説明

アキュムレータ

【課題】ブラダが早期に摩耗損傷することはなく、良好な緩衝性能が維持できるアキュムレータを提供すること。
【解決手段】シェル1内周面のブラダ外周面が接する個所に、低摩擦材を配して、ブラダの摩耗を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータに関する。
また、本発明は、水用ポンプの蓄圧用として用いて有用なアキュムレータに関する。
更に、本発明は、上水や井戸水の蓄圧、衝撃・脈動吸収、配管の温度膨張補償、免震装置の圧力・容積・ショック吸収に有用なアキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第二図乃至第三図に記載のアキュムレータが知られている。
この種アキュムレータは、略カップ形状の金属材製のシェル10と、該シェルの開口部を塞ぐ様にシェルにかしめ固定された蓋部材20とにより形成された空間内に配置されているゴム状弾性材製ブラダ30とにより構成されている。このブラダ30は、略カップ形状であって、その開口部31がシェル10と蓋部材20との間で液密に挟持されている。またブラダは、第三図に示す様に、周方向に複数の襞状に変形するように癖付けされている。これは、ブラダが不規則に変形する事による、ブラダの早期損傷及び性能低下を来たさない為である。
そして、この様に癖付けされたブラダ30は、襞の外周側頂部32の開口部31近傍がシェル10の内周面と繰り返し擦れる態様となっていた。
特に、シェル10内壁面に錆が発生した場合は、ブラダ30外周面がシェル10内壁面と擦れると、早期にブラダ30が摩耗・損傷するという問題を招来していた。
この対策として、錆止め防止剤である下地処理(パーカライジング)をシェル10内周面に施す対策が採られていた。
しかし、この錆止め防止剤は、荒れた表面を形成している為、ブラダ30がこの錆止め防止剤層と繰り返し擦れると、ブラダ30外周面が早期に摩耗・損傷し、ブラダ30の寿命を短くしてしまうという問題を有していた。
その結果、ブラダ30に設けた襞の外周側頂部32の開口部近傍が早期に擦れ摩耗を起こしてしまう問題を有していた。
そこで、この様な問題を解決するために、第四図に示す様に、軸方向に複数の襞を設け、全体として蛇腹形状にしたブラダ300を用いる態様が検討された。
この様な態様とする事により、ブラダ300がシェル100の内周面と擦れる可能性を極力少なくする事ができ、結果として、ブラダ300の擦れ摩耗の問題を解決する事が出来た。
しかし、この種態様のブラダ300は、成形が難しく、コストが嵩む問題を招来した。
【特許文献1】特開平07−301202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のアキュムレータでは、ブラダの外周面がシェル内面と擦れ、ブラダが早期に摩耗・損傷するという問題を有していた。
特に、ブラダに襞を設ける態様のものに有っては、ブラダに設けた襞の外周側頂部の開口部近傍がシェルの内周面と繰り返し擦れるため、この個所が早期に摩耗してしまい、ブラダの寿命を短くしてしまう問題を有していた。
また、この種の問題を解決する為に、ブラダに軸方向の襞を設けた蛇腹形状とすることが検討されたが、製造が困難で、費用が嵩むという問題を招来した。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ブラダが早期に摩耗損傷することはなく、良好な緩衝性能が維持できるアキュムレータを提供することを目的とする。
また、本発明は、高い耐久性能が期待できるアキュムレータを提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、高圧の流体圧が作用しても、ブラダの異状変形を抑止できるアキュムレータを提供することを目的とする。
更に、本発明は、緩衝性能を損なうことなく、ブラダの耐久性を向上させたアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアキュムレータは、略カップ形状の金属材製のシェルと、該シェルの開口部を塞ぐとともに該開口部にかしめ固定された蓋部材と、該シェル内に配置され、略カップ形状であって、その開口部がシェルの開口部近傍に液密に保持されているゴム状弾性材製ブラダとからなり、該シェルと該ブラダとによって囲まれる気体室には圧縮気体が封入され、該蓋部材とブラダとによって囲まれる液体室には、該蓋部材に設けた液体導入孔を介して外部から液体が導入されるアキュムレータにおいて、該シェル内周面の前記ブラダ外周面が接する個所に低摩擦材を配したものである。
【0007】
本発明のアキュムレータのブラダは、周方向に複数の襞状に変形するように癖付けされことにより、ブラダの変形が容易に行え、ブラダの寿命も長くする事が出来る。
【0008】
また、本発明のアキュムレータは、低摩擦材(7)として樹脂コーティング材を使用しているため、施行が容易で、ブラダの摩耗低減効果も大きいものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のアキュムレータによれば、長期間安定した緩衝効果を期待することができる。
