説明

アイドリングストップ車両

【課題】アイドリングストップ回数を増やして燃費性能を向上させる。
【解決手段】車速が所定車速V1を下回る際に、メインバッテリの充電状態SOCmが所定値S1を下回る場合には、メインバッテリに対して急速充電が施される。このように、停車直前にメインバッテリに急速充電を施すことにより、アイドリングストップに備えてメインバッテリを十分に充電することが可能となる。これにより、アイドリングストップ回数を増やすことができ、アイドリングストップ車両の燃費性能を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを自動的に停止するアイドリングストップ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費性能を向上させるため、一時的な停車時にエンジンを停止させるようにしたアイドリングストップ車両が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このアイドリングストップ車両においては、エンジンと共にオルタネータが停止するだけでなく、スタータモータを頻繁に駆動する必要があることから、バッテリの出力や容量に対する要求値が高くなっている。そこで、特許文献1のアイドリングストップ車両には、鉛蓄電池に加えてリチウムイオンバッテリが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−225649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のアイドリングストップ車両においては、アイドリングストップに備えてバッテリを充放電制御していないため、バッテリの充電状態によってはアイドリングストップが制限されていた。すなわち、アイドリングストップを実行するためには、エンジン停止中やエンジン再始動時に必要な電力をバッテリに確保する必要がある。このため、バッテリが十分に充電されていない場合には、アイドリングストップ機会が訪れたとしても、アイドリングストップを行うことが不可能となっていた。このような、アイドリングストップの制限は、燃費性能を低下させる要因であった。
【0005】
本発明の目的は、アイドリングストップ回数を増やすことにより、燃費性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアイドリングストップ車両は、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止するアイドリングストップ車両であって、発電機に接続される第1蓄電体と、電気負荷に接続される第2蓄電体と、所定車速を下回る際に前記第1蓄電体の充電状態が所定値を下回る場合には、前記第1蓄電体の充電状態が所定値以上となるまで、前記第1蓄電体を充電する充電制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明のアイドリングストップ車両は、前記第1蓄電体はロッキングチェア型蓄電体であることを特徴とする。
【0008】
本発明のアイドリングストップ車両は、前記発電機および前記第1蓄電体によって第1電源系が構成され、前記電気負荷および前記第2蓄電体によって第2電源系が構成され、前記第1電源系と前記第2電源系との間に、前記第1電源系と前記第2電源系とを切り離す開放状態に切り換えられるスイッチが設けられ、前記充電制御手段は、前記スイッチを開放状態に切り換えた状態のもとで、前記第1蓄電体に印加する充電電圧を、前記第2電源系の上限電圧以上に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定車速を下回る際に第1蓄電体の充電状態が所定値を下回る場合には、充電状態が所定値以上となるまで第1蓄電体を充電するようにしたので、アイドリングストップに備えて第1蓄電体の充電状態を確保することが可能となる。これにより、アイドリングストップ回数を増やすことができ、燃費性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態であるアイドリングストップ車両の構成を示す概略図である。
【図2】アイドリングストップ制御におけるブレーキ操作、車速、エンジン回転数の関係を示す説明図である。
【図3】アイドリングストップ制御を実行したときのメインバッテリの充放電状態を示す説明図である。
【図4】アイドリングストップ時における電源装置の電力供給状態を示す説明図である。
