説明

めっき治具

【課題】被めっき品の側面にめっきを付着させず、被めっき品の片面に確実にめっきを施すことを可能にするめっき治具を提供する。
【解決手段】被めっき品10の外周側面を囲む枠状に形成され、内側面を被めっき品の側面に押接して該側面をシールするシール材30と、シール材30を外側から囲み、シール材の外周側面の位置を規制する拘束部材20と、拘束部材の内側に配置され、シール材と該シール材の内側に配置される被めっき品とを支持する支持部材22と、拘束部材の内側に、押圧面24aを支持部材22に対向させ、被めっき品10の外面10aを露出させて装着され、シール材30を支持部材22との間に介在させて挟圧する押圧部材24とを備え、シール材30は、拘束部材20、支持部材22及び押圧部材24により被めっき品10の側面に押接される面を除く三方の面を拘束しながら押圧部材24により押圧されることにより、シール材30が変形して被めっき品10の側面に内側面を押圧する変形しろを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被めっき品を部分的に遮蔽してめっきする際に用いるめっき治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の電子部品には、放熱板や、封止用キャップ等の金属製の部品が使用されている。通常、これらの金属部品には、表面保護等を目的としてめっきが施される。表面保護を目的とする場合は、金属部品の全面に同一のめっきを施すことが多いが、製品によっては金属部品の一部にのみめっきを施したり、金属部品の一方の面と他方の面に異なるめっきを施すといった場合がある。たとえば、平板状の金属部品の一方の面と他方の面とで、異なるめっきを施すといった場合がある。
【0003】
このように、金属部品の一部にめっきを施したり、同一の金属部品において異なるめっきを施すような場合には、金属部品(被めっき品)でめっきを施したくない部分にマスク用のテープを貼って非めっき部分を遮蔽する方法や、マスク用の部材を用いて被めっき品を部分的に被覆してめっきするといった方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−283157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被めっき品にマスク用のテープを貼着してめっきする方法は、非めっき部分が狭領域であるような場合には、非めっき部分に正確にテープを貼って非めっき部分を確実に遮蔽することが難しいという問題があり、また、めっき後にテープを除去しなければならないという煩雑さがある。また、マスク用の部材により被めっき品を部分的に遮蔽してめっきする方法は、被めっき品の片面にめっきを付着させず他方の面のみをめっきするといった単純なめっき方法には使えても、平板状の被めっき品の側面部分にはめっきを付着させないようにして被めっき品の片面をめっきするとった精度が求められるめっきには、ばらつきが大きいために使用することができない。
【0006】
本出願は、被めっき品の側面にめっきを付着させず、被めっき品の片面にめっきを施すといっためっき(表面処理)に好適に利用でき、歩留まりよくめっきすることを可能にするめっき治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、本発明に係るめっき治具は、被めっき品の外周側面を囲む枠状に形成され、内側面を被めっき品の側面に押接して該側面をシールするシール材と、前記シール材を外側から囲み、前記シール材の外周側面の位置を規制する拘束部材と、前記拘束部材の内側に配置され、前記シール材と該シール材の内側に配置される被めっき品とを支持する支持部材と、前記拘束部材の内側に、押圧面を前記支持部材に対向させ、前記被めっき品の外面を露出させて装着され、前記シール材を前記支持部材との間に介在させて挟圧する押圧部材とを備え、前記シール材は、前記拘束部材、支持部材及び押圧部材により前記被めっき品の側面に押接される面を除く三方の面を拘束しながら前記押圧部材により押圧されることにより、シール材が変形して前記被めっき品の側面に内側面を押圧する変形しろを有することを特徴とする。
前記シール部材は、押圧部材によって押圧することによって変形する柔軟性を備えるものである。また、枠状とは平面形状が矩形の枠状に限らず、円形あるいは多角形の枠状とする場合を含む。また、拘束部材と支持部材とは一つの部品として一体的に形成することもできる。
【0008】
前記シール材の変形しろは、前記シール材の厚さを前記被めっき品の厚さを上回るように設定することによって設けることができる。なお、被めっき品の厚さとは、前記支持部材上の被めっき品を支持している部位における厚さ、いいかえればシール材の内側面が対向する被めっき品の側面部分に相当する部分の厚さである。
前記シール材は、枠部の内周縁によって囲まれる平面形状が、前記被めっき品の平面形状よりも、相似的に小さく形成されていることにより、シール材と被めっき品の側面とのシール性がさらに良好となる。
