ねじの特性試験装置とその装置を用いた体験学習方法及び実技教育方法
【課題】 使いやすく小型で持ち運び可能であり、どこでも簡単にねじの特性や理論を目の前で確認してねじに関する理解を深めるためのねじ特性試験装置と、その装置を用いた体験学習方法及び実技教育方法を提供する。
【解決手段】 油圧発生手段(油圧ポンプ3)と、試験用ねじ(ボルト4)に油圧発生手段3からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段(シリンダ21,ピストン22)と、ねじ9に付与された荷重を表示する荷重表示手段(油圧計4)とを同一の基板10上に設けて持ち運び可能とした。
【解決手段】 油圧発生手段(油圧ポンプ3)と、試験用ねじ(ボルト4)に油圧発生手段3からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段(シリンダ21,ピストン22)と、ねじ9に付与された荷重を表示する荷重表示手段(油圧計4)とを同一の基板10上に設けて持ち運び可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト等のねじの締付特性を調べる試験装置と、その試験装置を用いたねじの締付特性の体験学習方法、及び実技教育方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ及びねじ部品は、単純な構成にもかかわらず多彩な機能を有し、身近な製品や最先端のロケットあるいは精密機械など、あらゆる工業製品に用いられて重要な役割を果たしている。
【0003】
ねじ及びねじ部品は、目標とする締付力を得てはじめてその機能を発揮し、使い方を誤ると本来の機能を発揮できない。ところが、一般的なねじ及びねじ部品では、締付力が目標通りに作用しているかどうかを外観から確認することはできない。
【0004】
また、ねじを締付ける作業は、試作時、生産時、市販後のサービス時など、その都度締付方法や締付条件が異なることがあり、それぞれの場合において、締付状態を慎重に確認する必要がある。
【0005】
しかしながら、昨今の技術者の多くは、部品を自ら組み立てる作業を行わないことが多く、ねじへの関心が低いため、ねじの特性に関する理解が不足している場合がある。そのため、機械関係の技術者や設計者に、ねじの特性に関する重要性とその内容を十分に理解させ、その上で製品の設計や製造を行わせることが求められている。
【0006】
従来より、技術者や設計者は、ねじに関する特性を教科書や専門書等で学習しているが、教科書等に書かれている図や文章だけでは、殊に難解な塑性域締付の原理などを理解することは困難である。
【0007】
また、ねじの締め付けに関する特性を試験する装置は各種市販されているが、このような装置は大がかりであるため設置場所以外では使用できない。そのため、誰もが目の前でねじの特性を視認して理解することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術を考慮してなされたものであり、使いやすく小型で持ち運び可能であり、どこでも簡単にねじの特性や理論を目の前で確認してねじに関する理解を深めるためのねじ特性試験装置と、その装置を用いた体験学習方法及び実技教育方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、油圧発生手段と、試験用ねじに油圧発生手段からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段と、ねじに付与された荷重を表示する荷重表示手段とを同一の基板上に設けて持ち運び可能としたことを特徴とするねじの特性試験装置を提供する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、試験時にねじの取付位置の上方および下方にねじが破断した際の破片を回収する上部キャッチャおよび下部キャッチャを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、温度調節手段を備えてねじの温度を可変としたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記荷重発生手段は、シリンダ(21)内を上下するピストン(22)からなり、前記ねじの上端部がピストン(22)に設けられたねじ支持部(22a)に支持され、該ねじ支持部(22a)に対向してシリンダ(21)にナットを保持するナット保持部(21a)が設けられ、前記ねじの下端部が前記ナットに螺合し、前記ピストン(22)の最下位置において、前記ねじ支持部(22a)の下端面がナット保持部(21a)の上端面に当接していることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、ねじの特性試験装置を用いて試験をしながらねじの締付特性理論を学習または教育するための教材として用いることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1の発明を用いた体験学習方法であって、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を学習することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1の発明を用いた実技教育方法であって、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を教育することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によると、試験装置を構成する油圧発生手段、荷重発生手段及び荷重表示手段を同一基板上に配置して持ち運び可能としたので、使用場所が制約されず、どこにでも簡単に持ち運んで試験を行うことができる。従って、教室やデモンストレーション会場などで、多くの人がねじの特性試験を目の前で体験することができる。そして、このような基本の試験装置に例えばトルクレンチやダイヤルゲージ等の簡単な器具を取り付けることにより、ねじに関するさまざまな特性を調べることができる。
【0017】
請求項2の発明によると、アルミ合金や鋳鉄等の破断しやすいねじの特性を調べる際、破片を周囲に飛散させることなく確実に回収することができる。
【0018】
請求項3の発明によると、例えばねじ及び座面を加熱するヒータ等を取り付けることにより、熱による耐面圧強度の変化やボルトの熱間クリープ量の測定も可能となり、応用範囲が広がる。
【0019】
請求項4の発明によると、油圧がゼロでピストン(22)がシリンダ(21)に対して最下位置にあって、例えばねじの回転により、ねじの頭に上向きの引張力が作用して、その下端部に螺着するナット保持部(21a)が上昇した場合、このナット保持部(21a)の上端面がねじ支持部(22a)の下端面に当接しているため、引張力がねじ支持部(22a)で受け止められる。したがって、ナット保持部(21a)及びねじ支持部(22a)が変形や損傷することがなく、装置が保護される。
【0020】
請求項5の発明によると、携帯可能で持ち運びできる本発明のねじの特性試験装置を教材として用いることにより、教室や講堂あるいは企業等の会議室などで、大人数の研修者の前で実際にねじの試験を行いながら、研修者に対してねじの締め付けについての理論を指導教育し、研修者はそれを目で見て確認し、十分に理解して学習することができる。
【0021】
請求項6の発明によると、ねじの締付特性の理論を理解しようとする学習者は、教科書や専門書に記載してある難解なねじの理論について、実際に目前でねじの試験を行うことにより、ねじの理論を体験しながら十分に理解することができる。
【0022】
請求項7の発明によると、ねじを扱う実務研修者や学習者に対し、ねじの特性についての理論を教えて理解させる場合に、本発明のねじの特性試験装置を用いて、実際に研修者の目前で難解なねじの締付特性図を再現して教示することにより、ねじ理論について、研修者の理解を十分に深めて教育することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1(A),(B)は、本発明の試験装置を示す。試験装置1は、上面側中央から試験用ボルト9を取り付けてそのボルト9に荷重を与える試験機本体2と、油圧ポンプ3と、油圧計4と、ボルト9が破断した際に破片を回収する上部キャッチャ5および下部キャッチャ6からなり、これらが共通の一体の基板10上に載置される。
【0024】
試験機本体2は円筒形であり、中央には、上下に貫通する通孔20が形成されている。通孔20の外周には、断面が略コ字状のシリンダ21が全周にわたって形成される。通孔20内に、ボルト9を螺合するナット12が嵌装され、ナット12はシリンダ21の内側に固定される。ピストン22がシリンダ21内を上下方向に摺動可能に挿嵌され、ピストン22の底部とシリンダ21との間に油室23が形成される。ピストン22の下部側面にOリング27が装着され、油室23を油密に保持する。油室23の下部は油圧ポンプ3および油圧計4に連結されて、油圧ポンプ3からは適宜オイルが供給され、油圧計4により油圧の値が表示される。
【0025】
シリンダ21の上部にカバー25が取り付けられ、カバー25とピストン22の下部との間に、ピストン22を下方に付勢するスプリング24が装着される。ピストン22上部の一個所に、回り止め部材26が嵌装される。
【0026】
ナット12の上方に、ボルト9の座面となる座面板11が取り付けられ、その座面板11はピストン22の上部に固定される。ボルト9は、座面板11の上方から挿入し、ナット12に螺合して各種特性試験が行われる。
【0027】
試験用のボルト(ねじ)9は、上端の頭部が座面板11を介してピストン22の中央上端部のボルト(ねじ)支持部22a上に支持される。ボルト9の下端部はナット12を介してシリンダ21の中央上端部のナット保持部21aに固定される。ナット保持部21aおよびボルト支持部22aは、それぞれフランジ状に形成され通孔20側に突出し、相互に対峙する。
