説明

アイドルストップ機能の検査モードを備えた車両

【課題】本発明は、外部オイルポンプを備えていない車両において、アイドルストップ機能の診断を行う場合であってもCVTにおいてベルトの滑りが発生するのを防止できる車両の提供を目的とした。
【解決手段】車両Aは、所定の稼働条件を満足したときにエンジンEを自動停止させるアイドルストップ機能を備えている。CVT7が、Vベルト15と、オイルポンプ6によってオイルが供給されることによりベルトに対して挟圧を作用させることが可能な駆動プーリ11と、従動プーリ21とを備えたものである。制御装置Cは、前述した稼働条件の一部を解除した状態においてアイドルストップ機能の検査を行うための検査モードによる制御を実施可能である。検査モードによる制御が実施された場合には、少なくとも車両Aが駆動可能な状態になるまでの期間は、アクセルが踏み込まれた場合であってもエンジンEのスロットルSの開度が所定開度以下となるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンをアイドルストップさせるアイドルストップ機能についての検査モードを備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや環境問題の観点から、車両における燃費向上やエネルギー効率の改善が望まれている。かかる観点から、従来、下記特許文献1や特許文献3に開示されているような無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を搭載した車両が提供されている。また更なる燃費向上を図るべく、下記特許文献2に開示されているように、信号等において走行を停止した際に所定の条件を満足することを条件としてエンジンの運転を自動的に停止し、発進時にエンジンを自動的に再始動させるアイドルストップ機能を備えた車両が提供されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されている無段変速機を備えた車両の制御装置は、エンジントルクに対応して無段変速機のベルト挟圧を設定するものである。また、下記特許文献2に開示されているエンジン自動停止再始動装置は、アクセル踏み込みに起因してエンジンが再始動された時の急発進による危険を防止するためのものである。特許文献2に係る従来技術では、所定の再始動条件が成立したことが検出され、エンジンのトルク抑制制御及びブレーキ圧増圧制御を含む急加速抑制制御を実行することにより、アクセル踏み込みに伴うエンジンの再始動時に車両が急発進するのを防止している。
【0004】
下記特許文献3に開示されている車両用制御装置は、エンジン始動時にベルト式CVTにおけるベルトとプーリとの滑りを防止することにより耐久性の向上を図ろうとするものである。特許文献3に係る従来技術では、再始動時に、オイルポンプの駆動によりベルト式CVTのライン圧が所定値以上に確保されるまで、クラッチの油圧上昇を遅延させるものである。
【0005】
また、従来技術において提供されているアイドルストップ機能を備えた車両では、アイドルストップ状態から確実かつスムーズに復帰させることが可能なように、オイルの油温やエンジンの水温、バッテリ電源の電圧、バッテリ電源の温度などについて様々な条件が規定されており、これらの条件が満たされた場合に限ってアイドルストップ機能が稼働する構成とされている。従来技術では、アイドルストップ機能についてこのような作動条件を設けることにより、通常の使用状態における十分な安全性を確保しつつ、使用感の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−47892号公報
【特許文献2】特開2003−175747号公報
【特許文献3】特開2001−82594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ベルト式CVTを備え、アイドルストップ機能を有する車両においては、生産直後やメンテナンスの際にアイドルストップ機能が正常に機能するかについて診断を行う必要がある。アイドルストップ機能の診断を行う場合には、通常の使用状態とは異なり、全ての作動条件を満足した条件下で診断を行う必要がない場合や、一部の作動条件について正常に機能しているかを診断する場合などがあり、上述した作動条件のうちの一部を解除した状態においてアイドルストップ機能を稼働させたいという要望がある。
【0008】
従来技術のベルト式CVTを搭載した車両には、エンジン駆動式のオイルポンプに加え、バッテリ電源などから駆動力を得て作動する外部オイルポンプを設けたものが存在する。このような構成である場合は、エンジンが停止した状態においてもCVTにおけるベルト挟圧を維持しておくことが可能である。従って、アイドルストップ機能の診断を行う際にも外部オイルポンプを作動させてCVTにオイルを供給しておくことにより、十分なベルト挟圧が確保されている状態とすることが可能であり、エンジンの出力トルクがCVTに入力されてもベルトの滑りなどの問題が起こらない。その反面、前述した外部オイルポンプがアイドルストップ機能が稼働している間も作動することになり、その分だけエネルギー効率が低下してしまうという問題がある。また、外部オイルポンプを設けることにより、製造コストも高くつくという問題もある。
【0009】
