説明

アクセル装置

【課題】操作者の意図しない振動等を原因とするグリップの回転角度の増減を示す信号の出力変化を防止できるアクセル装置を提供する。
【解決手段】グリップ本体1aの基端部1fには、軸方向に突出する矩形状の凸部1gと、当該凸部1gに対して軸方向に凹んだ状態の矩形状の凹部1hとが互い違いに周方向に並んで形成されている。回転体4の先端側の端部には、上述のグリップ本体1aに形成された凸部1gと凹部1hと噛み合う複数の凸部41と凹部42とを有する。回転体4の係合部である凸部41および凹部42と、グリップ1の係合部である凸部1gおよび凹部1hとが互いに係合する係合部分には、回転体4に対するグリップ1の軸方向および径方向移動を許容する間隙が設けられている。また、回転体4は軸受手段11と付勢手段7とにより軸方向および径方向への移動が規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復回転可能に設けられたグリップの回転角度に基づいて信号を出力するアクセル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車等の操縦装置にハンドルバーを有し、かつ、エンジン等の駆動装置を有する車両においては、ハンドルバー部分にアクセル操作を行うためのグリップが設けられている。
グリップは、概略円筒状を有して、ハンドルバーの端部が挿入された状態で、当該端部に回転自在に配置され、その回転量(回転角度)により、例えば、エンジンのスロットル弁の開度を変更可能となっている。
【0003】
従来は、グリップとスロットル弁が例えばワイヤで連動するように構成されていたが、近年、自動二輪でもキャブレターに代えて燃料噴射装置が用いられることから、グリップの回転角度を測定して、測定された回転角度を信号として出力し、当該信号に基づいてスロットル弁の開度の制御や、燃料噴射装置における燃料の噴射量の制御を行うことが行われている。
【0004】
グリップには、当該グリップの回転角度(回転量)の増減を検出する回転角度検出手段が設けられており、グリップの回転角度に応じた信号を出力するようになっている。
そして、グリップを、操作者の手で一方の回転方向に操作することにより、一方の回転方向への回転角度が増大することが回転角度検出手段に検出されて、回転角度の増大を示す信号が制御装置に出力され、例えば、スロットル弁の開度を大きくするように制御される。
【0005】
また、操作者が一方の回転方向に回転したグリップを他方の回転方向に戻すように回転させるか、操作者が手を離すことによりグリップに連結された付勢手段がグリップを他方の回転方向に戻すように回転させると、一方の回転方向への回転角度が減少することが回転角度検出手段により検出され、回転角度の減少を示す信号が制御装置に出力され、例えば、スロットル弁の開度を小さくするように制御される。
そして、グリップの回転角度を検出する回転角度検出手段としては、例えば、グリップに連動して回転する磁石とホール素子や磁気抵抗素子等の磁界(磁界の変化)を検出する検出素子からなるものなどが用いられている。
【0006】
基本的に、このようなアクセル装置は、グリップと、上述のようにグリップの回転角度を検出する回転角度検出手段と、グリップを原点側に復帰するように付勢する付勢手段とを備えるものである。
例えば、このようなアクセル装置としては、ハンドルバーにグリップを回転自在に保持されるケースと、グリップに設けられて当該グリップと一体に回転する磁石と、グリップとケースとに保持される付勢手段としてのリターンスプリングと、ケースに保持されて前記磁石の磁界の変化を検出する検出素子とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、前記特許文献1には、グリップと別体となって磁石を備えるロータを設け、グリップとロータとを一体に回転可能に取り付けたものや、グリップとローラとに互いに吸着するようにそれぞれ磁石を設け、磁力によりグリップとローラとを一体に回転するものなども提案されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−256904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のようにグリップに直接的に磁石が設けられている場合に、悪路走行時に車両が振動することやグリップを握る操作者の手の動きなどにより、また、その他の外部からの衝撃などにより、検出素子に対してグリップに設けられた磁石が軸方向に移動してしまう場合がある。この場合に、検出素子の部分では、磁石の回転による磁界の変化だけではなく、磁石のグリップの軸方向に沿った移動による磁界の変化が生じることになり、検出素子からの出力がグリップの回転以外の要素で変化してしまうことになる。