【0028】
ピストン22をシリンダ21に対して下降させたとき、油室23のピストン22の下面がシリンダ21の底面に接する前にピストン22の上記ボルト支持部22aの下面がその下側に対峙するナット保持部21aの上面に当接して密着する。すなわち、油圧ゼロのピストン21の最下位置では、ピストン側のボルト支持部22aの下面はシリンダ側のナット保持部21aの上面に密着する。従って、油圧をゼロにして試験を行う場合(例えば後述の図17に示す回転角試験)、トルクレンチでボルト9を回してボルト9の頭に上向きの引張力を作用させ、ナット12を介してナット保持部21aとともに上方向に引き上げる力が作用すると、その引き上げ力はピストン側のボルト支持部22aの下面で受け止められるため、ナット保持部21a及びボルト支持部22aに無理な力が加わらず、変形や損傷が防止される。
【0029】
上記の構造により、油圧ポンプ3を作動して油室23にオイルを送り油圧をかけると、ピストン22が上昇し、座面板11を介してボルト9上部を引き上げる力が発生し、ボルト9に引張荷重が作用する。油室23内に常に所定の油圧以上の油圧が作用した状態に保つために、油圧ポンプ3のハンドル先端に重り31を載せる。
【0030】
このような試験装置1は、ひとつの基板10上にコンパクトに配置されているので、持ち運びが容易である。また、電気的配線が不要なので、どのような場所にでも持ち運んで容易に使用することができる。
【0031】
尚、油圧計4は、油圧の値をそのまま表示するものでもよいし、油圧によりボルト9に作用する荷重に換算した値を表示する荷重計でもよい。
【0032】
上記の試験装置1を基本形として、以下に述べるように、市販されている簡単な器具やアタッチメント等を取り付けて、ボルトに関する各種特性を調べることができる。試験時には、随時ボルト等にかかる荷重や歪等のデータを記録し、グラフ化することにより、そのときの状態を把握し、理解を深めることができる。尚、本試験装置は、ボルトの特性に関する現象を理解するものであり、試験結果の精度は要求されない。すなわち、本試験装置の主たる使用目的は、教材として用いてねじの実務研修者にねじ特性の理論を理解させることである。そのためには、試験によりねじ特性の傾向が示されれば十分であって、必ずしも理論上の数値に正確に一致することは必要ではない。
【0033】
図2は、キャッチャ5,6の形状を示す。図2(A)は上部キャッチャであり、ボルト9の上側に蓋51を被せて用いる。蓋51の内側頂面に、樹脂等からなる衝撃吸収材52が設けられる。蓋51の外側には鎖53が取り付けられ、鎖53の他端が例えば試験機本体2(図1)に固定される。図2(B)は下部キャッチャであり、ボルト9の下側で、フランジ62を基板10の切欠部10aに係止して用いる。皿61の内側底面に、衝撃吸収材63が設けられる。このような上下各キャッチャ5,6は、殊にアルミ合金や鋳鉄等のように破断しやすいボルトの特性を調べる際に、破片を回収するために用いる。
【0034】
図3は、ボルト9を軸方向に引っ張る場合の軸力と歪の関係を知るための試験装置および結果である。
【0035】
図3(A)は装置の概要であり、前述の図1の試験装置1に加えて、ボルト9の歪量を測定するダイヤルゲージ13を取り付けたものである。試験時には、油圧ポンプ3で試験機本体2に加圧し、ボルト9に軸方向の引張力を与える。ダイヤルゲージ13の先端をボルト9の頭部に接触させて、下部をナット12(図1)に固定されたボルト9頭部の変位、すなわちボルト9の軸方向の歪を測定する。
【0036】
図3(B)は、油圧によってボルト9に作用する引張方向の軸力と、ボルト9の歪との関係を図示したものである。図3(B)においては、ボルト9にかかる軸力を降伏点の直前、即ち弾性限度内のA点まで付加して荷重がかかった載荷状態とし、その後軸力を解除して除荷する。A点は弾性限度内なので、除荷したときにボルトの歪が0に戻る。更に載荷と除荷を繰り返しても、弾性限度内であれば、軸力と歪の関係は1回目の載荷時と同様であり、グラフの実線上を矢印の方向に往復する。尚、このグラフの傾きがボルト9のばね定数である。
【0037】
図3(C)は(B)に続く段階の結果であり、ボルト9に塑性域まで引張力を加えた場合の軸力と歪の関係を図示したものである。
【0038】
図のA点までは(B)と同様に載荷し、ボルトの軸力が弾性限度のA点を超えて塑性域に達し、軸力がほとんど上がらなくなったB点で、載荷を止める。その後除荷すると、軸力が0になったときに、ダイヤルゲージ13の値が0ではなく、ε1の値を示し、永久歪ε1が残ったことがわかる。その後、再び載荷すると、一回目の載荷時の最大軸力であるB点までの間、グラフが直線状になり、弾性変形していることがわかる。即ち、新弾性限度がB点となり、一回目の弾性限度A点よりも軸力が上昇している。実際のボルト使用時、弾性限度を高くするために、このように一旦塑性域まで引張荷重を付加する場合がある。
【0039】
図4は、ボルト9を捻って締め付ける場合の軸力と歪の関係を知るための装置および結果である。
【0040】
図4(A)は装置の概要であり、ボルト9の頭部を回すレンチ14を用い、ボルト9頭部の軸方向の変位即ちボルト9の歪を測定するためにダイヤルゲージ13を設置する。
【0041】
図4(B)は、油圧ポンプ3による加圧を行わずにボルト9をレンチ14で捻って締め付けたときの軸力と歪の関係を図示したものである。レンチ14で捻って締め付けると、ボルト9のねじ面に摩擦が生じ、せん断応力が作用する。従って、図3のような単純引張時よりも低い軸力で降伏し、ボルト自体の能力の限界よりも小さい軸力のA点で弾性限度となる。また、ねじ面の摩擦係数によってせん断応力が異なるため降伏点が異なり、図中の破線で示すように、殊に降伏点以降の塑性域において軸力にばらつきが生じる。
【0042】
また、ねじりを伴って降伏点を超えて塑性域に入ったB点でボルトを逆方向に捻って除荷すると、永久歪ε1が残る。
【0043】
図4(C)は、(B)のB点までレンチ14で捻った後、更に油圧ポンプ3によってボルト9に軸方向の引張荷重を与えた場合の軸力と歪の関係を図示したものである。
【0044】
捻りによって一旦降伏したボルトに、捻りを加えずに単純引張荷重を載荷することによって、更に軸力が上昇する。引張荷重による降伏点を超えて塑性域に入るC点で載荷を止めて除荷すると、残留する永久歪はε1+ε2となる。その後、再度ボルトに引張力を加えると、C点まで弾性変形し、C点が新弾性限度となる。
【0045】
このように、捻って締め付けた後で引張方向の載荷を行うと、永久歪は大きくなるが、軸力に関しては、ボルトが本来有する元の性質が現れる。すなわち、捻りによって降伏点が低く現れても、ボルトの軸方向強度が弱くなるわけではない。この現象は、数式等で説明できることではなく、このような実演によってのみ理解することができる。
【0046】
図5は、ボルト9を捻って締め付ける場合の軸力とトルクとの関係を知るための装置および結果である。
【0047】
図5(A)は装置の概要であり、図1に示す基本の試験装置1のボルト9頭部にトルクレンチ15を取り付けたものである。このトルクレンチ15によってボルト9を締め付けるとともにトルク値を読み取り、油圧計4によりボルト9に作用する軸力を読み取る。この試験において、油圧ポンプ3による加力は行わない。
【0048】
図5(B)は測定結果を図示したものである。ボルト頭部やねじ部の摩擦力が異なると、同じトルクで締め付けても軸力が異なる。すなわち、潤滑油を介してボルト9を締めたときに比べて、潤滑油を使わず摩擦抵抗が大きい状態で締めたときには、同じトルクを加えても軸力が低くなることが、この測定により体感できる。
【0049】
トルク係数kは、
k=T/(F×d)
ただし、T:締め付けトルク
F:軸力
d:ねじの呼び径
で求められ、トルク係数を求めておくことにより、必要な軸力を得るための締め付けトルクがわかる。
【0050】
また、図5(A)の装置を用いて、ボルト9と座面板11及びナット12(図1参照)との摩擦係数を測定することができる。ボルト締付時のトルクTと軸力Fとの関係は、
T=(dp/2)×F×(μs/cosα)+(dp/2)×F×tanβ
+(dw/2)×F×μw
ただし、dp:ねじの有効径
α:ねじ山の半角
μs:ねじ面の摩擦係数
dw:座面の等価直径
β:ねじのリード角
μw:座面の摩擦係数
で求められ、以下の手順で座面の摩擦係数μwを求める。
【0051】
先ず、等価直径dwおよび摩擦係数μwがわかっているベアリングワッシャを座面板としてボルトを取り付け、トルクレンチでボルトを締め付けて、トルクTと軸力Fの関係を測定する。ねじの有効径dp、ねじ山の半角α、ねじのリード角βは、ボルト選定時に既知の数値なので、ねじ面の摩擦係数μsが上式により求められる。
【0052】
次に、ベアリングワッシャに代えて、正規に使用されるワッシャを用いて、同様にボルトを締め付けてトルクTと軸力Fとの関係を測定する。上記のベアリングワッシャでの測定により、ねじ面の摩擦係数μsが既知の数値となったので、上式により座面の摩擦係数μwが求められる。
【0053】
従って、実際の製品で使用するワッシャを用いてボルトを締め付けるときのトルクTと軸力Fとの関係式が求められ、ボルトを使用する製品において必要な軸力Fを得るためのトルクTがわかる。
【0054】
図6は、ボルト9のばね定数を測定するための装置および結果であり、図7は、被締付物であるカラー8のばね定数を測定するための装置および結果である。いずれも、載荷は弾性限度内である。
【0055】
図6(A)は図3(A)と同様であり、試験機本体2にボルト9の歪を測定するダイヤルゲージ13を取り付けたものである。油圧ポンプ3で加圧することによりボルト9に軸方向の引張力を与え、油圧計4より軸力を読み取る。ダイヤルゲージ13によりボルト9頭部の軸方向の変位、すなわちボルト9の歪を読み取る。