【図5】(a)および(b)はエンジン始動時における電源装置の電力供給状態を示す説明図である。
【図6】(a)および(b)はエンジン作動時における電源装置の電力供給状態を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態であるアイドリングストップ車両が備える電源装置の構成を示す概略図である。
【図8】(a)および(b)はエンジン作動時における電源装置の電力供給状態を示す説明図である。
【図9】アイドリングストップ時およびエンジン始動時における電源装置の電力供給状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるアイドリングストップ車両10の構成を示す概略図である。図1に示すように、アイドリングストップ車両10(以下、車両という)には、2つのバッテリ11,12を備えた電源装置13が搭載されている。また、車両10にはエンジン14および自動変速機15が搭載されている。自動変速機15の出力軸16にはデファレンシャル機構17を介して駆動輪18が連結されている。また、エンジン14にはスタータモータ19が組み付けられている。さらに、エンジン14には発電機であるオルタネータ20が駆動ベルト21を介して連結されている。図示する車両10はアイドリングストップ機能を有しており、一時的な停車時にはエンジン14を自動的に停止させている。このように、積極的にエンジン14を停止させることで車両10の燃費性能を向上させている。
【0012】
電源装置13には、第1蓄電体としてメインバッテリ11が設けられている。このメインバッテリ11にはスタータモータ19およびオルタネータ20が接続されている。このように、メインバッテリ11、スタータモータ19およびオルタネータ20によって第1電源系25が構成されている。なお、第1電源系25を構成するメインバッテリ11やオルタネータ20の許容電圧範囲は約12〜18Vに設定されている。すなわち、メインバッテリ11やオルタネータ20の制御上の上限電圧は18Vに設定されている。また、メインバッテリ11としては、充放電抵抗が小さくサイクル特性に優れる蓄電体が用いられる。このような蓄電体としては、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素バッテリ等の所謂ロッキングチェア型蓄電体が挙げられる。なお、ここでは、ロッキングチェア型蓄電体とは、リチウムイオンや水素イオン等が電極間を往復することで充放電を行う蓄電体を指す。ロッキングチェア型蓄電体の蓄電機構は、電極の物理的構造変化(溶解・析出)を伴わないことから、充放電抵抗が小さくサイクル特性に優れるという特性を有している。
【0013】
また、電源装置13には、第2蓄電体としてサブバッテリ12が設けられている。このサブバッテリ12には、電気負荷として、ヘッドライト26、イグニッションコイル27およびインジェクタ28等の電装品29が接続されている。このように、サブバッテリ12および電装品29によって第2電源系30が構成されている。なお、第2電源系30を構成するサブバッテリ12や電装品29の許容電圧範囲は約12〜15Vに設定されている。すなわち、サブバッテリ12や電装品29の制御上の上限電圧は15Vに設定されている。また、サブバッテリ12としては、所定の蓄電容量を備える蓄電体が用いられる。サブバッテリ12の蓄電容量としては、所定期間(例えば3ヶ月)に渡る車両放置後の始動性能を考慮して設定される。このような蓄電体としては、低コストで蓄電容量の大きな鉛蓄電池等の所謂リザーブ型蓄電体が挙げられる。なお、ここでは、リザーブ型蓄電体とは、電極の金属等から電解液中にイオンが溶解し、電解液中のイオンが金属等として電極に析出することで充放電を行う蓄電体を指す。リザーブ型蓄電体の蓄電機構は、電極の物理的構造変化(溶解・析出)を伴うことから、ロッキングチェア型蓄電体に比して、充放電抵抗が大きくサイクル特性が悪いという特性を有しているが、鉛等の安価な電極材料を利用可能であるため、蓄電容量を大きく取り易いという特徴がある。また、サブバッテリ12はリザーブ型蓄電体に限られることはなく、低コストで所定の蓄電容量を確保することが可能であれば、ロッキングチェア型蓄電体をサブバッテリ12として用いても良い。
【0014】
