説明

ろう付け用複合材およびこれを用いたろう付け製品

【課題】ろう付け熱処理時の真空度が低くても湯流れが良好であり、かつ、ろう付け熱処理後のろう材表面の変色が少ないろう付け用複合材およびこれを用いたろう付け製品を提供するものである。
【解決手段】本発明に係るろう付け用複合材5は、基材1の表面にろう層を一体に設けたものであり、ろう層がチタンまたはチタン合金層3とニッケルまたはニッケル合金層4との金属層を積層してなり、かつ、そのろう層に更にマグネシウムまたはマグネシウム合金層2を配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にろう付け性能を向上させると共に、耐熱性と耐食性を向上し得るろう付け用複合材およびこれを用いたろう付け製品に関するものである。また、本発明は、特に熱交換器(排ガス再循環装置(EGR)用クーラや燃料電池改質器用クーラなど)、および燃料電池用部材のろう付け用複合材およびこれを用いたろう付け製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用オイルクーラの接合材として、ステンレス基クラッドろう材が使用されている。これは、ステンレス鋼板の片面あるいは両面にろう材としての機能をもつ銅がクラッドされている。また、ステンレス鋼や、ニッケル基またはコバルト基合金などの部品のろう付け材として、接合部の耐酸化性や耐食性に優れる各種ニッケルろうがJIS規格により規定されている。さらに、熱交換器接合用ニッケルろう材として、粉末状ニッケルろうに、Ni、Cr、Ni−Cr合金のうち選ばれた金属粉末を4重量%〜22重量%添加して構成されるニッケルろう材が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、ニッケル成分とチタン成分を含む自己ろう付け性複合材を作る方法が特許文献2に、Ni−Cr合金層と、Ti層またはTi合金層との2層構造からなるろう材を基板と一体に設けたろう付け用複合材が特許文献3に提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−107883号公報
【特許文献2】特開平7−299592号公報
【特許文献3】特開2006−181586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載された自己ろう付け性複合材および特許文献3に記載されたろう付け用複合材は、ろう付け熱処理時において、まず、以下のような問題がある。
【0006】
これらの複合材のろう材は、チタン成分を含むため、高真空(真空度が5.0×10-3Pa以下)の熱処理雰囲気下にてろう付け熱処理を実施する必要がある。ろう付け熱処理時の真空度が低い場合、熱処理温度が高温であるため、酸素との親和性が高いチタン成分が熱処理雰囲気中の残留酸素等により酸化され、ろう材表面にチタン成分を中心とした酸化物層が形成される。この酸化物層が熱処理、ろう材の溶融及び接合部への流動(湯流れ)を阻害する要因となる。また、ろう付け熱処理後のろう材表面は、熱処理炉内の残留酸素による酸化によって変色し、外観が劣化する。
【0007】
そこで本発明の目的は、ろう付け熱処理時の真空度が低くても湯流れが良好であり、かつ、ろう付け熱処理後のろう材表面の変色が少ないろう付け用複合材およびこれを用いたろう付け製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、基材表面にろう層を一体に設けたろう付け用複合材において、上記ろう層がチタンまたはチタン合金層とニッケルまたはニッケル合金層との金属層を積層してなり、かつ、そのろう層に更にマグネシウムまたはマグネシウム合金層を配置したことを特徴とするろう付け用複合材である。
【0009】
請求項2の発明は、基材表面にろう層を一体に設けたろう付け用複合材において、上記ろう層がチタンまたはチタン合金層とニッケルまたはニッケル合金層と鉄または鉄合金層との金属層を積層してなり、かつ、そのろう層に更にマグネシウムまたはマグネシウム合金層を配置したことを特徴とするろう付け用複合材である。
【0010】
請求項3の発明は、上記ろう層中のマグネシウム成分比率が1.0mass%以上である請求項1又は2記載のろう付け用複合材である。
【0011】
請求項4の発明は、上記マグネシウムまたはマグネシウム合金層を、上記ろう層の基材側に配置した請求項1から3いずれかに記載のろう付け用複合材である。
【0012】
