説明

ねじアップ式端子台およびねじ抜取治具

【課題】座金だけを容易に上から押えることができて、座金のねじ保持用穴からねじを素早く、容易かつ確実に抜き取る。
【解決手段】端子5のねじ用穴4からねじ2を回転離脱させた状態で端子5の広面に対して垂直方向にねじ2を座金3と共にアップするねじアップ式端子台1Aにおいて、ねじ2が座金3のねじ保持用穴4に挿抜自在に装着された状態で、圧縮ばね8の付勢力によりねじ2の平ワッシャ21を受けて保持可能とするねじ保持部63がねじアップ式端子台1Aのユニット6Aの天井部分64に設けられている。ドライバ101の先端部分を、この天井部64の切り欠き部65Aを通して、座金3のL字状部35上を押圧することにより、座金3だけを上から押える。浮き上がったねじ2をラジオペンチで摘んで、座金3のねじ保持用穴4からねじ2を抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられる配線中継および分岐装置としての端子台において、ねじを締結して端子を介して配線を連結するときに、端子のねじ穴からねじを回転離脱させた状態で端子面に対して垂直方向にねじを座金と共に移動(アップ)させることにより、ねじ締結作業を素早く、容易かつ確実に行うねじアップ式端子台および、ねじアップ式端子台のねじボケなどねじ交換時に用いるねじ抜取治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のねじアップ式端子台は、図11〜図17に示すように特許文献1に開示されている。
【0003】
図11は、特許文献1に開示されている従来のねじアップ式端子台の要部構成例を示す正面図、図12は、図11のねじアップ式端子台を斜め上から見た場合の斜視図、図13は、図11のねじアップ式端子台を斜め下から見た場合の斜視図である。
【0004】
図11〜図13において、従来のねじアップ式端子台1は、ねじ首にワッシャ手段としてのスパックおよび平ワッシャ21が嵌め込まれて成形された鍋ねじなどのねじ2と、ねじ2の首部を外嵌して頭部を保持可能なねじ保持用穴を持つL字状の座金3と、短冊状の金属製帯材の一方端部に締結用のねじ用穴4を持つ端子5と、この端子5を保持すると共に端子5に対して垂直方向にねじ2を座金3と共に移動(アップ・ダウン)自在にガイドする絶縁部材からなるユニット6と、端子5のねじ用穴4下のユニット6の六角穴内に収容され、ねじ2がねじ用穴4を通して螺合可能とするナット7と、L字状の座金3の背部に設けられた突起部分に一端が挿入されて、ねじ用穴4から離間する方向(端子5の広面に対して垂直方向)に、座金3を付勢する圧縮ばね8とを有している。
【0005】
ねじ2は、ねじ首にスパック(Sワッシャ)および平ワッシャ21が嵌め込まれた後にねじ成形されているので、スパックおよび平ワッシャ21はねじ本体から脱落することはない。この場合、スパックの外径よりも平ワッシャ21の外径の方が大きい。
【0006】
座金3は、図14〜図16に示すように、ねじ保持用穴を有する四角形状の座金部材31と、この座金部材31の一辺部分にL字状に連設する支持部材32とから構成されている。この支持部材32は、端子5の広面に対して垂直方向に配置され、支持部材32の連設部分近傍の幅方向中央部分が切り起こされて、先端部分が端子5側に向けられたL字状突起部33が形成されている。このL字状突起部33の先端部分には圧縮ばね8が取り付けられる。これにより、中間組み立て品である座金およびばね付きねじ(図14参照)が構成される。この場合、支持部材32からL字状突起部33が切り起こされているが、この切り起こされた部分の溝幅が圧縮ばね8のばね外径よりも細い溝幅となっており、かつ、圧縮ばね8の配設方向に金型を抜くように構成されている。これによって、図17に示すように、L字状突起部33にその先端部分ほど細くなるようにテーパができて先細形状となっており、ばね圧縮時の圧縮ばね8の安定性を確保すると共に、L字状突起部33(一段折れ曲がった構造)を圧縮ばね8の内径に挿入する際にも圧縮ばね8がL字状突起部33に引っ掛かり難い。また、ばね伸長時にも、構成するユニット6の所定位置(例えば凹部)内に組み付けることにより、圧縮ばね8が円柱状または角柱状に囲まれて、圧縮ばね8の位置の安定性が確保される。なお、ねじ2と座金3とはカシメずに、ねじ2の先端部分から座金3のねじ保持穴に通してねじ2の頭部を座金3のねじ保持用穴で保持しているだけである。即ち、ねじ2と座金3が分離可能な構造(ねじ2が座金3にカシメられていない構造)である。
【0007】