また、請求項2記載の発明のアキュムレータによれば、周方向に複数の襞状に変形するように癖付けされことにより、ブラダの変形が容易に行え、ブラダの寿命も長くする事が出来、結果として長期間安定した緩衝効果を期待することができる。
更に、請求項3記載の発明のアキュムレータによれば、低摩擦材(7)として樹脂材を使用しているため、施行が容易で、ブラダの摩耗低減効果も大きいものである。
更に又、低摩擦材を樹脂コーティングにより施すことにより、より安価に、より確実に低摩擦材層を設ける事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係るアキュムレータは、略カップ形状の金属材製のシェル1と、該シェル1の開口部1aを塞ぐ様にシェル1にかしめ固定された蓋部材2とにより形成された空間内に配置されているゴム状弾性材製ブラダ3とにより構成されている。
そして、このブラダ3により、シェル1内は、圧縮性流体である窒素ガスがガス封入孔1bから封入されている気体室4と、外部から液体が導入される液体室5とに区分けされている。
このブラダ3は、略カップ形状であって、その開口部3aがシェル1と蓋部材2との間で液密に挟持されている。またブラダ3は、第三図に示す様に、周方向に複数の襞状に変形するように癖付けされている。これは、ブラダが不規則に変形する事による、ブラダの早期損傷及び性能低下を来たさない為である。
また、ブラダ3の材質は、塩素化ポリエチレンゴムを使用しているが、ブチルゴム、二トリルゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム等の他のゴム状弾性体が用途に応じ適宜選択して使用される。
更に、蓋部材2は、略皿形状で、その中心部に、管状の液体導入孔6が設けられ、その端部外周には、相手取り付け部に螺子固定する為の螺子部2aが形成されている。そして、この螺子部2aの付け根部には相手部材と液密に保つ為に、ゴム状弾性材製0リング2bが配置されている。この蓋部材2の材質は、繊維状補強材が入ったポリプロピレン樹脂であるが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等の他の樹脂材若しくは金属材が用途に応じ適宜選択して使用される。
更に又、シェル1の内周面であって、開口部1a近傍には、全周に渡って、低摩擦材としてエポキシ系の樹脂層7が設けられている。この樹脂層としては、ポリエステル系、弗素樹脂系、アクリル系、メラミン系、ウレタン系等の各種の樹脂が用途に応じ適宜選択して使用される。また、この樹脂層はコーティング塗装により設けても良く、樹脂フィルムをシェル1に接着する形で設けても良い。
そして、ブラダは、襞の外周側頂部の開口部近傍がシェル1の内周面に設けた樹脂層7と擦れる態様となっている。
【0011】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、長期間使用しても安定した緩衝機能が発揮できるアキュムレータとすることができる。
【0012】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アキュムレータにかかる発明の実施の形態を示す図である。
【図2】アキュムレータにかかる従来技術の形態を示す図である。
【図3】アキュムレータにかかる従来技術のブラダの形態を示す図である。
【図4】アキュムレータにかかる従来技術の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1‥‥シェル、2‥‥蓋部材、3‥‥ブラダ、4‥‥気体室、5‥‥液体室、6‥‥液体導入孔、7‥‥低摩擦材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略カップ形状の金属材製のシェル(1)と、前記シェル(1)の開口部を塞ぐとともに該開口部にかしめ固定された蓋部材(2)と、前記シェル(1)内に配置され、略カップ形状であって、その開口部が前記シェルの開口部近傍に液密に保持されているゴム状弾性材製ブラダ(3)とからなり、前記シェル(1)と前記ブラダ(3)とによって囲まれる気体室(4)には圧縮気体が封入され、前記蓋部材(2)とブラダ(3)とによって囲まれる液体室(5)には、前記蓋部材に設けた液体導入孔(6)を介して外部から液体が導入されるアキュムレータにおいて、前記シェル(1)内周面の前記ブラダ外周面が接する個所に低摩擦材(7)を配したことを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】
前記ブラダ(1)が周方向に複数の襞状に変形するように癖付けされことを特徴とする請求項1記載のアキュムレータ。
【請求項3】
前記低摩擦材(7)が樹脂材であることを特徴とする請求項1または2記載のアキュムレータ。
【請求項4】
前記低摩擦材(7)が樹脂コーティング材であることを特徴とする請求項1乃至3記載のアキュムレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate