説明

ろ過方法

【課題】ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応の反応液と触媒との混合物から、効率よく触媒を分離するためのろ過方法を提供すること。
【解決手段】液相反応槽4から取り出された反応液10と触媒との混合物を、1次ろ過器17で1次ろ過する。一方、2次ろ過器25内のケークを攪拌翼26で攪拌しながら、スチーム供給ライン27からスチームを供給する。こうしてスチームが吹き込まれた2次ろ過器25に対し、1次ろ過器17のろ材18に捕捉された触媒を、逆洗浄により、スラリーとして導入し、2次ろ過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過方法に関し、詳しくは、ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応の反応液と触媒とを分離するためのろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反応の目的化合物であるアニリンを溶媒とし、液相反応により、反応原料であるニトロベンゼンを水素添加するアニリンの製造方法が記載されている。
この液相反応において、触媒には、活性炭などの炭素担体に、パラジウム、白金、イリジウムなどの金属を担持した担持金属触媒を用いるのが一般的である。
また、上記液相反応では、目的化合物の採取や、活性が低下した触媒の除去を目的として、反応液と触媒との混合物が、反応器から連続的に取り出される。通常、反応器から取り出された上記混合物は、ろ過により反応液と触媒とに分離され、その後、反応液は反応器内に戻され、触媒は、例えば、そのまま、または賦活処理後に、反応器内に戻される。このため、上記混合物のろ過により反応液と触媒とを効率よく分離することが重要である。
【特許文献1】特開平2−279657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、一般に、炭素担体を用いた担持金属触媒は、表面が疎水的で、疎水性物質との相互作用が大きいことから、例えば、アニリンを強く吸着する。具体的に、上記液相反応に用いられる触媒(特に、炭素担持金属触媒)と、上記液相反応におけるアニリンを含む反応液との混合物は、触媒濃度が高くなることで高粘度スラリーとなり、さらに、上記混合物のろ過後の残渣は、粘土状のケークとなる。
【0004】
このようなケークのろ過器内での堆積量が増えると、ろ過性を著しく低下し、ろ材の逆洗浄やケーク回収の頻度が上昇することから、これら逆洗浄やケーク回収の負担が極めて大きくなる。
そこで、本発明の目的は、ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応の反応液と触媒との混合物から、効率よく触媒を分離するためのろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のろ過方法は、ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応において、前記液相反応の反応液と触媒との混合物を1次ろ過器で1次ろ過した後、逆洗浄により、前記1次ろ過器のろ材に付着したケークを前記ろ材から分離し、次いで、逆洗浄により生成したスラリーを、予めスチームが吹き込まれた2次ろ過器へ供給し、2次ろ過することを特徴としている。
【0006】
このろ過方法によれば、2次ろ過器内に堆積している触媒と、アニリンを含む反応液との分離が促進される。このため、上記液相反応の反応工程から取り出された反応液と触媒とを含む混合物のろ過効率が上昇し、上記混合物のろ過に要する時間を短縮することができる。
上記ろ過方法は、上記液相反応の反応工程において、反応液と触媒との混合物が連続的に取り出される場合にも好適である。
【0007】
本発明のろ過方法では、前記触媒が、炭素担体に金属が担持している担持金属触媒であってもよい。
炭素担体は、アニリンとの相互作用が大きく、アニリンと強く吸着することから、反応液にアニリンが含まれている場合には、反応液と触媒との混合物の粘性が極めて高くなり、そのろ過に要する時間が長くなる。
【0008】
しかし、上記ろ過方法によれば、2次ろ過器での触媒と反応液との分離が促進されることから、触媒としての金属が炭素担体に担持されている場合であっても、効率よく2次ろ過することができ、上記液相反応の反応工程から取り出された反応液と触媒とを含む混合物のろ過に要する時間を短縮できる。
本発明のろ過方法では、前記2次ろ過器への前記スラリーの供給前に、前記2次ろ過器内に堆積している触媒を攪拌しながらスチームを吹き込むことが好適である。
【0009】
この場合、2次ろ過器内に堆積している触媒と、アニリンを含む反応液との分離がより一層促進される。また、これにより、2次ろ過のろ過効率がさらに向上され、上記混合物のろ過に要する時間がより一層短縮される。
本発明のろ過方法では、前記1次ろ過器の入口側圧力(ゲージ圧)を0.5MPa−G以下、入口側圧力と出口側圧力との差圧を0.5MPa以下、およびろ過温度を5〜150℃となるようにして1次ろ過することが好適である。
