説明

アクチュエータ

【課題】安定して、所定のロック位置でピストン部をロックして、ピストンロッドの後退移動を規制できるアクチュエータを提供すること。
【解決手段】アクチュエータ21は、ロック機構Rにより、ピストンロッドのピストン部51をロック位置UPでロックする。ロック時には、ピストン部の収納溝53に収納されていた係止リング71が、拡径し、シリンダ22の係止段部30の係止規制面31に当接させ、外周面側を、係止段部の外周規制面32に当接させ、さらに、内周側部位における前進移動側の内側面を、ピストン部のテーパ規制面56に当接させて、ピストン部とともに、ロックされる。そして、係止リングのピストン部外周面と外周規制面との間への嵌合を防止可能に、シリンダの先端壁部26側には、上死点UTへの配置時におけるピストン部のテーパ規制面とともに、係止リング71に対して、当接する天井規制面28が、配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のアクチュエータでは、フードパネルを持ち上げるものがあり、ガス発生器の作動時に発生するガスを駆動源とするピストンシリンダタイプとして構成されていた(例えば、特許文献1参照)。このアクチュエータでは、ピストンロッドが、シリンダ内を摺動可能なピストン部と、ピストン部から延びてシリンダ外へ突出し、保護対象物としての歩行者を受け止める受止材としてのフードパネルを、歩行者の受止位置まで上昇移動させるように支持する支持ロッド部と、を備えて構成されていた。このアクチュエータでは、作動時、ピストンロッドが、ピストン部を、上死点までシリンダ内を前進移動させつつ、支持ロッド部に支持させたフードパネルを持ち上げていた。そして、ピストンロッドは、上死点まで前進した後、ロック機構により後退移動を規制されて、フードパネルが歩行者を受け止めた際、歩行者の運動エネルギーを吸収可能に、支持ロッド部を曲げ塑性変形させていた。
【0003】
このアクチュエータのロック機構は、ピストン部の収納溝に収納された拡径可能な係止リングと、シリンダの内周面側に設けられた係止段部と、ピストン部の収納溝の側面に配置されたテーパ状のテーパ規制面と、を備えて構成さえていた。このロック機構の作動時には、ピストン部が上死点まで前進移動した際、係止リングが、拡径し、その後、ピストン部がロック位置まで後退移動すれば、係止リングが、後退移動側の部位を、係止段部の係止規制面に当接させて、後退移動を規制されるとともに、外周面側を、更なる拡径状態を規制されるように、係止段部の外周規制面に当接させ、さらに、内周側部位における前進移動側の内側面を、ピストン部のテーパ規制面に当接させて、縮径状態も規制され、その結果、係止リングが、シリンダの係止段部とピストン部のテーパ規制面との間で、ロックされ、そして、係止リングの前進移動側の内側面にテーパ規制面を当接させているピストン部も、ロックされて、ピストンロッドの後退移動が規制されることとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−262853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のアクチュエータでは、作動時のピストンロッドの前進移動速度が大きな場合、ピストン部が上死点で停止しても、係止リングが、前進移動の慣性力を強く受けて前進移動し、ピストン部のテーパ規制面における前進移動側の縁と、シリンダの係止段部における外周規制面との間に、嵌合され、その後のロック位置まで後退移動する前の状態で、ピストン部がロックされる虞れがあった。そして、このようなロック状態は、適正なロック位置での位置規制ではないことから、支持ロッドの傾斜を招いたり、その後の支持ロッド部の塑性変形時に、適正なロック位置までずれるように後退したり、あるいは、その位置で支持ロッド部の塑性変形を終了させたりして、安定した支持ロッド部の塑性変形状態を確保し難くなってしまう。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、安定して、所定のロック位置でピストン部をロックして、ピストンロッドの後退移動を規制できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、自動車用安全装置に使用されるピストンシリンダタイプとして、
ピストンロッドが、
シリンダ内を摺動可能なピストン部と、ピストン部から延びてシリンダ外へ突出し、保護対象物を受け止める受止材を、保護対象物の受止位置まで移動可能に支持する支持ロッド部と、を備えて構成されるとともに、
作動時、ピストン部を上死点までシリンダ内を前進移動させた後、ロック機構により後退移動を規制されて、支持ロッド部を、受止材によって受け止めた保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、曲げ塑性変形させる構成として、
ロック機構が、
拡径可能にピストン部の収納溝に収納されて、円形断面の弾性変形可能な線材からなる円環状の係止リングと、
シリンダの内周面側におけるピストン部のロック位置に配設されて、係止リングの後退移動側の部位に当接する係止規制面と、係止規制面の外周縁からピストンロッドの前進移動側に延びて、ピストン部のロック時に、拡径した係止リングの外周面に当接可能とする外周規制面と、を有した係止段部と、
ピストン部の収納溝におけるピストンロッドの前進移動側の側面に配置されて、前進移動側に向けて外開きのテーパ状とし、ピストン部のロック時、係止リングの内周側部位における前進移動側の内側面に、当接して、係止リングに当接する係止段部の係止規制面及び外周規制面と協働し、ピストン部の後退移動を規制するテーパ規制面と、
を備えて構成されるアクチュエータであって、
シリンダが、
ピストンロッドの支持ロッドを突出させて、ピストン部の上死点での配置位置を規定する先端壁部を備えるとともに、
