説明

つかみ装置

【課題】つかみ対象物をつかんだ状態で開閉シリンダの保持圧力が低下するのを防止することにより、操作レバーを閉じの位置に入れなくても、つかみ対象物の落下を防いで安全で経済的な作業を可能とする。
【解決手段】開閉シリンダ30の基端側軸挿通孔33を長孔に形成し、シリンダ支持ブラケット40に開閉アーム20,21を閉じる方向に開閉シリンダ30を付勢する皿バネ50(付勢手段)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台車の可動アーム先端などに軸支される開閉可能なつかみ装置に関し、特にそのゆるみ防止の機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属スクラップ、コンクリートのガラなどの産業廃棄物のハンドリングや木造家屋の解体、整理、分別などには、バックホーなどの作業台車の可動アーム先端に揺動自在に取り付けて油圧シリンダにより開閉されるフォークやグラップニップルバケットなどのつかみ装置が使用される。対象物をつかむには、油圧シリンダを閉じてフォークやグラップニップルバケットの刃先を押し当て、摩擦力でバランスよくつかむ方法がとられる。操作レバーを中立に戻すと、切換バルブでブロックされ、保持圧力が維持される油圧回路構成となっているが、油圧シリンダ押し当て力は、油圧回路内にある油圧機器の内部リークにより保持圧力が低下し、押し当て力を保持することは難しい。
【0003】
このため、運転者は操作レバーを閉じ位置に入れた状態を維持することにより、押し当て力を維持する方法がとられている。
【0004】
しかし、閉じ位置に入れた状態を維持すると、その間リリーフし続けるため、油温の上昇、燃料の浪費、他の油圧機器の操作への影響など弊害が伴う。
【0005】
そこで、保持圧力を維持する方法として、油圧回路構成では油圧シリンダのヘッド側にパイロットチェック弁を設ける方法がとられ、外力によるオーバーロードを防ぐためにはオーバーロードリリーフ付パイロットチェック弁を設ける方法がとられる。
【0006】
しかし、外力を受けている場合には、この方法で圧力を保持できるが、外力がない場合には、内部リークがあると、やはり回路圧力は低下し、押し当て力を維持することができない。
【0007】
そこで、開閉シリンダのボトム側にパイロットチェック弁を設けて保持圧力の低下を防ぐと共に、アキュムレータに蓄圧された高圧の作動油を作動油補充管路を介してボトム側圧力室に補充して保持圧力の低下を補うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
なお、例えば、特許文献2には、破砕刃を有する一対の開閉アームの中間部をフレームに軸支し、各開閉アームの上端部間を開閉シリンダで連結し、開閉アームとフレームとの間に開閉アームを閉じる方向に付勢するバネ装置を設け、開閉シリンダの伸張による開閉アームの閉じ力にバネによる閉じ力を加える破砕装置が知られている。
【特許文献1】実開平8−1189号公報(図4b)
【特許文献2】特開平2−200974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のつかみ装置では、油圧回路構成が複雑なものとなり、製造コストが高くなると共に、油漏れやアキュムレータの破損など故障が発生しやすいという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2の破砕装置では、バネ装置により、常に開閉アームに閉じる方向に力が加わっているので、保持圧力が低下してもつかんでいるものが落下することはないが、開閉アームを開くときには、バネ装置を圧縮させながら開かなければならず、常に余分な力を必要とする。また、開閉アームの開閉ストロークに対応するだけのストロークを有するバネを設けなければならず、そのサイズが大きくなり、装置質量が増大すると共に高い製造コストがかかるという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、つかみ対象物をつかんだ状態で開閉シリンダの保持圧力の低下を防止することにより、操作レバーを閉じの位置に入れなくてもつかみ対象物の落下を防いで安全で経済的な作業を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、開閉アームを開閉する開閉シリンダの基端側に開閉アームが閉じる方向に上記開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段を設けた。
【0013】
具体的には、第1の発明では、作業台車の可動アーム先端に取り付けられるフレームと、該フレーム下側に揺動可能に軸支される一対の開閉アームとを備えたつかみ装置を対象とし、
