説明

めっきレジスト用樹脂組成物および多層プリント配線板

【課題】部分スルーホール形成に有用なめっきレジスト用樹脂組成物およびこの組成物を用いてスルーホールが分割された部分スルーホールを有する多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】層間絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板の層間絶縁層の一部として用いられるめっきレジスト用樹脂組成物であって、樹脂固形分に対して30〜90質量%の酸化チタンを含むことを特徴とするめっきレジスト用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっきレジスト用樹脂組成物および多層プリント配線板に関し、詳しくは、部分スルーホール形成に有用なめっきレジスト用樹脂組成物、および、スルーホール内の部分めっきレジストによりスルーホールが分割された部分スルーホールを有する多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、回路設計に基づいて、部品間を接続するための導体パターンが絶縁基板の表面、または、表面及び内部にプリントによって形成されたものであり、電子部品が所定の場所に配置され、はんだ付けが行われる。近年、携帯電話、携帯電子端末、パーソナルコンピュータ等の電子製品の小型化により、それら電子製品内部で使用されるプリント配線板の高密度化が求められている。
【0003】
多層プリント配線板は、部品の実装密度の上昇および回路配線の複雑化に対応する為に、絶縁性を有する樹脂から構成される絶縁層と、導体パターンがプリントされた導体層とが交互に積層されたものである。複数の導体層は、層間を貫通し、導電性物質でめっきされたスルーホールにより接続される。スルーホールは、絶縁層および導体層を積層し、ドリル等で穴を穿った後に、めっきを施すことにより形成されるが、該めっき処理によりスルーホール全体が導電性物質でめっきされる。スルーホール全体がめっきされると、所望する導体層の接続にとって不要な部分まで導電性物質がめっきされ、信号伝達の保全性を妨げる恐れがあることや、スルーホールを分割することでより複雑な回路パターンの実現を図るために、スルーホール内に、めっきレジスト部分を形成することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、導電層に挟まれた非導電性誘電体層を有するサブコンポジット構造を備える多層プリント配線板であって、導電層がめっきレジストを充填された間隙を含み、スルーホールが該めっきレジストを貫通し、めっきレジストがない部分に導電性材料がめっきされることにより分割されたビア構造が形成された多層プリント配線板が開示されている。特許文献1におけるめっきレジストは、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂、フルオロカーボン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などの疎水性絶縁材料である。特許文献1では、疎水性絶縁材料が、めっきに必要な触媒種が堆積するのを防ぐことでめっきレジスト作用を奏するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−532326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、めっきレジストを製造した実施例は記載されておらず、実際に良好な結果が得られるか否か不明である。また、使用される疎水性絶縁材料と導電層ないし非導電性誘電体層との密着性から、長期使用時の信頼性という面で問題が指摘される。さらに、特許文献1ではめっきレジストの疎水性により触媒種(シード)の堆積を防ぐとされているが、完全に堆積を防ぐことができるものではなく、少量の堆積が起きた場合には後処理操作により残留堆積物を除去する必要があることが開示されている。そのため、ホール内のめっきレジストのさらなる改良が求められていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、部分スルーホール形成に有用なめっきレジスト用樹脂組成物およびこの組成物を用いてスルーホールが分割された部分スルーホールを有する多層プリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、酸化チタンを含有する樹脂組成物を使用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、層間絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板の層間絶縁層の一部として用いられるめっきレジスト用樹脂組成物であって、溶剤を除く樹脂組成物中に30〜90質量%の酸化チタンを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、樹脂成分として、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
