説明

つや出し清掃物品

【課題】つや出し剤組成物が必要量よりも多量に放出された状態で、つや出し剤組成物の塗り延ばし操作を行う際に泡の残留を抑えることができるつや出し清掃物品を提供すること。
【解決手段】つや出し清掃物品1は、液保持シート2につや出し剤組成物が300〜3000重量%の高含浸率で含浸されてなる。つや出し剤組成物は(a)水不溶性ポリマー、(b)グリコール系溶剤、(c)界面活性剤並びに(d)カルボン酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物を含有している。(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比は40:1〜6:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面などの硬質表面のつや出しに用いられるつや出し清掃物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水性の床用つや出し剤は、未使用時にはスクイズボトル、トリガー式スプレー等の容器に入れられ、使用時に容器から床面に適量散布されて、雑巾やシートによって手拭きして塗り延ばされていた(特許文献1参照)。或いはモップや、ヘッド部に清掃シートが取り付けられたモップ状の清掃具によって塗り延ばされていた(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、つや出し剤のこのような塗り延ばし方法は、乾燥被膜の仕上がりがむらになりやすく、むら無く塗り延ばすには技術的な慣れが使用者に要求される。そこで、つや出し剤をシートに含浸させ、ヘッド部と該ヘッド部に連結された柄部とを有する清掃具における該ヘッド部に該シートを取り付けることで、誰でも容易に塗り延ばしを行うことができるようにする提案がなされている(特許文献3参照)。
【0004】
つや出し剤をシートに含浸させて、広い面積に亘ってつや出し剤を塗り延ばそうとする場合、シートの乾燥重量に対して300〜3000重量%という高含浸率でつや出し剤をシートに含浸させる必要がある。しかし、そのような高含浸率でつや出し剤をシートに含浸させると、塗り延ばし操作の初期におけるつや出し剤の放出量が、必要量をはるかに超えてしまう場合がある。そのような場合に、同じ箇所を何度も塗り延ばしたり、力を入れて塗り延ばすと、つや出し剤に含有されている界面活性剤などに起因して泡立ちが起こってしまい、泡が残ったまま乾燥皮膜が形成されてしまうと、仕上がりが悪くなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特許第2976158号公報
【特許文献2】特許第2915840号公報
【特許文献3】特開2004−105710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るつや出し清掃物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液保持シートにつや出し剤組成物が300〜3000重量%の高含浸率で含浸されてなるつや出し清掃物品であって、該組成物が(a)水不溶性ポリマー、(b)グリコール系溶剤、(c)界面活性剤並びに(d)カルボン酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物を必須原料として含有しており、(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比が40:1〜6:1であるつや出し清掃物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のつや出し清掃物品によれば、つや出し剤組成物が必要量よりも多量に放出された状態でつや出し剤組成物の塗り延ばし操作を行うことで泡が発生した場合に、その箇所およびその周辺箇所において更に塗り延ばし操作を行うことによって泡を消していくことで泡の残留を防ぐことができ、つや出し剤組成物の塗り延ばし性及びレベリング性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のつや出し清掃物品1の一実施形態が示されている。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1に示す清掃物品1は、床面等の硬質表面のつや出しに好適に用いられるものである。清掃物品1は、液保持シート2に、つや出し剤組成物が含浸されて構成されている。清掃物品1は、これを密封収容する液不透過性の扁平な収容体3に収容されている。
【0010】
収容体3は液不透過性のフィルムから構成されている。収容体3は平面視して矩形状をした扁平な袋状をしており、第1の面31a及び第2の面31bを有している。収容体3は矩形をした2枚の液不透過性フィルムの四辺を接合することで形成されている。収容体3は、その一部、具体的には第1の面31aに、長手方向に延びる長孔からなる2列の開孔31を有している。開孔31は、第1の面31aが液保持シート2と対向する領域の全体に亘って形成されている。液不透過性フィルムとしては、或る程度柔軟であり液不透過性のものであればその種類に特に制限はない。例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムにアルミニウムなどの金属薄膜をラミネートしたものなどを液不透過性フィルムとして用いることができる。
