説明

アイソレーション調整装置、アイソレーション調整方法及びコンピュータプログラム

【課題】FDD方式の直接中継型レピータ装置において、サービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、どのくらいのケーブル長の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断することを図る。
【解決手段】データベース5は、ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータと、直接中継型レピータ装置10の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、サービスアンテナ12とドナーアンテナ11間のアイソレーション量の受信帯域の測定値及び送信帯域の測定値とを格納し、判定部6は、位相補正ケーブルの移相量に対応するアイソレーション量の測定値に基づいて、直接中継型レピータ装置10の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレーション調整装置、アイソレーション調整方法及びコンピュータプログラム
【背景技術】
【0002】
従来、直接中継型レピータ装置では、回り込み発振を避けるために、サービスエリア構築向けアンテナ(以下、サービスアンテナという)と親局向けアンテナ(以下、ドナーアンテナという)間のアイソレーションを確保することが行われている。アンテナ間のアイソレーションを確保する技術としては、サービスアンテナとドナーアンテナ間の離隔を十分にとること、アンテナ自体のフロントバック比やサイドローブ比を改善すること、サービスアンテナとドナーアンテナ間の偏波を直交偏波の関係(垂直偏波と水平偏波、右旋円偏波と左旋円偏波など)とすること、などが知られている。サービスアンテナとドナーアンテナが特に背面合わせ(サービスアンテナとドナーアンテナの離角が180度)のときに、サービスアンテナとドナーアンテナ間の偏波の関係を直交偏波にすることにより、アイソレーションを特に改善することができる。
【0003】
しかしながら、サービスアンテナとドナーアンテナ間の離角が小さいとアンテナ間の直接結合の成分が、単純なバックローブ間の結合だけでなく、メインビームによる結合も含まれるので、サービスアンテナとドナーアンテナ間の偏波の直交性が崩れてしまい、アイソレーションが劣化する可能性がある。また、サービスアンテナの周辺に反射物が存在すると、サービスアンテナから放射された電波は反射波となってドナーアンテナに入力される。このとき、送信波の偏波が反射波となっても保存される場合には、ドナーアンテナの偏波がサービスアンテナの偏波と直交関係であれば、ドナーアンテナは反射波を受けにくいためアイソレーションが改善できる。しかし、反射波は一般的に散乱により交差偏波を生じるため、送信波の偏波が完全には保存されず、伝送路において直交性が崩れてしまいアイソレーションが劣化する可能性がある。この崩れた直交性を補正することで、アイソレーションを改善する技術が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の従来技術では、可変位相器を用いて最良の移相量を測定し、可変位相器を用いて最良の移相量だけ位相を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−081307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の従来技術では、実際の運用時にも可変位相器を用いて位相を調整しているので、直接中継型レピータ装置には、常時、高価な可変位相器を備えておく必要であり、コストアップの一要因になっている。このため、運用時には、可変位相器の代わりに、安価な位相補正ケーブルを用いて位相を調整したいという要求がある。
【0006】
ここで問題となるのが、送信と受信とに別々の周波数を割り当てる周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式の場合である。アイソレーション特性は周波数特性を持つので、FDD方式の場合には送信帯域と受信帯域とでアイソレーションの周波数特性が異なる。一方、位相補正ケーブルは、ケーブル長によって移相量が決まる。従って、同じ位相補正ケーブルでは、送信と受信の両方の最良の移相量を満たすことは難しい。このため、どのくらいのケーブル長の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断することが課題である。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、FDD方式の直接中継型レピータ装置において、サービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、どのくらいのケーブル長の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断することができる、アイソレーション調整装置、アイソレーション調整方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアイソレーション調整装置は、FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行うアイソレーション調整装置であり、ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納する第1のデータベースと、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納する第2のデータベースと、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定する判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアイソレーション調整装置において、前記判定部は、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値のうち小さい方を当該位相補正ケーブルのアイソレーション量とし、アイソレーション量が最大である位相補正ケーブルを選択する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るアイソレーション調