ひび割れ検出方法
【課題】コンクリート表面の画像データが低分解能の場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供すること。
【解決手段】ウェーブレット画像を作成する第一工程と、ひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、2つのウェーブレット係数、および、相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備する、ひび割れ検出方法である。
【解決手段】ウェーブレット画像を作成する第一工程と、ひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、2つのウェーブレット係数、および、相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備する、ひび割れ検出方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法に係り、特に、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面上のひび割れを検出する方法としては、従来、調査員がスケールを使用しながら目視観察をおこない、ひび割れの幅や長さを測定する方法が一般的であった。しかし、この目視観察による方法は調査員の測定技量などによって精度のばらつきが大きくなることや、ひび割れが大量に存在する場合においては大量の情報を正確に処理するために莫大な労力および時間を要するといった問題があった。
【0003】
上記の問題に対して、コンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込み、画像をひび割れ領域とそれ以外の領域とに2値化処理する画像処理手法が適用されている。画像の2値化処理とは、ある濃度値に対して画像の濃度を0または1に表現することであり、例えば、入力画像f(i,j)に対して2値化処理で得られる2値化画像b(i,j)はb(i,j)=1(f(i,j)>k)、0(f(i,j)≦k)となる。ここで、kは2値化する際の閾値であり、したがって2値化画像の良し悪しは閾値kの選定によって決まるといってよい。
【0004】
従来の閾値を求める手法としては、固定閾値または可変閾値による処理方法がある。固定閾値による処理方法には、Pタイル法やモード法、相関比を用いた方法などが挙げられる。固定閾値による処理方法は、対象画像の濃度ヒストグラムを作成し、画像の背景(コンクリート表面)の濃度値とひび割れの濃度値との間に明確な谷が現れるような双峰性のヒストグラムが得られる場合において有効な方法である。
【0005】
一方、可変閾値による処理方法は、照明条件などによって撮影ムラが生じ、背景の濃度値と対象部分の濃度値が画像全体で一定でない場合に有効な方法である。この可変閾値処理法は、注目している画素を中心とする局所領域の平均濃度値を閾値とする方法である。この方法の欠点は、背景領域の微妙な濃淡変化に応じて、例えばひび割れ以外のノイズが多い画像となってしまう点である。
【0006】
従来の画像処理方法は、撮影された入力画像に対して閾値を決定し、2値化処理をおこないながらひび割れの抽出をおこなうものである。すなわち、この一般的な処理の流れは次のようになる。1)撮影画像をコンピュータに取り込んで入力画像を作成する。2)入力画像の濃度の補正をする。3)2値化処理をおこなってひび割れの抽出をおこなう。4)ひび割れの平滑化や輪郭線の追跡をおこなう。5)特定されたひび割れの特徴量の算定をおこなう。
【0007】
上記する従来の画像処理法は、濃度が一様なコンクリート表面上のひび割れの検出においては比較的高精度のひび割れ検出が可能である。しかし、実際のコンクリート構造物の表面は様々な汚れを含んでおり、さらにはひび割れの濃度も、ひび割れの幅や深度などに応じてばらつきがあるのが一般的である。かかるコンクリート表面に対して従来の画像処理法を用いると、ひび割れの抽出に際しては様々な問題が生じ得る。例えば、固定閾値処理の場合において、コンクリート表面上の汚れ領域とひび割れ領域が同程度の濃度値である場合には、これらを2値化処理することが極めて困難となる。濃度ヒストグラムが双峰性を呈していて、閾値を容易に決定できたとしても、ひび割れ領域と判断される範囲には汚れ領域が含まれる可能性が極めて高くなる。また、逆に、ひび割れ周辺部の汚れ領域を含ませないような閾値をあらたに設定しようとすると、今度は他のひび割れ領域を除外してしまうことになってしまう。
【0008】
可変閾値処理の場合には、コンクリート表面上の汚れが多くなるにしたがって、ひび割れ抽出画像中にひび割れ以外のノイズが多く含まれることになり、場合によってはひび割れ抽出画像を一見しても、どの部分がひび割れ領域なのか全く判別できないこととなる。
【0009】
上記する従来手法の問題に対して本発明者等は、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法を発案し、特許文献1にその開示をおこなっている。このひび割れ検出方法は、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなる方法である。
【0010】
【特許文献1】特開2006−162583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示のひび割れ検出方法によれば、局所的に閾値を設定しながらひび割れの検出をおこない、かかる操作を対象となるコンクリート表面全てにわたっておこなうことから、極めて精度のよいひび割れの検出を実現することができる。しかし、この方法では、撮影された画像データの分解能によって最小ひび割れ幅が決定されてしまう。したがって、例えば0.8mm/1画素(ピクセル)のような低分解能の撮影画像データの場合には、ひび割れ幅は1画素の0.8mm単位で評価されることになる。そこで、より細かいひび割れ幅を評価するに際し、対象物をより近接位置からより高い分解能で撮影する必要が生じる。
【0012】
本発明のひび割れ検出方法は上記する問題に鑑みてなされたものであり、分解能の低い画像データによっても、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるひび割れ検出方法は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、前記2つのウェーブレット係数、および相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0014】
ウェーブレット(wavelet)とは、小さな波という意味であり、局在性を持つ波の基本単位を、ウェーブレット関数を用いた式で表現することができる。このウェーブレット関数を拡大または縮小することにより、時間情報や空間情報と周波数情報を同時に解析することが可能となる。このウェーブレット係数を、ひび割れを有するコンクリート表面に適用する場合の該ウェーブレット係数の特徴としては、かかる係数が、コンクリート表面の濃度と、ひび割れの濃度と、ひび割れ幅に依存するということである。例えば、ひび割れ幅が大きくなるにつれてウェーブレット係数の値は大きくなる傾向があり、また、ひび割れの濃度が濃くなるにつれて(黒色に近づくにつれて)ウェーブレット係数の値は大きくなる傾向がある。
【0015】
ウェーブレット変換によって算定されるウェーブレット係数を用いて、ひび割れの検出をおこなうアルゴリズムは以下のようになる。まず、コンクリート表面の撮影画像とウェーブレット関数との内積よりウェーブレット係数を求める。このウェーブレット係数を256階調に変換することで、連続量を持ったウェーブレット画像が作成できる。
【0016】
ウェーブレット係数は、上記するようにひび割れ幅やひび割れの濃度、コンクリート表面の濃度によって変化することから、擬似的に作成されたデータを用いてひび割れの濃度とコンクリート表面の濃度に関するウェーブレット係数を各階調ごとに算定しておき、ウェーブレット係数テーブルを作成しておく。このウェーブレット係数テーブルにある各階調ごとのウェーブレット係数が、ひび割れ検出の際の閾値となる。例えば、対比される2つの濃度(一方の濃度をコンクリート表面の濃度、他方の濃度をひび割れの濃度と仮定することができる)に対応するウェーブレット係数(閾値)がウェーブレット係数テーブルを参照すれば一義的に決定される。したがって、後述するように、撮影画像において対比される2つの濃度間のウェーブレット係数を算定した際に、このウェーブレット係数がウェーブレット係数テーブルの閾値よりも大きな場合は、ひび割れであると判断できるし、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断することが可能となる。
このウェーブレット係数テーブルを作成する際の擬似的なデータは特に限定するものではないが、例えば、ひび割れ幅が一画素(一ピクセル)〜五画素(五ピクセル)までの中で、各画素幅のひび割れごとに、コンクリート表面の階調とひび割れの階調に対応するウェーブレット係数を算定する。閾値の設定に際しては、例えば、ひび割れ幅が一画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れに対応するウェーブレット係数を選定し、ひび割れ幅が五画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れ領域でない箇所のウェーブレット係数を選定し、これら2つのウェーブレット係数の平均値をもって任意の階調における閾値とすることができる。
【0017】
本発明のひび割れ検出方法においては、まず、第一工程において、上記するウェーブレット係数テーブルを作成しておくとともに、撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する。このウェーブレット画像の作成は、コンピュータ内部において以下のように実施される。まず、適宜に設定された広域領域(例えば30×30画素の領域)に対してウェーブレット係数を算定する。次に、この広域領域から一画素移動した広域領域(同じように例えば30×30画素の領域であって、移動前の30×30画素の領域とほとんどの画素が共通している)で、同じようにウェーブレット係数を算定する。この操作を入力画像全体に繰り返すことにより、コンピュータ内部には、ウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像が作成される。
【0018】
次に第二工程において、このウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像において、ウェーブレット係数テーブル内の閾値(ウェーブレット係数)とウェーブレット画像を構成するウェーブレット係数とを比較し、画像を構成するウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合はひび割れと判断し(画面上では例えば白色)、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断する(画面上では例えば黒色)。かかる操作をウェーブレット画像全体でおこなうことにより、黒い背景色内に白いひび割れが描き出されたひび割れ抽出画像が作成される。
【0019】
