説明

アイススケート靴用刃研磨装置

【課題】熟練を必要としないで、ロック形状を狂わさずに刃部のエッジ部分に角を付ける研磨を行い得るアイススケート靴用刃研磨装置を提供する。
【解決手段】架台12に、上端面13a,14aがロック形状となっているテンプレート13,14と、刃部Bを上向きにしてかつテンプレート13,14に平行に並ばせて挟持しうる刃部挟持手段15とを備えている。刃面高さ位置合わせ手段16をテンプレート13,14上に載せて固定し、刃部挟持手段15により挟持される刃部Bの刃面B1を下から当接してテンプレート13,14の上端面13a,14aに対応する高さに位置合わせする。刃面高さ位置合わせ手段16を外し、研磨手段17をテンプレート13,14上にセットし、砥石10,11の高さ調整し必要な研磨代を設定する。研磨手段17をテンプレート13,14の上端面13a,14aに倣いつつ人力により移動し刃面B1を研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイススケート靴の滑走ブレードの刃部を研磨するアイススケート靴用刃研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイススケート靴の滑走ブレードの刃部は、アイススケートリンクの滑走トラックのコーナーに沿って円滑に曲がって滑走できるようにするために、アイススケート靴の刃部にロック形状が付けられている。ロック形状とは、刃部の長手方向の中央部が前後部よりもわずかに高くなっている概略円弧形状のことをいう。
【0003】
滑走においては、刃部を滑走方向に対して平面視において必要角度向きを変え、かつ刃部のエッジ部分(刃面の角)を氷の表面に突き立てて、後ろ足でリンクを蹴る動作を行う。特に、滑走トラックのコーナーを曲がるときには、上記動作を多用する。
【0004】
このため、滑走によってエッジ部分が磨耗する。エッジ部分が丸くなると、エッジ部分で氷を捉えられず推進力が減少してしまう。さらに、エッジ部分が丸くなると、酷いときにはコーナー滑走で転倒することが起きる。推進力の減少やコーナー滑走での転倒を防ぐために、滑走後は頻繁に刃部のエッジ部分に角を付ける補修研磨を行う必要がある。
【0005】
滑走後のアイススケート靴の刃部は、中央部で磨耗が大きく、かつエッジに丸みが付いているので、刃面を研磨する場合、刃面の全長に渡り均一に力をかけることが難しいことに加え、エッジに丸みが付いている中央部では砥石の接触面幅が小さいことから砥石の同じ押付力を加えても該中央部での面接触圧が高くなり、中央部に力を入れて研磨しているのと同じ状態になり、刃部の中央部の研磨量が前後部に研磨量よりも大きくなる傾向がある。
【0006】
このような研磨が行われると、刃部にロック形状として付けられていた円弧の曲率半径よりも大きな曲率半径の円弧となるように研磨してしまうことになり、このため、刃部のロック形状の曲率が狂い、ひどいときには逆に刃部の中央部が低くなってしまうことがあった。この場合は、当然カーブがうまく曲がれない、スピードが出ないなど競技に支障をきたすこととなり、そのため、専門の技術者が研磨を実施するのが普通であった。
【0007】
専門の技術者は、滑走後のアイススケート靴の刃部が、中央部で磨耗が大きく付いていてかつエッジに丸みが付いていることにより、エッジに丸みが付いている刃面の中央部では砥石の接触面幅が小さいから砥石の押付力を小さくし、刃面の前後部では砥石の押付力を大きくすることに熟練しているので、研磨後もほぼ所定の曲率半径のロック形状を復元でき、かつエッジ部分に角を付けられる。
【0008】
従来のアイススケート靴用刃研磨装置によれば、一足のアイススケート靴の刃部を上に向けかつ平行に並べて基台にセットし、作業者が装置本体を両手で保持し、一対の回転砥石を回転して両方の刃部の上面に押し当て、これに伴い、両靴の間において装置本体の被ガイド部と基台に設けられたガイド部とが係合し、被ガイド部とガイド部とのガイド作用の助けを借りて回転砥石を刃部に沿って移動することで刃研磨を行い刃部のエッジ部分に角を付けるものであった。
【0009】
