説明

アクチュエータ

【課題】 電解質を高濃度に含有するポリウレタンの中間層を生産性良く作製することができ、かつ発生力の高いアクチュエータ素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 一対の電極層と、該一対の電極層の間に配置され、電解質およびポリウレタンを有する中間層と、を有し、該電極層間に電圧が印加されると変形するアクチュエータであって、前記中間層における前記電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下であり、かつ、前記ポリウレタンが少なくとも、一般式(1)で示される化合物と、一般式(2)で示される化合物との反応によって得られるものであることを特徴とするアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン移動型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ポリマーを材料とするアクチュエータの開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、オキシエチレン基の含有率が20〜90重量%であるポリウレタン樹脂をイオン液体に数日浸漬することで、ポリウレタン量に対して、イオン液体を150〜300重量%をも含有するポリウレタンゲル膜が得られることが開示されている。なお、イオン液体とは、室温でも液体で存在する不揮発性の塩である。また、支持電解質を加えなくても電流を流すことができ、かつ電位窓も広いことから電解液としての利用が広くなされている。
【0004】
このようなイオン液体を高濃度含有させたポリウレタンゲル膜は、イオン移動型アクチュエータとして利用した場合、その高いイオン量のために、良好な駆動特性が得られる。つまり、例えば該ポリウレタンゲル膜を挟持するように電極を配置し、三層(電極/中間層/電極)構成にすることで、該ポリウレタンゲル膜中のイオン液体のイオンが電圧印加に伴い電極層に移動して変形するイオン移動型アクチュエータへの利用が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−057919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のポリウレタンゲル膜には、下記の実用面での課題があった。
【0007】
第一に、高ヤング率のポリウレタンゲルを得ることが難しい点である。十分に内部までイオン液体を浸透させるためには、やわらかいポリウレタン材料が用いられるため、膜を堅くできない場合がある。結果、アクチュエータ応用においては、素子の機械特性向上に起因する発生力向上に限界があった。
【0008】
第二に、生産性が悪い点である。イオン液体の含有方法は浸漬であり、含浸量に対して大量のイオン液体を必要とし、かつ浸漬時間に数日を要するものであった。
【0009】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、電解質を高濃度に含有するポリウレタンの中間層を生産性良く作製することができ、かつ発生力の高いアクチュエータ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、一対の電極層と、該一対の電極層の間に配置され、電解質およびポリウレタンを有する中間層と、を有し、該電極層間に電圧が印加されると変形するアクチュエータであって、
前記中間層における前記電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下であり、かつ、前記ポリウレタンが少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と、下記一般式(2)で示される化合物との反応によって得られるものであることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1、R2およびR3は、各々、水素原子あるいは置換基または官能基を有していてもよい炭化水素基を表しており、またnは1から10の整数である。)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R4、R5およびR6は、各々、官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。またmは、各々1から30の整数であり、x、y、zはそれぞれ0あるいは1以上の整数である。なお、R4およびR6は数種類の炭化水素基から形成されていても良い。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高ヤング率且つイオン液体を高濃度に含有する中間層を得ることが可能となり、結果、アクチュエータ応用においては、素子の機械特性向上に起因する発生力向上が行える。また、イオン液体を高濃度に含有する中間層を生産性良く作製することができ、実用性に優れたアクチュエータ素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のアクチュエータの一実施形態を示す概略図である。
