ひび割れ検出方法
【課題】コンクリート表面の画像データが低分解能の場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供すること。
【解決手段】ウェーブレット画像を作成する第一工程と、ひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、ひび割れ画素のみを抽出した画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、からなるひび割れ検出方法である。
【解決手段】ウェーブレット画像を作成する第一工程と、ひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、ひび割れ画素のみを抽出した画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、からなるひび割れ検出方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法に係り、特に、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面上のひび割れを検出する方法としては、従来、調査員がスケールを使用しながら目視観察をおこない、ひび割れの幅や長さを測定する方法が一般的であった。しかし、この目視観察による方法は調査員の測定技量などによって精度のばらつきが大きくなることや、ひび割れが大量に存在する場合においては大量の情報を正確に処理するために莫大な労力および時間を要するといった問題があった。
【0003】
上記の問題に対して、コンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込み、画像をひび割れ領域とそれ以外の領域とに2値化処理する画像処理手法が適用されている。画像の2値化処理とは、ある濃度値に対して画像の濃度を0または1に表現することであり、例えば、入力画像f(i,j)に対して2値化処理で得られる2値化画像b(i,j)はb(i,j)=1(f(i,j)>k)、0(f(i,j)≦k)となる。ここで、kは2値化する際の閾値であり、したがって2値化画像の良し悪しは閾値kの選定によって決まるといってよい。
【0004】
従来の閾値を求める手法としては、固定閾値または可変閾値による処理方法がある。固定閾値による処理方法には、Pタイル法やモード法、相関比を用いた方法などが挙げられる。固定閾値による処理方法は、対象画像の濃度ヒストグラムを作成し、画像の背景(コンクリート表面)の濃度値とひび割れの濃度値との間に明確な谷が現れるような双峰性のヒストグラムが得られる場合において有効な方法である。
【0005】
一方、可変閾値による処理方法は、照明条件などによって撮影ムラが生じ、背景の濃度値と対象部分の濃度値が画像全体で一定でない場合に有効な方法である。この可変閾値処理法は、注目している画素を中心とする局所領域の平均濃度値を閾値とする方法である。この方法の欠点は、背景領域の微妙な濃淡変化に応じて、例えばひび割れ以外のノイズが多い画像となってしまう点である。
【0006】
従来の画像処理方法は、撮影された入力画像に対して閾値を決定し、2値化処理をおこないながらひび割れの抽出をおこなうものである。すなわち、この一般的な処理の流れは次のようになる。1)撮影画像をコンピュータに取り込んで入力画像を作成する。2)入力画像の濃度の補正をする。3)2値化処理をおこなってひび割れの抽出をおこなう。4)ひび割れの平滑化や輪郭線の追跡をおこなう。5)特定されたひび割れの特徴量の算定をおこなう。
【0007】
上記する従来の画像処理法は、濃度が一様なコンクリート表面上のひび割れの検出においては比較的高精度のひび割れ検出が可能である。しかし、実際のコンクリート構造物の表面は様々な汚れを含んでおり、さらにはひび割れの濃度も、ひび割れの幅や深度などに応じてばらつきがあるのが一般的である。かかるコンクリート表面に対して従来の画像処理法を用いると、ひび割れの抽出に際しては様々な問題が生じ得る。例えば、固定閾値処理の場合において、コンクリート表面上の汚れ領域とひび割れ領域が同程度の濃度値である場合には、これらを2値化処理することが極めて困難となる。濃度ヒストグラムが双峰性を呈していて、閾値を容易に決定できたとしても、ひび割れ領域と判断される範囲には汚れ領域が含まれる可能性が極めて高くなる。また、逆に、ひび割れ周辺部の汚れ領域を含ませないような閾値をあらたに設定しようとすると、今度は他のひび割れ領域を除外してしまうことになってしまう。
【0008】
可変閾値処理の場合には、コンクリート表面上の汚れが多くなるにしたがって、ひび割れ抽出画像中にひび割れ以外のノイズが多く含まれることになり、場合によってはひび割れ抽出画像を一見しても、どの部分がひび割れ領域なのか全く判別できないこととなる。
【0009】
上記する従来手法の問題に対して本発明者等は、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法を発案し、特許文献1にその開示をおこなっている。このひび割れ検出方法は、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなる方法である。
【0010】
【特許文献1】特開2006−162583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示のひび割れ検出方法によれば、局所的に閾値を設定しながらひび割れの検出をおこない、かかる操作を対象となるコンクリート表面全てにわたっておこなうことから、極めて精度のよいひび割れの検出を実現することができる。しかし、この方法では、撮影された画像データの分解能によって最小ひび割れ幅が決定されてしまう。したがって、例えば0.8mm/1画素(ピクセル)のような低分解能の撮影画像データの場合には、ひび割れ幅は1画素の0.8mm単位で評価されることになる。そこで、より細かいひび割れ幅を評価するに際し、対象物をより近接位置からより高い分解能で撮影する必要が生じる。
【0012】
本発明のひび割れ検出方法は上記する問題に鑑みてなされたものであり、分解能の低い画像データによっても、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるひび割れ検出方法は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、前記ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、をさらに具備しており、前記対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲が前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定されることを特徴とするものである。
【0014】
ウェーブレット(wavelet)とは、小さな波という意味であり、局在性を持つ波の基本単位をウェーブレット関数を用いた式で表現することができる。このウェーブレット関数を拡大または縮小することにより、時間情報と周波数情報を同時に解析することが可能となる。このウェーブレット係数をひび割れを有するコンクリート表面に適用する場合の該ウェーブレット係数の特徴としては、かかる係数が、コンクリート表面の濃度と、ひび割れの濃度と、ひび割れ幅に依存するということである。例えば、ひび割れ幅が大きくなるにつれてウェーブレット係数の値は大きくなる傾向があり、また、ひび割れの濃度が濃くなるにつれて(黒色に近づくにつれて)ウェーブレット係数の値は大きくなる傾向がある。
【0015】
ウェーブレット変換によって算定されるウェーブレット係数を用いて、ひび割れの検出をおこなうアルゴリズムは以下のようになる。まず、コンクリート表面の撮影画像とウェーブレット関数との内積よりウェーブレット係数を求める。このウェーブレット係数を256階調に変換することで、連続量を持ったウェーブレット画像が作成できる。
【0016】
ウェーブレット係数は、上記するようにひび割れ幅やひび割れの濃度、コンクリート表面の濃度によって変化することから、擬似的に作成されたデータを用いてひび割れの濃度とコンクリート表面の濃度に関するウェーブレット係数を各階調ごとに算定しておき、ウェーブレット係数テーブルを作成しておく。このウェーブレット係数テーブルにある各階調ごとのウェーブレット係数が、ひび割れ検出の際の閾値となる。例えば、対比される2つの濃度(一方の濃度をコンクリート表面の濃度、他方の濃度をひび割れの濃度と仮定することができる)に対応するウェーブレット係数(閾値)がウェーブレット係数テーブルを参照すれば一義的に決定される。したがって、後述するように、撮影画像において対比される2つの濃度間のウェーブレット係数を算定した際に、このウェーブレット係数がウェーブレット係数テーブルの閾値よりも大きな場合は、ひび割れであると判断できるし、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断することが可能となる。
【0017】