かかる知見に基づき、本発明者らは、外部オイルポンプを設けず、エンジン駆動式のオイルポンプによってCVTにオイルを供給する構成について検討を行った。その結果、通常の使用状態におけるエネルギー効率の更なる改善や製造コストの削減を行うことが可能であることが判明した。その反面、アイドルストップ機能の診断を行うために一部の作動条件を解除した場合は、エンジンの停止に伴ってCVTへのオイル供給が滞ることにより、十分なベルト挟圧が確保されていない状態でエンジンの出力トルクがCVTに入力されてしまい、ベルトの滑りが発生する可能性があることが判明した。
【0010】
そこで、本発明は、外部オイルポンプを備えておらず、エンジン駆動式のオイルポンプによってCVTにオイルを供給する構成の車両において、アイドルストップ機能の稼働条件の一部を解除した状態でアイドルストップ機能の診断を行う場合であってもCVTにおいてベルトの滑りが発生するのを防止できる車両の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両は、アクセルと、前記アクセルの開度とは独立して開度を調節し得るスロットルを備えたエンジンと、前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、前記エンジンの動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速装置と、少なくとも前記エンジン及び前記ベルト式無段変速装置が互いに連携作動するように制御可能な制御装置と、を有し、所定の稼働条件を満足したときに前記エンジンを自動停止させるアイドルストップ機能を備えた車両であって、前記ベルト式無段変速装置が、ベルトと、前記オイルポンプによってオイルが供給されることにより前記ベルトに対して挟圧を作用させることが可能なプーリとを備えたものであり、前記制御装置が、前記稼働条件の一部を解除した状態において前記アイドルストップ機能の検査を行うための検査モードによる制御を実施可能であり、前記検査モードによる制御が実施された場合に、少なくとも車両が駆動可能な状態になるまでは、前記アクセルが踏み込まれた場合であっても前記エンジンのスロットル開度が所定開度以下となるように制御されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両は、検査モードによる制御が制御装置によってなされる場合に、前記アクセルが踏み込まれたとしても、少なくとも車両が駆動可能な状態になるまではエンジンのスロットル開度が所定開度以下に制限される。ここで、本発明において、「車両が駆動可能な状態」とは、オイルポンプにより圧送されるオイルの油圧が所定圧以上に到達した状態や、このような状態に達したと推認される状態である。具体的には、下記(1)〜(3)のような状態が、前述した「車両が駆動可能な状態」に該当する。
(1)オイルポンプにより圧送されるオイルについて検知される油圧が実際に所定圧以上であることが確認された状態。
(2)エンジンの回転数が所定の回転数以上に達することによりエンジン駆動式のオイルポンプの回転数も上昇し、十分な油圧に達していると想定される状態。
(3)車輪速の検出により、駆動力が実際に伝達されたと想定される状態。
【0013】
ここで、上述したように検査モードの実行時にアイドルストップ機能の稼働条件の一部を解除した場合は、アイドルストップ機能が解除されエンジンが再始動した後、「車両が駆動可能な状態」に達するまでの期間は、エンジンによって駆動するポンプが未だ十分作動していない可能性がある。従って、この期間においてはCVTのプーリに対して十分な油圧が作用しておらず、ベルトの滑りが発生する可能性がある。かかる知見に基づき、本発明では、車両が駆動可能な状態に達するまでの期間において仮にアクセルが踏み込まれたとしても、エンジンのスロットル開度を所定開度以下となるように制御している。従って、本発明の車両では、検査モードの実行時において、前述したようなベルトの滑りが発生しない。
【0014】
本発明の車両では、上述した従来技術の車両のように外部オイルポンプを必要としないため、従来技術の車両よりもエネルギー効率の点において優れている。また、本発明の車両は、外部オイルポンプを要しない分だけ、製造コストも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両において採用されているトランスミッションシステムを示すスケルトン図である。
【図2】図1に示す車両における検査モードに関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明の一実施形態に係る車両Aについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態の車両Aは、その制御構成に特徴を有するものであるが、制御構成部分の説明に先立って、車両Aにおいて採用されているトランスミッションシステムの概略を説明する。
【0017】
