Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
らせん軌道型飛行時間型質量分析装置
説明

らせん軌道型飛行時間型質量分析装置

【課題】本発明はらせん軌道型TOFMSに関し、コンパクトなスペースで、らせん軌道型TOFMS1台でMSnができる装置として用い、またらせん軌道型TOFMSが本来持っている高分解能、高質量精度の機能を十分に生かした高度なMSnを効率よく実現することを目的としている。
【解決手段】 らせん軌道型TOFMSにおいて、該TOFMSの両端に設けた、イオンの加速と減速を行なうことができる加速減速部33,34と、該加速減速部33,34によりイオンをTOFMS空間を往復させてTOFMS機構を実現する往復手段とを設けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はらせん軌道型飛行時間型質量分析装置に関する。更に、詳しくは質量分析法における、MSnと呼ばれる有機化合物構造解析法に活用するものである。特に、特定の対象イオンを選択して、そのイオンをCID(衝突誘起解離)等で解離させ、更に解離イオンの一つを選択して質量分析させることにより、対象イオンの構造情報を得る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析装置(以下TOFMSと略す)は、一定の加速エネルギーで加速した試料イオンが質量に応じた飛行速度を持つことに基づき、一定距離を飛行するのに要する飛行時間を計測して質量を求めるものである。図3にTOFMSの測定原理を示す。図において、5はパルスイオン源であり、イオン生成部6とパルス電圧発生器7とで構成されている。
【0003】
パルス電圧発生器7により電界中に存在するイオンiを加速する。ここで、加速する電圧はパルス状電圧である。この加速電圧による加速と、イオン検出器9による時間測定とが同期している。イオン検出器9は、パルス電圧発生器7による加速と同時に時間のカウントを開始する。そして、当該イオンがイオン検出器9に到達すると、イオン検出器9はイオンiの飛行時間を測定する。一般に、この飛行時間は、質量が大きいほど長くなる。質量の小さいイオンは早くイオン検出器9に到達するので、飛行時間は短くなる。
【0004】
このTOFMSの質量分解能は、総飛行時間をT、ピーク幅をΔTとすると、
T/2ΔTで表される。即ち、ピーク幅ΔTを一定にして、総飛行時間Tを延ばすことができれば、質量分解能を向上させることができる。この総飛行時間をのばすために開発されたのが、多重周回型飛行時間型質量分析装置である(例えば非特許文献1参照)。この多重周回型TOFMSは、円筒電場にプレートを組み合わせたトロイダル電場を4個用い、8の字型の周回軌道を多重周回させることにより、総飛行時間Tを延ばすことができる。
【0005】
しかしながら、この閉軌道を多重周回させるTOFMSでは、いわゆる「追い越し」の問題が発生する。ここで、「追い越し」とは、閉軌道をイオンが多重周回しているため、速度の大きい軽いイオンが速度の小さい重いイオンを追い越してしまうことをいう。このため、検出面に軽いイオンから順に到着するというTOFMSの基本概念が通用しなくなる。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために考案されたのが、らせん軌道型TOFMSである。このらせん軌道型TOFMSは、閉軌道の始点と終点を閉軌道面に対して垂直方向にずらすことを特徴としている。これを実現するために、イオンを初めから斜めに入手する方法(例えば特許文献1参照)や、デフレクタを用いて閉軌道の始点と終点を垂直方向にずらす方法(例えば特許文献2参照)がある。
【0007】
図4はらせん軌道型TOFMSの概念図である。10はパルスイオン源、16は該パルスイオン源10からのイオン軌道を調整するためのデフレクタ、17は図に示すように対象に配置された電極である。該電極17で形成される電場をそれぞれ積層トロイダル電場1〜4とする。Aは周回部始点および終点である。電極17は、図の紙面に垂直な方向にらせん軌道をもっている。15は、らせん軌道を通過したイオンを検出する検出器である。図で、Aは周回部の開始点であると同時に、周回の終点でもある。
【非特許文献1】Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan Vol.No.2(No.218)2003 p349−353
【特許文献1】特開2000−243345号公報(第2頁、第3頁、図1)
