説明

アイオノマー組成物を含む成形品

成形品はアイオノマー組成物を含み、かつ良好な光学特性を有する。アイオノマー組成物は、約400g/10分以下のメルトインデックスを有する前駆体酸共重合体を部分的に中和することによって製造されるアイオノマーを含む。その前駆体酸共重合体は、2〜10個の炭素を有するα−オレフィン共重合単位と、前駆体酸共重合体の全重量に対して約19.5〜約30重量%の、3〜8個の炭素を有するα,β−エチレン型不飽和カルボン酸共重合単位を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年5月30日に出願した米国仮特許出願第61/130,382号の、米国特許法第120条に基づく優先権を主張するものであり、その出願はそのまま参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は成形品に係り、特に、あるアイオノマー組成物から製造された良好な光学特性を有する射出成形品または圧縮成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明が関係する技術の現状をより完全に説明するために、本明細書にはいくつかの特許および刊行物が引用されている。これらの特許および刊行物にそれぞれ開示されている内容はすべて、参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0004】
アイオノマーは、α−オレフィンおよびα,β−エチレン型不飽和カルボン酸の共重合残基を含む親酸共重合体を部分的または完全に中和することによって製造される共重合体である。射出成形法によりアイオノマーから製造された様々な製品が、我々の日常生活で使用されてきている。
【0005】
例えば、アイオノマーで被覆されたゴルフボールが射出成形により製造されている。例えば、米国特許第4,714,253号明細書、同第5,439,227号明細書、同第5,452,898号明細書、同第5,553,852号明細書、同第5,752,889号明細書、同第5,782,703号明細書、同第5,782,707号明細書、同第5,803,833号明細書、同第5,807,192号明細書、同第6,179,732号明細書、同第6,699,027号明細書、同第7,005,098号明細書、同第7,128,864号明細書、同第7,201,672号明細書、米国特許出願公開第2006/0043632号明細書、同第2006/0273485号明細書および同第2007/0282069号明細書を参照されたい。
【0006】
アイオノマーは、また、容器などの中空射出成形品の製造にも使用されている。例えば、米国特許第4,857,258号明細書、同第4,937,035号明細書、同第4,944,906号明細書、同第5,094,921号明細書、同第5,788,890号明細書、同第6,207,761号明細書および同第6,866,158号明細書、米国特許出願公開第2002/0180083号明細書、同第2002/0175136号明細書および同第2005/0129888号明細書、欧州特許第1816147号明細書および同第0855155号明細書、並びに国際公開第2004062881号パンフレット、同第2008010597号パンフレットおよび同第2003045186号パンフレットを参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
射出成形で製造された容器は、しばしば厚い壁構造を有する。そのような容器の成形にアイオノマーが使用されると、その光学特性は壁の厚さによって悪影響を受け易い。アイオノマー組成物から製造され、かつ良好な光学特性を有する容器を開発することが、特に化粧品工業において要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
射出成形品または圧縮成形品は、アイオノマー組成物を含み、かつ良好な光学特性を有する。アイオノマー組成物は、前駆体酸共重合体を部分的に中和することによって製造されるアイオノマーを含み、その前駆体酸共重合体は、2〜10個の炭素を有するα−オレフィン共重合単位と、前駆体酸共重合体の全重量に対して約19.5〜約30重量%の、3〜8個の炭素を有するα,β−エチレン型不飽和カルボン酸共重合単位を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用されるとき、他に特に限定がなければ、その用語に以下の定義が適用される。
【0010】
本明細書中で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野で通常の技術を有する者が通常理解している意味を有する。一致していない場合には、ここでの定義を含む本明細書が優先される。
【0011】
ここで使用されるとき、用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「含んでいる(containing)」、「〜を特徴とする」、「有する(have)」、「有している(having)」、またはこれらの全ての類似語は、非排他的な包含を意味する。例えば、要素の所与のリストを含むプロセス、方法、製品または装置は、必ずしも示された要素にのみ限定されるものではなく、リストに明示されていない、あるいは、そのようなプロセス、方法、製品または装置が通常備える他の要素をさらに含むことができる。
【0012】
移行句「〜から構成される(consisting of)」は、要素の所与のリストに明記されていない要素、工程または成分を全て排除し、通常含まれる不純物を除いて、列挙されていない材料はリストに包含しない。「〜から構成される」の句が、プレアンブルの直後でなく、請求項本文の節に記載されているときは、その節の中に記載された要素のみを限定し、他の要素は請求項全体からは排除されない。