このひび割れ抽出画像の作成に際し、2値化処理に加えてノイズの除去も実施される。このノイズを除去する方法としては、公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去したり、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。また、ノイズ除去方法のアルゴリズムの一つとしては輪郭線追跡処理を挙げることができる。この輪郭線追跡処理は、ある任意の画素(ひび割れと判断されている画素)から出発して、隣接する画素がひび割れ箇所の場合には出発画素と接続し、さらに隣接する画素がひび割れ箇所の場合にはさらに双方を接続し、最終的に出発画素に閉合した場合(例えば、第一画素、第二画素、…、第n−1画素、第n画素、第一画素の順に接続される場合)や、次に繋がるひび割れ箇所が存在しなくなった場合に終了するものである。かかる輪郭線追跡処理によれば、ループ状に閉合するようなひび割れラインや、複数の屈曲部を備えて線状に伸びるひび割れラインなど、適宜のひび割れラインが作成されることになる。この際、繋げられる画素数の最小数を予め設定しておくことにより、かかる設定数以下の画素はすべてひび割れでないとして、画面のひび割れ表示から削除することができる。
【0020】
また、平滑化処理をおこなった後に輪郭線追跡処理を実行してもよい。ここで、平滑化処理は、適宜に設定された数の画素内の平均値を算定し、例えば、かかる複数の画素の中で、平均値よりも濃い濃度の画素はひび割れである画素とし、平均値よりも薄い濃度の画素はひび割れでないと判断する手法である。
【0021】
次に第三工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像に対して細線化処理を実行することにより、ひび割れの中心線で構成され、たとえばひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する細線化画像を作成する。発明者等の検証によれば、任意幅のひび割れにおいて、その中心線部分が最も濃度が濃くなることが分かっており、したがって、細線化処理により、任意幅で任意長さのひび割れを構成するひび割れにおいて、各部位のひび割れ濃度を設定することができる。
【0022】
任意の細線化画像には、1本もしくは複数本のひび割れが包含されているが、この細線化画像の中から、大小2つのウェーブレット係数を選定する。この2つのウェーブレット係数の選定は、任意に選定したウェーブレット係数と、このウェーブレット係数よりも相対的に小さな(または大きな)ウェーブレット係数であれば特に限定されるものではないが、最終的にひび割れを推定する上で、細線化画像中のウェーブレット係数の中で、最大値と最小値を選定するのが好ましい。この場合、最大値は、分解能のひび割れ、すなわち、撮影機器の種類(デジタル一眼レフカメラ、ハイビジョンデジタルカメラ、デジタルビデオカメラなど)、使用されるレンズの種類、撮影距離などの撮影状況によって決定される分解能のひび割れ幅に設定することができる。一方、最小値は、画像解析で検出可能なひび割れ幅に設定できる。
【0023】
第四工程では、上記する選定された2つのウェーブレット係数(たとえば最小値と最大値)、およびこの2つのウェーブレット係数に対応するひび割れ幅を用いて、細線化画像のウェーブレット係数を変数としたひび割れ幅の推定式を設定する。
【0024】
本発明者らが上記推定式によってひび割れ幅を推定した結果と、実際にコンクリート表面上のひび割れをクラックスケールにて測定した測定結果とを比較照合した結果、極めて高い相関を有していることが実証されている。ここで、実際に分解能の低い画像データの場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出できることも実証されている。
【0025】
最後に、推定されたひび割れ幅に基づくひび割れデータ、すなわち、全ひび割れ長さの算定やひび割れ幅ごとのひび割れ長さの算定、ひび割れ幅ごとの分布図の作成などをおこない、該ひび割れデータから所望の情報を抽出することが可能となる。
【0026】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の実施の形態は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、前記第一工程では、コンクリート表面にクラックスケールを密着させ、該クラックスケールを含むコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力するものであり、かつ、この入力画像をウェーブレット変換することによってひび割れ画像とクラックスケール画像双方のウェーブレット画像を作成するものである。
【0027】
さらに、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、クラックスケール画像に関するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出し、これを回帰分析することで回帰式を決定する係数を求め、細線化画像に対応するウェーブレット係数から抽出された前記大小2つのウェーブレット係数、およびクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数で構成される第二の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、細線化画像に対応するウェーブレット係数の補正値を求める第三工程と、前記回帰式を決定する係数で構成される第三の関係式に前記補正値を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、同じひび割れ幅をもつ画素の濃度に対して、コンクリート濃度の濃淡によってウェーブレット係数が異なってくることを勘案し、実際にクラックスケールをコンクリート表面上に密着させてクラックスケールの撮影もおこない、クラックスケールに関するウェーブレット係数をも算定し、この算定値を勘案してひび割れに関する細線化画像のウェーブレット係数を補正する(もしくは標準化する)ものである。この補正(キャリブレーション)は、クラックスケールをコンクリート表面に貼着できる撮影条件(撮影距離が短い、撮影されるコンクリート表面が高所でないなど)の場合に好適である。
【0029】
クラックスケールの撮影画像に関してウェーブレット係数を求め、上記と同様に、2つの大小のウェーブレット係数を選定する。このクラックスケールの場合も、ウェーブレット係数中の最大値と最小値を選定するのが好ましい。
【0030】
クラックスケールに関する2つのウェーブレット係数に対応するクラックスケールのひび割れ幅の平均値を求め、たとえば線形関数による回帰式:
の係数a,bを求める。
【0031】
ひび割れに関する細線化画像のウェーブレット係数に関しても上記同様に2つのウェーブレット係数を選定しておき(最大値、最小値が好ましいことは同様)、この2つのウェーブレット係数とクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数と、で構成され、細線化画像のウェーブレット係数を変数とした第二の関係式を設定する。この関係式に細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、ウェーブレット係数の補正値(標準化された値)を算定し、この値を、たとえば上記回帰式の係数a,bを有する一次式(補正値を変数とする式)に代入することにより、ひび割れ幅を推定するものである。
【0032】
発明者等の検証によれば、ウェーブレット係数をキャリブレートする本方法によっても、実際の計測値と高い相関が得られることが実証されており、上記のごとく撮影条件が悪い場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明のひび割れ検出方法によれば、解析されたウェーブレット係数を所定の関係式に代入してひび割れ幅の推定値を求める方法により、分解能の低い画像データを使用した場合でも、微細幅のひび割れを高い精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1は、入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。本発明のひび割れ検出方法では、入力画像1における広域領域2でウェーブレット変換をおこない、広域領域2の中心である局所領域3におけるひび割れの検出をおこなうものである。入力画像1内をくまなく広域領域2を上下左右に平行移動して、入力画像1内におけるひび割れの検出をおこなう。かかる方法により、従来の固定閾値法のように、例えば入力画像1内で一つの閾値を決める方法に比べて、精度のよいひび割れの検出をおこなうことができる。
【0036】
図2は、局所領域3を拡大した図であり、図示する実施形態では、たとえば3×3の9つの画素(8つの近傍画素31,31,…と、中央に位置する注目画素32)を対象としてひび割れ判定をおこなう。なお、ウェーブレット係数の算定は、図1における広域領域2を対象としておこなわれる。
【0037】
ここで、ウェーブレット関数(マザーウェーブレット関数)を用いたウェーブレット変換をおこなうことでウェーブレット係数を算定する算定式を以下に示す。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、f(x、y)は入力画像を、ψはマザーウェーブレット関数(ガボール関数)を、(x0、y0)はψの平行移動量を、akはψの拡大や縮小を、fは中心周波数を、σはガウス関数の標準偏差を、θは波の進行方向を表す回転角を、それぞれ示している。
【0042】
ここで、数式1を用いて計算した複数のθ、kに対して、ウェーブレット係数Ψの累計値C(x0、y0)を求めたのが数式4となる。
【0043】
【数4】
【0044】
上記のパラメータは、任意に設定できるが、例えば、σを0.5〜2に、akは0〜5に、fは0.1に、回転角は0〜180度に、それぞれ設定できる。
【0045】
数式4における平行移動量(x0、y0)は、注目画素の位置に対応するものであり、注目画素の位置を順次移動させることによって、ウェーブレット係数の連続量(C(x0、y0))が算定でき、この連続量を図示することによってウェーブレット画像が作成できる。
【0046】
広域領域2を構成する全画素に対して、ウェーブレット係数を上算定式に基づいて算定した後、注目画素を一つ左右または上下に移動させてできる広域領域2の全画素において同様にウェーブレット係数を算定する。このウェーブレット係数算定を入力画像全体で実施することにより、適宜の範囲内における構成画素がそれぞれのウェーブレット係数を備えたウェーブレット画像(ウェーブレット係数の連続量からなる画像)を作成することができる。
【0047】
次に、図3に基づいて、ひび割れ検出方法の一実施形態を説明する。
【0048】
CCDカメラ等のデジタルカメラで撮影されたコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込むことにより、入力画像の作成(ステップS10)がおこなわれる。ここで、クラックスケールをコンクリート表面に貼着できる場合には、このクラックスケールの撮影も同時におこなわれ、その入力画像も作成される(ステップS11)。
【0049】
