説明

アクチュエータ

【課題】動作範囲が広くかつ高精度の位置決めが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータは、一方向に動作方向が拘束された支持バネ機構12と、この支持バネ機構により支持された可動部14と、支持バネ機構の動作方向に沿った推力を発生し、可動部に印加する推力発生機構16と、一体化した構成を有している。支持バネ機構は一対のバネ部を有し、直動方向で弾性変形するが、剛性を高くして変形しない支持構造としている。そのため、共振周波数に影響する擦動摩擦がなくバネ定数を高く保持し、直動方向のみを正確作動し、高精度直進運動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細な動作範囲内で高精度な位置決めを行うアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶表示パネル、プラズマディスプレーの製造や精密加工、精密計測の分野では、最小分解能がnmレベルであり、高速で高精度な位置決め技術が要求されている。10mm程度から数mの動作範囲が要求される用途では、多くの場合、空気静圧軸受け案内、又は、ボールやコロ軸受で支持されるリニアガイドに同期型リニアモータを組み合わせたステージ、あるいは、同期型の回転型サーボモータと、その回転力を推力に変換するため、ボールネジや油静圧、又は、空気静圧ネジ等とを組み合わせて構成されたステージが用いられている。
【0003】
また、数μmから500μmの動作範囲が要求される用途では、積層型の圧電素子に変位を拡大する機構を組み合わせたアクチュエータ、あるいは、金属板に圧電セラミクスを張り合わせたユニモルフ型やバイモルフ型のアクチュエータが多数応用されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0004】
精密位置決め機構を構成する駆動機構や支持機構の型式は様々なものがあり、通常、要求される位置決め精度の仕様や動作範囲に応じて、最適と考えられる機構が選択されている。しかしながら、位置決め精度とともに高速化をアクチュエータ選択の条件として求める場合、アクチュエータの基本的特性には、1次の共振周波数が高く、その時の振幅のピーク値が小さいことが潜在的に要求される。このような要求を満たすためには、共振周波数の高域化を妨げる摺動摩擦を排除する必要がある。このような理由から、動作範囲が数10mm以上の精密ステージや直動型アクチュエータでは、空気静圧軸受けが用いられている。また、動作範囲が数百μm以下の微動ステージやアクチュエータでは、弾性変形を用いた支持機構を備えたものが主流となっている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平3−60084号公報
【特許文献2】特許第3334450号
【特許文献3】特開平2−131373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、100μmから10mm以下の動作範囲で高速かつ高精度に位置決めできるアクチュエータを考慮した場合、静圧空気軸受けでは機構が複雑でアクチュエータの小型化に適していない。また、弾性変形を用いた支持機構では、上記のような動作範囲に追従できない。
【0006】
アクチュエータの推力発生部も小型化を前提とする場合、同期型サーボモータの基本を成す電磁型では構造が複雑で小型化に適しているとは言えない。圧電型、静電型のアクチュエータは、動作範囲がmm以上のアクチュエータに適しているとは言えない。したがって、nmレベルの超精密位置決めが可能で、動作範囲がmmレベルの直動型アクチュエータに限定した場合、高速性の要求を含めないとしても、これらのアクチュエータに最適な推力発生部および支持機構は、定番と言えるものがない。
【0007】
このように、nm以下の位置決め精度を有しながら動作範囲が数mmのアクチュエータは、潜在的に多くの要求があったにも関わらず、駆動機構や支持機構として定番と言える構成ものは提供されておらず、更に高速化に対する要求を含めると、現状では一層未開拓な領域となっている。
【0008】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、動作範囲が広くかつ高速で高精度の位置決めが可能なアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るアクチュエータは、一方向に動作方向が拘束された支持バネ機構と、この支持バネ機構により支持された可動部と、前記支持バネ機構の動作方向に沿った推力を発生し、前記可動部に印加する推力発生機構と、を一体的に備えている。
【0010】
支持バネ機構は一対のバネ部を有し、動作方向、つまり、直動方向には推力の発生によって積極的に弾性変形は生じるが、直動方向以外は構造的に剛性が高く、変形が生じないように支持されている。そのため、共振周波数に影響する擦動摩擦がなく、バネ定数を高く保持しながら、直動方向へのみ正確に作動し、アクチュエータの可動部を高い精度で直進運動させる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、動作範囲が広くかつ高速で高精度の位置決めが可能なアクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照しながら、この発明の実施形態に係るアクチュエータについて詳細に説明する。