【0010】
この場合、上記液相反応の反応工程から取り出された反応液と触媒とを含む混合物を効率よく1次ろ過し、上記反応液と触媒とを効率よく分離することができる。
本発明のろ過方法では、前記逆洗浄時に、前記1次ろ過器にガスを供給しながら、前記ろ材に付着した触媒を、前記1次ろ過器に残存している反応液、または前記1次ろ過器に供給される洗浄液とともに、前記2次ろ過器へと洗い出すことが好適である。
【0011】
この場合、1次ろ過によりろ材に付着した触媒を、確実に、かつ効率よく、上記ろ材から分離することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のろ過方法によれば、アニリンを含む反応液と、触媒との分離が促進されることから、1次ろ過器の逆洗浄により生成したスラリーを2次ろ過器に供給する前に、この2次ろ過器に予めスチームを吹き込むという簡易な処理を経ることで、上記反応液と触媒との混合物についてのろ過時間を短縮し、ろ過処理の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明のろ過方法に用いられる装置の一実施形態を示す概略装置構成図である。以下、図1を参照しつつ、本発明のろ過方法について説明する。
図1において、この装置1は、ニトロベンゼンの液相での水素添加反応に適用される反応装置2と、この反応装置2における液相反応の反応工程で抜き出された反応液と触媒との混合物のろ過に適用されるろ過装置3と、を備えている。
【0014】
反応装置2は、反応器としての液相反応槽4と、ニトロベンゼン供給ライン5と、水素ガス供給ライン6と、触媒供給ライン7と、反応液抜出しライン8と、反応生成物取出しライン9と、を備えている。
液相反応槽4は、液相でのニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを生成することができる反応槽であれば特に限定されず、各種の反応槽が挙げられる。
【0015】
液相反応槽4には、あらかじめ、反応に必要な溶媒が供給される。溶媒には、例えば、アニリン、水、ニトロベンゼン、その他各種の溶媒が挙げられ、なかでも好ましくは、アニリンが挙げられる。
ニトロベンゼン供給ライン5は、その下流側端部が、液相反応槽4内に配置されている。また、このニトロベンゼン供給ライン5の上流側端部には、原料液源としてのニトロベンゼン源が接続されている。
【0016】
水素ガス供給ライン6は、その下流側端部が、液相反応槽4内に配置されている。また、この水素ガス供給ライン6の上流側端部には、原料ガス源としての水素ガス源が接続されている。
触媒供給ライン7は、その下流側端部が、液相反応槽4内に配置されている。また、この触媒供給ライン7の上流側端部には、触媒源が接続されている。
【0017】
触媒としては、特に限定されないが、ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応に好適な触媒として、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、ニッケルなどの、周期表(IUPAC、1989年)の第8〜10族に属する金属(遷移金属)、例えば、パラジウム−白金などの合金、などの金属触媒(固体触媒)が挙げられる。なかでも、好ましくは、パラジウム、パラジウム−白金が挙げられ、特に好ましくは、パラジウムが挙げられる。
【0018】
また、触媒としては、好ましくは、炭素担体に上記金属が担持しているものが挙げられる。
炭素担体としては、特に限定されないが、例えば、活性炭が挙げられる。
炭素担体に金属が担持している担持金属触媒の好適例としては、例えば、炭素担持パラジウム触媒、詳しくは、例えば、活性炭にパラジウムが担持した触媒が挙げられる。
【0019】
反応液抜出しライン8は、液相反応槽4内の反応液10と触媒との混合物を、液相反応槽4から抜き出して、2つの1次ろ過装置11,12へと送り込むための経路である。反応液抜出しライン8は、その上流側端部が、液相反応槽4に接続されており、その下流側端部が、後述する切替えバルブ14接続されている。
反応生成物取出しライン9は、その上流側端部が、液相反応槽4の頂部に接続されている。反応生成物取出しライン9は、液相反応槽4から、過剰に供給された未反応の水素ガスと、この未反応の水素ガスに同伴された反応生成物とを、それぞれ蒸気として取り出す。
【0020】
以上の説明では、反応装置2として、液相反応槽4内に、ニトロベンゼンと、水素ガスと、触媒とを供給し、液相反応させる反応装置を例にとって説明したが、反応装置はこれに限定されず、反応に用いられる触媒が反応液とともに液相反応槽から取り出される各種の反応装置が挙げられる。
ろ過装置3は、反応液抜出しライン8に対して並列に接続されている2つの1次ろ過装置11,12と、各1次ろ過装置11,12の下流側に配置されている2次ろ過装置13と、を備えている。
【0021】
2つの1次ろ過装置11,12は、切替えバルブ14に対し、2つの接続ライン15,16のいずれかを介して、並列に接続されている。