請求項5の発明は、上記基材がステンレス鋼で構成される請求項1から4いずれかに記載のろう付け用複合材である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5いずれかに記載のろう付け用複合材を用いて組み立てられたことを特徴とするろう付け製品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のろう付け用複合材は、基材表面に、ニッケルまたはニッケル合金層と、チタンまたはチタン合金層と、マグネシウムまたはマグネシウム合金層とで構成されるろう層を設けたことによって、ろう付け熱処理時のろうの湯流れ性を向上させ、表面変色を抑制する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の好適一実施の形態に係るろう付け用複合材の横断面図である。
【0017】
従来技術の問題点を解決するために、本実施の形態に係るろう付け用複合材は、ろう層を構成する金属層の1層として、マグネシウムまたはマグネシウム合金層を配置したことに特徴がある。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係るろう付け用複合材5は、基材1であるステンレス鋼の表面に、チタンまたはチタン合金層3と、ニッケルまたはニッケル合金層4と、マグネシウムまたはマグネシウム合金層2とを積層してなるろう層を一体に設けたものである。ろう層は、基材1側から、マグネシウムまたはマグネシウム合金層2、チタンまたはチタン合金層3、ニッケルまたはニッケル合金層4の順に配置された積層構造を有する。
【0019】
ろう層を構成するマグネシウムまたはマグネシウム合金層2の構成材は、純マグネシウムの他に、マグネシウム単体よりも展伸性に優れるマグネシウム合金を用いても良い。このようなマグネシウム合金として、Mg−Al−Zn系合金(JIS−MP7、Mg−2.0Al−1.0Zn−0.05Mn)などが一般的である。これらの合金は、純マグネシウムより展伸性に優れているため、冷間圧延が容易となる。
【0020】
ろう材中にあらかじめ含まれるマグネシウム成分比率は1.0mass%以上、好ましくは1.0mass%以上、3.0mass%以下とされる。マグネシウム成分比率が1.0mass%未満だと、マグネシウム成分の蒸発によるろう材の溶融および流動を幇助する効果(後述)を十分に期待することができない。逆に、マグネシウム成分比率が多すぎると(例えば、3.0mass%超)、ろう材中にマグネシウム成分が残留してしまい、ろう材の耐食性が低下する。
【0021】
次に、本実施の形態に係るろう付け用複合材を用いたろう付け方法を説明する。
【0022】
例えば、図1に示した本実施の形態に係るろう付け用複合材5と、ステンレス鋼からなる部材とのろう付けを行う。ろう付け用複合材5のろう層を、ステンレス鋼部材と接触させて熱処理炉内に配置した後、比較的低真空(5×10-3Pa超〜9×10-2Pa以下の真空度、例えば、7×10-2Paの真空度)でろう付け熱処理を行う。また、ろう付け熱処理の温度は、マグネシウムまたはマグネシウム合金層2の沸点(1090℃)以上の温度とする。ろう付け熱処理の具体的な条件は、1100〜1200℃、好ましくは1150℃前後(例えば、1150℃±30℃)の温度、5〜30分、好ましくは15分前後(例えば、15分±5分)の時間とする。このろう付け熱処理によって、基材1およびろう層を構成する各金属層同士の相互拡散により、ろう層が合金化し、ろう材全体が溶融、流動する。
【0023】
ここで、ろう層を構成する金属層のうち、チタンまたはチタン合金層3は、酸素との親和性が高い。よって、前述した特許文献2,3に記載された複合材等を、このように比較的低真空でろう付け熱処理を行うと、熱処理雰囲気に含まれている微量の酸素がろう材表面に集中し、チタン成分が酸化してしまう。酸化したチタンまたはチタン合金層3は硬く塑性に乏しいため、ろう材の溶融および接合部への流動を阻害することになる。
【0024】
一方、本実施の形態に係るろう付け用複合材5は、ろう層内にマグネシウムまたはマグネシウム合金層2を配置している。このマグネシウムは、基材1およびろう材を構成する各金属層の主成分(チタン、ニッケル、鉄)と比べて蒸気圧が低く、同時に酸素との親和性が最も高いため、ろう付け熱処理時の拡散および溶融過程に、微量の残留酸素が含まれる熱処理雰囲気と接するろう材表面への拡散が優先的に進行する。また、マグネシウムは沸点が低いため、ろう材の表面に達した後にろう材外へ蒸発する。その際、チタン成分またはチタン合金成分を中心とした酸化物層を破壊し、ろう材の溶融および流動を幇助する。さらに、蒸発したマグネシウムは炉内の低温部分(炉壁などに配置された断熱材など)に付着するが、その際、炉内の残留酸素と化合し、炉内酸素のゲッターとして作用する。これにより、ろう材のチタン成分を中心とする酸化を抑制し、ろう材表面の変色を低減する効果がある。また、あらかじめろう層中に配置されたマグネシウム成分は、ろう付け熱処理時に優先的にろう材外ヘ蒸発し、ろう付け熱処理後はろう材中にほとんど残留しないため、溶融凝固後のろう材の耐食性を降下させることはない。