図1および図2は、電磁型のアクチュエータ10を示す斜視図および断面図である。これらの図に示すように、アクチュエータ10は、動作方向、ここでは、直動方向Bが一方向に拘束された支持バネ機構12と、この支持バネ機構により支持された可動部14と、支持バネ機構の動作方向に沿った電磁力を発生する電磁型の推力発生機構16と、を一体的に備えている。
【0013】
支持バネ機構12は、矩形枠状のブロックバネ20を有している。ブロックバネ20は、角柱形状の支持部22、この支持部22と隙間を置いてほぼ平行に対向した角柱形状の可動部14、および支持部22と可動部14との間を延びた互いに平行な一対の角柱形状のバネ部25を有し、全体としてほぼ矩形枠状に形成されている。ブロックバネ20は、支持部22および可動部14の中心を通って延びた中心軸C、ここでは、ブロックバネの長手軸を有し、一対のバネ部25は、中心軸Cと平行に延びている。支持部22には、円盤状のフランジ23が形成され、支持部22の全周から外方へ延出している。支持部22には、中心軸Cと同軸的に延びた透孔21が形成されている。
【0014】
フランジ23を含むブロックバネ20は、例えば、ジュラルミン(高力アルミニウム)、ステンレス鋼、銅合金、チタン合金等の金属あるいはセラミックス等の剛性の高い材料により一体的に成形されている。ブロックバネ20の材料は、要求される変位量と剛性とのバランスに応じて選択される。
【0015】
各バネ部25において、中心軸Cと平行に延びる1つの側面には、複数、例えば、3本のバネスリット26aが形成されている。これらのバネスリット26aは、互いに隙間を置いて平行に形成され、中心軸Cと直交する方向に延びている。各バネ部25において、中心軸Cと平行に延び上記側面と対向した他の側面には、複数、例えば、2本のバネスリット26bが形成されている。これらのバネスリット26bは、互いに隙間を置いて平行に形成され、中心軸Cと直交する方向に延びている。また、バネスリット26bは、中心軸Cと平行な方向において、バネスリット26aと交互に並んで設けられている。
【0016】
一対のバネ部25は、それぞれ座屈方向、ここでは、中心軸Cと平行な直動方向Bのみに動作が拘束され、直動方向Bに伸長する平行バネを構成している。可動部14はこれら一対のバネ部25を介して支持部22に支持され、バネ部25の直動に応じて、直動方向Bに拘束されて移動可能となっている。
【0017】
支持バネ機構12は、平行バネを構成したバネ部25を座屈方向に伸長させることで直動方向以外の変形を拘束し、数mm程度の大きな動作範囲を実現しながら高剛性なバネ支持機構を実現している。バネ構造そのものは弾性変形を応用して、一方向には柔軟に変形するが、移動軸周りや他の直交2軸に対しては剛性が高く、直動以外の不要な動作が拘束されている。そのため、支持バネ機構12により、可動部14の高精度な直進運動を支えることができる。
【0018】
図1および図2に示すように、推力発生機構16は、ブロックバネ20のフランジ23にねじ止め固定された円筒状の固定子ヨーク30、および固定子ヨークの開放端に固定され、この開放端を閉塞した円盤状のバックヨーク32を備えている。固定子ヨーク30は、フランジ23とほぼ等しい外径を有し、ブロックバネ20の中心軸Cと同軸的に配置されている。なお、本実施形態において、バックヨーク32を含めて固定子ヨーク30としている。
【0019】
固定子ヨーク30内には、円筒状のマグネット34および円柱形状のセンターヨーク(ポールピース)36が配設されている。マグネット34はバックヨーク32の内面に固定され、センターヨーク36はマグネットに固定されマグネットからブロックバネ20側に延出している。マグネット34およびセンターヨーク36は、中心軸Cと同軸的に設けられている。
【0020】
推力発生機構16は、一端が閉塞された円筒状のコイルフレーム38およびコイルフレームの外周に巻装されたムービングコイル40を備えている。可動支持体として機能するコイルフレーム38は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。コイルフレーム38の閉塞端は、ブロックバネ20の可動部14の内面にねじ止め固定されている。コイルフレーム38の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部には、センターヨーク36が隙間を置いて挿通されている。ムービングコイル40は、コイルフレーム38の他端部外周に巻装され、センターヨーク36と固定子ヨーク30との間に、これらヨークと同軸的に配置されている。これらマグネット34、ヨークおよびムービングコイル40によりボイスコイルモータ(以下、VCMと称する)を構成している。
【0021】