【0013】
移行句「〜から実質的に構成される(consisting essentially of」は、請求項の範囲を、明記された材料または工程と、請求項に記載された発明の基本的、かつ新規な特徴部分に実質的に影響しないものとに限定する。「基本的に〜から構成される」の請求項は、「〜から構成される」形式で記載されたクローズドクレームと、「含む」形式で記載された完全オープンクレームとの中間位置を占める。ここで定義されているような、添加物として適正な量で添加されている任意成分の添加物や重要でない不純物は、「〜から実質的に構成される」という用語によって組成物から排除されることはない。
【0014】
組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部が、本明細書中に、「含む」のようなオープンエンドの用語を使用して記載されているとき、他に記述がなければ、その記載は、組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部の要素「から実質的に構成される」または「から構成される」実施形態もまた含む。
【0015】
本明細書に記載されている組成物、プロセスまたは構造の種々の要素および成分に関連して、冠詞「a」および「an」を使用することができる。これは単に便宜上のものであり、組成物、プロセスまたは構造について一般的な意味を与えるためのものである。そのような記載は、「1つ、または少なくとも1つ」の要素または成分であることを含む。さらに、ここでは、単数の冠詞は、複数が排除されることが特定の文脈から明らかでない限り、複数の要素または成分の記載も含む。
【0016】
ここでは、用語「または」は、包括的である。すなわち、「AまたはB]という句は「A、B、またはAおよびBの両方」を意味する。より具体的には、「AまたはB」という条件は、次のいずれかによって満たされる。Aが真(もしくは有り)で、かつBが偽(もしくは無し)、Aが偽(もしくは無し)で、かつBが真(もしくは有り)、またはAおよびBが共に真(または有り)。排他的な「または」は、ここでは、例えば「AおよびBのいずれか」、「AおよびBの一方」などの用語を使用する。
【0017】
用語「約」は、量、サイズ、処方、パラメータ、並びに、他の量および特性値が、正確でなく、かつ正確である必要はないが、公差、換算係数、丸め、測定誤差などや、当業者に知られている他の因子を反映して、所望される値に対し、近似、および/または、それより大もしくは小であってもよいことを意味する。一般に、量、サイズ、処方、パラメータ、または他の量もしくは特性値は、そのように明記されているか否かに拘わらず、「約」または「およそ」である。
【0018】
また、ここで記載されている範囲は、他に記載されていなければ、その両端を含む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、1つの範囲、1つもしくはそれ以上の好ましい範囲、または好ましい上限値および下限値のリストとして与えられるとき、それは、範囲の上限値または好ましい上限値のいずれかと、範囲の下限値または好ましい下限値のいずれかの任意の組合わせで作られる全ての範囲を具体的に開示していると、そのような組合わせが別に記載されているか否かにかかわらず、理解されるべきである。本発明の範囲は、範囲を定義するときに挙げた特定の値に限定されるものではない。
【0019】
材料、方法または装置が、本明細書中に、「当業者に知られた」、「従来の」という用語、またはそれらと同義の語または句を付して記載されるとき、その用語は、本願の出願時点で従来型である材料、方法および装置が、その説明に包含されていることを意味する。また、現時点で従来型ではないが、類似の目的のためには適していると当該技術分野で認められていたであろう材料、方法および装置も包含される。
【0020】
他に特に記載がなければ、パーセント、部、比、および同様に、量は全て、重量で定義される。
【0021】
ここでは、用語「共重合体」は、2種以上のコモノマーを共重合させることによって得られる共重合単位を含むポリマーをいう。これに関連して、ここでは共重合体は、その構成コモノマーまたは構成コモノマーの量を参照して、例えば、「エチレンと9重量%のアクリル酸を含む共重合体」、またはそれと類似した表現で記載することができる。そうした記載は、共重合単位としてのコモノマーを示していないこと、従来の共重合体の命名法、例えばInternational Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)命名法を含んでいないこと、プロダクト・バイ・プロセス用語を使用していないこと、またはその他の理由で、正式でないと考えられ得る。しかしながら、ここでは、構成コモノマーまたは構成コモノマーの量を参照して記載される共重合体は、その共重合体が特定のコモノマーの共重合単位を(量が特定されているならば、その特定された量で)含有することを意味する。したがって、当然の帰結として、限定的場面においてそうであると明記されていない限り、共重合体は所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物ではない。
【0022】
用語「ジポリマー」は、2種のモノマーから実質的に構成されるポリマーをいい、用語「ターポリマー」は、3種のモノマーから実質的に構成されるポリマーをいう。
【0023】