即ち、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、層間絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板の層間絶縁層の一部として用いられるめっきレジスト用樹脂組成物であって、樹脂固形分に対して30〜90質量%の酸化チタンを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、樹脂成分として、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の多層プリント配線板は、層間絶縁層と導体層とが交互に積層され、スルーホールを介して層間を導通してなる多層プリント配線板において、前記層間絶縁層と導体層の少なくとも1つの層間のスルーホールに露出する部分に、樹脂固形分に対して30〜90質量%の酸化チタンを含有するめっきレジスト用樹脂組成物の硬化物層が形成されてなり、前記スルーホールが部分めっきスルーホールを構成することを特徴とするものである。
【0014】
本発明のプリント配線板は、前記スルーホールが、めっきレジスト部以外の部分が銅によりめっきされ、部分めっきスルーホール構造を有することが好ましい。
【0015】
また、本発明のプリント配線板は、前記めっきレジスト用樹脂組成物が、樹脂成分としてエポキシ樹脂とフェノール樹脂を含むものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のプリント配線板においては、前記めっきレジスト用樹脂組成物の硬化物100質量部に対して酸化チタンの含有量が30〜90質量部であることが好ましい。
【0017】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、回路配線が形成された基板上の所定の位置に酸化チタンを含有するめっきレジスト層を有する配線基板を用いて加熱プレスすることにより多層化する工程と、
多層化された配線板に対し、めっきレジスト部を貫通するようにドリルまたはレーザーによりスルーホール用開口を形成する工程と、
デスミア処理を行う工程と、
めっき処理を施す工程と、
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、部分スルーホール形成に有用なめっきレジスト用樹脂組成物およびこの組成物を用いてスルーホールが分割された部分スルーホールを有する多層プリント配線板を提供することができる。部分スルーホールとすることで、スルーホール内に存在する不要な導体部分による信号への悪影響(スタブ効果)を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物を用いたプリント配線板のスルーホール形成過程を表す断面模式図である。
【図2】図2は、従来のプリント配線板のスルーホール形成過程を表す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、層間絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板の層間絶縁層の一部として用いられるめっきレジスト用樹脂組成物であって、樹脂固形分に対して30〜90質量%の酸化チタンを含むことを特徴とするものである。
本発明の多層プリント配線板は、酸化チタンを含有するめっきレジスト用樹脂組成物を硬化してなるめっきレジスト部をスルーホール内部に備えることを特徴とするものである。
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物の実施態様の一例を、図1を用いて説明する。図1(A)のように、プリプレグを介して、導体層と絶縁層を有する配線板と、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物を塗布・乾燥した配線板とを加熱プレスすることにより、図1(B)のような多層プリント配線板を作製する。次に、図1(C)のようにドリルでスルーホール用開口を形成し、デスミア処理を施した後に、無電解・電解銅めっきを施すと、図1(D)のようにスルーホールが形成される。このとき、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物を硬化してなるめっきレジスト部には、めっきが施されない為、スルーホールがここで分割され、部分スルーホールを形成することができる。部分(めっき)スルーホールとは、スルーホール内に存在するめっきレジスト部により、スルーホールが電気的に分割されたスルーホールである。
これに対して、図2(A)のように、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物を塗布しないプリント配線板同士を、プリプレグを介して加熱プレスすることにより、図2(B)のような従来の多層プリント配線板が作製される。次に、図2(C)のようにドリルでスルーホール用開口を形成し、デスミア処理を施した後に、無電解・電解銅めっきを施すと、図2(D)のようにスルーホール用開口全体がめっきされ、スルーホールが形成される。
以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0021】
<めっきレジスト用樹脂組成物>
本発明にかかるめっきレジスト用樹脂組成物は、酸化チタンを含有する樹脂組成物である。詳細な機構は必ずしも明らかではないが、酸化チタンが、めっきに必要な、パラジウムなどの触媒核の活性を阻害することにより、めっきレジストとして作用すると考えられる。酸化チタンとしては、公知のものが使用可能であり、アナターゼ型、ルチル型、ブルサイト型のいずれであってもよい。めっきレジスト用樹脂組成物中の酸化チタンの含有量は、溶剤を除く樹脂組成物中に30〜90質量%であり、好ましくは40〜80質量%である。30質量%未満ではめっきの析出が起きてしまうおそれがあり、90質量%を超えるとペースト状に調整することや、印刷することが困難になることがある。
