説明

ねじれパターンを有するポリマーフィルム

本発明は、異なるねじれの領域のパターンを有するらせん状にねじれた構造の重合キラル液晶材料を含むポリマーフィルム、およびその液晶ディスプレイ、他の光学素子、部品または装置における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、異なるねじれを有する領域のパターンを有するらせん状にねじれた構造を有する重合キラル液晶材料を含むポリマーフィルムに関する。本発明はさらに、そのようなフィルムの製造方法、および液晶ディスプレイまたは他の光学素子、部品または装置へのその使用に関する。
【0002】
背景および従来技術
リタデーションフィルムは、液晶ディスプレイ中で直線偏光と環状偏光との間を切り替えるのに通常用いられる。文献では、反応性メソゲン(RM)としてもまた知られている重合液晶(LC)化合物の層が、リタデーション層を提供するために製造することができ、たとえば、RMS03001(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)は、平面ネマティックフィルムを提供するためのスピンコートおよび光重合が可能な、市場で入手できるRM溶液である。スピンコートの速度を変えることで、異なる厚さのフィルムを製造することができ、その結果半波長および4分の1波長リタデーションフィルムを製造することができる。
【0003】
非パターン化ねじれリタデーションフィルムは、これまでWO 02/73301に報告されている。たとえば、市場で入手できるRMS03001(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)などの重合可能なネマティックホストにキラルドーパントを添加することにより、たとえばGB 2330360およびWO 02/73301に開示されている配向キラルフィルムもまた良好に製造できる。製造されたキラルフィルムは、フィルムの厚み全体にわたってRM分子のらせん状配置を有する。RM層に導入されるらせんの方向は、使用したキラルドーパントのキラリティーの方向(左よりまたは右より)に依存する。このようにして、使用したドーパントに依存するらせんの左よりまたは右よりのねじれのいずれかを有するフィルムを製造することができる。RMフィルムにもたらされるキラリティーの程度(すなわち、フィルム全体に存在するらせんの回転数)は、添加されるドーパントの濃度およびキラルドーパントのHTPにもまた依存する。
【0004】
しかしながら、ディスプレイがさらに要求の厳しいものになるにつれ、たとえば携帯電話などに用いることができる、US 6,437,915およびUS 6,046,849に開示された、たとえば、切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)ディスプレイにおける視差バリア層のためのリタデーション層をパターン化可能にすることが急速に望まれている。
EP 1 295 929は、装飾またはセキュリティマーキングとして用いられる異なるねじれ方向を有する領域のパターンを示すパターン化ねじれフィルムを開示する。これらのフィルムは、対向するねじれ方向を有する2つのキラルドーパントを含む重合可能なキラルLC混合物の層から製造される。混合物の網状ねじれは、それぞれのドーパントのねじれ力および濃度によって与えられる。ドーパントの1つは、光異性化可能であり、光照射でねじれ力を変える。このようにして、パターン化フィルムを製造するために、網状ねじれは、光照射によって層の選択領域中で変えることができ、および熱または光重合によってねじれ構造が固定される。
【0005】
EP 1 295 929に開示されたコレステリックポリマーフィルムでは、らせんは、比較的短い可視光の波長の配列のピッチを有し、そのような異なる領域は、右よりまたは左より環状偏光可視光のいずれかを選択的に反射する。
しかしながら、たとえば、上述の2D/3Dディスプレイのような多くの用途では、可視光が遅延され、それによりTNまたはSTN型装置に適するリタデーション層、すなわち、ねじれA−プレートリターダー(retarder)を提供することが可能であるために、長いピッチのキラルらせんが、要求される。
WO 98/57223は、異なるねじれ方向(掌性)を持つ異なる領域を有するマルチドメイン液晶ディスプレイの製造のためのキラル光異性化可能な化合物の使用を開示する。しかし、被覆されたポリマーフィルムについて言及されていない。
WO 02/07330は、ねじれA−プレートリターダーの使用および利点について開示している。しかし、WO 02/07330のねじれA−プレートリターダーフィルムは、容易にパターン化することができず、たとえば、US 6,437,915およびUS 6,046,849で記載された2D/3Dディスプレイでの視差バリアなどで要求されるようなパターン化リタデーションフィルムを製造する簡便な方法を提供するものでない。
【0006】
Sharp Technical Journal Issue #74 1999で出版されている記事「シャープ研究所の3Dディスプレイハードウェアリサーチ:最新版(3D Display Hardware Research at Sharp Labs: an update)」では、US 6,437,914で報告されているような視差バリアとして用いるパターン化RMフィルムの製造方法について記載されている。しかしながら、この方法は、複雑であって、多くのステップを含むものである。たとえば:
1.ポリイミドを被覆、焼成する
2.90°でポリイミドを研磨する
3.フォトレジストでポリイミドを被覆する
4.フォトレジストを予め焼成する
5.フォトレジストを選択的に照射するためにフォトマスクを用いる
6.フォトレジストを生成する(照射領域からフォトレジストを洗う)
7.フォトレジストを焼成する
8.45°でさらされたポリイミドを研磨する
9.残存フォトレジストを除去する
10.ポリイミド上にRM層を被覆する
11.RM層を重合する
したがって、従来技術のフィルムおよび方法の欠点を有さない、改善されたパターン化リタデーションフィルムおよびその改善された製造方法が必要とされる。
【0007】
本発明の目的は、改善されたパターン化リタデーションフィルムおよびその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は以下の記載から専門家には、即座に明らかである。
本発明の発明者らは、本発明に記載されたリタデーションフィルムおよびその製造方法を提供することにより、とくにキラル重合液晶材料を含み、ねじれ(twisted)領域および非ねじれ(untwisted)領域のパターンまたは異なるねじれ角を有する領域のパターンを示す異方性フィルムによって、これらの目的が達成でき、上記問題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は、光パターン化可能なリタデーションフィルムを得るための光異性化可能なキラルドーパントを低濃度含む重合可能な液晶材料を用いる。そのようなフィルムは、たとえば以下のステップ:
1.ポリイミドを被覆、焼成するステップ