【0010】
また、悪路走行時やそのほかの要因によりアクセル装置を備えた車両が振動することに基づいて、グリップが微小回転した場合に、操作者の意図していない出力変化が起こってしまうことになる。
【0011】
また、グリップと、磁石を有するロータが別体となっていても、グリップと磁石とが一体に回転可能となっていると上述の場合と同様の問題が生じることになる。
また、磁力によりグリップと磁石を有するローラとが一体に回転する場合にも、グリップとローラが接していれば上述の場合と同様の問題が生じる虞があり、離れている場合も磁力が十分に作用していれば同様の問題が生じる虞がある。また、磁力によりローラとグリップとが連動するようになっている場合にローラが回転不良となると、グリップだけが空回りしてしまう。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、振動や衝撃等を原因とする操作者の意図しないグリップの軸方向への移動やグリップの僅かな回転に対して、グリップの回転角度の増減を示す信号の出力変化を防止できるアクセル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載のアクセル装置は、往復回転可能に設けられたグリップの回転角度に基づいて信号を出力するためのアクセル装置であって、
前記グリップと同軸上に配置され、当該グリップの回転に伴なって回転する回転体と、
当該回転体に設けられた磁石と、
前記グリップの回転角度を求めるための回転角度検出手段と、
前記回転体を回転自在に支持するとともに、当該回転体の軸方向の移動を規制する軸受手段と、
を備え、
前記回転体と前記グリップとには、それぞれ互いに係合して回転運動を伝達する係合部が設けられ、
これら係合部は、前記回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容するように互いに係合していることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の発明においては、回転体とグリップとが互いに係合して回転運動を伝達するための係合部を備えることにより、回転体は、グリップとともに回転可能で、かつ、回転角度測定用の磁石を備えた回転体が軸受手段により軸方向の移動が規制されるとともに回転自在に支持された状態で、前記グリップの係合部と回転体の係合部とが回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容するように係合しているので、グリップの軸方向移動による回転角度検出手段からの出力変化を防止することができる。
すなわち、グリップが軸方向に移動しても、グリップの軸方向移動に伴なって回転体が移動するのを防止することができる。これにより回転角度検出手段と磁石との当該磁石の回転以外の移動による位置変化を防止して、回転角度検出手段からの出力を安定させることができる。
【0015】
請求項2に記載のアクセル装置は、請求項1に記載の発明において、前記回転角検出手段および前記軸受手段を備える仕切り部材と、当該仕切り部材を支持する支持手段とを備え、前記グリップは、前記支持部材によりグリップの軸方向移動が規制され、
前記回転体の係合部と、前記グリップの係合部とが互いに係合する係合部分には、前記回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容する軸方向に沿った間隙が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、前記回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容するように当該回転体と当該グリップと係合させる構成として、グリップの係合部と回転体の係合部との係合部分にグリップの軸方向に沿った間隙を設けている。
これにより、グリップが軸方向に移動しても間隙によりグリップの移動が回転体に直接的に伝達されず、グリップの軸方向の移動により回転体に設けられた磁石が回転角度検出手段に対して軸方向に移動して出力変化が生じるのを防止できる。
【0017】
ここで、グリップと回転体は、同軸上に配置される。グリップと回転体の係合部の係合部分の軸方向に間隙を設ける構成においては、回転体に対してグリップの軸方向移動を許容できる構成とすることが可能である。その他、回転を伝達する構造としては、例えば、グリップおよび回転体のそれぞれ互いに対向する端面に互いに噛み合う軸方向の凹凸(歯)を設ける方法などが考えられる。
【0018】
また、回転体の軸方向移動を規制する軸受手段は、支持部材に支持された仕切り部材に形成されているので、確実に、回転体の磁石と、回転角度検出手段とのグリップの軸方向に沿った位置変化が規制されることになる。
