説明

アクティブマトリクス型表示装置

【課題】アクティブマトリクス型の表示装置において、表示ムラや動画残像時間を低減し、表示品位の向上を図る。
【解決手段】垂直スタートパルス信号STVの立ち下がりに同期して、制御回路303からプリチャージパルス信号PCG1及び保持容量制御パルス信号SC1が次々と出力される。第1行目の画素に着目すると、プリチャージパルス信号PCG1に応じて、プリチャージ用TFT220がオンする。すると、駆動用TFT214のソースとゲートとは短絡され、駆動用TFT214のゲート電位はソース電位と同じ正電源電位PVddとなり、駆動用TFT214はオフする。その後、保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がり、保持容量218の容量結合効果により、駆動用TFT214のゲートの電位が上昇する。これにより、駆動用TFT214の電気的特性が初期化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子を備えたアクティブマトリクス型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTやLCDに代わる表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(Organic Electro Luminescent Device:以降、「有機EL素子」と略称する)素子を用いた有機EL表示装置が開発されている。特に、有機EL素子を駆動させるスイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor以降、「TFT」と略称する)を備えたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置が開発されている。
【0003】
以下で、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図9は、この有機EL表示装置の等価回路図である。図9は、表示パネルにマトリクス状に配置された複数の画素の中から、1つの画素210だけを示している。行方向に延びた画素選択信号線211と列方向に延びた表示信号線212の交差点の付近に、Nチャネル型の画素選択用TFT213が配置されている。この画素選択用TFT213のゲートは、画素選択信号線211に接続されており、そのドレインは、表示信号線212に接続されている。画素選択信号線211には垂直駆動回路301から出力されるハイレベルの画素選択信号Gが印加され、それに応じて画素選択用TFT213がオンする。表示信号線212には水平駆動回路302から表示信号Dが出力される。
【0004】
画素選択用TFT213のソースは、Pチャネル型の駆動用TFT214のゲートに接続されている。駆動用TFT214のソースには、正電源電位PVddを供給する電源線215が接続されている。駆動用TFT214のドレインは有機EL素子216の陽極に接続されている。有機EL素子216の陰極には負電源電位CVが供給されている。
【0005】
また、駆動用TFT214のゲートと保持容量線217の間には保持容量218が接続されている。保持容量線217は一定の電位に固定されている。保持容量218は、画素選択用TFT213を通して駆動用TFT214のゲートに印加される表示信号Dを1垂直期間保持する。
【0006】
次に、上述した有機EL表示装置の動作について説明する。ハイレベルの画素選択信号Gが1水平期間にわたって画素選択信号線211に印加されると、画素選択用TFT213がオンする。すると、表示信号線212の出力された表示信号Dが画素選択用TFT213を通して、駆動用TFT214のゲートに印加されると共に、保持容量218によって保持される。即ち、表示信号Dが画素210に書き込まれる。
【0007】
そして、駆動用TFT214のゲートに印加された表示信号Dに応じて、駆動用TFT214のコンダクタンスが変化して、駆動用TFT214がオン状態となる場合には、そのコンダクタンスに応じた電流が駆動用TFT214を通して有機EL素子216に供給され、有機EL素子216がそれに応じた輝度で発光する。一方、当該ゲートに供給された表示信号Dに応じて、駆動用TFT214がオフ状態となる場合には、駆動用TFT214には電流が流れないため、有機EL素子216は消灯する。上述した動作を、1垂直期間にわたって、全ての行の画素210に対して行うことにより、表示パネル全体に所望の画像を表示することができる。
【0008】