用語「酸共重合体」は、α−オレフィンおよびα,β−エチレン型不飽和カルボン酸の共重合単位を含み、α,β−エチレン型不飽和カルボン酸エステルなどの他の適当なコモノマーが含まれていてもよいポリマーをいう。
【0024】
用語「アイオノマー」は、酸共重合体のカルボン酸基を部分的にまたは完全に中和することによって製造されるポリマーをいう。
【0025】
用語「(メタ)アクリル酸」およびその省略形「(M)AA」は、メタクリル酸、アクリル酸、またはメタクリル酸とアクリル酸の組み合わせをいう。同様に、用語「(メタ)アクリレート」および「アルキル(メタ)アクリレート」は、メタクリル酸、アクリル酸、またはメタクリル酸とアクリル酸の組み合わせのアルキルエステルをいう。
【0026】
ここでは、アイオノマー組成物から製造される成形品について説明する。そうした成形品は、従来のアイオノマー成形品に比べ、良好な光学特性を有している。すなわち、低ヘーズで、かつ高い透明度を有している。
【0027】
ここで提供される製品は、押出成形、ブロー成形、圧縮成形または射出成形など、いかなる成形法によっても製造することができるが、製品についての説明の大部分は、射出成形について行う。アイオノマー組成物は典型的には熱可塑性材料であるため、製品の製造方法として射出成形が最も一般に使用されると考えられる。
【0028】
射出成形品に使用されるアイオノマー組成物は、前駆体酸共重合体が炭素数2〜10のα−オレフィン共重合体単位と、酸共重合体の全重量に対して約19.5〜約30重量%、好ましくは約20〜約25重量%、またはより好ましくは約21〜約23重量%の、炭素数3〜8のα,β−エチレン型不飽和カルボン酸共重合体単位とを含むアイオノマーを含む。
【0029】
適切なα−オレフィンコモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなど、およびこれらの2種以上の混合物を挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。α−オレフィンは、好ましくはエチレンである。
【0030】
適切なα,β−エチレン型不飽和カルボン酸コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、およびこれらの2種以上の混合物を挙げられるが、これらに限定されるものではない。α,β−エチレン型不飽和カルボン酸は、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0031】
前駆体酸共重合体は、2〜10個の炭素、または好ましくは3〜8個の炭素を有する不飽和カルボン酸もしくはその誘導体などの、1種以上の他のコモノマー共重合単位をさらに含んでもよい。適切な酸誘導体としては、酸無水物、アミドおよびエステルが挙げられる。エステルが好ましい。不飽和カルボン酸エステルの好ましい具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピリメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルメタクリレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルフマレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい適切なコモノマーの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルアセテート、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前駆体酸共重合体は、米国特許第3,404,134号明細書、同第5,028,674号明細書、同第6,500,888号明細書、および同第6,518,365号明細書に記載されているようにして合成することができる。適切な前駆体酸共重合体のいくつかは、また、Nucrel(登録商標)の商標で、DE、WilmingtonのE.I.du Pont de Nemours & Co.(以下、「DuPont」)から入手可能である。
【0033】
適切な前駆体酸共重合体は、ASTM D−1238による190℃、2.16kgの測定で、400g/10分以下、350g/10分以下、300g/10分以下、250g/10分以下、150g/10分以下、100g/10分以下、60g/10分以下、またはより好ましくは45g/10分以下、またはより一層好ましくは30g/10分以下、さらにより一層好ましくは25g/10分以下のメルトフローレート(MFRまたはMI)を有する。理論に縛られずに言うならば、前駆体酸共重合体のMFRが低いため、それから誘導されるアイオノマーから製造される射出成形品は、十分な靭性を有し、したがって割れたり、ひびが入ったり、砕けたりしにくいのであろうと考えられる。
【0034】
アイオノマー組成物に使用されるアイオノマーを製造するには、前駆体酸共重合体中のカルボン酸基を中和してカルボン酸陰イオンを生成させる。中和前の前駆体酸共重合体中の全カルボン酸含有量に対して、約5%〜約90%、または好ましくは約10%〜約50%、またはより好ましくは約20%〜約50%、またはより一層好ましくは約20%〜約35%のカルボン酸基を中和することが好ましい。
【0035】