上記フレームに設けられたシリンダ支持ブラケットと上記一対の開閉アームのうち一方の開閉アームとに両端がそれぞれ軸支される開閉シリンダと、
上記一方の開閉アームと他方の開閉アームとを連結し、上記開閉シリンダを伸ばして一方の開閉アームを閉じ方向に作用させると、他方の開閉アームも同期して閉じ方向に作動させるリンク部材とを有し、
上記開閉シリンダを軸支するシリンダ支持軸が挿通される上記シリンダ支持ブラケットあるいは開閉シリンダに形成された軸挿通孔を開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成し、
上記開閉アームが閉じる方向に上記開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段が設けられる構成とする。
【0014】
上記の構成によると、開閉シリンダに力が発生していないときには、付勢手段により開閉アームが閉じる方向に付勢される。この開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成されたシリンダ支持ブラケット又は開閉シリンダの軸挿通孔における一方側内周面がシリンダ支持軸に当接した状態にある。そして、開き状態にある開閉アームを開閉シリンダを伸ばして閉じ状態にするときには、開閉シリンダにより付勢手段が押し戻され、軸挿通孔の他方側内周面にシリンダ支持軸が当接した状態で、この開閉シリンダの反力がシリンダ支持軸に支えられ、つかみ対象物がつかまれる。この状態で開閉シリンダへの作動油の供給を停止して対象物をつかんだままで保持すると、油圧機器の内部リークにより、徐々に開閉シリンダが縮んでくる。しかし、開閉シリンダによって押圧されていた付勢手段が、開閉シリンダを伸びる方向に付勢するので、シリンダ支持ブラケット又は開閉シリンダの軸挿通孔内の隙間の範囲内で開閉シリンダが移動するように、開閉アームが閉じる方向に押圧され、保持圧力が維持される。
【0015】
第2の発明では、作業台車の可動アーム先端に取り付けられるフレームと、該フレーム下側に揺動可能に軸支される複数の開閉アームとを備えたつかみ装置を対象とし、
上記フレームには、複数のシリンダ支持ブラケットが設けられ、各シリンダ支持ブラケットと各開閉アームとに両端がそれぞれ軸支される複数の開閉シリンダを有し、
上記各開閉シリンダを軸支するシリンダ支持軸が挿通される上記各シリンダ支持ブラケットあるいは各開閉シリンダに形成された軸挿通孔を各開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成し、
上記各開閉アームが閉じる方向に上記各開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段が設けられる構成とする。
【0016】
上記の構成によると、各開閉シリンダに力が発生していないときには、付勢手段により各開閉アームが閉じる方向に付勢される。この開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成されたシリンダ支持ブラケット又は開閉シリンダの軸挿通孔における一方側内周面がシリンダ支持軸に当接した状態にある。そして、開き状態にある各開閉アームを各開閉シリンダを伸ばして閉じ状態にするときには、各開閉シリンダにより付勢手段が押し戻され、軸挿通孔の他方側内周面にシリンダ支持軸が当接した状態で、各開閉シリンダの反力がシリンダ支持軸に支えられ、つかみ対象物がつかまれる。この状態で各開閉シリンダへの作動油の供給を停止して対象物をつかんだままで保持すると、油圧機器の内部リークにより、徐々に各開閉シリンダが縮んでくる。しかし、各開閉シリンダによって押圧されていた付勢手段が、各開閉シリンダを伸びる方向に付勢するので、シリンダ支持ブラケット又は開閉シリンダの軸挿通孔内の隙間の範囲内で各開閉シリンダが移動するように、開閉アームが閉じる方向に押圧され、保持圧力が維持される。
【0017】
第3の発明では、上記付勢手段を上記シリンダ支持ブラケットに保持され、一端が開閉シリンダ基端側端面を押圧する皿バネで構成している。この構成によると、皿バネは小さいストロークで大きな力を発生させ、開閉シリンダの基端側を伸び方向に押圧することができるので、スペースの小さな部分であっても配置が可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、シリンダ支持ブラケット又は開閉シリンダの軸挿通孔を長孔に形成し、シリンダ支持ブラケットに設けた開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段によって、開閉アームを閉じる方向に押圧するようにしている。このため、つかみ対象物をつかんだ状態で開閉シリンダの保持圧力の低下を防止することができるので、操作レバーを閉じの位置に入れなくてもつかみ対象物の落下を防ぐことができる。したがって、油温の上昇、燃料の浪費、他の油圧機器の操作への影響などが発生せず、安全で経済的に作業を行うことができる。