次に、入力画像とは何らの関係もない、対比する2つの濃度からなる擬似画像に対して、ウェーブレット係数の算定をおこなう。例えば、図4に示すように、コンクリート表面と仮定される背景色a(例えば、背景色のR、G、Bが、255,255,255とする)と、ひび割れと仮定される線分b1〜b5からなる擬似画像のウェーブレット係数を求める。ここで、線分b1〜b5は、線幅が順に1画素(1ピクセル)〜5画素(5ピクセル)まで変化しており、さらに、各線分は、3種類の濃度を備えている(例えば、線分b1では、濃度の濃い順に、b11(黒色)、b12(薄い黒色)、b13(灰色)と変化している)。この擬似画像に対してウェーブレット変換をおこなうことで算定されるウェーブレット係数の鳥瞰図を示したのが図5である。図5において、X軸は線分の幅を、Y軸は線分の色の濃度を、Z軸はウェーブレット係数をそれぞれ示している。この線幅の設定は、最終的に抽出したいひび割れ幅の最大値によって設定すればよい。なお、画素幅ごとに、ひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ領域以外のウェーブレット係数が算定できる。
【0050】
本実施形態では、コンクリート表面と仮定される任意の濃度(階調)と、ひび割れと仮定される任意の濃度(階調)に対応する閾値(ウェーブレット係数)を算定するにあたり、例えば、ひび割れ幅が1画素幅の場合におけるひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ幅が5画素幅の場合におけるひび割れ領域以外のウェーブレット係数との平均値をもって、設定したひび割れ幅範囲内において対象となる階調に対応した閾値としている。この閾値の設定は、勿論任意でかまわない。
【0051】
対比する2つの濃度の組み合わせをそれぞれ0〜255の256階調でおこなうことで、図6に示すようなウェーブレット係数テーブルの作成(ステップS30)がおこなわれる。なお、かかる作業は、図示するフロー位置でなくともよく、例えば、入力画像の作成前であってもかまわない。
【0052】
入力画像をウェーブレット変換することにより、ウェーブレット画像の作成(ステップS20)がおこなわれる。なお、クラックスケールの入力画像がある場合には、同様にクラックスケール画像のウェーブレット画像が作成される(ステップS21)。
【0053】
ウェーブレット画像は、上記するように、各画素が固有のウェーブレット係数を備えた連続量からなるものであり、各画素のウェーブレット係数を対応するウェーブレット係数テーブルのウェーブレット係数(閾値)と比較することにより、ひび割れ抽出画像の作成(ステップS40)がおこなわれる。例えば、任意の画素のウェーブレット係数が、該画素の濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの画素濃度はひび割れ濃度に対応する)と、局所領域内の近傍画素の平均濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの局所領域内の近傍画素の平均濃度がコンクリート濃度に対応する)で一義的に決定されるウェーブレット係数(閾値)よりも大きな場合は、かかる画素をひび割れであると判定する。
【0054】
各画素のウェーブレット係数に対して同様の比較をコンピュータ内でおこなうことにより、例えば、黒い画面(コンクリート表面)内に、白い線分(ひび割れ)が描き出された2値化画像が作成され、この2値化画像からノイズを除去することにより、ひび割れ抽出画像が作成される(ステップS40)。
【0055】
このノイズの除去方法は、簡易には公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去する方法、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。
【0056】
また、他の方法として、平滑化処理と輪郭線追跡処理によっておこなう方法がある。平滑化処理では、局所領域内の濃度の平均値(例えば、中央値)を該局所領域内の注目画素の濃度値とすることにより、2値化画像からノイズを除去してひび割れ箇所を絞り込む。この平滑化処理がおこなわれることにより、平滑化画像が作成される。
【0057】
次に、平滑化画像に対して輪郭線追跡処理をおこなう。輪郭線追跡処理は、各ひび割れ領域における任意のひび割れ画素を起点とし(第一画素)、例えば、この第一画素から反時計回りに隣接する画素に注目し、かかる隣接画素(第二画素)がひび割れ画素である場合には第一画素と第二画素を接続する。以後、同様に第二画素、第三画素、…、第n−1画素、第n画素とひび割れ画素の追跡をおこない、該n画素の次に起点となる第一画素がくる場合には、第一画素〜第n画素までを一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。あるいは、該n画素の次に続くひび割れ画素が存在しなくなった時点で、第一画素〜第n画素を一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。なお、ひび割れラインの中には、その途中で二股以上に分岐するようなひび割れ形態も含まれる。かかる次数nの設定は任意であり、第一画素からの追跡数がこの設定された次数n以上の場合をひび割れと判定することにより、ひび割れ抽出画像が作成される。
【0058】
次に、ステップS40にて作成されたひび割れ抽出画像において、ひび割れの中心線で構成され、たとえばひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する細線化画像を作成する(ステップS50)。
【0059】
この細線化画像を使用してひび割れ幅の推定値を算定する。ここで、このひび割れ幅の推定に関しては、クラックスケール画像のウェーブレット係数を使用して細線化画像に関するウェーブレット係数を補正し(キャリブレートし)、その後にひび割れ幅の推定をおこなうステップS60Aと、かかるキャリブレーションをおこなわず、細線化画像に関するウェーブレット係数のみを使用してひび割れ幅の推定をおこなうステップS60とがある。まず、図7に基づいてステップS60を説明し、次いで、図8に基づいてステップS60Aを説明する。なお、ステップS60とステップS60Aのいずれか一方の選択、もしくは双方の選択はいずれも任意であり、たとえばクラックスケールの入力画像が作成できている場合には、ステップS60Aを選択し、そうでない場合にはステップS60を選択することができる。
【0060】
まず、ステップS60を図7に基づいて説明する。ステップS50で求められた細線化画像のウェーブレット係数の最大値と最小値を求め(ステップS1)、この最大値に対応する最大ひび割れ幅と最小値に対応する最小ひび割れ幅を設定する(ステップS2)。この最大値は、分解能のひび割れ幅に、最小値は画像解析で検出可能なひび割れ幅にそれぞれ設定できる。
【0061】
次に、ひび割れ幅の推定値を算定するための推定式を設定してひび割れ幅の推定をおこなう(ステップS3)。この推定式として、たとえば下式を使用することができる。
【0062】
【数5】
【0063】
ここで、Width:ひび割れ幅の推定値、Cmax、Cmin:細線化画像のウェーブレット係数の最大値、最小値、Wmax、Wmin:ウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅、WCは細線化画像のウェーブレット係数であって、本式の変数である。
【0064】
細線化画像のウェーブレット係数を定式に代入することによって対象となるひび割れのひび割れ幅を推定(特定)する。
【0065】
一方、ステップS60Aを図8に基づいて説明する。まず、クラックスケール画像のウェーブレット係数の最大値、最小値を求め(ステップS4)、クラックスケールのひび割れ幅ごとのウェーブレット係数の平均値を求め、線形関数による回帰式:y=ax+bの係数a,bを求める(ステップS5)。
【0066】
次に、ステップS50で求められた細線化画像のウェーブレット係数の最大値と最小値を求め(ステップS6)、この最大値、最小値とステップS4で求めておいたクラックスケールの最大値、最小値から構成される下式により、まず、細線化画像のウェーブレット係数の補正値(標準化された値)を求める(ステップS7)。
【0067】
【数6】
【0068】
ここで、N_WC:ウェーブレット係数の補正値(標準値)、Cmax、Cmin:細線化画像のウェーブレット係数の最大値、最小値、Smax、Smin:クラックスケールのウェーブレット係数の最大値、最小値、WCは細線化画像のウェーブレット係数であって、本式の変数である。
【0069】
上式にて補正されたウェーブレット係数を推定式である上回帰式(y=ax+b)に代入して、ひび割れ幅の推定をおこなう(ステップS8)。
【0070】
[ひび割れ幅とウェーブレット係数の相関性についての検証]
コンクリート上に添付したクラックスケールを6ケースの分解能で撮影した画像を図9の(a)〜(f)で示す。ここで、(a)、(b)はそれぞれ分解能が0.1、0.2mm/画素のデジタル一眼レフカメラによる撮影画像、(c)は分解能が0.3mm/画素のハイビジョンデジタルビデオによる撮影画像、(d)〜(f)はそれぞれ分解能が0.4、0.6,0.9mm/画素のビデオカメラによる撮影画像である。
【0071】
このクラックスケール画像を解析して得られたウェーブレット係数の0.04mm〜0.7mmまでのひび割れ幅ごとの平均値とひび割れ幅の関係を求め、これを図10に示している。
【0072】
図10より、ひび割れ幅が0.7mmまでに関しては、高分解能の画像で非線形の傾向を示すが、低分解能の画像になるに従って線形関係に近似する傾向が認められる。したがって、低分解能の画像の場合には、線形近似式(回帰式)でひび割れ幅を推定するのがよい。
【0073】
図11は、ひび割れ幅とウェーブレット係数の関係を線形関係:y=ax+bと想定し、ひび割れ幅は画像解析によって検出可能な範囲について回帰分析した結果である。ここで、画像解析によるひび割れ検出幅は分解能が0.1〜0.6mm/画素では0.04mm以上、分解能が0.9mm/画素では0.08mm以上のひび割れ検出が可能であった。さらに、全ての分解能で重相関係数がおよそ0.95以上と高い相間が認められ、ひび割れ幅とウェーブレット係数の高い相関性に関し、クラックスケール画像解析から確認することができた。
【0074】
[ひび割れ幅推定式の妥当性の検証(その1)とその結果]
上記するひび割れ幅の推定式の妥当性を、地下通路壁と道路橋床版の2ケースで検証した。ここでは、地下通路のコンクリート壁に関する検証とその結果を説明する。
【0075】
まず、地下通路壁に関し、2人の計測者A,Bでそれぞれ23箇所を計測し、図7に示すキャリブレーションなしの場合の推定式(数式5)と図8に示すキャリブレーションありの場合の推定式(数式6)の適中率を求めた。コンクリート表面上のひび割れを撮影した画像に図3の処理フローに従って細線化画像を作成し、細線化画像上の画素に対応するウェーブレット係数と計測値を評価する。図12は、分解能が0.9mm/画素(の低分解能)で撮影した画像の解析結果画像を示している。具体的には、図12aは撮影画像を、図12bは2値化画像を、図12cはひび割れ抽出画像を、図12dは細線化画像をそれぞれ示している。
【0076】