2.ポリイミドを研磨するステップ
3.ポリイミド上にRM層を被覆するステップ
4.フォトマスクを介してRM層を照射するステップ
5.RM層を重合するステップ
により、上述の従来技術の方法よりもはるかに少ないステップで製造できる。
キラルドーパントの低濃度の使用もまた、(はるかに高い濃度で使用されることが必要とされる)一連の新しい重合可能な液晶材料をとくにスケールアップする必要性もなく、広範囲の既存の重合可能な液晶ホスト材料を本発明のフィルムに容易に適用できるために望ましい。
【0009】
本発明の他の利点は、それぞれの領域が異なるねじれを有する、パターン化ねじれリタデーション層を製造することができることにある。このことにより、ねじれの程度に基づくのみで、異なる領域が光を遅延することができ、直線から環状の偏光へと変化させるかまたは遅延直線偏光として維持することができるリタデーションフィルムを構築することができる。
【0010】
発明の要約
本発明は、異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域のパターンおよび/または少なくとも1つのねじれ領域および少なくとも1つの非ねじれ領域のパターンを有する、重合キラル液晶(LC)材料を含むパターン化ポリマーフィルムに関する。
本発明は、さらに
−キラル材料中に所定のねじれ方向のらせん状ねじれをもたらし、異なるねじれ力を有する少なくとも2つの状態間を変換可能であり、ここでキラル化合物の変換は、光照射によってもたらされ得る、少なくとも1つの第1のキラル化合物、および
−キラル材料中に前記第1のキラル化合物とは反対のねじれ方向のらせん状ねじれをもたらし、前記第1のキラル化合物と同じ条件下で異なるねじれ力を有する2または3以上の状態間を変換可能でない、少なくとも1つの第2のキラル化合物、
を含む重合可能なキラルLC材料の層を提供すること、第1のキラル化合物のキラリティーの程度を変える光照射で層の選択された領域を照射すること、ならびに、前記選択された領域を重合することによる、本明細書に記載のポリマーフィルムの製造方法に関する。
【0011】
本発明は、さらに本明細書に記載のポリマーフィルムの、液晶ディスプレイまたは他の光学素子、部品または装置、とくに切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)ディスプレイにおける、補償板、リターダーあるいは偏光子としての使用に関する。
本発明は、さらに本明細書に記載のポリマーフィルムを含む、液晶ディスプレイ、光学素子、部品または装置、とくに2D/3Dディスプレイに関する。
【0012】
用語の定義
本出願において用いられている用語「フィルム」は、多かれ少なかれ顕著な機械的安定性および柔軟性を有する自己支持(self-supporting)フィルム、すなわち自立(free-standing)フィルムおよび支持基材(substrate)上または二つの基材間のコーティングまたは層を含む。
用語「液晶またはメソゲン材料」または「液晶またはメソゲン化合物」は、1種または2種以上の棒状、板状もしくは円板状のメソゲン基、すなわち液晶相挙動をもたらし得る基を含む材料または化合物を示すべきである。メソゲン基を含む化合物または材料は、必ずしもそれ自身液晶相を示さなければならないわけではない。他の化合物との混合物またはメソゲン化合物または材料またはそれの混合物を重合したときにのみ液晶相挙動を示してもまたよい。
【0013】
用語「らせん状ねじれ構造」は、1層または2層以上の液晶材料層を含むフィルムに関し、ここでは、メソゲンは分子副層(molecular sublayer)内で好ましい方向に主分子軸で配向し、異なる副層でのかかる好ましい配向方向は、らせん軸の周りにねじれたものであり、ここで、らせん軸は、実質的にフィルム面に垂直、すなわち実質的にフィルム法線に平行である。この定義は、フィルム面に対して75〜90°、好ましくは80〜90°、とくに好ましくは85〜90°および最も好ましくは、88〜90°のらせん軸の配向を含む。
用語「4分の1波長フィルム」または「QWF」は、異方性材料中を伝播する2つの直交直線偏光状態間でπ/2の位相差をもたらす光学フィルムを意味する。
用語「半波長フィルム」または「HWF」は、異方性材料中を伝播する2つの直交直線偏光状態間でπの位相差をもたらす光学フィルムを意味する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、ねじれまたは平面リタデーションフィルムのいずれかを得るために、キラルドーパントのらせん状ねじれ力(HTP)を制御できることを利用するものである。キラルドーパントのHTPは、LCホスト材料にねじれをもたらす能力を示すものであり、式(1)で表される。:
【数1】

式中、pは、第1の近似での分子らせんのピッチpであり、多くの実用的用途では十分なものであって、cは、液晶ホストにおけるキラルドーパントの濃度である。
【0015】
本発明のポリマーフィルムは、好ましくは、基材上に重合可能なキラルLC材料の薄い層を被覆し、分子らせんの軸が層の面に実質的に垂直に配向するように材料を配向させ、光照射によって層の選択された部分のキラリティーを変化させ、パターン化ポリマーフィルムを得るために重合によってキラル構造を固定することによって製造する。
重合可能なキラルLC材料は、異なるねじれ方向を有する少なくとも2つのキラル化合物を含む。第1のキラル化合物は、たとえば、所定の波長での光照射または所定の波長および強度での光照射で異性化することによりそのHTPが変化する、光異性化可能なキラル化合物である。第2のキラル化合物は、第1の化合物を同じ条件ではそのHTPは変化しない。たとえば、第2のキラル化合物は、光照射されたときそのHTPが全く変化しない、異性化可能でない化合物であってもよい。第2のキラル化合物は、第1のキラル化合物に用いられるのとは異なる波長および/または強度の光照射でHTPが変化する、光異性化可能なキラル化合物であってもよい。
【0016】
ここでは、重合可能なキラルLC材料の選択された部分での全ねじれ角の変化は、第1および第2のキラル化合物の量およびHTPを適切に選択することで得ることができる。たとえば、適するキラルLC材料は、光異性化可能なキラル化合物および異性化可能でないキラル化合物を含み、その1つは、左旋性であり、他は右旋性である。異性化可能な化合物は、たとえば、より大きな絶対的(absolute)HTPを有し、および/または異性化可能でない化合物と比較して過剰量に存在し、その結果、キラルLC材料の網状ねじれ方向は、第1のキラル化合物のねじれ方向と同じである。キラルLC材料の選択された部分の光照射で光異性化可能なキラル化合物は、異なるHTPを有する形態に変換され、たとえば、そのねじれ力は、キラル材料をより低いHTPキラル材料へと部分的または完全に変換することによって減少させることができるが、その一方で異性化可能でないキラル化合物のHTPは変化しない。その結果、キラルLC材料の選択された部分の網状ねじれ角は、非選択部分よりもずっと小さいものであるか、または、キラルLC材料の選択された領域の網状ねじれ角は、ゼロ、すなわち、これらの部分で材料は、非ねじれ構造を示す。