また、第1電源系25と第2電源系30とを接続する通電ライン31には、nチャネルFET等のスイッチ32が設けられている。このスイッチ32を接続状態に切り換えることにより、第1電源系25と第2電源系30とを電気的に接続することが可能となる。一方、スイッチ32を開放状態に切り換えることにより、第1電源系25と第2電源系30とを電気的に切り離すことが可能となる。このように、スイッチ32を開放して第2電源系30からオルタネータ20およびメインバッテリ11を切り離すことにより、第2電源系30の上限電圧(15V)を超えてオルタネータ20の発電電圧を設定することが可能となる。すなわち、メインバッテリ11に印加する充電電圧が、第2電源系30の上限電圧以上に設定されることになる。これにより、オルタネータ20の発電量を飛躍的に増大させることが可能となっている。
【0015】
以下、自動的にエンジン14を停止するアイドリングストップ制御について説明する。アイドリングストップ制御を実行するため、車両10には制御ユニット33が設けられている。制御ユニット33は、プログラムを実行するCPU、プログラム等を記憶するROM、一時的にデータを記憶するRAM、各種センサやアクチュエータ等に接続される入出力ポート等によって構成されている。制御ユニット33に接続されるセンサとしては、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ34、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ35、車速を検出する車速センサ36、メインバッテリ11の電圧を検出する電圧センサ37、メインバッテリ11の電流を検出する電流センサ38、メインバッテリ11の温度を検出する温度センサ39、サブバッテリ12の電圧を検出する電圧センサ40、サブバッテリ12の電流を検出する電流センサ41等がある。
【0016】
図2はアイドリングストップ制御におけるブレーキ操作、車速、エンジン回転数の関係を示す説明図である。制御ユニット33は、ブレーキ操作や車速等に基づいて、エンジン14の停止条件を判定している。すなわち、図2に示すように、ブレーキペダルが踏み込まれた状態(ブレーキON)のもとで、車速が0km/hまで低下した場合(符号a)には、制御ユニット33によってエンジン14の停止条件が成立していると判定される。そして、制御ユニット33は、イグニッションコイル27やインジェクタ28等に停止信号を出力してエンジン14を停止させる。続いて、アイドリングストップ(エンジン停止)中に、ブレーキペダルの踏み込みが解除された場合(ブレーキOFF,符号b)には、制御ユニット33によってエンジン14の停止条件が成立していないと判定される。そして、制御ユニット33は、スタータモータ19、イグニッションコイル27およびインジェクタ28等に始動信号を出力してエンジン14を再始動させる。ところで、アイドリングストップを行うためには、エンジン停止中やエンジン再始動時の消費電力を確保するため、メインバッテリ11を十分に充電しておくことが必要である。すなわち、メインバッテリ11の蓄電割合を表す充電状態SOCmが所定値S1を下回る場合には、エンジン停止中やエンジン再始動時の電力確保が困難であることからアイドリングストップが制限されていた。
【0017】
そこで、充電制御手段として機能する制御ユニット33は、アイドリングストップに備えてメインバッテリ11の蓄電量を確保するため、以下のように、メインバッテリ11に対する充電制御を実施している。ここで、図3はアイドリングストップ制御を実行したときのメインバッテリ11の充放電状態を示す説明図である。図4はアイドリングストップ時における電源装置13の電力供給状態を示す説明図である。図5(a)および(b)は、エンジン始動時における電源装置13の電力供給状態を示す説明図である。図6(a)および(b)は、エンジン作動時における電源装置13の電力供給状態を示す説明図である。なお、図4〜図6においては、黒塗りの矢印を用いて電力供給状態を表している。
【0018】
まず、図3に示すように、アイドリングストップ時には、各種電装品29に対してメインバッテリ11から電力が供給されるため、メインバッテリ11の充電状態SOCmは徐々に低下する。このとき、図4に示すように、制御ユニット33によってスイッチ32は接続状態に制御され、電装品29に対してメインバッテリ11およびサブバッテリ12が接続された状態となる。ここで、メインバッテリ11の蓄電容量を発揮できる電圧範囲は、サブバッテリ12の蓄電容量を発揮できる電圧範囲に比べて高く設計されている。このため、主にメインバッテリ11から電装品29に対して電力が供給される一方、サブバッテリ12からの電力供給は抑制される。このように、サブバッテリ12の充放電を抑制することにより、リザーブ型蓄電体等からなるサブバッテリ12の劣化を防止することが可能となる。なお、ロッキングチェア型蓄電体からなるメインバッテリ11のサイクル特性は良好であるため、頻繁に充放電させてもメインバッテリ11が著しく劣化することはない。