係止段部における先端壁部側に配置されて、外周規制面から内側に延びて、上死点への配置時におけるピストン部のテーパ規制面とともに、係止リングの前進移動側の部位に対して、当接する天井規制面、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時、ピストンロッドのピストン部が、シリンダの先端壁部に規制される上死点まで前進移動すると、ピストン部の収納溝に収納されていた係止リングが、係止段部の外周規制面に当接するように、収納溝から拡径する。その際、係止リングが、前進移動する慣性力を大きくして、さらに前進移動しても、係止段部における先端壁部側に配置された天井規制面に当接し、その前進移動を停止される。すなわち、係止リングは、ピストンロッドの前進移動側の部位を、係止段部の外周規制面から内側に延びる天井規制面に当接させることから、ピストン部におけるテーパ規制面を含めた外周面側と、シリンダの係止段部における外周規制面と、だけの間に、嵌ることが防止される。そして、係止リングは、天井規制面とともにピストン部のテーパ規制面にも当接することから、ピストン部の上死点位置からロック位置までの後退移動時、テーパ規制面が、係止リングを係止段部の係止規制面側に押すことができる。
【0009】
そのため、ピストン部が上死点に配置された後にロック位置まで後退移動する際、係止リングは、ピストン部の外周面側と係止段部の外周規制面との間に嵌ること無く、円滑に、係止段部の係止規制面に当接するまで後退し、そして、係止規制面に当接して後退移動を規制される。さらに、係止リングは、外周面側が、更なる拡径状態を規制されるように、係止段部の外周規制面に当接され、かつ、内周側部位における前進移動側の内側面が、ピストン部のテーパ規制面に当接されて、縮径状態も規制され、その結果、係止リングが、シリンダの係止段部とピストン部のテーパ規制面との間のロック位置で、安定して、ロックされ、それに伴い、係止リングの前進移動側の内側面にテーパ規制面を当接させているピストン部も、ロック位置でロックされて、ピストンロッドの後退移動が規制される。
【0010】
そして、アクチュエータが、ピストンロッドの後退移動を規制されてロックされ、受止材が保護対象物を受け止めれば、ピストンロッドにおけるシリンダから突出した支持ロッド部が、安定した状態で曲げ塑性変形し、バラツクことなく、保護対象物の運動エネルギーを、所定量、的確に吸収することができる。
【0011】
したがって、本発明に係るアクチュエータは、安定して、所定のロック位置でピストン部をロックして、ピストンロッドの後退移動を規制することができる。
【0012】
そして、本発明に係るアクチュエータでは、天井規制面を、ピストンロッドの後退移動側に拡径するテーパ状に形成することが望ましい。このように構成すれば、係止リングが、ピストン部の上死点で、天井規制面と当接する際、天井規制面に摺動しつつピストン部のテーパ規制面側に移動できることから、確実に、係止リングは、天井規制面とテーパ規制面との両者に当接することができる。そのため、ピストン部が、その後のロック位置まで後退移動する際、テーパ規制面により、円滑に、係止リングを、係止段部の係止規制面に当接させるように、押圧することができ、一層、安定して、ロック位置でのピストン部のロックが可能となる。
【0013】
そして、天井規制面をテーパ状とする場合、上死点への配置時におけるピストン部のテーパ規制面と、天井規制面と、は、ピストンロッドの前進移動側の縁を、シリンダの軸方向に沿って略一致させるように、構成することが望ましい。このような構成では、ピストン部が上死点に配置されて、係止リングが慣性により前進する際、係止リングが、テーパ規制面と天井規制面との相互に狭まる部位に進入しつつ、安定して、テーパ規制面と天井規制面との両者の縁から離れた面状の部位に、当接されることから、一層、ピストン部の外周面と外周規制面との間で嵌合される事態を防止できる。
【0014】
この場合、テーパ規制面と天井規制面とを、拡径させる角度を相互に等しく構成するとともに、
係止段部の係止規制面を、係止リングを係止可能な状態として、内縁から外周規制面までの幅寸法を、係止リングの円形断面における直径寸法の1/2未満として設定することが望ましい。
【0015】
このような構成では、係止規制面の幅寸法が、係止リングの円形断面の半径寸法未満となって、シリンダの全周にわたって、係止リングが、その円形断面の半径寸法以上の部位を、係止規制面より内側に配置させることとなる。そして、テーパ規制面と天井規制面とが、拡径させる角度を相互に等しくさせている。そのため、ピストン部が上死点に配置されて、係止リングが慣性により前進する際、係止リングが、円形断面の中心を、テーパ規制面と天井規制面との間に配置させるようにして、テーパ規制面と天井規制面とに対して、均等に、当接させ易くなって、一層、安定して、ピストン部の外周面と外周規制面との間で嵌合される事態を防止でき、かつ、その後のロック位置への円滑な移動を確保できる。
【0016】