切替えバルブ14は、反応液抜出しライン8の下流側端部と接続している。
接続ライン15は、その上流側端部が切替えバルブ14に接続されており、その下流側端部が、1次ろ過装置11における1次ろ過器17に接続されている。
【0022】
接続ライン16は、その上流側端部が切替えバルブ14に接続されており、その下流側端部が、1次ろ過装置12における1次ろ過器17に接続されている。
切替えバルブ14は、液相反応槽4から、反応液抜出しライン8および接続ライン15を介した1次ろ過装置11への接続と、液相反応槽4から、反応液抜出しライン8および接続ライン16を介した1次ろ過装置12への接続とを、切り替える。これにより、2つの1次ろ過装置11,12が、反応液10と触媒との混合物の1次ろ過処理に、交互に使用され、上記混合物が連続的に1次ろ過される。
【0023】
2つの1次ろ過装置11,12は、それぞれ、ろ材18を備える1次ろ過器17と、反応液回収ライン19と、1次ろ過用ストップバルブ20と、逆洗浄手段としてのガス供給ライン21と、洗浄液供給ライン22と、ケーク取出しライン23と、逆洗浄用ストップバルブ24と、を備えている。
1次ろ過器17は、2つの接続ライン15,16の下流側端部に、それぞれ接続されている。
【0024】
1次ろ過器17には、液相反応槽4から反応液抜出しライン8を経て抜き出された反応液10と触媒との混合物が、切替えバルブ14と、2つの接続ライン15,16のいずれかとを経て送り込まれる。
1次ろ過器17は、上記混合物をろ過し、反応液10と、触媒とに分離することができるろ過器である。1次ろ過器17は、このようなろ過器であれば特に限定されず、各種のろ過器が挙げられる。例えば、図示の1次ろ過器17は、内部にろ材18を備える、耐圧性の槽などから構成される。
【0025】
ろ材18は、1次ろ過器17に供給された反応液10と触媒との混合物のうち、触媒を捕捉し、反応液10を通過させる。これにより、上記混合物中の反応液10と触媒とが分離する。
ろ材18としては、特に限定されず、各種ろ材が挙げられるが、なかでも好ましくは、焼結フィルタが挙げられる。また、ろ材の孔径(目開き)は、特に限定されないが、好ましくは、1〜10μmである。
【0026】
反応液回収ライン19は、その上流側端部が、1次ろ過器17のろ材18よりも下流側に接続されている。
この反応液回収ライン19は、1次ろ過器17のろ材18を通過して上記混合物中の触媒と分離された反応液10を回収する。回収された反応液10は、例えば、液相反応での副生物や、その他の不純物を除去し、反応装置2での液相反応における反応液10として再利用される。
【0027】
1次ろ過用ストップバルブ20は、各1次ろ過器17に対応して、反応液回収ライン19の途中に、それぞれ介在されている。
この1次ろ過用ストップバルブ20は、1次ろ過器17による1次ろ過時には、第1ろ過器17から反応液回収ライン19へのろ液の通過を許容し、ろ材18の逆洗浄時には、第1ろ過器17と反応液回収ライン19との接続を遮断する。また、1次ろ過用ストップバルブ20は、後述するように、1次ろ過器17が切替えバルブ14による切り替えに備えて待機中である場合に、反応液回収ライン19からのろ液の侵入を防止する。
【0028】
ガス供給ライン21は、1次ろ過器17のろ材18よりも下流側に接続されている。
このガス供給ライン21は、ろ材18の逆洗浄時に、1次ろ過器17内へとガスを供給する。これにより、ろ材18に対し、ろ過方向と逆の方向にガスが吹き付けられる。
ガス供給ライン21から供給されるガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスや、空気などが挙げられる。なかでも、逆洗浄処理の安全性の観点より、好ましくは、窒素ガスなどの不活性ガスが挙げられ、さらに好ましくは、窒素ガスが挙げられる。
【0029】
洗浄液供給ライン22は、1次ろ過器17のろ材18よりも下流側に接続されている。
この洗浄液供給ライン22は、ろ材18の逆洗浄時には、1次ろ過器17内へと洗浄液を供給する。これにより、ろ材18に対し、ろ過方向とは逆の方向から洗浄液が供給される。
洗浄液供給ライン22から供給される洗浄液としては、特に限定されないが、逆洗浄の処理性能や、逆洗浄処理後における反応液や洗浄液のリサイクル性の観点より、好ましくは、水が挙げられる。
【0030】
ケーク取出しライン23は、その上流側端部が、各1次ろ過装置11,12の1次ろ過器17のろ材18よりも上流側にそれぞれ接続されており、その下流側端部が、後述する2次ろ過器25に接続されている。
逆洗浄用ストップバルブ24は、各1次ろ過器17に対応して、ケーク取出しライン23の途中に、それぞれ介在されている。
【0031】
このケーク取出しライン23は、後述するように、ろ材18の逆洗浄時におけるケークの再スラリー化により生じたスラリーを、1次ろ過器25へと送り出す。
この逆洗浄用ストップバルブ24は、1次ろ過器17による1次ろ過時に閉じられて、第1ろ過器17とケーク取出しライン23との接続を遮断し、ろ材18の逆洗浄時に開放されて、第1ろ過器17とケーク取出しライン23との接続を許容する。