また、転倒等によりグリップの一部が変形してしまうような場合に、回転体とグリップとの間に間隙があることにより、回転体への影響を抑制し、操作性に問題が生じるのを回避できる。
なお、回転角度検出手段を備える仕切り部材に軸受手段が形成された状態とは、例えば、回転角度検出手段を構成する部品を支持する部材に軸受手段が設けられた構成や、一つの部材上に回転角度検出手段と軸受手段とが配置された状態である。
【0019】
請求項3の記載のアクセル装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記グリップの操作量に応じて、当該グリップに操作荷重を与えるとともに、当該グリップを往復回転の復方向側に戻すための付勢手段を備え、
当該付勢手段は、前記回転体を前記軸受手段に向けて付勢していることを特徴とする。
【0020】
請求項3の記載のアクセル装置においては、グリップを復帰させるための付勢手段(例えば、リターンスプリング)が回転体を軸受手段側に付勢しているので、この付勢手段の作用により、回転体の磁石と、回転角度検出手段とが回転体の回転以外で位置関係が変化するのを防止することができる。すなわち、回転体は軸受手段に向かって付勢手段により付勢されているので、当該付勢手段の付勢力よりも大きな力が作用しなければ、軸受手段に押し付けられた状態を保持することになる。
これにより、軸受手段に回転体の回転を許容するようなクリアランスがある状態で、悪路走行時の振動等が回転体に作用しても、回転体の回転移動以外の回転角度検出手段に対する回転体の磁石の移動を抑制して、回転角度検出手段の振動等による出力変化を防止し、出力を安定に保つことができる。特に、請求項2に記載のように、回転角度検出手段に軸受手段が設けられた状態となっていれば、例えば、支持部材や回転角度検出手段を構成する部材が変形するようなことがあっても、回転角度検出手段の軸受手段側に付勢された回転体が回転角度検出手段に追随して移動し、磁石と回転角度検出手段との位置関係が保持される。
【0021】
請求項4に記載のアクセル装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記回転体の係合部と、前記グリップの係合部とが互いに係合する係合部分には、前記回転体に対する前記グリップの回転位相ずれを許容する回転方向に沿った間隙があけられていることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載のアクセル装置によれば、悪路走行時の振動や、操作者の意図しない僅かなグリップ操作により、僅かにグリップが回転した場合に、グリップの係合部とが互いに係合する係合部分に設けられた回転方向に沿った間隙により、グリップの僅かな回転移動が回転体に伝達されにくい状態となり、操作者の意図しない僅かなグリップの回転による回転角度検出手段の出力変化を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアクセル装置によれば、走行時の振動や外部からの衝撃などの原因により、操作者の意図しないグリップの軸方向への移動やグリップの僅かな回転に対して、回転角度検出手段の出力変化を防止し、グリップの回転角度を示す信号を安定して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態のアクセル装置を示す側面図である。
【図2】前記アクセル装置を示す断面図である。
【図3】前記アクセル装置を示す分解斜視図である。
【図4】前記アクセル装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態のアクセル装置を示す側面図、図2は前記アクセル装置を示す断面図、図3および図4はアクセル装置を示す分解斜視図である。
アクセル装置は、ハンドルバーの軸心周りに往復回転可能に当該ハンドルバーに設けられたグリップ1と、当該グリップ1と同軸上に配置され、当該グリップ1の回転に伴なって回転する回転体4と、当該回転体4に設けられた磁石5と、当該磁石5が発生する磁場に配置され、グリップ1の回転角度を求めるための回転角度検出手段6と、回転体4を介してグリップ1を往復回転の原点位置に復帰するように復方向に付勢する付勢手段7と、回転体4をハンドルバーに対して回転自在に支持するとともに、当該回転体4の軸方向の移動を規制する軸受手段11とを備える。
【0026】
また、アクセル装置は、前記グリップ1、回転体4、回転角度検出手段6、付勢手段7等をハンドルバーに支持するとともに、これらの少なくとも一部を覆った状態とする支持部材としてのケース2とカバー3とを有する。