また、キャリブレーションの有無(ステップS60かステップS60Aか)、計測者A,B、誤差範囲(±0.1mm、±0.15mm)について、分解能ごとの適中率に関する結果を図13〜図16に示している。具体的には、図13はキャリブレーションなし(ステップS60)で誤差範囲±0.1mmの場合の結果を、図14は、キャリブレーションあり(ステップS60A)で誤差範囲±0.1mmの場合の結果を、図15はキャリブレーションなし(ステップS60)で誤差範囲±0.15mmの場合の結果を、図16は、キャリブレーションあり(ステップS60A)で誤差範囲±0.15mmの場合の結果をそれぞれ示している。
【0077】
ここで、推定値と実測値が誤差範囲内であれば「適中」、誤差範囲外であれば「不適中」とし、ひび割れを検出できない場合は「未検出」とした。
【0078】
さらに、キャリブレーションなしにおけるウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅の設定を図17に示している。ここで、ウェーブレット係数の最小値(Min)に対応するひび割れ幅は各分解能で検出可能なひび割れ幅とし、ウェーブレット係数の最大値(Max)は計測値とのばらつきの最も少ないひび割れ幅の値としている。
【0079】
図18の平均誤差では、分解能によって誤差の大きさが異なるものの、全体的には0.1mm以内に収まっていることが分かる。
【0080】
検証の結果、以下の(1)〜(5)内容が確認できた。
【0081】
(1)キャリブレーションの有無、計測者に関わらず、誤差範囲が±0.1mmで65〜80%、誤差範囲が±0.15mmで80〜90%の高い適中率が得られる。
(2)ひび割れ幅の平均誤差はキャリブレーションの有無や計測者に関わらず0.1mm以内に収まっている。
(3)ウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅の設定により、適中率の結果が異なってくることが分かり、したがって、この設定方法の如何が重要な要素の一つである。
(4)今回は低分解能の画像に対するひび割れの推定を目的としており、分解能が0.4〜0.6mm/画素ではキャリブレーションの有無に関わらず90%の高い推定精度が得られ、分解能が0.9mm/画素においても誤差範囲が±0.1mmで70〜80%、誤差範囲が±0.15mmで80%の高い推定精度が得られる。
(5)ひび割れ計測個数が少ないため、適中率の精度向上を図るにはより多くの計測値と比較検証する必要があることから、後述する道路橋床版データでの検証を追加する。
【0082】
[ひび割れ幅推定式の妥当性の検証(その2)とその結果]
7箇所の床版パネルの撮影画像を対象として、ランダムに選定したひび割れ幅0.05〜0.4mmまでのひび割れ計測を実施した。90箇所の計測値に関する床版パネルおよびひび割れ幅データの分布を図19に示す。
【0083】
各ひび割れ画像からひび割れと判定された全ての画素のウェーブレット係数値を計算し、その中から最大値と最小値を求めた。図20は、分解能が0.8mm/画素で撮影した7枚の画像データの例を示している。ここで、ウェーブレット係数の最大値と最小値は撮影画像ごとにばらつきが生じているため、全ての撮影画像におけるウェーブレット係数の最大値と最小値を求め、全体のウェーブレット係数の最大値と最小値をそれぞれ設定した。図20の例では、最大値が6675、最小値が1682である。
【0084】
ウェーブレット係数の最大値は1画素の分解能が0.8mmに相当し、最小値は7枚の撮影画像から検出可能な最小ひび割れ幅の0.1mmであることから、ウェーブレット係数の最小値はひび割れ幅0.1mmに相当すると仮定した。
【0085】
要求するひび割れ幅の単位ごとにウェーブレット係数の最大値と最小値を用いて線形補間することにより、既述するひび割れ幅とウェーブレット係数の関係式を作成した。
【0086】
道路橋床版における検証結果を図21,22に示す。ここで、図21は誤差範囲が±0.1mmの場合を、図22は誤差範囲が±0.15mmの場合をそれぞれ示している。
【0087】
検証の結果、低分解能である0.8mm/画素において、以下の(1)〜(4)内容が確認できた。
【0088】
(1)誤差範囲が±0.1mmでは適中率が64.4%、誤差範囲が±0.15mmでは適中率が77.8%と高い精度でひび割れ幅を特定できることが実証できた。
(2)ひび割れ幅が0.1mm以下の検出は難しい。
(3)ひび割れ幅0.15mm以上の検出は撮影画像の良否に依存する。
(4)ひび割れ幅0.2mm以上では適中率は高くなるが、小さなひび割れ幅の場合には解析値が大きめとなり、大きなひび割れ幅の場合には解析値が小さめの傾向を呈する。
【0089】
以上、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。
【図2】局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。
【図3】本発明のひび割れ検出方法を示したフローである。
【図4】擬似画像を示した図である。
【図5】図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図である。
【図6】ウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図である。
【図7】図3のフローにおけるステップS60に関するフローである。
【図8】図3のフローにおけるステップS60Aに関するフローである。
【図9】クラックスケール画像を示した図であり、(a)、(b)はそれぞれ、分解能が0.1mm/画素、0.2mm/画素のデジタル一眼レフカメラの場合を、(c)は分解能が0.3mm/画素のハイビジョンデジタルビデオの場合を、(d)、(e)、(f)はそれぞれ分解能が0.4mm/画素、0.6mm/画素、0.9mm/画素のデジタルビデオの場合を示している。
【図10】図9の各ケースのひび割れ幅とウェーブレット係数の関係を示したグラフである。
【図11】回帰分析結果を示したテーブルである。
【図12】地下通路壁の分解能0.9mm/画素の、(a)は撮影画像を、(b)は2値化画像を、(c)はひび割れ抽出画像を、(d)は細線化画像をそれぞれ示した図である。
【図13】地下通路壁でキャリブレーションなし、誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図14】地下通路壁でキャリブレーションあり、誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図15】地下通路壁でキャリブレーションなし、誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図16】地下通路壁でキャリブレーションあり、誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図17】地下通路壁のウェーブレット係数の最大値、最小値とこれに対応するひび割れ幅を示したテーブルである。
【図18】地下通路壁の平均誤差を示したテーブルである。
【図19】道路橋床版のひび割れ計測結果を示したテーブルである。
【図20】道路橋床版のウェーブレット係数の最大値、最小値を示したテーブルである。
【図21】道路橋床版で誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図22】道路橋床版で誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【符号の説明】
【0091】
1…入力画像、2…広域領域、3…局所領域、31…近傍画素、32…注目画素
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法に係り、特に、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面上のひび割れを検出する方法としては、従来、調査員がスケールを使用しながら目視観察をおこない、ひび割れの幅や長さを測定する方法が一般的であった。しかし、この目視観察による方法は調査員の測定技量などによって精度のばらつきが大きくなることや、ひび割れが大量に存在する場合においては大量の情報を正確に処理するために莫大な労力および時間を要するといった問題があった。
【0003】
上記の問題に対して、コンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込み、画像をひび割れ領域とそれ以外の領域とに2値化処理する画像処理手法が適用されている。画像の2値化処理とは、ある濃度値に対して画像の濃度を0または1に表現することであり、例えば、入力画像f(i,j)に対して2値化処理で得られる2値化画像b(i,j)はb(i,j)=1(f(i,j)>k)、0(f(i,j)≦k)となる。ここで、kは2値化する際の閾値であり、したがって2値化画像の良し悪しは閾値kの選定によって決まるといってよい。
【0004】
従来の閾値を求める手法としては、固定閾値または可変閾値による処理方法がある。固定閾値による処理方法には、Pタイル法やモード法、相関比を用いた方法などが挙げられる。固定閾値による処理方法は、対象画像の濃度ヒストグラムを作成し、画像の背景(コンクリート表面)の濃度値とひび割れの濃度値との間に明確な谷が現れるような双峰性のヒストグラムが得られる場合において有効な方法である。
【0005】
一方、可変閾値による処理方法は、照明条件などによって撮影ムラが生じ、背景の濃度値と対象部分の濃度値が画像全体で一定でない場合に有効な方法である。この可変閾値処理法は、注目している画素を中心とする局所領域の平均濃度値を閾値とする方法である。この方法の欠点は、背景領域の微妙な濃淡変化に応じて、例えばひび割れ以外のノイズが多い画像となってしまう点である。
【0006】
従来の画像処理方法は、撮影された入力画像に対して閾値を決定し、2値化処理をおこないながらひび割れの抽出をおこなうものである。すなわち、この一般的な処理の流れは次のようになる。1)撮影画像をコンピュータに取り込んで入力画像を作成する。2)入力画像の濃度の補正をする。3)2値化処理をおこなってひび割れの抽出をおこなう。4)ひび割れの平滑化や輪郭線の追跡をおこなう。5)特定されたひび割れの特徴量の算定をおこなう。
【0007】
上記する従来の画像処理法は、濃度が一様なコンクリート表面上のひび割れの検出においては比較的高精度のひび割れ検出が可能である。しかし、実際のコンクリート構造物の表面は様々な汚れを含んでおり、さらにはひび割れの濃度も、ひび割れの幅や深度などに応じてばらつきがあるのが一般的である。かかるコンクリート表面に対して従来の画像処理法を用いると、ひび割れの抽出に際しては様々な問題が生じ得る。例えば、固定閾値処理の場合において、コンクリート表面上の汚れ領域とひび割れ領域が同程度の濃度値である場合には、これらを2値化処理することが極めて困難となる。濃度ヒストグラムが双峰性を呈していて、閾値を容易に決定できたとしても、ひび割れ領域と判断される範囲には汚れ領域が含まれる可能性が極めて高くなる。また、逆に、ひび割れ周辺部の汚れ領域を含ませないような閾値をあらたに設定しようとすると、今度は他のひび割れ領域を除外してしまうことになってしまう。
【0008】
可変閾値処理の場合には、コンクリート表面上の汚れが多くなるにしたがって、ひび割れ抽出画像中にひび割れ以外のノイズが多く含まれることになり、場合によってはひび割れ抽出画像を一見しても、どの部分がひび割れ領域なのか全く判別できないこととなる。