【0017】
可視波長の光を反射する高いねじれ角を有する本発明のパターン化ポリマーフィルムもまた製造することができる。高いが異なるねじれ角を有する領域のパターンを有するフィルムの場合、これらの領域は、異なる反射色を示す。このようなフィルムは、たとえばカラーフィルターとして用いることができる。
しかし、可視波長範囲よりも大きいピッチを有するフィルム、とくに1μmより大きいピッチを有するものがより好ましい。
重合可能なキラルLC材料の選択された部分での上述のようなキラリティの変化の後、材料はそのままLC材料の選択された部分またはその全体でキラル構造を永久に固定するために重合される。重合は、たとえば光重合または熱重合によって行われる。光重合が好ましい。とくに好ましいLC材料の重合は、前記第1のキラル化合物のキラリティを変化させたのと同様の光照射によって開始することである。
【0018】
本発明のパターン化リタデーションフィルムの好ましい製造方法は、以下のステップ:
1、基材に、好ましくはポリイミドを被覆および任意に焼成または硬化させることによって、配向材料の層を提供するステップ、
2、任意に、ポリイミドなどの配向材料を好ましい配向方向をもたらすために一定方向に研磨するステップ、
3、上記または下記の光重合可能なキラルLC材料の層を配向層に被覆するステップ、
4、フォトマスクで被覆されていない領域の異性化可能なキラルドーパントの光異性化をもたらすために、フォトマスクを介してLC材料を照射し、層中に異なるねじれを有する領域のパターンを作製するステップ、
5、ねじれパターンを永久に固定するためにLC層を重合するステップ、
を含む。
【0019】
本発明の他の好ましい態様では、酸素の存在下で重合しないかまたはゆっくりでのみ重合する重合可能なキラルLC材料から製造された異方性ポリマーフィルムに関する。この態様での適するキラルLC材料は、たとえば、酸素の存在下では反応しないまたは良好には反応しない、好適な光開始剤を選択することによって調製することができる。フィルムは、重合が、妨げられ、または阻害されるように、酸素の存在下で第1のキラル化合物のHTPを変化させる光照射で重合可能な材料の選択された領域を照射し、続けて、酸素の非存在下で選択された領域または材料全体を重合することで製造することができる。
この態様での重合可能なキラルLC材料の好ましい重合は、第1のキラル化合物の異性化よりも速く、光重合の間、重合されていない部分のLC材料のキラリティは、変化せず、または少なくとも実質的に変化しない。
【0020】
キラル材料において、たとえば、選択された領域で重合するために低い強度の照射を用い、そしてその後、材料全体を重合するためにより高い強度を用いることにより、、または、異性化および重合を開始する異なる波長を用いることにより、全く異性化することなく重合することもまた可能である。
この好ましい態様による異方性フィルムは、酸素の存在下、たとえば、空気雰囲気下で、基材へ重合可能なキラルLC材料を被覆し、塗膜の選択された領域を光線照射することによって製造することができる。これは、たとえばフォトマスクを介して照射することで達成する。または、精細に集束された照射源、たとえばレーザーなどによって、選択された領域を照射することができる。光照射は、上述のLC材料の選択領域でのキラリティの変化をもたらす一方で、非選択領域でのキラリティは変化しないままである。コーティング全体の重合は酸素の存在で妨げられる。その後、コーティング全体が、酸素の非存在下、選択領域および非選択領域でのキラル構造を固定化するためにたとえば、熱重合または光重合によって重合される。これは、たとえば、不活性ガス下で重合またはたとえばPETフィルムなどの酸素バリア層のコーティングで被覆することによって行われる。その結果、選択領域および非選択領域で異なるキラリティおよびねじれ角を有するパターン化フィルムが得られる。
【0021】
かわりに、この好ましい態様での異方性ポリマーフィルムは、酸素の存在下で以下のステップを含む方法によって得ることができる。
(A)酸素の存在下で重合せず、上述の第1および第2のキラル化合物を含む、光重合可能なキラルLC材料の層を提供するステップ、
(B)1)基材を有する層の選択された領域を被覆するステップ、および、第1のキラル化合物のねじれ力を変え、キラル重合可能材料の重合を開始させる光照射で層を照射するステップ、ここで、基材は、酸素バリア層の性質を有し、光照射に透過性であり、
2)ステップB1の手順を1または2回以上、前の段階ステップにおいて基材で被覆されていない層の少なくとも1つの領域について繰り返すステップ。
【0022】
ステップB1においてキラルLC材料は、光照射に透過性であり、重合を阻害し得る酸素を除く基材で被覆された層の領域でのみ重合される。重合は異性化よりも速いために、被覆された領域のキラル構造は、それが実質的に変化する前に永久に固定される。被覆されていない領域では、重合は、酸素の存在によって妨げられ、異性化およびそれによるキラリティの変化が起こり得る。ステップB2において予め被覆されていない部分での変化したキラル構造は、透過性の酸素バリア基材下で重合することによって固定される。
その結果、ステップB1での被覆領域および被覆されていない領域で異なるキラリティおよびねじれ角を有するパターン化フィルムが得られる。
【0023】
好ましくは、ステップB1での照射は、第1キラル化合物が非被覆領域で完全に異性化する十分に高い強度および/または十分に長い期間で行い、そのためキラリティの変化が完全となる。ステップB2では、予め被覆されていない領域のすべてが重合され、すなわち、ステップB2は1回のみ行われる。
しかし、たとえば、低い照射強度または短い照射時間によって非被覆領域でのキラリティがある程度だけ変化するようにステップB1の照射を行うこともまた可能である。最初のステップB2では、重合し変化した構造を固定するために、ステップB1で予め被覆されていない領域のいくらかでのみ酸素バリア基材を通して照射し、その間、まだ被覆されていない領域では第2のまたはさらなるステップB2において固定される、さらなる異性化が起こり得る。したがって、異なるねじれ角を有する2より大きい異なる領域を有するパターン化フィルムを製造することができる。
【0024】
酸素存在下で重合しない材料の上述のとくに好ましい態様のかわりに、空気中で重合する重合可能なキラルLC材料を用い、材料の選択された領域を異性化するために低い強度の照射および材料を重合するためにより高い強度の照射を行うこともまたできる。
本発明の異方性ポリマーフィルムの製造に用いられる重合可能なキラルLC材料は、好ましくは、キラルスメクチックまたはキラルネマチック液晶材料である。キラルネマチック液晶材料がとくに好ましい。
重合可能なキラルLC材料は、好ましくは有機溶媒に溶解または分散され、溶媒を蒸発中または蒸発後に重合または架橋する。
【0025】
ドーパントの量およびHTPは、異性化前の開始混合物が非ねじれ構造(すなわちラセミ)を有し、光異性化でねじれたものとなるように、または開始混合物がねじれ構造を有し、光異性化でラセミおよび非ねじれとなるように選択することができる。