【0032】
以上の説明では、2つの1次ろ過装置11,12を、それぞれ切替えバルブ14に対し、接続ラインを介して、互いに並列に接続した例を挙げて説明したが、1次ろ過装置の数はこれに限定されず、例えば、3つ以上の1次ろ過装置を、それぞれ切替えバルブ14に対し、接続ラインを介して、互いに並列に接続してもよい。
また、以上の説明では、液相反応槽4から、反応液10と触媒との混合物を連続的に抜き出す場合を説明した。このように、反応液10を連続的に抜き出すことで、液相反応槽4内での反応液10の液量変化や組成変化を抑制でき、液相反応槽4内での液相反応を安定させることができる。一方、反応液10と触媒との混合物の抜き出しは、連続的にする場合に限定されず、例えば、バッチ処理により、間欠的にしてもよい。この場合には、1次ろ過装置を1つとすることができる。
【0033】
2次ろ過装置13は、攪拌翼26を備える2次ろ過器25と、スチーム供給ライン27と、加圧用ガス供給ライン28と、ろ液回収ライン29と、触媒回収ライン30と、を備えている。
2次ろ過器25は、ケーク取出しライン23の下流側端部に接続されている。
2次ろ過器25には、1次ろ過器17のろ材18の逆洗浄により生じたスラリー(1次ろ過器17のろ材18に付着した触媒のケークを再スラリー化したもの)が、ケーク取出しライン23を経て送り込まれる。
【0034】
2次ろ過器25は、上記スラリーをろ過し、触媒と、反応液10とに分離することができるろ過器である。2次ろ過器25は、このようなろ過器であれば特に限定されず、各種のろ過器が挙げられる。なかでも、好ましくは、加圧ろ過器が挙げられ、さらに好ましくは、攪拌器付き加圧ろ過器が挙げられる。例えば、図示の2次ろ過器25は、攪拌翼26を備える耐圧性の槽から構成された、いわゆる攪拌器付きタンク型加圧ろ過器である。
【0035】
攪拌翼26は、特に限定されず、2次ろ過器25内に導入されたスラリーを、2次ろ過時に攪拌できるものであればよい。
2次ろ過器25のろ材(図示せず)としては、特に限定されず、各種ろ材が挙げられるが、なかでも好ましくは、ろ布が挙げられる。また、ろ材の孔径(目開き)は、特に限定されないが、好ましくは、1〜30μmである。
【0036】
スチーム供給ライン27は、2次ろ過器25内に接続されている。
このスチーム供給ライン27は、ケーク取出しライン23から2次ろ過器25へのスラリーの供給前に、2次ろ過器25内へとスチームを供給する。これにより、2次ろ過器25内や、2次ろ過器25内に堆積された触媒のケークにスチームが吹き込まれ、これらが予め加温される。
【0037】
スチーム供給ライン27から供給されるスチームとしては、特に限定されないが、好ましくは、70〜150℃の水蒸気が挙げられ、さらに好ましくは、100℃程度の水蒸気が挙げられる。
加圧用ガス供給ライン28は、2次ろ過器25内に接続されている。
この加圧用ガス供給ライン28は、2次ろ過時に、加圧ろ過するためのガスを2次ろ過器25内へと供給する。
【0038】
加圧用ガス供給ライン28から供給されるガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスや、空気などが挙げられる。なかでも、2次ろ過処理の安全性の観点より、好ましくは、窒素ガスなどの不活性ガスが挙げられ、さらに好ましくは、窒素ガスが挙げられる。
ろ液回収ライン29は、2次ろ過器25に接続されている。
【0039】
このろ液回収ライン29は、2次ろ過器25のろ材を通過して上記スラリー中の触媒と分離されたろ液を回収する。回収されたろ液は、例えば、液相反応での副生物や、その他の不純物を除去し、反応装置2での液相反応における反応液10として再利用される。
2次ろ過用ストップバルブ31は、ろ液回収ライン29の途中に介在されている。
この2次ろ過用ストップバルブ31は、2次ろ過器25による2次ろ過時に開放されて、第2ろ過器25からろ液回収ライン29へのろ液の通過を許容する。
【0040】
触媒回収ライン30は、2次ろ過器25に接続されている。
この触媒回収ライン30は、2次ろ過器25のろ材に捕捉された触媒を回収する。回収された触媒は、そのままの状態で、もしくは賦活処理後に、反応装置2での液相反応の触媒として再利用されるか、または廃触媒とされた後、担体に担持されている固体触媒の金属類(例えば、上記の遷移金属元素など)が再利用される。
【0041】
以上の説明では、2次ろ過装置13として、加圧ろ過器を説明したが、2次ろ過装置13は、図1に示す装置に限定されない。上記ろ過方法において、2次ろ過装置としては、ろ過器内へのスチームの供給が可能な各種のろ過装置が挙げられる。
次に、図1に示す装置を参照し、本発明のろ過方法の一実施形態を具体的に説明する。
この方法では、予め、反応装置2の液相反応槽4に対し、溶媒であるアニリンが仕込まれる。そして、この液相反応槽4内に、ニトロベンゼン供給ライン5から原料液であるニトロベンゼンを供給し、水素ガス供給ライン6から原料ガスである水素ガスを供給し、かつ、触媒供給ライン7から触媒としての炭素担持金属触媒を供給することにより、気液接触反応を開始する。