【0009】
上記する従来手法の問題に対して本発明者等は、撮影されたコンクリート表面の汚れや照明条件などによってひび割れの検出が困難な場合においても、簡易に高精度のひび割れ検出をおこなうことのできるひび割れ検出方法を発案し、特許文献1にその開示をおこなっている。このひび割れ検出方法は、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこなうことによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなる方法である。
【0010】
【特許文献1】特開2006−162583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示のひび割れ検出方法によれば、局所的に閾値を設定しながらひび割れの検出をおこない、かかる操作を対象となるコンクリート表面全てにわたっておこなうことから、極めて精度のよいひび割れの検出を実現することができる。しかし、この方法では、撮影された画像データの分解能によって最小ひび割れ幅が決定されてしまう。したがって、例えば0.8mm/1画素(ピクセル)のような低分解能の撮影画像データの場合には、ひび割れ幅は1画素の0.8mm単位で評価されることになる。そこで、より細かいひび割れ幅を評価するに際し、対象物をより近接位置からより高い分解能で撮影する必要が生じる。
【0012】
本発明のひび割れ検出方法は上記する問題に鑑みてなされたものであり、分解能の低い画像データによっても、微細幅のひび割れを高精度で検出することのできるひび割れ検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明によるひび割れ検出方法は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、前記2つのウェーブレット係数、および相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0014】
ウェーブレット(wavelet)とは、小さな波という意味であり、局在性を持つ波の基本単位を、ウェーブレット関数を用いた式で表現することができる。このウェーブレット関数を拡大または縮小することにより、時間情報や空間情報と周波数情報を同時に解析することが可能となる。このウェーブレット係数を、ひび割れを有するコンクリート表面に適用する場合の該ウェーブレット係数の特徴としては、かかる係数が、コンクリート表面の濃度と、ひび割れの濃度と、ひび割れ幅に依存するということである。例えば、ひび割れ幅が大きくなるにつれてウェーブレット係数の値は大きくなる傾向があり、また、ひび割れの濃度が濃くなるにつれて(黒色に近づくにつれて)ウェーブレット係数の値は大きくなる傾向がある。
【0015】
ウェーブレット変換によって算定されるウェーブレット係数を用いて、ひび割れの検出をおこなうアルゴリズムは以下のようになる。まず、コンクリート表面の撮影画像とウェーブレット関数との内積よりウェーブレット係数を求める。このウェーブレット係数を256階調に変換することで、連続量を持ったウェーブレット画像が作成できる。
【0016】
ウェーブレット係数は、上記するようにひび割れ幅やひび割れの濃度、コンクリート表面の濃度によって変化することから、擬似的に作成されたデータを用いてひび割れの濃度とコンクリート表面の濃度に関するウェーブレット係数を各階調ごとに算定しておき、ウェーブレット係数テーブルを作成しておく。このウェーブレット係数テーブルにある各階調ごとのウェーブレット係数が、ひび割れ検出の際の閾値となる。例えば、対比される2つの濃度(一方の濃度をコンクリート表面の濃度、他方の濃度をひび割れの濃度と仮定することができる)に対応するウェーブレット係数(閾値)がウェーブレット係数テーブルを参照すれば一義的に決定される。したがって、後述するように、撮影画像において対比される2つの濃度間のウェーブレット係数を算定した際に、このウェーブレット係数がウェーブレット係数テーブルの閾値よりも大きな場合は、ひび割れであると判断できるし、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断することが可能となる。
このウェーブレット係数テーブルを作成する際の擬似的なデータは特に限定するものではないが、例えば、ひび割れ幅が一画素(一ピクセル)〜五画素(五ピクセル)までの中で、各画素幅のひび割れごとに、コンクリート表面の階調とひび割れの階調に対応するウェーブレット係数を算定する。閾値の設定に際しては、例えば、ひび割れ幅が一画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れに対応するウェーブレット係数を選定し、ひび割れ幅が五画素の場合のウェーブレット係数のうち、ひび割れ領域でない箇所のウェーブレット係数を選定し、これら2つのウェーブレット係数の平均値をもって任意の階調における閾値とすることができる。
【0017】
本発明のひび割れ検出方法においては、まず、第一工程において、上記するウェーブレット係数テーブルを作成しておくとともに、撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する。このウェーブレット画像の作成は、コンピュータ内部において以下のように実施される。まず、適宜に設定された広域領域(例えば30×30画素の領域)に対してウェーブレット係数を算定する。次に、この広域領域から一画素移動した広域領域(同じように例えば30×30画素の領域であって、移動前の30×30画素の領域とほとんどの画素が共通している)で、同じようにウェーブレット係数を算定する。この操作を入力画像全体に繰り返すことにより、コンピュータ内部には、ウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像が作成される。
【0018】
次に第二工程において、このウェーブレット係数の連続量からなるウェーブレット画像において、ウェーブレット係数テーブル内の閾値(ウェーブレット係数)とウェーブレット画像を構成するウェーブレット係数とを比較し、画像を構成するウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合はひび割れと判断し(画面上では例えば白色)、閾値よりも小さな場合はひび割れでないと判断する(画面上では例えば黒色)。かかる操作をウェーブレット画像全体でおこなうことにより、黒い背景色内に白いひび割れが描き出されたひび割れ抽出画像が作成される。
【0019】
このひび割れ抽出画像の作成に際し、2値化処理に加えてノイズの除去も実施される。このノイズを除去する方法としては、公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去したり、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。また、ノイズ除去方法のアルゴリズムの一つとしては輪郭線追跡処理を挙げることができる。この輪郭線追跡処理は、ある任意の画素(ひび割れと判断されている画素)から出発して、隣接する画素がひび割れ箇所の場合には出発画素と接続し、さらに隣接する画素がひび割れ箇所の場合にはさらに双方を接続し、最終的に出発画素に閉合した場合(例えば、第一画素、第二画素、…、第n−1画素、第n画素、第一画素の順に接続される場合)や、次に繋がるひび割れ箇所が存在しなくなった場合に終了するものである。かかる輪郭線追跡処理によれば、ループ状に閉合するようなひび割れラインや、複数の屈曲部を備えて線状に伸びるひび割れラインなど、適宜のひび割れラインが作成されることになる。この際、繋げられる画素数の最小数を予め設定しておくことにより、かかる設定数以下の画素はすべてひび割れでないとして、画面のひび割れ表示から削除することができる。
【0020】
また、平滑化処理をおこなった後に輪郭線追跡処理を実行してもよい。ここで、平滑化処理は、適宜に設定された数の画素内の平均値を算定し、例えば、かかる複数の画素の中で、平均値よりも濃い濃度の画素はひび割れである画素とし、平均値よりも薄い濃度の画素はひび割れでないと判断する手法である。
【0021】
次に第三工程において、ひび割れ画素のみを抽出した画像に対して細線化処理を実行することにより、ひび割れの中心線で構成され、たとえばひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する細線化画像を作成する。発明者等の検証によれば、任意幅のひび割れにおいて、その中心線部分が最も濃度が濃くなることが分かっており、したがって、細線化処理により、任意幅で任意長さのひび割れを構成するひび割れにおいて、各部位のひび割れ濃度を設定することができる。
【0022】
任意の細線化画像には、1本もしくは複数本のひび割れが包含されているが、この細線化画像の中から、大小2つのウェーブレット係数を選定する。この2つのウェーブレット係数の選定は、任意に選定したウェーブレット係数と、このウェーブレット係数よりも相対的に小さな(または大きな)ウェーブレット係数であれば特に限定されるものではないが、最終的にひび割れを推定する上で、細線化画像中のウェーブレット係数の中で、最大値と最小値を選定するのが好ましい。この場合、最大値は、分解能のひび割れ、すなわち、撮影機器の種類(デジタル一眼レフカメラ、ハイビジョンデジタルカメラ、デジタルビデオカメラなど)、使用されるレンズの種類、撮影距離などの撮影状況によって決定される分解能のひび割れ幅に設定することができる。一方、最小値は、画像解析で検出可能なひび割れ幅に設定できる。
【0023】
第四工程では、上記する選定された2つのウェーブレット係数(たとえば最小値と最大値)、およびこの2つのウェーブレット係数に対応するひび割れ幅を用いて、細線化画像のウェーブレット係数を変数としたひび割れ幅の推定式を設定する。
【0024】
本発明者らが上記推定式によってひび割れ幅を推定した結果と、実際にコンクリート表面上のひび割れをクラックスケールにて測定した測定結果とを比較照合した結果、極めて高い相関を有していることが実証されている。ここで、実際に分解能の低い画像データの場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出できることも実証されている。
【0025】
最後に、推定されたひび割れ幅に基づくひび割れデータ、すなわち、全ひび割れ長さの算定やひび割れ幅ごとのひび割れ長さの算定、ひび割れ幅ごとの分布図の作成などをおこない、該ひび割れデータから所望の情報を抽出することが可能となる。
【0026】
また、本発明によるひび割れ検出方法の他の実施の形態は、コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、前記第一工程では、コンクリート表面にクラックスケールを密着させ、該クラックスケールを含むコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力するものであり、かつ、この入力画像をウェーブレット変換することによってひび割れ画像とクラックスケール画像双方のウェーブレット画像を作成するものである。
【0027】