本発明の他の好ましい態様は、異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域のパターンを有するパターン化フィルムに関する。
本発明の他の好ましい態様は、少なくとも1つのねじれ領域および少なくとも1つの非ねじれ領域のパターンを有するパターン化フィルムに関する。
本発明の他の好ましい態様は、被覆および重合時に4分の1波長または半波長リタデーションフィルムのいずれかを製造する最初のラセミ混合物に関する。かかる混合物は、左よりまたは右よりいずれかのねじれリタデーションフィルムを製造するように光異性化することができる。
【0026】
本発明の他の態様は、異なるねじれ領域のパターンおよび/またはねじれ領域および非ねじれ領域のパターンを有するパターン化フィルムに関し、ここで、ねじれは、フィルムが可視光を反射しないように、とくに、ねじれ領域でのらせんピッチが1μmよりも大きいものとなるように選択される。この層は、たとえば、従来技術で記載されているコレステリックフィルムのような可視光を反射しないリタデーションフィルムとして用いるのに有利であるが、たとえば、液晶ディスプレイ装置で生ずる位相シフトを補償するための可視光での位相シフトが生ずる。通常、そのようなリタデーションフィルムでのねじれ角は、0°よりも大きい〜360°の範囲である。低いねじれのみが要求されるためにコレステリックフィルムと比較してそのようなフィルムでは、少量のキラル化合物のみが必要とされる。
【0027】
本発明の特に好ましい態様は、
−少なくとも1つの0°のねじれ角の領域、および少なくとも1つの、0より大きい〜+270°または0より小さい〜−270°のねじれ角の領域
−少なくとも1つの0°のねじれ角の領域、および少なくとも1つの、0より大きい〜+180°または0より小さい〜−180°のねじれ角の領域
−少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの、0より大きい〜+90°または0より小さい〜−90°のねじれ角の領域
−0°ではない+90°〜−90°から選択される異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域
−少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの+90°〜−90°のねじれ角の領域
−少なくとも3つの0〜+90°または−90°〜0から選択されるねじれ角を有し、好ましくはそれぞれ少なくとも1つの±90°、±75°および±60°のねじれ角を有する領域を有し、好ましくはすべての領域が、同じねじれ角の標示を有するものである領域
を有するパターン化フィルムに関する。
【0028】
図1は、見本としておよび概略的に、0°のねじれを有する領域(2)とたとえば90°のねじれを有する領域(3)を含む、本発明の好ましい態様のパターン化フィルム(1)を示す。フィルムは、平面配向を有する、カラミチック(calamitic)一軸正複屈折重合LC材料を含み、ここでは、領域(2)のLC分子のメソゲンは、2重の矢印で示した方向にフィルム面に配向し、領域(3)では、90°のねじれ角でフィルム面に垂直のらせん軸のまわりをねじれたものである(一組の矢印で示す)。フィルム(1)を透過する、波長λの直線偏光の効果的なリタデーションは、偏光子(4)によって二重の矢印によって示された方向で直線偏光されたものであるが、非ねじれ領域(2)では0であり、領域(3)ではλ/2である。
【0029】
好ましくは、重合可能なキラルLC材料は、
−所定のねじれ方向を有し、光照射でHTPが変化する、少なくとも1つの第1のキラル化合物、および
−第1のキラル化合物とは反対のねじれ方向を有し、第1のキラル化合物のHTPが変化する光照射を行ったときにそのHTPが変化しない、少なくとも1つの第2のキラル化合物
を含み、さらに少なくとも1の重合可能な基を有する、少なくとも1つの重合可能な化合物を含む。
【0030】
重合可能な化合物は、第1および/または第2のキラル化合物であることもまたできる。かわりに、重合可能な化合物は、好ましくは液晶またはメソゲンであるさらなる重合可能な化合物である。
非常に好ましくは、重合可能なキラルLC材料は、
a1)所定のねじれ方向および光照射でそのキラリティが変化し、さらに重合可能および/またはメソゲンであってもよい、少なくとも1つの第1のキラル化合物、
a2)第1のキラル化合物とは反対のねじれ方向を有し、第1のキラル化合物のキラリティが変化する光照射を行ったときにそのキラリティが変化せず、さらに重合可能および/またはメソゲンであってもよい、少なくとも1つの第2のキラル化合物、
b)少なくとも1つの重合可能な基を含む、少なくとも1つの重合可能なメソゲン化合物、および
c)重合開始剤
を含む。
第1および第2のキラル化合物として用いられるとくに好ましい化合物は、高いらせん状ねじれ力(HTP)を有するものであり、その結果、材料中のキラル化合物の量を減少させることができる。
【0031】
光照射でそのキラリティが変化する本発明に用いることができるキラル化合物は、専門家に知られている。たとえば、好適で好ましい化合物は、これには限定されないが、光異性化、光誘起2+2付加環化、フォトフリーズアレンジメント(photo-fries arrangement)、または同等の光分解プロセスを含む反応による光照射でその構造または形が変化する感光性キラル化合物である。
とくに好適で好ましいものは、光照射でE−Zまたはシス−トランス異性化を示し、それによって異なるHTPを有する形態へと変化し、異なる量の液晶材料のピッチを割り出す光異性化可能なキラル化合物である。さらに好適で好ましいものは、キラル中心での光脱離または光開裂によってそのキラリティが破壊するために、光照射でキラルからアキラルまたはラセミ混合物へと変化する光分解または(光)可変キラル材料(TCM)である。
【0032】
たとえば、好適な光異性化可能なキラル材料は、P. van de Witte et al., Liq. Cryst. 24 (1998), 819-27, J. Mat. Chem. 9 (1999), 2087-94およびLiq. Cryst. 27 (2000), 929-33およびA. Bobrovski et al., Liq. Cryst. 25 (1998), 679-687に記載されているメントン、カンフル、ノピノン(nopinone)誘導体またはキラルスチルベンを含むものである。キラル中心に結合している光開裂可能なカルボン酸基または芳香族ケト基を含む好適なTCMは、US 5,668,614に記載されている。さらにF. Vicentini, J. ChoおよびL. Chien, Liq. Cryst. 24 (1998), 483-488は、TCMとしてのビナフトール誘導体およびそのマルチカラーコレステリックディスプレイにおける使用について記載している。
