説明

ろ過用部材及びろ過装置

【課題】被処理液をろ過する寿命を管理しやすく、その寿命が尽きた場合にも交換作業容易なろ過用部材を提供し、さらには、メンテナンスの際に、被処理液の原液を管理容易なろ過装置を提供すること。
【解決手段】袋状ろ布体30を備え、被処理液を流通供給自在な管状の送液部2が挿通される送液部挿通用孔部31aを袋状ろ布体30の一端側に設けるとともに、袋状ろ布体30の内部を複数のろ過袋部34に区画する仕切部33を設けたろ過用部材であって、送液部2から袋状ろ布体30内に供給された被処理液をろ過袋部34からオーバーフロー可能にするオーバーフロー部32aを、仕切部33の上端高さよりも高位置で、かつ、送液部挿通用孔部31aの下端よりも低位置に設けるとともに、袋状ろ布体30の送液部挿通用孔部31aに対向する他端側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状ろ布体を備え、被処理液を流通供給自在な管状の送液部が挿通される送液部挿通用孔部を前記袋状ろ布体の一端側に設けるとともに、前記袋状ろ布体の内部を複数のろ過袋部に区画する仕切部を設けたろ過用部材、及び、ろ過槽内部に被処理液を流通供給自在な管状の送液部を横架姿勢で設けて、前記ろ過用部材を前記送液部に挿通吊下げ装着可能に構成したろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなろ過用部材としては、特許文献1に示すように、前記袋状ろ布体内の被処理液を、前記仕切部の上端高さよりも高位置の前記送液部挿通用孔部の下端からオーバーフローさせる構成としたものが知られている。
【0003】
また、ろ過装置としては、ろ過槽内部に被処理液を流通供給自在な管状の送液部を横架姿勢で設けて、前記ろ過用部材を前記送液部挿通用孔部を介して前記送液部に挿通吊下げ装着可能に構成したものが知られている。
【0004】
このようなろ過用部材およびろ過装置は、汚水のろ過、油の浄化、工作処理液からの異物除去等の用途で用いることが考えられている。このようなろ過用部材及びろ過装置は、近年、ろ布を目詰まりさせやすい微細な汚れや異物をろ過する目的で有利に用いられることから見直されている。
【0005】
上述のようなろ過装置では、被処理液を受け入れたろ過用部材を構成する袋状ろ布体の最初のろ過袋部が微細な汚れや異物をろ過するのに伴い目詰まりする。すると、前記被処理液は、当該ろ過袋部の下側部位ではろ過されにくくなって、次第に袋状ろ布体内に溜り気味になる。そして、前記ろ過袋部内では、液面が上昇し、流入する被処理液が前記ろ過袋部から溢れて、次のろ過袋部に流入する。すると、前記ろ過用部材において前記被処理液を新たなろ過袋部でろ過することができるようになり、順次新たなろ過面で被処理液をろ過処理でき、常時性能良くろ過を行うことができる。また、ろ過袋部がすべて使用済みになると、前記袋状ろ布体の内部の液位が上昇し、送液部挿通用孔部の下端から被処理液がオーバーフローする。これにより、前記ろ過用部材の寿命を知ることができる。
【0006】
その寿命まで前記ろ過用部材を使用した場合、前記ろ過用部材は前記ろ過装置から取り外し、交換する必要がある。また、目詰まりの進行度合いは、ろ過する被処理液の性状等に左右されるため、前記ろ過用部材を最大限効率良く用いるためには、前記ろ過用部材を構成する袋状ろ布体からオーバーフローする被処理液を検知して、前記ろ過用部材が寿命に達したことを知るのが効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平01−001707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記ろ過用部材は異物等を含む被処理液の原液及びろ過された汚れを、袋状ろ布体の内部に保持している。前記ろ過装置に装着したろ過用部材を、交換したり、前記ろ過装置をメンテナンスする際には、前記袋状ろ布体をオーバーフローした被処理液が、こぼれてしまうことが懸念される。この場合、前記被処理液の原液やろ過された汚れが前記ろ過装置内にこぼれると、ろ過済みの被処理液を再度汚染することになる。そのため、前記ろ過装置内では、前記オーバーフローした被処理液を、ろ過された被処理液から確実に分離しておく必要がある。そのような構成を付加すると、前記ろ過装置の構成が複雑化しやすくなるとともに、大型化し、あまり好ましいものではなかった。そのため、袋状ろ布体からオーバーフローする被処理液がこぼれるのを確実に阻止することが望まれる。