【図2】アクチュエータ内でのイオンの移動を示した模式図であり、(a)が電圧印加前の状態を示す図であり、(b)が電圧印加後の状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の一例である、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリエステルポリオールとイオン液体との相互作用を分子軌道計算により求めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(アクチュエータの構成)
本発明に係るアクチュエータは、一対の電極層と、該一対の電極層の間に配置され、電解質およびポリウレタンを有する中間層と、を有し、該電極層間に電圧が印加されると変形するアクチュエータであって、前記中間層における前記電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%(wt%)以上300質量%以下であり、かつ、前記ポリウレタンが少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と、下記一般式(2)で示される化合物との反応によって得られるものであることを特徴とする。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1、R2およびR3は、各々、水素原子あるいは置換基または官能基を有していてもよい炭化水素基を表しており、またnは1から10の整数である。)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R4、R5およびR6は、各々、官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。またmは、各々1から30の整数であり、x、y、zはそれぞれ0あるいは1以上の整数である。なお、R4およびR6は数種類の炭化水素基から形成されていても良い。)
【0023】
本発明のアクチュエータについて、図1を用いて説明する。図1(a)は、本発明のアクチュエータの一実施形態を示す概略図である。
【0024】
本実施形態のアクチュエータは、第一の電極層10と、第二の電極層20と、前記第一の電極層10と第二の電極層20間に配置される、電解質とポリウレタンで構成される中間層30で形成される三層積層型アクチュエータである。ここで、中間層に備えられる電解質の含有量が、ポリウレタンに対して60質量%以上300%以下である。さらに、ポリウレタンが少なくとも、一般式(1)で示される化合物(Aと呼ぶ)と、一般式(2)で示される化合物(Bと呼ぶ)との反応によって形成されている。
【0025】
加えて、第一の電極層10はリード線50によって駆動電源40に、また第二の電極層20はリード線60によって駆動電源40に接続されている。
【0026】
ここで、第一の電極層と第二の電極層とは、対向しており、中間層30は、電解質としてイオン液体を含有している。なお図1は、アクチュエータを、各電極層と中間層との積層方向(本図紙面の左右方向)に対して垂直な方向からみたときの模式図を示してある。
【0027】
駆動電源によって第一の電極層と第二の電極層との間に電圧が印加されると、中間層において電解質中の少なくともカチオン種および/あるいはアニオン種が負極および/あるいは正極側の電極層に移動する。この結果としてアクチュエータの長尺の端(変位端)が正極あるいは負極のいずれかの方向に屈曲変形する。
【0028】
イオン移動型のアクチュエータは、実用的観点から、中間層には以下の要件が期待される。第一に、アクチュエータの発生力は、素子のヤング率に起因するため、中間層のヤング率は高いことが望まれる。第二に、電圧印加に伴う電解質イオンの移動がアクチュエータ駆動要因であるために、より多く電解質(電解質イオン)を保持した中間層を生産性良く簡便に作製することが要求される。
【0029】
そこで本発明者は、鋭意検討した結果、少なくとも、一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)との反応によって形成されるポリウレタンが、電解質をポリウレタンに対して300質量%までをも含んだ中間層を、簡便に得ることができることを見出した。また、得られた電解質含有中間層膜のヤング率も良好であることも見出した。
【0030】
特に、本発明においては、ワンポット合成により、該イオン液体含有ポリウレタンを作製することが可能である。つまり、少なくとも、一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)とを、電解質であるイオン液体の存在下、反応させるだけで対応するイオン液体含有ポリウレタンが容易に得られる。
【0031】
なお、ワンポット合成とは目的化合物の合成に至る過程で、中間生成物の単離・精製を行わずに目的化合物を合成する手法である。結果、特許文献1のように、一旦、ポリウレタン(エラストマー)を作製してから、イオン液体に数日浸漬するという工程は必要なく、生産性が極めて高い。
【0032】
一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)との組み合わせによって、電解質をポリウレタンに対して300質量%までをも含有させ得るメカニズムに関しては、明らかとなってはいない。しかしながら、以下に示すように分子軌道計算から化合物(A)および化合物(B)が、電解質(電解質イオン)と高い相互作用を有している結果が得られた。これが電解質をポリウレタンに対して300質量%までをも含有させ得るメカニズムの主要因であると推察している。
【0033】