【0042】
溶媒の供給量は、反応負荷によって適宜決定される。
触媒は、反応液10とともに、液相反応槽4から反応液抜出しライン8を経て、連続的に抜き出され、一方で、触媒供給ライン7から液相反応槽4内へと、連続的に、または間欠的に補充される。触媒の補充量は、液相(反応液)に対する触媒の含有割合が、例えば、0.001〜2.0重量%となるように、適宜設定される。
【0043】
ニトロベンゼンと水素ガスとの供給比は、ニトロベンゼンに対して水素ガスが過剰となる割合であり、例えば、ニトロベンゼン1モルに対して、化学量論的に1.5〜5モル倍の水素ガスが供給される。この場合には、水素ガスが化学量論的に0.5〜4モル倍過剰となる。
液相反応槽4の反応温度(反応液10の温度)は、150〜250℃に、液相反応槽4内の圧力(ゲージ圧)は、0.3〜1.5MPa−Gに、それぞれ設定される。
【0044】
こうして、液相反応槽4内では、ニトロベンゼンと水素ガスとが液相中で気液接触し、発熱反応により反応生成物(芳香族アミンおよび水)が生成する。
反応生成物と、未反応のニトロベンゼンの一部とは、過剰の水素ガスに同伴され、蒸気として反応生成物取出しライン9へ排出される。
液相反応槽4内の反応液10と、触媒とは、反応液抜出しライン8を経て、連続的に抜き出される。
【0045】
反応液10の抜出し量は、例えば、液相反応槽4内に供給されるニトロベンゼンの量に対し、重量比で、0.01〜0.5倍、好ましくは、0.05〜0.2倍である。
より具体的に、例えば、ニトロベンゼン供給量が1T/h(トン/時)であれば、反応液10の抜出し量は、平均で0.01〜0.5T/h、好ましくは、平均で0.05〜0.2T/hである。
【0046】
次に、この方法では、液相反応槽4の反応液抜出しライン8から抜き出された反応液10と触媒との混合物を、1次ろ過装置11の1次ろ過器17に送り込み、1次ろ過する。
1次ろ過時には、まず、反応液回収ライン19上の1次ろ過用ストップバルブ20を開き、ケーク取出しライン23上の逆洗浄用ストップバルブ24を閉じ、さらに、切替えバルブ14により、反応液抜出しライン8と接続ライン15との接続を許容する。これにより、反応液10と触媒との混合物を、反応液抜出しライン8と、接続ライン15とを介して1次ろ過器17内に供給し、1次ろ過する。なお、このとき、他方の一次ろ過装置12は、切替えバルブ14による切り替え後の1次ろ過に備えて待機する。
【0047】
1次ろ過時には、例えば、1次ろ過器17の入口側圧力(ゲージ圧)を、0.5MPa−G以下とし、入口側圧力と出口側圧力との差圧を、0.5MPa−G以下とし、ろ過温度を、5〜150℃、好ましくは、50〜70℃とする。
1次ろ過器17の入口側圧力、入口側圧力と出口側圧力との差圧、およびろ過温度を上記範囲に設定することで、効率よく1次ろ過して、触媒から反応液10を分離することができる。
【0048】
1次ろ過器17におけるろ過線速度は、好ましくは、0.2〜1.0m/hとする。
1次ろ過器17に送り込まれた反応液10と触媒との混合物のうち、反応液10は、ろ材18を通過する。ろ材18を通過した反応液10は、反応液回収ライン19を経て回収する。
反応液回収ライン19から回収された反応液10は、液相反応時の副生物や、その他の不純物などを除去した上で、液相反応槽4内に供給し、液相反応の溶媒として再利用する。
【0049】
一方、1次ろ過器17に送り込まれた反応液10と触媒との混合物のうち、触媒は、ろ材18に捕捉される。
ろ材18に捕捉された触媒は、反応液10中のアニリンなどが吸着した粘性の高いケークである。このため、ろ材18に付着した触媒の量が多くなると、ろ材18に目詰まりが生じやすくなり、反応液10が通過しにくくなる。そこで、ろ材18に付着したケークの量の増加と、それに伴うろ過性能の低下に応じて、ろ材18を逆洗浄する。
【0050】
ろ材18のろ過性能は、1次ろ過器17の入口側圧力やろ過線速度に基づいて判断できる。例えば、1次ろ過器17の入口側圧力の上昇が検知されたときや、1次ろ過器17のろ過線速度の低下が検知されたときには、ろ材18の目詰まりが進行していると判断できる。
そこで、予め、1次ろ過器17の入口側圧力やろ過線速度の閾値を設定しておき、これらの計測結果が予設定閾値に達したときに、1次ろ過器17での1次ろ過を中断し、ろ材18を逆洗浄する。
【0051】
また、液相反応槽4内での液相反応が定常運転されている場合には、例えば、定常運転時における触媒の排出量に応じた1次ろ過器17の入口側圧力の変化を予測し、上記定常運転の稼働時間に合わせて、ろ材18を逆洗浄する。
ろ材18の逆洗浄時には、まず、逆洗浄の対象となる一方の1次ろ過装置11について、ケーク取出しライン23上の逆洗浄用ストップバルブ24を閉じ、反応液回収ライン19上の1次ろ過用ストップバルブ20を閉じる。次に、待機していた他方の1次ろ過装置12について、反応液回収ライン19上の1次ろ過用ストップバルブ20の開放と、切替えバルブ14の切替え(反応液抜出しライン8から、接続ライン15を介した1次ろ過装置11との接続と、接続ライン16を介した1次ろ過装置12との接続への切り替え)とを行う。