また、本発明にかかるプリント配線板中のめっきレジストにおける酸化チタンの含有量は、めっきレジスト用樹脂組成物を硬化してなる硬化物100質量部に対して30〜90質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。
【0022】
めっきレジスト用樹脂組成物に含まれる樹脂は、多層プリント配線板において、絶縁層として使用される樹脂であれば、いずれのものも使用することができる。そのような樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂が挙げられる。これら樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル(PPE)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0024】
ポリイミド樹脂としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」、「リカコートPN20」が挙げられる。その他、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0025】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂は、後述するように、熱硬化性樹脂の硬化剤としても用いられ得る。
【0026】
熱硬化性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルの一部または全部にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、無水ジカルボキシル基などの反応性官能基をグラフト反応や共重合などの方法により導入した変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0027】
また、熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)等のイミダゾール系硬化剤、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン等のアミン系硬化剤、ポリアミド、ビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂、フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂等のフェノール系硬化剤、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の酸無水物系硬化剤など公知の硬化剤を使用できる。
【0028】
また、上記硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂成分100質量部に対して、0.5〜20質量部が望ましい。硬化剤の配合量が0.5質量部未満では、樹脂組成物の硬化が不充分な場合があり、20質量部を超えて配合しても量に見合った効果が得られない場合がある。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑型ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフォン(PPES)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシ共重合体(PFA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン系樹脂などが使用できる。
【0030】
本発明においては、樹脂複合体を使用することもできる。例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の樹脂複合体として、エポキシ樹脂−PES、エポキシ樹脂−PSF、エポキシ樹脂−PPS、エポキシ樹脂−PPESなどが使用できる。
【0031】
感光性樹脂としては、ポリイミド前駆体(a)に感光性基を付与した感光性ポリイミドなどが挙げられる。感光性ポリイミドとしては、例えば、特開昭54−145794号公報を特公昭55−030207号公報、特公昭55−041422号公報、特開昭 59−160140号公報、特開平03−170547号公報、特開平03−186847号公報、特開昭61−118424号公報、特開平11−52569号公報、特開平10−316751号公報、特開平6−295063号公報記載のものなどが挙げられる。
【0032】
本発明にかかるめっきレジスト用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有することが好ましく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を含有するものがより好ましい。
【0033】
上記樹脂組成物は、必要に応じてさらに、溶剤、稀釈剤、硬化促進剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃剤、光重合開始剤等を含有していてもよい。
【0034】
<スルーホール>