しかしながら、上述した有機EL表示装置では、表示パネルの輝度ムラや動画残像が生じるという問題があった。そこで、特許文献1に開示されているように、垂直駆動回路301の走査系信号(例えば、上述の画素選択信号G)を用いて有機EL素子216の発光期間を制御することにより、輝度ムラや動画残像時間を低減する方式が知られている。表示パネルの表示領域がn行m列の画素で構成されているとすると、例えば、1垂直期間の半分の期間を発光期間とする場合、n/2行目の画素選択信号線211の画素選択信号Gがハイレベルに立ち上がるタイミングに同期して、有機EL素子216を消灯するというものである。
【特許文献1】特開2002−175035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の発光期間制御方式は、ハードウエア的な発光期間設定であって、一旦発光期間が設定されると、物理的に配線の接続を変更しない限り、その発光期間を変更することができない。配線の接続を変更するには配線マスクの変更が必要となり、マスクコストの増加と、そのような表示パネルを新たに製造するための製造コストの増加、製造期間の発生という問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアクティブマトリクス型表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を備え、各画素は、画素選択用トランジスタと、発光素子と、前記画素選択用トランジスタを通して供給される表示信号に応じて前記発光素子を駆動する駆動用トランジスタとを備え、さらに、垂直走査を開始させるための垂直スタートパルス信号に応じて前記駆動用トランジスタのオンオフを制御する制御回路を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクティブマトリクス型の表示装置において、発光素子の発光期間及び消灯期間を、垂直スタートパルス信号を利用して、自由に調整することができるようにしたものであり、その調整により表示パネルの表示ムラや動画残像を低減し、表示品位の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図1は、この有機EL表示装置の等価回路図である。図1は、表示パネルにマトリクス状に配置された複数の画素の中から、第1行目の画素210Aと第2行目の画素210Bだけを示している。画素210A、210Bは列方向に互いに隣接している。なお、図1において、図9と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。以下では、画素選択用TFT213及びプリチャージ用TFT220はNチャネル型であり、駆動用TFT214はPチャネル型であるとして説明をするが、もちろん、本発明はこれらのチャネル型に限られることはない。
【0013】
画素210Aにおいて、駆動用TFT214のソースとゲートの間にプリチャージ用TFT220が接続されている。このプリチャージ用TFT220のゲートはプリチャージ信号線221に接続されている。プリチャージ信号線221にはプリチャージパルス信号PCG1が供給されるので、プリチャージ用TFT220はこのプリチャージパルス信号PCG1に応じてスイッチングする。プリチャージ用TFT220がオンすると、駆動用TFT214のソースとゲートとは短絡される。これにより、駆動用TFT214のソース電位とゲート電位はともに正電源電位PVddに設定されるので、駆動用TFT214はオフする。プリチャージ用TFT220がオフすると、駆動用TFT214のソースとゲートとは電気的に絶縁されることになる。保持容量線217には固定電位ではなく、後述する所定の期間にハイレベルになる保持容量制御パルス信号SC1が供給される。
【0014】
画素210Bも同様に構成されているが、プリチャージ信号線221にはプリチャージパルス信号PCG2が供給され、保持容量線217には保持容量制御パルス信号SC2が供給される。
【0015】
垂直駆動回路301は、垂直走査を開始する基準信号である垂直スタートパルス信号STVを相補的な垂直クロックCKV1,CKV2に同期してシフトして、画素選択信号G1,G2を生成する。画素選択信号G1は画素選択信号線211を通して画素210Aの画素選択用TFT213のゲートに印加され、画素選択信号G2は画素選択信号線211を通して画素210Bの画素選択用TFT213のゲートに印加される。イネーブル信号ENBは画素選択信号G1が画素選択信号線211に出力されるタイミングを制御する信号であり、画素選択信号G1,G2の重なりを防止するために用いられる。