【0009】
他方、前記オーバーフローする被処理液は、送液部挿通用孔部の下端からオーバーフローする。また、上記従来の構成によると、前記袋状ろ布体は、送液部挿通用孔部を介して、前記送液部の先端側から基端側に向かって挿通されることになる。この状態では、前記被処理液のオーバーフローする位置は、前記送液部に吊下げ装着された前記ろ過用部材のろ過袋部に邪魔されて視認しにくく、管理しにくい。また、前記袋状ろ布体をメンテナンスする時点では、すでに前記袋状ろ布体内部の液位が前記送液部挿通用孔部の下端に達している。これらのことを考慮すると、上記交換、メンテナンス作業時に被処理液の原液がろ過装置内にこぼれるのを確実に阻止することは困難である。したがって、交換作業時に内部の被処理液の原液を管理容易なろ過用部材及びろ過装置が望まれる。
【0010】
本発明の目的は、上記実情に鑑み、被処理液をろ過する寿命を管理しやすく、その寿命が尽きた場合にも交換作業容易なろ過用部材を提供し、さらには、メンテナンスの際に、被処理液を管理容易なろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成〕
上記課題を解決するための本発明の特徴構成は、袋状ろ布体を備え、被処理液を流通供給自在な管状の送液部が挿通される送液部挿通用孔部を前記袋状ろ布体の一端側に設けるとともに、前記袋状ろ布体の内部を複数のろ過袋部に区画する仕切部を設けたろ過用部材であって、
前記送液部から前記袋状ろ布体内に供給された被処理液をろ過袋部からオーバーフロー可能にするオーバーフロー部を、前記仕切部上端高さよりも高位置で、かつ、前記送液部挿通用孔部の下端よりも低位置に設けるとともに、前記袋状ろ布体の前記送液部挿通用孔部に対向する他端側に設けた点にある。
【0012】
〔作用効果〕
本発明のろ過用部材は、送液部挿通用孔部を一端側に設けてあるから、袋状ろ布体に管状の送液部をその送液部挿通用孔部に挿通させることができる。これにより、前記ろ過用部材は、前記送液部に吊下げられた状態で装着される。そして、前記ろ過用部材は、前記送液部から供給される被処理液を受け入れ、袋状ろ布体によりろ過することができる。
【0013】
また、前記袋状ろ布体の内部を複数のろ過袋部に区画する仕切部を設けてあるから、前記袋状ろ布体が、前記送液部から受け入れた被処理液は、前記ろ過袋部内に案内される。前記ろ過袋部内に案内された被処理液は、前記ろ過袋部内面を構成する前記袋状ろ布体によりろ過されて、下方に落下供給される。
【0014】
前記ろ過袋部内で被処理液をろ過すると、被処理液に含まれる汚れ、異物が前記ろ過袋部内に蓄積される。この汚れ、異物により、前記袋状ろ布体が目詰まりして前記ろ過袋部内におけるろ過能力が低下すると、被処理液のろ過処理が、前記送液部からの被処理液供給よりも遅くなり、次第に前記ろ過袋部内の液位が上昇する。前記液位が、前記ろ過袋部を区画する仕切部の高さよりも上がってしまうと、供給される被処理液は、前記仕切部を乗り越えて前記ろ過袋部に隣接するろ過袋部に移流する。すると、移流した被処理液は、隣のろ過袋部内面を構成する新たな袋状ろ布体の部分によりろ過される。そのため、被処理液は前記ろ過袋部の目詰まりに応じて、順次袋状ろ布体の新たな面でろ過されるので、被処理液は、常時清浄な面でろ過されて、高いろ過精度が長期にわたって維持されやすい。
【0015】
前記ろ過用部材内に供給される被処理液が、前記仕切部を乗り越えてすべてのろ過袋部に達すると、次に、前記被処理液は、袋状ろ布体のろ過袋部上方部分に残留して前記ろ過用部材内の液位が上昇する。このとき、前記袋状ろ布体内の被処理液を、ろ過袋部からオーバーフロー可能にするオーバーフロー部を前記袋状ろ布体の前記送液部挿通用孔部に対向する他端側に設けてあれば、上昇した液位が前記オーバーフロー部に達したときに、ろ過用部材の他端側から被処理液が前記オーバーフロー部からオーバーフローする。すると、前記袋状ろ布体のろ過能力が十分でなくなり寿命に達したことを知ることができる。