【0011】
図1に示すように、収容体3は、その使用前においては開孔31が封止手段としてのシール32によって封止状態となっており、液保持シート2に含浸されているつや出し剤組成物が使用前に収容体3の外に漏出しないようになっている。使用に際してはシール32を引き剥がして封止状態を解く。
【0012】
液保持シート2は繊維材料から構成されており、袋状をした収容体3内に収容されている。液保持シート2は、収容体3よりも若干小さな矩形状をしている。液保持シート2にはつや出し剤組成物が高含浸率で含浸されている。先に述べた開孔31は、該開孔31を通じて液保持シート2から後述する液徐放シート全体に対して適量のつや出し剤組成物等を移行させ得る大きさ及び/又は開孔率を有している。具体的には、各開孔31の面積は、つや出し剤組成物等の放出を妨げないようにする観点から、5〜13,000mm2、特に5〜8,700mm2であることが好ましい。同様の理由により、第1の面31aにおける液保持シート2との対向面積に対する開孔31の面積の総和の割合、つまり開孔率は1〜50%、特に3〜33%、とりわけ3〜25%であることが好ましい。
【0013】
液保持シート2は、多量のつや出し剤組成物を含浸でき且つ該組成物の徐放性に優れていることが望ましい。また多量のつや出し剤組成物を含浸させた場合に、ヘタリが生じないことも望ましい。その詳細については後述する。
【0014】
液保持シート2に含浸されているつや出し剤組成物は、主としてフローリングなどの床を始めとする硬質表面のつや出し、保護を目的とした剤である。つや出し剤組成物は、(a)水不溶性ポリマー、(b)グリコール系溶剤、(c)界面活性剤及び(d)カルボン酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物を含有している。本実施形態の清掃物品1は、(イ)つや出し剤組成物が高含浸率で液保持シート2に含浸されていること、及び(ロ)組成物中における(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比が特定の範囲にあることが特徴となっている。
【0015】
組成物中における(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比は40:1〜6:1となっており、好ましくは24:1〜12:1、更に好ましくは24:1〜16:1となっている。(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比をこの範囲とすることで、清掃物品1を用いてつや出し剤組成物の塗り延ばしを行うときに、泡の残留を防ぐことができる。またレベリング性が向上し、乾燥被膜が均一なものとなる。
【0016】
組成物中の各成分について説明すると、(a)水不溶性ポリマーの主成分は、フローリング等の床に被膜を形成することにより、つやを付与する成分である。水不溶性ポリマーは、被膜形成性ポリマーであれば特に限定されない。例えばエチレン性不飽和モノマーの重合物、好ましくはエチレン性不飽和モノマーの乳化重合物が挙げられる。エチレン性不飽和モノマーとしてはC1〜C8のアルキルアクリレート又はメタクリレート、モノ又はジ−(C1〜C5)アルキルイタコネート又はフマレート、マレイン酸無水物、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、ベータアクリロキシプロピオン酸、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキルアクリレート又はメタクリレート、ジビニルベンゼンの少なくとも一種以上から選ばれることが望ましい。これらのうち、特にC1〜C8のアルキルアクリレート又はメタクリレート、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、ジビニルベンゼンなどが好ましい。
【0017】
上記(a)水不溶性ポリマーの主成分は、少なくとも1成分の最低造膜温度が10℃以上50℃以下のアクリル系樹脂、及び少なくとも1成分の最低造膜温度60℃以上90℃以下の樹脂で構成されていることが塗布作業性を良好にする点でより好ましい。前者と後者との割合は、固形分の重量比で表して1:9〜6:4であることが好ましい。
【0018】
乾燥被膜の滑り性を調整する観点から、(a)水不溶性ポリマーの副成分として、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス又はそれらの誘導体等のポリオレフィン系ワックスを用いることも好ましい。ポリオレフィン系ワックスは、上述した各種水不溶性ポリマーの主成分と併用することができる。上述した各種水不溶性ポリマーの主成分とポリオレフィン系ワックスのような副成分との配合比は固形分の重量比で表して10:1〜10:3であることが、つや出し対象面の仕上がりが良好になる点、及び乾燥後にから拭きして、つやを上げたりする作業が不要な点から好ましい。