例えば、特許文献1にはアイススケート靴用刃研磨装置が開示されている。この研磨装置は、駆動部取付板(フレーム)と、一対の電動機と、一対の研磨円板と、を有してなる。一対の研磨円板は、駆動部取付板の下面に形成された一対の切欠き内に収容され、下面に研磨部を備えている。一対の電動機は、駆動部取付板の上面に固定されていて、その回転軸が、駆動部取付板に設けられた軸孔に通されさらに研磨部の中心孔に通されてナットが螺合して締め付けられ、研磨円板を固定支持している。駆動部取付板の下面には回転軸間の中心線に沿って直線的な凹部又は凸部が形成されていて、凹部又は凸部が基台に設けられたガイド手段によりガイドされている。
【0010】
作業者は、両手でこの研磨装置を支持し、一対の電動機を相反する方向に駆動し、相反する方向に回転する一対の研磨円板を、基台に滑走ブレードの刃部を上に向けかつ平行に並べてセットした一足分のアイススケート靴の刃部に押圧させ、ガイド手段によりガイドされる方向に往動若しくは復動させることにより研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平5−70856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されたアイススケート靴用刃研磨装置は、研磨代を規制できる構成ではない。このため、この研磨装置は、研磨円板を一足のアイススケート靴の刃部に左右および前後で均一の押圧力が加わるようにしないと、刃部の中央部に付けられているロック形状を壊して研磨してしまう虞があった。しかし、研磨円板を一足のアイススケート靴の刃部に左右および前後で均一に当たるようにすることは熟練が必要であった。
【0013】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたものであり、熟練を必要としないで、ロック形状を狂わさずに刃部のエッジ部分に角を付ける研磨を行うことができるアイススケート靴用刃研磨装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明のアイススケート靴用刃研磨装置は、アイススケート靴の滑走ブレードの刃部の刃面に砥石を密着させてこの砥石を刃部の長手方向に摺動させて刃部のエッジ部分に角を付け、かつ刃部に従前と同じロック形状を保持するように研磨するアイススケート靴用刃研磨装置であって、架台と、架台に固定され上端面がロック形状となっているテンプレートと、架台に設けられ上記刃部を上向きにしてかつテンプレートに平行に並ばせて挟持しうる刃部挟持手段と、この刃部挟持手段により挟持される刃部の刃面をテンプレートの上端面に対応する高さに位置合わせする刃面高さ位置合わせ手段と、この刃面高さ位置合わせ手段により刃面の高さを位置合わせされかつ刃部挟持手段に挟持された刃部に対して、高さ調整自在に備えた砥石を、テンプレートの上端面に倣いつつ人力により移動して刃部に従前と変わらないロック形状を保持しつつエッジ部分に角が出るように刃面を研磨する研磨手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、上端面がロック形状となっているテンプレートと、刃部を上向きにしてかつテンプレートに平行に並ばせて挟持しうる刃部挟持手段とを架台に備えている。刃面高さ位置合わせ手段をテンプレート上に載せて固定し、刃部挟持手段により挟持される刃部の刃面を下から当接してテンプレートの上端面に対応する高さに位置合わせする。刃面高さ位置合わせ手段を外し、研磨手段をテンプレート上にセットし、砥石を高さ調整し必要な研磨代を設定する。研磨手段はテンプレートに接し転動する複数のローラで左右方向で安定的に保持されており、研磨手段をテンプレート研磨が必要なアイススケート靴のロック形状と同じテンプレートを用い、エッジをつけるに必要な研磨代を正確に砥石に付与し、テンプレートに沿って砥石を前後させ刃部の研磨を行う。
【0016】
上記構成によれば、テンプレートの上端面を倣って移動する研磨手段に不均一な人力が加わっても、テンプレートで姿勢が規制されると共に、研磨代が規制されるため、ロック形状が損なわれることがない。そのためアイススケート靴を履く選手が自分で、わずかなエッジの摩耗した丸みを修正するためにアイススケート靴の刃部の研磨をすることも可能で、アイススケート競技会場で、競技の前に、都度、研磨することができ、いつもベストな状態のアイススケート靴で競技に臨むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熟練を必要としないで、ロック形状を狂わすことなく刃部のエッジ部分に角を付ける研磨を行うことができるアイススケート靴用刃研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るアイススケート靴用刃研磨装置の斜視図である。