【0016】
前記袋状ろ布体を前記一端側の送液部挿通用孔部を介して前記送液部に挿通させた場合、前記袋状ろ布体の一端側に設けられる前記送液部挿通用孔部の位置が前記送液部の基端側に達したときには、前記他端側のオーバーフロー部が送液部の先端側に位置することになる。
即ち、前記送液部の基端側に前記袋状ろ布体の一端側に設けられた前記送液部挿通用孔部が位置し、前記送液部の先端側に前記袋状ろ布体の他端側に設けられる前記オーバーフロー部が位置する状態で、前記ろ過用部材を構成する前記袋状ろ布体が前記送液部に装着されることになる。
【0017】
この状態で、前記袋状ろ布体が寿命に達したときにオーバーフローする被処理液は、送液部の先端側からオーバーフローする。この送液部の先端側は、前記送液部に前記ろ過用部材を装着する作業位置側であるため、吊下げ姿勢の袋状ろ布体が邪魔にならず、そのオーバーフローする状態を前記作業位置側から容易に管理することができる。また、送液部に装着した状態で寿命に達したろ過用部材を交換、メンテナンスする際には、前記袋状ろ布体内に充満する被処理液を前記オーバーフロー部からこぼれないように処置すればよく、容易に交換、メンテナンスすることができる。
【0018】
〔構成〕
前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液をろ過して袋状ろ布体外部に落下させる追加ろ過袋部を設けてあっても良い。
【0019】
〔作用効果〕
上記ろ過用部材の袋状ろ布体では、前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液を管理して、そのろ過用部材の寿命を知ることができる。しかし、そのオーバーフローした被処理液を管理する場合、前記被処理液がろ過済みの被処理液に混入することがある。すると、ろ過済みの被処理液の性状を悪化させることになるので好ましくない。そこで、前記追加ろ過袋部を設けてあれば、前記追加ろ過袋部は、前記オーバーフロー部からオーバーフローした被処理液をろ過した状態で前記袋状ろ布体外部に放出させることができるようになる。
【0020】
そのため、オーバーフロー部からオーバーフローした被処理液がろ過済みの被処理液と混合してしまっても問題なく、また、メンテナンス作業時等にオーバーフロー部からオーバーフローした被処理液が散乱したとしても、周囲に対する汚染度を、各段に低下させることができる。即ち、メンテナンス作業を行う作業者の作業衛生面においても好ましいものとなる。
【0021】
〔構成〕
本発明のろ過装置の特徴構成は、ろ過槽内部に被処理液を流通供給自在な管状の送液部を横架姿勢で設けて、上記ろ過用部材を、前記オーバーフロー部が前記送液部の先端側に位置する姿勢で前記送液部挿通用孔部を介して前記送液部に挿通吊下げ装着可能に構成し、前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液を検知する検知手段を設け、前記ろ過用部材を前記送液部に吊下げ着脱操作自在にする開口部を前記送液部の先端側面に設け、前記ろ過袋部においてろ過され落下した被処理液を回収してろ過槽の外部に取出すための回収部を設けた点にある。
【0022】
〔作用効果〕
ろ過槽内部に送液部を横架姿勢に設けてあるから、前記ろ過用部材は、送液部に吊下げ姿勢に装着した状態で、前記ろ過槽内部に収容することができる。このときろ過用部材の着脱操作は、前記開口部から行うことができるので、容易に作業を行うことができる。
具体的には、上記構成によれば、前記送液部は、先端側をろ過槽の手前(前記開口部側)に向け、基端側がろ過槽の奥(前記開口部からみてろ過槽の内部側)に位置する姿勢で設けられた状態とすることができる。そのため、前記ろ過用部材を前記送液部に吊下げ操作するのには、前記ろ過用部材を前記袋状ろ布体の前記送液部挿通用孔部の位置する一端側から、前記送液部の先端側に挿通する。そして、前記ろ過槽の奥に位置する前記送液部の基端側に、前記袋状ろ布体の一端側に設けられた前記送液部挿通用孔部が位置し、前記ろ過槽の手前側に位置する前記送液部の先端側に、前記袋状ろ布体の他端側に設けられる前記オーバーフロー部が位置する状態まで装着すれば円滑に装着動作を行うことができる。また、この操作により、装着後の前記オーバーフロー部が、前記ろ過槽の手前側の前記開口部側に位置する状態を容易に実現することができる。また、前記ろ過用部材でろ過された被処理液は、落下して前記回収部からろ過槽の外部に取出すことができる。