【0016】
水平駆動回路302は、水平スタートパルス信号STHを相補的な水平クロックCKH1,CKH2に同期してシフトして、水平走査信号を生成する。そして、水平駆動回路302は、この水平走査信号に同期して表示信号Dを表示信号線212に出力する。
【0017】
制御回路303は、垂直スタートパルス信号STVの立ち下がりに同期して、前記プリチャージパルス信号PCG1、PCG2及び前記保持容量制御パルス信号SC1、SC2を生成する回路である。図1では、制御回路303は、垂直駆動回路301に外部に配置されているが、垂直駆動回路301の内部に設けてもよい。
【0018】
次に、上述した有機EL表示装置の駆動方法について、図面を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。垂直スタートパルス信号STVの立ち上がりに同期して、垂直駆動回路301からの画素選択信号G1,G2,G3が次々にパルス出力される。
【0019】
第1行目の画素に着目すると、ハイレベルの画素選択信号G1に応じて、第1行目の画素210Aの画素選択用TFT213が1水平期間オンし、この期間に水平駆動回路302から表示信号Dが表示信号線212に出力され、画素選択用TFT213を通して駆動用TFT214のゲートに印加されると共に、保持容量218によって保持される。即ち、表示信号Dが画素210Aに書き込まれる。そして、駆動用TFT214のゲートに印加された表示信号Dに応じて、駆動用TFT214がオン状態となる場合には、そのコンダクタンスに応じた電流が駆動用TFT214を通して有機EL素子216に供給され、有機EL素子216がそれに応じた輝度で発光する。
【0020】
1水平期間が終わり、画素選択信号G1がロウレベルに戻ると、画素選択用TFT213はオフするが、表示信号Dは保持容量218によって保持されているので、有機EL素子216の発光期間は継続される。即ち、第1行目の画素については画素選択信号G1の立ち上がりに応じて発光期間が開始し、第2行目の画素については画素選択信号G2の立ち上がりに応じて発光期間が開始し、第3行目の画素については画素選択信号G3の立ち上がりに応じて発光期間が開始することになる。
【0021】
その後、垂直スタートパルス信号STVの立ち下がりに同期して、制御回路303からプリチャージパルス信号PCG1、PCG2及び保持容量制御パルス信号SC1、SC2が次々と出力される。第1行目の画素に着目すると、ハイレベルのプリチャージパルス信号PCG1に応じて、プリチャージ用TFT220がオンする。すると、駆動用TFT214のソースとゲートとは短絡され、駆動用TFT214のゲート電位はソース電位と同じ正電源電位PVddとなり、駆動用TFT214はオフする。これにより、有機EL素子216は消灯するので、これで発光期間は終了し、消灯期間が開始し、この消灯期間は次の1垂直期間に画素選択信号G1がハイレベルに立ち上がるまで継続される。
【0022】
その後、プリチャージパルス信号PCG1がロウレベルに変化すると、プリチャージ用TFT220がオフして駆動用TFT214のソースとゲートの間は絶縁される。その後あるいは同時に、保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がる。すると、保持容量218の容量結合効果により、駆動用TFT214のゲートの電位が保持容量制御パルス信号SC1のロウレベルからハイレベルへの電圧変化分ΔV(例えば、約10V)に応じて上昇する。
【0023】
これにより、駆動用TFT214のゲート電位が、そのソース電位に比して高くなる。駆動用TFT214のゲート絶縁膜に、前回の表示信号Dの書き込みにより、キャリア(正孔)がトラップされていたとすると、そのキャリア(正孔)はゲートからソースあるいはドレインへ向かう電界によりトンネル電流となって、ゲート絶縁膜からソースあるいはドレインに引き抜かれる。これにより、駆動用TFT214の電気的特性が初期化される。これにより、駆動用TFT214には、次のフレーム期間に画素に表示信号Dを書き込む際に、その表示信号Dに応じた適正な電流値の電流が流れるようになる。
【0024】