【0052】
これにより、反応液抜出しライン8と接続ライン15との接続が遮断され、かつ反応液抜出しライン8と接続ライン16との接続が許容され、反応液10と触媒との混合物が、反応液抜出しライン8と、接続ライン16とを介して、他方の1次ろ過装置12の1次ろ過器17内に供給される。反応液10と触媒との混合物は、他方の1次ろ過装置12において、引き続き1次ろ過される。他方の1次ろ過装置12における1次ろ過は、一方の1次ろ過装置11における1次ろ過と同様にして操作する。
【0053】
また、これにより、一方の1次ろ過装置11における1次ろ過は、中断される。
次いで、一方の1次ろ過装置11について、ケーク取出しライン23上の逆洗浄用ストップバルブ24を開き、ガス供給ライン21から窒素ガスを供給しながら、1次ろ過器17内に残存している反応液10と、窒素ガスとで、ろ材18に付着しているケークをケーク取出しライン23へと流し出す。
【0054】
一方の1次ろ過装置11の1次ろ過器17内に残存していた反応液10をケーク取出しライン23へと流し出した後には、ガス供給ライン21からガスを供給しながら、洗浄液供給ライン22から1次ろ過器17内に洗浄液としての水を供給し、この水と、上記ガスとで、ろ材18に付着しているケークをケーク取出しライン23へと流し出す。
なお、洗浄液による逆洗浄の際には、一旦、ガス供給ライン21からの窒素ガスの供給を停止し、逆洗浄用ストップバルブ24を閉じて、洗浄液供給ライン22から1次ろ過器17内へと水(洗浄液)を供給し、1次ろ過器17内を水で満たしてもよい。この場合、1次ろ過器17内に洗浄液を充填後、ガス供給ライン21からの窒素ガスの供給を再開し、逆洗浄用ストップバルブ24を開放することにより、水と窒素ガスとで、ろ材18に付着している触媒のケークをケーク取出しライン23へと流し出す。
【0055】
1次ろ過器17内に供給された水と窒素ガスとにより、触媒のケークをケーク取出しライン23へと流し出す処理は、必要に応じて、2回以上繰り返す。
こうして、1次ろ過器17のろ材18に付着した触媒のケークが、ろ材18から分離される。触媒のケークは、逆洗浄時に、1次ろ過器17内の反応液10、または洗浄液供給ライン22から供給される洗浄液によって再スラリー化され、ケーク取出しライン23を経て、後述する2次ろ過器25へと送り込まれる。
【0056】
逆洗浄を終えた1次ろ過装置11は、その後の1次ろ過のために待機させる。
この方法では、2次ろ過装置13における2次ろ過に先立って、2次ろ過器25に対し、スチームが吹き込まれる。具体的には、ろ液回収ライン29上の2次ろ過用ストップバルブ31を開き、スチーム供給ライン27から2次ろ過器25へとスチームを吹き込む。
スチーム供給ライン27から2次ろ過器25内へと吹き込まれるスチームによって、2次ろ過器25内や、2次ろ過器25内に予め堆積されているケークが加温される。
【0057】
2次ろ過器25内へのスチームの吹込みは、好ましくは、1次ろ過器17のろ材18の逆洗浄により生じたスラリーを2次ろ過器25内へと供給する30分程度前に開始する。また、2次ろ過器25内へのスチームの吹込みは、2次ろ過器25内に蓄積した触媒ケークの量に依存するため、特に限定されないが、5〜60分間程度連続し、ケーク取出しライン23から2次ろ過器25内へとスラリーを供給する前に終了する。
【0058】
このスチームの吹込みにより、2次ろ過器25内の温度を、好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、70〜150℃、特に好ましくは、100℃程度に調節する。
2次ろ過器25内に、既に触媒のケークが堆積されているときには、スチームの供給により、2次ろ過器25内に堆積されているケークの温度が、上記範囲となるように調節することが好ましい。
【0059】
2次ろ過器25にスチームを吹込み、加温することで、2次ろ過時の触媒と反応液10との分離効率を向上させることができる。
また、2次ろ過器25内に堆積されているケークをスチームで加温することにより、ケークに付着している反応液10(とりわけ、アニリン)を、触媒から分離しやすくすることができ、その結果、触媒スラリーの粘性を大幅に低下させることができる。このため、2次ろ過時の触媒と反応液10との分離効率を、より一層向上させることができる。
【0060】
2次ろ過器25内に、既に触媒のケークが堆積されているときには、スチームの吹込み時に、攪拌翼26で、ケークを攪拌することが好ましい。
この場合においても、ケークに付着している反応液10(とりわけ、アニリン)を、触媒から分離しやすくすることができ、2次ろ過時の触媒と反応液10との分離効率を、より一層向上させることができる。
【0061】
次に、この方法では、予めスチームが吹き込まれた2次ろ過器25に対し、各1次ろ過器11,12のケーク取出しライン23から、ろ材18の逆洗浄により生じたスラリーを送り込み、2次ろ過する。