【0019】
また、皿バネを使用することにより、小さなスペースで開閉シリンダの基端側を伸び方向に押圧する付勢手段を実現することができるので、さらに経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態にかかるつかみ装置10が作業台車としての油圧ショベル(図示せず)の可動アーム1に取り付けられた状態を示す。このつかみ装置10は、油圧ショベルの可動アーム1先端に取り付けられるフレーム11を有している。このフレーム11は、その上側にアーム側ピン挿通孔12とリンク側ピン挿通孔13とを有する取付ブラケット14を備えている。フレーム11は、アーム側ピン挿通孔12に接続ピン15を挿通して油圧ショベルの可動アーム1先端に取り付けられると共に、リンク側ピン挿通孔13に接続ピン15を挿通して可動アーム1先端のバケットリンク2に取り付けられる。このことで、つかみ装置10が前後に揺動可能となっている。
【0022】
上記フレーム11の取付ブラケット14の下部には、旋回ベアリング16が設けられ、その下にフレーム本体17が回転可能に支持されている。この旋回ベアリング16に設けられたスイベルジョイント(図示せず)によって油圧ショベルからの作動油がフレーム本体17側に供給されるようになっている。
【0023】
図2乃至図4に示すように、上記フレーム本体17は、天板17aと一対の側板17bとこの側板17b間をつなぐ補強板17cとを製缶した構造よりなり、一対の側板17bの下側には、一対の開閉アーム20,21を軸支するための2つの軸挿通孔18がそれぞれ対向する位置に形成されている。
【0024】
上記一対の開閉アーム20,21は、先端部が互いに内側へわん曲した、3本爪からなる第1アーム20と2本爪からなる第2アーム21とを備え、その基端側にそれぞれ円筒状ボス部22が設けられている。このボス部22を上記フレーム本体17の一対の側板17bに下から挿入して軸挿通孔18に位置合わせした状態でアーム支持ピン23を挿入することで、一対の開閉アーム20,21が揺動可能にフレーム本体17に支持されるようになっている。
【0025】
上記第1アーム20の基端側は、ボス部22よりもさらに延長されて、その先端外側に開閉シリンダ30のシリンダロッド31に連結されるロッド支持ピン32が挿通されるロッド支持ピン挿通孔24が形成されている。このロッド支持ピン挿通孔24と反対側(内側)には、リンク支持軸29を挿通するための第1リンク支持軸挿通孔25が形成されている。
【0026】
上記第2アーム21の基端側は、ボス部22よりもさらに延長されて、その先端にリンク支持軸29を挿通するための第2リンク支持軸挿通孔26が形成されている。
【0027】
図5及び図6に示すように、上記フレーム11上側には、シリンダ支持ブラケット40が設けられている。このシリンダ支持ブラケット40は、一対のシリンダ支持板41を備え、このシリンダ支持板41には、開閉シリンダ30の基端側を支持するためのブラケット側軸挿通孔42が形成されている。
【0028】
このブラケット側軸挿通孔42と開閉シリンダ30基端の基端側軸挿通孔33とに基端側シリンダ支持軸43が挿通されている。また、図2に示すように、開閉シリンダ30のシリンダロッド31先端のピン挿通孔31a(図4にのみ示す)と上記第1アーム20のロッド支持ピン挿通孔24とにロッド支持ピン32が挿通された状態で、第1アーム20と開閉シリンダ30とが連結されている。また、第1アーム20と第2アーム21とのリンク支持軸挿通孔25,26とリンク部材28の軸挿通孔(図示せず)にリンク支持軸29を挿通することで開閉アーム20,21がリンク部材28によって連結されている。
【0029】
このように構成することで、上記開閉シリンダ30を伸ばすと開閉アーム20,21が互いに近づく方向へ回動されて閉じる一方、縮めると開閉アーム20,21が互いに離れる方向に回動されて開くように構成されている。
【0030】
そして、本発明の特徴として、図5及び図6に示すように、上記開閉シリンダ30の基端側軸挿通孔33は、開閉シリンダ30の軸方向の所定の直線ストロークを有する長孔に形成されている。また、上記シリンダ支持ブラケット40には、上記開閉アーム20,21が閉じる方向(開閉シリンダ30の先端側)に上記開閉シリンダ30を伸び方向に押圧する付勢手段としての皿バネ50が設けられている。
【0031】