このウェーブレット係数テーブルを作成する際の擬似的なデータは特に限定するものではないが、例えば、ひび割れ幅が一画素(一ピクセル)〜五画素(五ピクセル)までの中で、各画素幅のひび割れごとに、コンクリート表面の階調とひび割れの階調に対応するウェーブレット係数を算定する。閾値の設定に際しては、例えば、ひび割れ幅が一画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れに対応するウェーブレット係数を選定し、ひび割れ幅が五画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れ領域でない箇所のウェーブレット係数を選定し、これら2つのウェーブレット係数の平均値をもって任意の階調における閾値とすることができる。
【0018】
本発明のひび割れ検出方法においては、まず、第一工程において、上記するウェーブレット係数テーブルを作成しておくとともに、撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する。このウェーブレット画像の作成は、コンピュータ内部において以下のように実施される。まず、適宜に設定された広域領域(例えば30×30画素の領域)に対してウェーブレット係数を算定する。次に、この広域領域から一画素移動した広域領域(同じように例えば30×30画素の領域であって、移動前の30×30画素の領域とほとんどの画素が共通している)で、同じようにウェーブレット係数を算定する。この操作を入力画像全体に繰り返すことにより、コンピュータ内部には、ウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画面が作成される。
【0019】
次に第二工程において、このウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像において、ウェーブレット係数テーブル内の閾値(ウェーブレット係数)とウェーブレット画像を構成するウェーブレット係数とを比較し、画像を構成するウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合はひび割れと判断し(画面上では例えば白色)、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断する(画面上では例えば黒色)。かかる操作をウェーブレット画像全体でおこなうことにより、黒い背景色内に白いひび割れが描き出されたひび割れ抽出画像が作成される。
【0020】
次に第三工程において、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する。
【0021】
ここで、対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲は、前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定される。例えば1画素の分解能が0.8mmの場合に評価されるひび割れ幅の最大値を0.8mmとすることができ、最小ひび割れ幅を0.1mmに設定でき、0.1〜0.2mm、0.2〜0.3mm、・・・・・、0.7〜0.8mmの7層に層分けするとともに、層間のひび割れ間隔(またはひび割れ幅の範囲)を0.1mmとすることができる。
【0022】
上記実施例において、ウェーブレット係数の最小値〜最大値までを7等分したウェーブレット係数範囲をひび割れ幅範囲の各層に割り当てることができる。
【0023】
最後に、第四工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する。このひび割れデータに基づいて、全ひび割れ長さの算定やひび割れ幅ごとのひび割れ長さの算定、ひび割れ幅ごとの分布図の作成などを実行でき、使用態様に応じて該ひび割れデータから所望の情報を抽出することが可能となる。
【0024】
本発明者等は、本発明の上記方法によるひび割れの特定、およびひび割れ幅の特定の精度を、実際のクラックスケールによる計測値との間で検証した。その結果、撮影画像の画質の良否によってその精度は上下するものの、高い精度でひび割れ幅の特定がおこなわれることが検証されている。
【0025】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の実施の形態は、前記第三工程においては、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって前記対応表が作成されるものであり、前記第四工程においては、前記ひび割れ画素のみを抽出した画像に対し、細線化処理を実行してひび割れの中心線で構成されるとともに一画素幅を有する画像を作成し、該画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることによって、層分けされたひび割れデータが作成されるものである、ことを特徴とするものである。
【0026】
本実施の形態では、第三工程における対応表の作成方法をより限定するとともに、第四工程において細線化処理を実行するものである。具体的には、第三工程において、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出し、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって、ひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲とウェーブレット係数との対応表が作成される。また、第四工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像に対して細線化処理を実行することにより、ひび割れの中心線で構成されるとともにひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する画像を作成する。この画像を構成する各画素のウェーブレット係数を上記する対応表の対応層に振り分けることにより、ひび割れデータが作成されるものである。
【0027】
本実施の形態によれば、検査対象のひび割れを明確に特定することができ、その上で、特定されたひび割れの構成部位ごとのひび割れ幅を精度よく検出することが可能となる。
【0028】
さらに、本発明によるひび割れ検出方法の好ましい実施の形態は、前記第二工程において、二値化をおこなうことに加えてひび割れ以外のノイズを除去することにより、ひび割れ抽出画像が作成されることを特徴とするものである。
【0029】
ノイズを除去する方法としては、公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去したり、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。また、ノイズ除去方法のアルゴリズムの一つとしては輪郭線追跡処理を挙げることができる。この輪郭線追跡処理は、ある任意の画素(ひび割れと判断されている画素)から出発して、隣接する画素がひび割れ箇所の場合には出発画素と接続し、さらに隣接する画素がひび割れ箇所の場合にはさらに双方を接続し、最終的に出発画素に閉合した場合(例えば、第一画素、第二画素、…、第n−1画素、第n画素、第一画素の順に接続される場合)や、次に繋がるひび割れ箇所が存在しなくなった場合に終了するものである。かかる輪郭線追跡処理によれば、ループ状に閉合するようなひび割れラインや、複数の屈曲部を備えて線状に伸びるひび割れラインなど、適宜のひび割れラインが作成されることになる。この際、繋げられる画素数の最小数を予め設定しておくことにより、かかる設定数以下の画素はすべてひび割れでないとして、画面のひび割れ表示から削除することができる。
【0030】
また、平滑化処理をおこなった後に輪郭線追跡処理を実行してもよい。ここで、平滑化処理は、適宜に設定された数の画素内の平均値を算定し、例えば、かかる複数の画素の中で、平均値よりも濃い濃度の画素はひび割れである画素とし、平均値よりも薄い濃度の画素はひび割れでないと判断する手法である。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明のひび割れ検出方法によれば、ひび割れ抽出画像に対して、ひび割れ画素に対応するウェーブレット係数(の範囲)と画像データの分解能以下の大きさに設定されたひび割れ幅間隔とからなる対応表に基づいてひび割れ幅を特定することにより、分解能の低い画像データを使用した場合でも、微細幅のひび割れを高い精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は入力画像と局所領域の関係を示した模式図であり、図2は局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。図3は本発明のひび割れ検出方法の一実施形態を示したフローを示している。図4は擬似画像を示した図を、図5は図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図をそれぞれ示している。図6はウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図を、図7は撮影画像ごとのウェーブレット係数の最大値と最小値を示した図を、図8は図7に基づいた対応表をそれぞれ示している。図9は本発明のひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローを示している。図10はひび割れ幅の実測値を、図11はひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した結果を、図12はひび割れ幅間隔を0.2mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した結果をそれぞれ示している。図13はひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法のひび割れ分布データを示した図である。