【0023】
収容されたろ過用部材は、前記送液部からの被処理液供給を受け、被処理液のろ過を行う。そして、前記ろ過用部材が寿命に達した場合、前記オーバーフロー部からの被処理液のオーバーフローを前記手前側で受けることができる。すなわち、オーバーフローする被処理液は、前記開口部側にオーバーフローすることになるから、前記検知手段での被処理液の検知に基き、当該被処理液を、前記開口部側から容易に管理することができる。また、前記被処理液を管理するに当たって、ろ過槽における前記開口部側から管理することができるので、ろ過用部材の交換、前記検知手段の調整や清掃等のメンテナンスが必要になっても、作業性良くそのメンテナンスを行うことができる。
【0024】
〔構成〕
前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液を受け入れる受け部を設け、前記受け部に貯留された被処理液を検知する前記検知手段としての検知部を設けることが好ましい。
【0025】
〔作用効果〕
前記オーバーフローした被処理液は、前記ろ過槽内の前記開口部側に落下放出される。そのため、その被処理液を受け入れる受け部を設けてあると、オーバーフローした被処理液を一旦受け部に貯留させることができるので、その被処理液が例えろ過が不十分であったとしても直接回収部で回収されるろ過後の被処理液に混入することを防ぐことができる。更に、前記受け部に貯留された被処理液を検知する検知手段としての検知部を設けて構成してあると、前記ろ過槽の内部を確認することなく、前記ろ過用部材の寿命を知ることができる。尚、前記受け部がオーバーフローした被処理液を受け入れたときに、前記検知部は、即座に被処理液に対応する出力をしても良いし、前記受け部にある程度被処理液がたまったときに、その被処理液の量に応じた出力、あるいは表示を行うようにしても良い。また、検知部による被処理液の検知出力は、種々公知の形態で、光、音、機械的動作等に変換して前記ろ過槽外の作業者に伝達されるように構成しておくことができる。
【0026】
〔構成〕
前記開口部に開閉扉が設けられ、前記受け部が前記開閉扉のろ過槽内面に設けられていることが好ましい。
【0027】
〔作用効果〕
前記開口部に開閉扉が設けられ、前記受け部が前記開閉扉のろ過槽内面に設けられていると、前記ろ過槽内部に前記開口部から上記ろ過用部材の交換や検知手段の調整などのメンテナンスをする際に、前記開閉扉を開くと、その受け部が前記開閉扉とともに、前記ろ過槽の開口部位置からろ過槽外方側へ引退した位置に移動させられる。そのため、前記受け部は、メンテナンス作業の際に、邪魔になりにくく、前記受け部や検知部に対するメンテナンスも容易に行える。
【発明の効果】
【0028】
したがって、従来よりも被処理液をろ過する寿命を管理しやすく、その寿命が尽きた場合にも交換作業容易なろ過用部材を提供し、さらには、メンテナンスの際に、被処理液を管理容易なろ過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ろ過装置の縦断側面図
【図2】ろ過装置の一部透視全体斜視図
【図3】ろ過用部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明のろ過用部材及びろ過装置を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0031】
図1、2に示すように、本発明のろ過装置は、ろ過槽1内部の上部空間に被処理液の原液を流通供給自在な管状の送液部2をろ過槽1の奥11側から手前12側に向かって複数列(図2においては2列の例を示している)横架姿勢で設けてある。これにより、その送液部2にろ過用部材3を挿通吊下げ装着可能となっている。また、前記ろ過槽1における手前12側面(前記送液部2の先端側の面)には、開口部が設けられており、前記開口部には、前記ろ過用部材3を前記送液部2に吊下げ着脱操作自在にする開閉扉4を設けてある。また、ろ過槽1の下部には、ろ過袋部34においてろ過され落下した被処理液を回収してろ過槽1の外部に取出すための回収部13が設けてある。