推力発生機構16によれば、マグネット34から発生する磁束は、センターヨーク36からムービングコイル40、固定子ヨーク30およびバックヨーク32を通って流れる。そして、ムービングコイル40に通電することにより磁界が発生し、この磁界とマグネット34から発生した磁束とを鎖交させることにより、フレミングの左手の法則に従って直動方向Bと平行な電磁力、つまり、推力D、が発生する。この推力Dは、コイルフレーム38を介して可動部14に印加される。従って、可動部14は、推力発生機構16から発生した推力Dにより、ムービングコイル40およびコイルフレーム38と共に直動方向Bに移動される。
【0022】
一般的に、コイル部分の断面が四角形のVCM構造の場合、コイル部分の1面あるいは2面だけしか推力に寄与しない。これに対して、本実施形態に係る推力発生機構16によれば、円筒形状のVCMを用いることにより、コイル全面が推力発生に寄与するため、効率を高め、推力の高密度化を図ることができる。
【0023】
上記のように構成された電磁型のアクチュエータ10は、直動方向B以外の動作が拘束された平行バネを有する支持バネ機構12を用いることにより、縦横真直が50nm以下、ローリングとピッチング5秒以下と言う高精度な直進運動を数mmの範囲で実現することができる。また、円筒状のVCMを有した推力発生機構16と支持バネ機構12とを組み合わせることにより、制御帯域が1kHz以上、位置決め精度±0.1nm以下(3σ:位置決め精度のバラツキが正規分布状になった場合、99.7%の確立で位置決めされる精度)で、数mmの動作範囲を高速にかつ高精度にて可動部14を移動させることができる。従って、動作範囲が数mm単位と広くかつ高速で高精度の位置決めが可能なアクチュエータが実現できる。
【0024】
次に、この発明の他の実施形態に係るアクチュエータについて説明する。
【0025】
図3は、この発明の第2の実施形態に係る電磁型のアクチュエータ10を示している。本実施形態によれば、支持バネ機構12を構成しているブロックバネ20は一対のバネ部25を有している。各バネ部25は、複数回折り曲げられた蛇腹条のバネ部として構成され、各折曲げ部は可動部14の直動方向Bと直行する方向に、かつ互いに平行に延びている。これにより、一対のバネ部25は平行バネを構成し、直動方向Bには推力の発生によって弾性変形は生じるが、直動方向以外の移動は拘束されている。
【0026】
第2の実施形態において、アクチュエータの他の構成は前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
図4は、この発明の第3の実施形態に係る電磁型のアクチュエータ10を示している。アクチュエータの推力発生機構は、制御性能を考慮するとVCM型が好ましい。第3の実施形態によれば、推力発生機構16は、角柱形状のセンターヨーク36および角筒状のコイルフレーム38を有している。センターヨーク36はバックヨーク32に固定され、ブロックバネ20の中心軸Cと同軸的に延びている。コイルフレーム38は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。コイルフレーム38の一端は、ブロックバネ20の可動部14にねじ止め固定されている。コイルフレーム38の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部には、センターヨーク36が隙間を置いて挿通されている。ムービングコイル40は、コイルフレーム38の他端部外周に矩形状に巻装されている。
【0028】
推力発生機構16は、例えば、2つの板状のマグネット34を有し、これらのマグネットは、ムービングコイル40を挟んで対向して設けられているとともに固定子ヨークに30に固定されている。これらマグネット34、ヨークおよびムービングコイル40によりVCMを構成している。
【0029】
図5に示す第4の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、円筒状のVCMとして構成されている。すなわち、推力発生機構16は、円柱形状のセンターヨーク36および円筒状のコイルフレーム38を有している。センターヨーク36はバックヨーク32に固定され、ブロックバネ20の中心軸Cと同軸的に延びている。コイルフレーム38は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。コイルフレーム38の一端は、ブロックバネ20の可動部14にねじ止め固定されている。コイルフレーム38の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部には、センターヨーク36が隙間を置いて挿通されている。ムービングコイル40は、コイルフレーム38の他端部外周に巻装されている。
【0030】
推力発生機構16は、円筒状に形成されたマグネット34を有している。このマグネット34は、その径方向に沿って着磁され、内周側がS極、外周側がN極となっている。マグネット34は、固定子ヨーク30の内周面に固定され中心軸Cと同軸的に位置しているとともに、ムービングコイル40の外周に対向している。
【0031】
前述した実施形態によれば、VCMは、マグネットを固定、コイルを可動として構成されているが、逆に、コイルを固定、マグネットを可動として構成してもよい。図6に示す第5の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、図2に示した第1の実施形態に係るアクチュエータのVCMとマグネットおよびコイルの配置を逆にした構成を有している。すなわち、推力発生機構16は、ブロックバネ20のフランジ23にねじ止め固定された円筒状の固定子ヨーク30、および固定子ヨークの開放端に固定され、この開放端を閉塞した円盤状のバックヨーク32を備えている。