すなわち、上記シリンダ支持ブラケット40の基端側シリンダ支持軸43には、皿バネ取付用ブラケット51が回動可能に支持されている。この皿バネ取付用ブラケット51は、一対の鋼板52の一端側に基端側シリンダ支持軸43が挿通される挿通孔52aが設けられ、他端側が1枚の厚肉矩形状の皿バネ当接板53で連結されている。この皿バネ当接板53の中心には、貫通孔53aが形成されている。皿バネ当接板53の反対側には、上記開閉シリンダ30の基端に当接する円板状のシリンダ押圧部54が設けられている。このシリンダ押圧部54中心部には、軸部55が垂直に設けられ、この軸部55に皿バネ50の中心孔を挿通させた状態で、上記皿バネ当接板53の貫通孔53aに挿通させることにより、2枚の皿バネ50が先端側を互いに当接させるようにして、皿バネ取付用ブラケット51に保持されている。このように構成することで、シリンダ押圧部54が軸部55に沿ってスライド可能となっている。そして、例えば、図示しないが、軸部55の先端に割りピンを設けることで、皿バネ50の落下を防止することができる。
【0032】
図7に示すように、上記開閉シリンダ30には、上記油圧ショベルからの油圧が供給されるようになっている。すなわち、油圧ショベルの油圧ポンプ(図示せず)からの供給ライン上に3位置切換バルブ61が設けられている。その3位置切換バルブ61と上記開閉シリンダ30のヘッド側とを接続するヘッド側配管62と、3位置切換バルブ61とボトム側とを接続するボトム側配管63とが形成されている。このヘッド側配管62とボトム側配管63とのそれぞれには一方向絞り弁64が設けられている。また、このヘッド側配管62とボトム側配管63とのそれぞれのリターン側には、オーバーロードリリーフ弁65が設けられている。
【0033】
このように構成されることにより、油圧ショベルの運転者が操作レバー66を操作することで、3位置切換バルブ61が切り換わり、開閉シリンダ30が伸縮するようになっている。
【0034】
−運転動作−
次に、本実施形態にかかるつかみ装置10の作動について説明する。
【0035】
油圧ショベルの運転者が操作レバー66を押して開閉シリンダ30を縮める位置(開閉アーム20,21を開く位置)に操作すると、3位置切換バルブ61が切り換わり、開閉シリンダ30のヘッド側に高圧の作動油が供給される。すると、皿バネ50に押された開閉シリンダ30の基端の基端側軸挿通孔33のシリンダ基端側内周面33aに基端側シリンダ支持軸43が当接した状態で、この開閉シリンダ30の引っ張り力が基端側シリンダ支持軸43に支えられる。このことで、開閉シリンダ30が縮み、そのシリンダロッド31に引っ張られた第1アーム20が開く方向に回動される。それに伴って、この第1アーム20に引っ張られたリンク部材28の作用により第2アーム21の基端が内側に引っ張られ、第2アーム21が開く方向に回動される。このようにして開閉アーム20,21が開く。
【0036】
反対に、油圧ショベルの運転者が操作レバー66を手前に引いて開閉シリンダ30を伸ばす位置(開閉アーム20,21を閉じる位置)に操作すると、3位置切換バルブ61が切り換わり、開閉シリンダ30のボトム側に高圧の作動油が供給される。すると、開閉シリンダ30が伸びる方向に力が発生し、まず最初に皿バネ50を押し返して、この開閉シリンダ30の基端の基端側軸挿通孔33のシリンダ先端側内周面33bに基端側シリンダ支持軸43が当接した状態で、この開閉シリンダ30の反力が基端側シリンダ支持軸43に支えられる。このことで、開閉シリンダ30が伸び、そのシリンダロッド31に押された第1アーム20が閉じる方向に回動される。それに伴って、この第1アーム20に押されたリンク部材28の作用により第2アーム21の基端が外側に押され、第2アーム21が閉じる方向に回動される。このようにして開閉アーム20,21が閉じる。
【0037】
図2に示すように、開閉アーム20,21を閉じてつかみ対象物をつかんだ状態で保持し、操作レバー66を開閉アーム20,21を閉じる位置に保つと、常に油圧ポンプから高圧の作動油が供給されるので、開閉アーム20,21の先端には保持圧力がキープされている。この状態では、不要な作動油は、オーバーロードリリーフ弁65からタンク側へ戻される。その間リリーフし続けるため、油温の上昇、燃料の浪費、他の油圧機器の操作への影響など弊害が伴う。
【0038】
次いで、運転者が操作レバー66を中立の位置に戻すと、ブロックされ、開閉シリンダ30への作動油の供給及び開閉シリンダ30からタンク側への排出は停止される。この状態のまま運転手が油圧ショベルの旋回等の操作を行っているうちに各油圧機器の内部リークなどにより、徐々に開閉シリンダ30が縮む位置に戻っていく。
【0039】
しかし、本発明では、シリンダ支持ブラケット40に皿バネ50が設けられているので、圧縮されていた皿バネ50が開閉シリンダ30の基端側を押圧し、また、開閉シリンダ30の基端側軸挿通孔33は開閉シリンダ30の軸方向の所定の直線ストロークを有する長孔に形成されているので、開閉シリンダ30がその先端側へ移動し、開閉アーム20,21が閉じる方向に押圧され、保持圧力が維持される。