図3は、本発明の一例である、ジフェニルメタンジイソシアネートとイオン液体およびポリエステルポリオールとイオン液体との相互作用を、Wavefunction 社製のSpartan‘10 for Windows(登録商標)を用いて分子軌道計算により求めた図である。イオン液体は、カチオン種としてブチルメチルイミダゾリウムを用いた。
【0034】
つまり、図3(a)には、ジフェニルメタンジイソシアネート(2、4’−Diphenylmethane diisocyanate)と、電解質のカチオン種であるブチルメチルイミダゾリウムとの相互作用の計算結果を示している。図からはジイソシアネートが、イオン液体を包摂するように相互作用していることが分かる。図3(c)には比較として、モノフェニル構造のジイソシアネート(4、4’−Phenyl diisocyanate)を用いた同様の計算結果について示してある。この場合には、図3(a)でみられたような包摂は見受けられず、電解質(電解質イオン)との相互作用が弱いことが示唆される。
【0035】
また図3(b)にはポリエステルポリオールのモデルとして、コハク酸ジエトキシエチルアルコール誘導体と、電解質のカチオン種であるブチルメチルイミダゾリウムとの相互作用の計算結果を示している。この場合においても同様に、図からはコハク酸ジエトキシエチルアルコール誘導体が、イオン液体を包摂するように相互作用していることが分かる。一方、図3(d)には比較として、コハク酸ジエトキシエチルアルコール誘導体のケトン部位を有さない対応するポリエーテルポリオールを用いた同様の計算結果について示してあるが、この場合には、図3(b)でみられたような包摂は見受けられず、電解質(電解質イオン)との相互作用が弱いことが示唆される。イオン液体の種類を変更しても、同様の計算結果が得られるものと推断される。
【0036】
本発明のアクチュエータにおいては、電解質との相互作用が良好な一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)とを、該電解質の存在下、ワンポットで作製する。つまり、後から膨潤させて電解質を含有させる必要がないために、ポリウレタン骨格自身の構造が柔らかい必要性はない。よって、電解質濃度の高い、比較的ポリマー網目の強固なポリウレタンを容易に設計・作製することができ、結果として、アクチュエータの発生力向上に寄与する、膜強度が高い、高電解質濃度のポリウレタンが得られる。
【0037】
なお、ポリウレタンはモノマーの組み合わせや重合度によっては、粘着性を示す場合があり、本発明により得られる、電解質を高濃度含有したポリウレタンにおいても、粘着性を有する。結果、電極との積層工程においては、室温圧着させるだけで、素子を簡便に作製することが可能であり、この観点からも本発明により得られる中間層をアクチュエータに応用することは好適である。
【0038】
以下、本発明のアクチュエータの構成について具体的に説明する。
【0039】
(電極層について)
本発明における第一の電極層および第二の電極層は、特に限定されるものでは無く、従来、有機ポリマーを材料とするアクチュエータ(ソフトアクチュエータ)の電極層として公知の柔軟性を有する電極層を適宜用いることが可能である。具体的には、導電性ポリマーや、CNTの如き導電材料を押し固めたものや、CNTの如き導電材料とポリマーとから少なくとも構成される柔軟電極層が挙げられる。
【0040】
また、電極層は、キャスト法などで形成された、導電材と電解質とポリマーを含有するフィルム状の膜で構成するとよい。
【0041】
例えば、電極層としては、カーボンナノチューブとイオン液体から形成されるゲル電極層、さらにそれらにバインダーポリマーを含有した柔軟電極層であっても良い。また、カーボンナノチューブと各種高分子電解質から形成された膜であっても良いし、特許文献1のように導電性高分子から少なくとも形成される膜であってももちろん良い。
【0042】
なお、電極層の形状は正方形や楕円等の形状のものを用いることが出来るが、長尺形状である場合、前記一方の端部から他方の端部への方向が長い長尺状である方が、アクチュエータの屈曲変形時に大きな変位量が得られるために好ましい。また、第一および第二の電極層は、同じ構成であっても、あるいは異なる材質、形状で構成された電極層同士であってもよい。
【0043】
電極層の導電材料としては、例えば、カーボン系導電性物質を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。カーボン系導電性物質には、通常、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、活性炭素繊維の他、ナノカーボン材料(カーボンウイスカー(気相成長炭素)、(ナノ)炭素繊維、炭素ナノ粒子、グラフェン、やカーボンナノチューブの他、導電性ポリマーを用いることもできる。これらの中で、導電性及び比表面積の観点より、ナノカーボン材料が好ましく、特に好ましくは、CNTである。
【0044】
ナノカーボン材料の一つである、CNTとは、グラフェンが円筒状に丸まって構成されたものであり、その円筒径が1から10nmのものである。本発明のアクチュエータに用いられるカーボンナノチューブは、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、様々のものが知られている。本発明のアクチュエータにおいては、このような所謂カーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができる。