【特許文献2】特開2003−86129号公報(第2頁、第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、らせん軌道型TOFMSにおいて、MSnを実現するためのアイデア等は示されているが、一つのらせん軌道を逆回転を含め何度の使用をするという使い方はされていない。また、一つの加速機構をその両方の目的に使用するということもなかった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、コンパクトなスペースで、らせん軌道型TOFMS1台でMSnができる装置として用い、またらせん軌道型TOFMSが本来持っている高分解能、高質量精度の機能を十分に生かした高度なMSnを効率よく実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1記載の発明は、らせん軌道型飛行時間型質量分析装置において、該飛行時間型質量分析装置の両端に設けた、イオンの加速と減速を行なうことができる加速減速部と、該加速減速部によりイオンを飛行時間型質量分析装置空間を往復させて飛行時間型質量分析装置機構を実現する往復手段と、を設けたことを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、らせん軌道型飛行時間型質量分析装置が周回毎に中間収束点を持つことを利用し、検出器を両端の中間収束点に設けたことを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、らせん軌道型飛行時間型質量分析装置が周回毎に中間収束点を持つことを利用し、検出器の1周手前の中間収束点に、それから入射し、またそれから出射する加速減速部を設け、選択したイオンの飛行時間に合わせてこの部分のセクター部を前記加速減速部又は検出器の何れかに切り替えるスイッチとして利用することを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、選択したイオンを適当なタイミングで、再びらせん軌道型飛行時間型質量分析装置に向けて打ち出す手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の発明によれば、加速減速部を加速機能又は減速機能として利用することにより、らせん軌道内を往復運動させることができ、対象イオンの構造情報を得ることができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、検出器をらせん軌道の両端の中間収束点に設けるようにしたので、必要に応じてらせん軌道両端に設けた検出器の何れかを用いてイオンを検出することが可能となる。
(3)請求項3記載の発明によれば、らせん軌道上を往復運動するイオンを、加減速部又は検出器の何れに到達させるかをセクター部を用いてスイッチングすることができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、トラップしたイオンを再びらせん軌道型TOFMSに向けて打ち出すことにより、イオンをらせん軌道上で往復させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態例を示す構成図である。図において、30はイオンを発生させるイオン源、31は該イオン源30から放出されたイオンをトラップするイオントラップ1、33はイオントラップ1から放出されたイオンを加速すると共に、らせん軌道からイオントラップ1側に入ってくるイオンを減速させる加速減速部1である。該加速減速部1は、検出器2の1周手前に設けられている。
【0013】
20はらせん軌道型TOFMSであり、図では1〜8までの8層のらせんを有している。21はらせん軌道の一端の中間収束点に設けられたイオンを検出するための検出器2、22はらせん軌道の他端の中間収束点に設けられたイオンを検出するための検出器1である。23はらせん軌道の第1の層に設けられたセクター部1、24はらせん軌道の第7の層に設けられたセクター部2である。
【0014】
セクター部1は、らせん軌道を往復運動しているイオンを加速減速部1に導くか、検出器2に導くかの選択を行なうスイッチとして動作する。一方、セクター部2は、らせん軌道を往復運動しているイオンを加速減速部2に導くか検出器1に導くかを選択を行なうスイッチとして動作する。32はイオントラップ2、34は検出器1の1周手前に設けられたイオンの加速又は減速を行なう加速減速部である。加速減速部2及びイオントラップ2はらせん軌道に対し、加速減速部1及びイオントラップ1の反対側に設けられている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0015】
ここでは、8周回の場合を例にとって説明する。
(通常のTOFMSとしての動作)
イオン源30で作られたイオンは、先ずはイオントラップ1に入る。ここでトラップされたイオンは適当なタイミングで30eV程度のエネルギーで打ち出され、加速減速部1を経て10keV程度に加速される。その後、セクター部1を通過して、らせん軌道型TOFMSのらせんの1の部分に打ち込まれる。その後、そのままらせん軌道を周回飛行し、らせん8の部分にある検出器1で検出され、高分解能、高精度飛行時間質量分析される。ここで、検出器1は、らせん軌道型TOFMSの中間収束点に設置されることにより、分解能が最適化される。
(MS/MSのTOFMSとしての動作)
上記の通常のTOFMSとしての動作の結果、構造解析したい対象イオンを特定する。その対象イオンが、上記と同様な過程を経て、らせんの7の部分にあるセクター部2を通過する飛行時間のタイミングで、加速減速部2に導くようにセクター部2をスイッチングさせる。ここで、セクター部2は、検出器1の1周手前に設置され、中間収束点から効率よく減速させるように設置されている。ここで、30eV程度に減速されたイオンは、イオントラップ2に導かれる。ここで、選択されたイオンはCID等により開裂される。
【0016】