【0033】
図1は、入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。本発明のひび割れ検出方法では、入力画像1における広域領域2のうち、ひび割れが集中的に存在する、あるいは偏在する局所領域3を取り出し、該局所領域3におけるひび割れの検出をおこなうものである。かかる方法により、従来の固定閾値法のように、例えば入力画像1内で一つの閾値を決める方法に比べて、精度のよいひび割れの検出をおこなうことができる。
【0034】
図2は、局所領域3を拡大した図であり、図示する実施形態では、3×3の9つの画素(8つの近傍画素31,31,…と、中央に位置する注目画素32)を対象としてひび割れ判定をおこなう。なお、ウェーブレット係数の算定は、図1における広域領域2を対象としておこなわれる。
【0035】
ここで、ウェーブレット関数(マザーウェーブレット関数)を用いたウェーブレット変換をおこなうことでウェーブレット係数を算定する算定式を以下に示す。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
ここで、f(x、y)は入力画像を、ψはマザーウェーブレット関数(ガボール関数)を、(x0、y0)はψの平行移動量を、akはψの拡大や縮小を、fは中心周波数を、σはガウス関数の大きさ(窓枠の大きさ)を、θは波の進行方向を表す回転角を、それぞれ示している。
【0040】
ここで、数式1を用いて計算した複数のθ、kに対して、ウェーブレット係数Ψの累計値C(x0、y0)を求めたのが数式4となる。
【0041】
【数4】
【0042】
上記のパラメータは、任意に設定できるが、例えば、σを0.5〜2に、akは0〜5に、fは0.1に、回転角は0〜180度に、それぞれ設定できる。
【0043】
数式4における平行移動量(x0、y0)は、注目画素の位置に対応するものであり、注目画素の位置を順次移動させることによって、ウェーブレット係数の連続量(C(x0、y0))が算定でき、この連続量を図示することによってウェーブレット画像が作成できる。
【0044】
広域領域2を構成する全画素に対して、ウェーブレット係数を上算定式に基づいて算定した後、注目画素を一つ左右または上下に移動させてできる広域領域2の全画素において同様にウェーブレット係数を算定する。このウェーブレット係数算定を入力画像全体で実施することにより、適宜の範囲内における構成画素がそれぞれのウェーブレット係数を備えたウェーブレット画像(ウェーブレット係数の連続量からなる画像)を作成することができる。
【0045】
次に、図3に基づいて、ひび割れ検出方法の一実施形態を説明する。
【0046】
CCDカメラ等のデジタルカメラで撮影されたコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込むことにより、入力画像の作成(ステップS10)がおこなわれる。
【0047】
次に、入力画像とは何らの関係もない、対比する2つの濃度からなる擬似画像に対して、ウェーブレット係数の算定をおこなう。例えば、図4に示すように、コンクリート表面と仮定される背景色a(例えば、背景色のR、G、Bが、255,255,255とする)と、ひび割れと仮定される線分b1〜b5からなる擬似画像のウェーブレット係数を求める。ここで、線分b1〜b5は、線幅が順に1画素(1ピクセル)〜5画素(5ピクセル)まで変化しており、さらに、各線分は、3種類の濃度を備えている(例えば、線分b1では、濃度の濃い順に、b11(黒色)、b12(薄い黒色)、b13(灰色)と変化している)。この擬似画像に対してウェーブレット変換をおこなうことで算定されるウェーブレット係数の鳥瞰図を示したのが図5である。図5において、X軸は線分の幅を、Y軸は線分の色の濃度を、Z軸はウェーブレット係数をそれぞれ示している。この線幅の設定は、最終的に抽出したいひび割れ幅の最大値によって設定すればよい。なお、画素幅ごとに、ひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ領域以外のウェーブレット係数が算定できる。
【0048】
本実施形態では、コンクリート表面と仮定される任意の濃度(階調)と、ひび割れと仮定される任意の濃度(階調)に対応する閾値(ウェーブレット係数)を算定するにあたり、例えば、ひび割れ幅が1画素幅の場合におけるひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ幅が5画素幅の場合におけるひび割れ領域以外のウェーブレット係数との平均値をもって、設定したひび割れ幅範囲内において対象となる階調に対応した閾値としている。この閾値の設定は、勿論任意でかまわない。
【0049】
対比する2つの濃度の組み合わせをそれぞれ0〜255の256階調でおこなうことで、図6に示すようなウェーブレット係数テーブルの作成(ステップS30)がおこなわれる。なお、かかる作業は、図示するフロー位置でなくともよく、例えば、入力画像の作成前であってもかまわない。
【0050】
入力画像をウェーブレット変換することにより、ウェーブレット画像の作成(ステップS20)がおこなわれる。
【0051】
ウェーブレット画像は、上記するように、各画素が固有のウェーブレット係数を備えた連続量からなるものであり、各画素のウェーブレット係数を対応するウェーブレット係数テーブルのウェーブレット係数(閾値)と比較することにより、ひび割れ抽出画像の作成(ステップS40)がおこなわれる。例えば、任意の画素のウェーブレット係数が、該画素の濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの画素濃度はひび割れ濃度に対応する)と、局所領域内の近傍画素の平均濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの局所領域内の近傍画素の平均濃度がコンクリート濃度に対応する)で一義的に決定されるウェーブレット係数(閾値)よりも大きな場合は、かかる画素をひび割れであると判定する。
【0052】
各画素のウェーブレット係数に対して同様の比較をコンピュータ内でおこなうことにより、例えば、黒い画面(コンクリート表面)内に、白い線分(ひび割れ)が描き出されたひび割れ抽出画像が作成される(ステップS40)。
【0053】
次に、ステップS40にて作成されたひび割れ抽出画像において、ひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出し、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出する。この最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅の範囲を割り当てることによって、ひび割れ幅とウェーブレット係数との対応表を作成する(ステップS50)。このステップS50を詳細に説明する。
【0054】
例えば、ステップS10による入力画像の作成において、この画像データは1画素当たりの分解能が0.8mmにて画像が作成されている。図7に示すように、例えば7枚の床版パネル(U20004、・・・・)の各入力画像において、ひび割れ数(画素数)が集計され、床パネルごとに抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値が抽出される。例えば、U20004床版パネルにおいては、ひび割れ数は36432画素と集計され、ウェーブレット係数の最大値は6130、最小値は1769と特定される。7枚の床版パネルごとにこの集計が実行されて図7に示すテーブルがコンピュータ内で作成される。
【0055】
次に、図7のテーブルに基づいてコンピュータ内ではひび割れ幅とウェーブレット係数の最大値、最小値に関する対応表が図8のごとく作成される。
【0056】
この対応表の作成に際し、まず、ウェーブレット係数の最大値は1画素の分解能である0.8mmに相当するものとし、最小値は0.1mmとしている。なお、入力画像の分解能に応じてウェーブレット係数の最大値に対応するひび割れ幅が変化し、最小値も適宜に設定可能であることは勿論のことである。
【0057】
対応表におけるひび割れ幅間隔を図示するように0.1mmに設定すると(この設定も任意である)、ひび割れ幅が0.1〜0.2mmの層、0.2〜0.3mmの層、・・・・といった具合に0.7〜0.8mmのひび割れ幅層まで計7階層に層分けでき、各層に割り当てられるウェーブレット係数範囲はその最大値〜最小値を7等分した値が各層の最小値に加えられて当該層の最大値が決定される。
【0058】
上記する簡易な方法により、ひび割れ幅とウェーブレット係数の最大値、最小値に関する対応表が作成される。
【0059】