ユニット6は複数個その厚み方向に連結され、隣接するユニット6との絶縁のために縦方向に面構造を持つ壁部材61と、前述したねじ2、座金3、端子5、ナット7および圧縮ばね8を収容するために壁部材61から立設されたリブ部材62とを有している。
【0008】
また、ユニット6は、圧縮ばね8の付勢力によりねじ2を座金3と共に保持するねじ保持部63を有している。このねじ保持部63は、ねじ2がねじアップされるユニット6の天井部に設けられており、ねじ2の鍋状頭部をユニット6の天井部の穴で逃がして平ワッシャ21の外周縁部をばね付勢に抗して固定するためのリブを設けている。
【0009】
圧縮ばね8は、座金3の背後に配設されてばね長が取れるのでばね外径を小さくできることから、ばね部分のスペースを小さくでき、ばね外径は小さいがターン数が多く取れるので、ばねのへたりを少なくできる。
【0010】
上記構成により、定期的なメンテナンス時などに、まず、ねじ2をドライバーで回転させて緩めると、ねじ2の先端が端子5のねじ用穴4から離脱し、圧縮ばね8の付勢力によりねじ2が座金3と共に端子5の広面に対して垂直方向に移動(アップ)する。このとき、ねじ2の鍋状頭部はユニット6の天井部の穴で逃がされ、平ワッシャ21の外周縁部がねじ保持部63により圧縮ばね8の付勢力に抗して固定される。この状態で、ねじ2のねじ本体が座金3および平ワッシャ21から抜けて脱落することはない。
【0011】
次に、ねじ2の足先端部と端子5のねじ用穴4との間隙内に、電線が圧着された圧着端子を挿入した後に、ねじ2の鍋状頭部をドライバーの先端で押さえてねじ2と共に座金3を圧縮ばね8の付勢力に抗して下降させ、圧着端子の穴内にねじ2の足先端を通してねじ用穴4下のナット7に対して締め付けて圧着端子を端子5と座金3とで挟み込む。これにより、端子5と電線とが電気的に連結される。
【0012】
ここで、ねじ2が座金3と共に端子5の広面に対してアップした状態で、図18のように、ユニット6および端子5に対してねじ2を座金3と共に降ろして傾ければ、座金3のねじ保持用穴からねじ2を抜き取ることができる。ねじ2がぼけた場合のねじ交換などに有効である。
【0013】
また、両方の端子5はそれぞれ、2枚の帯材から構成されており、一方の帯材はねじ用穴4が形成された側とは反対側が互いに接触することにより電気的に連結されるようになっているが、挿入口10aから絶縁棒を挿入することによりその接触部を電気的に遮断させることもできる。この遮断時に、挿入口10bから導電棒を挿入することによりその導電棒と一方の端子5の他方の帯材とを電気的に接続することができ、また、挿入口10cから導電棒を挿入することによりその導電棒と他方の端子5の他方の帯材とを電気的に接続することができる。
【特許文献1】特開2004−011237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のねじアップ式端子台1では、ねじ2の鍋状頭部をユニット6の天井部の穴で逃がして平ワッシャ21の外周縁部をユニット6のリブで受けているが、ねじ2が座金3と共に端子5の広面に対してアップした状態で、図18のように、ユニット6および端子5に対してねじ2を押して下方に移動させつつ座金3と共に傾けて、座金3のねじ保持用穴からねじ2を抜き取る場合、座金3だけを上から押すのが難しく、実際には、ねじ2の抜き取り作業は容易なものではない。特に、狭い場所でのねじ2の抜き取り作業中にねじ2を電圧印加部分に落としたままにすると起動時にショートして事故が起こってしまう。
【0015】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、座金だけを容易に上から押えることができて、座金のねじ保持用穴からねじを素早く、容易かつ確実に抜き取ることができるねじアップ式端子台およびこれに用いるねじ抜取治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のねじアップ式端子台は、ねじを回転させて端子のねじ用穴からねじ先端部を離脱させたときに、座金に一端が取り付けられたばねの付勢力により該ねじが該座金と共にアップするねじアップ式端子台において、該ねじが該座金のねじ保持用穴に挿抜自在に装着された状態で、該ばねの付勢力により、該ねじの首部に装着されたワッシャ手段および、該ねじの頭部のうち少なくともいずれかを受けて保持可能とするねじ保持部が設けられ、該ねじ保持部は、該座金および該ねじ、該端子をそれぞれ保持する絶縁部材からなるユニットに設けられ、該ユニットに、工具または治具を通して該座金を押圧するための座金押圧用穴が設けられたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0017】
