説明

アキュムレータ

【課題】液体室に閉じ込められた液体が熱膨張したときに液体室の圧力を調整して低減させることができ、しかもその際、ステーの内周空間を有効活用することができるアキュムレータを提供する。
【解決手段】圧力配管に接続されるオイルポートを備えるハウジングと、ハウジング内部を液体室および気体室に仕切るベローズおよびベローズキャップと、オイルポート上に設けられたステーと、キャップにより相対変位可能に保持され、キャップがステー方向へ移動したときにステー内周に挿入されるピストンと、ピストンがステー内周に挿入されたときにピストン・ステー間の間隙をシールし液体室を閉塞するシールとを有する。そして、シールにより閉塞された液体室の圧力が熱膨張により高まったときにピストンがキャップから離れる方向に相対変位することにより液体室の容積を拡大し圧力を低下させる液体室圧力調整機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧装置または脈圧減衰装置等として用いられるアキュムレータに関するものである。本発明のアキュムレータは例えば、自動車等車両における油圧配管等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図18に示すように、機器の圧力配管に接続されるオイルポート53を備えるアキュムレータハウジング52の内部にベローズ54およびベローズキャップ55を配置してハウジング52の内部空間をオイルポート53に連通する液体室56と高圧ガスを封入する気体室57とに仕切るようにしたアキュムレータ51が知られており、このアキュムレータ51においては、機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が極端に低下すると、ベローズキャップ55に設けた端面シール(軸方向シール)58がオイルポート53上に設けたステー59の端面部に当接して液体室(ベローズ54およびシール58間の空間)56を閉塞する。したがって閉塞された液体室56に一部の液体(油)が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力と気体室57に封入された気体(ガス)の圧力とが均衡するので、ベローズ54に過大な応力が作用せずよってベローズ54に塑性変形が発生するのを抑制することが可能とされている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような機器の運転停止などによる圧力低下が低温で行なわれ、その状態で温度が上昇した場合、液体室56に閉じ込められた液体および気体室57に封入された気体はそれぞれ熱膨張し圧力が上昇する。この場合、液体は気体に比べ圧力の上昇度合いが大きいが、ベローズキャップ55における受圧面積が気体側に比べ小さく設定されているので、液体圧が気体圧よりもかなり大きくならないとベローズキャップ55は移動しない。したがってベローズ54内外の液体圧および気体圧に数MPa程度にも及ぶ大きな圧力差が発生することがあり、このように大きな圧力差が発生するとベローズ54に塑性変形(異常変形や破損など)が発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−336502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、液体室に閉じ込められた液体が熱膨張したときに液体室の圧力を調整してこれを低減させることができ、もってベローズ内外に大きな圧力差が発生してベローズに塑性変形が発生するのを抑制することができ、しかもその際、従来デッドスペースであったステーの内周空間を有効活用することができるアキュムレータを提供することを目的とする。またこれに加えて、液体室に閉じ込められた液体が熱収縮したときにも液体室の圧力を調整してこれを増大させることができ、もってベローズ内外に大きな圧力差が発生してベローズに塑性変形が発生するのを抑制することができるアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるアキュムレータは、機器の圧力配管に接続されるオイルポートを備えるアキュムレータハウジングと、前記ハウジングの内部に組み込まれて前記ハウジングの内部空間を前記オイルポートに連通する液体室および高圧ガスを封入する気体室に仕切るベローズおよびベローズキャップと、前記ハウジングの内部で前記オイルポート上に設けられた筒状内周面を備えるステーと、前記ベローズキャップによってそのストローク方向に相対変位可能に保持されるとともに前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へ移動したときに前記ステーの内周空間に挿入されるピストンと、前記ピストンが前記ステーの内周空間に挿入されたときに前記ピストンおよび前記ステー間の径方向間隙をシールして前記液体室を閉塞する径方向シールとを有し、前記圧力配管の圧力が前記気体室の圧力よりも低下した状態では、前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へ移動し、前記ピストンが前記ステーの内周空間に挿入され、前記径方向シールが前記径方向間隙をシールして前記液体室を閉塞し、前記径方向シールによって閉塞された前記液体室の圧力が熱膨張により高まったときに前記ピストンが前記ベローズキャップから離れる方向へ相対変位することにより前記液体室の容積を拡大して前記圧力を低下させる液体室圧力調整機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2によるアキュムレータは、上記した請求項1記載のアキュムレータにおいて、前記液体室圧力調整機構は、前記径方向シールによって閉塞された前記液体室の圧力が熱収縮により低められたときに前記ピストンが前記ベローズキャップに近付く方向へ相対変位することにより前記液体室の容積を縮小して前記圧力を増大させる機能を併せ持つことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3によるアキュムレータは、上記した請求項1または2記載のアキュムレータにおいて、前記ピストンには、当該ピストンを復帰動させるためのバネ手段が組み付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4によるアキュムレータは、上記した請求項1、2または3記載のアキュムレータにおいて、前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へのストローク限は、前記ベローズキャップが前記ステーに直接当接することによって規定される構造を有することを特徴とする。