【0056】
図6(B)は、ボルトの軸力Fと伸び方向の歪との関係を図示したものである。軸力がFf時のA点の歪はλbであり、このボルト9のばね定数Kbは、
Kb=Ff/λb
で算出される。
【0057】
図7(A)は、円筒状のカラー8をボルト9の周囲に配置するとともに、カラー8の上下方向両端にプレート16a,16bを取り付け、上下のプレート16a,16bの間隔を測定するダイヤルゲージ13を設置したものである。油圧ポンプ3で加圧してボルト9に軸方向の引張力を与え、その際のダイヤルゲージ13の値から、カラー8の圧縮方向の歪を読み取る。
【0058】
図7(B)は、カラー8の圧縮力と歪との関係を図示したものである。ボルト9と反対の圧縮力が作用することから、基準の縦軸に対して、図6(B)とは左右反対方向に図示する。図6(B)の軸力Ffと同じ圧縮力Ffのときのカラー8の歪はλcである。従って、このカラー8(被締付物)のばね定数Kcは
Kc=Ff/λc
で算出される。
【0059】
図8は、ねじの締め付け状態を示す締付三角形と呼ばれる特性図を理解するための試験を行う装置であり、図8(A)は装置全体の概要、図8(B)はその装置で用いられる油圧ナット7の構成を示す。
【0060】
図8(A)に示すように、試験機本体2にボルト9の先端部を取り付け、ボルト9の周囲に円筒形のカラー8を配置する。カラー8の上端及び下端に、カラー8よりも大径のプレート16を水平方向に取り付ける。カラー8の下端に油圧ナット7を配設し、油圧ナット7の上方にスペーサ17を載置する。載荷前の初期状態では、スペーサ17の上端面とプレート16との間に僅かに隙間gをあけて、プレート16に力がかからないようにする。
【0061】
油圧ナット7は、図8(B)に示すように、円環状に連続し断面がコ字状のシリンダ71内をピストン72が上下方向に摺動可能に挿嵌され、ピストン72の上端とシリンダ71との間に油室73が形成される。ピストン72の上端面にはシーリング材74が装着され、油室73を油密に保持する。油室73は第二油圧ポンプ3bおよび第二油圧計4bに連結されて、第二油圧ポンプ3bから適宜オイルが供給され油室73を加圧し、第二油圧計4bにより油圧の値が表示される。(A)に示すように、油圧ナット7のピストン72の位置が固定されているので、油室73が加圧されると、シリンダ71が上昇し、スペーサ17を介してプレート16を上方に押す力がかかる。
【0062】
図9は、図8の装置を用いた試験状況および結果である。
【0063】
図9(A)(i)は、図8の油圧ポンプ3により、弾性域内でボルト9に引張荷重を載荷したときに作用する力の状態を示し、矢印はボルト9およびカラー8それぞれに作用する力の方向を示す。図9(A)(ii)は、(i)の状態から、更に図8の油圧ナット7によりプレート16を押し上げて外力Wを載荷し、歪εが生じた状態を示す。
【0064】
図9(B)は(A)(i)のときの軸力と歪の関係を図示したものであり、ボルト9に関しては左側の線、カラー8に関しては右側の線で図示している。すなわち、ボルト9のばね定数Kbは左側の線の傾きで表され、カラー8のばね定数Kcは右側の線の傾きで表される。軸力がFfに達するA点までボルトに引張荷重が載荷され、軸力Ff時に、ボルト9とカラー8は、それぞれ歪λb、歪λcを生じる。
【0065】
図9(C)は(A)(ii)の状態の軸力と歪の関係を図示したものである。外力Wは、(A)(i)で引張方向の内力が生じているボルト9の軸力を増加させるとともに、圧縮方向の内力が生じているカラー8の軸力を削減した状態で、全体に引張方向の歪εを生じる。従って、カラー8をボルト9で締め付ける際、軸力Ffが作用しているボルト9を更に外力Wで引っ張ると、ボルト9の軸力は(Ff+W)にはならず、外力Wのうちカラー8から削除される力の大きさ分だけ少ない軸力が増加して、つり合いが保たれる。
【0066】
これを式で表すと、外力Wによってボルト9に作用する軸力Ftおよびカラー8に作用する軸力Fcは、
Ft=Kb×ε
Fc=Kc×ε
ただし、Kb:ボルトのばね定数
Kc:カラーのばね定数
ε:外力Wによる歪
で表され、図9(A)(ii)の力のつり合いから、
(Ff−Fc)+W=(Ff+Ft)
となるので、
W=Ft+Fc=(Kb×ε)+(Kc×ε)
よって、
ε=W/(Kb+Kc)
従って、ボルトに作用する引張方向の軸力の増加分を示す軸力Ftは、
Ft=Kb×ε=W×Kb/(Kb+Kc)
となる。
【0067】
図10は、図9(A)(ii)の外力同士を比較するための説明図である。プレート16にかかる外力同士を比較すると、ボルト9側の外力は(Ff+Ft)であり、カラー8側の外力は(Ff−Fc)である。従って、力のつり合いから、
W+(Ff−Fc)=(Ff+Ft)
よって、
Ft+Fc=W
となる。
【0068】
図11および図12は、ボルト9およびカラー8等の各種パターンによる締付三角形の例を示し、図8の装置によって前述の図9と同様の試験を行い確認することができる。いずれも、初期載荷はボルト9の弾性範囲内とする。
【0069】
図11は、被締付物であるカラー8の材質や寸法によりばね定数が異なるパターンを示す。(A)〜(C)それぞれの(i)は試験体のパターンを示し、(ii)は(i)の結果を図示したものである。図11(A)はカラー8が鉄製の場合、図11(B)は(A)と同寸法のカラー8で材質がアルミの場合、図11(C)は(A)と同質のカラー8の断面寸法が大きい場合である。(A)を基本として、(B)はカラー8のばね定数が小さいために右側に図示される線の傾きが小さく、(C)はカラー8のばね定数が大きいために右側の線の傾きが大きくなる。
【0070】
図12(A)は、被締付物が、重ね合わせた板材8aの場合であり、ボルト9および板材8aのばね常数が極めて高い。図12(B)は、外力を2倍の2Wとしたものである。結果としてカラー8の上端とボルト9の座面との間に隙間が発生する。図12(C)は軸部が細く降伏点が低いボルト9に外力1.5Wを載荷する場合であり、ボルト9の降伏点が低いために塑性域まで引っ張られ、除荷したときに永久歪が残る。
【0071】
図13は、ボルト9を塑性域まで捻って締め付けた後に引張力を与える試験を示す。図13(A)は装置の概要、図13(B)は結果を図示したものである。この試験は、図8(A)の装置にレンチ14を加えて行われる。油圧ポンプ3による加力は行わない。
【0072】
先ず、レンチ14を用いてボルト9を捻り、弾性限度を超えて塑性域に達し、油圧計4の針の上昇が止まるB点まで締め付ける。このときの軸力がFfである。
【0073】
その後、第二油圧ポンプ3bを用いて油圧ナット7に加圧し、第二油圧計4bが外力Wを示すC点まで加圧する。このときのボルトの軸力が(Ff+Ft)となる。第二油圧ポンプ3bの圧力を解除すると、油圧計4が表示する軸力が(Ff−ΔF)となり、D点に達したところでつり合う。更に、このボルト9の捻りによる締付力を全て解除すると、永久歪が残る。
【0074】
図14は、外力Wの載荷位置をボルト9の軸方向に可変にするための装置である。外周に雄ねじが形成されたカラー8を用いて、その雄ねじに螺合するプレート16cをカラー8に螺合させることにより、プレート16cの高さを適宜調整する。カラー8の下端に、図8(B)と同様の油圧ナット7を配設し、所定位置における外力Wの加力を行う。尚、載荷前の初期状態では、油圧ナット7の上端面とプレート16cとの間に僅かに隙間gをあけて、プレート16cに力がかからないようにする
【0075】
図15は、外力Wの加力位置が異なる各試験体と結果を示す。
【0076】
試験方法は、先ず、油圧ポンプ3(図14)を用いて、油圧計4が軸力Ffを示すまで加圧する。この軸力Ffは、弾性変形の範囲内とする。次に、第二油圧ポンプ3bを用いて油圧ナット7に加圧し、各所定位置に設置した可動プレート16cを押し上げて、第二油圧計4bが外力Wを示すまで加力する。このとき、油圧計4が示す軸力は(Ff+Ft)となる。
【0077】
この試験により、ボルト軸力の増加分と外力との比である内力係数の、外力加力位置による修正係数を求めることができる。図15(A)は被締付物であるカラー8の上下端部を加力する場合、(B)はカラー8の下端と中央部を加力する場合、(C)はカラー8の下端を加力する場合である。
【0078】
内力係数φは、
φ=Ft/W
で求められる。また、ボルトの座面板11とプレート16cとの距離0のときのFtの値Ft1と距離hのときのFt2との比nは、
n=Ft2/Ft1
で求められ、これが内力係数の修正係数となる。
【0079】
図16は、ボルトを一定の回転角度で締め付ける回転角法の意味を理解するための試験を示す。図16(A)は、ボルトを捻って締め付ける場合の試験体の状況であり、図16(B)はその結果を図示したものである。
【0080】
ボルト9は(B)の左側の線のように、軸力Ffまで締め付けられ、ばね定数はKbである。このとき、ボルト9には伸張方向に歪λbが生じる。カラー8は、圧縮方向に軸力Ffで締め付けられ、ばね定数がKcで、圧縮方向に歪λcが生じる。このとき、ボルトの回転角θは、
θ=360°×(λb+λc)/P
ただし、P:ねじのピッチ
である。また、ボルト9、カラー8それぞれの歪λb,λcは、
λb=Ff/Kb
λc=Ff/Kc
なので、軸力Ffを得るための回転角を算出することができる。
【0081】
図17は、例えば鉄とアルミのボルト9f,9aについてトルクレンチ15でボルトを締め付けた場合、それぞれのトルクと回転角との関係を知るための試験状況および結果を示す。
【0082】
図17(A)は、ボルト9の取付位置周りの納まりを示す。図1に示す基本の試験装置1において、油室23のオイルを抜き、ピストン22にシリンダ21を着座させて試験する。これにより、ボルト9を締め付けても、ピストン22の上端部が変形しない。試験体は、例えばボルト9とカラー8の両方が鉄製のもの、ボルト9がアルミでカラー8が鉄のものの二種類について、トルクレンチ15を用いて、トルクTの力でボルト9を締め付ける。図17(B)は、トルクTをかけたときの各ボルト9f,9aの回転角がそれぞれθA,θBであることを示す。このように、鉄のボルト9fの回転角θAとアルミニウムのボルト9aの回転角θBは、