また、好ましくは、本発明のねじアップ式端子台におけるねじ保持部は、前記ねじの頭部および/または前記ワッシャ手段を受けて保持可能な丸穴または一部丸穴の一部または全部で構成されており、前記座金押圧用穴は、該丸穴または該一部丸穴側に開放した切り欠き部で構成されている。
【0018】
さらに、好ましくは、本発明のねじアップ式端子台におけるねじ保持部は、前記ばねの付勢力により更に前記座金を受けて保持可能とする。
【0019】
さらに、好ましくは、本発明のねじアップ式端子台におけるねじ保持部は前記ユニットの天井部に形成されており、該天井部に前記座金押圧用穴が形成されている。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明のねじアップ式端子台における座金は、前記ねじ保持用穴を有する座金部材と、該座金部材にL字状に連設された支持部材とを有し、該支持部材に前記ばねが取り付けられており、前記座金押圧用穴は、工具または治具を通して該座金のL字状部上に押圧可能とする位置に対応して設けられている。
【0021】
本発明のねじ抜取治具は、本発明の上記ねじアップ式端子台において、前記座金押圧用穴を通して前記座金をその先端部で上方から押圧可能とする押さえ用工具または押さえ治具と、該押さえ用工具または該押さえ治具で該座金だけを押さえた状態で前記ねじの首下部を挟んで保持可能とするねじ保持用工具またはねじ保持治具とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0022】
また、本発明のねじ抜取治具は、ねじを回転させて端子のねじ用穴からねじ先端部を離脱させたときに、座金に一端が取り付けられたばねの付勢力により該ねじが該座金と共にアップするねじアップ式端子台において、該ねじが該座金のねじ保持用穴に挿抜自在に装着された状態で、該ばねの付勢力により、該ねじの首部に装着されたワッシャ手段および、該ねじの頭部のうち少なくともいずれかを受けて保持可能とするねじ保持部が設けられており、該ねじおよび該ワッシャ手段を避けて該座金だけを上方から押圧可能とする押さえ用工具または押さえ治具と、該押さえ用工具または該押さえ治具で該座金だけを押さえた状態で該ねじの首下部を挟んで保持可能とするねじ保持用工具またはねじ保持治具とを有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明のねじ抜取治具におけるねじ保持治具は、板体の先端部が前記ねじの首下部を挟んで保持可能とする円形状部に形成されており、該円形状部を二つ割状態にして、ばね性をもって互いに接近または離間可能とするスリットが形成されて両側から該二つ割の各一部円形状部で、該ねじの首下部を挟み込んで保持可能とする。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明のねじ抜取治具における円形状部は、前記ねじの首下部を挿入し易いように、前記スリットに対向した先端部分が開口しており、該円形状部の開口部を該ねじの首下部に差し込んで、前記円形状部の内面で該ねじの首下部を挟んで保持可能とする。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明のねじ抜取治具における円形状部の内面には、前記ねじ脱落防止用の段部が一または複数形成されている。
【0026】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0027】
本発明においては、ねじが該座金のねじ保持用穴に挿抜自在に装着された状態で、ばねの付勢力により、ねじの首部に装着されたワッシャ手段および、ねじの頭部のうち少なくともいずれかを受けて保持可能とするねじ保持部が設けられ、このねじ保持部または、座金およびねじ、端子をそれぞれ保持する絶縁部材からなるユニットに、工具または治具を通して座金を押圧するための座金押圧用穴が設けられている。このねじ保持部は、座金およびねじ、端子をそれぞれ保持する絶縁部材からなるユニットに設けられている。
【0028】
この座金押圧用穴に工具または治具を通して、工具または治具の先端部で座金だけを容易に上から素早く容易かつ正確に押えることが可能となって、座金のねじ保持用穴からねじを素早く容易かつ正確に抜き取ることが可能となる。
【0029】