また、アクセル装置は、前記回転角度検出手段6を備えるとともに、回転体4を回転自在に支持する軸受手段11を備える仕切り部材としてのホルダ8を有する。仕切り部材であるホルダ8は、ケース2およびカーバ3に保持され、ケース2およびカバー3により形成された空間を仕切るように備えられる。
【0027】
前記グリップ1は、ハンドルバーの円筒状の端部が挿入される円筒状のグリップ本体1aと、当該グリップ本体1aを覆うグリップカバー1bとからなっている。
グリップ1の基端部は、前記カバー3内に挿入された状態となっており、グリップ本体1aがグリップカバー1bに覆われることなく露出した状態である。
【0028】
グリップカバー1bは、グリップ本体1aの外径とほぼ同じ内径を有する円筒状であり、先端側が閉塞された状態とされるとともに基端部は、カバー3より外側に配置されるとともに、カバー3の外面に近接した状態とされ、かつ、カバー3に近接する部分にグリップカバー1bの円筒状の基端部を中心とする円板状の鍔部1cが形成されている。鍔部1cの基端側の側面と、当該側面に対向するカバー3の蓋部31の側面とは、互いに平行に配置され、カバー3の側面に鍔部1cの側面が当接することで、グリップ1の先端から基端に向かう軸方向の移動が規制されるようになっている。
【0029】
また、カバー3の後述の蓋部31を貫通するグリップ本体1aの蓋部31の内側となる部分には、グリップ本体1aのカバー3より外側の外径より外径が大きくなった拡径部1dが形成されている。この拡径部1dが、前記カバー3のグリップ本体1aが貫通する蓋部31の貫通孔33の径より大きくされており、グリップ本体1aの基端から先端に向かう軸方向の移動をカバー3の蓋部31により規制するようになっている。
【0030】
以上のことから、グリップ1(グリップ本体1a)は、カバー3により軸方向移動が規制されている。なお、上述のグリップ1の軸方向移動を規制する構造において、カバー3の蓋部31の厚みよりも、鍔部1cと拡径部1dとの間の間隔の方が僅かに広くなっており、グリップ1を円滑に回転可能とするクリアランスが確保されているが、これによりグリップ1は僅かに軸方向に移動可能となっている。
【0031】
また、グリップ本体1aの拡径部1dより基端側は、カバー3内に配置されるとともに、グリップ本体1aのカバー3の外側に配置される部分より径が大きくなった基端部1fとされ、当該基端部1fでは、グリップ本体1aの内周面を矩形状に切り欠いた凹部1hが形成されることにより、凹部1hから突出する切り欠いていない部分からなる矩形状の凸部1gと矩形状の凹部1hとが互い違いに周方向に並んで形成されている。なお、複数の凸部1gが互いに間隔をあけて周方向に並んでいる状態および複数の凹部1hが互いに間隔をあけて周方向に並んでいる状態となる。
また、この例では、グリップ本体1aのカバー3より外側の径と同じ径(厚みを含む)となる基端部の部分に、前記凸部1gと凹部1hからなる凹凸が設けられ、それよりも径が大きくなった部分は凸部1gと同じ径の円筒状に形成され、軸方向に沿った凹凸がない状態となっている。
【0032】
したがって、実質的には、グリップ本体1aの基端部の内周面に、軸方向に沿った矩形状の複数の凹部が周方向に互いに間隔をあけて形成された状態となっている。なお、基端部1fの凹凸が設けられた部分の外周に円筒状の形状を設けることなく、基端部1fの凸部1gおよび凹部1hが外周側に露出した状態となっていてもよい。
【0033】
前記ケース2は、ハンドルバーに固定されるもので、ケース本体2aと、バー固定部材2bとからなっている。
ケース本体2aは、ハンドルバーのグリップ1が取り付けられる部分の軸方向に直交して配置される長円状の底板2cとその周囲に前記軸方向に沿って設けられる周壁部2eと、前記底板2cから外側に突出して形成され、前記ハンドルバーを前記バー固定部材2bとの間に挟持して固定する挟持部2dとを備える。なお、ケース本体2aは、上記底板2cと周壁部2eとから長円状で有底筒状に形成されている。
【0034】
前記底板2cには、ハンドルバーが貫通する貫通孔2fが設けられている。そして、底板2cの前記貫通孔2fを挟むように挟持部2dと、バー固定部材2bとが対向して配置されている。これら挟持部2dと、バー固定部材2bの互いに対向する面は、ハンドルバーの外周面に対応した円弧面とされ、これら挟持部2dとバー固定部材2bとの間に底板2cの貫通孔2fに挿通された状態のハンドルバーが挟持される。なお、挟持部2dとバー固定部材2bは、例えば、ボルト(ビス)等で締結される。
【0035】
前記カバー3の底板2cの内面側には、前記貫通孔2fの周囲(周縁部)となる部分が一段薄くなった円環上の段差部2iを備え、前記回転体4の基端部が当該段差部2iに入り込んだ状態となっている。