θB>2θA
となる。これは、それぞれの材質のばね係数Kが
K=E×(A/L)
ただし、E:ヤング率
A:断面積
L:長さ
で表されることによる。この試験により、ボルト9の材質ごとに、所定の締付力を得るための回転角が異なることを体感できる。
【0083】
図18および図19は、熱間耐面圧強度を調べるための装置である。アルミ合金やマグネシウム合金の座面およびねじ面の熱間耐面圧強度は公表値が少なく、それらを製品に使用する際には、測定により性能を把握しなければならない。図1の基本の試験装置1に簡単な機器を取り付けることにより、このような試験を行うことができる。
【0084】
試験機本体2上方の丸頭ボルトの周囲にヒータ34を取り付け、コントローラ35でヒータ34を所定温度に制御して座面板11を加熱する。更に、試験機本体2と油圧ポンプ3との接続管の途中から分岐して圧力調整器32(図18)が設けられる。また、油圧ポンプ3のアームに重り31を取り付け、油室23に常にオイルが充填された状態とする。油圧計4により、丸頭ボルト9bにかかる軸力を読み取る。
【0085】
図19は、図18の丸頭ボルト9b周りの拡大図である。例えば材質がアルミの座面板11の上からボルト9bを締め付ける。ヒータ34の内側には、例えば鉄からなる蓄熱体36が設けられ、ボルト9bおよび座面板11の周囲を覆う。ヒータ34の内側の温度は、熱電対37の先端を差し込んで測定する。試験機本体2側に熱が伝わらないように、ヒータ34と試験機本体2との間に、例えばベークライト等からなる断熱材18を挿嵌する。
【0086】
座面板11の嵌没量が大きい場合には、軸力が変動しないように、圧力調整器32を用いて圧力調整を行い、常に同じ圧力がかかりボルト9の軸力が一定になるようにする。圧力調整器32にも、圧力ポンプ3と同様、重り33が取り付けられる。
【0087】
尚、図19(B)に示すように、ボルト9bの頭部の径Dは座面板11の孔91の径dよりも大きくする。必要に応じてワッシャ等が取り付けられたりフランジ付きボルトを用いてもよい。座面板11の受圧面積Sは、
S=(π/4)×(D2−d2)
である。
【0088】
このようにして、例えば常温時と200℃の場合等、温度ごとの耐面圧強度を測定することができる。
【0089】
図20および図21は、熱間時のボルトクリープを測定するための装置である。弾性限界内で締め付けられているボルトでも、100℃〜150℃という比較的低い温度でクリープ変形することが知られており、その現象を確認することができる。
【0090】
ボルト9の周囲にカラー8が配設される。カラー8の周囲にヒータ34を設け、コントローラ35でヒータ34の温度を制御する。油圧ポンプ3のアームには重り31を取り付ける。試験機本体2と油圧ポンプ3との接続管の途中から分岐して圧力調整器32を設け、常に油室23に同じ圧力がかかるように制御する。更に、接続管から分岐して補助油圧ポンプ3aを設ける。ボルト9のクリープ量が大きく、油圧ポンプ3の1回のストロークでは油量が不足する場合に、補助油圧ポンプ3aを用いて送油する。
【0091】
図21は、図20のボルト9周りの拡大図である。ボルト9は、例えば銅のように熱が伝わりやすい材質のワッシャ19を介して取り付ける。ボルト9の上端部および下端部に、それぞれ熱電対37a,37bを差し込んで温度を測定する。ボルト9上部は、(B)に示すように、カラー8の一部に溝81を設け、ボルト9の軸部に熱電対37aの先端を差し込む。ボルト9下部は、ボルト9の先端に孔をあけて、熱電対37bの先端を差し込む。ヒータ34と試験機本体2との間、およびボルト9先端部とピストン21との間には、それぞれ断熱材18a,18bを取り付けて、試験機本体2に熱が伝わらないようにするとともに、ボルト9の熱を逃がさないようにする。断熱材18a,18bは、ボルト9の軸部周りに取り付けて、断熱材18bの先端側をナット12aで固定する。
【0092】
図22は、上記の装置により、SC材とSCM材のそれぞれのボルト9について測定した結果を図示したものである。一般鋼材の中でも、SC材とSCM材とでは、高応力時のクリープ量が大幅に異なり、SCM材はモリブデンの影響で、耐熱性が優れている。いずれも、塑性域に近づくと温度による永久歪が大きくなり、高温では降伏点や耐力が低下することが、本装置による試験で理解できる。
【0093】
尚、以上述べた各種特性試験は、ねじの特性を学習するために全て理解する必要があり、通常は順を追って理解するものであるが、順不同で試験したり、いずれかの試験だけを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ボルト等のねじの特性を理解するための教材および体験学習方法として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の基本の試験装置を示す図。
【図2】図1の上部キャッチャおよび下部キャッチャを示す縦断面図。
【図3】ねじの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図4】ねじの異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図5】ねじの更に異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図6】ボルトの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図7】カラーの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図8】ねじの更に異なる特性を調べる装置を示す概略図。
【図9】図8の装置による試験体の状態および結果を示す図。
【図10】図9の特性の外力の状態および結果を示す図。
【図11】図8の装置による異なる試験体ごとの結果を示す図。
【図12】図8の装置による更に異なる試験体ごとの結果を示す図。
【図13】ねじの更に異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図14】ねじの更に異なる特性を調べる装置を示す概略図。
【図15】図14の装置による異なる加力位置ごとの結果を示す図。
【図16】ねじの更に異なる特性を示す図。
【図17】ねじの更に異なる特性を調べる装置の一部および結果を示す図。
【図18】図1の試験装置を用いた応用例の装置を示す概略図。
【図19】図18の一部分を拡大した縦断面図。
【図20】図1の試験装置の異なる応用例の装置を示す概略図。
【図21】図20の一部分を拡大した図。
【図22】図20の装置による測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1:試験装置、2:試験機本体、3,3b:油圧ポンプ、3a:補助油圧ポンプ、4,4b:油圧計、5:上部キャッチャ、6:下部キャッチャ、7:油圧ナット、8、8b:カラー、8a:板材、9,9f,9a,9b:ボルト、10:基板、10a:切欠部、11:座面板、12,12a:ナット、13:ダイヤルゲージ、14:レンチ、15:トルクレンチ、16,16a,16b,16c:プレート、17:スペーサ、18,18a,18b:断熱材、19:ワッシャ、20:通孔、21:シリンダ、21a:ナット保持部、22:ピストン、22a:ボルト支持部、23:油室、24:スプリング、25:カバー、26:回り止め部材、27:Oリング、31,33:重り、32:圧力調整器、34:ヒータ、35:コントローラ、36:蓄熱体、37,37a,37b:熱電対、51:蓋、52,63:衝撃吸収材、53:鎖、61:皿、62:フランジ、71:シリンダ、72:ピストン、73:油室、74 シーリング材、81:溝、91:孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト等のねじの締付特性を調べる試験装置と、その試験装置を用いたねじの締付特性の体験学習方法、及び実技教育方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ及びねじ部品は、単純な構成にもかかわらず多彩な機能を有し、身近な製品や最先端のロケットあるいは精密機械など、あらゆる工業製品に用いられて重要な役割を果たしている。
【0003】
ねじ及びねじ部品は、目標とする締付力を得てはじめてその機能を発揮し、使い方を誤ると本来の機能を発揮できない。ところが、一般的なねじ及びねじ部品では、締付力が目標通りに作用しているかどうかを外観から確認することはできない。
【0004】
また、ねじを締付ける作業は、試作時、生産時、市販後のサービス時など、その都度締付方法や締付条件が異なることがあり、それぞれの場合において、締付状態を慎重に確認する必要がある。
【0005】
しかしながら、昨今の技術者の多くは、部品を自ら組み立てる作業を行わないことが多く、ねじへの関心が低いため、ねじの特性に関する理解が不足している場合がある。そのため、機械関係の技術者や設計者に、ねじの特性に関する重要性とその内容を十分に理解させ、その上で製品の設計や製造を行わせることが求められている。
【0006】
従来より、技術者や設計者は、ねじに関する特性を教科書や専門書等で学習しているが、教科書等に書かれている図や文章だけでは、殊に難解な塑性域締付の原理などを理解することは困難である。
【0007】