アイオノマーは、カルボキシレート基の対イオンとして、さらに1種以上の陽イオンを含む。好ましくは、陽イオンは金属イオンである。金属イオンは1価、2価、3価、多価、または異なる価数のイオンの組み合わせであってもよい。有用な1価の金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅など、およびこれらの2種以上の混合物のイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な2価の金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛など、およびこれらの2種以上の混合物のイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な3価の金属イオンとしては、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなど、およびこれらの2種以上の混合物のイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な多価の金属イオンとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄など、およびこれらの2種以上の混合物のイオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属イオンが多価の場合、米国特許第3,404,134号明細書に記載されているように、ステアレート基、オレエート基、サリチレート基、およびフェノレート基などの錯化剤が含まれることに注意すべきである。金属イオンは、好ましくは1価または2価である。より好ましくは、金属イオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される。より一層好ましくは、金属イオンは、ナトリウム、亜鉛、またはナトリウムおよび亜鉛である。ナトリウムイオンは特に好ましい。前駆体酸共重合体は、米国特許第3,404,134号明細書に記載の方法で中和することができる。
【0036】
適切なアイオノマーは、ASTM D−1238による190℃、2.16kgの測定で、約25g/10分以下、約20g/10分以下、またはより好ましくは約15g/10分以下、またはより一層好ましくは約10g/10分以下、またはさらにより一層好ましくは約5g/10分以下のMFRを有する。いくつかの好ましいアイオノマーは、10〜20g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。
【0037】
アイオノマー組成物は、さらに1種以上の適切な添加剤を含むことができる。適切な添加剤としては、可塑剤、加工助剤、流動促進剤、流動抑制剤(例えば、有機過酸化物)、滑剤、顔料、染料、光学的光沢剤、難燃剤、衝撃改質剤、核形成剤、ブロッキング防止剤(例えば、シリカ)、熱安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、UV吸収剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、補強剤(例えば、ガラス繊維)、充填剤など、および2種類上の添加剤の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの添加剤の適切な濃度、およびこれらの添加剤のポリマー組成物への適切な混合方法は、当業者であれば知っているであろう。例えば、Modern Plastics Encyclopedia,McGraw−Hill(New York,NY.1995)を参照されたい。
【0038】
3種の好ましい添加剤として、熱安定剤、UV吸収剤、およびヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。熱安定剤は当該技術分野で知られている。熱安定剤の好ましい一般的な種類としては、フェノール系酸化防止剤、アルキル化モノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ハイドロキノン、アルキル化ハイドロキノン、トコフェロール、水酸化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、O−、N−およびS−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化マロネート、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、アミン系酸化防止剤、アリールアミン、ジアリールアミン、ポリアリールアミン、アシルアミノフェノール、オキサミド、金属不活性化剤、ホスファイト、ホスホナイト、ベンジルホスホネート、アスコルビン酸(ビタミンC)、過酸化物を分解する化合物、ヒドロキシルアミン、ニトロン、チオシナジスト、ベンゾフラノン、インドリノンなど、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アイオノマー組成物は有効な任意の量の熱安定剤を含有することができる。熱安定剤の使用は任意であり、その使用が好ましくない場合もある。熱安定剤を使用する場合、アイオノマー組成物の全重量に対して、少なくとも約0.05重量%で、かつ約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、より一層好ましくは約1重量%以下の濃度でアイオノマー組成物中に含有させることができる。
【0039】