また、底板2cの前記貫通孔2fの周囲で段差部2iより外側に貫通孔2fの中心を中心とする二つの円環状の突条2g、2hが形成されている。なお、一方の突条2gより他方の突条2hの方が径が大きくなっている。すなわち、径の異なる円環状の2つの突条2g、2hが貫通孔2fの中心軸を中心とするように同心円状に配置されている。
【0036】
また、これらの円環状2つの突条2g、2hの間は、溝状となっている。
そして、これら2つの突条2g、2hは、2つのねじりコイルバネ71,72からなる付勢手段7としてのリターンスプリングの一端側を支持するものであり、前記外側の突条2gと内側の突条2hとの間に、外側のねじりコイルバネ71の一端部が配置されるとともに、外側のねじりコイルバネ71の一端が固定されえている。また、内側の突条2hと、前記段差部2iに基端部が挿入された状態の回転体4との間に内側のねじりコイルバネ72の一端部が配置されるとともに内側のねじりコイルバネ72の一端が固定されている。
【0037】
また、周壁部2eの内周面には、周方向に間隔をあけて複数の係合部2jが設けられている。当該係合部2jは、底板2cから当該底板2cに直交するように設けられた突条となっており、全ての係合部2jが周壁部2eに沿って同様の長さに設定されるとともに、周壁部2eよりも短いものとされている。そして、当該係合部2jには、ホルダ8の外周部が係合して支持されている。ホルダ8の外周は、周壁部2eの内周形状と同様の長円状で、周壁部2eの内径とほぼ同様の外径を有し、ホルダ8の外周が周壁部2eの係合部2jより先端側の内周に嵌り込んだ状態となっている。
【0038】
そして、回転体4と当該回転体4に挿入された状態のハンドルバーが貫通する部分を除いて、ケース2の開放側をほぼ閉塞するように取り付けられている。
前記カバー3は、ケース2と同様の長円状に形成されており、有底筒状となっている。
そして、カバー3は、ケース2の底板2cと間隔をあけて平行に配置される蓋部31と、蓋部31に周囲にグリップ1の軸方向に沿って設けられた周壁部32とを備えている。
【0039】
蓋部31には、前記ハンドルバーが挿入された状態のグリップ本体1aが貫通する貫通孔33が形成されている。
また、周壁部32の環状の端面には、外周側より内周側が突出した状態となった係止部34が形成されている。この係止部34は、ケース2にカバー3を取り付ける際に、ケース2の周壁部2eの先端部の内周面の内側に入り込むようになっている。
【0040】
そして、ケース2の係合部2jとカバー3の周壁部32の係止部34との間に仕切り部材であるホルダ8の外周部分が挟まれた状態となり、これによって、ホルダ8は支持部材となるケース2およびカバー3に支持された状態となる。
前記回転体4は、グリップ本体1aの拡径部1dより先端側の部分と同様の断面形状を有する概略円筒体であり、その内部をハンドルバーが貫通した状態となっており、当該ハンドルバーの周囲を回転自在に配置されている。
【0041】
そして、回転体4の先端側の端部には、上述のグリップ本体1aに形成された凸部1gと凹部1hと噛み合う複数の凸部41と凹部42とを有する。凸部41は、回転体4およびグリップ1の軸方向に沿って矩形状にグリップ1側へ突出し、凹部42は、前記軸方向に沿ってグリップ1に対して矩形状に凹んだ部分である。
また、回転体4の凸部41と凹部42とは、グリップ本体1aの凸部1gと凹部1hと相補性を有するもので、回転体の凸部41の形状とグリップ本体1aの凹部1hの形状とが近似し、回転体4の凹部42の形状とグリップ本体1aの形状とが近似している。
【0042】
また、回転体4は、後述のようにホルダ8の軸受手段11により軸方向の位置が規制されるとともに、付勢手段7により後述のように軸受手段11に位置が固定された状態となっている。グリップ本体1aは、クリアランス程度だけ軸方向に移動可能となっている。
この状態で、回転体4の凸部41の先端面と、グリップ本体1aの凹部1hの底面との間と、回転体4の凹部42の底面と、グリップ本体1aの凸部1gの先端面との間には、軸方向に隙間としての間隔があいた状態となっている。
【0043】
すなわち、回転体4の係合部である凸部41および凹部42と、グリップ1の係合部である凸部1gおよび凹部1hとが互いに係合する係合部分には、回転体4に対するグリップ1の軸方向移動を許容する軸方向に沿った隙間が設けられている。これにより、回転体4の係合部である凸部41および凹部42と、グリップ1の係合部である凸部1gおよび凹部1hとは、回転体4に対するグリップ1の軸方向移動を許容するように係合していることになる。
【0044】
なお、例えば、同軸上に配置された二つの部材で回転運動を伝達するキーとキー溝や、スプライン構造等においては、二つの部材が軸方向で重なる位置にない状態でも、一方の部材に対して他方の部材を軸方向に移動可能とすることができる。
