説明

アイドルストップ制御装置

【課題】車載用バッテリの能力を十分に活用しつつアイドルストップの実行頻度の向上を図る上で有利なアイドルストップ制御装置を提供する。
【解決手段】内部抵抗値検出手段30はエンジン10の始動時に車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinを検出する。自動停止手段14Aは、エンジン10の運転中に自動停止条件が成立するとエンジン10を自動停止させる。期間設定手段26は、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinが大きいほどエンジン10の自動停止を許可する自動停止許可期間Tisが短くなるように自動停止許可期間Tisを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイドルストップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの不要なアイドリングをストップさせることにより燃費の向上および排気ガスの排出量の削減を図るアイドルストップ制御装置が搭載された車両が提供されている。
アイドルストップ制御装置は、例えば、車両が信号待ちなどで停止した際に、予め定められた自動停止条件が成立することでエンジンを自動停止させ、また、アクセルペダルが操作されるなどの予め定められた条件が成立することでエンジンを始動させる。
アイドルストップ制御装置によるエンジンの自動停止状態においても、車載用バッテリからヘッドライト、エアコン、カーオーディオなどの各部に電力が供給されている。
この際、車載用バッテリが充放電を繰り返して劣化したものであると、エンジンの自動停止状態における電力消費により車載用バッテリの残りの容量が急速に低下し、車載用バッテリからセルモータを駆動するに足る電力を供給できなくなり、エンジンの始動が不能となることが懸念される。
そこで、車載用バッテリの劣化度合いを判定する劣化判定装置を設け、劣化判定装置により車載用バッテリが劣化していると判定された場合に、エンジンの自動停止を禁止することが考えられる。
このような劣化判定装置は種々提案されており、例えば、車載用バッテリの電圧−電流特性を検出し、該電圧−電流特性に基づいて内部抵抗値を求め、この内部抵抗値に基づいて車載用バッテリの劣化度合いを判定するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−252901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記劣化判定装置を用いてアイドルストップ制御装置を構成した場合、車載用バッテリが、短時間であればエンジンの自動停止を実行してもセルモータを駆動するに足る電力を供給できる状態であったとしても、車載用バッテリが劣化していると判定されるとエンジンの自動停止が禁止されてしまう。
したがって、車載用バッテリの能力を十分に活用できておらず、エンジンの自動停止の実行頻度の向上を図る上で不利があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車載用バッテリの能力を十分に活用しつつエンジンの自動停止の実行頻度の向上を図る上で有利なアイドルストップ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するため、本発明のアイドルストップ制御装置は、エンジンの始動時に車載用バッテリの内部抵抗値を検出する内部抵抗値検出手段と、前記エンジンの運転中に自動停止条件が成立すると当該エンジンを自動停止させる自動停止手段と、前記自動停止手段による前記エンジンの自動停止を許可する自動停止許可期間を設定する期間設定手段とを備え、前記期間設定手段は、前記内部抵抗値検出手段によって検出された内部抵抗値が大きいほど前記自動停止許可期間を短く設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、車載用バッテリの内部抵抗値が大きいほど自動停止許可期間が短くなるので、車載用バッテリは、その劣化度合いに見合った自動停止許可期間で電力を供給することができ、車載用バッテリの能力を十分に活用しつつエンジンの自動停止の実行頻度の向上を図る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態の車載用バッテリの劣化判定装置40が搭載された車両の制御系の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両は、エンジン10、車載用バッテリ12、エンジンECU14、電流検出部16、電圧検出部18、バッテリECU20、アイドルストップ制御装置40などを含んで構成されている。
エンジン10は車両を走行させるための動力源を構成するものである。
エンジン10は、図略のセルモータを含み、該セルモータが車載用バッテリ14から供給される電力によって回転することによって始動される。
【0007】
車載用バッテリ12は、前記セルモータを含む各部に電力を供給するものである。
また、車載用バッテリ12は、エンジン10の駆動により発電を行う図略のジェネレータから電力が供給されることで充電されるものである。
【0008】
エンジンECU14は、エンジン10の制御を行う電子制御ユニットであり、前記セルモータをオン、オフさせてエンジン10を始動させる制御を含む種々の制御を行う。