また、ねじおよびワッシャ手段を避けて座金だけを押さえ用工具または押さえ治具で上方から押圧可能とし、押さえ用工具または押さえ治具で座金だけを押さえた状態で、ねじ保持用工具またはねじ保持治具によりねじの首下部を挟んで保持することにより、座金のねじ保持用穴からねじを素早く容易かつ正確に抜き取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上により、本発明によれば、押さえ用工具または押さえ治具を用いて座金だけを素早く容易かつ正確に上から押えることができて、座金のねじ保持用穴からねじを素早く容易かつ正確に抜き取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明のねじアップ式端子台およびこれに用いるねじ抜取治具の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るねじアップ式端子台の要部構成例を斜め上から見た場合の斜視図である。なお、図11〜図13の従来のねじアップ式端子台の構成部材と同様の作用効果を奏する各構成部材には同様の部材番号を付して説明する。
【0033】
図1において、本実施形態のねじアップ式端子台1Aは、ねじ首にワッシャ手段としてのスパックおよび平ワッシャ21が嵌め込まれて成形された鍋ねじなどのねじ2と、ねじ2の首部を外嵌して頭部を保持可能なねじ保持用穴を持つL字状の座金3と、短冊状の金属製帯材の少なくとも一方端部(端子5が長方形であれば端子両端部にねじ用穴4が設けられるが、ここでは一方端部のみにねじ用穴4が設けられる場合である)に締結用のねじ用穴4を持つ端子5と、この端子5を保持すると共に端子5に対して垂直方向にねじ2を座金3と共に移動(アップ・ダウン)自在にガイドする樹脂製の絶縁部材からなるユニット6Aと、端子5のねじ用穴4下のユニット6Aの六角穴内に収容され、ねじ2がねじ用穴4を通して螺合可能とするナット7と、L字状の座金3の背部に設けられた突起部分に一端が挿入されて、ねじ用穴4から離間する方向(端子5の広面に対して垂直方向)に、座金3を付勢する圧縮ばね8(図11に図示しており、図1では図示せず)とを有している。この構成については、図11の従来のねじアップ式端子台1の構成と略同様の構成であるが、構成が異なるのは、ユニット6Aとして、座金部材31の一辺部分に支持部材32に連設するL字状部35上を、上方から、後述するドライバーなどの工具やねじ抜取治具の押さえ治具の先端部(図示せず)で押圧するための切り欠き部65Aが形成されていることである。
【0034】
ユニット6Aは、複数個その厚み方向に連結され、隣接するユニット6Aとの絶縁のために縦方向に面構造を持つ壁部材61と、前述したねじ2、座金3、端子5、ナット7および圧縮ばね8(図10に図示しており、図1では図示せず)を収容するために壁部材61から立設されたリブ部材62とを有している。
【0035】
また、ユニット6Aは、圧縮ばね8(図1では図示せず)の付勢力によりねじ2を座金3と共に保持するねじ保持部63を有している。このねじ保持部63は、ユニット6Aの天井部64に下方に突出するように設けられており、ねじ2の鍋状頭部をユニット6Aの天井部64の穴64Aで逃がして平ワッシャ21の外周縁部をばね付勢力に抗して固定するためのリブとして設けている。さらに、前述したように、ユニット6Aの中央上面が記号板(図示せず)を載置するための平坦部66になっている天井部64の奥行き方向の中央部分に、後述するドライバーなどの工具やねじ抜取治具の押さえ治具の先端部分(断面矩形、正方形または円形)を通して座金部材31を押圧するための矩形状または一部円形状の切り欠き部65Aが穴64A側に開放するように形成されている。即ち、ねじ保持部63は、ねじ2の頭部および/または平ワッシャ21を受けて保持可能な穴64A(例えば丸穴)の一部または全部で構成されており、座金押圧用穴として、この丸穴(または一部丸穴)側に開放した切り欠き部65Aで構成されている。
【0036】
上記構成により、ねじ2が座金3と共に端子5の広面に対してアップした状態から、図2(a)のように、ドライバ101の先端部分をユニット6Aの天井部64の切り欠き部65Aを通して、座金3のL字状部35上を押圧することにより、座金3をねじ2と共に端子5の位置まで押し下げる。このとき、図2(a)に示すようにねじ2の首下は座金3から浮き上がる。ねじ2の首下の足部分をラジオペンチ102(ピンセットでもよい)にて摘んで、図2(b)のように、ねじ2をユニット空間内で上方に一旦持ち上げてねじ2の足先端部分を座金3から外して、図2(c)のように、ラジオペンチ102にてねじ2の足先端部分から外側に取り除く。
【0037】