2次ろ過時には、ケーク取出しライン23から、予めスチームが吹き込まれた2次ろ過器25へと、1次ろ過器17のろ材18の逆洗浄により生じたスラリーを供給する。
【0062】
次いで、2次ろ過用ストップバルブ31を開き、加圧用ガス供給ライン28から2次ろ過器25へガスを供給して、2次ろ過する。
2次ろ過時には、例えば、2次ろ過器25の入口側圧力(ゲージ圧)を、0.5MPa−G以下、好ましくは、0.2〜0.5MPa−Gとし、ろ過温度を、70〜150℃とする。
【0063】
2次ろ過時の入口側圧力、およびろ過温度を上記範囲に設定することで、効率よく2次ろ過して、触媒に吸着された反応液を、触媒から分離することができる。
2次ろ過により、2次ろ過器25のろ材を通過して、触媒と分離されたろ液は、ろ液回収ライン29を経て回収される。回収されたろ液には、例えば、液相反応での副生物や、その他の不純物や、逆洗浄処理に用いられた洗浄水などが含まれている。そこで、回収されたろ液は、そのままの状態で、または、不純物、洗浄水などを除去後、反応装置2での液相反応における反応液10として再利用される。
【0064】
2次ろ過により、2次ろ過器25のろ材に捕捉された触媒は、触媒回収ライン30から回収される。回収された触媒は、例えば、そのままの状態で、もしくは賦活処理後に、反応装置2での液相反応の触媒として再利用されるか、または廃触媒とされた後、担体に担持されている固体触媒の金属類(例えば、上記の遷移金属元素など)が再利用される。
上記のろ過方法によれば、2次ろ過器25内へのスチームの吹込みにより、2次ろ過に要する時間を短縮でき、触媒と反応液10との分離を促進することができる。
【0065】
また、2次ろ過に要する時間が短縮されることで、例えば、2つの1次ろ過装置11,12を切り替える時間内に、2次ろ過装置13による2次ろ過を終了することができ、触媒と反応液10との分離を効率よく実行できる。
また、上記のろ過方法において、具体的に、1次ろ過器17のろ材18に捕捉された触媒のケークは、水分を10重量%程度含んでいる状態で、アニリンの含有割合が、50重量%程度である。これに対し、上記ろ過方法による2次ろ過後において、2次ろ過器25に堆積される触媒のケークでは、水分を50重量%程度含んでいる状態で、アニリンの含有割合が、5重量%以下となる。
【0066】
上記のように、2次ろ過後の触媒は、アニリンが高度に除去されていることから、反応生成物であるアニリンの回収率が上昇する。また、2次ろ過器25から触媒回収ライン30を経て取り出された触媒は、アニリン臭が抑制されており、必要に応じて、短時間の水洗を施すことにより、アニリン回収時の作業性を向上させることができる。
上記の説明においては、2次ろ過器25をスチームにより予熱したが、例えば、2次ろ過器25内に残渣が貯留されていない場合(例えば、2次ろ過器25内に堆積した触媒ケークの除去後)においては、スチーム供給ライン27から供給されるスチーム以外の手段によって、2次ろ過器25内を予熱してもよい。具体的には、例えば、ヒータ、ジャケット加熱により、2次ろ過器25自体を加温してもよい。
【0067】
上述のろ過方法によれば、触媒に吸着しているアニリンの触媒からの分離が促進され、反応液のろ過時間の短縮とそれに伴うろ過効率を向上させることができる。
それゆえ、上述のろ過方法は、液相反応でのニトロベンゼンの水素添加によるアニリンの製造において、反応液と触媒とを分離するためのろ過方法として好適である。
【実施例】
【0068】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
参考例1(反応装置における液相反応例および1次ろ過装置における1次ろ過)
図1に示す反応装置2の液相反応槽4内に、予め、アニリン350重量部と、触媒0.070重量部と、を投入した。触媒には、活性炭にパラジウムを5重量%の割合で担持させたものを用いた。
【0069】
次いで、液相反応槽4内のアニリンの液温を200℃まで昇温し、液相反応槽4内へのニトロベンゼンの供給(毎時175重量部)と、水素ガスの供給とを開始し、液相反応を開始させた。水素ガスの供給量は、ニトロベンゼンの水素添加に必要とされる化学量論量の3モル倍量に設定した。また、液相反応槽4内の圧力(ゲージ圧)は、0.5MPa−Gが維持されるように調節した。
【0070】
さらに、液相反応槽4内への触媒の供給量を毎時0.0035重量部とし、液相反応槽4から反応液抜出しライン8を経て抜き出される混合物(反応液10と触媒との混合物)の量を毎時17.5重量部とし、反応液10中でのニトロベンゼンの濃度を0.3〜2重量%の範囲で保ちながら、56時間反応を続けた。
反応液10の温度と、液相反応槽4内の圧力は、それぞれ一定に保ち、液相反応槽4内で発生する蒸気は、反応生成物取出しライン9から取り出し、コンデンサ(図示せず)で凝縮して、受器に抜き出した。
【0071】
また、液相反応槽4から反応液抜出しライン8を経て抜き出される混合物を、接続ライン15を経て、1次ろ過器17に導入し、1次ろ過した。