【0025】
その後、ろう材が凝固することで、基材1とステンレス鋼部材とがろう付け接合されたろう付け製品が得られる。
【0026】
ろう層中に配置されるマグネシウムまたはマグネシウム合金層2は、ろう付け熱処理時の溶融過程においてろう材全体にわたって拡散させることが望ましいため、できるだけろう層の基材1側、すなわちろう層の最内層に配置することが望ましい。また、ろう層中に配置されるチタンまたはチタン合金層3は、最外層に配置すると酸化を抑制しにくいため、ニッケルまたはニッケル合金層4の内層側に配置することが望ましい。
【0027】
また、ろう付け熱処理時の真空度は9×10-2Pa以下が望ましい。9×10-2Pa超だと、ろう材中のチタン成分の酸化が激しくなり、マグネシウムによる上記の効果が期待できなくなる。
【0028】
以上、本実施の形態に係るろう付け用複合材5は、ろう層の最内層にマグネシウムまたはマグネシウム合金層2を配置していることにより、ろう付け熱処理時において、ろう層内に配置されたマグネシウムまたはマグネシウム合金層2が溶融し、マグネシウム原子がろう材中を拡散してろう材表面に達し、熱処理雰囲気中に蒸発する。マグネシウム原子が、ろう材内部から表面を通過し熱処理雰囲気中に脱出する際に、ろう材表面に形成されるチタン成分を中心とした酸化物層を破壊する。ろう材表面の酸化物層は、ろう材の湯流れを阻害するものであるが、前記のメカニズムによって酸化物層が破壊されるため、ろう材の湯流れ性が改善される。
【0029】
また、蒸発したマグネシウム原子は、熱処理炉内の低温部分(主に断熱材など)に付着するが、マグネシウムは、チタンよりも酸素との親和性が高いため、ろう材の溶融時あるいは凝固時に、ろう材表面のチタン成分よりも優先的に酸化する。そのため、ろう材表面の酸化量が減少し、ろう材表面の酸化による変色が低減され、外観は殆ど劣化しない。
【0030】
さらに、マグネシウムは、ろう材を構成するその他の金属元素に比べて耐食性が低いが、蒸気圧も低いことから、ろう付け熱処理時に炉内にすべて蒸発してしまい、ろう材中に残留することは殆どない。よって、ろう付け熱処理後(溶融凝固後)のろう材の耐食性が低下することもない。
【0031】
次に、本発明の他の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0032】
図2に示すように、本発明の他の好適一実施の形態に係るろう付け用複合材7は、基材1であるステンレス鋼の表面に、チタンまたはチタン合金層3と、ニッケルまたはニッケル合金層4と、鉄または鉄合金層6と、マグネシウムまたはマグネシウム合金層2とを積層してなるろう層を一体に設けたものである。ろう層は、基材1側から、マグネシウムまたはマグネシウム合金層2、ニッケルまたはニッケル合金層4、チタンまたはチタン合金層3、鉄または鉄合金層6の順に配置された積層構造を有する。
【0033】
鉄または鉄合金層6を構成する材料としては、Fe−Ni合金、例えばInvar(Fe−36mass%Ni合金)が好ましい。このように、鉄または鉄合金層6をFe−Ni合金で構成する場合、チタンまたはチタン合金層3を、ニッケルまたはニッケル合金層4と鉄または鉄合金層6で挟んでろう層を積層形成することが好ましい。
【0034】
本実施の形態に係るろう付け用複合材7においても、前述したろう付け用複合材5と同様の作用効果が得られる。また、このろう付け用複合材7は、チタンまたはチタン合金層3を、ニッケルまたはニッケル合金層4とFe−Ni合金の層(鉄または鉄合金層6)とで挟んでいるため、TiとNiの相互拡散がより良好となり、ろう材の溶融、流動がより高まる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
板厚3.4mmのコイル状純ニッケル板、板厚8.2mmのコイル状純チタン板、板厚1.0mmの純マグネシウム板を重ね合わせ、合計3層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0036】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に熱間圧延法(300℃)によりクラッド、熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg/Ti/Ni)を作製した。