これにより、回転体4に対して、グリップ本体1aの軸方向移動が許容されるように構成することができ、グリップ本体1aが前記隙間となる間隔の範囲で軸方向に移動しても回転体4の軸方向位置に影響を与えないようになっている。
【0045】
また、グリップ本体1aの凹部1hの周方向に沿った幅に対して、この凹部1h内に配置される回転体4の凸部41の周方向に沿った幅が僅かに狭くされ、かつ、回転体4の凹部42の周方向に沿った幅に対して、この凹部42内に配置されるグリップ本体1aの凸部1gの幅が僅かに狭くなっており、これらグリップ本体1aの凸部1gおよび凹部1hと、回転体4の凸部41および凹部42との係合部分には、周方向に隙間が設けられている。
【0046】
これにより、回転体4に対するグリップ1の僅かな回転位相ずれが許容されることになる。
また、回転体4のほぼ中央部の外周には、回転体4の軸心(回転中心)を中心とする概略円板上のバネ係止部44が設けられている。バネ係止部44は、回転体4の円筒状の本体を中央部として、その外周に鍔状に延出する部材で、先端側(グリップ1側)の側面には、外周側より内周側が突出した状態となっており、この突出する内周部分とその外周部分との間に段差部45が形成されている。
【0047】
この段差部45の回転体4の軸方向に沿った段差面と内周側の側面との角部は、面取りした形状となっている。これにより、バネ係止部44の内周側部分は、その先端側部分が円錐台状となり、前記段差部45の面取りされた形状の部分が、先端側に向かうにつれて径が小さくなるテーパー面となっている。なお、この段差部45の前記テーパー面がホルダ8に形成される軸受手段11に回転自在に支持される軸部として機能する。
【0048】
また、バネ係止部44の先端側の側面の前記段差部45の内側に、全周の一部となる限られた角度範囲にだけ先端側に突出するように円弧状の磁石保持部48が設けられている。当該磁石保持部48には、円弧状の磁石5が保持されているとともに、磁石5の内周側に円弧状のアマチュア13が設けられている。磁石5は、円周方向にN極とS極が並んで配置され、これらN極とS極との間で発生させる磁束に対してアマチュアが閉磁路を構成している。
【0049】
また、バネ係止部44は、その基端側の側面の最外周部と、当該最外周部と回転体4の円筒状の本体との中間部分との二箇所に基端側に突出する円環状の突条46,47が設けられている。
2つの突条46,47は、同心円状に設けられるとともに、外周側の突条46と内周側の突条47との間が円環状の溝とされ、内周側の突条47と回転体4の本体との間が円環状の溝とされている。
【0050】
そして、当該外周側および内周側の溝に前記リターンスプリングとしての付勢手段7の外側のねじりコイルバネ71と、内側のねじりコイルバネ72の先端部が挿入された状態とされるとともに先端部が固定された状態となっている。
付勢手段7は、上述のように外側のねじりコイルバネ71および内側のねじりコイルバネ72からなり、基端側が上述のケース2の突条2g、2hの部分に固定され、先端側が回転体4のバネ係止部44の突条46,47部分に固定されており、ケース2に対して一方の回転方向(アクセル装置においてスロットル弁を開く側)に回した場合、すなわちグリップ1の往復回転の往方向に回転した場合にねじりコイルバネ71,72がねじられて弾性変形し、当該ねじりコイルバネ71,72の付勢力がスロットル弁を閉じる側の方向、すなわち、往復回転の復方向に付勢力が作用し、例えば、操作者がグリップ1から手を離した場合に回転体4を介してグリップ1を復方向に回転させることになる。
【0051】
なお、回転体4は、図示しないストッパにより回転範囲が決められている。これにより回転体4と係合するグリップ1の回転範囲が決められている。そして、当該回転範囲内の往復移動の原点位置にグリップ1がある場合にも付勢手段7により復方向に付勢されている。
また、この復方向への付勢手段7により、操作者がグリップ1を往方向に操作した場合に、付勢手段7の弾性変形量が多くなることで、付勢力が強くなるとともに、グリップ1を介して当該付勢力が操作者の操作に対する負荷となる。これにより、付勢手段7は、グリップ1の操作量に応じて、当該グリップ1に操作荷重を与えている。
【0052】
また、付勢手段7としてのねじりコイルバネ71,72は、ホルダ8の軸受手段11により先端側の位置が決められた回転体4とケース2の底板2cとの間に圧縮変形した状態に配置されている。したがって、ねじりコイルバネ71,72は、圧縮コイルバネとして機能しており、回転体4を軸受手段11を有するホルダ8側に付勢している。
前記ホルダ8は、上述のように長円状に形成されるとともに、ハンドルバーが挿入された回転体4が貫通する貫通孔8aを有するとともに、外周部がケース2とカバー3に挟まれた状態で保持されている。
【0053】