このようにして、座金3だけをドライバ101の先端部分で容易に上から押えて、座金3のねじ保持用穴4からねじ2を素早く、容易かつ確実に抜き取ることができる。これによって、ねじ2がぼけた場合などのねじ交換時に、各ユニット6Aをレールからばらばらに取り外したり、ねじ2を他のショートの危険性がある電圧印加部分に落として事故を起こすなどの虞がより解消される。
【0038】
このように、図2(d)に示すようにねじ2の足先端部分側からユニット6Aの外側に取り除くことができるが、これに限らず、図2(e)に示すようにねじ2の頭部側からユニット6Aの外側に取り除くこともできる。
【0039】
以上により、本実施形態によれば、端子5のねじ用穴4からねじ2を回転離脱させた状態で端子5の広面に対して垂直方向にねじ2を座金3と共にアップするねじアップ式端子台1Aにおいて、ねじ2が座金3のねじ保持用穴4に挿抜自在に装着された状態で、圧縮ばね8の付勢力によりねじ2の平ワッシャ21を受けて保持可能とするねじ保持部63がねじアップ式端子台1Aのユニット6Aの天井部分64に設けられている。ドライバ101の先端部分を、ユニット6Aの天井部64の切り欠き部65Aを通して、座金3のL字状部35上を押圧することにより、座金3だけを素早く、容易かつ確実に上から押えることができて、浮き上がったねじ2をラジオペンチやピンセットなどで摘んで、座金3のねじ保持用穴4からねじ2を落とすことなく、素早く、容易かつ確実に抜き取ることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、ドライバ101の先端部分を切り欠き部65Aを通して座金3だけを押えて、浮き上がったねじ2をラジオペンチやピンセットなどで挟んで抜き取る場合について説明したが、これに限らず、図3に示すような長尺の断面円形(または断面矩形または正方形)の先端部分を持つ押さえ治具103を用い、押さえ治具103の断面円形の先端部分を切り欠き部65Aを通して座金3だけを押えて、浮き上がったねじ2を図3に示すようなねじ保持治具104で挟んでユニット6Aの外側に抜き取ることができる。即ち、ねじ抜取治具は、座金押圧用穴としての切り欠き部65Aを通して座金3をその先端部で上方から押圧可能とする押さえ用工具または押さえ治具と、この押さえ用工具または押さえ治具で座金3だけを押さえた状態でねじ2の首下部を挟んで保持可能とするねじ保持用工具またはねじ保持治具とを有している。
【0041】
このねじ保持治具104としては、板体の先端部がねじ2の足部分を挟んで保持可能とする円形状部104aに形成されており、長手方向中央部にばね性を得るためのスリット104bが形成されてピンセットのように両側から円形状部104aで、ねじ2の断面円形首下部分に挟み込んで保持することができるようになっている。この円形状部104aは、断面円形首下部分に挿入し易いように先端部分で開口しており、この円形状部104aの開口部をねじ2の首下足部分に差し込んで、円形状部104aの内面でねじ2を摘んで保持する。この場合、円形状部104aの内面は、ねじ2が脱落し難いように段部が設けられている。
【0042】
ここで、ねじ2の抜き取り作業をさらに説明する。まず、ねじ2が座金3と共に端子5の広面に対してアップした状態から、押さえ治具103の先端部分を、図4(a)のように、ユニット6Aの天井部64の切り欠き部65Aを通して、座金3のL字状部35上を押圧することにより、座金3をねじ2と共に端子5の位置まで押し下げる。このとき、図4(a)に示すようにねじ2の首下は座金3から浮き上がる。ねじ2の首下の足部分に、ねじ保持治具104の先端開口部を差し込んで、円形状部104aの内面でねじ2を摘む。次に、図4(b)のように、ねじ2をユニット空間内で上方に一旦持ち上げてねじ2の足先端部分を座金3のねじ保持用穴4から外す。さらに、図4(c)のように、ねじ保持治具104にてねじ2の足先端部分から外側に取り除く。このように、座金3だけを押さえ治具103の先端平面部分で容易に上から押えて、ねじ保持治具104で素早く容易かつ確実にねじ2を保持して、座金3のねじ保持用穴4からねじ2を、素早く容易かつ確実に抜き取ることができる。これによって、ねじ2がぼけた場合などのねじ交換時などに、端子台が高密度に設置されている場合など、各ユニット6Aをレールからばらばらに取り外したり、ねじ2を他のショートの危険性がある回路部分に落として起動時に事故を起こすなどの虞がより解消される。
【0043】
このように、押さえ治具103およびねじ保持治具104を用いて、押え用治具103にて座金3だけを押えつつ、ねじ保持治具104で素早く容易かつ確実にねじ2を保持して、ねじ保持治具104にてねじ2を持ち上げてねじ保持用穴4からねじ2を素早く容易かつ確実に抜き取ることができる。
