説明

アウターロータ型モータ

【課題】コイルの巻終りのコイル端末の位置を安定させ、組立作業性を向上させたアウターロータ型モータを提供する。
【解決手段】ステータコアの外側にロータを設けたアウターロータ型モータにおいて、前記ステータコアと電線とを絶縁するボビン1を有し、前記電線を巻回した前記ボビン1を前記ステータコアに保持する。ボビン1の外側の鍔部8に突起7を設け、この突起7の左右に有する2つの壁7a,7bに巻終りのコイル端末を沿わせる。これにより、巻終りのコイル端末の位置決めが可能となり、アウターロータ型モータの組立作業を行なう際、容易にコイル端末をステータコアの内径側に導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアに絶縁物を介して電線を集中巻回しすることでコイルを形成したアウターロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機として使用されるモータは、コイルが装着されるティースを備え、電磁鋼板を積層して成るステータコアと、ステータコアが取り付けられるステータケースに回転自在に装着されるロータとを有しているものがある。モータには、ステータコアの内部に形成された円筒形状の空間内にロータが配置されるインナーロータ型と、ステータコアの外側にロータの円筒部が配置されるアウターロータ型とがあり、電線を巻回して形成されるコイルの端末は回転磁界を形成するために接続をする必要がある。こうした技術に関連するものとして特許文献1には、コイル端末接合端子を用いてコイルの端末を接続するようにしたモータが記載されている。また、ステータコアのティース幅は一定であるため、コイルが配置されるスロットの形状は、外径側に近づくにつれ幅が広くなっていることが周知となっており、特許文献2には、スロットの形状に合せコイルを巻線することが記載されている。
【0003】
また、ステータコアとコイルとを絶縁するための構成としては、特許文献1、特許文献2ではボビンだけで構成しているが、特許文献3では絶縁端板と絶縁シートによって構成されるモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−78789号公報
【特許文献2】特開平10−290545号公報
【特許文献3】特開2006−180674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アウターロータ型モータにおいては、ステータコアの外径側にロータが配置されるため、コイル端末の接続をステータコアの外径側で行うことが困難であるが、ステータコアのスロットの形状から、巻終りのコイル端末はスロット内の外径側近傍に配置される。ステータコアの積層方向の寸法を小さくし、モータを小形化するためには、コイル端末をステータコアの内径側に導き、接続を行う必要があり、従来技術においては、手作業によりコイル端末をステータコアの内径側に導き、接続作業を行っていた。また、モータの特性を維持したまま、小形化するためには、より多くの電線を巻回しする必要があり、隣合うコイルの隙間は、可能なかぎり小さくする必要がある。
【0006】
電線をボビンに巻回しコイルを形成した後、前記ボビンをステータコアに組立てる場合、巻始めのコイル端末は、後から巻回された電線によって固定されることになるが、巻終りのコイル端末は固定されず、不安定なままでは、組立作業性が著しく損なわれてしまうという実情があり、また、ステータコアに絶縁物を配置し電線を直接巻線する場合、巻終りのコイル端末が固定されず位置がばらついていると、隣のコイルを巻線する際に障害となってしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、モータの小形化を図りつつ、ステータ製作の作業性を向上することにあり、また、コイルの巻終りのコイル端末の位置を安定させ、組立作業性を向上させたアウターロータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、樹脂部品たるボビンの外側の突起に2つの壁を設け、その壁に巻終りのコイル端末を沿わせることにより、巻終りのコイル端末の位置決めができ、容易にコイル端末をステータコアの内径側に導くことを可能とする。
【0009】
すなわち、本発明のアウターロータ型モータによれば、ステータコアの外側にロータを設けたアウターロータ型モータにおいて、前記ステータコアと電線とを絶縁する樹脂部品を有し、前記電線を巻回した前記樹脂部品を前記ステータコアに保持し、該ステータコアの外径側に位置する前記樹脂部品の外側に突起を設け、該突起の左右に有する2つの壁に対し前記コイルのコイル端末を沿わせて位置決めしたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記突起の左右に有する2つの壁のうち、少なくとも1つの壁を斜めに形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータの小形化を図りつつ、スロット内のコイル占積率を高め、コイルの巻終り端末の位置が安定し、組立作業性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のモータに構成されるボビンを示す斜視図である。
【図2】本発明のモータを示す断面図である。
【図3】(a)はステータコアを示し、(b)はステータコアに対しボビンにコイルを巻線したものを組立てた状態を示す外観図である。
【図4】本発明の要部を示す外観図であり、(a)は一方の溝に対し他方の溝を斜めに形成したものを示し、(b)は一方の溝1aの幅を電線の素材径よりも比較的広く形成した変形例を示している。
【図5】本発明の他の実施例におけるボビンを示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施例における要部を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図2は本発明のモータの断面図を示す。このモータは外転形モータ(アウターロータ型モータ)であり、ステータコア2はハウジング4に組立てられており、その外径側にロータ5が配置される構造となっている。