UV吸収剤もまた、当該技術分野で知られている。UV吸収剤の好ましい一般的な種類としては、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルトリアジン、置換および非置換の安息香酸エステルなど、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アイオノマー組成物は有効な任意の量のUV吸収剤を含有することができる。UV吸収剤の使用は任意であり、その使用が好ましくない場合もある。UV吸収剤を使用する場合、アイオノマー組成物の全重量に対して、少なくとも約0.05重量%で、かつ約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、より一層好ましくは約1重量%以下の濃度でアイオノマー組成物中に含有させることができる。
【0040】
ヒンダードアミン系光安定剤もまた、当該技術分野で知られている。一般に、ヒンダードアミン系光安定剤は、第2級または第3級の、アセチル化、Nヒドロカルビロキシ置換、ヒドロキシ置換Nヒドロカルビロキシ置換、または他のものによる置換環状アミンであり、これにはさらに、一般にアミン官能基の隣の炭素原子に脂肪族を置換させて誘導される立体障害が取り込まれている。アイオノマー組成物は有効な任意の量のヒンダードアミン系光安定剤を含有することができる。ヒンダードアミン系光安定剤の使用は任意であり、その使用が好ましくない場合もある。ヒンダードアミン系光安定剤を使用する場合、アイオノマー組成物の全重量に対して、少なくとも約0.05重量%で、かつ約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、より一層好ましくは約1重量%以下の濃度でアイオノマー組成物中に含有させることができる。
【0041】
射出成形品は少なくとも約3mmの最小厚さを有する。したがって、それらの最大厚さは3mmを超えることになる。射出成形品は実質的に均一な厚さを有することが好ましい。すなわち、最小厚さと最大厚さが好ましくは約3〜約100mm、より好ましくは約3〜約50mm、またはより一層好ましくは約5〜約35mmの範囲である。
【0042】
これに関連して、用語「厚さ」は、ここでは、最小の寸法を与える物体の長さをいう。例えば、物体が容器の場合、「厚さ」は、通常、壁に垂直な方向に測定した容器の壁の長さである。より具体的には、製品が、高さ10cmで、内外の同心の円周を有し、内径が9cmで、外径が10cmの円筒であるとすると、製品の厚さは0.5cmである。この円筒と、直径が10cm、厚さが1.0cmの円盤の底とを組み合わせて容器を作るならば、容器の最小厚さは0.5cmであり、最大厚さは1.0cm、あるいは、円筒と容器の底が接するコーナーでおそらく1.0cmより僅かに厚くなるであろう。
【0043】
上述したように、ここに記載する成形品を製造するには、適切な任意の成形方法を使用することができる。射出成形は1つの好ましい成形方法である。ここに記載する成形品は、好ましくは、任意の適切な射出成形法によって製造することができる。適切な射出成形法としては、コインジェクションモールド法およびオーバーモールド法が挙げられる。これらの方法は、ツーショット成形法、またはマルチショット成形法とも呼ばれる。
【0044】
射出成形の装置および方法については、Modern Plastics EncyclopediaおよびKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(第5版)、Wiley−Interscience(Hoboken,NJ,2006)に一般的な記述がある。この情報に加えて、いくつかの射出成形装置のメーカーでも、射出成形技術を説明している。これらの情報があれば、当業者は所与のアイオノマー組成物から特定のタイプの製品を製造するのに必要な、適切な成形条件を決定することができる。
【0045】
しかしながら、一般に、射出成形法は、
アイオノマー組成物を溶融する工程;
溶融アイオノマー組成物を型に流し込むことによって射出成形品を成形する工程;
射出成形品がその形を保持するようになるまで、型内で冷却する工程;
型から射出成形品を取り出す工程;および
射出成形品を室温((22+3)℃)、またはそれより低い温度に冷却する工程
を含むことができる。
【0046】
当業者が知っているように、射出成形品は、型から取り出す際、機械的な支持がない状態で重力場に置かれても、その形を十分に保持することができるだけの安定性を有していなければならない。さらに、ここに記載するような最小厚さが3mmの製品は、全体が均一な温度でないこともあり得る。むしろ、新たに離型した製品の表面温度は型の温度に略等しいであろうが、内部温度は格段に高いであろう。実際、物体の表面はアイオノマー組成物の固化温度未満の温度であり、製品の中心部は固化温度を超える温度であることがあり得る。
【0047】
さらに、雰囲気が特定の速度で冷却されるように製品の外部の温度は制御し得るが、製品が実際に冷却される速度は、内部でも表面でも、製品の内部を通り製品の表面から周囲(通常、空気または急冷浴)へ向かう熱移動速度により変化する。したがって、ここに記載される製品の冷却速度は均一であるとは限らない。速度は製品の表面と製品の中心部とで異なる場合があり、また、速度は連続的にまたは不連続的に変化し得る。例えば、ヒートシンクまたは雰囲気温度が略一定に保たれている場合に、それは略時間とともに指数関数的に低下し得る。製品の冷却を支配する熱移動の原理は、よく理解されており、Holman,J.、Heat Transfer、McGraw−Hill(New York、2009)などの参考文献に要約されている。
【0048】