【0044】
次に、座金3だけを上から押えるために、ドライバー101や押さえ治具103を用いたが、これに限らず、上記事例とは別の事例として、図5に示すようなL字状の押さえ治具105を用いることができる。この場合、L字状の押さえ治具105は、ねじ2の頭部および平ワッシャ21を避けるように間口が大きいU字状に切り欠かれた切り欠き部105aを座金3上に挿入して、押さえ用治具105にて座金3だけを押えると、ねじ2が持ち上がり、ねじ保持治具104にてねじ2を挟み込んで一旦更に持ち上げてねじ保持用穴4からねじ2を抜き取ってねじ交換することができる。
【0045】
即ち、ねじ2の抜き取り作業をさらに説明する。まず、ねじ2が座金3と共に端子5の広面に対してアップした状態から、ドライバー101にてねじ2を上から押さえて下げて、図6(a)のように、押さえ治具105の先端部分のU字状の切り欠き部105aを、ねじ2の頭部および平ワッシャ21を避けて挿入し、座金3を下側に押圧することにより、座金3を端子5の位置まで押し下げる。このとき、図6(a)に示すようにねじ2の首下は座金3から浮き上がる。ねじ2の首下部分をねじ保持治具104にて挟んで保持し、図6(b)のように、ねじ2をユニット空間内で上方に一旦持ち上げてねじ2の足先端部分を座金3のねじ保持用穴4から外して、図6(c)のように、ねじ保持治具104にてねじ2の足先端部分から外側に取り除く。このように、座金3だけを押さえ治具105の先端部分のU字状の切り欠き部105aで上から押えて、座金3のねじ保持用穴4からねじ2を抜き取ることができる。これによって、ねじ2がぼけた場合などのねじ交換時などに、各ユニット6Aをレールからばらばらに取り外したり、ねじ2を他のショートの危険性がある回路部分に落として起動時に事故を起こすなどの虞が解消される。
【0046】
この場合、ユニット6Aの天井部64の切り欠き部65Aが不要となるが、端子台の上方は空いているものの、ドライバーでねじ2の頭部を押えつつ、押え治具105でさらに座金3だけを押さえ、ねじ保持治具104を押え治具105と同じ横方向から用いてねじ2を抜き取る作業は、端子台が高過密に設置されている場合には特にスペースが少なく困難である。したがって、前述したようにユニット6Aの天井部64に切り欠き部65Aを形成してドライバー101や押え治具103を用いて座金3だけを押えつつラジオペンチ102やねじ保持治具104を用いてねじ2を抜き取る方が作業性が良好であり、ねじ2を落とす危険性も少なく、より素早く容易かつ確実にねじ2を抜き取ることができる。さらに、本発明の構成を用いれば、端子台1のユニット高さをさらに低くすることもできる。
【0047】
なお、上記実施形態では、ねじアップ式端子台1Aにおいて、ユニット6Aの天井部64に座金3のみを押える部材(工具または治具)を挿入するための切り欠き部65Aを設けたが、これに限らず、図7に示すように、ねじアップ式端子台1Bとして、ユニット6Bの切り欠き部65Bの背面側の突起部64Cと、その隣のユニット6Bの切り欠き部65Bとを嵌合して組み合わせて上記切り欠き部65Aと同等の大きさで開口する切り欠き部を構成するようにしてもよい。この場合には、上記切り欠き部65Aに比べて成形金型の抜き方向に切り欠き部65Bを形成できて金型構造が簡略化できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、ユニット6Aの中央上面が記号板(図示せず)を載置するための平坦部66になっている天井部64の奥行き方向の中央部分に、後述するドライバーなどの工具やねじ抜取治具の押さえ治具の先端部分(断面矩形、正方形または円形)を通して座金部材31を押圧するための矩形状または一部円形状の切り欠き部65Aが穴64A側に開放するように形成されている。
【0049】
圧縮ばね8の付勢力によりねじ2の平ワッシャ21をリブ状のねじ保持部63で受けるように構成したが、これに加えてまたはこれとは別に、ねじ2の鍋状頭部を穴の内周縁部で容易にひらって固定するために、ねじ2の鍋状頭部の外径よりも若干小さい内径の穴を有するねじ保持部をユニット6Aの天井部に設けるようにしてもよい。さらに、ユニット6Aに、圧縮ばね8の付勢力に抗して更に座金3を上から押さえてこれを保持するねじ保持部を設けるようにしていもよい。これにより、ねじ2が座金3のねじ保持用穴4に挿抜自在に装着された状態(カシメられていない状態)で、圧縮ばね8の付勢力によりねじ2の平ワッシャ21または/および頭部を座金3と共にねじ保持部で受け止めて保持することができる。このようなねじアップ式端子台のユニット6Aの天井部64に、座金3のみを押える部材(工具または治具)を挿入するための切り欠き部65Aと同等の切り欠き部を形成することができる。