整装置において、前記判定部は、前記受信帯域のアイソレーション量の測定値と前記送信帯域のアイソレーション量の測定値とを比較する際に、受信帯域と送信帯域の別に重み付けを行う、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るアイソレーション調整装置においては、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間の信号の位相を変化させる可変位相器と、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量を測定するネットワークアナライザと、前記可変位相器に移相量を指示し、この指示した移相量に対応するアイソレーション量の測定値を前記ネットワークアナライザから受け取り、移相量とアイソレーション量の測定値との組のデータを前記第2のデータベースに記録する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るアイソレーション調整方法は、FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行う判定部と、ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納する第1のデータベースと、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納する第2のデータベースと、を備え、前記判定部が、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るコンピュータプログラム、FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行うアイソレーション調整処理を行うためのコンピュータプログラムであって、第1のデータベースは、ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納し、第2のデータベースは、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納し、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定するステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述のアイソレーション調整装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、FDD方式の直接中継型レピータ装置において、サービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、どのくらいのケーブル長の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るアイソレーション調整装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る運用時の直接中継型レピータ装置10の構成例である。
【図3】本発明の一実施形態に係るアイソレーション調整処理のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るアイソレーション調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアイソレーション調整装置1の構成を示すブロック図である。アイソレーション調整装置1は、FDD方式の直接中継型レピータ装置10において、ドナーアンテナ11とサービスアンテナ12間のアイソレーションを改善するために、どのくらいの移相量(ケーブル長)の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断する。図2に、本実施形態に係る運用時の直接中継型レピータ装置10の構成例を示す。図2に示されるように、運用時には、直接中継型レピータ装置10において、位相補正ケーブルCを使用して送信と受信の両方の位相を調整する。無線機20は、FDD方式の直接中継機能を有する。
【0017】
図1において、アイソレーション調整装置1は、可変位相器2と制御部3とネットワークアナライザ4とデータベース5と判定部6とを備える。可変位相器2は、サービスアンテナ12の水平偏波ポートHに接続される端子Pと2分配器14の間に、試験用ケーブルA及びBを用いて接続される。可変位相器2は、制御部3から指示された移相量だけ位相をずらすことにより、サービスアンテナ12を介した送信信号及び受信信号の位相を補正することができる。
【0018】
ネットワークアナライザ4は、ドナーアンテナ11が接続される2分配器13とサービスアンテナ12が接続される2分配器14とに接続される。ネットワークアナライザ4は、ドナーアンテナ11とサービスアンテナ12間のアイソレーション量を測定する。ネットワークアナライザ4は、アイソレーション量の測定値を制御部3に出力する。
【0019】
制御部3は、可変位相器2に対して移相量を指示し、この指示した移相量に対応するアイソレーション量の測定値をネットワークアナライザ4から受け取る。制御部3は、移相量とアイソレーション量の測定値との組のデータをデータベース5に記録する。
【0020】
データベース5は、制御部3から受け取った、移相量とアイソレーション量の測定値との組のデータを格納する。又、データベース5は、直接中継型レピータ装置10の運用時に使用可能な位相補正ケーブルのケーブル長ごとに、移相量のデータを有する。例えば、位相補正ケーブルは、移相量が0度から10度刻みで350度まで、合計36種類が利用可能である。
【0021】
判定部6は、データベース5内のデータを用いて、運用時に直接中継型レピータ装置10で使用する位相補正ケーブルCを判定する。この判定結果である位相補正ケーブルCは、図2に示されるように、直接中継型レピータ装置10において、サービスアンテナ12の水平偏波ポートHに接続される端子Pと2分配器14の間を接続するケーブルとして使用される。これにより、位相補正ケーブルCを用いて、サービスアンテナ12を介した送信信号及び受信信号の位相を補正することができる。
【0022】
なお、直接中継型レピータ装置10において、2分配器13及び14は、3dB方向性結合器であってもよい。又、垂直水平偏波(VH偏波)は、±45度偏波であってもよく、又は、右旋/左旋偏波であってもよい。