最後に、ひび割れであると特定されたひび割れ画素のウェーブレット係数を対応表の対応層に割り当てることにより、各層ごと(ひび割れ幅ごと)のひび割れ箇所数が集計された図13のひび割れ分布データが作成される(ステップS60)。
【0060】
上記するひび割れ検出方法によれば、ウェーブレット係数によってひび割れ抽出画像を作成することでひび割れの特定精度を高めることができ、さらに、ひび割れ幅とウェーブレット係数の対応表に基づいて画素分解能よりも小さな幅のひび割れを特定し、集計することができる。
【0061】
図9は、ひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローである。本方法と図3のフローで示す方法の相違点はステップS20におけるウェーブレット画像の作成後、これをノイズ除去してから(ステップS70)ひび割れ抽出画像が作成される点である。
【0062】
このノイズの除去方法は、簡易には公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去する方法、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。
【0063】
また、他の方法として、平滑化処理と輪郭線追跡処理によっておこなう方法がある。平滑化処理では、局所領域内の濃度の平均値(例えば、中央値)を該局所領域内の注目画素の濃度値とすることにより、二値化画像からノイズを除去してひび割れ箇所を絞り込む。この平滑化処理がおこなわれることにより、平滑化画像が作成される。
【0064】
次に、平滑化画像に対して輪郭線追跡処理をおこなう。輪郭線追跡処理は、各ひび割れ領域における任意のひび割れ画素を起点とし(第一画素)、例えば、この第一画素から反時計回りに隣接する画素に注目し、かかる隣接画素(第二画素)がひび割れ画素である場合には第一画素と第二画素を接続する。以後、同様に第二画素、第三画素、…、第n−1画素、第n画素とひび割れ画素の追跡をおこない、該n画素の次に起点となる第一画素がくる場合には、第一画素〜第n画素までを一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。あるいは、該n画素の次に続くひび割れ画素が存在しなくなった時点で、第一画素〜第n画素を一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。なお、ひび割れラインの中には、その途中で二股以上に分岐するようなひび割れ形態も含まれる。かかる次数nの設定は任意であり、第一画素からの追跡数がこの設定された次数n以上の場合をひび割れと判定することにより、ひび割れ抽出画像が作成される。
【0065】
ノイズ除去を実行してひび割れ抽出画像を作成することにより、より精度の高いひび割れの検出(または最終的な集計表の作成)が実行できる。
【0066】
以下に、発明者等が実施した、上記ひび割れ検出方法の精度の検証結果を示す。
[ひび割れ検出方法の精度の検証方法とその結果]
本発明者等は、図7に示す7箇所の床版パネルの撮影画像を対象に、図3に示すフローに基づいて図13に示すひび割れ分布データを得た。また、このひび割れデータの精度を検証するために、実際にクラックスケールを使用して各床版パネルのひび割れを計測した。具体的にはひび割れ幅が0.05〜0.4mmまで0.05mm単位で計測し、多数の計測箇所から任意に選んだ90箇所の計測値に関し、図10に示す計測結果テーブルを作成した。
【0067】
ここで、本発明のひび割れ検出方法の実行に際し、図8で示す対応表のひび割れ幅間隔を0.1mmとした場合(ケース1)と0.2mmとした場合(ケース2)の2ケースで解析(ひび割れの検出)を実行した。具体的には、ケース1では、図8で示すひび割れ幅間隔で各層のひび割れ幅範囲を設定しており、ケース2では、0.1〜0.3mm、0.3mm〜0.5mm、・・・という具合に各層のひび割れ幅範囲を0.2mmとしている。
【0068】
ケース1,2の解析結果(ひび割れデータ)と図10で示す計測結果を比較し、計測値が解析値の範囲内であれば「適中」と評価し、範囲外であれば「不適中」と評価する。さらに、「不適中」の場合において、解析値の方が大きく、かつ計測値との差が0.1mm以内の場合は「大」、それ以上の場合は「極大」、解析値の方が小さく、かつ計測値との差が0.1mm以内の場合は「小」、それ以上の場合は「極小」、ひび割れを検出できない場合は「未検出」と評価してケース1,2の精度の検証を試みた。ケース1の検証結果を図11、ケース2のそれを図12に示す。
【0069】
図11より、ひび割れ幅範囲を0.1mmに設定して解析した場合には、その適中率は50%であり、不適中の大小(±0.05mm)までを誤差範囲として含めると70.0%、また不適中の大小(±0.1mm)までを誤差範囲として含めると76.7%となり、高い精度でひび割れの特定がおこなわれることが実証された。ひび割れ幅:0.05mmは未検出率が100%であり、ひび割れが0.1〜0.15mmの範囲は撮影画像の画質の良否によって検出率が変化する。また、ひび割れ:0.2mm以上の場合には撮影画像の良否に関わらず検出が可能である。
【0070】
また、図12より、ひび割れ幅範囲を0.2mmに設定して解析した場合には、その適中率は62.2%であり、不適中の大小(±0.1mm)までを誤差範囲として含めると、77.8%となり、ひび割れ幅範囲を相対的に広くした場合でも高い精度でひび割れの特定がおこなわれることが実証された。
【0071】
本発明のひび割れ検出方法を使用することにより、技術者の技量に左右されることなく、コンクリート表面に汚れがある場合(特に、コンクリートの打ち継ぎ箇所など)や、照明具合などによって場所により表面濃度(明度)が多様に異なる場合においても、簡易でかつ短時間に、極めて精度のよいひび割れの検出をおこなうことが可能となる。さらには、撮影画像の分解能が低い場合でも、微細なひび割れを精度よく特定することも可能となる。このひび割れ検出方法を既存のコンクリート構造物の定期点検や調査時に適宜採用することで、コンクリート構造物の点検もしくは調査時点における該コンクリート構造物の耐久性の的確な評価、診断に資することとなる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。
【図2】局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。
【図3】本発明のひび割れ検出方法の一実施の形態を示したフローである。
【図4】擬似画像を示した図である。
【図5】図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図である。
【図6】ウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図である。
【図7】撮影画像ごとのウェーブレット係数の最大値と最小値を示した図である。
【図8】図7に基づいて作成された対応表の一実施の形態を示した図である。
【図9】本発明のひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローである。
【図10】ひび割れ幅の実測値を示した図である。
【図11】ひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した図である。
【図12】ひび割れ幅間隔を0.2mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した図である。
【図13】ひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法のひび割れ分布データを示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1…入力画像、2…広域領域、3…局所領域、31…近傍画素、32…注目画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法に係り、特に、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面上のひび割れを検出する方法としては、従来、調査員がスケールを使用しながら目視観察をおこない、ひび割れの幅や長さを測定する方法が一般的であった。しかし、この目視観察による方法は調査員の測定技量などによって精度のばらつきが大きくなることや、ひび割れが大量に存在する場合においては大量の情報を正確に処理するために莫大な労力および時間を要するといった問題があった。
【0003】
上記の問題に対して、コンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込み、画像をひび割れ領域とそれ以外の領域とに2値化処理する画像処理手法が適用されている。画像の2値化処理とは、ある濃度値に対して画像の濃度を0または1に表現することであり、例えば、入力画像f(i,j)に対して2値化処理で得られる2値化画像b(i,j)はb(i,j)=1(f(i,j)>k)、0(f(i,j)≦k)となる。ここで、kは2値化する際の閾値であり、したがって2値化画像の良し悪しは閾値kの選定によって決まるといってよい。
【0004】