【0010】
更にまた、本発明の請求項5によるアキュムレータは、上記した請求項1、2、3または4記載のアキュムレータにおいて、前記径方向シールは、前記ステーの内周面または前記ピストンの外周面に保持されるリップパッキンを備え、前記リップパッキンのシールリップが前記ピストンの外周面または前記ステーの内周面に摺動可能に密接する構造を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する本発明のアキュムレータは、以下のように作動する。
【0012】
(1)定常作動時・・・
上記したように本発明のアキュムレータではベローズキャップにピストンが相対変位可能に保持されるとともにピストンおよびステー間の径方向間隙をシールする径方向シールが設けられているが、アキュムレータの定常作動時、径方向シールはピストンおよびステー間の径方向間隙をシールしていないので、液体室は閉塞されていない。したがって圧力配管からオイルポートを介して液体室へそのときどきの圧力を備える液体が随時導入されるので、ベローズキャップがピストンとともに液体圧および気体圧が均衡するように随時移動する。
【0013】
(2)圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)・・・
機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が極端に低下し気体室の圧力を下回る状態になると、液体室内の液体がオイルポートから徐々に排出され、ベローズキャップがステーに近付く方向へ移動する。ベローズキャップがステーに近付く方向へ移動すると、ピストンがステーの内周空間に挿入され、次いで径方向シールがピストンおよびステー間の径方向間隙をシールして液体室を閉塞する。したがって閉塞された液体室に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力と気体室に封入された気体の圧力とが均衡するので、ベローズに過大な応力が作用せずよってベローズに塑性変形が発生するのが抑制される。
【0014】
(3)熱膨張時・・・
液体室が閉塞された状態で雰囲気温度の上昇等によって液体室に閉じ込められた液体が熱膨張すると、この熱膨張による圧力の増大を受けてピストンがベローズキャップから離れる方向に相対変位し、液体室の容積が拡大し、液体室の圧力が低下する。径方向シールは端面シールではなく往復動シールであるので、ピストンがベローズキャップに対し相対変位してもピストンおよびステー間の径方向間隙をシールし続け、液体室を閉塞し続ける。したがってベローズ内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズに過大な応力が作用せずよってベローズに塑性変形が発生するのが抑制される。またこのとき、ピストンはステーの内周空間に深く進入するので、従来デッドスペースであったステーの内周空間が有効活用される。ピストンにはこれを復帰動させるためのバネ手段を組み付けるようにしても良い。
【0015】
(4)熱収縮時・・・
上記(3)のように本発明における液体室圧力調整機構は、液体室に閉じ込められた液体が熱膨張するときに対応作動するが、ピストンが往復動するものであることを利用して、液体室に閉じ込められた液体が熱収縮するときにも対応作動させることが考えられる。すなわち、液体室が閉塞された状態で雰囲気温度の下降等によって液体室に閉じ込められた液体が熱収縮すると、この熱収縮による圧力の低下を受けてピストンがベローズキャップに近付く方向に相対変位し、液体室の容積が縮小し、液体室の圧力が増大する。径方向シールは端面シールではなく往復動シールであるので、ピストンがベローズキャップに対し相対変位してもピストンおよびステー間の径方向間隙をシールし続け、液体室を閉塞し続ける。したがってベローズ内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズに過大な応力が作用せずよってベローズに塑性変形が発生するのが抑制される。ピストンにはこれを復帰動させるためのバネ手段を組み付けるようにしても良い。尚、当該機構の初期設定として、ピストンをベローズキャップに対する相対変位ストロークの中間位置に停止させておくと、ピストンは上記(3)熱膨張時にも(4)熱収縮時にも直ちに対応作動することが可能である。この場合には、ピストンのストローク方向両側にそれぞれバネ手段を組み付けるのが好ましい。
【0016】
上記(2)の作動でベローズキャップがステーに近付く方向へ移動するとき、そのストローク限はベローズキャップがステーに直接当接することによって規定するようにしても良く、この場合にはベローズキャップがステーに当接する直前に、または当接するのと同時に径方向シールがピストンおよびステー間の径方向間隙をシールして液体室を閉塞する。
【0017】