【0045】
本発明のアクチュエータで用いられるナノカーボン材料の一つである、炭素ナノ粒子とは、カーボンナノチューブ以外の、カーボンナノホーン、アモルファス状炭素、フラーレンの如き炭素を主成分とするナノスケール(10−6から10−9m)の粒子を言う。またカーボンナノホーンとは、グラファイトシートを円錐状に丸めた形状を持ち、先端が円錐状に閉じている炭素ナノ粒子をいう。
【0046】
本発明のアクチュエータで用いられるナノカーボン材料の一つである、ナノ炭素繊維とは、グラファイトのシートが円筒状に丸まって構成されたものであり、その円筒径が10から1000nmのものであり、カーボンナノファイバとも呼ばれる。カーボンナノファイバとは、繊維の太さが75nm以上で中空構造を有し、分岐構造の多い炭素系繊維である。市販品では、昭和電工(株)のVGCF、VGNFが挙げられる。
【0047】
本発明のアクチュエータで用いられるナノカーボン材料の一つである、グラフェンとは黒鉛構造の一部であって、平面構造を有する炭素六員環が二次元的に配列した炭素原子の集合体のこと、つまり1枚の炭素の層からなるもののことである。
【0048】
本発明のアクチュエータの電極層における前記導電材料の添加量は電極層の重量に対して1重量%以上が好ましい。電極層の重量に対して1重量%以上であることにより、アクチュエータの電極層として機能しうる電気伝導性を付与することができるため好ましい。含有量が1重量%未満だと、電極層の導電性が十分に得られない場合があり、好ましくない。
【0049】
電極層を構成する上記ポリマーは、上記アクチュエータの変形に伴って変形可能な柔軟性を有するものであれば特に限定されるものではないが、加水分解性が少なく、大気中で安定であることが好ましい。かかるポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2、6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィドの如きポリアリーレン類(芳香族系ポリマー);ポリオレフィン系ポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)に、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、または、ピリジニウム基を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンの如き含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、または、ピリジニウム基を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー;ポリブダジエン系化合物;エラストマーやゲルの如きポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレートを挙げることができる。なおこれらは単独あるいは複数を組み合わせて用いてもよく、また官能基化してもよいし、他のポリマーとの共重合体としてもよい。
【0050】
また、ポリマーとしては、材料の化学安定性の観点から、フッ素樹脂系材料、例えばポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが好ましい。また、ポリマーは、中間層と相溶性の高いポリマーであることも好ましい。これにより、中間層との相溶性および接合性がより高いため、より強固に積層接合された電極層を構成することが可能となる。このためには、ポリマーは、中間層を構成するポリアニオン高分子材料と、同種、類似または同一のポリマー構造を有するポリマー、または、同種、類似または同一の官能基を有するポリマーであっても良い。
【0051】
上述したように、本発明のアクチュエータにおける電極層は、ポリマーと、その中に分散されている上記導電材料とを含んでいることにより導電性が付与される。電極層の電気抵抗値は、1000Ω・cm以下、好ましくは100Ω・cm以下である。また、ヤング率は0.1から600MPaが好ましい。この範囲にあると、アクチュエータの応用においては、電極層の柔軟性・伸縮性が向上し、耐塑性変形が向上するため、繰り返し耐久性が高いイオン移動型アクチュエータの作製が可能となる。
【0052】
また、電極層は、アクチュエータの機能に好ましくない影響を与えるものでない限り、ポリマーおよび上記導電材料の他の成分、例えば本発明における弱酸性物質を含有していてもよい。また、含有させるポリマーおよび上記導電材料の他の成分の量は、10重量%以上60重量%以下であることが特に好ましい。例えば、ポリマー量に対して導電材料の割合が高ければ高いほうが導電性の観点から好ましいが、ポリマー量が1重量%未満である場合には、電極層に自立性がなく機械的に脆い場合があり、また80重量%を超える場合には含有させる上記導電性物質が相対的に少なくなってしまうために、電極層として作用するに十分な導電性が不足してしまうことが多く、アクチュエータの応答速度、変形応答特性など面から実用的な使用が困難となってしまう場合がある。
【0053】