さらに、天井規制面が、後退移動側に拡径するテーパ状に形成されれば、シリンダの先端壁部側を、筒状の金属パイプ材から構成されるパイプ部と、パイプ部を縮径させるようにかしめてパイプ部の内周側に固定されるヘッド部と、を設けて構成する場合、簡便に製造することができる。この場合、例えば、パイプ部は、ピストン部を摺動させる小径部と、小径部の先端壁部側において、拡径されて筒状に延びる大径部と、を設けて構成するとともに、係止段部の係止規制面を、小径部と大径部との段差部位から構成する。また、ヘッド部は、ピストンロッドの支持ロッド部を挿通させる挿通孔を設けるとともに、天井規制面と係止段部の外周規制面とを、挿通孔の内周縁から延設させて、ヘッド部の内周面側に、構成する。このような構成では、ヘッド部の製造時における挿通孔の穴開け加工とともに、外周規制面と天井規制面とを切削加工する際、天井規制面が、外周規制面から直交して配設されておらず、拡開するようにテーパ状としており、シリンダの軸直交方向の幅寸法を狭くしていても、ヘッド部の内周面側に切削具を配置させ易く、簡便に加工を行える。そして、上記の構成のシリンダでは、先端壁部側を含めた全体を切削加工等せずに、パイプ材からなるパイプ部とヘッド部とを準備した後、単に、かしめて固定するだけで製造できて、製造工数・コストを抑えて、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のアクチュエータが使用される跳ね上げ装置(フード跳ね上げ装置)を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】実施形態の跳ね上げ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図3】実施形態の跳ね上げ装置と車両のヒンジ部とを示す前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態の跳ね上げ装置の作動時を示す概略縦断面図である。
【図5】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図6】実施形態のアクチュエータの作動前における先端壁部付近を示す概略拡大縦断面図である。
【図7】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の作動を順に説明するピストン部の状態を示す拡大概略部分縦断面図である。
【図8】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の係止リングの係止段部への係止状態を順に説明する拡大概略部分縦断面図である。
【図9】実施形態のアクチュエータに使用する係止リングの平面図と斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータ21が使用される自動車用安全装置は、フード跳ね上げ装置(以下「跳ね上げ装置」と省略する)Uであり、この跳ね上げ装置Uは、図1,2に示すように、車両Vにおけるフードパネル10の後端10c側における左縁10d付近と右縁10e付近とに配設されるもので、それぞれ、アクチュエータ21と、フードパネル10の後端10cの下面に配置される受け座16と、を備えて構成されている。そして、跳ね上げ装置Uは、作動時に、図3,4に示すように、アクチュエータ21がピストンロッド50を上昇させ、受け座16を介在させて、フードパネル10の後端10cを跳ね上げるように上昇させることとなる。
【0019】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(図1参照)の前後と上下の方向に一致し、左右の方向は、車両Vの前方側から後方側を見た際の左右の方向に一致させている。
【0020】
また、実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、跳ね上げ装置Uのアクチュエータ21における駆動源としてのガス発生器35(図5参照)を作動させるように、構成されている。
【0021】
さらに、フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端10c近傍に配置されるヒンジ部11により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム合金等からなる板金製として、図3に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ21が作動されて、図4に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができる。
【0022】
ヒンジ部11は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設され(図1参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2aに固定されるヒンジベース12と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム14と、を備えて構成されている(図2,3参照)。各ヒンジアーム14は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース12側の元部端14aが、支持軸13を利用してヒンジベース12に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム14は、元部端14aから離れる先端14b側に、先端14bから前後方向に略沿うように延びる連結板部15を備え、この連結板部15が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に溶接等を利用して結合されている。
【0023】
そして、実施形態の場合、連結板部15は、前部側の下面を、上昇時のピストンロッド50の先端(上端)50a(支持ロッド部60の頭部61)の当接部位15aとしている。すなわち、連結板部15の前部側は、ピストンロッド50の上端50aの受け座16となって、受け座16の下面が、上端50aの受面16aとしている(図3,4参照)。
【0024】
各支持軸13は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。そして、フードパネル10を開く際には、図3の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側(図1参照)を前開きで上昇させれば、フードパネル10を前開きで開くことができる。
【0025】