本実施形態の車両Aは、図1に示すようにトランスミッションシステムTとエンジンE、制御装置Cを備えている。トランスミッションシステムTは、FF横置き式の自動車用変速機であり、エンジン出力軸1によりトルクコンバータ2を介して駆動される入力軸3、入力軸3の回転を正逆切り替えて駆動軸10に伝達する前後進切替装置4、駆動プーリ11と従動プーリ21と両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15とからなる無段変速装置7、従動軸20の動力を出力軸32に伝達するデファレンシャル装置30などによって構成されている。入力軸3と駆動軸10とは同一軸線上に配置され、従動軸20とデファレンシャル装置30の出力軸32とが入力軸3に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、このトランスミッションシステムTは、全体として3軸構成とされている。
【0018】
本実施形態において採用されているVベルト15は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に支持された多数のブロックとで構成された公知の金属ベルトである。
【0019】
トランスミッションシステムTを構成する各部品は、変速機ケース5の中に収容されている。トルクコンバータ2と前後進切替装置4との間には、オイルポンプ6が配置されている。このオイルポンプ6は、図1では示さないが、変速機ケース5に固定されたオイルポンプボデーと、オイルポンプボデーに対して固定されたオイルポンプカバーと、オイルポンプボデーとオイルポンプカバーとの間に収容されたポンプギヤとで構成されている。そして、ポンプギヤはトルクコンバータ2のポンプインペラ2aにより駆動される。なお、トルクコンバータ2のタービンランナ2bは入力軸3に連結され、ステータ2cはワンウエイクラッチ2dを介して変速機ケース5により支持されている。
【0020】
オイルポンプ6は、エンジンEから入力される動力により作動するものである。従って、オイルポンプ6の動作は、エンジンEと連動する。すなわち、エンジンEの作動中はオイルポンプ6も作動するが、エンジンEが停止するとオイルポンプ6も停止する。また、オイルポンプ6を作動させることにより、後に詳述する前後進切替装置4やCVT7などに向けてオイルを圧送し、油圧を作用させることができる。従って、エンジンEの停止中は、前後進切替装置4やCVT7に対して油圧を作用させることができない。
【0021】
前後進切替装置4は、遊星歯車機構40と、逆転ブレーキ50と、直結クラッチ51とで構成されている。遊星歯車機構40は、いわゆるシングルピニオン方式のものであり、サンギヤ41が入力回転部材である入力軸3に連結され、リングギヤ42が出力回転部材である駆動軸10に連結された構成とされている。逆転ブレーキ50は、ピニオンギヤ43を支えるキャリア44と変速機ケース5との間に設けられている。また、直結クラッチ51は、キャリア44とサンギヤ41との間に設けられている。直結クラッチ51を解放して逆転ブレーキ50を締結すると、入力軸3の回転が逆転され、かつ減速されて駆動軸10へ伝えられる。逆に、逆転ブレーキ50を解放して直結クラッチ51を締結すると、遊星歯車機構40のキャリア44とサンギヤ41とが一体に回転するので、入力軸3と駆動軸10とが直結される。
【0022】
無段変速装置7の駆動プーリ11は、固定シーブ11aと、可動シーブ11bと、油圧サーボ12とを備えている。固定シーブ11aは、駆動軸(プーリ軸)10の軸上に一体的に形成されている。可動シーブ11bは、駆動軸10上にローラスプライン部を介して軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持されている。油圧サーボ12は、可動シーブ11bの背後に設けられている。可動シーブ11bの外周部には、背面側へ延びるピストン部が一体に形成され(図示せず)、このピストン部の外周部が駆動軸10に固定されたシリンダ(図示せず)の内周部に摺接している。可動シーブ11bとシリンダとの間に油圧サーボ12の作動油室12aが形成され、この作動油室12への油圧を制御することにより、変速制御が実施される。
【0023】
従動プーリ21は、固定シーブ21aと、可動シーブ21bと、油圧サーボ22とを備えている。固定シーブ21aは、従動軸(プーリ軸)20上に一体的に形成されている。可動シーブ21bは、従動軸20上にローラスプライン部(図示せず)を介して軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持されている。油圧サーボ22は、可動シーブ21bの背後に設けられている。可動シーブ21bの外周部には、背面側へ延びるシリンダ部(図示せず)が一体に形成され、シリンダ部の内周部に従動軸20に固定されたピストン(図示せず)が摺接している。可動シーブ21bとピストンとの間に油圧サーボ22の作動油室22aが形成され、この作動油室22aの油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト推力が与えられる。なお、作動油室22aには初期推力を与えるスプリング24が配置されている。
【0024】
従動軸20の一端部は、エンジンE側に向かって延びており、この一端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びる出力軸32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
【0025】