電極層の厚みは、上記アクチュエータの変形を阻害しない限り特に限定されるものではないが、1μm以上5mm以下、好ましくは5μm以上2mm以下、さらに好ましくは10μm以上500μm以下である。各電極層の厚みが、1μm未満であれば、アクチュエータの電極層として電気電導性の点で問題となる場合があるので好ましくない。また、電極層の厚みが、5mmより大きくなれば、電極層が導電材料を含むことにより固くなりもろく割れやすくなる場合があるため好ましくない。なお、負極側の電極層と正極側の電極層層の厚みや材料は同じである必要はなく、所望するアクチュエータ特性に合わせて適宜選択することが出来る。
【0054】
(中間層について)
<中間層の作製方法>
中間層は、電解質存在下、少なくとも、一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)との反応によって形成されるポリウレタンであり、また、前記中間層に備えられる電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%以上300%以下となるように、ワンポットで重合して得られるポリウレタンであれば、従来公知のものを適宜使用することができる。例えば、溶融重合法や塊状重合法が好適であり、特に化合物(A)および化合物(B)が液状である場合には、VOC対策の観点からは、塊状重合法がより好適である。つまり例えば、上述した化合物(A)および化合物(B)が液状である場合には、所定量のイオン液体の存在下、十分撹拌した後に、テフロン(登録商標)等で作製した鋳型に流し込み、加熱処理することで、膜厚の均一な、本発明に係る電解質を所定量含有したポリウレタンを容易に得ることができる。
【0055】
また、化合物(A)と化合物(B)の割合は、求める中間層のヤング率に応じて適宜設定することが可能であり、必要に応じて従来公知の架橋剤や鎖延長剤を添加してももちろん良い。
【0056】
化合物(A)は、用途や必要性能に応じて公知のジイソシアネート化合物から選択できる。例えば、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートやその変性体など挙げることができる。市販品としては、日本ポリウレタン工業株式会社製のMC−115などが挙げられる。
【0057】
化合物(B)は、用途や必要性能に応じて公知のポリエステルポリオール化合物から選択できる。化合物(B)のポリエステルポリオールとしては、例えばポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。市販品としては、日本ポリウレタン工業株式会社製のニッポラン 4042などを挙げることができる。
【0058】
また、化合物(B)のポリエステルポリオールは、数平均分子量(Mn)400未満のポリオール(誘導体)と多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とを反応(縮合)させることによって得ることもできる。
【0059】
多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル、フタル酸ジメチル等)及びこれらの併用が挙げられる。
【0060】
Mn400未満のポリオール(誘導体)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオール及びその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1、5−ペンチレン アジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1、5−ペンチレン セバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール及びその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1、5−ペンチレン カーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオール及びその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
本発明における中間層は、電解質を所定量含むポリウレタン材料であり、多くは電解質としてイオン液体を含むポリマーであれば特に限定されない。言うまでもないことであるが、複数の電解質物質を含有して形成されていても良い。またさらに、ポリウレタンの構成原料である化合物(A)および化合物(B)をそれぞれ複数のものを複合して用いてももちろん良い。
【0062】
また中間層の形状は任意のものを用いることが出来るが、長尺状であれば、アクチュエータの駆動変形時に大きな変位量が得られるために好ましい。
【0063】
中間層は、電解質を所定量含み、電圧印加により変形するイオン移動型のアクチュエータの変形部位として使用できる。
【0064】
電解質の量が、ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下の場合には、イオン伝導度ならびに膜の機械特性が良好で、アクチュエータ素子として利用した場合に、良好な駆動特性を示す。一方、60質量%未満の場合には、イオン伝導度が低く、また、300質量%よりも多い場合には、膜の機械特性が低くなる傾向がある。
【0065】
上記電解質としては、例えば、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができる。また、イオン液体であってももちろんよい。
【0066】