しかしながら、より具体的には、アイオノマー組成物は、一般に、約120℃〜約250℃、または好ましくは約130℃〜約210℃の溶融温度で成形される(型に流し込まれる)。一般に、約69〜約110MPaの圧力で低速〜中速の充填速度が使用される。型の温度は約5℃〜約50℃の範囲である。射出成形品は、上述したように、自立できるようになるまで型の中で冷却される。型から取り出したときの射出成形品の表面温度は、型の温度からアイオノマー組成物の固化温度未満の温度の範囲である。製品全体としての、または平均の温度は約70℃〜約80℃である。製品内部の温度は型の温度からアイオノマー組成物の溶融温度を超える温度の範囲である。実際、新たに取り出された製品の内部温度は、型に流し込まれたアイオノマー組成物溶融物の温度に近い。最後に、射出成形品は、室温にまで、急冷し、もしくは急冷せずに、約2.0℃/分以下、1.5℃/分以下、1.0℃/分以下、0.7℃/分以下、0.5℃/分以下、0.3℃/分以下、0.2℃/分以下、0.1℃/分以下の速度で、または2.0℃/分〜0.1℃/分の間を連続的もしくは不連続的に変動する速度で、冷却される。これらの冷却速度は、雰囲気温度、またはプログラム可能なオーブンもしくは温度制御浴のようなヒートシンクの温度をいう。あるいは、それらは製品全体(平均)としての温度または中心部の温度をいう。成形品を型から氷水浴へ取り出す場合、製品の表面はそれよりはるかに速い速度、例えば、約50℃/分で冷却されるのは明らかである。
【0049】
驚いたことに、上述したアイオノマー組成物によれば、靭性および光学特性の向上した成形品が得られる。光学特性の向上は、製品の冷却速度を遅くしたときに明確に発現する。成形品は、例えば、成形プロセスの最終工程で、型から取り出される。その後、成形品は、例えば、冷水浴中で急冷される。水は比較的低温であり、かつ水の熱移動特性は比較的良好であるため、急冷製品は比較的短時間で室温にまで冷却されると考えられる。しかしながら、急冷は追加の装置を必要とし、より手の込んだ製造法である。
【0050】
あるいは、新たに取り出した製品を、冷却ステーション(製造施設にあるカートまたはテーブルなど)の上に置いて、室温(22±3℃)にまで冷却することもできる。実際には、数個の、新たに型から取り出された高温の製品が冷却ステーション上に置かれるため、冷却ステーション近傍の空気の温度は室温よりかなり高くなる。空気の温度が比較的高いことと空気の熱移動特性が比較的不良であるために、これらの製品は比較的長い時間をかけて室温にまで冷却されると考えられる。したがって、冷却速度が遅いことにより光学特性が改善されるのは、成形品の望ましい特性である。
【0051】
これに関連して、ポリエチレン、および相当量の共重合エチレンを含むポリマーは、溶融物からの冷却時に結晶化しやすく、また、冷却速度が遅いほど、より多く、かつより大きい結晶が生成されることが知られている。ポリエチレンおよびエチレン共重合体では、結晶があるサイズより大きくなると、たとえそれが裸眼では見えないほど小さくても、外観の濁りまたは透明度の低下をもたらす。理論に縛られずに言うならば、ここに記載するアイオノマー組成物は、結晶化度、結晶質量または結晶サイズの水準が低く、そのため、結晶化に有利な条件で冷却された場合でも、成形品は優れた光学特性を有するものと考えられる。
【0052】
特に、ここに記載するアイオノマー組成物は、ASTM D1003により、Haze−gard Plusヘーズメーター(BYK−Gardner、(Columbia、MD))を使用して、厚さ3.0mmの板状試験片について測定されるヘーズが、0.7〜13.5、1.0〜12.0、2.0〜10.0、3.0〜9.0、または4.0〜8.0の範囲である。前記板状試験片は、アイオノマー組成物を溶融し、この溶融したアイオノマー組成物を板状試験片に成形し、この溶融アイオノマー組成物を0.1℃/分以下の速度で(22±3)℃以下の温度にまで冷却することによって作製される。
【0053】
透明度の改善度は、例えば、Haze−gard Plusヘーズメーターを使用して定量的に測定することができる。あるいは、その改善度は、裸眼で観察し、半定量的に(例えば、透明度が既知の一連の標準と比較して)、定性的に、または相対的な順位をつけて報告することもできる。
【0054】
成形品は、任意の形態とすることができる。例えば、成形品は、多層構造(オーバーモールド品など)の形態とすることができる。この場合、多層構造の少なくとも1層は上記アイオノマー組成物から実質的に構成され、かつ少なくとも約3mmの最小厚さを有する。多層品のアイオノマー層は、好ましくは約3〜約100mm、より好ましくは約3〜約50mm、またはより一層好ましくは約5〜約35mmの厚さを有する。
【0055】
あるいはまた、ここに記載する射出成形品は、シート、容器(例えば、ビンもしくはボール)、蓋もしくは栓(例えば、容器用もしくは香水ビン用)、トレー、医療機器または器具(例えば、自動またはポータブル除細動器)、ハンドル、ノブ、プッシュボタン、装飾用品、パネル、コンソールボックス、または靴の部品(例えば、ヒールカウンター、トウパフもしくはソール)の形態とすることができる。
【0056】
製品は、さらに別の成形法に使用するための中間品とすることができる。例えば、射出成形品は、ブロー成形法の使用に適したプレフォームまたはパリソンとすることができる。ブロー成形法は、容器(例えば、ビンまたは化粧品容器)の形成にしばしば使用される。射出成形中間品は、多層構造の形態とすることができる。したがって、製造される容器もまた、多層壁構造を有することになろう。
【0057】
好ましい製品としては、シート、容器、蓋もしくは栓、トレー、医療機器もしくは器具、ハンドル、ノブ、プッシュボタン、装飾用品、パネル、コンソールボックス、または靴の部品が挙げられる。
【0058】
少なくとも1層がアイオノマー組成物から実質的に構成され、かつ少なくとも約3mmの最小厚さを有する多層構造形態の製品もまた好ましい。
【0059】