エンジンEは、内燃機関によって構成されるものであり、開度(出力)を調節し得るスロットルSを備えている。エンジンEは、出力軸1を介して上述したトランスミッションシステムTに接続されており、動力をトルクコンバータ2やオイルポンプ6に対して入力可能とされている。エンジンEは、上述したCVT7と連携作動するように制御装置Cによって動作制御されている。
【0026】
車両Aは、走行を停止した際に所定の稼働条件を満足していることを条件として制御装置Cからの制御信号によりエンジンEの運転を自動的に停止させ、発進時にエンジンEを自動的に再始動させる機能(アイドルストップ機能)を有する。本実施形態では、アクセル(図示せず)の開度が所定の開度以下であることや、車速が0[Km/h]であること、エンジンEの水温が所定の温度範囲内であること、バッテリ電源の電圧が所定の電圧以上であること、バッテリ電源の温度が所定の温度範囲内にあること、バッテリ電源が十分に充電された状態であること、ブレーキペダルがオン状態であることなどがアイドルストップ機能の稼働条件として設定されている。また、アクセルの開度が所定の開度より大きくなる等して前述した稼働条件を満たさない状態になると、アイドルストップ機能が解除されてエンジンEが再始動し、車両Aが走行可能な状態に復帰する。
【0027】
また、車両Aは、制御装置Cによる制御の下、検査モードにより動作させることができる。検査モードは、生産直後の動作チェックやメンテナンスなどの際に検査を行う際に実行される動作モードである。車両Aを検査モードで動作させることにより、上述した稼働条件の一部を解除した状態でアイドルストップ機能を稼働させ、アイドルストップ機能が正常に機能するか否かを判定することができる。検査モードが選択された場合は、アイドルストップ機能が稼働してエンジンEが停止状態になった後、アクセルが踏み込まれた場合であっても、少なくとも車両Aが駆動可能な状態になるまでの期間は、エンジンEのスロットルSの開度が所定開度以下となるように制御される。すなわち、検査モードにおいては、アクセルが踏み込まれたとしても直ちにエンジンEからCVT7に動力を伝達させるのではなく、油圧がCVT7の可動シーブ11b,21bに伝達されVベルト15の滑りが発生しないと想定されるタイミングまでCVT7への動力伝達を遅延させることとしている。
【0028】
車両Aの動作について図2に示すフローチャートに則って説明すると、先ずステップ1において車両Aの動作モードとして検査モードが選択されているか否かが確認される。ステップ1において検査モードが選択されている場合は、ステップ2において検査モードにおいてアイドルストップ機能が稼働するための条件(図中や以下の説明においいて「検査用IDS稼働条件」とも称す)を満足した状態であるか否かが確認される。
【0029】
具体的には、上述したように、検査モードが選択されている場合は、通常の使用状態においてアイドルストップ機能を稼働させるための条件(以下、「通常IDS稼働条件」とも称す)ではなく、通常IDS稼働条件から一部の稼働条件が解除されたものがアイドルストップ機能を稼働させるための条件(検査用IDS稼働条件)として設定される。さらに詳細には、通常IDS稼働条件には、アクセルペダルの状態(開閉、開度)や、車速、エンジンEの水温、バッテリ電源の状態(電圧,温度,充電状態)、ブレーキペダルの状態などの多数の条件が設定されているが、これらの条件のうちの一又は条件を除外したものが検査用IDS稼働条件として設定されている。
【0030】
上述した検査用IDS稼働条件がステップ2において満足したことが確認された場合は、制御フローがステップ3に移行し、アイドルストップ機能が稼働する。これにより、エンジンEがオフ状態になる。その後、ステップ4においてアイドルストップ後の再始動条件を満足する状態になっているか確認される。具体的には、前述した再始動条件として、アイドルストップ機能が稼働した後アクセルが改めて開状態(オン状態)になる、ブレーキペダルがオフ状態になる、などの運転者の操作の観点から設定された条件や、車速やバッテリ電源の電流値などの安全性の観点から設定された条件などが予め設定されている。ステップ4では、これらの再始動条件について各所に設置されたセンサ(図示せず)などからの信号に基づいて制御装置Cが監視している。
【0031】
上述したステップ4において再始動条件を満足していない間は、制御フローがステップ3に戻され、アイドルストップ機能が稼働状態のまま維持される。一方、ステップ4において再始動条件が整ったことが確認されると、制御フローがステップ5に進められ、アクセルの開度にかかわらずスロットルSが閉状態とされる。その後、ステップ6において車両Aが車両駆動可能条件を満足した状態になっているか否かが確認される。
【0032】
具体的には、ステップ6において以下の(1)〜(3)のいずれか一つあるいは複数の条件を満足した状態になっているか否かが確認される。
(1)オイルポンプ6により圧送されるオイルについて検知される油圧が実際に所定圧以上であることが確認された状態。
(2)エンジンEの回転数が所定の回転数以上に達することによりエンジンEによって駆動されるオイルポンプ6の回転数も上昇し、十分な油圧に達していると想定される状態。
(3)車輪(図示せず)の速度の検出結果により、駆動力が実際に車輪に伝達されたと想定される状態。
【0033】