また、ヒンジアーム14の先端14b付近には、下縁を略円形状に切り欠くように構成される切欠凹部14cが、形成されており、この切欠凹部14cの周囲の部位が、アクチュエータ21の作動時においてピストンロッド50がフードパネル10の後端10cを押し上げる際に、塑性変形する塑性変形部14dとして、フードパネル10の後端10cの上昇を可能にしている(図4参照)。なお、フードパネル10の前端10f側には、通常閉塞用として、前端10fに配置された図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構が配設されており、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れない。
【0026】
さらに、フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0027】
実施形態のアクチュエータ21は、図3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト19止めされる断面U字形状の取付ブラケット18により保持されて、フードパネル10の後端10c側における左縁10d及び右縁10eの下方となる各ヒンジ部11の下方に配設されている。各アクチュエータ21は、図5に示すように、軸方向を上下方向に沿わせるように配置させて取付固定されるシリンダ22と、シリンダ22内に作動用流体としてのガスを流入させるガス発生器35と、シリンダ22から上方へ突出するように配設されるピストンロッド50と、前進移動後(上昇移動後)のピストンロッド50の後退移動(下降移動)を防止するロック機構Rと、を備えて構成されている。
【0028】
ロック機構Rは、図6,7に示すように、係止リング71、ピストンロッド50のピストン部51に設けられる収納溝53のテーパ規制面56、シリンダ22の先端壁部26側に設けられる係止段部30の係止規制面31及び外周規制面32、から構成されている。
【0029】
シリンダ22は、図5に示すように、ピストンロッド50のピストン部51を摺動させる円筒状の本体部23と、本体部23の上端側を塞ぐ先端壁部26と、本体部23の下端側を塞ぐ元部端壁部34と、を備えて構成されている。本体部23は、ピストン部51の外形形状に対応した円形の開口とした摺動孔24を、上下方向に貫通させており、アクチュエータ21の作動時、ピストン部51が摺動孔24の内周面24aを摺動して、上昇(前進移動)することとなる。
【0030】
なお、シリンダ22は、鋼製のパイプ材からなるパイプ部38と、先端壁部26を構成するヘッド部47と、元部端壁部34を構成するガス発生器35と、から構成されている。さらに、パイプ部38は、ピストン部51を摺動させる円筒状の小径部39と、小径部39の両端から拡径して略円筒状に延びる大径部40,43とを備えて構成されている。ヘッド部47は、後述する挿通孔27、天井規制面28、外周規制面32等を形成された後、大径部40内に配置され、大径部40を縮径させるように、かしめ部41をかしめて塑性変形させることにより、大径部40に固定される。元部端壁部34を構成するガス発生器35は、大径部43内に配置された後、かしめ部44,45等を縮径させるようにかしめて塑性変形させることにより、大径部43に固定されて、シリンダ22が形成されることとなる。なお、ヘッド部47を大径部40内に配置させる前には、ピストンロッド50をヘッド部47に挿通させて組み付けておくことから、シリンダ22の形成時、同時に、アクチュエータ21も形成されることとなる。なお、図5に示す符号36,48で示す部材は、パッキンである。
【0031】
そして、シリンダ22には、図5〜7に示すように、本体部23における先端壁部26近傍に、ピストン部51を摺動させる本体部23の内周面24aより拡径して凹む係止段部30が、シリンダ22の周方向の全周にわたって、形成されている。この係止段部30は、既述したように、ロック機構Rを構成する係止規制面31と外周規制面32とを配設させている部位であり、ピストン部51のロック位置UPを規定する。すなわち、この係止段部30の配置位置は、ピストンロッド50が上昇時(前進移動時)の上死点UTに配置された後の後退時、係止リング71を介在させて、ピストン部51の後退移動を規制する位置である。そして、この位置でピストン部51がロックされ、ピストンロッド50の後退移動が規制されれば、その位置が、ピストンロッド50とフードパネル10との歩行者の受止位置RP(図4参照)となり、その位置で、支持ロッド部60が曲げ塑性変形すれば、安定した状態の変形状態を確保できる。
【0032】
係止規制面31は、図6〜8に示すように、ピストンロッド50の前進移動や後退移動の進退方向に沿う本体部23の軸方向CDと、略直交する面として、係止リング71の下降(後退移動)の規制時に、係止リング71の後退移動側の部位(後退側の面・後退側面)73に当接するように、配設されている。外周規制面32は、係止規制面31の外周縁から本体部23の軸方向CDに沿ってピストンロッド50の前進移動側(上方)に延びて、係止リング71の後退移動の規制時に、拡径した係止リング71の外周面72に当接するように、配設されている。
【0033】
また、係止規制面31は、図8に示すように、本体部23の内周面24a側の内縁31aから外周規制面32までの本体部23の軸直交方向に沿う幅寸法CBが、外周面72を外周規制面32に当接させた状態の係止リング71の内周側部位74を、本体部23の内周面24aより本体部23の軸心CO側へ突出させるように、設定されて、配設されている。さらに、係止規制面31の幅寸法CBは、係止規制面31が係止リング71を係止可能な状態として、係止リング71の円形断面における直径寸法D(図9参照)の1/2未満として設定されている。実施形態の場合、係止リング71の直径寸法Dは、1.5φとして、係止規制面31の幅寸法CBは、0.7mmとしている。