【0023】
次に、図3、図4を参照して、図1に示すアイソレーション調整装置1の動作を説明する。図3、図4は、本実施形態に係るアイソレーション調整処理のフローチャートである。
【0024】
まず変数を説明する。
P1[deg]:制御部3が可変位相器2に指示する受信帯域の移相量。
ΔP1[deg]:受信帯域の移相量P1の変更量の単位(ステップ量)。
P2[deg]:制御部3が可変位相器2に指示する送信帯域の移相量。
ΔP2[deg]:送信帯域の移相量P2の変更量の単位(ステップ量)。
P3[deg]:位相補正ケーブルの移相量。
ΔP3[deg]:移相量P3の変更量の単位(ステップ量)。
ISO1:受信帯域におけるアイソレーション量の測定値。
ISO2:送信帯域におけるアイソレーション量の測定値。
ISO3:移相量P3に対応するアイソレーション量。
【0025】
[測定段階]
図3を参照して、アイソレーション量を測定する段階の処理を説明する。
【0026】
ステップS1:制御部3は、可変位相器2、ネットワークアナライザ4、及び、データベース5内の移相量とアイソレーション量の測定値との組のデータの記憶領域を初期化する。又、制御部3は、可変位相器2に対して移相量P1と移相量P2を共に0に設定する。この初期化の段階では、可変位相器2は受信帯域の位相も、送信帯域の位相も、ずらさない(P1=P2=0度)。
【0027】
ステップS2:制御部3は、ネットワークアナライザ4に対して、アイソレーション量の測定を指示する。これにより、ネットワークアナライザ4は、受信帯域のアイソレーション量と、送信帯域のアイソレーション量とを測定する。ネットワークアナライザ4は、測定結果であるアイソレーション量の測定値ISO1及びISO2を制御部3に出力する。制御部3は、受信帯域に係る移相量P1及びアイソレーション量の測定値ISO1と、送信帯域に係る移相量P2とアイソレーション量の測定値ISO2との組のデータをデータベース5に記録する。
【0028】
ステップS3:制御部3は、受信帯域の移相量P1が360度以上であるかを判断する。この結果、受信帯域の移相量P1が360度以上である場合にはステップS5に進む。一方、受信帯域の移相量P1が360度未満である場合にはステップS4に進む。
【0029】
ステップS4:制御部3は、受信帯域の移相量P1にステップ量ΔP1を加算して、可変位相器2に設定する。これにより、可変位相器2は、受信帯域の位相を移相量P1だけずらし、且つ、送信帯域の位相を移相量P2だけずらす。この後、ステップS2に戻る。
【0030】
ステップS5:制御部3は、送信帯域の移相量P2が360度以上であるかを判断する。この結果、送信帯域の移相量P2が360度以上である場合には図4のステップS11に進む。一方、送信帯域の移相量P2が360度未満である場合にはステップS6に進む。
【0031】
ステップS6:制御部3は、送信帯域の移相量P2にステップ量ΔP2を加算して、可変位相器2に設定する。これにより、可変位相器2は、受信帯域の位相を移相量P1だけずらし、且つ、送信帯域の位相を移相量P2だけずらす。この後、ステップS2に戻る。
【0032】
上記図3のステップS5で送信帯域の移相量P2が360度以上である場合には、アイソレーション量を測定する段階の処理が終了する。この結果、データベース5には、受信帯域の移相量P1が0度からステップ量ΔP1刻みで360度までの値と、送信帯域の移相量P2が0度からステップ量ΔP2刻みで360度までの値との組合せ毎に、移相量P1に対応するアイソレーション量の測定値ISO1と移相量P2に対応するアイソレーション量の測定値ISO2とが格納される。
【0033】
[判定段階]
図4を参照して、位相補正ケーブルを判定する段階の処理を説明する。
【0034】
ステップS11:判定部6は、データベース5から、受信帯域の移相量P1が0度かつ送信帯域の移相量P2が0度である組の移相量P1に対応するアイソレーション量の測定値ISO1と移相量P2に対応するアイソレーション量の測定値ISO2とを読み出す。そして、判定部6は、その読み出した「P1=0、ISO1」を受信帯域の初期データとし、「P2=0、ISO2」を送信帯域の初期データとする。
【0035】
ステップS12:判定部6は、データベース5から、各位相補正ケーブルについて、移相量P3のデータを読み出す。そして、判定部6は、その読み出した中で最小の移相量P3を、移相量P3の初期値とする。
【0036】
ステップS13:判定部6は、移相量P3が360度以上であるかを判断する。この結果、移相量P3が360度以上である場合にはステップS18に進む。一方、移相量P3が360度未満である場合にはステップS14に進む。
【0037】
ステップS14:判定部6は、データベース5から、移相量P3に対応する「受信帯域におけるアイソレーション量の測定値ISO1と、送信帯域におけるアイソレーション量の測定値ISO2の組」を読み出す。具体的には、データベース5において、「P1=P3、P2=P3」に関連付けられている「アイソレーション量の測定値ISO1、アイソレーション量の測定値ISO2」を検索して読み出す。
【0038】
ステップS15:判定部6は、ステップS14で取得した「アイソレーション量の測定値ISO1」と「アイソレーション量の測定値ISO2」のうち、小さい方のアイソレーション量の測定値を、移相量P3に対応するアイソレーション量ISO3とする。
【0039】
ステップS16:判定部6は、受信帯域の初期データ「P1=0、ISO1」と送信帯域の初期データ「P2=0、ISO2」においてアイソレーション量の測定値ISO1及びISO2のうち小さい方のアイソレーション量の測定値と、ステップS15で求めたアイソレーション量ISO3との差分を計算する。判定部6は、この差分を、移相量P3に対応するアイソレーション量の改善量ΔISOとする。そして、判定部6は、「移相量P3」と「アイソレーション量ISO3」と「アイソレーション量の改善量ΔISO」とを関連付けてデータベース5に格納する。
【0040】
ステップS17:判定部6は、移相量P3にステップ量ΔP3を加算する。この後、ステップS13に戻る。移相量P3のステップ量ΔP3は、位相補正ケーブル間の移相量P3の変更量の単位に対応する。例えば、位相補正ケーブルは、移相量P3が0度から10度(ΔP3=10度)刻みで350度まで、合計36種類が利用可能である。
【0041】