エンジンECU14は、車内LANであるCAN(Controller Area Network)を介してバッテリECU20と通信可能に接続されている。
エンジンECU14は、例えば、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、周辺回路とのインタフェースをとるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものであり、前記CPUが制御プログラムを実行することにより機能する。
また、エンジンECU14は、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、自動停止手段14A、始動手段14B,自動停止禁止手段14Cとして機能する。
自動停止手段14Aは、エンジン10の運転中に車両が信号待ちなどで停止するなどの自動停止条件が成立すると当該エンジン10を自動停止させるものである。
自動停止解除手段14Bは、エンジン10が自動停止してから後述する自動停止許可期間Tisが経過すると、エンジン10の自動停止を解除してエンジン10を再始動させるものである。
また、自動停止解除手段14Bは、エンジン10が自動停止した状態において、アクセルペダルが操作されるなどの予め定められた自動停止解除条件が成立することでエンジン10を始動させる処理を実行する。
自動停止禁止手段14Cは、自動停止許可期間Tisとしてゼロが設定されたことをもって自動停止手段14Aによるエンジン10の自動停止を禁止するものである。
【0009】
電流検出部16は、車載用バッテリ12の出力電流値Iを検出するものである。
本実施の形態では、電流検出部16は渦電流によって電流を検出するいわゆるクランプ式の電流センサで構成されている。
電流検出部16は、車載用バッテリ12とエンジン10とを接続する2本の電力供給用のケーブル13A、13Bのうちの一方のケーブル13Aに取り付けられ、このケーブル13Aを流れる電流を検出するように構成されている。
電流検出部16は、クランプ式の電流センサに限定されるものではなく従来公知のさまざまな電流センサが採用可能である。
【0010】
電圧検出部18は、車載用バッテリ12の正極部および負極部に接続され車載用バッテリ12の出力電圧値Eを検出するものである。
電圧検出部18として、従来公知のさまざまな電圧センサが採用可能である。
【0011】
バッテリECU20は、車載用バッテリ12に関わる制御を行う電子制御ユニットである。
バッテリECU20は、車内LANであるCAN(Controller Area Network)を介してエンジンECU14と通信可能に接続されている。
バッテリECU20は、例えば、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、周辺回路とのインタフェースをとるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものであり、前記CPUが制御プログラムを実行することにより機能する。
また、バッテリECU20は、CPUが前記制御プログラムを実行することにより後述する演算部22、期間設定手段26として機能する。
【0012】
演算部22は、電流検出部16から供給される出力電流値Iと、電圧検出部18から供給される出力電圧値Eとに基づいて、車載用バッテリ12の内部抵抗値として直流内部抵抗値Rinを演算するものである。
本実施の形態では、電流検出部16と、電圧検出部18と、演算部22とによってエンジン始動時に(クランキング時に)車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinを検出する内部抵抗値検出手段30が構成されている。
また、本実施の形態では、アイドルストップ制御装置40は、自動停止手段14A、始動手段14B,自動停止禁止手段14C、内部抵抗値検出手段30、期間設定手段26を含んで構成されている。
【0013】
ここで、内部抵抗値検出手段30による直流内部抵抗値Rinの演算について説明する。
図2は、エンジン10の始動時における時間Tと出力電流値Iおよび出力電圧値Eとの関係を示す線図である。
図2に示すように、エンジン10の始動時には、車載用バッテリ12からセルモータにラッシュ電流Irと称される過渡的な大電流が短時間供給される。したがって、出力電流値Iはいったんピークに到達したのち、時間Tの経過と共に低下する。
電流検出部16としてクランプ式の電流センサを用いる場合、過渡的なラッシュ電流Irの検出に時間的遅れが生じ、したがって、電流検出部16による出力電流値Iの検出は、電圧検出部18による出力電圧値Eの検出に対して時間的に遅延することになる。
このような検出の遅延は、出力電流値Iと出力電圧値Eとに基づく直流内部抵抗値Rinの演算結果に含まれる誤差を増大させる原因となる。
【0014】
したがって、本実施の形態では、図2に一点鎖線で囲むようにラッシュ電流Irが流れている時間を除外した出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータを演算部22の演算に供している。
より詳細には、演算部22は、ラッシュ電流Irが流れている時間を除外した出力電流値Iおよび出力電圧値Eを所定のサンプリング周期でサンプリングして出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータを得ている。