【0019】
続いて、図3に符号aで示すように、アイドリングストップ後のエンジン始動時には、図5(a)に示すように、制御ユニット33によってスイッチ32は開放状態に切り換えられる。そして、スタータモータ19にはメインバッテリ11から電力が供給され、イグニッションコイル27やインジェクタ28等の電装品29にはサブバッテリ12から電力が供給される。このように、メインバッテリ11からの大きな電力によってスタータモータ19を駆動し、サブバッテリ12の大きな蓄電容量で電装品29に電力を供給することで、エンジン14の素早い再始動と、電装品29への安定電圧供給による電装品29の瞬時停電防止とを両立することが可能となる。なお、エンジン始動が困難な低温時には、図5(b)に示すように、スイッチ32を接続した状態のもとでスタータモータ19を駆動しても良い。これにより、メインバッテリ11およびサブバッテリ12からの電力によってスタータモータ19を駆動することができ、低温環境下であってもエンジン14を素早く再始動することが可能となる。
【0020】
また、図3に示すように、エンジン始動後のエンジン作動時には、メインバッテリ11およびサブバッテリ12に対する通常充電が実施される。これにより、メインバッテリ11の充電状態SOCmは徐々に上昇する。このとき、図6(a)に示すように、制御ユニット33によってスイッチ32は接続状態に制御され、第1電源系25と第2電源系30とが電気的に接続された状態となる。すなわち、通常充電時には、上限電圧が15Vである第2電源系30を保護するため、オルタネータ20の発電電圧は15V以下に制限されている。
【0021】
続いて、図3に示すように、車速が所定車速V1(例えば10km/h)を下回る際に(符号b)、メインバッテリ11の充電状態SOCmが所定値S1を下回る場合には、アイドリングストップに備えてメインバッテリ11に対する急速充電が実施される。これにより、所定値S1を上回るように、メインバッテリ11の充電状態SOCmを上昇させることが可能となる(符号c)。このとき、図6(b)に示すように、制御ユニット33によってスイッチ32は開放状態に切り換えられ、第1電源系25と第2電源系30とが電気的に切り離された状態となる。このように、第2電源系30からオルタネータ20およびメインバッテリ11を切り離すことができ、オルタネータ20の発電電圧を第1電源系25の上限電圧(18V)まで引き上げることが可能となる。すなわち、急速充電時には、第2電源系30の上限電圧(15V)を超えてオルタネータ20の発電電圧を制御することが可能となる。このように、通常充電よりも発電電圧(発電電力)の高い急速充電を実施することにより、停車迄の少ない時間でメインバッテリ11を十分に充電することが可能となる。
【0022】
このように、停車直前にメインバッテリ11に対して急速充電を実施するようにしたので、アイドリングストップに備えてメインバッテリ11の充電状態SOCmを所定値S1以上に引き上げることが可能となる。これにより、アイドリングストップ機会を逃すことなくエンジン14を停止させることができ、車両10の燃費性能を向上させることが可能となる。すなわち、図3に符号dで示すように、通常充電のままでは停車時にメインバッテリ11の充電状態SOCmが所定値S1を下回る状況であっても、符号cで示すように、停車直前に急速充電を実施することで所定値S1を上回る充電状態SOCmを確保することが可能となるのである。しかも、停車直前の減速時に急速充電を行うようにしたので、エンジン負荷を増大させずにメインバッテリ11を充電することが可能となる。また、メインバッテリ11の充電不足に起因するアイドリングストップ中止を減らすことができるため、アイドリングストップを期待する運転者の満足感を高めることが可能となる。さらに、停車後にイグニッションスイッチがオフ操作された場合であっても、停車直前にメインバッテリ11を充電しておくことにより、次回乗車時のエンジン始動性を向上させることが可能となる。
【0023】
なお、前述の説明では、停車直前に充電状態SOCmが所定値S1を下回る場合に、最低限必要な所定値S1を回復するまでメインバッテリ11を急速充電しているが、これに限られることはなく、所定値S1よりも高い所定値を急速充電時の目標値に設定しても良い。また、メインバッテリ11における充電状態SOCmの算出方法としては、例えば特開2005−201743号公報に記載される算出方法を用いることが可能である。この算出方法は、充放電電流の積算値に基づく充電状態SOCcと、推定される開放電圧に基づく充電状態SOCvとを算出し、これらの充電状態SOCc,SOCvを重み付け合成して充電状態SOCmを算出する方法である。この算出方法に限られることはなく、他の算出方法を用いて充電状態SOCmを算出しても良い。