【0034】
また、シリンダ22の先端壁部26は、ピストンロッド50のピストン部51を挿通不能として、ピストンロッド50の支持ロッド部60を挿通可能な挿通孔27を、中央に配設させている。
【0035】
そして、係止段部30における先端壁部26側には、外周規制面32から、本体部23の内周面24aに一致する位置まで内側に延びる天井規制面28が、シリンダ22の周方向の全周にわたって、形成されている。この天井規制面28は、上死点UTへの配置時におけるピストン部51のテーパ規制面56とともに、係止リング71の前進移動側の部位76に対して、詳しくは、前進移動側の外側面77に対して、当接する。
【0036】
実施形態の場合、天井規制面28は、ピストンロッド50の後退移動側に拡径するテーパ状に形成されている。さらに、天井規制面28は、上死点UTへの配置時におけるピストン部51のテーパ規制面56と、ピストンロッド50の前進移動側の縁28a,56a相互を、シリンダ22の軸方向CDに沿って一致させるように、構成されている。さらに、実施形態では、天井規制面28は、テーパ規制面56とともに、拡径させる角度θを相互に等しい45°として、構成されている。
【0037】
本体部23の下端側の元部端壁部34を構成するガス発生器35は、マイクロガスジェネレータが使用されており、下端面に、図示しない制御回路からの電気信号を入力させるリード線のコネクタが、接続されている。そして、ガス発生器35は、図示しない制御回路からの電気信号を入力させると、内蔵されている火薬を燃焼させて燃焼ガスを発生させ、その作動用ガス(燃焼ガス)Gを作動用流体として、シリンダ22内のピストン部51の底面(下面)51b側へ供給することとなる。
【0038】
ピストンロッド50は、図5に示すように、シリンダ22内に配置されるピストン部51と、ピストン部51から上方に延びる支持ロッド部60と、を備えて構成されている。ピストン部51は、シリンダ22の本体部23における摺動孔24の内周面24aに対し、係止リング71とOリング68とを介在させて、摺動可能な略円柱状としている。ピストン部51の外周面51aには、底面51b側近傍に、Oリング68を嵌合させる嵌合溝52が形成されるとともに、天井面51c側近傍に、係止リング71を収納可能な収納溝53が形成されている。
【0039】
収納溝53は、係止リング71を収納した状態でピストンロッド50の前進移動(上昇)を可能にする凹み形状に形成されている。収納溝53は、図7,8に示すように、収納溝53の底部に配置されて、ピストンロッド50の軸方向PDに沿う内周面(底面)54と、ピストンロッド50の後退移動側の面(後退移動側の側面)として、内周面54の下縁54aからピストンロッド50の軸方向PDに直交するように延びる後退側面(後退側の面)55と、ピストンロッド50の前進移動側の面として、内周面54の上縁54bから前進移動側に向けて外開きのテーパ状とするテーパ規制面56と、を備えて構成されている。
【0040】
なお、実施形態の場合、ピストン部51の係止リング71やOリング68を除いた外周面51aの外径寸法BDは、シリンダ22の本体部23の内周面24aの内径寸法CI(実施形態では14.2φ)より、僅かに小さな13.8φとしている。
【0041】
そして、テーパ規制面56は、ピストンロッド50の前進移動後の拡径した状態で、かつ、係止段部30の係止規制面31と外周規制面32とに当接させた状態の係止リング71の内周側部位74における前進移動側の内側面75に、当接するように、配設されている。このようなテーパ規制面56が係止リング71の内側面75に当接可能な構成は、係止リング71の円形断面の直径寸法Dに対して、シリンダ22の係止段部30における係止規制面31の幅寸法CB、ピストン部51の外径寸法BD、収納溝53の深さ寸法(後退側面55の幅寸法)PB、を調整して、設定することととなる。
【0042】
また、収納溝53の配置位置は、既述したように、アクチュエータ21の作動に伴ってピストンロッド50が上昇し、ピストン部51の天井面51cが、Cリング66を介在させて、シリンダ22の先端壁部26の下面26aに当たる上死点UTへの配置時、テーパ規制面56の縁56aが、ピストンロッド50の軸方向PDに沿って、天井規制面28の縁28aに一致するように、構成されている。
【0043】
支持ロッド部60は、図5に示すように、シリンダ22の軸方向(上下方向)CDに沿って配設される丸棒状の軸部62と、軸部62の上端側にねじ込まれて配設されて、軸部62より外径寸法を大径とした円柱状の頭部61と、を備えて構成されている。頭部61は、ピストンロッド50の上昇移動時に、フードパネル10側に設けられた受け座16の受面16aに当接して、フードパネル10の後端10cを上方に押し上げることとなる。
【0044】
また、支持ロッド部60は、ピストン部51とともに、鋼等の金属材から構成されている。そして、支持ロッド部60は、上死点UTに到達した後にロック機構Rにロックされた際、フードパネル10の後端10cを押し上げ完了位置(フードパネル10の歩行者の受止位置RP、図4参照)UPまで上昇(前進移動)させることとなり、その後、先端壁部26から突出した挿通孔27の近傍の軸部62の部位を、屈曲点63として、曲げ塑性変形可能に構成されている。
【0045】
さらに、支持ロッド部60の頭部61近傍には、Cリング66を嵌めるための凹溝64が形成されている。凹溝64に嵌められたCリング66は、作動前のアクチュエータ21のピストンロッド50の突出を防止するように、先端壁部26の下面26aに当接する。すなわち、このCリング66は、アクチュエータ21の作動前には、凹溝64に嵌った状態で先端壁部26の下面26aに当接することから、ピストンロッド50のシリンダ22からの飛び出しが防止される。そして、Cリング66は、アクチュエータ21の作動時、ピストンロッド50の前進移動に伴い、拡径するように変形して凹溝64から外れて、円滑に、ピストンロッド50を前進移動させることとなる。なお、頭部61付近の軸部62には、アクチュエータ21の作動前のシリンダ22内のシール性を確保するために、頭部61と先端壁部26とに圧接されるOリング69が、嵌められている。