とくに好ましいのは、P. van de Witte et al., Liq. Cryst. 24 (1998), 819-27, J. Mat. Chem. 9 (1999), 2087-94およびLiq. Cryst. 27 (2000), 929-33およびA. Bobrovski et al., Liq. Cryst. 25 (1998), 679-687に記載されているメントン、カンフル、ノピノン誘導体またはキラルスチルベンを含む重合可能で光異性化可能なキラル材料である。
さらに、WO 02/40614に記載の重合可能で光異性化可能なキラル化合物が好ましい。
【0033】
重合可能なキラルLC材料は、さらに第1のキラルドーパントと同じ条件下でそのキラリティが変化しない第2のキラル化合物を含む。好ましくは、第2のキラル化合物は、異性化可能でない化合物である。それは重合可能または重合可能でなくてもよく、メソゲンまたは液晶であってもまたよい。
好適なキラルドーパントは、たとえば市場で入手可能なR-またはS-811、R-またはS-1011、R-またはS-2011、R-またはS-3011、R-またはS-4011、R-またはS-5011または CB 15 (Merck KGaA, Darmstadt, Germany)から選択することができる。とくに好ましくは、高いらせん状ねじれ力(HTP)を有するキラル化合物であり、とくにWO 98/00428に記載のソルビトール基を含む化合物、GB 2,328,207に記載のヒドロベンゾイン基を含む化合物、WO 02/94805に記載のキラルビナフチル誘導体、WO 02/34739に記載のキラルビナフトールアセタール誘導体、WO 02/06265に記載のキラルTADDOL誘導体および少なくとも1つのフッ素化結合基および末端または中心キラル基を有するWO 02/06196およびWO 02/06195に記載のキラル化合物を含む化合物である。
【0034】
とくに好適な重合可能であって異性化可能でないキラル化合物は、以下の記載から用いることができる。
キラル化合物に加え、重合可能なLC材料は、好ましくは少なくとも1つの重合可能な官能基を有する少なくとも1つのアキラルで重合可能なメソゲン化合物を含む。
好ましい態様では、重合可能なLC材料は、2または3以上の重合可能な官能基を有する少なくとも1つのキラルまたはアキラルで重合可能なメソゲン化合物(2または多反応性または2または多官能性化合物)を含む。そのような混合物の重合時、3次元ポリマーネットワークが形成され、それは、自己支持型であり高い機械的および熱的安定性および物理的および光学的特性の低い温度依存性を示す。多官能性メソゲンまたは非メソゲン化合物の濃度を変えることで、ポリマーフィルムの架橋密度およびそれによる物理的および化学的特性、とくに光学特性の温度依存性、熱的および機械的安定性および溶媒耐性を容易に調整することができる。
【0035】
本発明に用いられる重合可能なメソゲン1、2−および多反応性化合物は、それ自体公知で、たとえば、有機化学の標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Thieme-Verlag, Stuttgartに記載された方法により製造することができる。
重合可能なLC混合物に本発明の化合物とともにモノマーとしてまたはコモノマーとして用いることができる好適な重合可能なメソゲン化合物の例は、例えばWO93/22397、EP 0 261 712、DE 195 04 224、WO95/22586、WO97/00600およびGB 2 351 734に開示されている。しかし、これらの文献に開示されている化合物は、単なる例であって、本発明の範囲を限定しないものとみなすべきである。
【0036】
とくに有用なキラルおよびアキラルで重合可能なメソゲン化合物(反応性メソゲン)の例を下記のリストに示すが、これは例示にすぎず、限定を全く意図せずに本発明を説明するものである:
【化1】

【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

上記式において、Pは、重合可能な基であり、好ましくは、アクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オクセタンまたはスチリル基であり、xおよびyは、1〜12の同一または異なる整数であり、Aは、Lによって任意に1、2または3置換された1,4−フェニレンであり、または1,4−シクロヘキシレンであり、uおよびvは、それぞれ独立して0または1であり、Zは、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、Rは、極性基または非極性基であり、Terは、たとえば、メンチルなどのテルペノイド基であり、Cholは、コレステリル基であり、L、LおよびLは、それぞれ互いに独立してH、F、Cl、CNまたは任意にハロゲン化した1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり、rは、0、1、2、3または4である。上式におけるフェニル環は、任意に1、2、3または4個のL基で置換されている。
【0040】
これに関し、用語「極性基」は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、4個までの炭素原子を有する任意にフッ素化したアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基、あるいは、1〜4個の炭素原子を有する1−、オリゴ−またはポリ−フッ素化アルキルまたはアルコキシ基から選択された基を意味する。用語「非極性基」は、1または2以上の、好ましくは、1〜12個の炭素原子を有する任意にハロゲン化されたアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ基であり、「極性基」の上述の定義に含まれないものを意味する。
WO 02/40614に記載されたとくに好ましい重合可能で光異性化可能なキラル化合物は、以下の式の化合物である。
【化5】

式中、RおよびRは、互いに独立して上で定義したRまたはPであり、aおよびbは、0また1であり、Zは、Zであり、AおよびAは、互いに独立して上で定義したAである。
【0041】
重合可能なキラルLC材料の重合は、熱または化学線に暴露することにより達成される。化学線は、UV光、IR光もしくは可視光のような光による照射、X線もしくはガンマ線による照射または例えばイオンもしくは電子のような高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましくは、重合は光照射、とくに好ましくはUV照射によって行う。化学線の源として、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを用いることができる。大きいランプ出力を用いる際には、硬化時間を減少させることができる。光照射の他の可能な源は、レーザー、例えばUVレーザー、IRレーザーまたは可視レーザーである。重合に用いる光照射は、好ましくは、重合LC材料のキラルティを変えるのに用いるものと同じ波長、とくに好ましくは、同じ波長および強度のものである。
【0042】