径方向シールとしては、特にその種類や形状を限定されないが、例えばステーの筒状内周面に保持されるリップパッキンとするのが好適であり、この場合にはそのシールリップがピストンの外周面に摺動可能に密接する。また径方向シールとしては、ピストンの外周面に保持されるリップパッキンとしても良く、この場合にはそのシールリップがステーの筒状内周面に摺動可能に密接する。径方向シールの利点としては、端面シールではなく往復動シールであるので、ピストンが変位してもそのシール性が維持され変化しないことが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明のアキュムレータによれば、液体室に閉じ込められた液体が熱膨張したときの圧力を、ベローズキャップに保持されたピストンがベローズキャップから離れる方向へ相対変位することにより調整し低減させることが可能とされている。したがってベローズ内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズに過大な応力が作用せずよってベローズに塑性変形が発生するのを抑制することができ、これによりベローズ延いてはアキュムレータの耐久性を向上させることができる。またこのとき、ピストンがステーの内周空間に深く進入するので、従来デッドスペースであったステーの内周空間を有効活用することができる。また、請求項2によるアキュムレータによれば、液体室に閉じ込められた液体が熱収縮したときの圧力を、ベローズキャップに保持されたピストンがベローズキャップに近付く方向へ相対変位することにより調整し増大させることが可能とされている。したがってこの場合にもベローズ内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズに過大な応力が作用せずよってベローズに塑性変形が発生するのを抑制することができ、これによりベローズ延いてはアキュムレータの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施例に係るアキュムレータの断面図
【図2】図1の要部拡大図であって同アキュムレータの定常作動時の状態を示す要部拡大断面図
【図3】同アキュムレータの圧力低下時の状態を示す要部拡大断面図
【図4】同アキュムレータの熱膨張時の状態を示す要部拡大断面図
【図5】本発明の第二実施例に係るアキュムレータの定常作動時の状態を示す要部断面図
【図6】同アキュムレータの圧力低下時の状態を示す要部断面図
【図7】同アキュムレータの熱膨張時の状態を示す要部断面図
【図8】本発明の第三実施例に係るアキュムレータの要部断面図
【図9】本発明の第四実施例に係るアキュムレータの要部断面図
【図10】本発明の第五実施例に係るアキュムレータの定常作動時の状態を示す要部断面図
【図11】同アキュムレータの圧力低下時の状態を示す要部断面図
【図12】同アキュムレータの熱膨張時の状態を示す要部断面図
【図13】同アキュムレータの熱収縮時の状態を示す要部断面図
【図14】本発明の第六実施例に係るアキュムレータの定常作動時の状態を示す要部断面図
【図15】同アキュムレータの圧力低下時の状態を示す要部断面図
【図16】同アキュムレータの熱膨張時の状態を示す要部断面図
【図17】同アキュムレータの熱収縮時の状態を示す要部断面図
【図18】従来例に係るアキュムレータの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)
(1−1)本発明は、金属ベローズ型アキュムレータに関する。本発明は金属ベローズ型アキュムレータを使用する分野全般で用いられる。
(1−2)本発明は、外ガスタイプまたは内ガスタイプのアキュムレータにおいて、ゼロダウン時に液体室に閉じ込められた液体と封入ガスが温度変化によって膨張もしくは収縮したときに生じる圧力差を吸収させる手段を提案する。
(1−3)本発明は、気体室と液体室の圧力が均衡し続けるよう、ベローズキャップの液体室側に設けられたピストンを変位させることによって、液体室の容積を増減させて圧力差を吸収する。
(1−4)具体的には以下の構成とする。
(1−4−1)シェルと、前記シェル内に配置され、一端がオイルポートに固着され、他端がベローズキャップにより塞がれることにより前記シェルの内部を気体室と液体室とに分離している金属材製ベローズと、前記ベローズキャップの液体室側に設けられたロッドと、前記ロッドに抱くように設置され、前記ロッドによって動きを制限されるピストンと、前記液体室に液体を導入する導入孔を取り囲むように配置され、前記金属材製ベローズの収縮限度を規定するステーと、前記ステーに配置され、前記液体室と前記導入孔との間をシールするシール手段とよりなる金属ベローズ式アキュムレータであって、ゼロダウン時は、前記ベローズキャップと前記ステーが当接し、同時に前記ピストンが前記シール手段に挿入されることによって前記液体室が閉塞されることを特徴とするアキュムレータ。
(1−4−2)ゼロダウン時において、前記液体室に閉じ込められた液体が膨張または収縮することによって、前記ピストンが液体圧およびガス圧が均衡する方向へ変位することを特徴とする前記(1−4−1)項記載のアキュムレータ。
(1−4−3)前記ピストンが液体圧およびガス圧が均衡する方向へ移動したときでも、前記ピストンの挿入状態が維持され、前記シール手段によって前記液体室が閉塞されることを特徴とする前記(1−4−1)項または(1−4−2)項記載のアキュムレータ。
(1−4−4)前記ピストンを前記ベローズキャップに近付ける方向に弾性付勢する第一バネ手段と、前記ピストンを前記ベローズキャップから遠ざける方向に弾性付勢する第二バネ手段とを有し、前記ピストンは前記第一バネ手段の弾性に抗して前記ベローズキャップから離れる方向へ変位するとともに前記第一バネ手段の弾性によって前記ベローズキャップに近付く方向へ復帰動する構造と、前記ピストンは前記第二バネ手段の弾性に抗して前記ベローズキャップに近付く方向へ変位するとともに前記第二バネ手段の弾性によって前記ベローズキャップから離れる方向へ復帰動する構造を特徴とする前記(1−4−1)項、(1−4−2)項または(1−4−3)項記載のアキュムレータ。
【0021】
(2)
(2−1)本発明は、金属ベローズ型アキュムレータに関する。本発明は金属ベローズ型アキュムレータを使用する分野全般で用いられる。
(2−2)本発明は、外ガスタイプまたは内ガスタイプのアキュムレータにおいて、ゼロダウン時に液体室に閉じ込められた液体と封入ガスが温度変化によって膨張もしくは収縮したときに生じる圧力差を吸収させる手段を提案する。