また、ねじの締め付けに関する特性を試験する装置は各種市販されているが、このような装置は大がかりであるため設置場所以外では使用できない。そのため、誰もが目の前でねじの特性を視認して理解することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術を考慮してなされたものであり、使いやすく小型で持ち運び可能であり、どこでも簡単にねじの特性や理論を目の前で確認してねじに関する理解を深めるためのねじ特性試験装置と、その装置を用いた体験学習方法及び実技教育方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、油圧発生手段と、試験用ねじに油圧発生手段からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段と、ねじに付与された荷重を表示する荷重表示手段とを同一の基板上に設けて持ち運び可能としたことを特徴とするねじの特性試験装置を提供する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、試験時にねじの取付位置の上方および下方にねじが破断した際の破片を回収する上部キャッチャおよび下部キャッチャを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、温度調節手段を備えてねじの温度を可変としたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記荷重発生手段は、シリンダ(21)内を上下するピストン(22)からなり、前記ねじの上端部がピストン(22)に設けられたねじ支持部(22a)に支持され、該ねじ支持部(22a)に対向してシリンダ(21)にナットを保持するナット保持部(21a)が設けられ、前記ねじの下端部が前記ナットに螺合し、前記ピストン(22)の最下位置において、前記ねじ支持部(22a)の下端面がナット保持部(21a)の上端面に当接していることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、ねじの特性試験装置を用いて試験をしながらねじの締付特性理論を学習または教育するための教材として用いることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1の発明を用いた体験学習方法であって、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を学習することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1の発明を用いた実技教育方法であって、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を教育することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によると、試験装置を構成する油圧発生手段、荷重発生手段及び荷重表示手段を同一基板上に配置して持ち運び可能としたので、使用場所が制約されず、どこにでも簡単に持ち運んで試験を行うことができる。従って、教室やデモンストレーション会場などで、多くの人がねじの特性試験を目の前で体験することができる。そして、このような基本の試験装置に例えばトルクレンチやダイヤルゲージ等の簡単な器具を取り付けることにより、ねじに関するさまざまな特性を調べることができる。
【0017】
請求項2の発明によると、アルミ合金や鋳鉄等の破断しやすいねじの特性を調べる際、破片を周囲に飛散させることなく確実に回収することができる。
【0018】
請求項3の発明によると、例えばねじ及び座面を加熱するヒータ等を取り付けることにより、熱による耐面圧強度の変化やボルトの熱間クリープ量の測定も可能となり、応用範囲が広がる。
【0019】
請求項4の発明によると、油圧がゼロでピストン(22)がシリンダ(21)に対して最下位置にあって、例えばねじの回転により、ねじの頭に上向きの引張力が作用して、その下端部に螺着するナット保持部(21a)が上昇した場合、このナット保持部(21a)の上端面がねじ支持部(22a)の下端面に当接しているため、引張力がねじ支持部(22a)で受け止められる。したがって、ナット保持部(21a)及びねじ支持部(22a)が変形や損傷することがなく、装置が保護される。
【0020】
請求項5の発明によると、携帯可能で持ち運びできる本発明のねじの特性試験装置を教材として用いることにより、教室や講堂あるいは企業等の会議室などで、大人数の研修者の前で実際にねじの試験を行いながら、研修者に対してねじの締め付けについての理論を指導教育し、研修者はそれを目で見て確認し、十分に理解して学習することができる。
【0021】
請求項6の発明によると、ねじの締付特性の理論を理解しようとする学習者は、教科書や専門書に記載してある難解なねじの理論について、実際に目前でねじの試験を行うことにより、ねじの理論を体験しながら十分に理解することができる。
【0022】
請求項7の発明によると、ねじを扱う実務研修者や学習者に対し、ねじの特性についての理論を教えて理解させる場合に、本発明のねじの特性試験装置を用いて、実際に研修者の目前で難解なねじの締付特性図を再現して教示することにより、ねじ理論について、研修者の理解を十分に深めて教育することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1(A),(B)は、本発明の試験装置を示す。試験装置1は、上面側中央から試験用ボルト9を取り付けてそのボルト9に荷重を与える試験機本体2と、油圧ポンプ3と、油圧計4と、ボルト9が破断した際に破片を回収する上部キャッチャ5および下部キャッチャ6からなり、これらが共通の一体の基板10上に載置される。
【0024】
試験機本体2は円筒形であり、中央には、上下に貫通する通孔20が形成されている。通孔20の外周には、断面が略コ字状のシリンダ21が全周にわたって形成される。通孔20内に、ボルト9を螺合するナット12が嵌装され、ナット12はシリンダ21の内側に固定される。ピストン22がシリンダ21内を上下方向に摺動可能に挿嵌され、ピストン22の底部とシリンダ21との間に油室23が形成される。ピストン22の下部側面にOリング27が装着され、油室23を油密に保持する。油室23の下部は油圧ポンプ3および油圧計4に連結されて、油圧ポンプ3からは適宜オイルが供給され、油圧計4により油圧の値が表示される。
【0025】
シリンダ21の上部にカバー25が取り付けられ、カバー25とピストン22の下部との間に、ピストン22を下方に付勢するスプリング24が装着される。ピストン22上部の一個所に、回り止め部材26が嵌装される。
【0026】
ナット12の上方に、ボルト9の座面となる座面板11が取り付けられ、その座面板11はピストン22の上部に固定される。ボルト9は、座面板11の上方から挿入し、ナット12に螺合して各種特性試験が行われる。
【0027】
試験用のボルト(ねじ)9は、上端の頭部が座面板11を介してピストン22の中央上端部のボルト(ねじ)支持部22a上に支持される。ボルト9の下端部はナット12を介してシリンダ21の中央上端部のナット保持部21aに固定される。ナット保持部21aおよびボルト支持部22aは、それぞれフランジ状に形成され通孔20側に突出し、相互に対峙する。
【0028】
ピストン22をシリンダ21に対して下降させたとき、油室23のピストン22の下面がシリンダ21の底面に接する前にピストン22の上記ボルト支持部22aの下面がその下側に対峙するナット保持部21aの上面に当接して密着する。すなわち、油圧ゼロのピストン21の最下位置では、ピストン側のボルト支持部22aの下面はシリンダ側のナット保持部21aの上面に密着する。従って、油圧をゼロにして試験を行う場合(例えば後述の図17に示す回転角試験)、トルクレンチでボルト9を回してボルト9の頭に上向きの引張力を作用させ、ナット12を介してナット保持部21aとともに上方向に引き上げる力が作用すると、その引き上げ力はピストン側のボルト支持部22aの下面で受け止められるため、ナット保持部21a及びボルト支持部22aに無理な力が加わらず、変形や損傷が防止される。
【0029】
上記の構造により、油圧ポンプ3を作動して油室23にオイルを送り油圧をかけると、ピストン22が上昇し、座面板11を介してボルト9上部を引き上げる力が発生し、ボルト9に引張荷重が作用する。油室23内に常に所定の油圧以上の油圧が作用した状態に保つために、油圧ポンプ3のハンドル先端に重り31を載せる。
【0030】
このような試験装置1は、ひとつの基板10上にコンパクトに配置されているので、持ち運びが容易である。また、電気的配線が不要なので、どのような場所にでも持ち運んで容易に使用することができる。
【0031】
尚、油圧計4は、油圧の値をそのまま表示するものでもよいし、油圧によりボルト9に作用する荷重に換算した値を表示する荷重計でもよい。
【0032】
上記の試験装置1を基本形として、以下に述べるように、市販されている簡単な器具やアタッチメント等を取り付けて、ボルトに関する各種特性を調べることができる。試験時には、随時ボルト等にかかる荷重や歪等のデータを記録し、グラフ化することにより、そのときの状態を把握し、理解を深めることができる。尚、本試験装置は、ボルトの特性に関する現象を理解するものであり、試験結果の精度は要求されない。すなわち、本試験装置の主たる使用目的は、教材として用いてねじの実務研修者にねじ特性の理論を理解させることである。そのためには、試験によりねじ特性の傾向が示されれば十分であって、必ずしも理論上の数値に正確に一致することは必要ではない。
【0033】
図2は、キャッチャ5,6の形状を示す。図2(A)は上部キャッチャであり、ボルト9の上側に蓋51を被せて用いる。蓋51の内側頂面に、樹脂等からなる衝撃吸収材52が設けられる。蓋51の外側には鎖53が取り付けられ、鎖53の他端が例えば試験機本体2(図1)に固定される。図2(B)は下部キャッチャであり、ボルト9の下側で、フランジ62を基板10の切欠部10aに係止して用いる。皿61の内側底面に、衝撃吸収材63が設けられる。このような上下各キャッチャ5,6は、殊にアルミ合金や鋳鉄等のように破断しやすいボルトの特性を調べる際に、破片を回収するために用いる。