また、前記押圧部材は、内周縁の平面形状が前記被めっき品の平面方向の外形形状に一致する枠体状に形成されていることにより、押圧部材によりシール材を押圧した際に被めっき品の外面を正確に露出させてめっきすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるめっき治具によれば、変形しろを有するシール材を、拘束部材、支持部材及び押圧部材によって拘束しながら、押圧部材により押圧することにより、被めっき品の側面にシール材の内側面を押圧させ、めっき液が被めっき品の側面に侵入することを防止してめっきすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】めっき治具の全体構成を示す斜視図である。
【図2】拘束部材と支持部材の組立体にシール材をセットする状態の断面図である。
【図3】シール材をセットした状態のめっき治具の断面図である。
【図4】放熱板をセットした状態のめっき治具の断面図である。
【図5】シール材によって放熱板のフランジ部の側面をシールする状態のめっき治具の断面図である。
【図6】被めっき品の一例としての放熱板の斜視図(a)及び正面図(b)である。
【図7】めっき治具の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るめっき治具とこのめっき治具を用いてめっきする例として、平板状に形成された金属製の放熱板を被めっき品としてめっきする方法について説明する。
図6は、本実施の形態のめっき治具を用いてめっきする対象品(被めっき品)である放熱板10を示す。この放熱板10は、平面形状が正方形に形成され、放熱板10の一方の面である外面10a(パッケージに取り付けた際に外部に露出する面)が平坦面に形成され、他方の面に突部10bが形成されている。放熱板10の周縁部はフランジ部10cとして形成され、放熱板10の周縁部は段差形状となっている。
【0012】
図6に示す放熱板10は、フランジ部10cの厚さ部分を含めて突部10bがパッケージ内に収容され、外面10aがパッケージの外面と均一面となって外面10aのみが外部に露出してパッケージに装着される。
このように、パッケージに装着した際に外面10aのみが外部に露出する放熱板10では、放熱板10の外面10aと、外面10aを除く領域(フランジ部10cの側面と突部10bの表面)とに異なるめっきを施して提供する場合がある。たとえば、外面10aには耐環境性に優れる金めっきを施し、外面10a以外の領域にはパッケージとの接合性の良いニッケルめっきを施すといった例である。
【0013】
放熱板10の外面10aと、外面10a以外の領域とに異なるめっきを施すには、放熱板10の一方の面である外面10aを遮蔽板によって遮蔽し、外面10a以外の領域を露出させてめっきを施し、次いで、外面10a以外の領域を遮蔽して外面10aのみにめっきを施せばよい。外面10aのような平坦領域を遮蔽する場合は、マスク板を遮蔽したい領域に押し当てて、遮蔽領域内にめっき液が侵入しないようにしてめっきすることができる。しかしながら、放熱板10のフランジ部10cの側面部分のような狭い領域を確実に遮蔽してめっきを施すことは技術的に困難である。
【0014】
図6においては、放熱板10の外面10aを着色して、他の領域とは異なるめっきが施されることを示している。この外面10aのみにめっきを施すには、放熱板10のフランジ部10cの側面を遮蔽(シール)して、めっき時にフランジ部10cの側面にめっき液が回り込まないようにする必要がある。また、外面10aの全体を見栄え良くめっきするため、フランジ部10cの側面を遮蔽した際に、外面10aの領域にまで遮蔽材がはみ出したりしないようにする必要がある。外面10aは製品の外面にそのまま露出する部分であり、外面10aの一部にめっき残しがあったりすると、製品の外観に大きな影響をあたえることになり製品不良に直結するからである。
このようなめっきを確実に行う方法として、従来のマスキングテープを使用するめっき方法や、非めっき領域にシール材を押接してめっきする方法は、めっき仕上がりのばらつきが大きく、十分とは言い難い。
【0015】
本実施形態におけるめっき治具は、放熱板10の外面10aを確実に露出させ、放熱板10のフランジ部10cの側面にはめっき液を回り込ませずにシールする方法として、フランジ部10cの外周側面を囲む枠体状に形成したシール材を使用し、フランジ部10cに当接するシール材の側面部分を除くシール材の残りの三方の外面を拘束しながらシール材を厚さ方向に押圧(挟圧)することによって、フランジ部10cの側面に確実にシール材を押接し、シール材によるシール性を確保してめっきすることを特徴とする。
【0016】
図1は、放熱板10のめっきに用いるめっき治具の全体構成を示す。
本実施形態のめっき治具は、被めっき品である放熱板10の外周側面を一周するように囲む枠状に形成したシール材30と、このシール材30を外周側面から拘束してシール材30の外形形状を規制する拘束部材20と、拘束部材20の内側に配置されシール材30とシール材30の内側にセットされる放熱板10とを支持する支持部材22と、支持部材22との間でシール材30を厚さ方向に挟圧する押圧部材24とを備える。