【0046】
ロック機構Rを構成する係止リング71は、図9に示すように、断面を円形としたばね鋼からなる線材を円環状に曲げ加工して、形成されており、リング形状の一部の端面相互に、縮径可能な隙間71aを設けて構成されている。そして、係止リング71は、図7,8に示すように、シリンダ22内へのピストン部51の配置時、収納溝53内に縮径させて収納されている。そして、係止リング71は、拡径して収納溝53から係止段部30に進入する際、係止段部30の係止規制面31とテーパ規制面56とに跨り、かつ、ロック時に、外周規制面32に当接できるように、寸法が設定されている。
【0047】
実施形態の場合、縮径させない状態での係止リング71の外径寸法RDは、15.5φ、内径寸法RIは、12.5φとしている。さらに、係止段部30の外周規制面32の内径寸法IDは、15.6φ、天井壁部26の挿通孔27付近の内周面26bを含めて、シリンダ22の本体部23の内周面24aの内径寸法CIは、14.2φとしている(図8,6参照)。そのため、係止リング71は、ピストン部51の収納溝53に収納された状態で、ピストンロッド50ごとシリンダ22の本体部23内に収納されれば、本体部23の内周面24aを摺動する際も含めて、シリンダ22の本体部23の内周面24aの内径寸法CIまで、縮径された状態とし、そして、係止段部30の部位に配置されれば、外周面72の全周を均等に外周規制面32に当接できないものの(縮径させない状態での係止リング71の外径寸法RDが、0.1mm分、外周規制面32の内径寸法IDより小さい)、その後のロック位置UPへの配置には、テーパ規制面56の当接により、拡径され、外周面72の全周を外周規制面32に押圧させる状態となる。
【0048】
実施形態の跳ね上げ装置Uでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vの歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータ21におけるガス発生器35が作動されることとなり、シリンダ22内にガス発生器35から発生した作動用ガスが流入されれば、図5のA,Bに示すように、シリンダ22内の内圧が高まり、ピストンロッド50のシリンダ22内のピストン部51がその圧力を受けて、ピストンロッド50の支持ロッド部60とともに上昇する。そして、支持ロッド部60が、図3,4に示すように、頭部61を受け座16の受面16aに押し当ててフードパネル10の後端10cを上昇させ、ピストン部51が、天井面51cを、Cリング66を介在させて、シリンダ22の先端壁部26に当接させ、ピストンロッド50が、上死点UTに配置される。その後、ピストンロッド50が、後退移動してロック位置UPに配置されれば(図5のB参照)、ロック機構Rが作動されて、ピストンロッド50の下降(後退移動)が規制されてロックされることなる。
【0049】
その際、実施形態のアクチュエータ21では、ピストンロッド50のピストン部51が、図7,8のA,Bに示すように、シリンダ22の先端壁部26に規制される上死点UTの位置まで前進移動すると、ピストン部51の収納溝53に収納されていた係止リング71が、係止段部30の外周規制面32に当接するように、収納溝53から拡径する。そしてこの時、係止リング71が、前進移動する慣性力を大きくして、さらに前進移動しても、図7のB、図8のBに示すように、係止段部30における先端壁部26側に配置された天井規制面28に当接し、その前進移動を停止される。すなわち、係止リング71は、ピストンロッド50の前進移動移動側の部位76を、係止段部30の外周規制面32から内側に延びる天井規制面28に当接させることから、ピストン部51におけるテーパ規制面56を含めた外周面51a側と、シリンダ22の係止段部30における外周規制面32と、だけの間に、嵌ることが防止される。そして、係止リング71は、天井規制面28とともにピストン部51のテーパ規制面56にも当接することから、ピストン部51の上死点UT位置からロック位置UPまでの後退移動時、テーパ規制面56が、係止リング71を係止段部30の係止規制面31側に押すことができる。
【0050】
そのため、ピストン部51が上死点UTに配置された後にロック位置UPまで後退移動する際、係止リング71は、ピストン部51の外周面51a側と係止段部30の外周規制面32との間に嵌ること無く、図7,8のCに示すように、円滑に、係止段部30の係止規制面31に当接するまで後退し、そして、係止規制面31に当接して後退移動を規制される。さらに、係止リング71は、外周面72側が、更なる拡径状態を規制されるように、係止段部30の外周規制面32に当接され、かつ、内周側部位74における前進移動側の内側面75が、ピストン部51のテーパ規制面56に当接されて、縮径状態も規制され、その結果、係止リング71が、シリンダ22の係止段部30とピストン部51のテーパ規制面56との間のロック位置UPで、安定して、ロックされ、それに伴い、係止リング71の前進移動側の内側面75にテーパ規制面56を当接させているピストン部51も、ロック位置UPでロックされて、ピストンロッド50の後退移動が規制される。
【0051】
そして、アクチュエータ21が、ピストンロッド50の後退移動を規制されてロックされ、フードパネル10が上方から斜め後下方向に移動する歩行者の荷重F(図4参照)を受け止めれば、フードパネル10が塑性変形するとともに、歩行者の受け止め時におけるフードパネル10の後端10c下面(受け面)16aの下降に伴って、フードパネル10の受面16aに上端50aの頭部61を当接させていた支持ロッド部60も、図4の二点鎖線に示すように、屈曲点63から上方の頭部61側を後方側へ折曲させるように、安定した状態で曲げ塑性変形することとなって、バラツクことなく、歩行者の運動エネルギーを、所定量、的確に吸収することができる。