(2−3)本発明は、気体室と液体室の圧力が均衡し続けるよう、ベローズキャップの液体室側に設けられたピストンを変位させることによって、液体室の容積を増減させて圧力差を吸収する。
(2−4)具体的には以下の構成とする。
(2−4−1)シェルと、前記シェル内に配置され、一端がオイルポートに固着され、他端がベローズキャップにより塞がれることにより前記シェル内部を気体室と液体室とに分離している金属ベローズと、前記ベローズキャップの液体室側に設けられたロッドと、前記ロッドに抱くように設置され、前記ロッドによって動きを制限されるピストンと、前記液体室に液体を導入する導入孔を取り囲むように配置され、前記金属ベローズの収縮限度を規定するステーと、前記ピストンに配置され、前記液体室と前記導入孔との間をシールするシール手段とよりなる金属ベローズ式アキュムレータであって、前記ベローズキャップと前記ステーが当接するゼロダウン時に、前記シール手段が前記ステーの内周側に挿入されることによって前記液体室が閉塞されることを特徴とするアキュムレータ。
(2−4−2)ゼロダウン時において、前記液体室に閉じ込められた液体が膨張または収縮することによって、前記ピストンが液体圧およびガス圧が均衡する方向へ変位することを特徴とする前記(2−4−1)項記載のアキュムレータ。
(2−4−3)ゼロダウン時において、前記ピストンが液体圧およびガス圧が均衡する方向へ変位したとき、前記シール手段の挿入状態が終始維持され、前記液体室が閉塞され続けることを特徴とする前記(2−4−1)項または(2−4−2)項記載のアキュムレータ。
(2−4−4)前記ピストンを前記ベローズキャップに近付ける方向に弾性付勢する第一バネ手段と、前記ピストンを前記ベローズキャップから遠ざける方向に弾性付勢する第二バネ手段とを有し、前記ピストンは前記第一バネ手段の弾性に抗して前記ベローズキャップから離れる方向へ変位するとともに前記第一バネ手段の弾性によって前記ベローズキャップに近付く方向へ復帰動する構造と、前記ピストンは前記第二バネ手段の弾性に抗して前記ベローズキャップに近付く方向へ変位するとともに前記第二バネ手段の弾性によって前記ベローズキャップから離れる方向へ復帰動する構造を特徴とする前記(2−4−1)項、(2−4−2)項または(2−4−3)項記載のアキュムレータ。
(2−5)シール手段を外周シールにすることにより、部品数を減らすことができる、シール溝部の加工(部品加工)と寸法検査が容易になる、等の利点がある。
【実施例】
【0022】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0023】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るアキュムレータ1の全体断面を示している。図2ないし図4は同アキュムレータ1の要部拡大断面を示している。各図における作動の状態として、図1および図2は定常作動時、図3は圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)、図4は液体室7に閉じ込められた液体および気体室8に封入された気体がそれぞれ熱膨張した時の状態をそれぞれ示している。
【0024】
当該実施例に係るアキュムレータ1は、ベローズ5として金属ベローズを用いる金属ベローズ型アキュムレータであって、以下のように構成されている。
【0025】
すなわち図1に示すように、図示しない機器の圧力配管に接続されるオイルポート4を備えるアキュムレータハウジング2が設けられており、このハウジング2の内部にベローズ5およびベローズキャップ6が配置されてハウジング2の内部空間が、オイルポート4のポート穴(液体導入孔)4aに連通する液体室(液室)7と、高圧ガス(例えば窒素ガス)を封入する気体室(ガス室)8とに仕切られている。ハウジング2としては有底円筒状のシェル3と、このシェル3の一端開口部に固定(溶接)されたオイルポート4とを組み合わせたものとされているが、ハウジング2の部品割り構造は特に限定されるものではなく、例えばシェル3とオイルポート4は一体であっても良く、シェル3の底部はシェル3と別体のエンドカバーであっても良く、何れにしてもシェル3の底部またはこれに相当する部品には、気体室8に気体(ガス)を注入するための注入口9が設けられ、注入後、プラグ10で閉じられている。符号11は六角ナット付ピンである。ハウジング2内すなわち液体室7にはオイルポート4のポート穴4aを通じて圧力配管側の液体(圧油)が出入りする。
【0026】
ベローズ5としては、その固定端(下端)がハウジング2のポート側内面であるオイルポート4の内面に固定(溶接)されるとともにその遊動端(上端)に円板状のベローズキャップ6が固定(溶接)されており、よって当該アキュムレータ1はベローズ5の外周側に気体室8が配置されるとともにベローズ5の内周側に液体室7が配置される外ガスタイプのアキュムレータとされている。ベローズキャップ6の外周部には、ハウジング2の内面に対しベローズ5およびベローズキャップ6が直接接触しないように制振リング12が取り付けられているが、この制振リング12はシール作用を奏さず、よって高圧ガスを上下に通過させるものである。符号13はプロテクションリングである。
【0027】