なお、演算部22によるサンプリング開始のタイミングは、例えば、エンジン10の始動時にエンジンECU14から演算部22にエンジン始動を示すトリガ信号を供給し、このトリガ信号に基づいて演算部22が決定するなど任意である。
【0015】
図3は、出力電流値Iと出力電圧値Eとの関係を示す線図であり、演算部22でサンプリングされた出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータをプロットしたものである。
演算部22は、最小二乗法などの従来公知の手法を用いて、図3に示された出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータから直流内部抵抗値Rinを演算する。
すなわち、図3に示された出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータから出力電流値Iおよび出力電圧値Eの関係を示す直線近似すると共に、得られた直線の傾斜を直流内部抵抗値Rinとして求める。
このようにして、内部抵抗値検出手段30によりエンジン10の始動時に車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinが検出される。
【0016】
期間設定手段26は、自動停止許可期間Tisを設定するものである。
より詳細には、期間設定手段26は、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinが大きいほど自動停止許可期間Tisが短くなるように自動停止許可期間Tisを設定する。
ここで、期間設定手段26によって設定される自動停止許可期間Tisは、自動停止許可期間Tisだけエンジン10の自動停止を継続した後に、車載用バッテリ12がエンジン10の再始動を行うに足る残存容量を保持できる車載用バッテリ12の直流内部抵抗Rinに基づき設定されるものである。
なお、自動停止許可期間Tisをどこに設定するかは任意であり、エンジンECU14あるいはバッテリECU20に設定してもよいし、それ以外の場所に設定してもよい。
【0017】
本実施の形態では、期間設定手段26は記憶手段28を有している。
記憶手段28には、図5に示すように、直流内部抵抗値Rinと自動停止許可期間Tisとを関連付けたマップが記憶されている。
したがって、期間設定手段28による自動停止許可期間Tisの設定は、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinに対応する自動停止許可期間Tisを図5に示すマップから読み出すことによってなされる。
なお、マップをどこに設けるかは任意であり、エンジンECU14あるいはバッテリECU20に設けてもよいし、それ以外の場所に設けても良い。
【0018】
本実施の形態では、マップ上において、直流内部抵抗値Rinの値として第1抵抗値R1と、第2抵抗値R2(但しR1<R2)とが予め定められており、第2抵抗値R2は後述する劣化判定閾値R0(図4)と等しい。
本実施の形態では、直流内部抵抗値Rin≦第1抵抗値R1となる第1の範囲では、自動停止許可期間Tisは一定の値とされている。
第1抵抗値R1<直流内部抵抗値Rin≦第2抵抗値R2となる第2の範囲では、自動停止許可期間Tisは直流内部抵抗値Rinの値が大きいほど短くなる。
第2抵抗値R2(劣化判定閾値R0)<直流内部抵抗値Rinとなる第3の範囲では、自動停止許可期間Tisはゼロとされ、これにより自動停止禁止手段14Cが自動停止手段14Aによるエンジン10の自動停止を禁止する。
【0019】
ここで、劣化判定閾値R0について説明する。
図4は車両の走行距離と、車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinとの関係を示す図である。
車載用バッテリ12は車両の走行により充放電を繰り返すことで劣化し、その劣化度合いが高まるほど車載用バッテリ12の容量は減少する。
直流内部抵抗値Rinは、車載用バッテリ12の劣化度合いが高まるほど増大する。
すなわち、劣化判定閾値R0は、劣化度合いが高い車載用バッテリ12を用いた場合に、直流内部抵抗値Rinがこの劣化判定閾値R0を超過した場合に、エンジン10の自動停止を禁止して、エンジン10の再始動が不能となる事態を回避するためのものである。
【0020】
次に、車載用バッテリ12の直流内部抵抗Rinについて説明する。
車載用バッテリ12の劣化度合いを判定する指標として、SOH(State Of Health)がある。
SOHは下記の式で定義される。
SOH=(劣化時の満充電容量(Ah))/(初期の満充電容量(Ah))×100
また、車載用バッテリ12の充電状態を示す指標として、SOC(State Of Charge)がある。
SOCは下記の式で定義される。
SOC=(残容量(Ah))/(満充電容量(Ah))×100
SOHおよびSOCを求めるためには、満充電容量を検出する必要があり、この満充電容量は、車載用バッテリ12を満充電したのち放電させることで検出されるため、実際に車両を使用しながらSOHやSOCを得ることは容易ではない。
SOHやSOCといった指標の代わりに直流内部抵抗Rinを用いることができることは従来から知られている。
そこで、本発明では、実際に車両を使用しながら内部抵抗値検出手段30のように比較的簡単な構成によって検出可能な直流内部抵抗Rinに基づいて自動停止許可期間Tisの設定を行うようにしている。