【0034】
図3は、ボルト9を軸方向に引っ張る場合の軸力と歪の関係を知るための試験装置および結果である。
【0035】
図3(A)は装置の概要であり、前述の図1の試験装置1に加えて、ボルト9の歪量を測定するダイヤルゲージ13を取り付けたものである。試験時には、油圧ポンプ3で試験機本体2に加圧し、ボルト9に軸方向の引張力を与える。ダイヤルゲージ13の先端をボルト9の頭部に接触させて、下部をナット12(図1)に固定されたボルト9頭部の変位、すなわちボルト9の軸方向の歪を測定する。
【0036】
図3(B)は、油圧によってボルト9に作用する引張方向の軸力と、ボルト9の歪との関係を図示したものである。図3(B)においては、ボルト9にかかる軸力を降伏点の直前、即ち弾性限度内のA点まで付加して荷重がかかった載荷状態とし、その後軸力を解除して除荷する。A点は弾性限度内なので、除荷したときにボルトの歪が0に戻る。更に載荷と除荷を繰り返しても、弾性限度内であれば、軸力と歪の関係は1回目の載荷時と同様であり、グラフの実線上を矢印の方向に往復する。尚、このグラフの傾きがボルト9のばね定数である。
【0037】
図3(C)は(B)に続く段階の結果であり、ボルト9に塑性域まで引張力を加えた場合の軸力と歪の関係を図示したものである。
【0038】
図のA点までは(B)と同様に載荷し、ボルトの軸力が弾性限度のA点を超えて塑性域に達し、軸力がほとんど上がらなくなったB点で、載荷を止める。その後除荷すると、軸力が0になったときに、ダイヤルゲージ13の値が0ではなく、ε1の値を示し、永久歪ε1が残ったことがわかる。その後、再び載荷すると、一回目の載荷時の最大軸力であるB点までの間、グラフが直線状になり、弾性変形していることがわかる。即ち、新弾性限度がB点となり、一回目の弾性限度A点よりも軸力が上昇している。実際のボルト使用時、弾性限度を高くするために、このように一旦塑性域まで引張荷重を付加する場合がある。
【0039】
図4は、ボルト9を捻って締め付ける場合の軸力と歪の関係を知るための装置および結果である。
【0040】
図4(A)は装置の概要であり、ボルト9の頭部を回すレンチ14を用い、ボルト9頭部の軸方向の変位即ちボルト9の歪を測定するためにダイヤルゲージ13を設置する。
【0041】
図4(B)は、油圧ポンプ3による加圧を行わずにボルト9をレンチ14で捻って締め付けたときの軸力と歪の関係を図示したものである。レンチ14で捻って締め付けると、ボルト9のねじ面に摩擦が生じ、せん断応力が作用する。従って、図3のような単純引張時よりも低い軸力で降伏し、ボルト自体の能力の限界よりも小さい軸力のA点で弾性限度となる。また、ねじ面の摩擦係数によってせん断応力が異なるため降伏点が異なり、図中の破線で示すように、殊に降伏点以降の塑性域において軸力にばらつきが生じる。
【0042】
また、ねじりを伴って降伏点を超えて塑性域に入ったB点でボルトを逆方向に捻って除荷すると、永久歪ε1が残る。
【0043】
図4(C)は、(B)のB点までレンチ14で捻った後、更に油圧ポンプ3によってボルト9に軸方向の引張荷重を与えた場合の軸力と歪の関係を図示したものである。
【0044】
捻りによって一旦降伏したボルトに、捻りを加えずに単純引張荷重を載荷することによって、更に軸力が上昇する。引張荷重による降伏点を超えて塑性域に入るC点で載荷を止めて除荷すると、残留する永久歪はε1+ε2となる。その後、再度ボルトに引張力を加えると、C点まで弾性変形し、C点が新弾性限度となる。
【0045】
このように、捻って締め付けた後で引張方向の載荷を行うと、永久歪は大きくなるが、軸力に関しては、ボルトが本来有する元の性質が現れる。すなわち、捻りによって降伏点が低く現れても、ボルトの軸方向強度が弱くなるわけではない。この現象は、数式等で説明できることではなく、このような実演によってのみ理解することができる。
【0046】
図5は、ボルト9を捻って締め付ける場合の軸力とトルクとの関係を知るための装置および結果である。
【0047】
図5(A)は装置の概要であり、図1に示す基本の試験装置1のボルト9頭部にトルクレンチ15を取り付けたものである。このトルクレンチ15によってボルト9を締め付けるとともにトルク値を読み取り、油圧計4によりボルト9に作用する軸力を読み取る。この試験において、油圧ポンプ3による加力は行わない。
【0048】
図5(B)は測定結果を図示したものである。ボルト頭部やねじ部の摩擦力が異なると、同じトルクで締め付けても軸力が異なる。すなわち、潤滑油を介してボルト9を締めたときに比べて、潤滑油を使わず摩擦抵抗が大きい状態で締めたときには、同じトルクを加えても軸力が低くなることが、この測定により体感できる。
【0049】
トルク係数kは、
k=T/(F×d)
ただし、T:締め付けトルク
F:軸力
d:ねじの呼び径
で求められ、トルク係数を求めておくことにより、必要な軸力を得るための締め付けトルクがわかる。
【0050】
また、図5(A)の装置を用いて、ボルト9と座面板11及びナット12(図1参照)との摩擦係数を測定することができる。ボルト締付時のトルクTと軸力Fとの関係は、
T=(dp/2)×F×(μs/cosα)+(dp/2)×F×tanβ
+(dw/2)×F×μw
ただし、dp:ねじの有効径
α:ねじ山の半角
μs:ねじ面の摩擦係数
dw:座面の等価直径
β:ねじのリード角
μw:座面の摩擦係数
で求められ、以下の手順で座面の摩擦係数μwを求める。
【0051】
先ず、等価直径dwおよび摩擦係数μwがわかっているベアリングワッシャを座面板としてボルトを取り付け、トルクレンチでボルトを締め付けて、トルクTと軸力Fの関係を測定する。ねじの有効径dp、ねじ山の半角α、ねじのリード角βは、ボルト選定時に既知の数値なので、ねじ面の摩擦係数μsが上式により求められる。
【0052】
次に、ベアリングワッシャに代えて、正規に使用されるワッシャを用いて、同様にボルトを締め付けてトルクTと軸力Fとの関係を測定する。上記のベアリングワッシャでの測定により、ねじ面の摩擦係数μsが既知の数値となったので、上式により座面の摩擦係数μwが求められる。
【0053】
従って、実際の製品で使用するワッシャを用いてボルトを締め付けるときのトルクTと軸力Fとの関係式が求められ、ボルトを使用する製品において必要な軸力Fを得るためのトルクTがわかる。
【0054】
図6は、ボルト9のばね定数を測定するための装置および結果であり、図7は、被締付物であるカラー8のばね定数を測定するための装置および結果である。いずれも、載荷は弾性限度内である。
【0055】
図6(A)は図3(A)と同様であり、試験機本体2にボルト9の歪を測定するダイヤルゲージ13を取り付けたものである。油圧ポンプ3で加圧することによりボルト9に軸方向の引張力を与え、油圧計4より軸力を読み取る。ダイヤルゲージ13によりボルト9頭部の軸方向の変位、すなわちボルト9の歪を読み取る。
【0056】
図6(B)は、ボルトの軸力Fと伸び方向の歪との関係を図示したものである。軸力がFf時のA点の歪はλbであり、このボルト9のばね定数Kbは、
Kb=Ff/λb
で算出される。
【0057】
図7(A)は、円筒状のカラー8をボルト9の周囲に配置するとともに、カラー8の上下方向両端にプレート16a,16bを取り付け、上下のプレート16a,16bの間隔を測定するダイヤルゲージ13を設置したものである。油圧ポンプ3で加圧してボルト9に軸方向の引張力を与え、その際のダイヤルゲージ13の値から、カラー8の圧縮方向の歪を読み取る。
【0058】
図7(B)は、カラー8の圧縮力と歪との関係を図示したものである。ボルト9と反対の圧縮力が作用することから、基準の縦軸に対して、図6(B)とは左右反対方向に図示する。図6(B)の軸力Ffと同じ圧縮力Ffのときのカラー8の歪はλcである。従って、このカラー8(被締付物)のばね定数Kcは
Kc=Ff/λc
で算出される。
【0059】
図8は、ねじの締め付け状態を示す締付三角形と呼ばれる特性図を理解するための試験を行う装置であり、図8(A)は装置全体の概要、図8(B)はその装置で用いられる油圧ナット7の構成を示す。
【0060】
図8(A)に示すように、試験機本体2にボルト9の先端部を取り付け、ボルト9の周囲に円筒形のカラー8を配置する。カラー8の上端及び下端に、カラー8よりも大径のプレート16を水平方向に取り付ける。カラー8の下端に油圧ナット7を配設し、油圧ナット7の上方にスペーサ17を載置する。載荷前の初期状態では、スペーサ17の上端面とプレート16との間に僅かに隙間gをあけて、プレート16に力がかからないようにする。
【0061】
油圧ナット7は、図8(B)に示すように、円環状に連続し断面がコ字状のシリンダ71内をピストン72が上下方向に摺動可能に挿嵌され、ピストン72の上端とシリンダ71との間に油室73が形成される。ピストン72の上端面にはシーリング材74が装着され、油室73を油密に保持する。油室73は第二油圧ポンプ3bおよび第二油圧計4bに連結されて、第二油圧ポンプ3bから適宜オイルが供給され油室73を加圧し、第二油圧計4bにより油圧の値が表示される。(A)に示すように、油圧ナット7のピストン72の位置が固定されているので、油室73が加圧されると、シリンダ71が上昇し、スペーサ17を介してプレート16を上方に押す力がかかる。
【0062】
図9は、図8の装置を用いた試験状況および結果である。
【0063】
図9(A)(i)は、図8の油圧ポンプ3により、弾性域内でボルト9に引張荷重を載荷したときに作用する力の状態を示し、矢印はボルト9およびカラー8それぞれに作用する力の方向を示す。図9(A)(ii)は、(i)の状態から、更に図8の油圧ナット7によりプレート16を押し上げて外力Wを載荷し、歪εが生じた状態を示す。
【0064】