遅い冷却速度によってここに記載される製品の光学特性が向上するのは、容器および容器の蓋にとって特に望ましい。化粧品容器や、香水キャップなどの化粧品容器の蓋は特に好ましい。さらに、壁が、アイオノマー組成物から実質的に構成される層を少なくとも1層有する多層構造である容器および化粧品容器が好ましく、アイオノマー組成物から実質的に構成される少なくとも1層が、少なくとも約3mmの最小厚さを有するものがより一層好ましい。
【0060】
製品をオーバーモールド法で製造する場合、アイオノマー組成物は、基材として、オーバーモールド材として、またはその両者に使用することができる。オーバーモールド構造は、アイオノマー組成物によって得られる高い透明度と光沢が表面層に求められるときに有用である。例えば、オーバーモールド法を使用する場合、ここに記載するアイオノマー組成物はガラスまたは金属製の容器にオーバーモールドすることができる。あるいは、アイオノマー組成物は他の製品(家庭用品、医療機器もしくは器具、電子機器、自動車部品、建築構造物、スポーツ用品など)にオーバーモールドされ、柔らかな感触の、かつ/または保護作用を有する被覆を形成することができる。
【0061】
以下の実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明を実施するために今考えられる好ましい態様を示すこれらの実施例は、本発明を説明することを意図するものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0062】
材料および方法
メルトフローレート
メルトフローレート(MFRまたはMI)は、ASTM Standard No.D−1238に従い、190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0063】
射出成形
Model 150−6 HPM射出成形機(Taylor’s Industrial Services(Mount Gilead,OH)より入手可能)にアイオノマー樹脂を供給して、125×75×3mm(薄肉試験片)および125×45×20mm(厚肉試験片)の寸法の矩形状射出成形試験片を作製した。アイオノマーの溶融温度は130℃〜200℃の範囲であり、型を約10℃の温度に維持した。成形サイクルタイムは約90秒とした。成形片を型から取り出し、周囲条件下で室温(約22+3℃)にまで冷却して、薄肉および厚肉の両試験片を得た。厚肉試験片では、「空冷」冷却速度は、離型後の最初の1時間は約0.3℃/分と推定され、その後では、速度は約0.1℃/分になると推定された。
【0064】
ヘーズ値を測定後、「空冷」された薄肉試験片を、空気オーブン(温度125℃)中で90分間再加熱し、その後、0.1℃/分の速度で室温にまで冷却し、「徐冷」試験片を作製した。
【0065】
ヘーズの測定
HunterLab ColorQuest XEヘーズメーター(Hunter Associates Laboratory,Inc.、(Reston、VA))を使用し、ASTM D1003−07に従って、「空冷」および「徐冷」の薄肉試験片のヘーズ値を3mmの厚さ方向で測定した。
【0066】
透明度の測定
厚肉試験片の透明度を目視検査により決定した。試験片を1(最高の透明度)から3(最低の透明度)までの相対尺度で順位付けを行った。
【0067】
射出成形部品の応力亀裂試験
NETSTAL 1 Synergy 1750H−460成形機によりアイオノマーを射出成形して、長尺片(180mm×27mm×2mm)からなる部品を得た。ポリマーの溶融温度は130〜200℃の範囲であった。型の温度をおよそ20℃に維持し、サイクルタイムをおよそ40秒とした。試験片を室温でおよそ10℃/分の速度で冷却した。
【0068】
成形片を半分に(180°)折り、23℃の試料ホルダーに置いた。2通りのレベルの応力を加えた。折った試験片の両端の距離が45mmを維持しているときの応力レベルを「中」とした。折った試験片の両端が接触し、その上端から10mmの位置で5mmの開きを維持しているときの応力レベルを「高」とした。
【0069】
試験片の折った部分に、Joop! GmbH(Hamburg,Germany)から入手可能なJoop!TM Femme Eau de Toiletteを1回スプレーした。2〜3分後、亀裂の有無を目視により観察して試料を評価した。
【0070】
アイオノマー樹脂
・ ION Aは、15重量%のメタクリル酸共重合残基を含むエチレンとメタクリル酸の共重合体である。ナトリウムイオン源を使用して56%の水準にまでION Aを中和した。MFRは0.9g/10分であった。前駆体酸共重合体のMFRは60g/10分であった。
・ ION Bは、19重量%のメタクリル酸共重合残基を含むエチレンとメタクリル酸の共重合体である。ナトリウムイオン源を使用して37%の水準にまでION Bを中和した。MFRは2.6g/10分であった。前駆体酸共重合体のMFRは60g/10分であった。
・ ION Cは、21.7重量%のメタクリル酸共重合残基を含むエチレンとメタクリル酸の共重合体である。ナトリウムイオン源を使用して25%の水準にまでION Bを中和した。MFRは1.8g/10分であった。前駆体酸共重合体のMFRは23g/10分であった。
【0071】
比較例CE1〜2および実施例E1
上に挙げたアイオノマーから、上記成形方法により、薄肉および厚肉の射出成形試験片を作製した。これらの試験片のヘーズおよび透明度を上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0072】