【0015】
図3(a)はステータコア2を示し、図3(b)はステータコア2に対し、ボビン1に電線を巻回して成るコイル3を組立てた外観図を示しており、図3(b)に示すように、ボビン1に巻回されるコイル3には、巻始めのコイル端末3aと巻終りのコイル端末3bを有している。
【0016】
コイル3が配置されるステータコア2のスロット6の形状は、ステータコア2の外径方向(図3(a)上方)に行くに従い、幅が広くなっている。このため、電線の巻回数を多くすると、コイル3の巻終りのコイル端末3b側は、図3(b)に示すように、ステータコア2の外径側に近いところにも配置されることになる。
【0017】
ステータコア2に回転磁界を発生させるためには、巻始めのコイル端末3aと巻終りのコイル端末3bを接続する必要があり、これらがステータコア2の外径側に配置されるロータ5との接触を防ぐため、コイル端末3a、コイル端末3bの接続は、ステータコア2の内径側で行う。
【0018】
ステータコア2に対し、ボビン1に電線を巻回して成るコイル3を組立する際に、巻始めのコイル端末3aは、ステータコア2の内径側に位置するボビン1の内側の鍔部9に設けられた溝1cを通してあり、後から巻回された電線によって固定されているが、巻終りのコイル端末3bは巻回された電線では固定されていない。
【0019】
図1に示すように、本発明のボビン1には、外側と内側に鍔部8,9を有しており、ステータコア2の外径側に位置するボビン1の外側の鍔部8には2つの溝1a,1bが形成されており、これら2つの溝1a,1bの間には突起7が設けられ、突起7の左右には壁7a,7bを有している。そして、図3(b)に示すように、コイル3の巻終り側のコイル端末3bを溝1aと溝1bに通し、突起7の左右の壁7a,7bに沿わせることにより固定することで、コイル3とコイル端末3bは互いに隣り合っているが、スロット6内でコイル端末3bがコイル3に対し干渉することなく、モータの組立作業を行う事ができる。
【0020】
また、2つの溝1aと溝1bは、図4に示すように、溝を通る巻終りのコイル端末3bが折れ曲った頂点とステータコア2の突起部中心が一致する位置に配置することが望ましい。さらに、使用する電線の素材径により最小折れ曲がり径が決まるため、2つの溝1aと溝1bの間隔は、最小折れ曲がり径に適した間隔であることが望ましい。
【0021】
また、溝1a及び壁7aは、図4(a)に示すように、スロット6から巻終りのコイル端末3bが出てくる方向を向くよう、それに対応させ斜めに形成し、巻終りのコイル端末3bを溝1aに通し易くしているが、図4(b)に示すように、一方の溝1aの幅を電線の素材径よりも比較的広くすることで、巻終りのコイル端末3bを溝1aに通し易くすることもできる。
【0022】
次に、図5により他の実施例について説明する。同図に示すように、図5のボビン1は、外側の鍔部8に溝1a,1bは設けられていないが、左右に壁7a,7bを有する突起7が設けられている。そして、突起7の壁7a,7bに巻終りのコイル端末3bを沿わせ、このコイル端末3bを、内側の鍔部9に設けた溝1cに通すことでも、図1〜図4により説明したボビン1と同じようにコイル端末3bを固定することができるので作業性を向上する事ができる。なお、図5の変形例としては、図示はしないが、内側の鍔部9に設ける溝を2つにし、この2つの溝のうち、一方の溝を巻始めのコイル端末3aを通す溝とし、他方の溝については、巻終りのコイル端末3bを通す溝として、内側の溝の用途を分けることで、接続作業時の端末の取間違いを防止することができる。これは、図1に示したボビン1において、その外側の鍔部8に溝1a、溝1bを設けた場合においても同様である。
【0023】
以上、本実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。本実施例では、ステータコア2と、電線を巻回して成るコイル3との絶縁、および、巻回された電線を保持する樹脂部品を、外側と内側に鍔部8,9を有しこれらが一体成形されたボビン1を適用しているが、これの代わりに、例えば絶縁端板に同様な溝(1a,1b,1c)を設け、このような溝に巻終りのコイル端末3bを通し、固定するようにしてもよい。また、ボビン1の材質については、絶縁機能を有するのであれば、樹脂製以外の材質であってもよい。
【0024】
また、本実施例では、巻終りのコイル端末3bを、ボビン1の外側に設けた溝に通しているが、図6に示すように、電線の素材径よりも溝1bの幅を比較的広くすることで、巻始めのコイル端末3aもボビン1の外側に設けた溝1a,1bに通すことも可能であり、ボビンの電線が巻回される部位の幅、コイルの電線径や巻回数によっては、電線をステータコア2の外側から巻回を始めることにより、コイルの電線の収まりを改善し、多くの電線を巻回する事が可能となり、モータを小形化することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ボビン(樹脂部品)
1a 溝
1b 溝
1c 溝
2 ステータコア
3 コイル
3a 巻始めのコイル端末
3b 巻終りのコイル端末
4 ハウジング
5 ロータ
6 スロット
7 突起
7a 壁
7b 壁
8 外側の鍔部
9 内側の鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの外側にロータを設けたアウターロータ型モータにおいて、
前記ステータコアと電線とを絶縁する樹脂部品を有し、
前記電線を巻回した前記樹脂部品を前記ステータコアに保持し、
該ステータコアの外径側に位置する前記樹脂部品の外側に突起を設け、
該突起の左右に有する2つの壁に対し前記コイルのコイル端末を沿わせて位置決めしたことを特徴とするアウターロータ型モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアウターロータ型モータにおいて、
前記突起の左右に有する2つの壁のうち、少なくとも1つの壁を斜めに形成したことを特徴とするアウターロータ型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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