【0019】
ポリエチレンワックスは、一般のエチレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリエチレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリエチレンの製造時に副生成される低分子量のポリエチレンを分離生成する方法又は乳化重合方法等により入手可能である。ポリエチレンワックスの誘導体としては、例えば酸化ポリエチレンワックス、即ち空気酸化等の方法によりポリエチレンワックス骨格にカルボキシル基や水酸基等を付与したものの他に、マレイン酸変性、フマル酸変性、イタコン酸変性、又はスチレン変性等の変性体が挙げられる。特に、ポリエチレンワックス及び/又は酸化ポリエチレンワックスが好ましく用いられる。
【0020】
ポリプロピレンワックスは、一般のプロピレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンの製造時に副生成される低分子量のポリプロピレンを分離生成する方法等により入手可能である。ポリプロピレンワックスの誘導体としては、上記のポリエチレンワックスの場合と同様に、ポリプロピレンワックス骨格にカルボキシル基や水酸基等を付与した酸化ポリプロピレンワックスの他に、マレイン酸変性、フマル酸変性、イタコン酸変性、又はスチレン変性等の変性体が挙げられる。特に、ポリプロピレンワックス及び/又はマレイン酸変性ポリプロピレンワックスが好ましく用いられる。
【0021】
(a)の水不溶性ポリマーはエマルジョンの形態で配合されることが配合作業を容易にするという点で好ましい。水不溶性ポリマーの配合量は固形分として2〜18重量%、特に5〜15重量%であることが好ましい。
【0022】
(b)のグリコール系溶剤としては、その種類に特に制限はないが、アルキレングリコールアルキルエーテルを用いることが好ましい。特に、R1O(C24O)a(C36O)b2(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、いずれか一方が水素原子の時は他方は別の基を示す。a及びbは、それぞれ0〜3までの整数を示し、いずれか一方が0の時は他方は1以上の整数を示す)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルを用いることが好ましい。
【0023】
前記のアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル又はポリオキシエチレン(前記式中、a=1)ポリオキシプロピレン(前記式中、b=3)グリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。これらのアルキレングリコールアルキルエーテルは、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
(b)のグリコール系溶剤は、つや出し剤組成物中に0.5〜8重量%、特に1.8〜6重量%配合されることが、塗布後の乾燥時間を短くし得るという点で好ましい。
【0025】
(c)の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22)エーテル、アルキル(炭素数8〜22)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22)グリセリルエーテル等の非イオン活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤は、つや出し剤組成物中に、0.01〜1.0重量%、特に0.05〜0.5重量%配合されることが、つや出し対象面の仕上がり性の面で好ましい。
【0026】
(d)のエステル化合物としてはカルボン酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。エステル化合物がカルボン酸エステルである場合、該カルボン酸エステルとしては、飽和又は不飽和のカルボン酸エステルを用いることができる。特に、モノアルキルアジペート、ジアルキルアジペート、アルキルオレエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアルキレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアルキレート又はクエン酸モノアルキル、クエン酸ジアルキル、クエン酸トリアルキルを用いることが好ましい。これらのカルボン酸エステルにおけるアルキル基の炭素数は、C1〜C10程度であることが好ましい。これらのカルボン酸エステルは、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