これらの結果は、比較例CE1およびCE2の試験片と比較して、実施例E1の試験片は、特に冷却速度が遅いとき、透明度がより高くなり、かつヘーズがより低くなることを示している。さらに、酸性度の高い共重合体もまた、高応力条件下でより良好な耐亀裂性を示した。
【0073】
表1

*注:応力亀裂試験において、「ION C」で使用したアイオノマーは、酸濃度が21〜23%で、前駆体酸共重合体のメルトインデックスは245g/10分以下であった。陽イオンはナトリウムであり、中和度またはメルトインデックスは、上で定義したION Cとほぼ同じであった。
【0074】
本発明の好ましい実施形態を記載し、上で具体的に例示してきたが、本発明がそのような実施形態に限定されることを意図するものではない。次の請求項に記載する本発明の範囲と精神から逸脱することなく、様々な修正を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.0mm以上の最小厚さを有する、アイオノマー組成物を含む成形品であって;
前記アイオノマー組成物は、前駆体酸共重合体を部分的に中和することによって製造されるアイオノマーを含み、かつ
前記前駆体酸共重合体は、2〜10個の炭素を有するα−オレフィン共重合単位と、前駆体酸共重合体の全重量に対して約19.5〜約30重量%の、3〜8個の炭素を有するα,β−エチレン型不飽和カルボン酸共重合単位を含み;
前記前駆体酸共重合体は、ASTM D−1238による190℃、荷重2.16kgでの測定で、約350g/10分以下のメルトフローレート(MFR)を有し;
前記前駆体酸共重合体の全カルボン酸含有量の約5%〜約90%が中和され、
前記アイオノマーは、ASTM D−1238による190℃、荷重2.16kgでの測定で、約25g/10分以下のMFRを有し;かつ
前記アイオノマー組成物を溶融し、この溶融したアイオノマー組成物を板状試験片に成形し、この溶融アイオノマー組成物を0.1℃/分以下の速度で(22±3)℃以下の温度にまで冷却することによって作製される厚さ3.0mmの板状試験片について、ASTM−1003 ASTM D1003により測定されるアイオノマー組成物のヘーズが、0.7〜13.5である成形品。
【請求項2】
前記アイオノマーが、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、およびこれらの2種以上のイオンの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の金属陽イオンを含むか;または前記前駆体酸共重合体が、約20〜約25重量%の、3〜8個の炭素を有するα,β−エチレン型不飽和カルボン酸共重合単位を含むか;またはASTM D−1238により190℃、荷重2.16kgで測定される前記前駆体酸共重合体のMFRが約60g/10分以下で、かつ前記アイオノマーのMFRが約5g/10分以下であるか;または前記前駆体酸共重合体の全カルボン酸含有量の約20%〜約50%が中和される請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記前駆体酸共重合体の全カルボン酸含有量の約20%〜約35%が中和され、かつ前記金属イオンが実質的にナトリウム陽イオンからなる請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
実質的に前記アイオノマー組成物からなり、かつ最小厚さと最大厚さが約3〜約100mmの範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項5】
多層構造の形態を有し、前記多層構造の少なくとも1層が前記アイオノマー組成物から実質的に構成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
シート、容器、蓋もしくは栓、トレー、医療機器または器具、ハンドル、ノブ、プッシュボタン、装飾用品、パネル、コンソールボックス、または靴の部品である請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項7】
化粧品容器である請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項8】
前記容器が、前記アイオノマー組成物から実質的に構成される少なくとも1層を含む多層構造を有する請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
前記アイオノマー組成物から実質的に構成される1層以上の層が、少なくとも約3mmの最小厚さを有する請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
押出成形、ブロー成形、圧縮成形および射出成形からなる群より選択される方法によって製造される請求項1〜9のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項11】
コインジェクションモールド法およびオーバーモールド法からなる群より選択される方法によって製造される請求項1〜10のいずれか一項に記載の成形品。

【公表番号】特表2011−524918(P2011−524918A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511891(P2011−511891)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045814
【国際公開番号】WO2009/158140
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】