そして、ホルダ8の前記回転体4が貫通する貫通孔8aの周囲には、前記側面と貫通孔8aの内周面との角部を面取りした形状の軸受面81が形成されている。このホルダ8の軸受面81が軸受手段11を構成するものであり、軸受面81は、先端側に向かうにつれて内径が狭くなる円錐台状のテーパー面となっている。このテーパー面の傾斜角と、上述の回転体4のバネ係止部44の先端側に形成された段差部45のテーパー面とは同じ傾斜角度となっており、互いに当接するようになっている。
【0054】
また、上述のように付勢手段7により回転体4がホルダ8に押し付けられた状態では、上述のテーパー面同士が当接していることにより、回転体4のホルダ8方向に向かう力がホルダ8の軸受手段11の中央に向かう方向に変換され、回転体4が軸受手段11の中央に保持されるように働くことになり、回転体4の回転中心の変動を防止することができる。
【0055】
また、ホルダ8には、前記磁石5の回転体4の回転に伴なう回転移動による磁界の変化を検出する回転角度検出手段6が設けられている。
回転角度検出手段6は、磁気検出IC61が搭載されたプリント基板62を有し、前記磁気検出IC61は、前記回転体の磁石保持部48に近接して対向する位置に配置されている。
そして、回転体4の回転により磁石保持部48に保持された磁石5が回転することにより生じる磁界の変化を検知することで、回転体4を介してグリップ1の回転角度を検出し、当該回転角度を示す(回転角度に対応した)信号を出力するようになっている。
【0056】
また、ホルダ8は、前記磁気検出IC61を有するプリント基板62を収納する矩形状の収納凹部83を有する。なお、収納凹部83は、その周囲を矩形枠状の壁に囲まれることで凹部となっている。また、収納凹部83には、プリント基板62に実装された磁気検出IC61が挿入される挿入孔84が設けられている。そして、挿入孔84に挿入された磁気検出IC61は、回転体4の磁石保持部48に保持された磁石5に近接して対向する位置に配置される。
また、ホルダ8の磁気検出IC61が挿入される挿入孔84の周囲には、ホルダ8と一体成型されたステータ63が設けられ、当該ステータ63が磁気検出IC61に磁気を誘導する構成となっている。
【0057】
以上のことから、仕切り部材であるホルダ8は、ハンドルバーに固定されて他の部材を支持する支持部材としてのケース2およびカバー3に支持されるとともに、上述の回転角度検出手段6を構成する磁気検出IC61が搭載されたプリント基板62を有する。そして、この仕切り部材(ホルダ8)に前記軸受手段11が設けられていることになる。
【0058】
以上のようなアクセル装置によれば、グリップ1を操作者が回転操作した場合に、グリップ1の回転がグリップ本体1aの係合部である凸部1gおよび凹部1hと回転体4の凹部42と凸部41を介して回転体4に伝達される。そして、回転体4とともに回転体4に設けられた磁石5が回転移動し、磁界が変化する。
この磁界の変化を回転角度検出手段6としての磁気検出IC61が検出し、この磁界の変化を示す信号をグリップ1の回転角度を示す信号としてプリント基板62を介して外部に出力することになる。
【0059】
ここで、前記グリップ本体1aの係合部である凸部1gおよび凹部1hと回転体4の凹部42と凸部41との間にグリップ1および当該グリップ1と同軸上に配置された回転体4の軸方向に沿って隙間があることにより、回転体4に対してグリップ本体1aの移動が許容される。したがって、上述のカバー3に軸方向のクリアランスを持った状態で、軸方向への移動が規制されたグリップ1がクリアランス分や、さらにカバー3等の部材の変形分だけ移動しても、回転体4にグリップ1の軸方向への移動が伝達されない。
【0060】
これにより、走行時の振動、外部からの衝撃などにより、グリップ1が移動しても回転体4は移動しない。
また、回転角度検出手段6を備えるホルダ8に設けられた軸受手段11となるテーパー面を備えた軸受面81に、回転体4の軸受手段11に回転自在に支持される軸部となるテーパー面を備えた段差部45が付勢手段7の付勢力により押し付けられているので、軸受手段11により回転体4の軸方向移動が規制された状態となる。また、付勢手段7に付勢されていることにより、軸受手段11のテーバー面と段差部45のテーパー面に成型時の誤差などがあっても、回転体4は付勢手段7の付勢力により軸方向位置が精度高く保たれることになる。
【0061】
また、上述のように回転体4が軸受手段11に向かって付勢された際にテーパー面の傾斜により回転体4に軸受手段11の中心側に向かう力が作用し、回転体4の回転中心がずれるのを防止することができる。
また、磁石5を有する回転体が回転角度検出手段6の軸受手段11側に付勢されて、回転体4の位置が規制されることで、回転角度検出手段6と磁石5と位置の変位が規制され、磁石5の回転移動以外による位置変化が抑制されることで、磁石5の回転移動以外よる磁界の変化を防止することができる。