重合は、化学線の波長において吸収を示す開始剤の存在下で行う。例えば、UV光により重合する際には、UV照射の下で分解されて重合反応を開始する遊離基またはイオンを生成することができる光開始剤を用いることができる。アクリレートまたはメタクリレート基を有する重合可能なメソゲンを硬化する際に、好ましくはラジカル光開始剤を用い、ビニルおよびエポキシド基を有する重合可能なメソゲンを硬化させる際に、好ましくは、陽イオン性光開始剤を用いる。また、加熱した際に分解して、重合を開始する遊離基またはイオンを生成する重合開始剤を用いることもできる。
ラジカル重合のための光開始剤として、例えば、市場で入手できるイルガキュア(Irgacure)(登録商標)651、イルガキュア(登録商標)184、ダロキュア(Darocure)(登録商標)1173またはダロキュア(登録商標)4205(全てCiba Geigy AGから)を用いることができ、また、陽イオン性光重合の場合には、市場で入手できるUVI6974(Union Carbide)を用いることができる。重合可能なLC材料は、重合開始剤を好ましくは0.01〜10%、極めて好ましくは0.05〜5%、とくに0.1〜3%含む。UV光開始剤が好ましく、とくにラジカル性UV光開始剤が好ましい。
光開始剤は、キラル材料が、上述のように酸素の存在下で重合しないまたは良好には重合しないようにまた選択することもできる。たとえば、空気中での重合が必要となるとき、イルガキュア(登録商標)907が好ましく用いられ、またイルガキュア(登録商標)369が空気中で良好には重合しない材料で用いられる。
【0043】
硬化時間は、とくに重合可能なメソゲン材料の反応性、コーティング層の厚さ、重合開始剤のタイプおよびUVランプの出力に依存する。本発明における硬化時間は、好ましくは10分未満であり、とくに好ましくは5分未満であり、極めてとくに好ましくは2分未満である。大量生産のためには、3分以下、極めて好ましくは1分以下、とくに30秒以下の短い硬化時間が好ましい。
本発明の重合可能な液晶混合物は、さらに、1種または2種以上の他の好適な成分、例えば触媒、増感剤、安定剤、連鎖移動剤、阻害剤、共反応単量体、界面活性化合物、平滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水剤(hydrophobing agent)、粘着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤(deaerator)、希釈剤、反応性希釈剤、助剤、着色剤、染料または顔料を含んでもよい。
【0044】
また、ポリマーの架橋を増大せしめるために、20%までの2または3以上の重合可能な官能基を有する非メソゲン化合物の重合可能なLC材料への添加を、2官能性または多官能性の重合可能なメソゲン化合物の代わりに、またはこれに加えて行い、ポリマーの架橋を増加させることも可能である。
2官能性非メソゲン単量体の典型例は、1〜20個のC原子を有するアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。2より多い重合可能な基を有する非メソゲン単量体の典型例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
他の好ましい態様において、重合可能な材料の混合物は、70%まで、好ましくは3〜50%の、1つの重合可能な官能基を有する非メソゲン化合物を含む。1官能性非メソゲン単量体の典型例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0045】
本発明の光学リタデーションフィルムは、従来のLCDのリタデーションまたは補償フィルムに用いることができ、特にDAP(配向層の変形)またはたとえば、ECB(電界制御複屈折)、CSH(カラースーパーホメオトロピック)、VANまたはVAC(垂直配向ネマチックまたはコレステリック)ディスプレイ、MVA(マルチドメイン垂直配向)またはPVA(パターン化垂直配向)ディスプレイなどのVA(垂直配向)方式、OCB(光学的補償ベンドセルまたは光学的補償複屈折)、R−OCB(反射OCB)、HAN(ハイブリッド配向ネマチック)またはパイセル(πセル)ディスプレイのようなベンドモードまたはハイブリッドタイプディスプレイのディスプレイさらにTN(ねじれネマチック)方式、HTN(高度ねじれネマチック)またはSTN(超ねじれネマチック)方式のディスプレイ、AMD−TN(アクティブマトリックスドライブTN)ディスプレイまたは「スーパーTFT」ディスプレイとしてもまた知られているIPS(インプレーンスイッチング)方式のディスプレイ、ISP(等方性スイッチングパネル)としても知られているたとえばWO 02/93244 A1に記載の光学的等方性相に液晶を用いたディスプレイ、US 6,437,915およびUS 6,046,849に開示された切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)ディスプレイ、CRT(ブラウン管)ディスプレイまたは有機発光ダイオード(OLED)などである。
特に好ましくは、TN、STN、VAおよびIPSディスプレイ、とくにアクティブマトリックスタイプ、さらに2D/3Dディスプレイである。
【0046】
本発明のフィルムは、上述以外の他の用途、たとえば、配向層、光学フィルターまたは偏光ビームスプリッタ、光導波または装飾用途またはセキュリティ用途に用いることもまたできる。
好ましい態様では、本発明のフィルムは、ディスプレイの切り替え可能なLCセルの外側でなく、通常ガラス基材であって、切り替え可能なLCセルを形成し、切り替え可能なLC媒体を含む基材間において、LCDの光学リタデーションフィルムとして用いる(セル内(incell)用途)。
光学リターダーが通常LCセルおよび偏光子間に置かれる従来のディスプレイと比較して、光学リタデーションフィルムのセル内用途は、いくらかの利点を有する。たとえば、光学フィルムが、LCセルを形成するガラス基材の外側に取りつけられているディスプレイは、通常、視差の問題を有し得るものであり、視野角適性を大きく害し得るものである。LCディスプレイセルの内側にリタデーションフィルムを形成すると、これらの視差の問題を減じ、または避けることすらできる。
【0047】
この態様のLCDは、好ましくは、以下のものを含む。
1)以下に記載の順序でセルの端から開始して中心へ至る、以下の素子
11)少なくとも1つが入射光に対して透過性である、互いに面並行な第1および第2の基材
12)LCセルの個々の画素を個々に切り替えるのに用いることができる、前記基材のうちの1つの上の非直線電気素子の配列であって、前記素子がトランジスタ、とくに好ましくはTFTなどの好ましくは能動素子である、前記配列、
13)前記基材のうちの1つの上、好ましくは非直線素子の配列を有するものと反対側の基材上に、提供されたカラーフィルター配列であって、前記カラーフィルターは任意に平坦化層で被覆されている、前記配列、
14)前記第1の基材の内側に提供された第1の電極層
15)前記第2の基材の内側に提供された任意の第2の電極層
16)前記第1および第2の電極上に提供された任意の第1および第2の配列層
17)電場を与えることで少なくとも2つの異なる状態間に切り替え可能であるLC媒体