【0040】
したがって、本実施形態にかかるつかみ装置10によると、つかみ対象物をつかんだ状態で開閉シリンダ30の保持圧力の低下を防止することができるので、操作レバー66を閉じの位置に入れなくてもつかみ対象物の落下を防ぐことができる。よって、油温の上昇、燃料の浪費、他の油圧機器の操作への影響などが発生せず、安全で経済的に作業を行うことができる。
【0041】
また、コイルバネに比べて全長の短い皿バネ50を使用することにより、大きな設置スペースを必要としないので、さらに経済的である。すなわち、本実施形態では、皿バネ50のストロークは、開閉シリンダ30基端の基端側軸挿通孔33の長孔部分のストロークと同等又は若干長くなっている。
【0042】
(実施形態2)
図8は本発明の実施形態2を示し、主に開閉アームの本数が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、図1乃至図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
すなわち、本実施形態のつかみ装置110は4本の開閉アーム120を有している。各開閉アーム120は、互いに向き合うように内側にわん曲していて、その基端側にアーム支持ピン23が挿通されるボス部(図示せず)が形成されている。また、各開閉アーム120の中間部の外側には、開閉シリンダ30のシリンダロッド31先端が連結されるロッド支持ピン挿通孔24が形成されている。
【0044】
本実施形態のフレーム本体17の上側には、上記実施形態1と同様の複数のシリンダ支持ブラケット40が設けられている(図8に破線で示す)。このシリンダ支持ブラケット40には、基端側シリンダ支持軸43を支持するためのブラケット側軸挿通孔42が設けられている。このブラケット側軸挿通孔42に対応するように、フレーム本体17の下側には、開閉アーム120を支持するアーム支持ピン23を挿通するための軸挿通孔18が形成されている。
【0045】
そして、詳細は図示しないが、上記実施形態1と同様に開閉シリンダ30の基端側の基端側軸挿通孔33は、この開閉シリンダ30の軸方向の所定の直線ストロークを有する長孔に形成され、この基端側軸挿通孔33と、シリンダ支持ブラケット40のブラケット側軸挿通孔42とに基端側シリンダ支持軸43が挿通されると共に、開閉シリンダ30のシリンダロッド31先端のピン挿通孔31aと上記開閉アーム120のロッド支持ピン挿通孔24とにロッド支持ピン32が挿通されている。また、開閉アーム120のボス部22とフレーム11の軸挿通孔18とにアーム支持ピン23が挿通されている。
【0046】
このように構成することで、上記各開閉シリンダ30を伸ばすと各開閉アーム120が互いに近づく方向へ回動されて閉じる一方、縮めると各開閉アーム120が互いに離れる方向に回動されて開くように構成されている。
【0047】
そして、本実施形態においても、上記シリンダ支持ブラケット40には、上記開閉アーム120が閉じる方向に上記開閉シリンダ30を付勢する皿バネ50が設けられている。上記実施形態1と同様の構成で、この皿バネ50が皿バネ取付用ブラケット51によって支持されている。
【0048】
したがって、本実施形態にかかるつかみ装置110によっても、上記実施形態1と同様の作用効果が発揮され、つかみ対象物をつかんだ状態で開閉シリンダ30の保持圧力の低下を防止することができるので、操作レバー66を閉じの位置に入れなくてもつかみ対象物の落下を防ぐことができる。したがって、油温の上昇、燃料の浪費、他の油圧機器の操作への影響などが発生せず、安全で経済的に作業を行うことができる。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0050】
すなわち、上記各実施形態では、開閉アームの本数を2本又は4本としたが、3本や、5本以上のものから構成されるようにしてもよい。また、上記実施形態1のようにリンク部材28を設けて開閉シリンダ30が1本で複数の開閉アーム20,21を回動させるようにしてもよいし、上記実施形態2のように開閉シリンダ30が1本で1つの開閉アーム120を回動させるようにしてもよい。
【0051】
また、上記各実施形態では、付勢手段を2枚の皿バネ50で構成しているが、その枚数を増やしてもよく、また、コイルバネで構成してもよい。
【0052】
上記各実施形態では、フレーム本体17を旋回ベアリング16を介して取付ブラケット14に回転可能に支持しているが、取付ブラケット14に固定された構成としてもよい。
【0053】