さらに、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、クラックスケール画像に関するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出し、これを回帰分析することで回帰式を決定する係数を求め、細線化画像に対応するウェーブレット係数から抽出された前記大小2つのウェーブレット係数、およびクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数で構成される第二の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、細線化画像に対応するウェーブレット係数の補正値を求める第三工程と、前記回帰式を決定する係数で構成される第三の関係式に前記補正値を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、同じひび割れ幅をもつ画素の濃度に対して、コンクリート濃度の濃淡によってウェーブレット係数が異なってくることを勘案し、実際にクラックスケールをコンクリート表面上に密着させてクラックスケールの撮影もおこない、クラックスケールに関するウェーブレット係数をも算定し、この算定値を勘案してひび割れに関する細線化画像のウェーブレット係数を補正する(もしくは標準化する)ものである。この補正(キャリブレーション)は、クラックスケールをコンクリート表面に貼着できる撮影条件(撮影距離が短い、撮影されるコンクリート表面が高所でないなど)の場合に好適である。
【0029】
クラックスケールの撮影画像に関してウェーブレット係数を求め、上記と同様に、2つの大小のウェーブレット係数を選定する。このクラックスケールの場合も、ウェーブレット係数中の最大値と最小値を選定するのが好ましい。
【0030】
クラックスケールに関する2つのウェーブレット係数に対応するクラックスケールのひび割れ幅の平均値を求め、たとえば線形関数による回帰式:
の係数a,bを求める。
【0031】
ひび割れに関する細線化画像のウェーブレット係数に関しても上記同様に2つのウェーブレット係数を選定しておき(最大値、最小値が好ましいことは同様)、この2つのウェーブレット係数とクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数と、で構成され、細線化画像のウェーブレット係数を変数とした第二の関係式を設定する。この関係式に細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、ウェーブレット係数の補正値(標準化された値)を算定し、この値を、たとえば上記回帰式の係数a,bを有する一次式(補正値を変数とする式)に代入することにより、ひび割れ幅を推定するものである。
【0032】
発明者等の検証によれば、ウェーブレット係数をキャリブレートする本方法によっても、実際の計測値と高い相関が得られることが実証されており、上記のごとく撮影条件が悪い場合でも、微細幅のひび割れを高精度で検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上の説明から理解できるように、本発明のひび割れ検出方法によれば、解析されたウェーブレット係数を所定の関係式に代入してひび割れ幅の推定値を求める方法により、分解能の低い画像データを使用した場合でも、微細幅のひび割れを高い精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1は、入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。本発明のひび割れ検出方法では、入力画像1における広域領域2でウェーブレット変換をおこない、広域領域2の中心である局所領域3におけるひび割れの検出をおこなうものである。入力画像1内をくまなく広域領域2を上下左右に平行移動して、入力画像1内におけるひび割れの検出をおこなう。かかる方法により、従来の固定閾値法のように、例えば入力画像1内で一つの閾値を決める方法に比べて、精度のよいひび割れの検出をおこなうことができる。
【0036】
図2は、局所領域3を拡大した図であり、図示する実施形態では、たとえば3×3の9つの画素(8つの近傍画素31,31,…と、中央に位置する注目画素32)を対象としてひび割れ判定をおこなう。なお、ウェーブレット係数の算定は、図1における広域領域2を対象としておこなわれる。
【0037】
ここで、ウェーブレット関数(マザーウェーブレット関数)を用いたウェーブレット変換をおこなうことでウェーブレット係数を算定する算定式を以下に示す。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、f(x、y)は入力画像を、ψはマザーウェーブレット関数(ガボール関数)を、(x0、y0)はψの平行移動量を、akはψの拡大や縮小を、fは中心周波数を、σはガウス関数の標準偏差を、θは波の進行方向を表す回転角を、それぞれ示している。
【0042】
ここで、数式1を用いて計算した複数のθ、kに対して、ウェーブレット係数Ψの累計値C(x0、y0)を求めたのが数式4となる。
【0043】
【数4】
【0044】
上記のパラメータは、任意に設定できるが、例えば、σを0.5〜2に、akは0〜5に、fは0.1に、回転角は0〜180度に、それぞれ設定できる。
【0045】
数式4における平行移動量(x0、y0)は、注目画素の位置に対応するものであり、注目画素の位置を順次移動させることによって、ウェーブレット係数の連続量(C(x0、y0))が算定でき、この連続量を図示することによってウェーブレット画像が作成できる。
【0046】
広域領域2を構成する全画素に対して、ウェーブレット係数を上算定式に基づいて算定した後、注目画素を一つ左右または上下に移動させてできる広域領域2の全画素において同様にウェーブレット係数を算定する。このウェーブレット係数算定を入力画像全体で実施することにより、適宜の範囲内における構成画素がそれぞれのウェーブレット係数を備えたウェーブレット画像(ウェーブレット係数の連続量からなる画像)を作成することができる。
【0047】
次に、図3に基づいて、ひび割れ検出方法の一実施形態を説明する。
【0048】
CCDカメラ等のデジタルカメラで撮影されたコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに取り込むことにより、入力画像の作成(ステップS10)がおこなわれる。ここで、クラックスケールをコンクリート表面に貼着できる場合には、このクラックスケールの撮影も同時におこなわれ、その入力画像も作成される(ステップS11)。
【0049】
次に、入力画像とは何らの関係もない、対比する2つの濃度からなる擬似画像に対して、ウェーブレット係数の算定をおこなう。例えば、図4に示すように、コンクリート表面と仮定される背景色a(例えば、背景色のR、G、Bが、255,255,255とする)と、ひび割れと仮定される線分b1〜b5からなる擬似画像のウェーブレット係数を求める。ここで、線分b1〜b5は、線幅が順に1画素(1ピクセル)〜5画素(5ピクセル)まで変化しており、さらに、各線分は、3種類の濃度を備えている(例えば、線分b1では、濃度の濃い順に、b11(黒色)、b12(薄い黒色)、b13(灰色)と変化している)。この擬似画像に対してウェーブレット変換をおこなうことで算定されるウェーブレット係数の鳥瞰図を示したのが図5である。図5において、X軸は線分の幅を、Y軸は線分の色の濃度を、Z軸はウェーブレット係数をそれぞれ示している。この線幅の設定は、最終的に抽出したいひび割れ幅の最大値によって設定すればよい。なお、画素幅ごとに、ひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ領域以外のウェーブレット係数が算定できる。
【0050】
本実施形態では、コンクリート表面と仮定される任意の濃度(階調)と、ひび割れと仮定される任意の濃度(階調)に対応する閾値(ウェーブレット係数)を算定するにあたり、例えば、ひび割れ幅が1画素幅の場合におけるひび割れ領域のウェーブレット係数と、ひび割れ幅が5画素幅の場合におけるひび割れ領域以外のウェーブレット係数との平均値をもって、設定したひび割れ幅範囲内において対象となる階調に対応した閾値としている。この閾値の設定は、勿論任意でかまわない。
【0051】
対比する2つの濃度の組み合わせをそれぞれ0〜255の256階調でおこなうことで、図6に示すようなウェーブレット係数テーブルの作成(ステップS30)がおこなわれる。なお、かかる作業は、図示するフロー位置でなくともよく、例えば、入力画像の作成前であってもかまわない。
【0052】
入力画像をウェーブレット変換することにより、ウェーブレット画像の作成(ステップS20)がおこなわれる。なお、クラックスケールの入力画像がある場合には、同様にクラックスケール画像のウェーブレット画像が作成される(ステップS21)。
【0053】
ウェーブレット画像は、上記するように、各画素が固有のウェーブレット係数を備えた連続量からなるものであり、各画素のウェーブレット係数を対応するウェーブレット係数テーブルのウェーブレット係数(閾値)と比較することにより、ひび割れ抽出画像の作成(ステップS40)がおこなわれる。例えば、任意の画素のウェーブレット係数が、該画素の濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの画素濃度はひび割れ濃度に対応する)と、局所領域内の近傍画素の平均濃度(ウェーブレット係数テーブルではこの局所領域内の近傍画素の平均濃度がコンクリート濃度に対応する)で一義的に決定されるウェーブレット係数(閾値)よりも大きな場合は、かかる画素をひび割れであると判定する。
【0054】
各画素のウェーブレット係数に対して同様の比較をコンピュータ内でおこなうことにより、例えば、黒い画面(コンクリート表面)内に、白い線分(ひび割れ)が描き出された2値化画像が作成され、この2値化画像からノイズを除去することにより、ひび割れ抽出画像が作成される(ステップS40)。
【0055】
このノイズの除去方法は、簡易には公知の画像編集ソフトを使用して、ドット部を除去する方法、所定長さ未満の線分を非クラック部として除去するといった方法がある。
【0056】
また、他の方法として、平滑化処理と輪郭線追跡処理によっておこなう方法がある。平滑化処理では、局所領域内の濃度の平均値(例えば、中央値)を該局所領域内の注目画素の濃度値とすることにより、2値化画像からノイズを除去してひび割れ箇所を絞り込む。この平滑化処理がおこなわれることにより、平滑化画像が作成される。
【0057】
次に、平滑化画像に対して輪郭線追跡処理をおこなう。輪郭線追跡処理は、各ひび割れ領域における任意のひび割れ画素を起点とし(第一画素)、例えば、この第一画素から反時計回りに隣接する画素に注目し、かかる隣接画素(第二画素)がひび割れ画素である場合には第一画素と第二画素を接続する。以後、同様に第二画素、第三画素、…、第n−1画素、第n画素とひび割れ画素の追跡をおこない、該n画素の次に起点となる第一画素がくる場合には、第一画素〜第n画素までを一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。あるいは、該n画素の次に続くひび割れ画素が存在しなくなった時点で、第一画素〜第n画素を一つのひび割れ箇所(ひび割れライン)と判定する。なお、ひび割れラインの中には、その途中で二股以上に分岐するようなひび割れ形態も含まれる。かかる次数nの設定は任意であり、第一画素からの追跡数がこの設定された次数n以上の場合をひび割れと判定することにより、ひび割れ抽出画像が作成される。