オイルポート4の内面上に内部台座としてのステー14が配置され、このステー14の外周側に位置してこのステー14とシェル3との間に上記ベローズ5が配置されている。ステー14は、全体として筒状を呈し、筒状内周面14aを備え、その一端(下端)をもってオイルポート4の内面に固定(溶接)されているが、オイルポート4に対して一体に成形されたものであっても良い。また図2に拡大して示すようにステー14の先端部近傍の内周面14aに環状の装着溝14bが設けられ、この装着溝14bに径方向シール手段としてのリップパッキン(リップシール)15が装着されている。リップパッキン15は、所定のゴム状弾性体によって環状に成形され、外周側の取付部15aの内周側にシールリップ15bを一体に備えている。シールリップ15bは、そのリップ端をベローズキャップ6のほう(上方)へ向けて配置され、後記するピストン17が挿入されて来るとその外周面に摺動自在に密接し、ピストン17およびステー14間の径方向間隙c(図3参照)をシールし、液体室(ベローズ5およびリップパッキン15間の空間)7を閉塞する。またこのステー14は、装着溝14bの加工を容易化するため軸方向2分割構造とされ、分割体14c,14d同士が互いに固定(溶接)されている。ベローズキャップ6のストロークの一端限(下端限)は図3に示すように、ベローズキャップ6がステー14の先端面14eに直接当接することによって規定される。ベローズキャップ6がステー14の先端面14eに当接した状態でステー14の外周側空間7aと内周側空間7bとを確実に連通させるため、ステー14の先端面14eにおける円周上一部には該面を径方向に貫通する溝状の流路14fが形成されている。
【0028】
また図2に示すように、ベローズキャップ6におけるオイルポート4側の面(下面)にロッド16が設けられており、このロッド16に対してピストン17がベローズキャップ6のストローク方向(上下方向)に相対変位可能に保持されている。すなわち円板状を呈するベローズキャップ6におけるオイルポート4側の面の平面中央にロッド16が一体にまたは別体で設けられ、このロッド16に対してピストン17がベローズキャップ6のストローク方向(上下方向)に相対変位可能に保持されている。ロッド16の先端部(下端部)外周には外向き鍔状の係合部16aが設けられている。一方、ピストン17は、筒状部17aの一端(下端)に底面部17bを備えて有底円筒状に形成されており、筒状部17aの他端部(上端部)内周に内向き鍔状の係合部17cが設けられている。ベローズキャップ6ないしロッド16に対するピストン17の相対変位の一端限(上端限)は、ピストン17のベローズキャップ6側の端面(上端面)17dがベローズキャップ6に当接することにより規定され、他端限(下端限)は、内向き鍔状の係合部17cが外向き鍔状の係合部16aに当接することにより規定される。またベローズキャップ6ないしロッド16に対するピストン17の相対変位の初動位置は図1および図2に示すように、液体室7の容積拡大率を可及的に大きく設定すべくピストン17のベローズキャップ6側の端面17dがベローズキャップ6に当接した相対変位の一端限位置(上端限位置)とされ、この初動位置でピストン17はロッド16に対する摩擦抵抗力(筒状部17a内周面の係合部16a外周面に対する摩擦抵抗力)によってロッド16に保持され、この摩擦抵抗力を上回るほどの推力となる圧力がピストン17の内部空間17eに導入されると、ピストン17がベローズキャップ6から離れる方向(下方向)へ相対変位する。液体室7の圧力がピストン17の内部空間17eに導入され易いようにピストン17のベローズキャップ6側の端面17dにおける円周上一部には該面を径方向に貫通する溝状の流路17fが形成され、また外向き鍔状の係合部16aの外周面における円周上一部には該面を軸方向に貫通する溝状の流路16bが形成されている。
【0029】
ピストン17は図2から図3へと示すように、ベローズキャップ6がステー14に近付く方向(下方向)へ移動したときにステー14の内周空間14gに挿入され、リップパッキン15の内周部に挿入される。ピストン17がリップパッキン15の内周部に挿入されると、リップパッキン15のシールリップ15bがピストン17の外周面に摺動自在に密接し、ピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし、液体室(ベローズ5およびリップパッキン15間の空間)7を閉塞する。ベローズキャップ6はステー14に当接して停止する。ピストン17がリップパッキン15の内周部に挿入され易いようにピストン17の筒状部17aの一端部外周面は先細のテーパー面状に形成されている。またピストン17は、これをロッド16へ組み付け易いように軸方向2分割構造とされ、分割体17g,17h同士が互いに固定(溶接)されている。
【0030】
また、ベローズキャップ6に設けられたロッド16、ロッド16に相対変位可能に組み付けられたピストン17、ならびにピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールする径方向シールとしてのリップパッキン15はこれらによって、リップパッキン15により閉塞された液体室7の圧力が熱膨張により高まったときにピストン17がベローズキャップ6から離れる方向(下方向)に相対変位することにより液体室7の容積を拡大して圧力を低下させる液体室圧力調整機構18を構成している。
【0031】
つぎに、上記構成のアキュムレータ1の作動を説明する。
【0032】
(1)定常作動時・・・
上記したように図2はアキュムレータ1の定常作動時の状態を示している。オイルポート4は図示しない機器の圧力配管に接続されている。この定常作動時において、ピストン17はステー14の内周空間14gに挿入されておらず、リップパッキン15はピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールしていないので、液体室7は閉塞されていない。したがって圧力配管からオイルポート4のポート穴4aを介して液体室7へそのときどきの圧力を備える液体が随時導入されるので、ベローズキャップ6がピストン17とともに液体圧および気体圧が均衡するように随時移動する。
【0033】
(2)圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)・・・