従来の閾値を求める手法としては、固定閾値または可変閾値による処理方法がある。固定閾値による処理方法には、Pタイル法やモード法、相関比を用いた方法などが挙げられる。固定閾値による処理方法は、対象画像の濃度ヒストグラムを作成し、画像の背景(コンクリート表面)の濃度値とひび割れの濃度値との間に明確な谷が現れるような双峰性のヒストグラムが得られる場合において有効な方法である。
【0005】
一方、可変閾値による処理方法は、照明条件などによって撮影ムラが生じ、背景の濃度値と対象部分の濃度値が画像全体で一定でない場合に有効な方法である。この可変閾値処理法は、注目している画素を中心とする局所領域の平均濃度値を閾値とする方法である。この方法の欠点は、背景領域の微妙な濃淡変化に応じて、例えばひび割れ以外のノイズが多い画像となってしまう点である。
【0006】
従来の画像処理方法は、撮影された入力画像に対して閾値を決定し、2値化処理をおこないながらひび割れの抽出をおこなうものである。すなわち、この一般的な処理の流れは次のようになる。1)撮影画像をコンピュータに取り込んで入力画像を作成する。2)入力画像の濃度の補正をする。3)2値化処理をおこなってひび割れの抽出をおこなう。4)ひび割れの平滑化や輪郭線の追跡をおこなう。5)特定されたひび割れの特徴量の算定をおこなう。
【0007】
上記する従来の画像処理法は、濃度が一様なコンクリート表面上のひび割れの検出においては比較的高精度のひび割れ検出が可能である。しかし、実際のコンクリート構造物の表面は様々な汚れを含んでおり、さらにはひび割れの濃度も、ひび割れの幅や深度などに応じてばらつきがあるのが一般的である。かかるコンクリート表面に対して従来の画像処理法を用いると、ひび割れの抽出に際しては様々な問題が生じ得る。例えば、固定閾値処理の場合において、コンクリート表面上の汚れ領域とひび割れ領域が同程度の濃度値である場合には、これらを2値化処理することが極めて困難となる。濃度ヒストグラムが双峰性を呈していて、閾値を容易に決定できたとしても、ひび割れ領域と判断される範囲には汚れ領域が含まれる可能性が極めて高くなる。また、逆に、ひび割れ周辺部の汚れ領域を含ませないような閾値をあらたに設定しようとすると、今度は他のひび割れ領域を除外してしまうことになってしまう。
【0008】
可変閾値処理の場合には、コンクリート表面上の汚れが多くなるにしたがって、ひび割れ抽出画像中にひび割れ以外のノイズが多く含まれることになり、場合によってはひび割れ抽出画像を一見しても、どの部分がひび割れ領域なのか全く判別できないこととなる。
【0009】
上記する従来手法の問題に対して本発明者等は、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法を発案し、特許文献1にその開示をおこなっている。このひび割れ検出方法は、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなる方法である。
【0010】
【特許文献1】特開2006−162583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示のひび割れ検出方法によれば、局所的に閾値を設定しながらひび割れの検出をおこない、かかる操作を対象となるコンクリート表面全てにわたっておこなうことから、極めて精度のよいひび割れの検出を実現することができる。しかし、この方法では、撮影された画像データの分解能によって最小ひび割れ幅が決定されてしまう。したがって、例えば0.8mm/1画素(ピクセル)のような低分解能の撮影画像データの場合には、ひび割れ幅は1画素の0.8mm単位で評価されることになる。そこで、より細かいひび割れ幅を評価するに際し、対象物をより近接位置からより高い分解能で撮影する必要が生じる。
【0012】
本発明のひび割れ検出方法は上記する問題に鑑みてなされたものであり、分解能の低い画像データによっても、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるひび割れ検出方法は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、前記ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、をさらに具備しており、前記対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲が前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定されることを特徴とするものである。
【0014】
ウェーブレット(wavelet)とは、小さな波という意味であり、局在性を持つ波の基本単位をウェーブレット関数を用いた式で表現することができる。このウェーブレット関数を拡大または縮小することにより、時間情報と周波数情報を同時に解析することが可能となる。このウェーブレット係数をひび割れを有するコンクリート表面に適用する場合の該ウェーブレット係数の特徴としては、かかる係数が、コンクリート表面の濃度と、ひび割れの濃度と、ひび割れ幅に依存するということである。例えば、ひび割れ幅が大きくなるにつれてウェーブレット係数の値は大きくなる傾向があり、また、ひび割れの濃度が濃くなるにつれて(黒色に近づくにつれて)ウェーブレット係数の値は大きくなる傾向がある。
【0015】
ウェーブレット変換によって算定されるウェーブレット係数を用いて、ひび割れの検出をおこなうアルゴリズムは以下のようになる。まず、コンクリート表面の撮影画像とウェーブレット関数との内積よりウェーブレット係数を求める。このウェーブレット係数を256階調に変換することで、連続量を持ったウェーブレット画像が作成できる。
【0016】
ウェーブレット係数は、上記するようにひび割れ幅やひび割れの濃度、コンクリート表面の濃度によって変化することから、擬似的に作成されたデータを用いてひび割れの濃度とコンクリート表面の濃度に関するウェーブレット係数を各階調ごとに算定しておき、ウェーブレット係数テーブルを作成しておく。このウェーブレット係数テーブルにある各階調ごとのウェーブレット係数が、ひび割れ検出の際の閾値となる。例えば、対比される2つの濃度(一方の濃度をコンクリート表面の濃度、他方の濃度をひび割れの濃度と仮定することができる)に対応するウェーブレット係数(閾値)がウェーブレット係数テーブルを参照すれば一義的に決定される。したがって、後述するように、撮影画像において対比される2つの濃度間のウェーブレット係数を算定した際に、このウェーブレット係数がウェーブレット係数テーブルの閾値よりも大きな場合は、ひび割れであると判断できるし、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断することが可能となる。
【0017】
このウェーブレット係数テーブルを作成する際の擬似的なデータは特に限定するものではないが、例えば、ひび割れ幅が一画素(一ピクセル)〜五画素(五ピクセル)までの中で、各画素幅のひび割れごとに、コンクリート表面の階調とひび割れの階調に対応するウェーブレット係数を算定する。閾値の設定に際しては、例えば、ひび割れ幅が一画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れに対応するウェーブレット係数を選定し、ひび割れ幅が五画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れ領域でない箇所のウェーブレット係数を選定し、これら2つのウェーブレット係数の平均値をもって任意の階調における閾値とすることができる。
【0018】
本発明のひび割れ検出方法においては、まず、第一工程において、上記するウェーブレット係数テーブルを作成しておくとともに、撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する。このウェーブレット画像の作成は、コンピュータ内部において以下のように実施される。まず、適宜に設定された広域領域(例えば30×30画素の領域)に対してウェーブレット係数を算定する。次に、この広域領域から一画素移動した広域領域(同じように例えば30×30画素の領域であって、移動前の30×30画素の領域とほとんどの画素が共通している)で、同じようにウェーブレット係数を算定する。この操作を入力画像全体に繰り返すことにより、コンピュータ内部には、ウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画面が作成される。
【0019】
次に第二工程において、このウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像において、ウェーブレット係数テーブル内の閾値(ウェーブレット係数)とウェーブレット画像を構成するウェーブレット係数とを比較し、画像を構成するウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合はひび割れと判断し(画面上では例えば白色)、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断する(画面上では例えば黒色)。かかる操作をウェーブレット画像全体でおこなうことにより、黒い背景色内に白いひび割れが描き出されたひび割れ抽出画像が作成される。
【0020】