【0021】
次に、エンジン10の自動停止状態における車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinについて説明する。
図6は新品の車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinの時間経過に伴う変化を示す線図、図7は劣化した車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinの時間経過に伴う変化を示す線図である。
図6、図7において横軸はエンジン10の自動停止が開始されてから経過した時間t(以下アイドルストップ時間tという)を示し、縦軸は直流内部抵抗値Rinを示す。
図6に示すように、新品の車載用バッテリ12では、直流内部抵抗値Rinは小さい値でばらつきが小さく、かつ、アイドルストップ時間tの経過に拘わらずほとんど変化せず安定した値を維持している。
図7に示すように、劣化した車載用バッテリ12では、直流内部抵抗値Rinは大きな値でばらつきが大きく、かつ、アイドルストップ時間tの経過に伴い大きくなる傾向を有している。
すなわち、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinが小さいほど車載用バッテリ12の劣化度合いは低く、したがって、車載用バッテリ12から電力供給を長時間行うことが可能である。
一方、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinが大きいほど車載用バッテリ12の劣化度合いが高く、したがって、車載用バッテリ12からの電力供給を短時間とする必要がある。
【0022】
次に、図8に示すフローチャートを参照してアイドルストップ制御装置40の動作について説明する。
ブレーキペダルを踏み込んだ状態でイグニッションキーを回すと(あるいはイグニッションスイッチをオンにすると)、エンジンECU14の制御により、車載用バッテリ12からセルモータに電力が供給され、セルモータによりエンジン10が始動される(ステップS10)。
次いで、内部抵抗値検出手段30により、車載用バッテリ12の出力電流値Iおよび出力電圧値Eがサンプリングされ、サンプリングされた出力電流値Iおよび出力電圧値Eのデータに基づいて直流内部抵抗値Rin0が演算される(ステップS12)。
【0023】
次いで、期間設定手段26は、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinに対応する自動停止許可期間Tisを図5に示すマップから読み出し、該自動停止許可期間Tisを設定する(ステップS14)。
したがって、ステップS12において、内部抵抗値検出手段30によって検出された直流内部抵抗値Rinが劣化判定閾値R0を超過した場合には、ステップS14において、期間設定手段26は自動停止許可期間Tisとしてゼロを設定する。
【0024】
自動停止禁止手段14Cは、設定された自動停止許可期間Tisがゼロであるか否かを判定し(ステップS15)、この判定結果肯定であれば自動停止禁止手段14Cは自動停止手段14Aによるエンジン10の自動停止を禁止する(ステップS24)。
ステップS15の判定結果が否定であれば、自動停止手段14Aは、自動停止条件が成立するか否かを判定し(ステップS16)、この判定結果が否定ならばステップS16を繰り返す。
ステップS16の判定結果が肯定ならば、自動停止手段14Aは、エンジン10を自動停止させる(ステップS18)。
【0025】
そして、自動停止解除手段14Bは、エンジン10の自動停止を開始してから自動停止許可期間Tisが経過したか否かを判定し(ステップS20)、この判定結果が否定ならばステップS20を繰り返す。
ステップS20の判定結果が肯定ならば、自動停止解除手段14Bは、エンジン10の自動停止を解除してエンジン10を強制的に始動する(ステップS22)。
そして、ステップS12に移行して同様の処理を繰り返す。
【0026】
本実施の形態によれば、車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinが大きいほどエンジン10が自動停止する自動停止許可期間Tisが短くなるようにした。
したがって、車載用バッテリ12は、その劣化度合いに見合った自動停止許可期間Tisで電力を供給することができるため、車載用バッテリ12の能力を十分に活用しつつアイドルストップの実行頻度の向上を図る上で有利となり、燃費の向上および排気ガスの排出量の削減を図る上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態によれば、自動停止許可期間Tisを、自動停止許可期間Tisだけエンジン10の自動停止を継続した後に、車載用バッテリ12がエンジン10の再始動を行うに足る残存容量を保持できる車載用バッテリ12の直流内部抵抗Rinに基づき設定した。
したがって、エンジン10の自動停止を実行しても車載用バッテリ12がセルモータを駆動するに足る電力を供給できる範囲でエンジン10の自動停止が許可されるため、エンジン10の再始動が確実になされ、車両の操作性を確保する上で有利となる。
【0028】
なお、本実施の形態では、直流内部抵抗値Rinが劣化判定閾値R0(第2抵抗値R2)を超過した場合に、自動停止許可期間Tisとしてゼロを設定することで、エンジン10の自動停止を禁止する場合について説明した。