図9(B)は(A)(i)のときの軸力と歪の関係を図示したものであり、ボルト9に関しては左側の線、カラー8に関しては右側の線で図示している。すなわち、ボルト9のばね定数Kbは左側の線の傾きで表され、カラー8のばね定数Kcは右側の線の傾きで表される。軸力がFfに達するA点までボルトに引張荷重が載荷され、軸力Ff時に、ボルト9とカラー8は、それぞれ歪λb、歪λcを生じる。
【0065】
図9(C)は(A)(ii)の状態の軸力と歪の関係を図示したものである。外力Wは、(A)(i)で引張方向の内力が生じているボルト9の軸力を増加させるとともに、圧縮方向の内力が生じているカラー8の軸力を削減した状態で、全体に引張方向の歪εを生じる。従って、カラー8をボルト9で締め付ける際、軸力Ffが作用しているボルト9を更に外力Wで引っ張ると、ボルト9の軸力は(Ff+W)にはならず、外力Wのうちカラー8から削除される力の大きさ分だけ少ない軸力が増加して、つり合いが保たれる。
【0066】
これを式で表すと、外力Wによってボルト9に作用する軸力Ftおよびカラー8に作用する軸力Fcは、
Ft=Kb×ε
Fc=Kc×ε
ただし、Kb:ボルトのばね定数
Kc:カラーのばね定数
ε:外力Wによる歪
で表され、図9(A)(ii)の力のつり合いから、
(Ff−Fc)+W=(Ff+Ft)
となるので、
W=Ft+Fc=(Kb×ε)+(Kc×ε)
よって、
ε=W/(Kb+Kc)
従って、ボルトに作用する引張方向の軸力の増加分を示す軸力Ftは、
Ft=Kb×ε=W×Kb/(Kb+Kc)
となる。
【0067】
図10は、図9(A)(ii)の外力同士を比較するための説明図である。プレート16にかかる外力同士を比較すると、ボルト9側の外力は(Ff+Ft)であり、カラー8側の外力は(Ff−Fc)である。従って、力のつり合いから、
W+(Ff−Fc)=(Ff+Ft)
よって、
Ft+Fc=W
となる。
【0068】
図11および図12は、ボルト9およびカラー8等の各種パターンによる締付三角形の例を示し、図8の装置によって前述の図9と同様の試験を行い確認することができる。いずれも、初期載荷はボルト9の弾性範囲内とする。
【0069】
図11は、被締付物であるカラー8の材質や寸法によりばね定数が異なるパターンを示す。(A)〜(C)それぞれの(i)は試験体のパターンを示し、(ii)は(i)の結果を図示したものである。図11(A)はカラー8が鉄製の場合、図11(B)は(A)と同寸法のカラー8で材質がアルミの場合、図11(C)は(A)と同質のカラー8の断面寸法が大きい場合である。(A)を基本として、(B)はカラー8のばね定数が小さいために右側に図示される線の傾きが小さく、(C)はカラー8のばね定数が大きいために右側の線の傾きが大きくなる。
【0070】
図12(A)は、被締付物が、重ね合わせた板材8aの場合であり、ボルト9および板材8aのばね常数が極めて高い。図12(B)は、外力を2倍の2Wとしたものである。結果としてカラー8の上端とボルト9の座面との間に隙間が発生する。図12(C)は軸部が細く降伏点が低いボルト9に外力1.5Wを載荷する場合であり、ボルト9の降伏点が低いために塑性域まで引っ張られ、除荷したときに永久歪が残る。
【0071】
図13は、ボルト9を塑性域まで捻って締め付けた後に引張力を与える試験を示す。図13(A)は装置の概要、図13(B)は結果を図示したものである。この試験は、図8(A)の装置にレンチ14を加えて行われる。油圧ポンプ3による加力は行わない。
【0072】
先ず、レンチ14を用いてボルト9を捻り、弾性限度を超えて塑性域に達し、油圧計4の針の上昇が止まるB点まで締め付ける。このときの軸力がFfである。
【0073】
その後、第二油圧ポンプ3bを用いて油圧ナット7に加圧し、第二油圧計4bが外力Wを示すC点まで加圧する。このときのボルトの軸力が(Ff+Ft)となる。第二油圧ポンプ3bの圧力を解除すると、油圧計4が表示する軸力が(Ff−ΔF)となり、D点に達したところでつり合う。更に、このボルト9の捻りによる締付力を全て解除すると、永久歪が残る。
【0074】
図14は、外力Wの載荷位置をボルト9の軸方向に可変にするための装置である。外周に雄ねじが形成されたカラー8を用いて、その雄ねじに螺合するプレート16cをカラー8に螺合させることにより、プレート16cの高さを適宜調整する。カラー8の下端に、図8(B)と同様の油圧ナット7を配設し、所定位置における外力Wの加力を行う。尚、載荷前の初期状態では、油圧ナット7の上端面とプレート16cとの間に僅かに隙間gをあけて、プレート16cに力がかからないようにする
【0075】
図15は、外力Wの加力位置が異なる各試験体と結果を示す。
【0076】
試験方法は、先ず、油圧ポンプ3(図14)を用いて、油圧計4が軸力Ffを示すまで加圧する。この軸力Ffは、弾性変形の範囲内とする。次に、第二油圧ポンプ3bを用いて油圧ナット7に加圧し、各所定位置に設置した可動プレート16cを押し上げて、第二油圧計4bが外力Wを示すまで加力する。このとき、油圧計4が示す軸力は(Ff+Ft)となる。
【0077】
この試験により、ボルト軸力の増加分と外力との比である内力係数の、外力加力位置による修正係数を求めることができる。図15(A)は被締付物であるカラー8の上下端部を加力する場合、(B)はカラー8の下端と中央部を加力する場合、(C)はカラー8の下端を加力する場合である。
【0078】
内力係数φは、
φ=Ft/W
で求められる。また、ボルトの座面板11とプレート16cとの距離0のときのFtの値Ft1と距離hのときのFt2との比nは、
n=Ft2/Ft1
で求められ、これが内力係数の修正係数となる。
【0079】
図16は、ボルトを一定の回転角度で締め付ける回転角法の意味を理解するための試験を示す。図16(A)は、ボルトを捻って締め付ける場合の試験体の状況であり、図16(B)はその結果を図示したものである。
【0080】
ボルト9は(B)の左側の線のように、軸力Ffまで締め付けられ、ばね定数はKbである。このとき、ボルト9には伸張方向に歪λbが生じる。カラー8は、圧縮方向に軸力Ffで締め付けられ、ばね定数がKcで、圧縮方向に歪λcが生じる。このとき、ボルトの回転角θは、
θ=360°×(λb+λc)/P
ただし、P:ねじのピッチ
である。また、ボルト9、カラー8それぞれの歪λb,λcは、
λb=Ff/Kb
λc=Ff/Kc
なので、軸力Ffを得るための回転角を算出することができる。
【0081】
図17は、例えば鉄とアルミのボルト9f,9aについてトルクレンチ15でボルトを締め付けた場合、それぞれのトルクと回転角との関係を知るための試験状況および結果を示す。
【0082】
図17(A)は、ボルト9の取付位置周りの納まりを示す。図1に示す基本の試験装置1において、油室23のオイルを抜き、ピストン22にシリンダ21を着座させて試験する。これにより、ボルト9を締め付けても、ピストン22の上端部が変形しない。試験体は、例えばボルト9とカラー8の両方が鉄製のもの、ボルト9がアルミでカラー8が鉄のものの二種類について、トルクレンチ15を用いて、トルクTの力でボルト9を締め付ける。図17(B)は、トルクTをかけたときの各ボルト9f,9aの回転角がそれぞれθA,θBであることを示す。このように、鉄のボルト9fの回転角θAとアルミニウムのボルト9aの回転角θBは、
θB>2θA
となる。これは、それぞれの材質のばね係数Kが
K=E×(A/L)
ただし、E:ヤング率
A:断面積
L:長さ
で表されることによる。この試験により、ボルト9の材質ごとに、所定の締付力を得るための回転角が異なることを体感できる。
【0083】
図18および図19は、熱間耐面圧強度を調べるための装置である。アルミ合金やマグネシウム合金の座面およびねじ面の熱間耐面圧強度は公表値が少なく、それらを製品に使用する際には、測定により性能を把握しなければならない。図1の基本の試験装置1に簡単な機器を取り付けることにより、このような試験を行うことができる。
【0084】
試験機本体2上方の丸頭ボルトの周囲にヒータ34を取り付け、コントローラ35でヒータ34を所定温度に制御して座面板11を加熱する。更に、試験機本体2と油圧ポンプ3との接続管の途中から分岐して圧力調整器32(図18)が設けられる。また、油圧ポンプ3のアームに重り31を取り付け、油室23に常にオイルが充填された状態とする。油圧計4により、丸頭ボルト9bにかかる軸力を読み取る。
【0085】
図19は、図18の丸頭ボルト9b周りの拡大図である。例えば材質がアルミの座面板11の上からボルト9bを締め付ける。ヒータ34の内側には、例えば鉄からなる蓄熱体36が設けられ、ボルト9bおよび座面板11の周囲を覆う。ヒータ34の内側の温度は、熱電対37の先端を差し込んで測定する。試験機本体2側に熱が伝わらないように、ヒータ34と試験機本体2との間に、例えばベークライト等からなる断熱材18を挿嵌する。
【0086】
座面板11の嵌没量が大きい場合には、軸力が変動しないように、圧力調整器32を用いて圧力調整を行い、常に同じ圧力がかかりボルト9の軸力が一定になるようにする。圧力調整器32にも、圧力ポンプ3と同様、重り33が取り付けられる。
【0087】
尚、図19(B)に示すように、ボルト9bの頭部の径Dは座面板11の孔91の径dよりも大きくする。必要に応じてワッシャ等が取り付けられたりフランジ付きボルトを用いてもよい。座面板11の受圧面積Sは、
S=(π/4)×(D2−d2)
である。
【0088】
このようにして、例えば常温時と200℃の場合等、温度ごとの耐面圧強度を測定することができる。
【0089】
図20および図21は、熱間時のボルトクリープを測定するための装置である。弾性限界内で締め付けられているボルトでも、100℃〜150℃という比較的低い温度でクリープ変形することが知られており、その現象を確認することができる。
【0090】