(実施例2)
板厚3.4mmのコイル状純ニッケル板、板厚8.2mmのコイル状純チタン板、板厚3.5mmのコイル状インバー(Fe−36mass%Ni)板を重ね合わせ、それに更に板厚1.55mmの純マグネシウム板を重ね合わせ、合計4層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0037】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に熱間圧延法(300℃)によりクラッド、熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg/Ni/Ti/Invar)を作製した。
(実施例3)
板厚4.6mmのコイル状純ニッケル板、板厚7.0mmのコイル状純チタン板、板厚0.88mmのマグネシウム合金(JIS−MP7、Mg−2.0A1−1.0Zn−0.05Mn)板を重ね合わせ、合計3層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0038】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に冷間圧延法によりクラッド、冷間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg合金/Ti/Ni)を作製した。
(実施例4)
板厚4.6mmのコイル状純ニッケル板、板厚7.0mmのコイル状純チタン板、板厚3.5mmのコイル状インバー(Fe−36mass%Ni)板を重ね合わせ、それに更に板厚1.28mmのマグネシウム合金(JIS−MP7、Mg−2.0A1−1.0Zn−0.05Mn)板を重ね合わせ、合計4層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0039】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に冷間圧延法によりクラッド、冷間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg合金/Ni/Ti/Invar)を作製した。
(比較例1)
板厚3.4mmのコイル状純ニッケル板、板厚8.2mmのコイル状純チタン板、板厚0.23mmの純マグネシウム板を重ね合わせ、合計3層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0040】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に熱間圧延法(300℃)によりクラッド、熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg/Ti/Ni)を作製した。
(比較例2)
板厚3.4mmのコイル状純ニッケル板、板厚8.2mmのコイル状純チタン板、板厚3.5mmのコイル状インバー(Fe−36mass%Ni)板を重ね合わせ、それに更に板厚0.34mmの純マグネシウム板を重ね合わせ、合計4層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0041】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に熱間圧延法(300℃)によりクラッド、熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg/Ni/Ti/Invar)を作製した。
(比較例3)
板厚4.6mmのコイル状純ニッケル板、板厚7.0mmのコイル状純チタン板、板厚0.29mmのマグネシウム合金(JIS−MP7、Mg−2.0Al−1.0Zn−0.05Mn)板を重ね合わせ、合計3層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0042】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に冷間圧延法によりクラッド、冷間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg合金/Ti/Ni)を作製した。
(比較例4)
板厚4.6mmのコイル状純ニッケル板、板厚7.0mmのコイル状純チタン板、板厚3.5mmのコイル状インバー(Fe−36ma8%Ni)板を重ね合わせ、それに更に板厚0.16mmのマグネシウム合金(JIS−MP7、Mg−2.0Al−1.0Zn−0.05Mn)板を重ね合わせ、合計4層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0043】