ステップS18:ステップS13で移相量P3が360度以上である場合、全ての位相補正ケーブルについて、「移相量P3」と「アイソレーション量ISO3」と「アイソレーション量の改善量ΔISO」とが関連付けてデータベース5に格納されている。判定部6は、データベース5から、アイソレーション量ISO3が最大である「移相量P3」及び「アイソレーション量の改善量ΔISO」を読み出す。そして、判定部6は、その読み出した「移相量P3」及び「アイソレーション量の改善量ΔISO」を出力する。この出力された「移相量P3」に対応するケーブル長の位相補正ケーブルが、図2の位相補正ケーブルCとして使用される。
【0042】
上述したように本実施形態によれば、FDD方式の直接中継型レピータ装置において、サービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、どのくらいのケーブル長の位相補正ケーブルを使用すればよいのかを判断することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、送信帯域と受信帯域の各優先度に応じて、送信帯域と受信帯域の別にアイソレーション量の目標値を設定するようにしてもよい。又、受信帯域のアイソレーション量の測定値ISO1と送信帯域のアイソレーション量の測定値ISO2とを比較する際に、受信帯域と送信帯域の別に重み付けを行って、受信帯域のアイソレーション改善量と送信帯域のアイソレーション改善量とで差をつけるようにしてもよい。これにより、送信帯域及び受信帯域の各々の運用条件に合わせたアイソレーションの改善が可能となる。
【0044】
また、図3、図4に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、アイソレーション調整処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0045】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…アイソレーション調整装置、2…可変位相器、3…制御部、4…ネットワークアナライザ、5…データベース、6…判定部、10…FDD方式の直接中継型レピータ装置、11…ドナーアンテナ、12…サービスアンテナ、13,14…2分配器、C…位相補正ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行うアイソレーション調整装置であり、
ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納する第1のデータベースと、
前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納する第2のデータベースと、
前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定する判定部と、
を備えたことを特徴とするアイソレーション調整装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値のうち小さい方を当該位相補正ケーブルのアイソレーション量とし、アイソレーション量が最大である位相補正ケーブルを選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアイソレーション調整装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記受信帯域のアイソレーション量の測定値と前記送信帯域のアイソレーション量の測定値とを比較する際に、受信帯域と送信帯域の別に重み付けを行う、
ことを特徴とする請求項2に記載のアイソレーション調整装置。
【請求項4】
前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間の信号の位相を変化させる可変位相器と、
前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量を測定するネットワークアナライザと、
前記可変位相器に移相量を指示し、この指示した移相量に対応するアイソレーション量の測定値を前記ネットワークアナライザから受け取り、移相量とアイソレーション量の測定値との組のデータを前記第2のデータベースに記録する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアイソレーション調整装置。
【請求項5】
FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行う判定部と、
ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納する第1のデータベースと、
前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納する第2のデータベースと、を備え、
前記判定部が、前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定する、
ことを特徴とするアイソレーション調整方法。
【請求項6】
FDD方式の直接中継型レピータ装置においてサービスアンテナとドナーアンテナ間のアイソレーションを改善するために同じ位相補正ケーブルで送信と受信の両方の位相を調整する際に、位相補正ケーブルの判定を行うアイソレーション調整処理を行うためのコンピュータプログラムであって、
第1のデータベースは、ケーブル長が異なる複数の位相補正ケーブル毎に移相量のデータを格納し、
第2のデータベースは、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域に対し、移相量毎に、前記サービスアンテナと前記ドナーアンテナ間のアイソレーション量の受信帯域の測定値と送信帯域の測定値とを格納し、
前記位相補正ケーブルの移相量に対応する前記アイソレーション量の測定値に基づいて、前記直接中継型レピータ装置の受信帯域及び送信帯域においてアイソレーション量を最大化する位相補正ケーブルを判定するステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−16970(P2013−16970A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147273(P2011−147273)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】