【0032】
固定子ヨーク30内には、円柱形状のエンドヨーク33および円柱形状のセンターヨーク36が配設されている。推力発生機構16は、一端が閉塞された円筒状のフレーム39を備えている。可動支持体として機能するフレーム39は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。フレーム39の閉塞端は、ブロックバネ20の可動部14の内面にねじ止め固定されている。フレーム39の他端、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部には、センターヨーク36の一端が固定されている。これにより、センターヨーク36は、中心軸Cと同軸的に延びている。
【0033】
センターヨーク36の他端には、マグネット34が固定されている。エンドヨーク33はバックヨーク32に固定されている。マグネット34およびエンドヨーク33は、中心軸Cと同軸的に延びているとともに、互いに隙間を置いて対向している。固定子30の内周面にはコイル41が固定され、マグネット34の周囲に隙間を置いて対向している。これらマグネット34、ヨークおよびコイル41によりVCMを構成している。
【0034】
図7に示す第6の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、図4に示した第3の実施形態に係るアクチュエータのVCMとマグネットおよびコイルの配置を逆にした構成を有している。すなわち、推力発生機構16は、角柱形状のセンターヨーク36および角筒状のフレーム39を有している。センターヨーク36はバックヨーク32に固定され、ブロックバネ20の中心軸Cと同軸的に延びている。フレーム39は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。可動支持体として機能するフレーム39の一端は、ブロックバネ20の可動部14にねじ止め固定されている。フレーム39の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部には、センターヨーク36が隙間を置いて挿通されている。
【0035】
推力発生機構16は、例えば、2つの板状のマグネット34を有し、これらのマグネットは、フレーム39の他端部外周に固定され、センターヨーク36を間に挟んで互いに対向して配置されている。固定子ヨーク30の内面にコイル41が固定され、マグネット34と隙間を置いて対向している。これらマグネット34、ヨークおよびコイル41によりVCMを構成している。
【0036】
図8に示す第7の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、図5に示した第4の実施形態に係るアクチュエータのVCMとマグネットおよびコイルの配置を逆にした構成を有している。すなわち、推力発生機構16は、ブロックバネ20のフランジ23にねじ止め固定された円筒状の固定子ヨーク30、および固定子ヨークの開放端に固定され、この開放端を閉塞した円盤状のバックヨーク32を備えている。
【0037】
固定子ヨーク30内には、円柱形状のエンドヨーク33および円柱形状のセンターヨーク36が配設されている。推力発生機構16は、一端が閉塞された円筒状のフレーム39を備えている。可動支持体として機能するフレーム39は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。フレーム39の閉塞端は、ブロックバネ20の可動部14の内面にねじ止め固定されている。フレーム39の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部は、センターヨーク36と一体に形成されている。エンドヨーク33はバックヨーク32に固定されている。センターヨーク36およびエンドヨーク33は、中心軸Cと同軸的に延びているとともに、互いに隙間を置いて並んでいる。
【0038】
センターヨーク36の周囲には円筒状のマグネット34が固定され、フレーム39と一体的に移動可能に支持されている。マグネット34は、内周面側がS極、外周面側がN極に着磁されている。固定子30の内周面にはコイル41が固定され、マグネット34の周囲に隙間を置いて対向している。これらマグネット34、ヨークおよびコイル41によりVCMを構成している。
【0039】
第3、第4、第5、第6、第7の実施形態において、アクチュエータの他の構成は前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略した。第3、第4、第5、第6、第7の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
図9に示す第8の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、磁気的な吸引と反発を利用した推力発生に有利なソレノイド型として構成されている。