本発明の実施形態に係るアクチュエータにおいて用いられるイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩であり、例えば0℃、好ましくは−20℃、さらに好ましくは−40℃で溶融状態を呈する塩である。また、上記イオン液体はイオン伝導性が高いものが好ましい。なお、一般的な有機溶媒系や水溶媒系の液状電解質に比べて、イオン液体は電解質として難燃性、低揮発性、熱的安定性さらには電気化学的安定性に優れる傾向がある。
【0067】
本発明の実施形態に係るアクチュエータにおいては、各種公知のイオン液体を使用することができ、特に限定されるものではないが、常温(室温)または常温に近い温度において液体状態を呈する安定なものが好ましい。本発明の実施形態に係るアクチュエータにおいて用いられる好適なイオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。なお、上記イオン液体は、2以上のイオン液体を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記イオン液体としては、より具体的には、下記の一般式(1)から(4)で表わされるカチオン(好ましくは、イミダゾリウムイオン)と、アニオン(X)より成るものを例示することができる。
【0069】
【化5】

【0070】
上記の式(1)から(4)において、Rは炭素数1から12のアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3から12のアルキル基を示す。式(1)においてR1は炭素数1から4のアルキル基または水素原子を示す。式(1)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(3)および(4)において、xはそれぞれ1から4の整数である。
【0071】
アニオン(X)としては、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン、過塩素酸アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジシアンアミドアニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、有機カルボン酸アニオンおよびハロゲンイオンより選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0072】
上記電解質層の厚みは、10μm以上500μm以下であることが好ましく、更には10μm以上400μm以下であることが好ましい。膜厚が500μmより大きいと膜の弾性率が大きくなりアクチュエータの変形運動を抑制する場合がある。また10μm未満だと保持できるイオン性物質量が少なく電極層への供給量が少なくなるため、屈曲運動が十分に得られない場合がある。
【0073】
(イオン移動型アクチュエータの駆動メカニズム)
本アクチュエータの屈曲変形時の駆動原理を、図2を用いて説明する。
【0074】
図2(a)のように、2つの電極層300、301は中間層200の表面に相互に絶縁状態で形成されている。この電極層300と301間に電位差がかかると、図2(b)に示すように、電解質800の陽イオン700と陰イオン600は、カソードの電極層301に陽イオン700が移動、浸透し、アノードの電極層300には陰イオン600が移動、浸透する。そして、電極層300、301内の導電材料とイオン性物質相の界面に電気二重層が形成される。大気中における駆動の観点から、蒸気圧のないイオン液体が本発明の電解質として好ましい。イオン液体は、陽イオン700のイオン半径が陰イオン600より大きい。その結果、電極層内に存在するイオンの立体効果と、電気二重層形成に伴う静電反発が協同的に働き、電極層301が電極層300に比べ、より膨張し、カソードがアノードに比べより伸びる方向へアクチュエータが屈曲すると考えられる。通常、電位の極性を反転させると膜は反対方向に屈曲変形する。また、変位の方向は電極層や中間層の構成により変化する。
【0075】
また、陽イオンと陰イオンのいずれか一方を中間層に固定し、他方のイオンのみが移動する場合も同様な原理で屈曲変形するものと考えられる。この場合、2つの電極層の膨張の差ではなく、一方の電極の膨張によるものとなる。
【0076】
ここで、本発明の中間層は、高濃度の電解質を含有させたポリウレタンであり、その膜のイオン伝導度ならびに機械特性が良好なため、結果、発生力の高いアクチュエータとなる。
【0077】
本発明の実施形態に係るアクチュエータにおける印加電圧は、電解質の耐電圧内で設定できる。
【0078】
(アクチュエータの製造)
<アクチュエータの製造方法>
本発明の実施形態に係るアクチュエータの製造方法は、上記した中間層を形成する工程を有する。すなわち、ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下の電解質を有するポリウレタンを、電解質存在下、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と、下記一般式(2)で示される化合物とを、ワンポット合成する工程を有する。
【0079】
この後、作成した中間層と一対の電極層を積層することによって、図1に示すアクチュエータを製造することができる。
【0080】