【0050】
また、上記本実施形態では、座金2をねじ2と共にアップさせるために圧縮ばね8を用いたが、これに限らず、図8〜図10に示すようにコイルばね9を用いてもよい。図8〜図10ではコイルばね9がユニット6Aの真ん中に一つある場合を示している。ねじアップ用のばねは、圧縮ばね8やコイルばね9の他に、せんばねや板ばねなど、ねじアップ機能を達成できるものであれば他の形態のばねであってもよい。このようなねじアップ式端子台のユニット6Aの天井部64に、座金3のみを押える部材(工具または治具)を挿入するための切り欠き部65Aと同等の切り欠き部を形成すればよい。
【0051】
さらに、上記本実施形態では、図15および図16の座金3のように構成したが、例えば、圧縮ばね8が縮んだ時にユニット6Aまたは6B内で収まりがよいように、座金3の支持部材32における切り起こし部の縦溝を下端まで延長したスリットを入れて構成してもよい。この場合、スリット内に圧縮ばね8が吸い込まれないように、スリット幅が圧縮ばね8のばね外径よりも細い溝幅となっている必要がある。このスリットに対向するようにユニット6Aまたは6B側にも縦方向の凹部を圧縮ばね8の一部を収容するために設けてもよい。
【0052】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられる配線中継および分岐装置としての端子台において、ねじを締結して端子を介して配線を連結するときに、端子のねじ穴からねじを回転離脱させた状態で端子面に対して垂直方向にねじを座金と共に移動(アップ)させることにより、ねじ締結作業を素早く、容易かつ確実に行うねじアップ式端子台および、ねじアップ式端子台のねじボケなどねじ交換時に用いるねじ抜取治具の分野において、押さえ用工具または該押さえ治具を用いて座金だけを素早く容易かつ正確に上から押えることができて、座金のねじ保持用穴からねじを素早く容易かつ正確に抜き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るねじアップ式端子台の要部構成例を斜め上から見た場合の斜視図である。
【図2】(a)〜(e)は、図1のねじアップ式端子台において、一般工具を用いた場合のねじ抜き取り作業を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るねじ抜取治具を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、図1のねじアップ式端子台において、図3のねじ抜取治具を用いた場合のねじ抜き取り作業を説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るねじ抜取治具を示す斜視図である。
【図6】(a)〜(c)は、図1のねじアップ式端子台において、図5のねじ抜取治具を用いた場合のねじ抜き取り作業を説明するための図である。
【図7】図1のねじアップ式端子台の変形例を斜め上から見た場合の斜視図である。
【図8】(a)は圧縮ばねの代わりにコイルばねを用いた場合の他の実施形態を示す図1のねじおよび座金とばねとを組み立てた状態を示す上面図、(b)はその側面図である。
【図9】図8(b)においてばねが収縮した状態を示す側面図である。
【図10】図8(b)のねじ、座金およびばねをユニットに組み込んだ状態を示す他の実施形態のねじアップ式端子台の一部正面図である。
【図11】特許文献1に開示されている従来のねじアップ式端子台の要部構成例を示す正面図である。
【図12】図11のねじアップ式端子台を斜め上から見た場合の斜視図である。
【図13】図11のねじアップ式端子台を斜め下から見た場合の斜視図である。
【図14】図11のねじ、座金および圧縮ばねを組み立てた状態を示す側面図である。
【図15】図14の上面図である。
【図16】図14の斜視図である。
【図17】図14のL字状突起部材の先細形状を説明するための要部拡大図である。
【図18】図11において、ねじを座金から抜き取る状態を説明するための要部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
1A、1B ねじアップ式端子台
2 ねじ
3 座金
31 座金部材
32 支持部材
35 L字状部
4 ねじ穴
5 端子
6A、6B ユニット
63 ねじ保持部
64 天井部