【0058】
次に、ステップS40にて作成されたひび割れ抽出画像において、ひび割れの中心線で構成され、たとえばひび割れ全体が一画素幅(一ピクセル幅)を有する細線化画像を作成する(ステップS50)。
【0059】
この細線化画像を使用してひび割れ幅の推定値を算定する。ここで、このひび割れ幅の推定に関しては、クラックスケール画像のウェーブレット係数を使用して細線化画像に関するウェーブレット係数を補正し(キャリブレートし)、その後にひび割れ幅の推定をおこなうステップS60Aと、かかるキャリブレーションをおこなわず、細線化画像に関するウェーブレット係数のみを使用してひび割れ幅の推定をおこなうステップS60とがある。まず、図7に基づいてステップS60を説明し、次いで、図8に基づいてステップS60Aを説明する。なお、ステップS60とステップS60Aのいずれか一方の選択、もしくは双方の選択はいずれも任意であり、たとえばクラックスケールの入力画像が作成できている場合には、ステップS60Aを選択し、そうでない場合にはステップS60を選択することができる。
【0060】
まず、ステップS60を図7に基づいて説明する。ステップS50で求められた細線化画像のウェーブレット係数の最大値と最小値を求め(ステップS1)、この最大値に対応する最大ひび割れ幅と最小値に対応する最小ひび割れ幅を設定する(ステップS2)。この最大値は、分解能のひび割れ幅に、最小値は画像解析で検出可能なひび割れ幅にそれぞれ設定できる。
【0061】
次に、ひび割れ幅の推定値を算定するための推定式を設定してひび割れ幅の推定をおこなう(ステップS3)。この推定式として、たとえば下式を使用することができる。
【0062】
【数5】
【0063】
ここで、Width:ひび割れ幅の推定値、Cmax、Cmin:細線化画像のウェーブレット係数の最大値、最小値、Wmax、Wmin:ウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅、WCは細線化画像のウェーブレット係数であって、本式の変数である。
【0064】
細線化画像のウェーブレット係数を定式に代入することによって対象となるひび割れのひび割れ幅を推定(特定)する。
【0065】
一方、ステップS60Aを図8に基づいて説明する。まず、クラックスケール画像のウェーブレット係数の最大値、最小値を求め(ステップS4)、クラックスケールのひび割れ幅ごとのウェーブレット係数の平均値を求め、線形関数による回帰式:y=ax+bの係数a,bを求める(ステップS5)。
【0066】
次に、ステップS50で求められた細線化画像のウェーブレット係数の最大値と最小値を求め(ステップS6)、この最大値、最小値とステップS4で求めておいたクラックスケールの最大値、最小値から構成される下式により、まず、細線化画像のウェーブレット係数の補正値(標準化された値)を求める(ステップS7)。
【0067】
【数6】
【0068】
ここで、N_WC:ウェーブレット係数の補正値(標準値)、Cmax、Cmin:細線化画像のウェーブレット係数の最大値、最小値、Smax、Smin:クラックスケールのウェーブレット係数の最大値、最小値、WCは細線化画像のウェーブレット係数であって、本式の変数である。
【0069】
上式にて補正されたウェーブレット係数を推定式である上回帰式(y=ax+b)に代入して、ひび割れ幅の推定をおこなう(ステップS8)。
【0070】
[ひび割れ幅とウェーブレット係数の相関性についての検証]
コンクリート上に添付したクラックスケールを6ケースの分解能で撮影した画像を図9の(a)〜(f)で示す。ここで、(a)、(b)はそれぞれ分解能が0.1、0.2mm/画素のデジタル一眼レフカメラによる撮影画像、(c)は分解能が0.3mm/画素のハイビジョンデジタルビデオによる撮影画像、(d)〜(f)はそれぞれ分解能が0.4、0.6,0.9mm/画素のビデオカメラによる撮影画像である。
【0071】
このクラックスケール画像を解析して得られたウェーブレット係数の0.04mm〜0.7mmまでのひび割れ幅ごとの平均値とひび割れ幅の関係を求め、これを図10に示している。
【0072】
図10より、ひび割れ幅が0.7mmまでに関しては、高分解能の画像で非線形の傾向を示すが、低分解能の画像になるに従って線形関係に近似する傾向が認められる。したがって、低分解能の画像の場合には、線形近似式(回帰式)でひび割れ幅を推定するのがよい。
【0073】
図11は、ひび割れ幅とウェーブレット係数の関係を線形関係:y=ax+bと想定し、ひび割れ幅は画像解析によって検出可能な範囲について回帰分析した結果である。ここで、画像解析によるひび割れ検出幅は分解能が0.1〜0.6mm/画素では0.04mm以上、分解能が0.9mm/画素では0.08mm以上のひび割れ検出が可能であった。さらに、全ての分解能で重相関係数がおよそ0.95以上と高い相間が認められ、ひび割れ幅とウェーブレット係数の高い相関性に関し、クラックスケール画像解析から確認することができた。
【0074】
[ひび割れ幅推定式の妥当性の検証(その1)とその結果]
上記するひび割れ幅の推定式の妥当性を、地下通路壁と道路橋床版の2ケースで検証した。ここでは、地下通路のコンクリート壁に関する検証とその結果を説明する。
【0075】
まず、地下通路壁に関し、2人の計測者A,Bでそれぞれ23箇所を計測し、図7に示すキャリブレーションなしの場合の推定式(数式5)と図8に示すキャリブレーションありの場合の推定式(数式6)の適中率を求めた。コンクリート表面上のひび割れを撮影した画像に図3の処理フローに従って細線化画像を作成し、細線化画像上の画素に対応するウェーブレット係数と計測値を評価する。図12は、分解能が0.9mm/画素(の低分解能)で撮影した画像の解析結果画像を示している。具体的には、図12aは撮影画像を、図12bは2値化画像を、図12cはひび割れ抽出画像を、図12dは細線化画像をそれぞれ示している。
【0076】
また、キャリブレーションの有無(ステップS60かステップS60Aか)、計測者A,B、誤差範囲(±0.1mm、±0.15mm)について、分解能ごとの適中率に関する結果を図13〜図16に示している。具体的には、図13はキャリブレーションなし(ステップS60)で誤差範囲±0.1mmの場合の結果を、図14は、キャリブレーションあり(ステップS60A)で誤差範囲±0.1mmの場合の結果を、図15はキャリブレーションなし(ステップS60)で誤差範囲±0.15mmの場合の結果を、図16は、キャリブレーションあり(ステップS60A)で誤差範囲±0.15mmの場合の結果をそれぞれ示している。
【0077】
ここで、推定値と実測値が誤差範囲内であれば「適中」、誤差範囲外であれば「不適中」とし、ひび割れを検出できない場合は「未検出」とした。
【0078】
さらに、キャリブレーションなしにおけるウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅の設定を図17に示している。ここで、ウェーブレット係数の最小値(Min)に対応するひび割れ幅は各分解能で検出可能なひび割れ幅とし、ウェーブレット係数の最大値(Max)は計測値とのばらつきの最も少ないひび割れ幅の値としている。
【0079】
図18の平均誤差では、分解能によって誤差の大きさが異なるものの、全体的には0.1mm以内に収まっていることが分かる。
【0080】
検証の結果、以下の(1)〜(5)内容が確認できた。
【0081】
(1)キャリブレーションの有無、計測者に関わらず、誤差範囲が±0.1mmで65〜80%、誤差範囲が±0.15mmで80〜90%の高い適中率が得られる。
(2)ひび割れ幅の平均誤差はキャリブレーションの有無や計測者に関わらず0.1mm以内に収まっている。
(3)ウェーブレット係数の最大値、最小値に対応するひび割れ幅の設定により、適中率の結果が異なってくることが分かり、したがって、この設定方法の如何が重要な要素の一つである。
(4)今回は低分解能の画像に対するひび割れの推定を目的としており、分解能が0.4〜0.6mm/画素ではキャリブレーションの有無に関わらず90%の高い推定精度が得られ、分解能が0.9mm/画素においても誤差範囲が±0.1mmで70〜80%、誤差範囲が±0.15mmで80%の高い推定精度が得られる。
(5)ひび割れ計測個数が少ないため、適中率の精度向上を図るにはより多くの計測値と比較検証する必要があることから、後述する道路橋床版データでの検証を追加する。
【0082】
[ひび割れ幅推定式の妥当性の検証(その2)とその結果]
7箇所の床版パネルの撮影画像を対象として、ランダムに選定したひび割れ幅0.05〜0.4mmまでのひび割れ計測を実施した。90箇所の計測値に関する床版パネルおよびひび割れ幅データの分布を図19に示す。
【0083】
各ひび割れ画像からひび割れと判定された全ての画素のウェーブレット係数値を計算し、その中から最大値と最小値を求めた。図20は、分解能が0.8mm/画素で撮影した7枚の画像データの例を示している。ここで、ウェーブレット係数の最大値と最小値は撮影画像ごとにばらつきが生じているため、全ての撮影画像におけるウェーブレット係数の最大値と最小値を求め、全体のウェーブレット係数の最大値と最小値をそれぞれ設定した。図20の例では、最大値が6675、最小値が1682である。
【0084】
ウェーブレット係数の最大値は1画素の分解能が0.8mmに相当し、最小値は7枚の撮影画像から検出可能な最小ひび割れ幅の0.1mmであることから、ウェーブレット係数の最小値はひび割れ幅0.1mmに相当すると仮定した。
【0085】
要求するひび割れ幅の単位ごとにウェーブレット係数の最大値と最小値を用いて線形補間することにより、既述するひび割れ幅とウェーブレット係数の関係式を作成した。
【0086】
道路橋床版における検証結果を図21,22に示す。ここで、図21は誤差範囲が±0.1mmの場合を、図22は誤差範囲が±0.15mmの場合をそれぞれ示している。
【0087】
検証の結果、低分解能である0.8mm/画素において、以下の(1)〜(4)内容が確認できた。
【0088】
(1)誤差範囲が±0.1mmでは適中率が64.4%、誤差範囲が±0.15mmでは適中率が77.8%と高い精度でひび割れ幅を特定できることが実証できた。
(2)ひび割れ幅が0.1mm以下の検出は難しい。
(3)ひび割れ幅0.15mm以上の検出は撮影画像の良否に依存する。
(4)ひび割れ幅0.2mm以上では適中率は高くなるが、小さなひび割れ幅の場合には解析値が大きめとなり、大きなひび割れ幅の場合には解析値が小さめの傾向を呈する。
【0089】
以上、本発明の実施の形態を、図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】入力画像と局所領域の関係を示した模式図である。
【図2】局所領域と注目画素の関係を示した模式図である。
【図3】本発明のひび割れ検出方法を示したフローである。
【図4】擬似画像を示した図である。
【図5】図4の擬似画像のウェーブレット係数の鳥瞰図である。
【図6】ウェーブレット係数テーブルの一実施の形態を示した図である。
【図7】図3のフローにおけるステップS60に関するフローである。
【図8】図3のフローにおけるステップS60Aに関するフローである。