【0017】
拘束部材20は、シール材30を外側から囲むように、内周縁の平面形状が、シール材30の外形形状に一致する枠状の部材として形成されている。
支持部材22は、平面方向の外形形状が拘束部材20の内周縁の平面形状に一致する枠体状に形成される。支持部材22の平坦面に形成された上面は、シール材30とシール材30の内側に放熱板10を支持するため、シール材30の内側に放熱板10のフランジ部10cを支持する領域を確保する幅に形成されている。
放熱板10の突部10bは、支持部材22の枠内に収容される。すなわち、支持部材22は、放熱板10をセットする際に、放熱板10の突部10bが支持部材22と干渉しないように形成される。
【0018】
本実施形態においては、放熱板10の突部10bと支持部材22とが干渉しないように、支持部材22を枠体状に形成したが、放熱板10を枠体状とせず、支持部材22の上面に突部10bを収容する凹部(逃げ部)を設けて、突部10bが支持部材22と干渉しない形態に支持部材22を形成することもできる。
また、本実施形態においては、拘束部材20と支持部材22とを別体としているが、拘束部材20と支持部材22を一部品として一体的に形成することも可能である。支持部材22を拘束部材20とは別部品とした場合は、放熱板10の突部10bの形態(平面形状)が異なる製品を被めっき品とする場合に、支持部材22のみを交換することによって異種製品に対応することができる。
【0019】
押圧部材24は、シール材30を支持部材22との間で押圧するためのもので、支持部材22と同様に枠体状に形成される。押圧部材24は放熱板10の外面10aの全体を露出させるようにしてシール材30を押圧する。したがって、押圧部材24の内周縁の平面形状は、放熱板10の平面方向の外形形状に一致し、押圧部材24の外形形状は、拘束部材20の内周縁の平面形状に一致する。
【0020】
図2〜5に、めっき治具の使用方法と、めっき治具の構成をさらに詳細に示す。
図2は、支持台40上において拘束部材20の内側に支持部材22を配置し、支持部材22上にシール材30をセットする状態を示す。シール材30は拘束部材20の内側面により外側面がガイドされ、支持部材22上に位置決めして装着される。
【0021】
シール材30には、ゲル状のゴム等の柔軟性を有する素材が用いられる。シール材30を柔軟性を有する素材によって形成する理由は、シール材30が加圧力によって容易に変形する性質を利用してめっき時におけるシール性を確保するためである。シール材30には、シール作用が得られる柔軟性を有し、めっき液に対する耐性を有する素材であれば、シリコーンゴム、軟質ウレタン造形用樹脂などの適宜素材を使用することができる。
【0022】
図3は、シール材30が装着されためっき治具に、被めっき品である放熱板10をセットする工程を示す。
放熱板10は、支持部材22に装着されているシール材30の内側面の位置にフランジ部10cの外側面を位置合わせするようにしてセットする。
シール材30はシール性が劣化しない限り、繰り返して使用することができる。シール材30のシール性が劣化したときは、新しいシール材30に交換する。シール材30は支持部材22上に、単にのせるようにして装着するからシール材30の交換操作は容易である。
支持部材22上にシール材30をセットした状態で、シール材30の内周側面は支持部材22の内周側面よりも外側に位置している。支持部材22の上面の露出している部位22aには放熱板10のフランジ部10cが支持される。
【0023】
図4は、支持部材22上に放熱板10をセットした状態を示す。支持部材22に放熱板10をセットした状態で、フランジ部10cの側面がシール材30の内周側面に接する。シール材30は、内周縁の平面形状が放熱板10の平面方向の外形形状に一致するように形成されるが、シール材30の内周縁の平面形状が放熱板10の外形形状よりも若干小さく形成されていてもよい。シール材30は柔軟性を有するから、支持部材22に放熱板10をセットする際に、シール材30の内周縁を広げるようにして放熱板10をセットすることができる。
【0024】
放熱板10を支持部材22上にセットする際には、放熱板10を正確に支持部材22(めっき治具)の中心位置(基準位置)に位置合わせしてセットする。めっき治具の基準位置から放熱板10が位置ずれすると、押圧部材24と放熱板10とが位置ずれし、放熱板10の外面10a上にめっき残しなどが生じてめっき不良となる可能性がある。
放熱板10はシール材30の内周側面にフランジ部10cの側面が当接してめっき治具に対して位置決めされるから、シール材30の枠部分の幅は全周にわたって均一幅となるようにする必要がある。
【0025】
本実施形態においては、放熱板10のフランジ部10cの厚さAにくらべて、シール材30の厚さBが若干厚くなるように設定している(A<B)。フランジ部10cの厚さよりも、シール材30の厚さを厚くしているのは、シール材30を厚さ方向に挟圧することにより、シール材30を幅方向に押し広げる作用を生じさせ、シール材30をフランジ部10cの側面に密着させて確実にシールできるようにするためである。シール材30の厚さについては、シール材30の材料特性(柔軟性)に応じて適宜設定する。