1次ろ過後のろ液を反応液回収ライン19から回収し、ガスクロマトグラフィで組成を分析した。分析結果(重量割合)を以下に示す。
反応液の成分分析結果(検出限界0.1ppm)
反応生成物(溶媒):アニリン90.4%
反応原料:ニトロベンゼン1.0%
副生物:シクロヘキシルアミン7ppm、シクロヘキサノン350ppm、N−フェニルシクロヘキシルアミン7.6%。
【0072】
比較例1(2次ろ過装置における2次ろ過)
触媒(活性炭にパラジウムを5重量%の割合で担持させたもの)23.5重量部と、上記参考例1での1次ろ過後のろ液476.5重量部とを混合し、触媒のスラリーを得た。
次いで、このスラリー476.5重量部を、ケーク取出しライン23から2次ろ過器25内に導入して、2次ろ過した。
【0073】
2次ろ過器25のろ材には、捕捉可能な最小粒子径が7μmであるろ布を使用した。また、2次ろ過時には、窒素ガスによる加圧で入口側圧力(ゲージ圧)を0.3MPaとし、入口側圧力と出口側圧力(0MPa−G)との差圧を0.3MPaとした。また、ろ過温度を20℃とした。
次に、2次ろ過器25のろ材に捕捉された触媒のケークをそのままの状態として、上記スラリーを、ケーク取出しライン23から2次ろ過器25内に導入し、2回目の2次ろ過した。さらに、同様の操作を2回繰り返した。最後の4回目の2次ろ過に要した時間は、360秒であった。
【0074】
また、最後の4回目の2次ろ過後に、2次ろ過器25のろ材に捕捉された触媒のケークを採取し、成分を分析した。水分含有量は、カールフィッシャー水分率計により測定した。アニリン含有量は、アニリンを含む触媒を採取した時の重量測定値と、触媒からアニリンを除去し、真空乾燥した後の重量測定値との差により算出した。
その結果、採取されたケークには、水分が11.7重量%、アニリンが55.4重量%含まれていた。
【0075】
実施例1(2次ろ過装置における2次ろ過)
比較例1において、4回目の2次ろ過処理後、ろ液回収ライン29上の2次ろ過用ストップバルブ31を開いて、スチーム供給ライン27から、温度120℃、圧力(ゲージ圧)0.2MPa−Gのスチームを5分間供給して、2次ろ過器25内を加温した。スチーム供給時の2次ろ過器25内の温度は、98℃であった。
【0076】
スチームによる2次ろ過器25内の加温処理(以下、「スチーム処理」という。)後、比較例1と同じ触媒のスラリー476.5重量部を、ケーク取出しライン23から2次ろ過器25内に導入し、2次ろ過した。さらに、同様の操作を3回繰り返した。
5回目(スチーム処理後)の2次ろ過に要した時間は、100秒であった。
また、5回目(スチーム処理後)の2次ろ過後に、2次ろ過器のろ材に捕捉された触媒のケークを採取し、成分を分析した。
【0077】
その結果、採取されたケークには、水分が49.0重量%、アニリンが4.1重量%含まれていた。
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、本発明のろ過方法に用いられる装置の一実施形態を示す概略装置構成図である。
【符号の説明】
【0079】
17:1次ろ過器、 18:ろ材、 25:2次ろ過器、 26:攪拌翼、 27:スチーム供給ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロベンゼンの水素添加によりアニリンを製造する液相反応において、前記液相反応の反応液と触媒との混合物を1次ろ過器で1次ろ過した後、逆洗浄により、前記1次ろ過器のろ材に付着したケークを前記ろ材から分離し、次いで、逆洗浄により生成したスラリーを、予めスチームが吹き込まれた2次ろ過器へ供給し、2次ろ過することを特徴とする、ろ過方法。
【請求項2】
前記触媒が、炭素担体に金属が担持している担持金属触媒であることを特徴とする、請求項1に記載のろ過方法。
【請求項3】
前記2次ろ過器への前記スラリーの供給前に、前記2次ろ過器内に堆積している触媒を攪拌しながらスチームを吹き込むことを特徴とする、請求項1または2に記載のろ過方法。
【請求項4】
前記1次ろ過器の入口側圧力(ゲージ圧)を0.5MPa−G以下、入口側圧力と出口側圧力との差圧を0.5MPa以下、およびろ過温度を5〜150℃となるようにして1次ろ過することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項5】
前記逆洗浄時に、前記1次ろ過器にガスを供給しながら、前記ろ材に付着した触媒を、前記1次ろ過器に残存している反応液、または前記1次ろ過器に供給される洗浄液とともに、前記2次ろ過器へと流し出すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のろ過方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260713(P2008−260713A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104517(P2007−104517)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】