上記(1)の状態から機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が極端に低下し気体室8の圧力を下回る状態になると、液体室7内の液体がオイルポート4のポート穴4aから徐々に排出され、ベローズキャップ6がステー14に近付く方向(下方向)へ移動し、図3に示すようにステー14の先端面14eに直接当接して停止する。ベローズキャップ6がステー14に対して近付く方向へ移動すると、ピストン17がステー14の内周空間14gに挿入され、次いでリップパッキン15のシールリップ15bがピストン17の外周面に摺動自在に密接してピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし、液体室7を閉塞する。したがって閉塞された液体室7に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力と気体室8に封入された気体の圧力とが均衡するので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に破損や異常変形などの塑性変形が発生するのが抑制される。
【0034】
(3)熱膨張時・・・
上記(2)の状態すなわちリップパッキン15によって液体室7が閉塞された状態で、雰囲気温度の上昇等によって液体室7に閉じ込められた液体および気体室8に封入された気体が熱膨張すると、液体のほうが熱膨張量が大きいので、この熱膨張による高圧を受けて図4に示すようにピストン17がベローズキャップ6から離れる方向(下方向)へ相対変位し、液体室7の容積が拡大し、液体室7の圧力が低下する。リップパッキン15は往復動シールであるので、ピストン17がベローズキャップ6に対し相対変位してもピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし続け、液体室7を閉塞し続ける。したがってベローズ5内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に塑性変形が発生するのが抑制される。このとき、ピストン17はステー14の内周空間14gに深く進入するので、ステー14の内周空間14gが有効活用される。尚、このとき、ベローズキャップ6はステー14の先端面14eに当接したままで移動せず、よってベローズ5も伸縮しない。
【0035】
(4)圧力配管の圧力低下の解消時・・・
上記(2)の状態が解消されてオイルポート4のポート穴4aから液体が流入すると、この液体の圧力がピストン17に作用してピストン17をベローズキャップ6に近付く方向(上方向)へ相対変位(復帰動)させ、引きつづきピストン17と共にベローズキャップ6をステー14の先端面14eから離れる方向(上方向)へ移動させる。したがってピストン17がリップパッキン15から離れて上記(1)の状態に復することになる。
【0036】
上記構成のアキュムレータ1によれば、液体室7に閉じ込められた液体が熱膨張したときの圧力を、ベローズキャップ6に保持されたピストン17がベローズキャップ6から離れる方向へ相対変位することにより調整し低減させることが可能とされている。したがってベローズ5内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に塑性変形が発生するのを抑制することができる。また、このとき、ピストン17がステー14の内周空間14gの深くまで進入するので、ステー14の内周空間14gを有効活用することができる。
【0037】
上記第一実施例に記載のアキュムレータ1はその構成を以下のように付加、変更することが考えられる。
【0038】
第二実施例・・・
上記第一実施例では、径方向シールとしてのリップパッキン15がステー14の内周面14aに保持されてそのシールリップ15bがピストン17の外周面に摺動可能に密接する構造とされているが、これに代えて、径方向シールとしてのリップパッキン15がピストン17の外周面に保持されてそのシールリップ15bがステー14の内周面14aに摺動可能に密接する構造とする。このため図5ないし図7に示す第二実施例では、ピストン17の筒状部17aの外周面に装着溝17iが設けられ、この装着溝17iにリップパッキン15が装着され、そのシールリップ15bがステー14の内周面14aに摺動可能に密接する構造とされている。尚、上記第一実施例における図2ないし図4に対応して、図5が定常作動時、図6が圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)、図7が液体室7に閉じ込められた液体が熱膨張した時の状態をそれぞれ示している。
【0039】
第三および第四実施例・・・
上記第一および第二実施例では、ベローズキャップ6から離れる方向へ相対変位したピストン17が、オイルポート4のポート穴4aから流入する液体の圧力を受けてベローズキャップ6に近付く方向へ復帰動する構造とされているが、これに代えて、ピストン17を復帰動させる復帰バネとしてのバネ手段を組み込むことによりピストン17を復帰動させる構造とする。このため図8に示す第三実施例では上記第一実施例の構成に加えて、ロッド16側の係合部16aとピストン17側の係合部17cとの間にバネ手段としてのウェーブ状のスプリング19が介装される構造とされ、また図9に示す第四実施例では上記第二実施例の構成に加えて、ロッド16側の係合部16aとピストン17側の係合部17cとの間にバネ手段としてのウェーブ状のスプリング19が介装される構造とされている。いずれの場合もスプリング19はピストン17をベローズキャップ6に近付ける方向に弾性付勢するものであって、ピストン17はスプリング19の弾性に抗してベローズキャップ6から離れる方向へ変位し、スプリング19の弾性によってベローズキャップ6に近付く方向へ復帰動する。尚、この場合には、上記第一実施例におけるピストン17のロッド16に対する摩擦抵抗力の設定は不要となる。
【0040】
第五実施例・・・