【0024】
また、前述の説明では、急速充電時におけるオルタネータ20の発電電圧を引き上げるため、第1電源系25と第2電源系30との間にスイッチ32を設けているが、これに限られることはなく、第1電源系25と第2電源系30との間からスイッチ32を削減しても良い。この場合には、第2電源系30の許容電圧範囲内(約12〜15V)で、オルタネータ20の発電電圧が制御される。例えば、通常充電時にはオルタネータ20の発電電圧が13.5Vに設定され、急速充電時にはオルタネータ20の発電電圧が15Vに設定される。このように、第2電源系30の許容電圧範囲内(約12〜15V)でオルタネータ20の発電電圧を引き上げることにより、メインバッテリ11に対して急速充電を実施しても良い。
【0025】
また、前述の説明では、第1電源系25および第2電源系30からなる電源装置13を車両10に搭載しているが、この電源装置13に限られることはなく、他の電源装置を備えた車両に対して本発明を適用しても良い。ここで、図7は本発明の他の実施の形態であるアイドリングストップ車両が備える電源装置50の構成を示す概略図である。なお、図7において、図1に示す部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
図7に示すように、オルタネータ20と電装品29とは、メインバッテリ11を迂回する給電ライン51を介して接続されている。この給電ライン51にはnチャネルFET等からなる第1スイッチSW1が設けられている。また、メインバッテリ11の正極ライン52は電装品29に接続されており、メインバッテリ11の負極ライン53はオルタネータ20のプラス端子に接続されている。このように、メインバッテリ11とオルタネータ20とは直列に接続された状態となる。また、負極ライン53にはnチャネルFET等からなる第2スイッチSW2が設けられている。さらに、スイッチSW2とメインバッテリ11との間の負極ライン53には接地ライン54が接続されている。この接地ライン54によって、スイッチSW2とメインバッテリ11との接続点55が接地されている。この接地ライン54にはnチャネルFET等からなる第3スイッチSW3が設けられている。また、サブバッテリ12の正極ライン56は電装品29に接続されており、サブバッテリ12の負極ライン57は接地されている。このように、サブバッテリ12はメインバッテリ11およびオルタネータ20に対して並列に接続されている。
【0027】
このような電源装置50を備える車両であっても、停車直前にメインバッテリ11に対して急速充電を実施することにより、メインバッテリ11の充電不足に起因するアイドリングストップ中止を減らすことが可能となる。ここで、図8(a)および(b)は、エンジン作動時における電源装置50の電力供給状態を示す説明図である。図9はアイドリングストップ時およびエンジン始動時における電源装置50の電力供給状態を示す説明図である。なお、図8および図9においては、黒塗りの矢印を用いて電力供給状態を表している。
【0028】
図8(a)および(b)に示すように、エンジン作動時には、スイッチSW1,SW3は接続状態に切り換えられ、スイッチSW2は開放状態に切り換えられる。これにより、オルタネータ20の発電電力は、メインバッテリ11、サブバッテリ12および電装品29に対して供給される。そして、図8(a)に示すように、停車直前以外の通常充電時には、オルタネータ20の発電電圧が低く抑えられる(例えば13.5V)。また、図8(b)に示すように、停車直前の急速充電時には、オルタネータ20の発電電圧が引き上げられる(例えば15V)。なお、オルタネータ20の発電電圧は、サブバッテリ12や電装品29の許容電圧範囲内(約12〜15V)で制御される。また、図9に示すように、アイドリングストップ時やエンジン始動時には、スイッチSW1,SW2は開放状態に切り換えられ、スイッチSW3は接続状態に切り換えられる。これにより、メインバッテリ11およびサブバッテリ12からの電力が電装品29に対して供給される。なお、図示する電装品29にはスタータモータ19が含まれている。
【0029】