次に第三工程において、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する。
【0021】
ここで、対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲は、前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定される。例えば1画素の分解能が0.8mmの場合に評価されるひび割れ幅の最大値を0.8mmとすることができ、最小ひび割れ幅を0.1mmに設定でき、0.1〜0.2mm、0.2〜0.3mm、・・・・・、0.7〜0.8mmの7層に層分けするとともに、層間のひび割れ間隔(またはひび割れ幅の範囲)を0.1mmとすることができる。
【0022】
上記実施例において、ウェーブレット係数の最小値〜最大値までを7等分したウェーブレット係数範囲をひび割れ幅範囲の各層に割り当てることができる。
【0023】
最後に、第四工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する。このひび割れデータに基づいて、全ひび割れ長さの算定やひび割れ幅ごとのひび割れ長さの算定、ひび割れ幅ごとの分布図の作成などを実行でき、使用態様に応じて該ひび割れデータから所望の情報を抽出することが可能となる。
【0024】
本発明者等は、本発明の上記方法によるひび割れの特定、およびひび割れ幅の特定の精度を、実際のクラックスケールによる計測値との間で検証した。その結果、撮影画像の画質の良否によってその精度は上下するものの、高い精度でひび割れ幅の特定がおこなわれることが検証されている。
【0025】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の実施の形態は、前記第三工程においては、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって前記対応表が作成されるものであり、前記第四工程においては、前記ひび割れ画素のみを抽出した画像に対し、細線化処理を実行してひび割れの中心線で構成されるとともに一画素幅を有する画像を作成し、該画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることによって、層分けされたひび割れデータが作成されるものである、ことを特徴とするものである。
【0026】
本実施の形態では、第三工程における対応表の作成方法をより限定するとともに、第四工程において細線化処理を実行するものである。具体的には、第三工程において、ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出し、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって、ひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲とウェーブレット係数との対応表が作成される。また、第四工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像に対して細線化処理を実行することにより、ひび割れの中心線で構成されるとともにひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する画像を作成する。この画像を構成する各画素のウェーブレット係数を上記する対応表の対応層に振り分けることにより、ひび割れデータが作成されるものである。
【0027】
本実施の形態によれば、検査対象のひび割れを明確に特定することができ、その上で、特定されたひび割れの構成部位ごとのひび割れ幅を精度よく検出することが可能となる。
【0028】
さらに、本発明によるひび割れ検出方法の好ましい実施の形態は、前記第二工程において、二値化をおこなうことに加えてひび割れ以外のノイズを除去することにより、ひび割れ抽出画像が作成されることを特徴とするものである。
【0029】
ノイズを除去する方法としては、公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去したり、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。また、ノイズ除去方法のアルゴリズムの一つとしては輪郭線追跡処理を挙げることができる。この輪郭線追跡処理は、ある任意の画素(ひび割れと判断されている画素)から出発して、隣接する画素がひび割れ箇所の場合には出発画素と接続し、さらに隣接する画素がひび割れ箇所の場合にはさらに双方を接続し、最終的に出発画素に閉合した場合(例えば、第一画素、第二画素、…、第n−1画素、第n画素、第一画素の順に接続される場合)や、次に繋がるひび割れ箇所が存在しなくなった場合に終了するものである。かかる輪郭線追跡処理によれば、ループ状に閉合するようなひび割れラインや、複数の屈曲部を備えて線状に伸びるひび割れラインなど、適宜のひび割れラインが作成されることになる。この際、繋げられる画素数の最小数を予め設定しておくことにより、かかる設定数以下の画素はすべてひび割れでないとして、画面のひび割れ表示から削除することができる。
【0030】
また、平滑化処理をおこなった後に輪郭線追跡処理を実行してもよい。ここで、平滑化処理は、適宜に設定された数の画素内の平均値を算定し、例えば、かかる複数の画素の中で、平均値よりも濃い濃度の画素はひび割れである画素とし、平均値よりも薄い濃度の画素はひび割れでないと判断する手法である。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明のひび割れ検出方法によれば、ひび割れ抽出画像に対して、ひび割れ画素に対応するウェーブレット係数(の範囲)と画像データの分解能以下の大きさに設定されたひび割れ幅間隔とからなる対応表に基づいてひび割れ幅を特定することにより、分解能の低い画像データを使用した場合でも、微細幅のひび割れを高い精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は入力画像と局所領域の関係を示した模式図であり、図2は局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。図3は本発明のひび割れ検出方法の一実施形態を示したフローを示している。図4は擬似画像を示した図を、図5は図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図をそれぞれ示している。図6はウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図を、図7は撮影画像ごとのウェーブレット係数の最大値と最小値を示した図を、図8は図7に基づいた対応表をそれぞれ示している。図9は本発明のひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローを示している。図10はひび割れ幅の実測値を、図11はひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した結果を、図12はひび割れ幅間隔を0.2mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した結果をそれぞれ示している。図13はひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法のひび割れ分布データを示した図である。
【0033】
図1は、入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。本発明のひび割れ検出方法では、入力画像1における広域領域2のうち、ひび割れが集中的に存在する、あるいは偏在する局所領域3を取り出し、該局所領域3におけるひび割れの検出をおこなうものである。かかる方法により、従来の固定閾値法のように、例えば入力画像1内で一つの閾値を決める方法に比べて、精度のよいひび割れの検出をおこなうことができる。
【0034】
図2は、局所領域3を拡大した図であり、図示する実施形態では、3×3の9つの画素(8つの近傍画素31,31,…と、中央に位置する注目画素32)を対象としてひび割れ判定をおこなう。なお、ウェーブレット係数の算定は、図1における広域領域2を対象としておこなわれる。
【0035】
ここで、ウェーブレット関数(マザーウェーブレット関数)を用いたウェーブレット変換をおこなうことでウェーブレット係数を算定する算定式を以下に示す。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
ここで、f(x、y)は入力画像を、ψはマザーウェーブレット関数(ガボール関数)を、(x0、y0)はψの平行移動量を、akはψの拡大や縮小を、fは中心周波数を、σはガウス関数の大きさ(窓枠の大きさ)を、θは波の進行方向を表す回転角を、それぞれ示している。
【0040】
ここで、数式1を用いて計算した複数のθ、kに対して、ウェーブレット係数Ψの累計値C(x0、y0)を求めたのが数式4となる。
【0041】
【数4】
【0042】
上記のパラメータは、任意に設定できるが、例えば、σを0.5〜2に、akは0〜5に、fは0.1に、回転角は0〜180度に、それぞれ設定できる。
【0043】