上記第一ないし第四実施例では、液体室圧力調整機構18は、液体室7に閉じ込められた液体が熱膨張するときに対応作動する構造とされているが、ピストン17が往復動するものであることを利用して、液体室7に閉じ込められた液体が熱収縮するときにも対応作動させることが考えられる。このため図10ないし図13に示す第五実施例では、ベローズキャップ6ないしロッド16に対するピストン17の相対変位の初動位置がその相対変位ストロークの上端限位置ではなく図10に示すように相対変位ストロークの中間位置とされ、ピストン17がこのストローク中間の初動位置から、ベローズキャップ6から離れる方向(下方向)およびベローズキャップ6に近付く方向(上方向)の双方いずれにも相対変位することが可能とされている。またこの第五実施例では、上記したようにピストン17が双方いずれにも相対変位可能とされているので、ピストン17がベローズキャップ6から離れる方向へ相対変位したときにこれを復帰動させるための第一バネ手段と、ピストン17がベローズキャップ6に近付く方向へ相対変位したときにこれを復帰動させるための第二バネ手段とがそれぞれ組み付けられており、具体的には、ロッド16側の係合部16aとピストン17側の係合部17cとの間に第一バネ手段としてのウェーブ状の第一スプリング19が介装されるとともに、ピストン17側の係合部17cとベローズキャップ6との間に第二バネ手段としてのウェーブ状の第二スプリング20が介装されている。この場合、作動は以下のようになる。
【0041】
(1)定常作動時・・・
図10は、アキュムレータ1の定常作動時の状態を示している。オイルポート4は図示しない機器の圧力配管に接続されている。この定常作動時において、ピストン17はステー14の内周空間14gに挿入されておらず、リップパッキン15はピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールしていないので、液体室7は閉塞されていない。したがって圧力配管からオイルポート4のポート穴4aを介して液体室7へそのときどきの圧力を備える液体が随時導入されるので、ベローズキャップ6がピストン17とともに液体圧および気体圧が均衡するように随時移動する。
【0042】
(2)圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)・・・
上記(1)の状態から機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が極端に低下し気体室8の圧力を下回る状態になると、液体室7内の液体がオイルポート4のポート穴4aから徐々に排出され、ベローズキャップ6がステー14に近付く方向(下方向)へ移動し、図11に示すようにステー14の先端面14eに直接当接して停止する。ベローズキャップ6がステー14に対して近付く方向へ移動すると、ピストン17がステー14の内周空間14gに挿入され、次いでリップパッキン15のシールリップ15bがピストン17の外周面に摺動自在に密接してピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし、液体室7を閉塞する。したがって閉塞された液体室7に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力と気体室8に封入された気体の圧力とが均衡するので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に破損や異常変形などの塑性変形が発生するのが抑制される。
【0043】
(3)熱膨張時・・・
上記(2)の状態すなわちリップパッキン15によって液体室7が閉塞された状態で、雰囲気温度の上昇等によって液体室7に閉じ込められた液体および気体室8に封入された気体が熱膨張すると、液体のほうが熱膨張量が大きいので、この熱膨張による圧力の増大を受けて図12に示すようにピストン17が第一スプリング19を圧縮しながらベローズキャップ6から離れる方向(下方向)へ相対変位し、液体室7の容積が拡大し、液体室7の圧力が低下する。リップパッキン15は往復動シールであるので、ピストン17がベローズキャップ6に対し相対変位してもピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし続け、液体室7を閉塞し続ける。したがってベローズ5内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に塑性変形が発生するのが抑制される。このとき、ピストン17はステー14の内周空間14gに深く進入するので、ステー14の内周空間14gが有効活用される。尚、このとき、ベローズキャップ6はステー14の先端面14eに当接したままで移動せず、よってベローズ5も伸縮しない。
【0044】
(4)熱収縮時・・・
また、上記(2)の状態すなわちリップパッキン15によって液体室7が閉塞された状態で、雰囲気温度の下降等によって液体室7に閉じ込められた液体および気体室8に封入された気体が熱収縮すると、液体のほうが熱収縮量が大きいので、この熱収縮による圧力の低下を受けて図13に示すようにピストン17が第二スプリング20を圧縮しながらベローズキャップ6に近付く方向(上方向)へ相対変位し、液体室7の容積が縮小し、液体室7の圧力が増大する。リップパッキン15は往復動シールであるので、ピストン17がベローズキャップ6に対し相対変位してもピストン17およびステー14間の径方向間隙cをシールし続け、液体室7を閉塞し続ける。したがってベローズ5内外の液体圧および気体圧が均衡し続けて大きな差圧が発生しないので、ベローズ5に過大な応力が作用せず、よってベローズ5に塑性変形が発生するのが抑制される。このとき、ピストン17はステー14の内周空間14gに深く進入するので、ステー14の内周空間14gが有効活用される。尚、このとき、ベローズキャップ6はステー14の先端面14eに当接したままで移動せず、よってベローズ5も伸縮しない。
【0045】
(5)圧力配管の圧力低下の解消時・・・
上記(2)の状態が解消されてオイルポート4のポート穴4aから液体が流入すると、この液体の圧力がピストン17に作用し、ピストン17とともにベローズキャップ6をステー14の先端面14eから離れる方向(上方向)へ移動させる。したがってピストン17がリップパッキン15から離れて上記(1)の状態に復することになる。
【0046】
