嵌装される鍔状の第1ターゲット体31および第2ターゲット体33と、光線L1を出射する発光部3と、光線L1をそれぞれのターゲット体31、33の被照射面に照射し、その反射光を導く光学系30と、2つの受光部5,5と、信号線43、44を介して受光部5、5のそれぞれが出力する電気信号の入力を受け、当該電気信号に基づいて回転軸体10の回転周期、軸ねじれおよびたわみ量を演算して表示する演算表示部6とから主に構成されている。光学系30は、発光部2からの光線L1を伝送する光伝送手段35と、これによって伝送された光線L1を回転軸体10の軸線方向に平行な2本の光線L11、L12に分岐するとともに、前記各ターゲット体31、33の互いに対向する被照射面に照射するように各光線L11、L12の光路を調整する光路分岐手段37と、当該光路分岐手段37および前記各ターゲット体31、33の間の光路にそれぞれ配置され、各ターゲット体31,33からの反射光の入射をそれぞれ受けて受光部5,5に導くハーフミラー39,42から主に構成されている。なお、発光部3は、指向性を有する光線を連続的に出射する光源で構成されており、前記に例示したものが好適に使用できる。
【0074】
回転軸体10の外周面に固定された第1ターゲット体31および第2ターゲット体33は、いずれも発光部3からの光線の照射を受ける被照射面を有している。第2ターゲット体33の被照射面には、図19に示すように、回転軸体10の直径よりも大きい直径を有する同心円状に互いに隣接して鋸刃状に配列された略三角形の平面形状を備える反射部32、32、・・・が配設されている。この第2ターゲット体33の反射部32と同様に、これと対向して配置されている第1ターゲット体33の被照射面にも、回転軸体10の直径よりも大きい直径を有する同心円上に図7または図8に示した第1ターゲット体(11aなど)と同様の三角形または略矩形の平面形状を備えた反射部(不図示)が配列されている。
【0075】
この発光部3から出射される光線L1は、光ファイバーケーブルなどの光伝送手段35によって伝送された上で、レンズ36によって平行光とされ、光路分岐手段37に進入する。光路分岐手段37は、光路に対してそれぞれ45度および135度の傾斜にてくの字状に配置されたハ−フミラー37aおよび反射ミラー37bで構成されており、ハーフミラー37aに入射した光線の一部が光路に対して直角に反射し、回転軸体10の軸線に沿った一方向に分岐され(光線L11)、残部がこれを透過して反射ミラー37bで反射し、回転軸体10に沿ってハーフミラー37aの反射光とは反対の方向に分岐される(光線L12)。
【0076】
分岐された一方の光線L11は、その光路上に設けられたハーフミラー42を透過した後、集光レンズ41によって光線径が絞りこまれ、第1ターゲット体31の被照射面上における反射部に照射される。また、他方の光線L12もその光路上に設けられたハーフミラー39を透過し、集光レンズ40によって絞り込まれて第2ターゲット体33の反射部32、32、・・・に照射される。第1ターゲット体31および第2ターゲット体33の反射部で反射された反射光は、それぞれハーフミラー39、42の前記分岐光の入射面とは反対側の面から入射され、その全部がここで反射され、受光部5、5にそれぞれ入射される。
【0077】
各受光部5、5に入射された反射光は、ここでその強度に応じた所定の大きさの電気信号に変換された後、信号線43、44を介してそれぞれ演算表示部6に入力される。演算表示部6では、これら2つの電気信号の入力を受け、前記の方法により回転軸体10の回転周期、軸ねじれおよびたわみ量の演算を行い、当該演算結果を表示し、または他の機器へ出力することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のたわみ計測装置、ならびにたわみおよび軸ねじれ計測装置は、電動機などの回転機などが備える回転軸体から、発電プラントなどにおけるタービン軸に至る広範な回転軸体のたわみ量、またはこれと軸ねじれの大きさとを計測するのに有効に使用できる。
【符号の説明】
【0079】
1 たわみ計測装置
2 たわみおよび軸ねじれ計測装置
3 発光部
4 受光・演算表示部
5 受光部
6 演算表示部
7 信号線
8、9 ターゲット体
10 回転軸体
11(11a、11b、11c、11d) 第1ターゲット体
11e、11f、11g、11h スリット
12(12a、12b、12c、12d) 第2ターゲット体
13〜16 スリット
23、24、25 見かけの走査線
31、33 ターゲット体
32 反射部
35 光伝送手段
36 レンズ
37 光分岐手段
37a ハーフミラー
37b 反射ミラー
39、42 ハーフミラー
40、41、47、48 集光レンズ
43、44 信号線
L1〜L4 光線
L11、L12、L21、L22 光線(光線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物である回転軸体の外周面に設けられてその回転とともに回転運動するターゲット体が前記回転軸体の軸線方向に略平行に照射される発光部からの光線の光路を横切らせ、当該ターゲット体により遮光されない光線またはそこからの反射光を受光・演算表示部によって受光するようにしておき、前記回転軸体のたわみ変形に起因する前記ターゲット体の被照射面における前記光線の照射位置の変化を検出し、当該検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量を計測するようにしたことを特徴とするたわみ量計測装置。
【請求項2】
前記ターゲット体は、前記回転軸体の外周面からの径方向の距離に応じて一定の割合で回転方向の幅が変化するように形成された幅変化部を被照射面に備える請求項1に記載のたわみ計測装置。
【請求項3】
前記ターゲット体は、前記回転軸体の外周面にその周方向に等間隔に複数設けられてなる請求項1または2に記載のたわみ計測装置。
【請求項4】
第1ターゲット体と、被計測物である回転軸体の外周面からの径方向の距離に応じて一定の割合で回転方向の幅が変化するように形成された幅変化部を有する第2ターゲット体とを回転軸体の外周面にその軸線方向に所定の距離だけ離して設け、前記回転軸体の回転に伴い回転運動するこれら1組のターゲット体によって当該回転軸体の軸線に略平行に照射される発光部からの光線の光路を周期的に横切らせ、前記1組のターゲット体によって遮光されない光線または第2ターゲット体からの反射光を受光・演算表示部で受光するようにしておき、
前記回転軸体の軸ねじれやたわみ変形に起因する前記第2ターゲット体の前記第1ターゲット体に対する円周方向の相対的ずれおよび前記第2ターゲット体の幅変化部における前記光線の走査位置の変化を検出し、これらの検出結果に基づいて前記回転軸体のたわみ量および軸ねじれの大きさを計測することを特徴とするたわみおよび軸ねじれ計測装置。
【請求項5】
前記第1ターゲット体および前記第2ターゲット体は、前記回転軸体の外周面にその周方向にそれぞれ等間隔に複数組設けられてなる請求項4に記載のたわみおよび軸ねじれ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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