【図2】図1の刃研磨装置にアイススケート靴の刃部を固定した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の刃研磨装置にアイススケート靴の刃部を固定した状態を示す側面図である。
【図4】図1の刃研磨装置の刃面高さ位置合わせ手段を示す斜視図である。
【図5】図1の刃研磨装置でアイススケート靴の刃部を研磨する状態を示す斜視図である。
【図6】図1の刃研磨装置の研磨手段を示す斜視図である。
【図7】図1の刃研磨装置の研磨手段の砥石高さ調整機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〔構成〕
図1及び図3に示すように、アイススケート靴用刃研磨装置1は、架台12と、一対のテンプレート13,14と、逆さ吊りにする一足のアイススケート靴(図示しない)の滑走ブレードAの刃部Bを挟持する一対の刃部挟持手段15と、一対の刃面高さ位置合わせ手段16と、テンプレート13,14の上端面を移動レールとする研磨手段17と、を備えている。研磨手段17は、刃部Bの刃面B1を研摩する一対の砥石10,11と、一対の砥石高さ調整機構17aと、移動方向配列のローラ17c,17dを含んでなる。
【0020】
架台12は、この実施形態では一対の立面板よりなり、アイススケート靴のつま先側とかかと側とに並んで設けられる。
【0021】
図3に示すように、一対のテンプレート13,14は、長手方向を水平方向に合わせかつ長手方向に対する垂直な断面形状の長手方向を垂直方向に合わせて平行に離間され、両端を連結板21,21で連結されて、さらに両端部を一対の架台12の上部の矩形湾部12aに嵌合されボルト22で固定されている。
【0022】
一対のテンプレート13,14は、上端面13a,14aにアイススケート靴の刃のロック形状と同一形状、すなわち大きな曲率半径の上に向かって凸となる円弧面が形成されていて、この円弧面がレール面となっている。
【0023】
図3に示すように、一対の刃部挟持手段15は、一対のテンプレート13,14の両側に対称的に配設されかつテンプレート13,14の上端面13a,14aより所定寸法低い位置となるように設けられている。刃部挟持手段15は、アンビルバー15aと、挟圧バー15bと、締付具(ねじ)15cとを有してなる。アンビルバー15aは両端を一対の架台12に載置されボルトで固定されている。挟圧バー15bは、両端下面より一体に垂下するブラケット15d,15dを締付具15cで架台12の側面に締付固定されることで、アンビルバー15aと協働して刃部Bを挟持する。従って、刃部挟持手段15は、架台12より設けられ刃部Bを上向きにしてかつテンプレート13,14に平行に並ばせて挟持しうる。
【0024】
図2、図4に示すように、一対の刃面高さ位置合わせ手段16は、一対のテンプレート13,14の長手方向の両側位置に平面視において直角に掛け渡されるように配置されている。各一組の刃面高さ位置合わせ手段16は、一対のテンプレート13,14に平面視において直角に掛け渡され、刃部挟持手段15により挟持される刃部Bより外方へ伸びているバー部材16aと、バー部材16aをテンプレート13,14から浮き上がり不能に架台12又は刃部挟持手段15の架台12と一体に固定された部材若しくはテンプレート13,14に対して解除自在に連結する連結ボルト16bと、を有してなる。
【0025】
一対の刃面高さ位置合わせ手段16は、研摩に先立ち、バー部材16aをテンプレート13,14から浮き上がり不能に取り付けられ(図2、3参照)、刃部Bの刃面B1をバー部材16aの下面で刃部Bを当接停止して刃面B1高さをテンプレート13,14の上端面13a,14aに対応する高さに位置合わせすると、役目を終えて取り外される(図5参照)。
【0026】