上記クラッド材とステンレス条(SUS304、厚さ2.5mm)に冷間圧延法によりクラッド、冷間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Mg合金/Ni/Ti/Invar)を作製した。
(従来例1)
板厚3.4mmのコイル状純ニッケル板、板厚8.2mmのコイル状純チタン板を重ね合わせ、合計2層の構造にし、熱間圧延を行ない板厚1.4mmのクラッド板を得た。引続き冷間圧延により板厚1.0mmのクラッド板に仕上げた。
【0044】
上記クラッド材をSUS304条(銅成分0%、厚さ2.5mm)に圧延法によりクラッド、冷間圧延を行い、厚さ0.5mmの複合基材(SUS/Ti/Ni)を作製した。
【0045】
以上の実施例1〜4、比較例1〜4、および従来例1で作製した各複合基材を20mm×25mmに切り出し、その中央にステンレス鋼製パイプ(SUS304、φ6mm×15mm)をワイヤなどで固定し、ろう付け熱処理を行った。ろう付け条件は、ろう付け温度1150℃×15minで、真空度は8.0×10-2Paであった。
【0046】
上記条件にて作製したろう付け材について、外観変色状況および中央断面におけるパイプ接合部のフィレット形成状況について調べた。
【0047】
表1は、実施例1〜4、比較例1〜4、および従来例1の各複合基材の構成、ろう材中のマグネシウム成分比率、表面変色状況、フィレット形成状況を示したものである。フィレット形成状況は、従来例1のフィレットの断面積を1としたときの相対的な比率で表しており、この相対比が大きい程、ろう材の湯流れ性が良好である。
【0048】
【表1】

【0049】
表1によれば、本発明である実施例1〜4の各複合基材はフィレットの断面積が従来例1と比較して大きく、また、ろう材表面の色は銀白色であり、表面変色も少なかった。
【0050】
これに対し、比較例1〜4の各複合基材は、ろう材中のマグネシウム成分比率が規定範囲(1.0mass%以上)未満であるため、従来例1と比べて、フィレットの断面積の変化が殆ど無く、また、ろう材表面の色はやや茶色であり、表面変色も若干あった。
【0051】
以上より、本発明のろう付け用複合材である実施例1〜4の各複合基材は、従来例1および比較例1〜4の各複合基材と比べて、良好なろう付けが可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の好適一実施の形態に係るろう付け用複合材の横断面図である。
【図2】本発明の他の好適一実施の形態に係るろう付け用複合材の横断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基材
2 マグネシウムまたはマグネシウム合金層
3 チタンまたはチタン合金層
4 ニッケルまたはニッケル合金層
5 ろう付け用複合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面にろう層を一体に設けたろう付け用複合材において、上記ろう層がチタンまたはチタン合金層とニッケルまたはニッケル合金層との金属層を積層してなり、かつ、そのろう層に更にマグネシウムまたはマグネシウム合金層を配置したことを特徴とするろう付け用複合材。
【請求項2】
基材表面にろう層を一体に設けたろう付け用複合材において、上記ろう層がチタンまたはチタン合金層とニッケルまたはニッケル合金層と鉄または鉄合金層との金属層を積層してなり、かつ、そのろう層に更にマグネシウムまたはマグネシウム合金層を配置したことを特徴とするろう付け用複合材。
【請求項3】
上記ろう層中のマグネシウム成分比率が1.0mass%以上である請求項1又は2記載のろう付け用複合材。
【請求項4】
上記マグネシウムまたはマグネシウム合金層を、上記ろう層の基材側に配置した請求項1から3いずれかに記載のろう付け用複合材。
【請求項5】
上記基材がステンレス鋼で構成される請求項1から4いずれかに記載のろう付け用複合材。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載のろう付け用複合材を用いて組み立てられたことを特徴とするろう付け製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−212948(P2008−212948A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49775(P2007−49775)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】