64A、64B 穴
65A、65B 切り欠き部
66 平坦部
7 ナット
8 圧縮ばね
9 コイルばね
101 ドライバー
102 ラジオペンチ
103、105 押え治具
105a 切り欠き部
104 ねじ保持治具
104a 円形状部
104b スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじを回転させて端子のねじ用穴からねじ先端部を離脱させたときに、座金に一端が取り付けられたばねの付勢力により該ねじが該座金と共にアップするねじアップ式端子台において、
該ねじが該座金のねじ保持用穴に挿抜自在に装着された状態で、該ばねの付勢力により、該ねじの首部に装着されたワッシャ手段および、該ねじの頭部のうち少なくともいずれかを受けて保持可能とするねじ保持部が設けられ、該ねじ保持部は、該座金および該ねじ、該端子をそれぞれ保持する絶縁部材からなるユニットに設けられ、該ユニットに、工具または治具を通して該座金を押圧するための座金押圧用穴が設けられたねじアップ式端子台。
【請求項2】
前記ねじ保持部は、前記ねじの頭部および/または前記ワッシャ手段を受けて保持可能な穴または一部穴の一部または全部で構成されており、前記座金押圧用穴は、該穴または該一部穴側に開放した切り欠き部で構成されている請求項1に記載のねじアップ式端子台。
【請求項3】
前記ねじ保持部は、前記ばねの付勢力により更に前記座金を受けて保持可能とする請求項1または2に記載のねじアップ式端子台。
【請求項4】
前記ねじ保持部は前記ユニットの天井部に形成されており、該天井部に前記座金押圧用穴が形成されている請求項1または2に記載のねじアップ式端子台。
【請求項5】
前記座金は、前記ねじ保持用穴を有する座金部材と、該座金部材にL字状に連設された支持部材とを有し、該支持部材に前記ばねが取り付けられており、前記座金押圧用穴は、工具または治具を通して該座金のL字状部上に押圧可能とする位置に対応して設けられている請求項1または2に記載のねじアップ式端子台。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のねじアップ式端子台において、前記座金押圧用穴を通して前記座金をその先端部で上方から押圧可能とする押さえ用工具または押さえ治具と、該押さえ用工具または該押さえ治具で該座金だけを押さえた状態で前記ねじの首下部を挟んで保持可能とするねじ保持用工具またはねじ保持治具とを有するねじ抜取治具。
【請求項7】
ねじを回転させて端子のねじ用穴からねじ先端部を離脱させたときに、座金に一端が取り付けられたばねの付勢力により該ねじが該座金と共にアップするねじアップ式端子台において、該ねじが該座金のねじ保持用穴に挿抜自在に装着された状態で、該ばねの付勢力により、該ねじの首部に装着されたワッシャ手段および、該ねじの頭部のうち少なくともいずれかを受けて保持可能とするねじ保持部が設けられており、
該ねじおよび該ワッシャ手段を避けて該座金だけを上方から押圧可能とする押さえ用工具または押さえ治具と、該押さえ用工具または該押さえ治具で該座金だけを押さえた状態で該ねじの首下部を挟んで保持可能とするねじ保持用工具またはねじ保持治具とを有するねじ抜取治具。
【請求項8】
前記ねじ保持治具は、板体の先端部が前記ねじの首下部を挟んで保持可能とする円形状部に形成されており、該円形状部を二つ割状態にして、ばね性をもって互いに接近または離間可能とするスリットが形成されて両側から該二つ割の各一部円形状部で、該ねじの首下部を挟み込んで保持可能とする請求項6または7に記載のねじ抜取治具。
【請求項9】
前記円形状部は、前記ねじの首下部を挿入し易いように、前記スリットに対向した先端部分が開口しており、該円形状部の開口部を該ねじの首下部に差し込んで、前記円形状部の内面で該ねじの首下部を挟んで保持可能とする請求項8に記載のねじ抜取治具。
【請求項10】
前記円形状部の内面には、前記ねじ脱落防止用の段部が一または複数形成されている請求項9に記載のねじ抜取治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−170274(P2009−170274A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7416(P2008−7416)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000236780)不二電機工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】