【0026】
めっき治具に放熱板10をセットした後、押圧部材24を拘束部材20によってガイドするようにして装着する。
図5(a)は、拘束部材20に押圧部材24を挿入した状態である。押圧部材24の平坦面に形成された端面形状は、シール材30と同一の平面形状に形成されているから、拘束部材20の内側に押圧部材24をセットすることによって、シール材30の平面の全体が押圧部材24によって一体的に押圧される配置となる。
【0027】
図5(b)は、押さえ治具42a、42bを支持部材22と押圧部材24を挟む配置に置き、押さえ治具42a、42b間に挟圧力を作用させることにより、放熱板10の外面10aの高さ位置と押圧部材24の押圧面24aの高さ位置とが一致する位置まで押圧部材24を押し込んだ状態を示す。
押圧部材24によってシール材30を押圧することにより、シール材30は支持部材22と押圧部材24とによって挟圧され、フランジ部10cの厚さと同じ厚さにまで扁平化される。一方、シール材30の外周側面は拘束部材20の内側面によって拘束され、シール材30が外側に押し広げられることが規制される。
【0028】
この押圧部材24、支持部材22、拘束部材20によってシール材30を拘束しながら、フランジ部10cに対向するシール材30の内側面を除いた三方(外側面、上面、下面)からシール材30を押圧する作用は、放熱板10のフランジ部10cの側面に対して、シール材30を押圧する作用に変換される。すなわち、シール材30が押圧部材24、支持部材22、拘束部材20によって拘束されて押圧されることにより、フランジ部10cの側面にシール材30が強く押圧されることになる。
【0029】
放熱板10を支持部材22上にセットした状態において、シール材30の内側面はフランジ部10cの側面に接触しているが(図4)、図5(b)に示すように、押圧部材24、支持部材22、拘束部材20によってシール材30を拘束しながら押圧することによってはじめて、フランジ部10cの側面にシール材30が強固に押接される。このシール材30の作用により、フランジ部10cの側面を確実にシールすることができ、めっき液がフランジ部10cの側面に侵入することを防止してめっきすることができる。
【0030】
シール材30を押圧部材24、支持部材22、拘束部材20によって拘束しながら押圧することにより、放熱板10はシール材30を介してめっき治具に保持されることになるが、本実施形態においては、放熱板10を支持部材22上に保持する押さえ具として、押さえ治具42aに放熱板10の外面10aに弾性的に当接する押さえピン44を設け、めっき治具に放熱板10が安定して保持されるようにしている。なお、押さえピン44は必ず設けなければならないものではない。
図5(b)に示すように、押圧部材24の押圧面が放熱板10の外面10aと同一の高さ位置になるまで押圧部材24を押し込むことにより、外面10aが完全に露出するから、放熱板10の下面側にめっき液が侵入しないように遮蔽してめっきすることによって、放熱板10の外面10aに所要のめっきを施すことができる。
【0031】
上記実施形態におけるめっき治具は、1枚の放熱板10をめっきする例であるが、一つのめっき治具に複数枚の放熱板10をセットしてめっきすることもできる。
図7に、複数枚の放熱板10をめっきするめっき治具の例を示す。このめっき治具では、拘束部材20に4枚の放熱板10をセットするセット部を設け、各々のセット部に支持部材22とシール材30を装着する。セット部に放熱板10をセットした後、各々のセット部に押圧部材24を配置し、押さえ治具42a、42bによりめっき治具(押圧部材と支持部材間)を挟圧して押圧部材24の押し込み位置を調節してめっきする。
【0032】
上記実施形態のめっき治具において、シール材30の厚さをフランジ部10cの厚さよりも厚くしているのは、押圧部材24、支持部材22、拘束部材20によってシール材30を拘束しながら押圧した際に、シール材30が圧縮されて変形する変形しろ(余剰部分)を設けることによって、フランジ部10cの側面をシール材30が押圧する作用を増大させ、シール材30によるシール性をより高めるようにするためである。シール材30は、押圧部材24によってシール材30を押圧した際に、このような作用が生じればよく、厚さを厚くするかわりに適宜形態とすることが可能である。
【0033】
たとえば、シール材30の内周縁に沿って部分的に肉厚となる肉厚部分(変形しろ)を設け、シール材30を押圧した際に、シール材30の肉厚部分が平坦化されることによってシール材30がフランジ部10cの側面を押圧する圧力を高めるようにすることもできる。また、シール材30の内周縁によって囲まれる平面領域を、被めっき品の平面形状よりも相似的に小さくしておき、シール材30の内側に被めっき品をセットしたときにシール材30を若干盛り上げて変形しろを生じさせ、押圧部材24によってシール材30を平坦化することによってシール性を高めることも可能である。
めっき液の回り込みは、被めっき品の形状や、大きさ、厚さ等によってさまざまであり、実際にシール材30を用いて被めっき品をめっきする操作を何回か行って、シール材30の厚さ、大きさ、形状(寸法)等を決めるのがよい。