【0032】
図3に示すように、本発明のろ過用部材3は、一枚のろ布を下辺部37が袋状になるように折り畳み、平面視における左辺部31の上部及び右辺部32の上部を除き、残部を閉塞して前記左辺部31の上部及び右辺部32の上部に孔部を設けた袋状ろ布体30に、後述の追加ろ過袋部36を接続してなる構成としたものである。前記袋状ろ布体30の内部には、ろ布を縫合して仕切部33を設けて、内部を複数のろ過袋部34(本実施形態においては3つ)に区画してある。
【0033】
具体的には、前記ろ過用部材3は、折りたたまれたろ布の前記左辺部31において前記左辺部31の下端より左辺部31の上端側に管状の送液部2の太さ分だけ残す長さ分を縫合して形成してある。この縫合していない部分に形成される孔部が、送液部挿通用孔部31aを構成する。また前記袋状ろ布体30の右辺部32は、前記左辺部31の縫合長さよりもやや短い長さ分だけ縫合してある。このろ過用部材3における、袋状ろ布体30に、右辺部32の縫合していない部分として形成される孔部が、オーバーフロー部32aとして構成される。また、仕切部33は、前記袋状ろ布体30の下辺部37より上辺部35に向かって、前記右辺部32の縫合長さよりも短い長さ分だけ縫合して形成され、各仕切部33間にろ過袋部34を形成するように形成してある。即ち、前記送液部2から前記袋状ろ布体30内に供給された被処理液を、前記仕切部33の上端高さよりも高位置で、かつ、前記送液部挿通用孔部31aの下端よりも低位置で、ろ過袋部からオーバーフロー可能にするオーバーフロー部32aを、前記袋状ろ布体30の前記送液部挿通用孔部31aに対向する他端側に設けた構成となっている。
【0034】
この袋状ろ布体30は、上辺部35に沿って、一端側の前記送液部挿通用孔部31aから他端側の前記オーバーフロー部32aに向かって送液部2を挿通することで、前記送液部2に吊下げ姿勢とすることができる。また、前記送液部2には供給される被処理液を吐出する送液孔21が設けられている。前記ろ過用部材3は、その吊下げ姿勢で、前記送液部2の送液孔21からの被処理液を受け入れてろ過可能な状態となる。前記送液孔21は、前記ろ過袋部34のうち、前記管状の送液部2の軸心方向で最も先端側にあるろ過袋部34の上方位置に形成されている。
【0035】
また、前記袋状ろ布体30の前記オーバーフロー部32aには、そのオーバーフロー部32aからオーバーフローする被処理液を受けて、ろ過した後、外部に落下させる袋形状の追加ろ過袋部36を前記オーバーフロー部32aに連通するように縫合接続して全体としてろ過用部材3として機能するように構成する。
【0036】
図1,2に示すように前記開閉扉4の前記ろ過槽1内面には、前記オーバーフロー部32aからオーバーフローした被処理液を前記追加ろ過袋部36を介して受け入れる受け部41が設けられている。前記受け部41は、前記ろ過槽1における前記開閉扉4を閉状態としたときに、前記追加ろ過袋36の下方に位置するように設けてある。また、前記開閉扉4には、前記受け部41に貯留された被処理液を検知する検知部42(検知手段の一例)を設けてある。前記検知部42が、受け部41内に被処理液が貯留されたことを検知すると、前記ろ過袋部34のすべてが目詰まりして、前記ろ過用部材3のろ過能力が低下し、ろ過用部材3を交換する必要があることになる。したがって、検知部42が被処理液を検出した出力は、前記ろ過槽1の外部に報知可能に構成してある。具体的に、図1,2の構成においては、前記検知部42において、被処理液のオーバーフローが検知されると、前記開閉扉4の前面に表示部43として設けられたランプが点灯する。これにより、前記ろ過用部材3を交換する必要があることを前記開閉扉4の外部から知ることができる。
【0037】