上記実施形態では、作業台車を油圧ショベルとしたが、クローラなどの駆動部を有さない固定式の台車であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、開閉シリンダ30側に、その軸方向に長い基端側軸挿通孔33を設けたが、シリンダ支持ブラケット40のブラケット側軸挿通孔42を開閉シリンダ30の軸方向に長い長孔に形成してもよい。
【0055】
上記実施形態では、開閉シリンダ30の基端側軸挿通孔33に挿通させた基端側シリンダ支持軸43によってシリンダ支持ブラケット40で支持しているが、例えば、開閉シリンダをトラニオン型シリンダとし、基端側シリンダ支持軸が開閉シリンダに一体型となっているものでもよい。
【0056】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、作業台車の可動アーム先端などに軸支される開閉可能なつかみ装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1にかかるつかみ装置が取り付けられた可動アーム先端部分を示す側面図である。
【図2】つかみ装置の要部を示す拡大正面図である。
【図3】つかみ装置の要部を右側から見た拡大側面図である。
【図4】つかみ装置の要部を左側から見た拡大側面図である。
【図5】シリンダ支持ブラケット及びその周辺を拡大して示す側面図である。
【図6】シリンダ支持ブラケット及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【図7】開閉シリンダの油圧回路図である。
【図8】実施形態2にかかるつかみ装置の図2相当図である。
【符号の説明】
【0059】
1 可動アーム
10 つかみ装置
11 フレーム
20 第1アーム(一方の開閉アーム)
21 第2アーム(他方の開閉アーム)
28 リンク部材
29 リンク支持軸
30 開閉シリンダ
31 シリンダロッド
33 基端側軸挿通孔(長孔)
40 シリンダ支持ブラケット
41 シリンダ支持板
43 基端側シリンダ支持軸
50 皿バネ(付勢手段)
120 開閉アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台車の可動アーム先端に取り付けられるフレームと、該フレーム下側に揺動可能に軸支される一対の開閉アームとを備えたつかみ装置であって、
上記フレームに設けられたシリンダ支持ブラケットと上記一対の開閉アームのうち一方の開閉アームとに両端がそれぞれ軸支される開閉シリンダと、
上記一方の開閉アームと他方の開閉アームとを連結し、上記開閉シリンダを伸ばして一方の開閉アームを閉じ方向に作用させると、他方の開閉アームも同期して閉じ方向に作動させるリンク部材とを有し、
上記開閉シリンダを軸支するシリンダ支持軸が挿通される上記シリンダ支持ブラケットあるいは開閉シリンダに形成された軸挿通孔を開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成し、
上記開閉アームが閉じる方向に上記開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段が設けられていることを特徴とするつかみ装置。
【請求項2】
作業台車の可動アーム先端に取り付けられるフレームと、該フレーム下側に揺動可能に軸支される複数の開閉アームとを備えたつかみ装置であって、
上記フレームには、複数のシリンダ支持ブラケットが設けられ、各シリンダ支持ブラケットと各開閉アームとに両端がそれぞれ軸支される複数の開閉シリンダを有し、
上記各開閉シリンダを軸支するシリンダ支持軸が挿通される上記各シリンダ支持ブラケットあるいは各開閉シリンダに形成された軸挿通孔を各開閉シリンダの軸方向に長い長孔に形成し、
上記各開閉アームが閉じる方向に上記各開閉シリンダを伸び方向に押圧する付勢手段が設けられていることを特徴とするつかみ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のつかみ装置において、
上記付勢手段は、上記シリンダ支持ブラケットに保持され、一端が開閉シリンダ基端側端面を押圧する皿バネで構成されていることを特徴とするつかみ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−335488(P2006−335488A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159362(P2005−159362)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【出願人】(000105682)コベルコ建機エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】