第8の実施形態に係るアクチュエータ10によれば、推力発生機構16は、固定子ヨーク30内に配設された円柱形状のマグネット34および円柱形状のセンターヨーク36を有している。マグネット34はバックヨーク32に固定され、中心軸Cと同軸的に設けられている。
【0041】
推力発生機構16は、可動支持体として機能するフレーム39を備えている。フレーム39は、ブロックバネ20内、支持部22の透孔21および固定子ヨーク30内に配設され、中心軸Cと同軸的に延びている。フレーム39の閉塞端は、ブロックバネ20の可動部14の内面にねじ止め固定されている。フレーム39の他端部、すなわち、固定子ヨーク30内に位置した端部は、センターヨーク36と一体に形成されている。センターヨーク36は、中心軸Cと同軸的に延びているとともに、マグネット34と互いに隙間を置いて並んでいる。マグネット34にはポールピース35が固定され、センターヨーク36と対向している。センターヨーク36にはムービングコイル40が巻装されている。
【0042】
マグネット34、ヨーク30、32、36およびムービングコイル40によりソレノイドを構成している。ムービングコイル40に通電して電磁石を構成することにより、ムービングコイルと磁石34との磁気的な吸引と反発を利用した推力Dが発生される。
【0043】
ソレノイド型の推力発生機構16において、マグネット34を可動、コイルを固定としてもよい。図10に示す第9の実施形態によれば、フレーム39の端部にエンドヨーク33およびマグネット34が並んで固定され、これらフレーム、エンドヨークおよびマグネットは、ブロックバネ20の中心軸Cと同軸的に延びている。エンドヨーク33およびマグネット34は固定子30内に位置している。
【0044】
推力発生機構16は、固定子ヨーク30内に配設された円柱形状のセンターヨーク36を有している。このセンターヨーク36はバックヨーク32に固定され、中心軸Cと同軸的に延びているとともに、マグネット34と隙間を置いて対向している。センターヨーク36の周囲にはコイル41が巻装され、固定子30の内周面と隙間を置いて対向している。マグネット34、ヨーク30、32、33、36およびコイル41によりソレノイドを構成している。
【0045】
第8および第9の実施形態において、アクチュエータの他の構成は前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。第6および第7の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0047】
例えば、アクチュエータの推力発生機構は、VCMやソレノイド型等の電磁力に限らず、変位量の違いはあるが、積層型圧電素子など推力を発生する機構を用いることができる。また、アクチュエータの制御性能を向上させる目的で、例えば、特許第3612670号に開示されているような粘弾性体をアクチュエータの支持バネ機構と拘束板との間に挟み込む構成としてもよい。この場合、支持バネ機構の直動にしたがって拘束板の間に設けられた弾性体に歪を生じさせ、共振周波数における非常に大きな振幅を熱に変換し消散させることができる。その結果、アクチュエータの減衰効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態に係るアクチュエータを一部破断して示す分解斜視図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿った上記アクチュエータの断面図。
【図3】図3は、この発明の第2の実施形態に係るアクチュエータを一部破断して示す分解斜視図。
【図4】図4は、この発明の第3の実施形態に係るアクチュエータを一部破断して示す分解斜視図。
【図5】図5は、この発明の第4の実施形態に係るアクチュエータを一部破断して示す分解斜視図。
【図6】図6は、この発明の第5の実施形態に係るアクチュエータの断面図。
【図7】図7は、この発明の第6の実施形態に係るアクチュエータの断面図。
【図8】図8は、この発明の第7の実施形態に係るアクチュエータの断面図。
【図9】図9は、この発明の第8の実施形態に係るアクチュエータの断面図。
【図10】図10は、この発明の第9の実施形態に係るアクチュエータの断面図。
【符号の説明】
【0049】
10…アクチュエータ、 12…支持バネ機構、 14…可動部、
16…推力発生機構、 20…ブロックバネ、 22…支持部、 25…バネ部、
26a、26b…バネスリット、 30…固定子ヨーク、 33…エンドヨーク、
34…マグネット、 36…センターヨーク、 38…コイルフレーム、
39…フレーム、 40…ムービングコイル、 41…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に動作方向が拘束された支持バネ機構と、この支持バネ機構により支持された可動部と、前記支持バネ機構の動作方向に沿った推力を発生し、前記可動部に印加する推力発生機構と、を備えたアクチュエータ。
【請求項2】