(d)のエステル化合物がリン酸エステルである場合、該リン酸エステルとしては、アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい飽和又は不飽和の炭化水素基(脂肪族基、芳香族基)を有するリン酸エステルを用いることができる。例えば、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルの何れか又はその組み合わせを用いることができる。その中でも特に、リン酸トリエステルを用いることが(a)の水不溶性ポリマーの主成分との相溶性の点から好ましい。これらのリン酸エステルにおける炭化水素部分の炭素数は、C1〜C40程度であることが好ましい。これらのリン酸エステルは、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記のカルボン酸エステルとリン酸エステルは、両者を組み合わせて用いることもできる。両者を組み合わせて用いる場合には、カルボン酸エステル及びリン酸エステルともに、1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
エステル化合物は、つや出し剤組成物中に、0.05〜3重量%、特に0.2〜2.5重量%配合されることが、塗布時に泡の発生を抑えることにより、つや出し対象面の仕上がり性が良好になる点で好ましい。
【0030】
つや出し剤組成物には、前述の(a)〜(d)成分に加えて他の成分を配合してもよい。例えば組成物の塗り延ばし性を高めたり、乾燥被膜の光沢を高める観点から、各種シリコーン化合物を配合することができる。シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンレジンエマルション、アミノ変成シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーンゴムエマルション、エチレン性不飽和モノマー重合体変性シリコーン等が挙げられる。シリコーン化合物は、つや出し剤組成物中に、好ましくは0.01〜1.6重量%程度配合することができる。
【0031】
更につや出し剤組成物には、アルカリ剤、エタノール、香料、色素、抗菌・抗かび剤などを配合することもできる。
【0032】
つや出し剤組成物は水を主体とするものである。水は組成物中に好ましくは70〜96重量%配合される。
【0033】
つや出し剤組成物中の不揮発分の量は、優れた乾燥速度を得るために好ましくは3〜20重量%、更に好ましくは6〜16重量%である。この範囲とすることで、乾燥被膜の光沢が増し、またつや出し対象面に傷がつきにくくなる。
【0034】
不揮発分濃度は、海砂につや出し剤組成物を添加し、加熱後の重量低下量から求める。詳細には、十分に乾燥させた後に、20〜35メッシュ(420〜840μm)に調整された海砂20gを耐熱性容器に入れ、つや出し剤組成物2gを加えて撹拌したものを、熱風循環式乾燥器内で105℃にて3時間放置する。その後デシケーター内で23℃の環境下で徐冷する。徐冷後、秤量を行い次の式から不揮発分の量W(%)を求める。
W(%)={(W1−W0)/S}×100
式中、W0は秤量皿の重さ(耐熱容器+海砂)、W1は乾燥後の重さ(不揮発分+耐熱容器+海砂)、Sは採取したつや出し剤組成物の重さである。測定に用いる海砂とは、一般に化学用試薬として市販されているものを指す。不揮発分の量は、水不溶性ポリマー以外に、界面活性剤、シリコーン化合物等に由来する。
【0035】
つや出し剤組成物は、20℃における粘度が1.2〜8mPa・s、特に1.5〜5mPa・sであることが、良好な塗り延ばし性及び仕上がり性の点から好ましい。粘度は、(株)東京計器(現 (株)トキメック)のBL型粘度計(回転数:60rpm)を用いて測定する。つや出し剤組成物は、つや出し対象面に1.5〜8g/畳、特に2〜6g/畳放出されることが好ましい。なお、ここに言う1畳とは1.6m2に相当する。
【0036】
つや出し剤組成物は液保持シート2に高含浸率で含浸される。高含浸率で含浸されることで、広い面積に亘ってつや出し剤を塗り延ばすことができる。しかし、その場合には塗り延ばし操作の初期におけるつや出し剤組成物の放出量が必要量を超えてしまい、泡立ちが起こってしまうことがある。本発明によれば、つや出し剤組成物の配合が前述の通りになっているので、泡の発生を抑えることができる。液保持シート2に含浸されるつや出し剤組成物の含浸量は、液保持シートの乾燥重量に対して300〜3000重量%であり、好ましくは500〜2500重量%である。
【0037】
つや出し剤組成物が含浸される液保持シート2としては、繊維集合体やフォーム材が好ましく用いられる。液保持シート2は、多量のつや出し剤組成物を含浸でき且つ該組成物の放出性に優れていることが望ましい。そのような材料としては、繊維材料の場合、嵩高な紙や不織布などの繊維集合体が適しており、特にエアレイド不織布、ニードルパンチ不織布などが好ましい。繊維の具体例としては、天然繊維及び化学繊維の何れか一方又は両方の繊維を使用することができる。天然繊維としては木材パルプ等が挙げられる。化学繊維としては、再生繊維であるレーヨンやアセテート、合成繊維であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられる。フォーム材の場合、化学反応に伴う発生ガスを利用したり、フロンガス等の低融点溶剤注入または空気注入等によって発泡または多孔質化してなるものが挙げられ、具体的にはポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム等が用いられる。