本発明の多層プリント配線板において、スルーホール用開口は、めっきレジスト部を貫通するように形成されたものである。スルーホール用開口をめっき処理することで、スルーホールが形成される。上記したように、部分スルーホールは、めっきレジスト部により、スルーホールが電気的に分割されたものである。
【0035】
<導体層>
本発明の多層プリント配線板における導体層は、銅、ニッケル、スズ、金またはこれらの合金などの導電体により形成された回路パターンである。回路パターンの形成方法は、公知のいずれの方法でもよく、例えば、サブトラクティブ法、アディディブ法が挙げられる。
【0036】
<層間絶縁層>
本発明の多層プリント配線板における層間絶縁層は、多層プリント配線板の絶縁層として使用されているものであれば、いずれの材料から構成されるものであってもよく、好ましくは、樹脂組成物を硬化してなるものである。樹脂組成物は、液状のものでもよく、シート状のものでもよい。
【0037】
(コア基板)
本発明の多層プリント配線板は、コア基板を有していてもよい。コア基板は、多層プリント配線板において、導電層及び層間絶縁層を形成させるためのベースとなる基板であり、心材としての役割を担う基板である。コア基板のベースとなる材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をガラスクロス等に含浸して硬化させたガラスエポキシ材、セラミック、金属コア基板などを挙げることができる。
【0038】
(めっき)
本発明の多層プリント配線板は、めっきによりスルーホール用開口のめっきレジスト以外の部分が導電性物質で被覆される。めっき処理は、無電解めっきにより行われ、所望によりその後さらに電解めっきを施してもよい。無電解めっき用の触媒核としては、例えば、パラジウム、スズ、銀、金、白金、銅およびニッケルまたはこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくはパラジウムである。無電解めっきとしては、無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解ニッケル−タングステン合金めっき、無電解スズめっき、無電解金めっき等が挙げられ、無電解銅めっきが好ましい。無電解めっきの膜厚は、0.1〜5μmが好ましい。
【0039】
<多層プリント配線板の製造方法>
本発明にかかる多層プリント配線板の製造方法は、回路配線が形成された基板上の所定の位置に酸化チタンを含有するめっきレジスト樹脂組成物を塗布・乾燥してなるめっきレジスト層を有する配線基板を、例えばエポキシプリプレグを介して加熱プレスすることにより多層化する工程と、多層化された配線板に対し、めっきレジスト部を貫通するようにドリルまたはレーザーによりスルーホール用開口を形成する工程と、デスミア処理を行う工程と、めっき処理を施す工程と、を備えることを特徴とするものである。
ここで、プリプレグは、ガラス布等の基材にエポキシ樹脂組成物、ビスマレイミドトリアジン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物等のワニスを含浸した後、これを加熱乾燥して半硬化させたシートであり、例えば、パナソニック電工(株)製のR−1410A、R−5670(K)、R−1650D、R−1551等、三菱ガス化学(株)製のGEPL−190、GHPL−830等、日立化成工業(株)製のMCL−E−67、MCL−I−671等が挙げられる。
【0040】
(加熱プレス)
加熱プレスは、公知の方法を用いて行うことができる。プレス条件は、150〜200℃で20〜60Kg/cmが好ましい。
【0041】
(デスミア処理)
デスミア処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができ、また酸素プラズマ、CFと酸素の混合プラズマやコロナ放電などで処理してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0043】
(樹脂組成物の調製)
下記表1に従って各成分を3本ロールミルで混練し、実施例1〜4、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。表中の数字は、質量部を表す。
【0044】
(評価基板の作成)
実施例1〜4、比較例1〜3の樹脂組成物を、銅ベタのFR−4基板上にスクリーン印刷により乾燥後の塗膜の膜厚が約30μmとなるようにパターン印刷し、次に熱風循環式乾燥機にて120℃で20分乾燥し、次に乾燥後の基板と銅ベタのFR−4基板をエポキシプリプレグ(パナソニック電工(株)製のR−1650D)を介して150℃で60分、圧力20kg/cmで加熱プレスし、最後にドリル加工を行い穴径0.7mmのスルーホール用開口を形成し実施例1〜4、比較例1〜3の試験基板を作製した。
【0045】
(デスミア処理工程)
実施例1〜4、比較例1〜3の試験基板について、膨潤液としてサーキュポジットMLBコンディショナー211(ロームアンドハース社製、200ml/l)およびサーキュポジットZ(ロームアンドハース社製、100ml/l)の混合液に80℃で5分浸漬し、次に粗化液としてサーキュポジットMLBプロモーター213A(ロームアンドハース社製、100ml/l)およびサーキュポジットMLBプロモーター213B(ロームアンドハース社製、150ml/l)の混合液に、80℃で10分浸漬し、最後に、中和液としてサーキュポジットMLBニュートラライザー216−2(ロームアンドハース社製、200ml/l)に、50℃で5分間浸漬した。
【0046】
(無電解銅めっき処理工程)