【0062】
そして、以上のように回転体4が軸受手段11と付勢手段7とにより軸方向位置を規制されているとともに、グリップ1が軸方向に移動しても、その移動が回転体4に伝達されないことから、回転体4は、その軸方向位置を維持し、磁石5が回転体4の軸方向に移動してしまうことで、磁気検出IC61の部分で磁石5の前記軸方向移動による磁界の変化が生じるのを防止することができる。これにより、精度の高いグリップ1の回転角度の検出が可能となる。
【0063】
また、前記グリップ本体1aの係合部である凸部1gおよび凹部1hと回転体4の凹部42と凸部41との間に、グリップ1と回転体4の周方向に沿った僅かな隙間(グリップ1と回転体4との回転位相ずれを許容する隙間)があることにより、例えば、走行時の振動等によりグリップ1の僅かな回転等を回転体4に伝達しないようにすることができる。特に回転体4は付勢手段7による復方向に付勢されているので、前記グリップ本体1aの係合部である凸部1gおよび凹部1hと回転体4の凹部42と凸部41との間に、グリップ1の往方向側への移動を僅かに許容するように隙間が生じた状態となっており、振動等によるグリップ1の僅かな回転に伴なって、スロットル開度を必要以上に過敏に制御するのを機械的に防止することができる。
【0064】
また、上述のように付勢手段7は、グリップ1に原点位置への復帰力を付与するとともに、操作荷重を付与し、さらに、回転体4を軸受手段11に押し付けることで、回転体4の軸方向位置および回転中心位置を一定に保持する機能を有することになり、複数の機能を付勢手段7に持たせることで、コストの削減と、小型化の容易化を図ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 グリップ
1a グリップ本体
1g 凸部(係合部)
1h 凹部(係合部)
1b グリップカバー
2 ケース(支持部材)
3 カバー(支持部材)
4 回転体
41 凸部(係合部)
42 凹部(係合部)
6 回転角度検出手段
61 磁気検出IC
7 付勢手段
71 ねじりコイルバネ(圧縮コイルバネ)
72 ねじりコイルバネ(圧縮コイルバネ)
8 ホルダ(仕切り部材)
81 軸受面
11 軸受手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復回転可能に設けられたグリップの回転角度に基づいて信号を出力するためのアクセル装置であって、
前記グリップと同軸上に配置され、当該グリップの回転に伴なって回転する回転体と、
当該回転体に設けられた磁石と、
前記グリップの回転角度を求めるための回転角度検出手段と、
前記回転体を回転自在に支持するとともに、当該回転体の軸方向の移動を規制する軸受手段と、
を備え、
前記回転体と前記グリップとには、それぞれ互いに係合して回転運動を伝達する係合部が設けられ、
これら係合部は、前記回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容するように互いに係合していることを特徴とするアクセル装置。
【請求項2】
前記回転角検出手段および前記軸受手段を備える仕切り部材と、当該仕切り部材を支持する支持手段とを備え、前記グリップは、前記支持部材によりグリップの軸方向移動が規制され、
前記回転体の係合部と、前記グリップの係合部とが互いに係合する係合部分には、前記回転体に対する前記グリップの軸方向移動を許容する軸方向に沿った間隙が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアクセル装置。
【請求項3】
前記グリップの操作量に応じて、当該グリップに操作荷重を与えるとともに、当該グリップを往復回転の復方向側に戻すための付勢手段を備え、
当該付勢手段は、前記回転体を前記軸受手段に向けて付勢していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクセル装置。
【請求項4】
前記回転体の係合部と、前記グリップの係合部とが互いに係合する係合部分には、前記回転体に対する前記グリップの回転位相ずれを許容する回転方向に沿った間隙があけられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクセル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−240718(P2011−240718A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44158(P2009−44158)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】