【0038】
液保持シート2は、つや出し剤組成物の保持容量を高め、またつや出し時におけるつや出し剤組成物の放出を良好にする点から、その密度が0.02〜0.2g/cm3、特に0.03〜0.15g/cm3であることが好ましい。また、液保持シート2は、その坪量が20〜400g/m2、特に60〜200g/m2であることが好ましい。坪量がこの範囲であることにより、保持容量を十分に大きなものとすることができ、また液保持シート2の加工性も良好となる。
【0039】
本実施形態の清掃物品1は、図1及び図2に示す形態でつや出し対象面のつや出しに用いることができる。また、本実施形態の清掃物品1を、図3に示す形態で用いることも好ましい。図3に示す形態では、清掃物品1は液徐放シート4と組み合わせて使用される。液徐放シート4は、清掃物品1から放出されたつや出し剤組成物を一旦液徐放シート全体に拡散させて、つや出し剤組成物が清掃物品1から放出される際の速度よりも低速度でこれらを放出させることによって、広い面積のつや出し対象面に対して、使用の初期から終期にいたるまで、つや出し剤組成物を徐々に放出する目的で用いられる。液徐放シート4は、前述した液保持シート2と同様に繊維材料からなることが好ましい。
【0040】
つや出し剤組成物の平面方向への拡散が良好なシート材料としては、湿式抄造紙、スパンレース不織布、メルトブローン不織布などの繊維シートが挙げられる。湿式抄造紙の場合、その拡散性の制御は繊維の種類、叩解度、湿圧(乾燥前の加圧)、カレンダー処理(乾燥後の加圧)、填料添加などで調整できる。繊維の種類としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプの他、各種改質パルプ、レーヨン繊維、熱可塑性繊維等が挙げられる。これらのうち繊維径が細い繊維や繊維長が短い繊維を用いると、繊維間で形成されるシートの空隙の大きさ(孔径)が小さくなり、拡散性が所望のものとなる。また叩解を強くする、カレンダー処理圧力を高くすることで同様に拡散性が所望のものとなる。填料の増量も有効である。スパンレース不織布の場合は、コットンやレーヨンなどの親水性繊維を用いる、繊維径が細い繊維を用いる、交絡状態を高交絡にすること等で、拡散性が所望のものとなる。液徐放シート4に前述のエンボス加工によって凹凸賦形する場合、熱可塑性繊維を好ましくは5〜95重量%、更に好ましくは10〜75重量%含有させて、加熱エンボス加工を行うことで、湿潤時でも凸部形状を維持することが容易となる。
【0041】
本実施形態の液徐放シート4は、内層シート41と表面シート42とから構成されている。液徐放シート4はこのようにシート積層体(マルチプライ)であってもよく或いは1枚のシート(シングルプライ)であってもよい。図4に示すように両シート41,42は重ね合わされて接合一体化している。内層シート41は、平面視での収容体3とほぼ同寸の矩形状をしている。表面シート42は、内層シート41の長さと同寸となっている。表面シート42は、内層シート41の長手方向両側部から側方に延出しており、液徐放シート4において一対のフラップ43,43を形成している。このフラップ43の使用目的については後述する。内層シート41と表面シート42とは、図4に示すように内層シート41の四辺が表面シート42と接合することによって一体化している。つまり液徐放シート4は2プライとなっている。
【0042】
本実施形態のように液徐放シート4が内層シート41及び表面シート42の積層体から構成されると、清掃物品1の使用時の操作性が一層向上し、また内層シート41が保護されるという利点がある。また、つや出し剤組成物の放出が更に制御されるという利点もある。表面シート42に用いられる構成繊維は、特許文献2に記載されている内容と同様とすることができる。
【0043】
液徐放シートが1枚のシート(シングルプライ)からなるか、シート積層体(マルチプライ)からなるかを問わず、多量のつや出し剤組成物を均一に放出する徐放性能を発現するためには、液徐放シート4によるつや出し剤組成物の過剰な保持を防止する必要がある。この観点から、液徐放シート4はその坪量が20〜350g/m2、特に40〜200g/m2であることが好ましい。
【0044】
内層シート41及び表面シート42は、それぞれ同種素材から形成されていても良く、或いは異種素材から形成されていてもよい。液徐放シートの坪量が前述の範囲内となる限りにおいて、表面シート42はその坪量が10〜100g/m2、特に20〜80g/m2であることが、つや出し操作に必要なシート強度を満たすと共に不必要なコストがかからない点から好ましい。
【0045】
内層シート41は表面に多数の凸部を有している。これによって内層シート41はその上下面に位置する他のシートとの接触面積が低下する。その結果、清掃物品1の使用初期に生じ易いつや出し剤組成物の過放出を低下させることができ、更に徐放性能を高めることができる。この凸部はシート全体に亘って形成されていることが好ましく、例えばエンボス加工等によって形成される。特に、湿潤状態での形状の維持の点からスチールマッチエンボス加工による形成が好ましい。凸部としては、例えばリブ状やドット状の形状のものが用いられる。本実施形態の内層シート41は、凸部の間が凹部となっており、シート全体に亘って凹凸賦形されている。凹部と凸部とはシートの長手方向及び幅方向それぞれにおいて交互に配されている。凹部の形状は凸部を反転させた形状となっている。