図6、図7に示すように、研磨手段17は、一対の砥石10,11と、一方の砥石10又は11を支持して高さを調整する一対の砥石高さ調整機構17aと、テンプレート13,14の上端面13a,14aであるレール面を転動し得るローラ17c,17dと、一対のテンプレート13,14に挟まれて係合案内されかつローラ17c,17dを支持するガイド体17bと、砥石10,11とガイド体17bと上記ローラ17c,17dとを支持するホルダーフレーム17eと、からなる。
【0027】
ローラ17c,17dは、テンプレート13,14の上端面13a,14aの離れた二点を転動するように複数備えられている。
【0028】
砥石高さ調整機構17aは、調整ねじ171と、ロックボルト172と、砥石支持ボルト173と、ロックナット174とを有してなる。調整ねじ171は、中心を貫通する軸孔171aと、外周面に形成された雄ねじ部171bと、上端部に形成されたレンチ係合部171cとを有してなる。
【0029】
調整ねじ171は、雄ねじ部171bがホルダーフレーム17eに上下に貫通して設けられた縦ねじ孔(符号なし)に螺合され、調整ねじ171の螺合状態が、ホルダーフレーム17eの側面よりに縦ねじ孔に貫通して設けた横ねじ孔(符号なし)に螺合されたロックボルト172でロックされる。
【0030】
砥石支持ボルト173は、頭部173aと首部ねじ部173bと、軸部173cと、先端ねじ部173dとを有してなる。砥石支持ボルト173は、ロックナット174のねじ孔に先端ねじ部173dと軸部173cを通し、ロックナット174のねじ孔を首部ねじ部173bに螺合してから、先端ねじ部173dと軸部173cをホルダーフレーム17eの孔に通し、先端ねじ部173dを砥石10又は11の上面中心に螺設したねじ孔に堅結されている。
【0031】
研磨手段17は、刃面高さ位置合わせ手段16の調整ねじ171を調整することにより砥石10又は11の研磨面(下面)を刃部挟持手段15により挟持された刃部Bの刃面B1の高さに位置合わせすることができ、かつローラ17c,17dが各テンプレート13又は14の上端面13a,14aを転動するように人力により移動させると、高さ調整した砥石10,11を、テンプレート13,14の上端面13a,14aのロック形状に倣いつつ移動させることができ、もって、移動経路が規制されかつ研磨代が規制された砥石10,11で刃面B1を必要最小限度に研磨して刃部Bに従前と変わらないロック形状を保持しつつエッジ部分に角を出す研磨が行える。
【0032】
続いて、上記構成でなるアイススケート靴用刃研磨装置1の取り扱い方法について説明する。
〔刃部の固定手順〕
(1)刃面高さ位置合わせ手段16の取付け
図2、図3、図4に示すように、バー部材16aの両端に設けられている連結ボルト16bをアンビルバー15aに設けたねじ孔に螺合して、バー部材16aをテンプレート13,14の上端面13a,14aに載置させた状態に固定する。
(2)一足の刃部B,Bをアンビルバー15aと挟圧バー15bとの間に下方から挟入し、さらに押上げて刃部B,Bの刃面B1,B1をバー部材16aの下面に当接させる。これによって、刃部B,Bの刃面B1,B1をテンプレート13,14の上端面13a,14aと同じ高さでセットする。
(3)締付具15cを締め付けて、挟圧バー15bをアンビルバー15aの方向に移動し、アンビルバー15aと挟圧バー15bとで共同して刃部Bを挟持する。
【0033】
従って、刃部Bを上向きにしてかつテンプレート13,14に平行に並ばせて、刃部B,Bの刃面B1,B1をテンプレート13,14の上端面13a,14aと同じ高さでセットする。
〔研磨手順〕
(1)研磨代の設定および調整
図5、図6、図7に示すように、研磨代の設定および調整は、砥石高さ調整機構17aの調整ねじ171を回して、砥石10,11の高さを調整する。テンプレート13,14に対して同じ高さにセットされたアイススケート靴の刃部B,Bに対して砥石10,11が当たるように調整ねじ171を回す。この段階では、研磨代がゼロであるので必要な量の研磨代となるように、さらに調整ねじ171を回した後、ロックボルト172を締め付ける。
(2)刃面高さ位置合わせ手段16の取り外し
連結ボルト16bによるバー部材16aとアンビルバー15aとの連結を解いて刃面高さ位置合わせ手段16を取り外す。
(3)研磨