を含む液晶(LC)セル、
2)LCセルの片側上の第1の直線偏光子
3)第1の直線偏光子の側とは反対側のLCセル側上の任意の第2の直線偏光子、および
4)本発明の少なくとも1つのパターン化光学リタデーションフィルムを含むLCDであって、前記パターン化光学リタデーションフィルム4)は、LCセルの第1および第2の基板間、好ましくは、カラーフィルターおよびLC媒体間、非常に好ましくは、カラーフィルターと前記電極層のうちの1つとの間、または平坦化層が存在する場合には、平坦化層と前記電極層のうちの1つとの間に位置することを特徴とする。
以下の例は、本発明を限定することなく例示するものである。前記および以下において、別に示されていない限り、すべての温度は、摂氏度で記載され、全てのパーセントは重量によるものである。
【0048】
例1
重合可能なネマチックLC混合物M1は、以下のように調製された。
【化6】

イルガキュア(登録商標)651は、光開始剤、イルガノックス(登録商標)1076は、安定剤であり、ともに市場で入手可能である(Ciba AG, Basel, Switzerland)。FC171(登録商標)は、非イオン性過フッ化炭素界面活性剤(3M Co.)である。
【0049】
混合物M1は、確実によく混合するために加熱し攪拌した。M1のサンプルは、74℃の透明温度(clearing temperature)が測定された。
M1は、ホスト混合物H1を形成するために、40%の濃度で、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に溶解した。このホスト混合物H1に異性化可能でないキラルドーパントDni0.1%および光異性化可能なキラルドーパントDi0.08%を添加した。
【化7】

【0050】
溶液は、2枚のガラス/研磨したポリイミド(JSR AL1054)スライド上でスピンコート(2000RPM)した。フィルムの1つは、コート後、即座に光重合し(20 mWcm-2,UV-a, 60s, N2)、他は、光重合(20 mWcm-2,UV-a, 60s, N2)前に光異性化(20 mWcm-2, 365nm, 30s, air)した。それぞれのフィルムの透過率は、交差延伸直線ヨウ素偏光子(延伸方向に対して45°でカットする)間で測定した。透過値は、Hitachi U2000分光光度計を用いて記録した。RMフィルムは、偏光子が同一の配向を維持している間、360°回転できる自家製の試料台上に取り付けた。図2は、RMフィルムが、交差偏光子間を360°で回転したときに得られる、RMフィルムの回転の関数としての透過データのプロットを示す。
図2のグラフ(a)に示されている生成された最初のフィルム(非異性化)の透過プロットは、最初のフィルムが平面の非ねじれリタデーション層であることを予測させる4つの極大部分を有することを示している。図2のグラフ(b)に示されている異性化フィルムのプロットは、フィルムが、らせん状にねじれたリタデーションフィルムに特徴的である、すべての角度においておおよそ同等の透過を有することを示している。
【0051】
例2
パターン化リタデーション層を例1の混合物を用いて生成した。溶液は、研磨したポリイミド/ガラススライド上でスピンコート(2000RPM、30s)し、UV光の透過を100%または0%のいずれかとするフォトマスクで異性化 (20 mWcm-2,365 nm, 60s,air) した。得られたフィルムを光重合した(20 mWcm-2,UV-a, 60s, N2)。交差偏光子を通してライトボックス上から見た写真を図3に示す。
図3は、フィルムが、パターン化した、ねじれ領域(異性化)および非ねじれ(非異性化)領域を有することを示す。示されているように、非異性化領域でのRM分子の配向に偏光子の方向を整列させることで、縞模様のリタデーションフィルムを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】非ねじれ領域(2)およびねじれ領域(3)を含み、偏光子(4)と組み合わせた本発明のポリマーフィルム(1)を概略的に示した図である。
【図2】例1に従って製造された異性化されていないポリマーフィルム(a)および異性化ポリマーフィルム(b)の回転角度に対する透過データであって、交差偏光子間を360°回転したものを示す図である、。
【図3】ライトボックスにおいて交差偏光子を通して見た、ねじれ領域および非ねじれ領域を含む例2のポリマーフィルムの写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合キラル液晶(LC)材料を含むパターン化ポリマーフィルムであって、異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域のパターンおよび/または少なくとも1つのねじれ領域および少なくとも1つの非ねじれ領域のパターンを有することを特徴とする、前記ポリマーフィルム。
【請求項2】
異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域のパターンを有することを特徴とする、請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
少なくとも1つのねじれ領域および少なくとも1つの非ねじれ領域のパターンを有することを特徴とする、前記ポリマーフィルム。
【請求項4】
最初は重合可能なラセミキラルLC材料から得られ、被覆および重合されるときには、4分の1波長または半波長のいずれかのリタデーションフィルムを生成し、左よりまたは右よりいずれかのねじれリタデーションフィルムを生成するように該材料を重合前に光異性化することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの、0より大きい〜+270°または0より小さい〜−270°のねじれ角の領域を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの、0より大きい〜+180°または0より小さい〜−180°のねじれ角の領域を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの、0より大きい〜+90°または0より小さい〜−90°のねじれ角の領域を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
0°ではない−90°〜+90°から選択される異なるねじれ角を有する少なくとも2つの領域を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
少なくとも1つの0°のねじれ角の領域および少なくとも1つの0°ではない−90°〜+90°から選択されるねじれ角の領域を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
少なくとも3つの0〜+90°または−90°〜0から選択される異なるねじれ角を有する領域を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項11】