上記電極層および上記中間層を積層してプレス(加熱プレス、ホットプレス、熱圧着を含む)する方法を好適に用いることができる。なお、ここでは上述したように、中間層が粘着性を有しているため、「加熱プレス」せずとも、室温で容易に積層体を得ることもできる。
【0081】
なお、加熱プレスの温度やプレス圧、時間は、電解質とポリウレタンの分解温度以下であれば特に限定されるものではなく、用いるポリマー、アクチュエータを構成する高分子化合物、移動するイオン種等に応じて適宜選択すればよい。例えば、加熱プレスの温度は、30から150℃であることが好ましい。また、プレス圧は、10から1000(1から100kgf/cm)であることが好ましく、100から500Pa(10から50kgf/cm)であることがより好ましい。
【0082】
なお、本発明の実施形態に係るアクチュエータの形状は、上記の積層形状に限らず、中心軸と外周電極層を有し、その間に中間層を有する柱状など、任意の形状の素子が容易に製造可能である。
【0083】
以下、本発明の実施態様について説明する。
【0084】
(アクチュエータの性能評価)
アクチュエータを幅1mm×長さ12mm×所定の膜厚の短冊状に作製し、端2mmの部分を、固定器具の白金電極付きホルダー(端子)でつかんで、空気中で(空気中駆動)、電圧を印加する。アクチュエータの変形応答特性については、所定位置の変位量を評価する。変位量は、駆動電圧+1.0から7.0V、駆動周波数0.1Hzでの変位を、レーザー変位計を用いて固定端から9mmの位置(アクチュエータ測定ポイント)で測定する。
ヤング率は引っ張り試験機(Shimazu社製)を用いて測定した。
【0085】
(実施例1)
<中間層の作製>
電解質を高濃度含有するポリウレタン中間層は以下の手順で作製した。
【0086】
電解質として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMITFSI、東京化成社製)を用いた。化合物(A)として、MC−115(日本ポリウレタン工業株式会社製)を、また化合物(B)として、ニッポラン 4042(日本ポリウレタン工業株式会社製)を用いた。つまり、表1に示す所定量の配合比割合で、EMITFSI、MC−115およびニッポラン 4042を混合し、その混合溶液を、テフロン(登録商標)型に、バーコーターを用いて塗工した後に、120℃で加熱することで対応する、電解質を高濃度含有するポリウレタンを得た(表1)。
【0087】
【表1】

【0088】
結果、表1におけるすべての対応する、電解質を含有したポリウレタン膜をワンポット合成により容易に作製することができた。またイオン液体の染み出しが発生していないものを×とし、イオン液体の染み出しが発生したものを○とした。なおイオン液体の染み出しは、中間層を作製した後に、不織布を当てて濡れるか濡れないかを目視で確認することで判断した。本発明の構成において、電解質(イオン液体)をポリウレタンに対して、300質量%まで安定的に含有させることができることが確認できる。
【0089】
さらに、電解質(イオン液体)が60質量%以下(50質量%)の場合には、膜の電気抵抗が高く、一方、電解質(イオン液体)が300質量%以上(400質量%)の場合には、イオン液体の染み出しが起こり、膜が柔らかくなることも確認できた。
【0090】
加えて、該得られた膜のヤング率は、化合物(A)と化合物(B)の配合比を変えることで制御することができることも確認できた。
【0091】
(比較例1)
比較例として、化合物(A)および化合物(B)に該当しない、エクシールコーポレーション社製のモノフェニル系ジイソシアナートおよびポリエーテル系ポリオールを用いて、同様に所定量のEMITFSI存在下でのワンポット合成を行い、対応するイオン液体含有ポリウレタン膜の作製を試みた。
【0092】
しかしながら、本比較例では、電解質(イオン液体)が50質量%以上になると、イオン液体の染み出しが起こり、安定してアクチュエータ用の中間層を得ることができなかった。
【0093】
以上のことから、電解質存在下、一般式(1)で示される化合物(A)と、一般式(2)で示される化合物(B)とのワンポット反応によって、中間層に備えられる電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%以上300%以下であり、かつ、前記ポリウレタンが容易に得ることができ、アクチュエータ応用に有望であることが示唆された。
【0094】
次に、アクチュエータへの利用に関して検討した。
【0095】
(実施例2)
本実施例2は、図1に示したような、一対の電極層とポリマー繊維からなる中間層が積層された三層構造のアクチュエータである。
【0096】
電極層は以下の手順で作製した。
【0097】
まず直径約1nm、長さ1μmの単層カーボンナノチューブ(SWNT、Unidym社製、商品名「HiPco」)50mgと、イオン液体(EMITFSI、東京化成社製)100mgと、有機溶剤N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc、キシダ化学社製)1mLを容器に入れた。
【0098】
粒径2mmのジルコニアボールを容器容量の1/3まで加え、ボールミル機(フリッチュ社製遊星型微粒粉砕機)を用いて、200rpm/30分間の条件で分散処理を行った。
【0099】
次いで、母材であるPVdF−HFP(シグマアルドリッチ社製)80mgをDMAc(2mL)で加熱溶解させて作った溶液を加え、更に500rpm/60分間の条件で分散処理を行った。
【0100】