デスミア処理後、クリナーコンディショナー工程としてクリーナーセキュリガントP500(アトテック社製、40ml/l)に50℃で5分浸漬し、次にプレディップ工程としてプレディップネオガントB(アトテック社製、20ml/l)及び硫酸(1ml/l)の混合液に25℃で1分浸漬し、次に触媒付与工程としてアクチベーターネオガント834コンク(アトテック社製、40ml/l)及び水酸化ナトリウム(4g/l)、ホウ酸(5g/l)の混合液に35℃で5分浸漬し、次に還元工程としてリデューサーネオガントWA(アトテック社製、5ml/l)及びホウ酸(25g/l)の混合液に25℃で1分浸漬し、最後に無電解銅めっき工程としてベーシックソリューションプリントガントMSK(アトテック社製、80ml/l)及びカッパーソリューションプリントガントMSK(アトテック社製、40ml/l)、リデューサーCu(アトテック社製、14ml/l)、スタビライザープリントガントMSK(アトテック社製、3ml/l)の混合液に35℃で10分浸漬し、その後熱風循環式乾燥機で100℃で30分乾燥した。
【0047】
(電解銅めっき処理工程)
無電解銅めっき処理後、酸洗クリーナー工程として酸洗クリーナーFR(アトテック社製、100ml/l)及び硫酸(100ml/l)の混合液に30℃で1分浸漬し、次に酸浸漬工程として硫酸(100ml/l)に25℃で1分浸漬し、最後に硫酸銅電気めっき工程として硫酸銅(II)5水和物(80ml/l)及び硫酸(200ml/l)、塩素(50mg/l)、添加剤カパラシドHL(アトテック社製、10ml/l)、補正剤カパラシドGS(アトテック社製、0.1ml/l)の混合液に23℃で60分(電流密度 1A/dm)浸漬し、その後熱風循環式乾燥機で150℃で60分乾燥した。
【0048】
(評価方法)
電解銅めっき処理後クロスセクションにて基板の断面を研磨し、スルーホール部の断面を顕微鏡で観察し、実施例1〜4、比較例1〜3の樹脂組成物への銅めっきの付着の有無を確認し、下記判定基準に従って評価した。結果を下記表1に示す。
【0049】
(判定基準)
○:スルーホール中のレジスト部分がめっきされない。
△:スルーホール中のレジスト部分が一部めっきされる。
×:スルーホール中のレジスト部分がめっきされる。
【0050】
【表1】

※1:jER828 三菱化学株式会社製
※2:HF−1M(フェノールノボラック樹脂 明和化成株式会社製)のカルビトールアセテートカット品(固形分65質量%)
※3:CR−58 石原産業株式会社製
※4:KA−15 チタン工業株式会社製
※5:1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール) 四国化成工業株式会社製
【符号の説明】
【0051】
1 導体層
2 絶縁層
3 プリプレグ
4 めっきレジスト
5 ドリル
6 スルーホール用開口
7 部分スルーホール
8 導体層
9 絶縁層
10 プリプレグ
11 ドリル
12 スルーホール用開口
13 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁層と導体層とが交互に積層されてなる多層プリント配線板の層間絶縁層の一部として用いられるめっきレジスト用樹脂組成物であって、溶剤を除く樹脂組成物中に30〜90質量%の酸化チタンを含むことを特徴とするめっきレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂成分として、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む請求項1記載のめっきレジスト用樹脂組成物。
【請求項3】
層間絶縁層と導体層とが交互に積層され、スルーホールを介して層間を導通してなる多層プリント配線板において、前記層間絶縁層と導体層の少なくとも1つの層間のスルーホールに露出する部分に、樹脂固形分に対して30〜90質量%の酸化チタンを含有するめっきレジスト用樹脂組成物の硬化物層が形成されてなり、前記スルーホールが部分めっきスルーホールを構成することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項4】
前記スルーホールが、めっきレジスト部以外の部分が銅によりめっきされ、部分めっきスルーホール構造を有する請求項3記載の多層プリント配線板。
【請求項5】
前記めっきレジスト用樹脂組成物が、樹脂成分としてエポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む請求項3記載の多層プリント配線板。
【請求項6】
前記めっきレジスト用樹脂組成物の硬化物100質量部に対して酸化チタンの含有量が30〜90質量部である請求項3〜5のいずれか一項記載の多層プリント配線板。
【請求項7】
回路配線が形成された基板上の所定の位置に酸化チタンを含有するめっきレジスト層を有する配線基板を用いて加熱プレスすることにより多層化する工程と、
多層化された配線板に対し、めっきレジスト部を貫通するようにドリルまたはレーザーによりスルーホール用開口を形成する工程と、
デスミア処理を行う工程と、
めっき処理を施す工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256636(P2012−256636A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127444(P2011−127444)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】