【0034】
上記実施形態においては、平面形状が矩形の放熱板10を被めっき品としたが、本発明に係るめっき治具は、被めっき品の形状が限定されるものではない。たとえば、平面形状が円形や多角形の被めっき品であっても同様の方法によってめっきすることができる。
シール材30は、被めっき品の平面形状、言い換えれば2次元の形状を特定して製作すればよいから、たとえばシート状の素材をレーザ加工してシール材30とすることができ、被めっき品の形状に合わせてシール材30を用意することは容易である。また、種々の平面形状の被めっき品に対して容易に対応することができる。
【0035】
また、上記実施形態の放熱板10は片面に突部10bを備えている。本発明に係るめっき治具は上述した実施形態においてフランジ部10cの側面をシール材30によってシールしたように、平板状部材の側面をシールすることに特徴があり、被めっき品が突部を備えるか否かについては関係なくめっきすることができる。被めっき品は、一方の面に突部があってもよいし、両面に突部があってもよく、両面に突部のない単なる平板状の被めっき品についても同様に適用することができる。
【0036】
本発明に係るめっき治具を使用する方法によれば、被めっき品の厚さが薄い場合でも、被めっき品の側面を確実にシールしてめっきすることができ、従来方法では、めっき液が侵入しないようにシールしてめっきすることが困難であった被めっき品についても、ばらつきのないめっきが可能となり、めっきの歩留まりを向上させることができる。
【0037】
なお、本発明に係るめっき治具は、めっき作業に用いられる他、その構成から、被処理品を部分的に遮蔽して処理する作用、たとえば陽極酸化あるいはエッチングといった被処理品に表面処理を施す作業にも利用することが可能である。本発明に係る治具は、シール材によって被処理品の側面をシールする作用が的確になされるから、これらの表面処理にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 放熱板
10a 外面
10b 突部
10c フランジ部
20 拘束部材
22 支持部材
24 押圧部材
24a 押圧面
30 シール材
42a、42b 押さえ治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき品の外周側面を囲む枠状に形成され、内側面を被めっき品の側面に押接して該側面をシールするシール材と、
前記シール材を外側から囲み、前記シール材の外周側面の位置を規制する拘束部材と、 前記拘束部材の内側に配置され、前記シール材と該シール材の内側に配置される被めっき品とを支持する支持部材と、
前記拘束部材の内側に、押圧面を前記支持部材に対向させ、前記被めっき品の外面を露出させて装着され、前記シール材を前記支持部材との間に介在させて挟圧する押圧部材とを備え、
前記シール材は、前記拘束部材、支持部材及び押圧部材により前記被めっき品の側面に押接される面を除く三方の面を拘束しながら前記押圧部材により押圧されることにより、シール材が変形して前記被めっき品の側面に内側面を押圧する変形しろを有することを特徴とするめっき治具。
【請求項2】
前記変形しろは、前記シール材の厚さを前記被めっき品の厚さを上回るように設定することによって設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき治具。
【請求項3】
前記シール材は、枠部の内周縁によって囲まれる平面形状が、前記被めっき品の平面形状よりも、相似的に小さく形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のめっき治具。
【請求項4】
前記押圧部材は、内周縁の平面形状が前記被めっき品の平面方向の外形形状に一致する枠体状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のめっき治具。
【請求項5】
前記拘束部材と前記支持部材とは、一つの部品として一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のめっき治具。
【請求項6】
前記支持部材と前記押圧部材とを、前記シール部材を挟圧する方向に互いに押圧する押さえ治具を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のめっき治具。
【請求項7】
前記支持部材に支持された被めっき品を保持する押さえ具を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のめっき治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−111640(P2011−111640A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267228(P2009−267228)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】