ステップ6において車両Aが未だ駆動可能な状態でない間は、オイルポンプ6が未だ十分駆動しておらず、CVT7の稼働シーブ11b,21bに対して十分な油圧が作用していない可能性がある。稼働シーブ11b,21bが十分に機能していない状態においてCVT7に対してエンジンEの動力が伝達されると、Vベルト15の滑りが発生する可能性がある。そこで、ステップ6において車両駆動可能条件が満足するまでの間は、エンジンEのスロットルSが閉状態に維持される。
【0034】
一方、ステップ6において車両駆動可能条件が満足された状態になると、稼働シーブ11b,21bに対して十分油圧が作用しているものと想定される。従って、この状態においてエンジンEの動力をCVT7に伝達させても、駆動プーリ11や従動プーリ21においてVベルト15に対して十分な挟圧を作用させることが可能であり、Vベルト15の滑りを回避できると想定される。そこで、ステップ6において車両駆動可能条件を満足した状態になったことが確認された場合は、制御フローがステップ7に移行し、エンジンEのスロットルSがアクセルペダルの開度に相当する開度まで開いた状態とされる。これにより、車両Aは、アイドルストップ機能から復帰した状態になり、走行可能な状態に復帰する。
【0035】
本実施形態の車両Aは、動作モードとして検査モードを選択した際に、アイドルストップ機能が稼働した状態においてアクセルペダルが開状態に切り替わったとしても、上述した車両駆動可能条件を満足した状態にならない限りエンジンEのスロットルSの開度が所定開度以下(本実施形態では全閉)となるように制御されている。そのため、車両Aにおいては、油圧が駆動プーリ11や従動プーリ21に十分作用し、Vベルト15に対して十分な挟圧を作用させることが可能な状態になってからCVT7に対してエンジンEの動力が伝達されることになり、Vベルト15の滑りやこれに伴う不具合が発生しない。
【0036】
また、車両Aは、従来技術の車両のようにバッテリ電源により駆動するオイルポンプなどを必要としないため、その分だけエネルギー効率の点において優れており、製造コストも抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、図2に示す制御フローのステップ6において車両駆動可能条件を満足した状態にならない期間においてスロットルSを全閉状態で維持する構成を例示したが、スロットルSは必ずしも全閉である必要はなく、所定の開度以下となるように制御するようにしてもよい。具体的には、ステップ3においてアイドルストップ機能が解除されるとエンジンEが再起動され、オイルポンプ6も駆動を開始するため、車両駆動可能条件を未だ満足していない状態においても駆動プーリ11や従動プーリ21に対して幾ばくかの油圧が作用しているものと考えられる。この状態においては、比較的低い動力であればこれをCVT7に伝達させたとしてもVベルト15の滑りは発生しないと考えられる。そこで、ステップ5において車両駆動可能条件が未だ満足されていない状態においても、Vベルト15の滑りが発生しないと想定される範囲内においてスロットルSを開くように制御することとしてもよい。
【0038】
本実施形態の車両Aは、検査モードを選択した際に、実際に走行試験を行うことによりアイドルストップ機能についての検査を行うことが可能である。また、車両Aは、試験用に準備された台上においてアイドルストップ機能についての検査を行う場合についても、同様の制御により検査モードによる検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
A 車両
E エンジン
C 制御装置
S スロットル
6 オイルポンプ
7 ベルト式無段変速装置(CVT)
15 Vベルト
11 駆動プーリ
21 従動プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルと、
前記アクセルの開度とは独立して開度を調節し得るスロットルを備えたエンジンと、
前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、
前記エンジンの動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速装置と、
少なくとも前記エンジン及び前記ベルト式無段変速装置が互いに連携作動するように制御可能な制御装置と、を有し、
所定の稼働条件を満足したときに前記エンジンを自動停止させるアイドルストップ機能を備えた車両であって、
前記ベルト式無段変速装置が、ベルトと、前記オイルポンプによってオイルが供給されることにより前記ベルトに対して挟圧を作用させることが可能なプーリとを備えたものであり、
前記制御装置が、前記稼働条件の一部を解除した状態において前記アイドルストップ機能の検査を行うための検査モードによる制御を実施可能であり、
前記検査モードによる制御が実施された場合に、少なくとも車両が駆動可能な状態になるまでは、前記アクセルが踏み込まれた場合であっても前記エンジンのスロットル開度が所定開度以下となるように制御されることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208536(P2011−208536A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75771(P2010−75771)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】