【図9】クラックスケール画像を示した図であり、(a)、(b)はそれぞれ、分解能が0.1mm/画素、0.2mm/画素のデジタル一眼レフカメラの場合を、(c)は分解能が0.3mm/画素のハイビジョンデジタルビデオの場合を、(d)、(e)、(f)はそれぞれ分解能が0.4mm/画素、0.6mm/画素、0.9mm/画素のデジタルビデオの場合を示している。
【図10】図9の各ケースのひび割れ幅とウェーブレット係数の関係を示したグラフである。
【図11】回帰分析結果を示したテーブルである。
【図12】地下通路壁の分解能0.9mm/画素の、(a)は撮影画像を、(b)は2値化画像を、(c)はひび割れ抽出画像を、(d)は細線化画像をそれぞれ示した図である。
【図13】地下通路壁でキャリブレーションなし、誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図14】地下通路壁でキャリブレーションあり、誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図15】地下通路壁でキャリブレーションなし、誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図16】地下通路壁でキャリブレーションあり、誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図17】地下通路壁のウェーブレット係数の最大値、最小値とこれに対応するひび割れ幅を示したテーブルである。
【図18】地下通路壁の平均誤差を示したテーブルである。
【図19】道路橋床版のひび割れ計測結果を示したテーブルである。
【図20】道路橋床版のウェーブレット係数の最大値、最小値を示したテーブルである。
【図21】道路橋床版で誤差範囲が±0.1mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【図22】道路橋床版で誤差範囲が±0.15mmの場合の適中率/未検出に関する検証結果である。
【符号の説明】
【0091】
1…入力画像、2…広域領域、3…局所領域、31…近傍画素、32…注目画素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、
前記2つのウェーブレット係数、および、相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、
を具備することを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のひび割れ検出方法において、
前記大小2つのウェーブレット係数は、細線化画像に対応するウェーブレット係数中の最大値と最小値であり、
前記2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅はウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅はウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であることを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項3】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
前記第一工程では、コンクリート表面にクラックスケールを密着させ、該クラックスケールを含むコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力するものであり、かつ、この入力画像をウェーブレット変換することによってひび割れ画像とクラックスケール画像双方のウェーブレット画像を作成するものであり、
さらに、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、クラックスケール画像に関するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出し、これを回帰分析することで回帰式を決定する係数を求め、細線化画像に対応するウェーブレット係数から抽出された前記大小2つのウェーブレット係数、およびクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数で構成される第二の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、細線化画像に対応するウェーブレット係数の補正値を求める第三工程と、
前記回帰式を決定する係数で構成される第三の関係式に前記補正値を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、
を具備することを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載のひび割れ検出方法において、
前記大小2つのウェーブレット係数は、細線化画像に対応するウェーブレット係数中の最大値と最小値であり、
前記細線化画像の2つのウェーブレット係に対応する相対的に大きなひび割れ幅は細線化画像に関するウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅は細線化画像に関するウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であり、
前記クラックスケール画像の2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅はクラックスケール画像に関するウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅はクラックスケール画像に関するウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であることを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項1】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、該2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅を設定する第三工程と、
前記2つのウェーブレット係数、および、相対的に大きなひび割れ幅と小さなひび割れ幅で構成される第一の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、
を具備することを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のひび割れ検出方法において、
前記大小2つのウェーブレット係数は、細線化画像に対応するウェーブレット係数中の最大値と最小値であり、
前記2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅はウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅はウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であることを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項3】
コンクリート表面に生じているひび割れの検出をおこなうひび割れ検出方法であって、
対比される2つの濃度に対応したウェーブレット係数を算定するとともに、該2つの濃度をそれぞれ変化させた場合のそれぞれのウェーブレット係数を算定してウェーブレット係数テーブルを作成し、ひび割れ検出対象であるコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力して入力画像とし、該入力画像をウェーブレット変換することによってウェーブレット画像を作成する第一工程と、ウェーブレット係数テーブル内において局所領域内の近傍画素の平均濃度と注目画素の濃度に対応するウェーブレット係数を閾値とし、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも大きな場合は該注目画素をひび割れと判定し、注目画素のウェーブレット係数が閾値よりも小さな場合は該注目画素をひび割れでないと判定し、局所領域および注目画素を変化させながら注目画素のウェーブレット係数と閾値との比較をおこない、ひび割れ以外のノイズを除去することによってひび割れ抽出画像を作成する第二工程と、からなるひび割れ検出方法において、
前記第一工程では、コンクリート表面にクラックスケールを密着させ、該クラックスケールを含むコンクリート表面の撮影画像をコンピュータに入力するものであり、かつ、この入力画像をウェーブレット変換することによってひび割れ画像とクラックスケール画像双方のウェーブレット画像を作成するものであり、
さらに、細線化処理を実行してその中心線で構成されるひび割れの細線化画像を作成し、該細線化画像に対応するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出するとともに、クラックスケール画像に関するウェーブレット係数から大小2つのウェーブレット係数を抽出し、これを回帰分析することで回帰式を決定する係数を求め、細線化画像に対応するウェーブレット係数から抽出された前記大小2つのウェーブレット係数、およびクラックスケール画像に関する大小2つのウェーブレット係数で構成される第二の関係式に前記細線化画像に対応するウェーブレット係数を代入することで、細線化画像に対応するウェーブレット係数の補正値を求める第三工程と、
前記回帰式を決定する係数で構成される第三の関係式に前記補正値を代入してひび割れ幅を推定する第四工程と、
を具備することを特徴とするひび割れ検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載のひび割れ検出方法において、
前記大小2つのウェーブレット係数は、細線化画像に対応するウェーブレット係数中の最大値と最小値であり、
前記細線化画像の2つのウェーブレット係に対応する相対的に大きなひび割れ幅は細線化画像に関するウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅は細線化画像に関するウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であり、
前記クラックスケール画像の2つのウェーブレット係数に対応する相対的に大きなひび割れ幅はクラックスケール画像に関するウェーブレット係数の最大値に対応する最大ひび割れ幅であり、相対的に小さなひび割れ幅はクラックスケール画像に関するウェーブレット係数の最小値に対応する最小ひび割れ幅であることを特徴とするひび割れ検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−267943(P2008−267943A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110174(P2007−110174)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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