数式4における平行移動量(x0、y0)は、注目画素の位置に対応するものであり、注目画素の位置を順次移動させることによって、ウェーブレット係数の連続量(C(x0、y0))が算定でき、この連続量を図示することによってウェーブレット画像が作成できる。
【0044】
広域領域2を構成する全画素に対して、ウェーブレット係数を上算定式に基づいて算定した後、注目画素を一つ左右または上下に移動させてできる広域領域2の全画素において同様にウェーブレット係数を算定する。このウェーブレット係数算定を入力画像全体で実施することにより、適宜の範囲内における構成画素がそれぞれのウェーブレット係数を備えたウェーブレット画像(ウェーブレット係数の連続量からなる画像)を作成することができる。
【0045】
次に、図3に基づいて、ひび割れ検出方法の一実施形態を説明する。
【0046】
CCDカメラ等のデジタルカメラで撮影されたコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込むことにより、入力画像の作成(ステップS10)がおこなわれる。
【0047】
次に、入力画像とは何らの関係もない、対比する2つの濃度からなる擬似画像に対して、ウェーブレット係数の算定をおこなう。例えば、図4に示すように、コンクリート表面と仮定される背景色a(例えば、背景色のR、G、Bが、255,255,255とする)と、ひび割れと仮定される線分b1〜b5からなる擬似画像のウェーブレット係数を求める。ここで、線分b1〜b5は、線幅が順に1画素(1ピクセル)〜5画素(5ピクセル)まで変化しており、さらに、各線分は、3種類の濃度を備えている(例えば、線分b1では、濃度の濃い順に、b11(黒色)、b12(薄い黒色)、b13(灰色)と変化している)。この擬似画像に対してウェーブレット変換をおこなうことで算定されるウェーブレット係数の鳥瞰図を示したのが図5である。図5において、X軸は線分の幅を、Y軸は線分の色の濃度を、Z軸はウェーブレット係数をそれぞれ示している。この線幅の設定は、最終的に抽出したいひび割れ幅の最大値によって設定すればよい。なお、画素幅ごとに、ひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ領域以外のウェーブレット係数が算定できる。
【0048】
本実施形態では、コンクリート表面と仮定される任意の濃度(階調)と、ひび割れと仮定される任意の濃度(階調)に対応する閾値(ウェーブレット係数)を算定するにあたり、例えば、ひび割れ幅が1画素幅の場合におけるひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ幅が5画素幅の場合におけるひび割れ領域以外のウェーブレット係数との平均値をもって、設定したひび割れ幅範囲内において対象となる階調に対応した閾値としている。この閾値の設定は、勿論任意でかまわない。
【0049】
対比する2つの濃度の組み合わせをそれぞれ0〜255の256階調でおこなうことで、図6に示すようなウェーブレット係数テーブルの作成(ステップS30)がおこなわれる。なお、かかる作業は、図示するフロー位置でなくともよく、例えば、入力画像の作成前であってもかまわない。
【0050】
入力画像をウェーブレット変換することにより、ウェーブレット画像の作成(ステップS20)がおこなわれる。
【0051】
ウェーブレット画像は、上記するように、各画素が固有のウェーブレット係数を備えた連続量からなるものであり、各画素のウェーブレット係数を対応するウェーブレット係数テーブルのウェーブレット係数(閾値)と比較することにより、ひび割れ抽出画像の作成(ステップS40)がおこなわれる。例えば、任意の画素のウェーブレット係数が、該画素の濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの画素濃度はひび割れ濃度に対応する)と、局所領域内の近傍画素の平均濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの局所領域内の近傍画素の平均濃度がコンクリート濃度に対応する)で一義的に決定されるウェーブレット係数(閾値)よりも大きな場合は、かかる画素をひび割れであると判定する。
【0052】
各画素のウェーブレット係数に対して同様の比較をコンピュータ内でおこなうことにより、例えば、黒い画面(コンクリート表面)内に、白い線分(ひび割れ)が描き出されたひび割れ抽出画像が作成される(ステップS40)。
【0053】
次に、ステップS40にて作成されたひび割れ抽出画像において、ひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出し、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出する。この最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅の範囲を割り当てることによって、ひび割れ幅とウェーブレット係数との対応表を作成する(ステップS50)。このステップS50を詳細に説明する。
【0054】
例えば、ステップS10による入力画像の作成において、この画像データは1画素当たりの分解能が0.8mmにて画像が作成されている。図7に示すように、例えば7枚の床版パネル(U20004、・・・・)の各入力画像において、ひび割れ数(画素数)が集計され、床パネルごとに抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値が抽出される。例えば、U20004床版パネルにおいては、ひび割れ数は36432画素と集計され、ウェーブレット係数の最大値は6130、最小値は1769と特定される。7枚の床版パネルごとにこの集計が実行されて図7に示すテーブルがコンピュータ内で作成される。
【0055】
次に、図7のテーブルに基づいてコンピュータ内ではひび割れ幅とウェーブレット係数の最大値、最小値に関する対応表が図8のごとく作成される。
【0056】
この対応表の作成に際し、まず、ウェーブレット係数の最大値は1画素の分解能である0.8mmに相当するものとし、最小値は0.1mmとしている。なお、入力画像の分解能に応じてウェーブレット係数の最大値に対応するひび割れ幅が変化し、最小値も適宜に設定可能であることは勿論のことである。
【0057】
対応表におけるひび割れ幅間隔を図示するように0.1mmに設定すると(この設定も任意である)、ひび割れ幅が0.1〜0.2mmの層、0.2〜0.3mmの層、・・・・といった具合に0.7〜0.8mmのひび割れ幅層まで計7階層に層分けでき、各層に割り当てられるウェーブレット係数範囲はその最大値〜最小値を7等分した値が各層の最小値に加えられて当該層の最大値が決定される。
【0058】
上記する簡易な方法により、ひび割れ幅とウェーブレット係数の最大値、最小値に関する対応表が作成される。
【0059】
最後に、ひび割れであると特定されたひび割れ画素のウェーブレット係数を対応表の対応層に割り当てることにより、各層ごと(ひび割れ幅ごと)のひび割れ箇所数が集計された図13のひび割れ分布データが作成される(ステップS60)。
【0060】
上記するひび割れ検出方法によれば、ウェーブレット係数によってひび割れ抽出画像を作成することでひび割れの特定精度を高めることができ、さらに、ひび割れ幅とウェーブレット係数の対応表に基づいて画素分解能よりも小さな幅のひび割れを特定し、集計することができる。
【0061】
図9は、ひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローである。本方法と図3のフローで示す方法の相違点はステップS20におけるウェーブレット画像の作成後、これをノイズ除去してから(ステップS70)ひび割れ抽出画像が作成される点である。
【0062】
このノイズの除去方法は、簡易には公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去する方法、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。
【0063】
また、他の方法として、平滑化処理と輪郭線追跡処理によっておこなう方法がある。平滑化処理では、局所領域内の濃度の平均値(例えば、中央値)を該局所領域内の注目画素の濃度値とすることにより、二値化画像からノイズを除去してひび割れ箇所を絞り込む。この平滑化処理がおこなわれることにより、平滑化画像が作成される。
【0064】
次に、平滑化画像に対して輪郭線追跡処理をおこなう。輪郭線追跡処理は、各ひび割れ領域における任意のひび割れ画素を起点とし(第一画素)、例えば、この第一画素から反時計回りに隣接する画素に注目し、かかる隣接画素(第二画素)がひび割れ画素である場合には第一画素と第二画素を接続する。以後、同様に第二画素、第三画素、…、第n−1画素、第n画素とひび割れ画素の追跡をおこない、該n画素の次に起点となる第一画素がくる場合には、第一画素〜第n画素までを一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。あるいは、該n画素の次に続くひび割れ画素が存在しなくなった時点で、第一画素〜第n画素を一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。なお、ひび割れラインの中には、その途中で二股以上に分岐するようなひび割れ形態も含まれる。かかる次数nの設定は任意であり、第一画素からの追跡数がこの設定された次数n以上の場合をひび割れと判定することにより、ひび割れ抽出画像が作成される。