前記支持バネ機構は、枠状に形成されたブロックバネを備え、前記ブロックバネは、前記推力発生機構に連結された支持部と、前記支持部に隙間を置いて対向した前記可動部と、前記支持部と可動部との間を延びた一対のバネ部と、を有し、前記各バネ部は、前記一方向に弾性変形可能で他の方向への変位が拘束されている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ブロックバネの支持部およびバネ部は柱状に形成され、各バネ部は、それぞれ前記一方向と直交する方向に延びているとともに、前記一方向に隙間を置いて形成された複数のバネスリットを有している請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ブロックバネの各バネ部は、複数回折り曲げられた蛇腹条に形成され、各折曲げ部は前記一方向と直行する方向に、かつ互いに平行に延びている請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記推力発生機構は、前記支持バネ機構に固定されているとともに、前記可動部に連結されたボイスコイルモータを備えている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ボイルコイルモータは、前記支持バネ機構に固定され前記一方向と同軸的に延びた円筒状の固定子ヨークと、前記支持バネ機構内および前記固定子ヨーク内に前記一方向に沿って移動可能に設けられているとともに前記可動部に連結された端部を有する可動支持体と、前記可動支持体に巻装されているとともに前記固定子ヨーク内に設けられたムービングコイルと、前記ムービングコイルおよび固定子ヨークに対向して設けられたマグネットと、を備えている請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記可動支持体は筒状に形成され、前記ボイルコイルモータは、前記可動支持体内に設けられ前記ムービングコイルに対向したセンターヨークを有している請求項6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記マグネットは、前記センターヨークと並んで前記一方向と同軸的に設けられ、前記固定子ヨークに固定されている請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記可動支持体は角筒状に形成され、前記センターヨークは角柱状に形成され、前記ボイスコイルモータは、前記可動支持体の少なくとも一辺と対向して設けられた板状のマグネットを備えている請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記可動支持体は円筒状に形成され、前記センターヨークは円柱状に形成され、前記ボイスコイルモータは、前記固定子ヨークに固定され前記ムービングコイルの周囲に対向配置された筒状のマグネットを備えている請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記ボイルコイルモータは、前記支持バネ機構に固定され前記一方向と同軸的に延びた円筒状の固定子ヨークと、前記支持バネ機構内および前記固定子ヨーク内に前記一方向に沿って移動可能に設けられているとともに前記可動部に連結された端部を有する可動支持体と、前記可動支持体に固定され前記固定子ヨーク内に設けられたマグネットと、前記固定子ヨークに固定されて前記マグネットと対向したコイルと、を備えている請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記推力発生機構は、前記支持バネ機構に固定されているとともに、前記可動部に連結されたソレノイドを備えている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記ソレノイドは、前記支持バネ機構に固定され前記一方向と同軸的に延びた円筒状の固定子ヨークと、前記支持バネ機構内および前記固定子ヨーク内に前記一方向に沿って移動可能に設けられているとともに前記可動部に連結された端部を有する可動支持体と、前記可動支持体に巻装されているとともに前記固定子ヨーク内に設けられたムービングコイルと、前記固定子ヨークに固定され前記ムービングコイルと並んで前記一方向と同軸的に設けられたマグネットと、を備えている請求項12に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記ソレノイドは、前記支持バネ機構に固定され前記一方向と同軸的に延びた円筒状の固定子ヨークと、前記支持バネ機構内および前記固定子ヨーク内に前記一方向に沿って移動可能に設けられているとともに前記可動部に連結された端部を有する可動支持体と、前記可動支持体に固定され前記固定子ヨーク内に設けられたマグネットと、前記固定子ヨークに固定され前記マグネットと並んで前記一方向と同軸的に設けられたコイルと、を備えている請求項12に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−274793(P2007−274793A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95447(P2006−95447)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【Fターム(参考)】