得られたCNTが分散した黒色のペーストをPTFEから成る型に流し込み、ブレードなどで平坦に均した後、室温にて真空乾燥させることで導電材が均一分散して厚みの揃った電極層を得た。得られたものを所定のサイズ(1mmx12mm)にカットして用いた。厚みは50μmであった。膜の電気伝導度は概ね13S/cm程度の値であった。
【0101】
電解質を高濃度含有するポリウレタン中間層は実施例1のRun5で作製した、イオン液体がポリウレタンに対して150質量%用いて得られたものを所定のサイズ(1.5mmx14mm)にカットして用いた。膜厚は100μmであった。
【0102】
上記電解質層の上下に上記電極層を、室温で圧着させることで、電極層/中間層/電極層の三層構成から成る。アクチュエータ素子を作製した。
【0103】
その後、はみ出た中間層をカットして、測定用のアクチュエータ素子とした(幅は1mm、長さは120mmに揃え、厚さは200μm)。
【0104】
アクチュエータに0.1Hz、+1Vから+7Vまで印加した変位特性結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
表2に示すように、本発明における電解質含有ポリウレタンを中間層として利用することで、安定的に駆動させ得るアクチュエータが得られることが確認できた。
【0107】
また、その変位量は、電圧を上げるとともに向上し、数V程度まで安定的に駆動させることができることも確認できた。
【0108】
(比較例2)
イオン移動型のアクチュエータの中間層として、特開2005−176428号公報を参照し、フッ素系のポリマーである、PVDF−HFPとイオン液体を混合して作製した中間層を作製した。この中間層用いて実施例1と同様にアクチュエータを作成し、ヤング率を求めたところ、0.2−0.6Mpa程度であった。
【0109】
この結果、本実施例の中間層のヤング率は比較例2に比べて著しく高く、発生力の強いアクチュエータが得られることが確認できた。
【0110】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 アクチュエータ
10 第一の電極層
20 第二の電極層
30 中間層
40 電源
60、70 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極層と、該一対の電極層の間に配置され、電解質およびポリウレタンを有する中間層と、を有し、該電極層間に電圧が印加されると変形するアクチュエータであって、
前記中間層における前記電解質の含有量が、前記ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下であり、かつ、前記ポリウレタンが少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と、下記一般式(2)で示される化合物との反応によって得られるものであることを特徴とするアクチュエータ。
【化1】


(式中、R1、R2およびR3は、各々、水素原子あるいは置換基または官能基を有していてもよい炭化水素基を表しており、またnは1から10の整数である。)
【化2】


(式中、R4、R5およびR6は、各々、官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。またmは、各々1から30の整数であり、x、y、zはそれぞれ0あるいは1以上の整数である。なお、R4およびR6は数種類の炭化水素基から形成されていても良い。)
【請求項2】
前記電解質が、イオン液体である請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記電極層が、ナノカーボン材料を有する請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
一対の電極層と、該一対の電極層の間に配置され、電解質およびポリウレタンを有する中間層と、を有し、該電極層間に電圧が印加されると変形するアクチュエータの製造方法であって、
ポリウレタンに対して60質量%以上300質量%以下の電解質を有するポリウレタンを、電解質存在下、少なくとも、下記一般式(1)で示される化合物と、下記一般式(2)で示される化合物とを、ワンポット合成する工程を有するアクチュエータの製造方法。
【化3】


(式中、R1、R2およびR3は、各々、水素原子あるいは置換基または官能基を有していてもよい炭化水素基を表しており、またnは1から10の整数である)
【化4】


(式中、R4、R5およびR6は、各々、官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。またmは、各々1から30の整数であり、x、y、zはそれぞれ0あるいは1以上の整数である。なお、R4およびR6は数種類の炭化水素基から形成されていても良い)
【請求項5】
前記ワンポッド合成により得られた中間層と、前記一対の電極層とを積層してプレスする工程を更に有する請求項4に記載のアクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81310(P2013−81310A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220305(P2011−220305)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】