次に、開裂されたイオンは適当なタイミングで、イオントラップ2から再び30eV程度のエネルギーで打ち出され、加速減速部2を経て10keV程度に加速される。その後、セクター部2を通過され、らせん軌道型TOFMSのらせん7の部分に打ち込まれる。そして、らせんの0の部分にある検出器2で検出され高分解能、高精度飛行時間質量分析される。このことにより、MS/MSが可能となる。
(MSnのTOFMSとしての動作)
上記のMS/MSのTOFMSとしての動作の結果、更に開裂させて調べたいイオンがあった場合には、このイオンが上記と同様な過程を経て、らせんの1の部分にあるセクター部1を通過する飛行時間のタイミングで加速減速部1に導くようにセクター部1をスイッチングさせる。ここで選択されたイオンは30eV程度に減速され、イオントラップ1に導かれる。ここで、選択されたイオンはCID等により、更に開裂される。
【0017】
次に、開裂されたイオンは適当なタイミングで、イオントラップ1から再び30eV程度のエネルギーで打ち出され、加速減速部1を経て10keV程度に加速される。その後セクター部1を通過され、らせん軌道型TOFMSのらせん1の部分に打ち込まれる。そして、らせんの8の部分にある検出器1で検出され、高分解能、高精度飛行時間質量分析される。このことにより、MS3が可能となる。
【0018】
このような動作を繰り返すことにより、MSnのTOFMSとしての動作が可能となる。
以上、説明したように、本発明によれば、加速減速部を加速機能又は減速機能として利用することにより、らせん軌道内を往復運動させることができ、対象イオンの構造情報を得ることができる。また、本発明によれば、検出器をらせん軌道の両端の中間収束点に設けるようにしたので、必要に応じてらせん軌道両端に設けた検出器の何れかを用いてイオンを検出することが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、らせん軌道上を往復運動するイオンを、加減速部又は検出器の何れに到達させるかをセクター部を用いてスイッチングすることができる。更に、トラップしたイオンを再びらせん軌道型TOFMSに向けて打ち出すことにより、イオンをらせん軌道上で往復させることが可能となる。
【0020】
同じ軌道を逆方向に何度も使用するという技術は、前述したらせん軌道に限らず、例えば図2に示すリフレクトロン型TOFMSにおいても可能であると思われる。図2において、図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、30はイオン源、31はイオントラップ1、32はイオントラップ2、33は加速減速部1、34は加速減速部2、37は加速減速部2と接する中間収束点1、38は加速減速部1と接する中間収束点である。
【0021】
中間収束点周回毎にあるらせん軌道型TOFMSの場合に対し、リフレクトロン型TOFMSの場合は、中間収束点に実際に検出器を配置することが設置スペース上難しい。また、リフレクトロン型の中間収束点37,38では、質量分散が小さいため、分解能が非常に低くなり、実用的な難点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態例を示す構成図である。
【図2】本発明のリフレクトロン型TOFMSへの適用を示す図である。
【図3】TOFMSの測定原理を示す図である。
【図4】らせん軌道型TOFMSの概念図である。
【符号の説明】
【0023】
20 らせん軌道型TOFMS
21 検出器2
22 検出器1
23 セクター部1
24 セクター部2
30 イオン源
31 イオントラップ1
32 イオントラップ2
33 加速減速部1
34 加速減速部2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせん軌道型飛行時間型質量分析装置において、該飛行時間型質量分析装置の両端に設けた、イオンの加速と減速を行なうことができる加速減速部と、
該加速減速部によりイオンを飛行時間型質量分析装置空間を往復させて飛行時間型質量分析装置機構を実現する往復手段と、
を設けたことを特徴とするらせん軌道型飛行時間型質量分析装置。
【請求項2】
らせん軌道型飛行時間型質量分析装置が周回毎に中間収束点を持つことを利用し、検出器を両端の中間収束点に設けたことを特徴とする請求項1記載のらせん軌道型飛行時間型質量分析装置。
【請求項3】
らせん軌道型飛行時間型質量分析装置が周回毎に中間収束点を持つことを利用し、検出器の1周手前の中間収束点に、それから入射し、またそれから出射する加速減速部を設け、選択したイオンの飛行時間に合わせてこの部分のセクター部を前記加速減速部又は検出器の何れかに切り替えるスイッチとして利用することを特徴とする請求項1記載のらせん軌道型飛行時間型質量分析装置。
【請求項4】
選択したイオンを適当なタイミングで、再びらせん軌道型飛行時間型質量分析装置に向けて打ち出す手段を設けたことを特徴とする請求項3記載のらせん軌道型飛行時間型質量分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−227042(P2007−227042A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44744(P2006−44744)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】