しかしながら、エンジン10の自動停止を禁止する構成は限定されるものではなく、要するに、検出された直流内部抵抗値Rinが劣化判定閾値R0(第2抵抗値R2)を超過したことをもって自動停止禁止手段14Cがエンジン10の自動停止を禁止するものであればよい。
【0029】
また、本実施の形態では、直流内部抵抗値Rinと自動停止許可期間Tisとを関連付けたマップとして図5に示すものを挙げたが、マップは図5に示される形態に限定されるものではない。
マップは、自動停止許可期間Tisが直流内部抵抗値Rinの値が大きくなるほど短くなる部分を含むものであればよい。
したがって、自動停止許可期間Tisが一定の値とされる第1の範囲を省略し、第2の範囲と第3の範囲のみとしてもよい。
また、自動停止許可期間Tisと直流内部抵抗値Rinとの関係は、図5の第2の範囲に示すように直線の関係であっても、非直線の関係であってもよい。
また、第3の範囲で第2抵抗値R2(劣化判定閾値R0)を超えると、自動停止許可期間Tisをゼロとしたが、上述した劣化判定手段を設けることで第3の範囲を省略してもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、アイドルストップ制御装置40が搭載される車両が、エンジン10を走行の動力源とするものである場合について説明した。
しかしながら、本発明のアイドルストップ制御装置40は、車載用バッテリから電力が供給されるモータとエンジンとの双方を走行の動力源とする車両にも適用可能であることは無論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態のアイドルストップ制御装置40が搭載された車両の制御系の構成を示すブロック図である。
【図2】エンジン10の始動時における時間Tと出力電流値Iおよび出力電圧値Eとの関係を示す線図である。
【図3】出力電流値Iと出力電圧値Eとの関係を示す線図である。
【図4】車両の走行距離と、車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinとの関係を示す図である。
【図5】記憶手段28に記憶された直流内部抵抗値Rinと自動停止許可期間Tisとを関連付けたマップの説明図である。
【図6】新品の車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinの時間経過に伴う変化を示す線図である。
【図7】劣化した車載用バッテリ12の直流内部抵抗値Rinの時間経過に伴う変化を示す線図である。
【図8】車載用バッテリのアイドルストップ制御装置40の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
10……エンジン、12……車載用バッテリ、14A……自動停止手段、26……期間設定手段、30……内部抵抗値検出手段、40……アイドルストップ制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの始動時に車載用バッテリの内部抵抗値を検出する内部抵抗値検出手段と、
前記エンジンの運転中に自動停止条件が成立すると当該エンジンを自動停止させる自動停止手段と、
前記自動停止手段による前記エンジンの自動停止を許可する自動停止許可期間を設定する期間設定手段とを備え、
前記期間設定手段は、前記内部抵抗値検出手段によって検出された内部抵抗値が大きいほど前記自動停止許可期間を短く設定する、
ことを特徴とするアイドルストップ制御装置。
【請求項2】
前記内部抵抗値検出手段によって検出された内部抵抗値が所定の劣化判定閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記所定の劣化判定閾値を超えたと判定したとき、前記エンジンの自動停止を禁止する自動停止禁止手段と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項3】
前記期間設定手段は、前記内部抵抗値検出手段によって検出された前記内部抵抗値が前記劣化判定閾値を超過した場合に、前記自動停止許可期間としてゼロを設定し、
前記自動停止禁止手段による前記エンジンの自動停止の禁止は、前記自動停止許可期間としてゼロが設定されたことをもってなされる、
ことを特徴とする請求項2記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項4】
前記所定の劣化判定閾値は、前記自動停止許可期間だけ前記エンジンの自動停止を継続した後に、前記車載用バッテリが前記エンジンの再始動を行うに足る残存容量を保持できる内部抵抗値に基づき設定される、
ことを特徴とする請求項2または3記載のアイドルストップ制御装置。
【請求項5】
前記エンジンが自動停止してから前記自動停止許可期間が経過すると、前記エンジンを再始動させる自動停止解除手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のアイドルストップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−121459(P2010−121459A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293273(P2008−293273)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】