ボルト9の周囲にカラー8が配設される。カラー8の周囲にヒータ34を設け、コントローラ35でヒータ34の温度を制御する。油圧ポンプ3のアームには重り31を取り付ける。試験機本体2と油圧ポンプ3との接続管の途中から分岐して圧力調整器32を設け、常に油室23に同じ圧力がかかるように制御する。更に、接続管から分岐して補助油圧ポンプ3aを設ける。ボルト9のクリープ量が大きく、油圧ポンプ3の1回のストロークでは油量が不足する場合に、補助油圧ポンプ3aを用いて送油する。
【0091】
図21は、図20のボルト9周りの拡大図である。ボルト9は、例えば銅のように熱が伝わりやすい材質のワッシャ19を介して取り付ける。ボルト9の上端部および下端部に、それぞれ熱電対37a,37bを差し込んで温度を測定する。ボルト9上部は、(B)に示すように、カラー8の一部に溝81を設け、ボルト9の軸部に熱電対37aの先端を差し込む。ボルト9下部は、ボルト9の先端に孔をあけて、熱電対37bの先端を差し込む。ヒータ34と試験機本体2との間、およびボルト9先端部とピストン21との間には、それぞれ断熱材18a,18bを取り付けて、試験機本体2に熱が伝わらないようにするとともに、ボルト9の熱を逃がさないようにする。断熱材18a,18bは、ボルト9の軸部周りに取り付けて、断熱材18bの先端側をナット12aで固定する。
【0092】
図22は、上記の装置により、SC材とSCM材のそれぞれのボルト9について測定した結果を図示したものである。一般鋼材の中でも、SC材とSCM材とでは、高応力時のクリープ量が大幅に異なり、SCM材はモリブデンの影響で、耐熱性が優れている。いずれも、塑性域に近づくと温度による永久歪が大きくなり、高温では降伏点や耐力が低下することが、本装置による試験で理解できる。
【0093】
尚、以上述べた各種特性試験は、ねじの特性を学習するために全て理解する必要があり、通常は順を追って理解するものであるが、順不同で試験したり、いずれかの試験だけを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ボルト等のねじの特性を理解するための教材および体験学習方法として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の基本の試験装置を示す図。
【図2】図1の上部キャッチャおよび下部キャッチャを示す縦断面図。
【図3】ねじの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図4】ねじの異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図5】ねじの更に異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図6】ボルトの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図7】カラーの特性を調べる装置および結果を示す図。
【図8】ねじの更に異なる特性を調べる装置を示す概略図。
【図9】図8の装置による試験体の状態および結果を示す図。
【図10】図9の特性の外力の状態および結果を示す図。
【図11】図8の装置による異なる試験体ごとの結果を示す図。
【図12】図8の装置による更に異なる試験体ごとの結果を示す図。
【図13】ねじの更に異なる特性を調べる装置および結果を示す図。
【図14】ねじの更に異なる特性を調べる装置を示す概略図。
【図15】図14の装置による異なる加力位置ごとの結果を示す図。
【図16】ねじの更に異なる特性を示す図。
【図17】ねじの更に異なる特性を調べる装置の一部および結果を示す図。
【図18】図1の試験装置を用いた応用例の装置を示す概略図。
【図19】図18の一部分を拡大した縦断面図。
【図20】図1の試験装置の異なる応用例の装置を示す概略図。
【図21】図20の一部分を拡大した図。
【図22】図20の装置による測定結果を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1:試験装置、2:試験機本体、3,3b:油圧ポンプ、3a:補助油圧ポンプ、4,4b:油圧計、5:上部キャッチャ、6:下部キャッチャ、7:油圧ナット、8、8b:カラー、8a:板材、9,9f,9a,9b:ボルト、10:基板、10a:切欠部、11:座面板、12,12a:ナット、13:ダイヤルゲージ、14:レンチ、15:トルクレンチ、16,16a,16b,16c:プレート、17:スペーサ、18,18a,18b:断熱材、19:ワッシャ、20:通孔、21:シリンダ、21a:ナット保持部、22:ピストン、22a:ボルト支持部、23:油室、24:スプリング、25:カバー、26:回り止め部材、27:Oリング、31,33:重り、32:圧力調整器、34:ヒータ、35:コントローラ、36:蓄熱体、37,37a,37b:熱電対、51:蓋、52,63:衝撃吸収材、53:鎖、61:皿、62:フランジ、71:シリンダ、72:ピストン、73:油室、74 シーリング材、81:溝、91:孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧発生手段と、試験用ねじに前記油圧発生手段からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段と、前記ねじに付与された荷重を表示する荷重表示手段とを同一の基板上に設けて持ち運び可能としたことを特徴とするねじの特性試験装置。
【請求項2】
試験時に前記ねじの取付位置の上方および下方に前記ねじが破断した際の破片を回収する上部キャッチャおよび下部キャッチャを備えたことを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項3】
温度調節手段を備えて前記ねじの温度を可変としたことを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項4】
前記荷重発生手段は、シリンダ(21)内を上下するピストン(22)からなり、前記ねじの上端部がピストン(22)に設けられたねじ支持部(22a)に支持され、該ねじ支持部(22a)に対向してシリンダ(21)にナットを保持するナット保持部(21a)が設けられ、前記ねじの下端部が前記ナットに螺合し、前記ピストン(22)の最下位置において、前記ねじ支持部(22a)の下端面がナット保持部(21a)の上端面に当接していることを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項5】
前記ねじの特性試験装置を用いて試験をしながらねじの締付特性理論を学習または教育するための教材として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のねじの特性試験装置。
【請求項6】
請求項1に記載のねじの特性試験装置を用いて、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を学習することを特徴とする体験学習方法。
【請求項7】
請求項1に記載のねじの特性試験装置を用いて、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を教育することを特徴とする実技教育方法。
【請求項1】
油圧発生手段と、試験用ねじに前記油圧発生手段からの油圧を増幅して付与する荷重発生手段と、前記ねじに付与された荷重を表示する荷重表示手段とを同一の基板上に設けて持ち運び可能としたことを特徴とするねじの特性試験装置。
【請求項2】
試験時に前記ねじの取付位置の上方および下方に前記ねじが破断した際の破片を回収する上部キャッチャおよび下部キャッチャを備えたことを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項3】
温度調節手段を備えて前記ねじの温度を可変としたことを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項4】
前記荷重発生手段は、シリンダ(21)内を上下するピストン(22)からなり、前記ねじの上端部がピストン(22)に設けられたねじ支持部(22a)に支持され、該ねじ支持部(22a)に対向してシリンダ(21)にナットを保持するナット保持部(21a)が設けられ、前記ねじの下端部が前記ナットに螺合し、前記ピストン(22)の最下位置において、前記ねじ支持部(22a)の下端面がナット保持部(21a)の上端面に当接していることを特徴とする請求項1に記載のねじの特性試験装置。
【請求項5】
前記ねじの特性試験装置を用いて試験をしながらねじの締付特性理論を学習または教育するための教材として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のねじの特性試験装置。
【請求項6】
請求項1に記載のねじの特性試験装置を用いて、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を学習することを特徴とする体験学習方法。
【請求項7】
請求項1に記載のねじの特性試験装置を用いて、試験により理論上のねじの締付特性図を再現させてねじの特性を教育することを特徴とする実技教育方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−343216(P2006−343216A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169186(P2005−169186)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503423856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503423856)
【Fターム(参考)】
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