【0052】
したがって、実施形態のアクチュエータ21は、安定して、所定のロック位置UPでピストン部51をロックして、ピストンロッド50の後退移動を規制することができる。
【0053】
そして、実施形態のアクチュエータ21では、図7,8に示すように、天井規制面28が、ピストンロッド50の後退移動側に拡径するテーパ状に形成されている。そのため、係止リング71が、ピストン部51の上死点UTで、天井規制面28と当接する際、天井規制面28に摺動しつつピストン部51のテーパ規制面56側に移動できることから、確実に、係止リング71は、天井規制面28とテーパ規制面56との両者に当接することができる。そのため、実施形態では、ピストン部51が、その後のロック位置UPまで後退移動する際、テーパ規制面56により、円滑に、係止リング71を、係止段部30の係止規制面31に当接させるように、押圧することができ、一層、安定して、ロック位置UPでのピストン部51のロックが可能となる。
【0054】
なお、この点を考慮しなければ、天井規制面28は、シリンダ22の軸方向CDと直交方向に設けてもよい。
【0055】
また、実施形態の場合、天井規制面28をテーパ状とし、さらに、上死点UTへの配置時におけるピストン部51のテーパ規制面56と、天井規制面28と、が、ピストンロッド50の前進移動側の縁56a,28aを、シリンダ22の軸方向CDに沿って一致させるように、構成している。そのため、実施形態では、ピストン部51が上死点UTに配置されて、係止リング71が慣性により前進する際、係止リング71が、テーパ規制面56と天井規制面28との相互に狭まる部位に進入しつつ、安定して、テーパ規制面56と天井規制面28との両者の縁56a,28aから離れた面状の部位56b,28bに、当接されることから、一層、ピストン部51の外周面51aと外周規制面32との間で嵌合される事態を防止できる。
【0056】
さらに、実施形態の場合、テーパ規制面56と天井規制面28が、拡径させる角度θを相互に等した45°として、係止段部30の係止規制面31が、係止リング71を係止可能な状態として、内縁31aから外周規制面32までの幅寸法CBを、係止リング71の円形断面における直径寸法Dの1/2未満として設定されている。
【0057】
そのため、実施形態では、係止規制面31の幅寸法CBが、係止リング71の円形断面の半径寸法未満となって、シリンダ22の全周にわたって、係止リング71が、その円形断面の半径寸法以上の部位を、係止規制面31より内側に配置させることとなる。そして、テーパ規制面56と天井規制面28とが、拡径させる角度θを相互に等しくさせている。そのため、ピストン部51が上死点UTに配置されて、係止リング71が慣性により前進する際、係止リング71が、円形断面の中心WO(図8のB参照)を、テーパ規制面56と天井規制面28との間に配置させるようにして、テーパ規制面56と天井規制面28とに対して、均等に、当接させ易くなって、一層、安定して、ピストン部51の外周面51aと外周規制面32との間で嵌合される事態を防止でき、かつ、その後のロック位置UPへの円滑な移動を確保できる。なお、係止段部30の係止規制面31が係止リング71を係止可能な幅寸法CBとしては、安定した係止状態を考慮すれば、係止リング71の直径寸法Dの1/6以上を確保することが望ましい。
【0058】
そしてさらに、実施形態では、シリンダ22の先端壁部26側を、筒状の金属パイプ材から構成されるパイプ部38と、パイプ部38を縮径させるようにかしめてパイプ部38の内周側に固定されるヘッド部47と、を設けて構成している。また、パイプ部38が、ピストン部51を摺動させる小径部39と、小径部39の先端壁部26側において、拡径されて筒状に延びる大径部40と、を設けて構成するとともに、係止段部30の係止規制面31を、小径部39と大径部40との段差部位38aから構成している。さらに、ヘッド部47が、ピストンロッド50の支持ロッド部60を挿通させる挿通孔27を設けるとともに、天井規制面28と係止段部30の外周規制面32とを、挿通孔27の内周縁から延設させて、ヘッド部47の内周面47a側に、構成している。このような構成では、ヘッド部47の製造時における挿通孔27の穴開け加工とともに、外周規制面32と天井規制面28とを切削加工する際、天井規制面28が、外周規制面32から直交して配設されておらず、拡開するようにテーパ状としており、シリンダ22の軸直交方向の幅寸法(係止規制面31の幅寸法CBと一致する)を狭くしていても、ヘッド部47の内周面47a側に切削具を配置させ易く、簡便に加工を行える。そして、実施形態の構成のシリンダ22では、先端壁部26側を含めた全体を切削加工等せずに、パイプ材からなるパイプ部38とヘッド部47、さらに、実施形態では、ガス発生器35とを準備した後、単に、かしめて固定するだけで製造できて、製造工数・コストを抑えて、製造することができる。
【0059】
なお、実施形態のアクチュエータ21では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向は、これに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に本発明のアクチュエータを使用してもよく、また、本発明のアクチュエータが使用される自動車用安全装置は、フードパネル10を上昇させる跳ね上げ装置U以外でもよい。例えば、運転者や助手席の乗員の膝をニーパネルにより受け止める自動車用安全装置としての膝保護装置のアクチュエータに、本発明を適用してもよい。
【0060】