したがって上記構成のアキュムレータ1によれば、液体室7に閉じ込められた液体が熱膨張したときに液体室7の圧力を調整してこれを低減させることができるとともに液体室7に閉じ込められた液体が熱収縮するときにも液体室7の圧力を調整してこれを増大させることができ、もって膨張収縮いずれの場合にもベローズ5内外に大きな圧力差が発生してベローズ5に塑性変形が発生するのを抑制することができる。
【0047】
第六実施例・・・
また、上記第五実施例では、径方向シールとしてのリップパッキン15がステー14の内周面14aに保持されてそのシールリップ15bがピストン17の外周面に摺動可能に密接する構造とされているが、これに代えて、径方向シールとしてのリップパッキン15がピストン17の外周面に保持されてそのシールリップ15bがステー14の内周面14aに摺動可能に密接する構造とする。このため図14ないし図17に示す第六実施例では、ピストン17の筒状部17aの外周面に装着溝17iが設けられ、この装着溝17iにリップパッキン15が装着され、その外周側のシールリップ15bがステー14の内周面14aに摺動可能に密接する構造とされている。尚、上記第五実施例における図10ないし図13に対応して、図14が定常作動時、図15が圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)、図16が液体室7に閉じ込められた液体が熱膨張した時、図17が液体室7に閉じ込められた液体が熱収縮した時の状態をそれぞれ示している。
【0048】
その他・・・
また、上記各実施例では、アキュムレータ1は、ベローズ5の外周側に気体室8を設定するとともにベローズ5の内周側に液体室7を設定する外ガスタイプのアキュムレータとされているが、これに代えて、アキュムレータ1は、ベローズ5の内周側に気体室8を設定するとともにベローズ5の外周側に液体室7を設定する内ガスタイプのアキュムレータであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 アキュムレータ
2 ハウジング
3 シェル
4 オイルポート
4a ポート穴
5 ベローズ
6 ベローズキャップ
7 液体室
7a ステー外周側空間
7b ステー内周側空間
8 気体室
9 注入口
10 プラグ
11 六角ナット付ピン
12 制振リング
13 プロテクションリング
14 ステー
14a 筒状内周面
14b,17i 装着溝
14c,14d,17g,17h 分割体
14e 先端面
14f,16b,17f 流路
14g 内周空間
15 リップパッキン(径方向シール)
15a 取付部
15b シールリップ
16 ロッド
16a,17c 係合部
17 ピストン
17a 筒状部
17b 底面部
17d 端面
17e 内部空間
18 液体室圧力調整機構
19,20 スプリング(バネ手段)
c 径方向間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の圧力配管に接続されるオイルポートを備えるアキュムレータハウジングと、前記ハウジングの内部に組み込まれて前記ハウジングの内部空間を前記オイルポートに連通する液体室および高圧ガスを封入する気体室に仕切るベローズおよびベローズキャップと、前記ハウジングの内部で前記オイルポート上に設けられた筒状内周面を備えるステーと、前記ベローズキャップによってそのストローク方向に相対変位可能に保持されるとともに前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へ移動したときに前記ステーの内周空間に挿入されるピストンと、前記ピストンが前記ステーの内周空間に挿入されたときに前記ピストンおよび前記ステー間の径方向間隙をシールして前記液体室を閉塞する径方向シールとを有し、
前記圧力配管の圧力が前記気体室の圧力よりも低下した状態では、前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へ移動し、前記ピストンが前記ステーの内周空間に挿入され、前記径方向シールが前記径方向間隙をシールして前記液体室を閉塞し、前記径方向シールによって閉塞された前記液体室の圧力が熱膨張により高まったときに前記ピストンが前記ベローズキャップから離れる方向へ相対変位することにより前記液体室の容積を拡大して前記圧力を低下させる液体室圧力調整機構が設けられていることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】
請求項1記載のアキュムレータにおいて、
前記液体室圧力調整機構は、前記径方向シールによって閉塞された前記液体室の圧力が熱収縮により低められたときに前記ピストンが前記ベローズキャップに近付く方向へ相対変位することにより前記液体室の容積を縮小して前記圧力を増大させる機能を併せ持つことを特徴とするアキュムレータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のアキュムレータにおいて、
前記ピストンには、当該ピストンを復帰動させるためのバネ手段が組み付けられていることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のアキュムレータにおいて、
前記ベローズキャップが前記ステーに近付く方向へのストローク限は、前記ベローズキャップが前記ステーに直接当接することによって規定される構造を有することを特徴とするアキュムレータ。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のアキュムレータにおいて、
前記径方向シールは、前記ステーの内周面または前記ピストンの外周面に保持されるリップパッキンを備え、前記リップパッキンのシールリップが前記ピストンの外周面または前記ステーの内周面に摺動可能に密接する構造を有することを特徴とするアキュムレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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