研磨手段17のホルダーフレーム17eを把持し往復動させる。すると、各テンプレート13又は14上をローラ17c,17dが前後して転動するので、砥石10,11はテンプレート13,14に倣って移動されることになる。これにより、アイススケート靴用刃研磨装置1で、アイススケート靴の滑走ブレードAの刃部Bの刃面B1に砥石10,11を密着させて砥石10,11を刃部Bの長手方向に摺動させて刃部Bのエッジ部分に角を付け、かつ刃部Bに従前と同じロック形状を保持するように研磨することができる。
【0034】
上記構成において、一対のテンプレート13,14を所定間隔でかつ平行に離間した状態に備えている理由は、砥石10,11を一足のアイススケート靴の刃部B,Bに密着させるとき、刃部B,Bの長尺方向に直交する水平方向に沿った水平面について砥石の研摩面を安定させる必要からである。また、各テンプレート13,14上を前後に位置して転動する2個のローラ17c,17dを備えているのは、研摩において、刃部Bの長さ方向に沿った水平面を安定させる必要からである。
【0035】
このため、左右前後配置の4個のローラにより、砥石代の左右方向の安定性及び前後方向の安定性が保たれ、不均一な外力が加わっても砥石10,11は安定して刃部Bを研磨することができる。ホルダーフレーム17eは取り付けられた2個のローラ17c,17dがテンプレート13,14で規制された以上には下がることがないので、力が不均一にかかったとしても安定した姿勢が確保され、砥石10,11が必要以上にアイススケート靴の刃部B,Bを研磨することはない。
【0036】
上記構成によれば、刃部Bとテンプレートを近傍に配置し高さを一致させることでテンプレート13,14のレール面のロック形状を倣いガイドとして砥石10,11をレール面のロック形状に正確に一致させて往復動させることができるので、刃部Bにレール面のロック形状を転写する研摩を行うことができ、常に狂いの無い最良のロック形状に研磨を行うことができかつエッジ部分にシャープな角を蘇生する研磨を行うことができる。このため、アイススケート靴の刃部Bにダメージを与えることがなく、熟練を必要としないで、ロック形状を狂わさずに刃部Bのエッジ部分に角を付ける研磨を行うことができる。
【0037】
上記構成によれば、テンプレート13,14に合わせて一足分のアイススケート靴の刃部B,Bをセットした後、刃部Bの研磨代を設定できる。このため、刃部Bを必要以上に研磨することを回避でき、しかもロック形状の曲率半径を損なわないで、刃部Bのエッジに直角な角を付けることを短時間で行えるから、必要であれば競技の度ごとに研磨してもよく、エッジ部分にシャープな角を蘇生したいつもベストな状態で滑走することができる。さらに、必要以上に研磨することを回避できるから、刃部Bの高さが大きく変わることがなく、アイススケート靴を長く使用することができる。
【0038】
さらに、上記構成によれば、刃部Bを研磨する場合、一足分のアイススケート靴が干渉しないように刃部B,Bを離れさせてセットできるようして、刃部B,B間に十分大きなスペースを空け、このスペースを利用してテンプレート13,14を設けたため、既存の市販されている研磨機の外形寸法にほぼ同じ形態の中に納めながら機能を高めることが可能である。上記構成によれば、円形の砥石の研磨面が磨り減るのを防ぐために砥石の研摩代を調整する際に、円形の研磨面の使用箇所を少しずつずらして使うことが好ましい。
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0039】
本発明は、選手またはマネジャーが購入後のアイススケート靴の維持管理に使用するアイススケート靴用刃研磨装置として適するが、これに限定されない。
【0040】
上記実施形態では、砥石が回転しない構成を示したが、砥石が回転しない構成では、砥石は非円形であって良い。また、大きくロック形状が狂ってしまったアイススケート靴の刃部を正しいロック形状に修正し、或いは、選手が自分の走りに合わせてロック形状の曲率を変えたい場合などにもそのロック形状を有するテンプレートに交換することで利用できる。
【0041】
また、上記構成によれば、円弧の形状が大きく変わるテンプレートを使用することで自分の今のロック形状と異なるアイススケート靴として、オリジナルのアイススケート靴の製作も可能となる。