【0046】
図4に示すように、内層シート41と同様に、表面シート42も多数の凸部を有していることが好ましい。これによって、つや出し対象面との接触面積が低下して、清掃物品1の使用時の摩擦が低下し、操作性を向上させることができる。表面シート42に形成された凸部の形状等は、内層シート41に形成された凸部と同様とすることができる。
【0047】
本実施形態の清掃物品1及び液徐放シート4を使用するに際しては、図3に示すように、液徐放シート4における内層シート41が、収容体3における開孔31が形成されている第1の面3aに対向するように配する。この状態下に、図5に示す清掃具5に装着して使用する。図5に示す清掃具5は、本実施形態の清掃物品1が装着可能である平坦なヘッド部51、及び該ヘッド部51と自在継手52を介して連結した棒状の柄53から構成されている。ヘッド部51は、平面視での収容体3とほぼ同寸の矩形状をしている。清掃物品1は、収容体3における第2の面3b(図2参照)が、ヘッド部51の下面に対向するように該ヘッド部51に装着される。このとき、液徐放シート4におけるフラップ43,43をヘッド部51の上面側に折り返す。更に該フラップを、ヘッド部51に設けられた放射状のスリットを形成する可撓性の複数の片部54内に押し込む。これによって清掃物品1をヘッド部51に固定する。そして、この状態でフローリング等のつや出しをする。
【0048】
本実施形態の清掃物品1を液徐放シート4と併用することによって以下の有利な効果が奏される。先ず、収容体3と液徐放シート4とが別体になっており、清掃物品1が袋状の収容体3内に密封収容されているので、清掃物品1に多量のつや出し剤組成物を含浸させておくことが出来る。清掃物品1が収容体3内に密封収容されていることで、清掃物品1を清掃具5に装着させるときに手が汚れないという利点もある。勿論、清掃具5も汚れない。しかも使用前の保存状態においてつや出し剤組成物が漏出することも無い。使用に際してシール32を引き剥がして開孔31を露出させると、つや出し剤組成物は、開孔31に阻害されることなく収容体3の外へ放出される。つや出し剤組成物は、液保持シート2から徐々に放出される。その上、液保持シート2から放出されたつや出し剤組成物は、液徐放シート4に一旦トラップされて、そこからつや出し対象面に放出されるので、その放出量は使用の初期から終期に亘って一層均一となる。しかも、液徐放シート4を構成する内層シート41及び表面シート42が何れも凹凸賦形されているので、つや出し対象面との接触面積が低減され、これによってもつや出し剤組成物が徐々に放出されるようになる。そして先に述べた通り液保持シート2には多量のつや出し剤組成物が含浸されているので、フローリングのような広面積のつや出し対象面につや出し組成物を十分に塗り延ばすことができる。要するに本実施形態においては、開孔31の大きさ及び/又は(開孔率)をコントロールすることで洗浄剤等の放出をコントロールするのではなく、清掃物品1と液徐放シート4との組み合わせを用いることで、つや出し剤組成物の放出をコントロールしている。
【0049】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、本発明のつや出し剤組成物は、図1ないし図4に示す清掃物品1に含浸されて使用される他、本出願人の先の出願に係る特許第3578956号公報に記載されている床用清掃シート含浸されて使用されてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は斯かる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0051】
〔実施例1ないし9及び比較例1〕
表1に示す配合のつや出し剤組成物を調製した。表1における各成分の詳細は表2に示す通りである。
【0052】
液保持シートとしてエアレイド不織布〔針葉樹クラフトパルプ/熱可塑性繊維(熱融着性ポリエステル繊維)/バインダー樹脂=33/57/10(重量比)〕、225mm×75mm、坪量210g/m2(105g/m2、2枚重ね)、密度0.05g/cm3)を用いた。各組成物を液保持シートの乾燥重量に対し1100%含浸して清掃物品を得た。
【0053】
次に、液不透過性シートとして、液不透過性のアルミラミネートシート(厚さ49μm)を用いた。これに加えて、該ラミネートシートに幅8.0mm×長さ210mmの大きさの長孔を2本開け、この長孔を粘着剤付きアルミラミネートシートで予めシールして閉塞させたシートも用いた。これら2枚のラミネートシート間に、清掃物品を配し、更に2枚のラミネートシートの四辺をヒートシールによって密封した。これによって、270mm×95mmの大きさの開孔包装体を得た(長孔の開孔率13.0%)。
【0054】