したがって、前記ろ過用部材3は、前記送液部2に吊下げ姿勢で前記送液部2の送液口21からの被処理液の供給を先端側のろ過袋部34で受けてろ過し、ろ過袋部34の外に排出することができる。そして、前記ろ過槽1では、前記袋状ろ布体30からのろ液を一旦下方で受けつつ一方向に流出させて、前記ろ過槽1の回収部13から回収することができる。この際、前記袋状ろ布体30は、被処理液を先端側のろ過袋部34で受け、そのろ過袋部34が満杯になると、順次前記仕切部33を越えて奥側に隣接するろ過袋部34に被処理液を移送し、ろ過を続ける。そして、総てのろ過袋部34が満杯になると、前記ろ過袋部34内部の液位が前記仕切部33の高さよりも高くなり、前記ろ過用部材3が被処理液を受け入れる。そしてさらに、液位がオーバーフロー部32aに達すると、前記オーバーフロー部32aより、ろ過されていない被処理液をオーバーフローさせ、前記追加ろ過袋部36によりその被処理液をろ過して下方に落下させる。落下させられた被処理液は、前記開閉扉4に設けられた受け部41に落下し、前記検知部42で検知され、前記ろ過用部材3を交換する必要があることを知ることができる。
【0038】
ここで、前記ろ過用部材3の交換の際に、前記開閉扉4を開けると、前記開閉扉4に設けられた受け部41や検知部42が清掃可能になる。このとき、前記受け部41が邪魔にならない状態で、前記開閉扉4の開口部から前記ろ過槽1内のろ過用部材3を前記送液部2に対して着脱操作できる。
【0039】
メンテナンス作業時の、前記ろ過用部材3の着脱操作は、使用済みの前記ろ過用部材3を引き出し、前記送液部2に新たなろ過用部材3の送液部挿通用孔部31aを挿通させ、そのろ過用部材3を吊下げ姿勢にセットする操作を行う。この一連の操作は、前記開閉扉4の開口部からできるので作業効率がよい。また、メンテナンス作業の際に作業者が触れる被処理液は、袋状ろ布体30でろ過済みのものになるので、作業衛生面でも好適である。
【0040】
〔別実施の形態〕
尚、前記袋状ろ布体30は、一枚のろ布を縫合により所望の形状に作成したが、接着、融着等によりろ過袋部が形成されるように作成する、複数のろ布を組み合わせて形成する、別途送液部に対して装着するための部材を一体に付設しておく、など、種々公知の常法により作製することができる。
また、追加ろ過袋部36を設ける構造についても同様である。
【0041】
また、上記構成においては、追加ろ過袋部36を設けたが、これに限らず、追加ろ過袋部36を設けることなく、袋状ろ布体30を構成することも可能である。
例えば、オーバーフロー部32aからオーバーフローした被処理液をろ過せずに受け部41に貯留し、貯留された被処理液を検知部42にて検知する構成としてもよい。また、例えば、受け部41及び検知部42を設けることなく、オーバーフロー部32aからオーバーフローした被処理液を検知する液体センサ(検知手段の一例)をオーバーフロー部32aに設け、オーバーフロー部32aをオーバーフローする被処理液を直接検知する構成を採用することもできる。この場合、オーバーフローした被処理液は、ろ過されていないものであるが、オーバーフローしたことを液体センサにて即座に検知できるので、ろ過されていない被処理液が回収部13に混入される量を少なくすることができる。
なお、追加ろ過袋部36を設ける場合であっても、受け部41を設けることなく、オーバーフロー部32aからオーバーフローした被処理液を検知する液体センサ(検知手段の一例)をオーバーフロー部32aに設け、追加ろ過袋部36にてろ過された被処理液を回収部13に落下させてもよい。
【0042】
また、図3の構成においてろ過用部材3を構成する袋状ろ布体30に形成されるろ過袋部34は、3袋となっているが、これに限らず2以上の任意の数を採用できる。但し、少なすぎると、1つのろ過袋部34あたりの被処理液ろ過量が増え、ろ過袋部34を分割する意図が薄れる。また、ろ過袋部34を増やしすぎると、ひとつあたりの容積が小さくなり、被処理液がろ過袋部34に流入する入口が小さくなる。そのため、被処理液が所望の順序で円滑に各ろ過袋部34に流入しなくなるおそれがあるので、3〜5袋程度とするのが好ましい。
【0043】
また、被処理液は、手前12から奥11に向かって順に各ろ過袋部34に流入する構成としたが、これに限らず、奥11から手前12に順に流入する構成でも良いし、中央部から奥11と手前12に分散的に順次流入する構成でも良い。このような被処理液の流入順序は、前記仕切部33の高さを適宜調整することにより、所望の順序に規制することができる。
【0044】