さらに、実施形態のアクチュエータ21では、作動信号の入力時に着火させてガスを発生させるガス発生器35をシリンダ22の内部に配設させた場合を示したが、ピストンロッド50を移動させる駆動源として、水、油、空気等を作動用流体として、それらの水圧、油圧、エア圧等を利用して、ピストンロッド50を上昇させてもよい。
【0061】
さらにまた、ピストンロッドを前進移動させる駆動源としては、ソレノイドの吸引力を利用したり、圧縮させたばねの付勢力(復元力)等を利用することができる。例えば、ソレノイドの吸引力を利用する場合には、可動鉄心をピストンロッドとしてシリンダ内に配設し、シリンダ内の可動鉄心の周囲に配置させた励磁コイルに通電すれば、ピストンロッドを前進移動させることができる。また、ばねを利用する場合には、圧縮させたコイルばねの自由端側にピストンロッドを接続させるとともに、引き込み可能にソレノイド等から構成するストッパで、ピストンロッド若しくは圧縮コイルばねの先端を係止させておき、係止を解除させるようにストッパを引き込ませれば、ピストンロッドが圧縮コイルばねの復元する付勢力により、前進移動することとなる。
【符号の説明】
【0062】
10…(受止材)フードパネル、
21…アクチュエータ、
22…シリンダ、
26…先端壁部、
27…挿通孔、
28…天井規制面、
30…係止段部、
31…係止規制面、
32…外周規制面、
38…パイプ部、
39…小径部、
40…大径部、
47…ヘッド部、
50…ピストンロッド、
51…ピストン部、
53…収納溝、
56…テーパ規制面、
60…支持ロッド部、
71…係止リング、
R…ロック機構、
V…車両、
U…(自動車用安全装置)フード跳ね上げ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用安全装置に使用されるピストンシリンダタイプとして、
ピストンロッドが、
シリンダ内を摺動可能なピストン部と、該ピストン部から延びて前記シリンダ外へ突出し、保護対象物を受け止める受止材を、保護対象物の受止位置まで移動可能に支持する支持ロッド部と、を備えて構成されるとともに、
作動時、前記ピストン部を上死点までシリンダ内を前進移動させた後、ロック機構により後退移動を規制されて、前記支持ロッド部を、前記受止材によって受け止めた保護対象物の運動エネルギーを吸収可能に、曲げ塑性変形させる構成として、
前記ロック機構が、
拡径可能に前記ピストン部の収納溝に収納されて、円形断面の弾性変形可能な線材からなる円環状の係止リングと、
前記シリンダの内周面側における前記ピストン部のロック位置に配設されて、前記係止リングの後退移動側の部位に当接する係止規制面と、該係止規制面の外周縁から前記ピストンロッドの前進移動側に延びて、前記ピストン部のロック時に、拡径した前記係止リングの外周面に当接可能とする外周規制面と、を有した係止段部と、
前記ピストン部の収納溝における前記ピストンロッドの前進移動側の側面に配置されて、前進移動側に向けて外開きのテーパ状とし、前記ピストン部のロック時、前記係止リングの内周側部位における前進移動側の内側面に、当接して、前記係止リングに当接する前記係止段部の前記係止規制面及び前記外周規制面と協働し、前記ピストン部の後退移動を規制するテーパ規制面と、
を備えて構成されるアクチュエータであって、
前記シリンダが、
前記ピストンロッドの前記支持ロッドを突出させて、前記ピストン部の上死点での配置位置を規定する先端壁部を備えるとともに、
前記係止段部における前記先端壁部側に配置されて、前記外周規制面から内側に延びて、上死点への配置時における前記ピストン部の前記テーパ規制面とともに、前記係止リングの前進移動側の部位に対して、当接する天井規制面、を備えて構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記天井規制面が、前記ピストンロッドの後退移動側に拡径するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
上死点への配置時における前記ピストン部の前記テーパ規制面と、前記天井規制面と、が、前記ピストンロッドの前進移動側の縁を、前記シリンダの軸方向に沿って略一致させるように、構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記テーパ規制面と前記天井規制面とが、拡径させる角度を相互に等しくして、構成されるとともに、
前記係止段部の前記係止規制面が、前記係止リングを係止可能な状態として、内縁から前記外周規制面までの幅寸法を、前記係止リングの円形断面における直径寸法の1/2未満として設定されていることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記シリンダの前記先端壁部側が、筒状の金属パイプ材から構成されるパイプ部と、該パイプ部を縮径させるようにかしめて前記パイプ部の内周側に固定されるヘッド部と、を備えて構成され、
前記パイプ部が、前記ピストン部を摺動させる小径部と、該小径部の前記先端壁部側において、拡径されて筒状に延びる大径部と、を備えて構成されるとともに、前記係止段部の前記係止規制面を、前記小径部と前記大径部との段差部位から構成し、
前記ヘッド部が、前記ピストンロッドの前記支持ロッド部を挿通させる挿通孔を備えるとともに、前記天井規制面と前記係止段部の前記外周規制面とを、前記挿通孔の内周縁から延設させて、前記ヘッド部の内周面側に、構成していることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−208738(P2011−208738A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77565(P2010−77565)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】