内層シートとして、針葉樹クラフトパルプ/広葉樹クラフトパルプ/熱可塑性繊維(ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)からなる複合繊維)=35/40/25(重量比)の混合繊維原料を用い、通常の湿式抄造法によって得られた坪量30g/m2の紙を2枚重ね、更にスチールマッチによるエンボス加工によって凹凸賦形して貼り合わせたものを用いた。更に表面シートとして、針葉樹クラフトパルプ/熱収縮性繊維(ポロプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の複合繊維)/熱可塑性繊維(熱融着性ポリエステル繊維)=30/60/10(重量比)からなる混合繊維原料を用い、湿式抄造の乾燥工程で親水化剤を賦与した坪量12g/m2の紙をスパンボンド不織布(ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の複合繊維)と貼り合わせて坪量40g/m2のシートとし、更にスチールマッチヒートエンボス加工によって凹凸賦形したものを用いた。そして表面シートと内層シートとを図4に示すように一体化して液徐放シートを得た。
【0055】
液徐放シートにおける内層シートに対向するように前記開孔包装体を重ね合わせて、図5に示す清掃具に取り付けた。このとき、前記開孔包装体における長孔が形成された面が液徐放シートに対向するようにした。
【0056】
図5に示す清掃具に取り付けた後、フローリング上において同じ箇所で数回拭き操作を行い、つや出し剤組成物を過剰放出させて泡を意図的に発生させた。次に泡を発生させた箇所およびその周辺を面積1畳に亘って拭き操作を行った。その後に以下の基準でレベリング性及び泡の残留性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0057】
〔レベリング性〕
○:平滑な乾燥被膜が形成された。
△:やや平滑性に劣るが、液溜まりした箇所が生じることはない。
×:乾燥過程において液溜まりした箇所が生じ、その液溜まり箇所はそのまま乾燥して、うねりのある不均一な被膜が形成された。
【0058】
〔泡の残留性〕
○:面積1畳を拭いた段階で泡は消えていた。
△:面積1畳を拭いた段階で泡はやや残留していた。
×:面積1畳を拭いても泡は1畳全面に拡がり、残留した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の清掃物品(本発明品)によればレベリング性が高く、泡の残留が抑えられつや出し対象面の仕上がりが良好になることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のつや出し清掃物品の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1に示す清掃物品の一使用形態を示す斜視図である。
【図4】液徐放シートの構造を示す模式図である。
【図5】図1に示す清掃物品の清掃具に取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 つや出し清掃物品
2 液保持シート
3 収容体
4 液徐放シート
5 清掃具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液保持シートにつや出し剤組成物が300〜3000重量%の高含浸率で含浸されてなるつや出し清掃物品であって、該組成物が(a)水不溶性ポリマー、(b)グリコール系溶剤、(c)界面活性剤並びに(d)カルボン酸エステル及びリン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のエステル化合物を必須原料として含有しており、(a)の水不溶性ポリマーの固形分と(d)のエステル化合物との重量比が40:1〜6:1であるつや出し清掃物品。
【請求項2】
(d)のエステル化合物がカルボン酸エステルであり、該カルボン酸エステルが、モノアルキルアジペート、ジアルキルアジペート、アルキルオレエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアルキレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアルキレート又はクエン酸モノアルキル、クエン酸ジアルキル、クエン酸トリアルキルの何れか又はそれらの組み合わせからなる請求項1記載のつや出し清掃物品。
【請求項3】
(d)のエステル化合物がリン酸エステルであり、該リン酸エステルが、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルの何れか又はその組み合わせからなる請求項1記載のつや出し清掃物品。
【請求項4】
前記組成物の20℃における粘度が1.2〜8mPa・sである請求項1〜3の何れかに記載のつや出し清掃物品。
【請求項5】
前記組成物における不揮発分の量が3〜20重量%である請求項1〜4の何れかに記載のつや出し清掃物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−181356(P2006−181356A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341653(P2005−341653)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】