なお、図示する電源装置50は、メインバッテリ11とオルタネータ20とを直列に接続したので、サブバッテリ12や電装品29の下限電圧に制限されることなく、メインバッテリ11を深く放電させることが可能となっている。すなわち、スイッチSW1,SW3を開放状態に切り換え、スイッチSW2を接続状態に切り換えた状態のもとで、メインバッテリ11の電圧降下に合わせてオルタネータ20の発電電圧が引き上げられる。これにより、メインバッテリ11を深く放電させた場合であっても、サブバッテリ12や電装品29に対する印加電圧を下限電圧以上に保持することが可能となる。したがって、メインバッテリ11が有する蓄電容量を十分に活用することが可能となる。
【0030】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示する場合には、動力源としてエンジン14のみを備える車両10に本発明を適用しているが、これに限られることはなく、動力源としてエンジン14および電動モータを備えるハイブリッド車両に対して本発明を適用しても良い。また、図示する車両10にはメインバッテリ11およびサブバッテリ12が搭載されているが、これに限られることはなく、サブバッテリ12を搭載していない車両に対して本発明を適用しても良い。
【0031】
また、前述の説明では、自動変速機15を備えた車両10に本発明を適用しているが、これに限られることはなく、手動変速機を備えた車両に本発明を適用しても良い。手動変速機を備えた車両においては、クラッチペダルの操作状況、シフトポジション、車速等の情報に基づいて、エンジン14の停止条件が判定されることになる。なお、前述の説明では、車両が完全に停止した後にエンジン14を停止させているが、これに限られることはなく、車両が完全に停止する前にエンジン14を停止させても良い。
【0032】
また、図3に示す場合には、エンジン作動時において常に通常充電を行うようにしているが、これに限られることはなく、車両10の走行状態に応じて通常充電を停止させても良い。例えば、加速時に通常充電を停止させる一方、減速時に通常充電を実施することが考えられる。これにより、エンジン負荷を増加させないようにオルタネータ20を制御することができ、車両10の燃費性能を向上させることが可能となる。
【0033】
また、前述の説明では、オルタネータ20とスタータモータ19を別個に設けているが、オルタネータ20とスタータモータ19との機能を兼ね備えた電動モータを設けても良い。さらに、前述の説明では、第1電源系25の許容電圧範囲を約12〜18Vに設定しているが、この電圧範囲に限られることはない。同様に、第2電源系30の許容電圧範囲を約12〜15Vに設定しているが、この電圧範囲に限られることはない。
【符号の説明】
【0034】
10 アイドリングストップ車両
11 メインバッテリ(第1蓄電体)
12 サブバッテリ(第2蓄電体)
14 エンジン
20 オルタネータ(発電機)
25 第1電源系
26 ヘッドライト(電気負荷)
27 イグニッションコイル(電気負荷)
28 インジェクタ(電気負荷)
29 電装品(電気負荷)
30 第2電源系
32 スイッチ
33 制御ユニット(充電制御手段)
S1 所定値
V1 所定車速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止するアイドリングストップ車両であって、
発電機に接続される第1蓄電体と、
電気負荷に接続される第2蓄電体と、
所定車速を下回る際に前記第1蓄電体の充電状態が所定値を下回る場合には、前記第1蓄電体の充電状態が所定値以上となるまで、前記第1蓄電体を充電する充電制御手段とを有することを特徴とするアイドリングストップ車両。
【請求項2】
請求項1記載のアイドリングストップ車両において、
前記第1蓄電体はロッキングチェア型蓄電体であることを特徴とするアイドリングストップ車両。
【請求項3】
請求項1または2記載のアイドリングストップ車両において、
前記発電機および前記第1蓄電体によって第1電源系が構成され、
前記電気負荷および前記第2蓄電体によって第2電源系が構成され、
前記第1電源系と前記第2電源系との間に、前記第1電源系と前記第2電源系とを切り離す開放状態に切り換えられるスイッチが設けられ、
前記充電制御手段は、前記スイッチを開放状態に切り換えた状態のもとで、前記第1蓄電体に印加する充電電圧を、前記第2電源系の上限電圧以上に設定することを特徴とするアイドリングストップ車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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