【0042】
本発明は、砥石が回転しない構成に限定されない。砥石部分にモータで回転する砥石を付けることで、アイススケート靴メーカーがアイススケート靴の刃部を製造するとき、ロック形状やエッジの付いていない刃部から新規に刃部を製造する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…アイススケート靴用刃研磨装置、
A…アイススケート靴の滑走ブレード、
B…刃部、
B1…刃面、
10,11…砥石、
12…架台、
13a,14a…上端面、
13,14…テンプレート、
15…刃部挟持手段、
15a…アンビルバー、
15b…挟圧バー、
15c…締付具、
16…刃面高さ位置合わせ手段、
16a…バー部材、
16b…連結ボルト(連結手段)、
17…研磨手段、
17a…ガイド体、
17c,17d…ローラ、
17d…ホルダーフレーム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイススケート靴の滑走ブレードの刃部の刃面に砥石を密着させて該砥石を刃部の長手方向に摺動させて刃部のエッジ部分に角を付け、かつ刃部に従前と同じロック形状を保持するように研磨するアイススケート靴用刃研磨装置であって、
架台と、
上記架台に固定され上端面がロック形状となっているテンプレートと、
上記架台に設けられ上記刃部を上向きにしてかつ上記テンプレートに平行に並ばせて挟持しうる刃部挟持手段と、
上記刃部挟持手段により挟持される上記刃部の刃面を上記テンプレートの上端面に対応する高さに位置合わせする刃面高さ位置合わせ手段と、
上記刃面高さ位置合わせ手段により刃面の高さを位置合わせされかつ上記刃部挟持手段により挟持された上記刃部に対して、高さ調整自在に備えた砥石を、上記テンプレートの上端面に倣いつつ移動して上記刃部に従前と変わらないロック形状を保持しつつエッジ部分に角が出るように上記刃面を研磨する研磨手段と、
を備えたことを特徴とするアイススケート靴用刃研磨装置。
【請求項2】
前記研磨手段が、
前記砥石と、この砥石を支持して高さを調整する砥石高さ調整機構と、前記テンプレートに係合案内されるガイド体と、上記テンプレートの上端面であるレール面を転動し得るローラと、上記砥石と上記砥石高さ調整機構と上記ガイド体と上記ローラとを支持するホルダーフレームと、からなることを特徴とする、請求項1記載のアイススケート靴用刃研磨装置。
【請求項3】
前記ローラが、
前記テンプレートの上端面の離れた二点を転動するように複数備えられていることを特徴とする、請求項1又は2記載のアイススケート靴用刃研磨装置。
【請求項4】
前記テンプレートが、離間されたかつ平行な位置となるように2つ備えられていると共に、前記刃部挟持手段が、2つのテンプレートの両側に位置して2つ備えられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のアイススケート靴用刃研磨装置。
【請求項5】
前記刃面高さ位置合わせ手段が、前記2つのテンプレートの長手方向の両側位置に平面視において直角に掛け渡されるように二組有し、各一組が、前記2つのテンプレートに平面視において直角に掛け渡され、前記刃部挟持手段により挟持される前記ハブより外方へ伸びているバー部材と、上記バー部材を上記テンプレートから浮き上がり不能に前記架台又は前記刃部挟持手段の前記架台と一体に固定された部材若しくは前記テンプレートに対して解除自在に連結する連結手段と、を有してなり、
バー部材の下面で前記刃部を当接停止して前記刃面高さを位置合わせすることを特徴とする、請求項4記載のアイススケート靴用刃研磨装置。
【請求項6】
前記刃部挟持手段が、
前記架台側に固定されたアンビルバーと、
上記アンビルバーに対向して接近離隔自在に前記架台側に支持された挟圧バーと、
前記挟圧バーを前記架台側へ締め付ける締付具と、
からなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のアイススケート靴用刃研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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