−キラル材料中に所定のねじれ方向のらせん状ねじれをもたらし、異なるねじれ力を有する少なくとも2つの状態間を変換可能であり、ここでキラル化合物の変換は、光照射によってもたらされ得る、少なくとも1つの第1のキラル化合物、および
−キラル材料中に第1のキラル化合物とは反対のねじれ方向のらせん状ねじれをもたらし、第1のキラル化合物と同じ条件下で異なるねじれ力を有する2または3以上の状態間を変換可能でない、少なくとも1つの第2のキラル化合物、
を含む重合可能なキラルLC材料の層を提供し、第1のキラル化合物のキラリティーの程度を変える光照射で層の選択された領域を照射し、該選択された領域を重合することによって得られることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項12】
第1のキラル化合物が光異性化可能なキラル化合物であり、および、第2のキラル化合物が異性化可能でないキラル化合物であることを特徴とする、請求項11に記載のポリマーフィルム。
【請求項13】
キラルLC材料の重合を第1のキラル化合物のねじれ力を変える光照射によって開始することを特徴とする、請求項11または12に記載のポリマーフィルム。
【請求項14】
以下のステップ:
1、基材に配向材料の層を提供すること、
2、任意に配向材料を一定方向に研磨し、好ましい配向方向を作製すること、
3、上記または下記にの光重合可能なキラルLC材料の層を配向層に被覆すること、
4、フォトマスクで被覆されていない領域の異性化可能なキラルドーパントの光異性化をもたらすように、フォトマスクを通してLC層を照射し、層中に異なるねじれを有する領域のパターンを作製すること、
5、ねじれパターンを永久に固定するためにLC層を重合すること、
を含む工程によって得られることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項15】
重合可能なキラルLC材料の重合が酸素の存在下で妨害され、ここで、重合可能な材料の選択された領域を酸素の存在下で第1のキラル化合物のキラリティーを変える光照射により照射し、および、選択された領域または材料全体を酸素の非存在下で重合することを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項16】
重合可能な材料の選択された領域の照射が、フォトマスクを介して行われる、請求項15に記載のポリマーフィルム。
【請求項17】
重合可能な材料の選択された領域の照射が、精細に集束された放射線源によって行われる、請求項15に記載のポリマーフィルム。
【請求項18】
酸素の存在下で、以下のステップ:
A)酸素の存在下で重合せず、請求項11に記載の第1および第2のキラル化合物を含む、光重合可能なキラル液晶材料の層を提供するステップ、
B)1)基材を有する層の選択された領域を被覆するステップ、および第1のキラル化合物のねじれ力を変え、かつキラル重合可能材料の重合を開始させる光照射で層を照射するステップ、ここで、基材は、酸素バリア層の性質を有し、光照射に透過性であり、ならびに
2)ステップB1の手順を1または2回以上、前のステップにおいて基材で被覆されていない層の少なくとも1つの領域について繰り返すステップ、
を含む工程によって得ることができる、請求項11〜17のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項19】
少なくとも1つの他の領域とは異なるねじれ角を有する少なくとも1つの領域を含むねじれ構造を有するポリマーフィルムの製造方法であって、請求項11〜18のいずれかに記載のステップを行うことによる、前記製造方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載のポリマーフィルムの、液晶ディスプレイまたは他の光学素子、部品または装置における補償板、リターダーまたは偏光子としての使用。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれかに記載のフィルムの、LCDの光学リタデーションフィルムとしての使用であって、フィルムが切り替え可能なLCセルの基材間に位置するものであることを特徴とする、前記使用。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれかに記載のポリマーフィルムを含む、液晶ディスプレイ、光学素子、部品または装置。
【請求項23】
2つの面平行基材によって形成されるLCセル、ここで、前記2つの面平行基材の少なくとも1つは入射光に透過性であり、該2つの透過基材の少なくとも1つの内側に提供されかつ任意に上に配向層が置かれた電極層、および電場を与えることによって少なくとも2つの異なる状態間を切り替え可能な2つの基材間に存在するLC媒体を含むLCDであって、LCDがLCセルを形成する2つの面平行基材間に位置する、請求項1〜18のいずれかに記載のフィルムを少なくとも1つ含む、前記LCD。
【請求項24】
TN、STN、VA、IPS、ISPまたは2D/3Dディスプレイであることを特徴とする、請求項22または23に記載のLCD。
【請求項25】
1)以下に記載の順序でセルの端から開始して中心まで至る、以下の要素
11)少なくとも1つが入射光に対して透過性である、互いに面並行な第1および第2の基材、
12)LCセルの個々の画素を個々に切り替えるのに用いることができる、前記基材のうちの1つの上の非直線電気素子の配列であって、前記素子は、トランジスタ、とくに好ましくはTFTなどの好ましくは能動素子である、前記配列、
13)前記基材のうちの1つ、好ましくは非直線素子の配列を有するものと反対側の基材上に提供されたカラーフィルター配列であって、前記カラーフィルターは任意に平坦化層で被覆されている、前記フィルター配列、
14)前記第1の基材の内側に提供された第1の電極層、
15)前記第2の基材の内側に提供された任意の第2の電極層、
16)前記第1および第2の電極上に提供された任意の第1および第2の配向層、
17)電場を与えることで少なくとも2つの異なる状態間に切り替え可能であるLC媒体、
を含む液晶(LC)セル、
2)LCセルの片側上の第1の直線偏光子、
3)第1の直線偏光子の側とは反対のLCセル側上の任意の第2の直線偏光子、および
4)請求項1〜18のいずれかに記載の少なくとも1つの光学リタデーションフィルム、
を含むLCDであって、前記光学リタデーションフィルム4)は、カラーフィルターおよびLC媒体の間に位置することを特徴とする、前記LCD。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504484(P2007−504484A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524252(P2006−524252)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008478
【国際公開番号】WO2005/019379
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】