また、前記ろ過用部材3としては、ろ過袋部34を1つだけ有する複数の袋状ろ布体30を、他部材を介して連結することによっても、複数のろ過袋部34を有する形態に構成することができる。このような場合、前記他部材も含め、各袋状ろ布体30を連結する構成が仕切部33に該当する。
【0045】
また、前記検知部42は、前記開閉扉4の内側に設けたが、これに限らず、オーバーフロー部32aからオーバーフローする被処理液を受けて検知することができる位置であればいずれの箇所に設けてもかまわない。また、前記検知部42からの検知出力は、表示部43としてのランプを発光させるのに代えて、音を発するものであってもよい。さらには、表示部43としては、検知部42からの検知出力に応じて、部材を機械的に視認可能な姿勢に移動させる構成のもの(例えば、ろ過装置上部に設けたプレートを起立させて、ろ過用部材の交換時期を表示するものなど)であっても良い。また、検知部42は、前記受け部41に溜まった被処理液の液位を透視する透視窓であってもよい。また、前記検知出力の出力先としての表示部43は、前記検知部42と一体に設けても良いが、前記検知部42とは異なる箇所に設けてあっても良い。この場合、前記検知出力を無線出力などで表示部43に伝送する構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
このようなろ過用部材、ろ過装置は、汚水のろ過、油の浄化、工作処理液からの異物除去等の用途で用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ろ過槽
13 回収部
2 送液部
3 ろ過用部材
30 袋状ろ布体
31a 送液部挿通用孔部
32a オーバーフロー部
33 仕切部
34 ろ過袋部
36 追加ろ過袋部
4 開閉扉
41 受け部
42 検知部(検知手段)
43 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状ろ布体を備え、被処理液を流通供給自在な管状の送液部が挿通される送液部挿通用孔部を前記袋状ろ布体の一端側に設けるとともに、前記袋状ろ布体の内部を複数のろ過袋部に区画する仕切部を設けたろ過用部材であって、
前記送液部から前記袋状ろ布体内に供給された被処理液をろ過袋部からオーバーフロー可能にするオーバーフロー部を、前記仕切部上端高さよりも高位置で、かつ、前記送液部挿通用孔部の下端よりも低位置に設けるとともに、前記袋状ろ布体の前記送液部挿通用孔部に対向する他端側に設けたろ過用部材。
【請求項2】
前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液をろ過して袋状ろ布体外部に落下させる追加ろ過袋部を設けた請求項1に記載のろ過用部材。
【請求項3】
ろ過槽内部に被処理液を流通供給自在な管状の送液部を横架姿勢で設けて、請求項1または2に記載のろ過用部材を、前記オーバーフロー部が前記送液部の先端側に位置する姿勢で前記送液部挿通用孔部を介して前記送液部に挿通吊下げ装着可能に構成し、前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液を検知する検知手段を設け、前記ろ過用部材を前記送液部に吊下げ着脱操作自在にする開口部を前記送液部の先端側面に設け、前記ろ過袋部においてろ過され落下した被処理液を回収してろ過槽の外部に取出すための回収部を設けたろ過装置。
【請求項4】
前記オーバーフロー部からオーバーフローする被処理液を受け入れる受け部を設け、前記受け部に貯留された被処理液を検知する前記検知手段としての検知部を設けた請求項3に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記開口部に開閉扉が設けられ、前記受け部が前記開閉扉のろ過槽内面に設けられている請求項4に記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−255329(P2011−255329A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132896(P2010−132896)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】