【0065】
ノイズ除去を実行してひび割れ抽出画像を作成することにより、より精度の高いひび割れの検出(または最終的な集計表の作成)が実行できる。
【0066】
以下に、発明者等が実施した、上記ひび割れ検出方法の精度の検証結果を示す。
[ひび割れ検出方法の精度の検証方法とその結果]
本発明者等は、図7に示す7箇所の床版パネルの撮影画像を対象に、図3に示すフローに基づいて図13に示すひび割れ分布データを得た。また、このひび割れデータの精度を検証するために、実際にクラックスケールを使用して各床版パネルのひび割れを計測した。具体的にはひび割れ幅が0.05〜0.4mmまで0.05mm単位で計測し、多数の計測箇所から任意に選んだ90箇所の計測値に関し、図10に示す計測結果テーブルを作成した。
【0067】
ここで、本発明のひび割れ検出方法の実行に際し、図8で示す対応表のひび割れ幅間隔を0.1mmとした場合(ケース1)と0.2mmとした場合(ケース2)の2ケースで解析(ひび割れの検出)を実行した。具体的には、ケース1では、図8で示すひび割れ幅間隔で各層のひび割れ幅範囲を設定しており、ケース2では、0.1〜0.3mm、0.3mm〜0.5mm、・・・という具合に各層のひび割れ幅範囲を0.2mmとしている。
【0068】
ケース1,2の解析結果(ひび割れデータ)と図10で示す計測結果を比較し、計測値が解析値の範囲内であれば「適中」と評価し、範囲外であれば「不適中」と評価する。さらに、「不適中」の場合において、解析値の方が大きく、かつ計測値との差が0.1mm以内の場合は「大」、それ以上の場合は「極大」、解析値の方が小さく、かつ計測値との差が0.1mm以内の場合は「小」、それ以上の場合は「極小」、ひび割れを検出できない場合は「未検出」と評価してケース1,2の精度の検証を試みた。ケース1の検証結果を図11、ケース2のそれを図12に示す。
【0069】
図11より、ひび割れ幅範囲を0.1mmに設定して解析した場合には、その適中率は50%であり、不適中の大小(±0.05mm)までを誤差範囲として含めると70.0%、また不適中の大小(±0.1mm)までを誤差範囲として含めると76.7%となり、高い精度でひび割れの特定がおこなわれることが実証された。ひび割れ幅:0.05mmは未検出率が100%であり、ひび割れが0.1〜0.15mmの範囲は撮影画像の画質の良否によって検出率が変化する。また、ひび割れ:0.2mm以上の場合には撮影画像の良否に関わらず検出が可能である。
【0070】
また、図12より、ひび割れ幅範囲を0.2mmに設定して解析した場合には、その適中率は62.2%であり、不適中の大小(±0.1mm)までを誤差範囲として含めると、77.8%となり、ひび割れ幅範囲を相対的に広くした場合でも高い精度でひび割れの特定がおこなわれることが実証された。
【0071】
本発明のひび割れ検出方法を使用することにより、技術者の技量に左右されることなく、コンクリート表面に汚れがある場合(特に、コンクリートの打ち継ぎ箇所など)や、照明具合などによって場所により表面濃度(明度)が多様に異なる場合においても、簡易でかつ短時間に、極めて精度のよいひび割れの検出をおこなうことが可能となる。さらには、撮影画像の分解能が低い場合でも、微細なひび割れを精度よく特定することも可能となる。このひび割れ検出方法を既存のコンクリート構造物の定期点検や調査時に適宜採用することで、コンクリート構造物の点検もしくは調査時点における該コンクリート構造物の耐久性の的確な評価、診断に資することとなる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。
【図2】局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。
【図3】本発明のひび割れ検出方法の一実施の形態を示したフローである。
【図4】擬似画像を示した図である。
【図5】図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図である。
【図6】ウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図である。
【図7】撮影画像ごとのウェーブレット係数の最大値と最小値を示した図である。
【図8】図7に基づいて作成された対応表の一実施の形態を示した図である。
【図9】本発明のひび割れ検出方法の他の実施形態を示したフローである。
【図10】ひび割れ幅の実測値を示した図である。
【図11】ひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した図である。
【図12】ひび割れ幅間隔を0.2mmとした対応表に基づく方法の図10の実測値に対する適中率を示した図である。
【図13】ひび割れ幅間隔を0.1mmとした対応表に基づく方法のひび割れ分布データを示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1…入力画像、2…広域領域、3…局所領域、31…近傍画素、32…注目画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
前記ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、
抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、をさらに具備しており、
前記対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲が前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定されることを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項2】
前記第三工程においては、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって前記対応表が作成されるものであり、
前記第四工程においては、前記ひび割れ画素のみを抽出した画像に対し、細線化処理を実行してひび割れの中心線で構成されるとともに一画素幅を有する画像を作成し、該画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることによって、層分けされたひび割れデータが作成されるものである、ことを特徴とする請求項1に記載のひび割れ検出方法。
【請求項3】
前記第二工程において、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像が作成されることを特徴とする請求項1または2に記載のひび割れ検出方法。
【請求項1】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
前記ひび割れ抽出画像においてひび割れであると特定されたひび割れ画素のみを抽出するとともに、所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲ごとに層分けされ、各層に対応するウェーブレット係数範囲が設定された対応表を作成する第三工程と、
抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることにより、層分けされたひび割れデータを作成する第四工程と、をさらに具備しており、
前記対応表における層間のひび割れ幅の間隔またはひび割れ幅の範囲が前記撮影画像の画像データの分解能よりも小さく設定されることを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項2】
前記第三工程においては、抽出された各ひび割れ画素のウェーブレット係数の中から最大値と最小値を抽出し、該最大値から該最小値までを所定のウェーブレット係数間隔ごとに層分けし、各層ごとに所定のひび割れ幅またはひび割れ幅の範囲を割り当てることによって前記対応表が作成されるものであり、
前記第四工程においては、前記ひび割れ画素のみを抽出した画像に対し、細線化処理を実行してひび割れの中心線で構成されるとともに一画素幅を有する画像を作成し、該画像を構成する各画素のウェーブレット係数値を前記対応表における各層に割り振ることによって、層分けされたひび割れデータが作成されるものである、ことを特徴とする請求項1に記載のひび割れ検出方法。
【請求項3】
前記第二工程において、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像が作成されることを特徴とする請求項1または2に記載のひび割れ検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−185510(P2008−185510A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20660(P2007−20660)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]