第2行目の画素についても同様であり、画素選択信号G2の立ち上がりから発光期間が開始する。そして、第1行目のプリチャージパルス信号PCG1がロウレベルに変化した後、第2行目のプリチャージパルス信号PCG2が立ち上がり、プリチャージ用TFT220がオンする。その後、プリチャージパルス信号PCG2がロウレベルに変化すると、プリチャージ用TFT220がオフして駆動用TFT214のソースとゲートの間は絶縁される。その後あるいは同時に、保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がる。すると、保持容量218の容量結合効果により、駆動用TFT214のゲートの電位が保持容量制御パルス信号SC2のロウレベルからハイレベルへの電圧変化分ΔVに応じて上昇する。これにより、駆動用TFT214の電気的特性が初期化される。第3行目以降の画素についても同様の動作である。
【0025】
本実施形態によれば、垂直スタートパルス信号STVのパルス幅を制御することで各画素の有機EL素子216の発光期間及び消灯期間を、従来のようにマスク変更を伴うことなく、自由に調節することができる。かかる調整によって、表示パネルの表示ムラの低減、動画残像時間を低減して動画品位の向上を図ることができる。また、保持容量線217にハイレベルの保持容量制御パルス信号SC1を供給することにより、駆動用TFT214の電気的特性の初期化を最適化して、表示パネルの残像現象をさらに抑制することができる。
【0026】
本発明の第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図3は、この有機EL表示装置の等価回路図である。図3では、表示パネルにマトリクス状に配置された複数の画素の中から、第1行目の画素210Aと第2行目の画素210Bだけを示している。画素210A、210Bは列方向に互いに隣接している。なお、図3において、図9と同一の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
第1の実施形態では、垂直スタートパルス信号STVのパルス幅を利用して各画素の有機EL素子216の発光期間及び消灯期間の長さを調節するとともに、その消灯期間内に駆動用TFT214の電気的特性を初期化するというものである。これに対して、本実施形態では垂直スタートパルス信号STVを1垂直期間内に2個入力することで、2個目の垂直スタートパルス信号STVに同期して、前記プリチャージパルス信号PCG1、PCG2及び前記保持容量制御パルス信号SC1、SC2を生成して、発光期間及び消灯期間を調節するというものである。
【0028】
図3において、垂直スタートパルス信号STVのパルス数をカウントするパルスカウンタ304が設けられている。パルスカウンタ304が2個の垂直スタートパルス信号STVをカウントすると、それに基づいて、制御回路305は、プリチャージパルス信号PCG1、PCG2及び前記保持容量制御パルス信号SC1、SC2を生成する。図3では、パルスカウンタ304及び制御回路305は、垂直駆動回路301に外部に配置されているが、垂直駆動回路301の内部に設けてもよい。
【0029】
次に、第2の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法について、図面を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。1個目の垂直スタートパルス信号STVの立ち上がりに同期して、垂直駆動回路301からの画素選択信号G1,G2,G3が次々にパルス出力される。
【0030】
これにより、第1の実施形態と同様に、第1行目、第2行目、第3行目の画素に次々に表示信号Dが書き込まれる。そして、2個目の垂直スタートパルス信号STVがハイレベルに立ち上がると、制御回路305から第1行目のプリチャージパルス信号PCG1が出力される。このプリチャージパルス信号PCG1に応じて、プリチャージ用TFT220がオンする。その後の動作は、第1の実施形態と同様であり、プリチャージパルス信号PCG1がロウレベルに変化すると、保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がる。そして、有機EL素子216の消灯期間に駆動用TFT214の電気的特性が初期化される。
【0031】
第2行目の画素についても同様であり、第1行目のプリチャージパルス信号PCG1がロウレベルに変化すると、第2行目のプリチャージパルス信号PCG2が立ち上がる。プリチャージパルス信号PCG2がロウレベルに変化すると、保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がる。そして、有機EL素子216の消灯期間に駆動用TFT214の電気的特性が初期化される。第3行目以降の残りの画素についても同様の動作である。
【0032】
なお、本実施形態では2個の垂直スタートパルス信号STVが入力されているが、3個以上の垂直スタートパルス信号STVが入力されてもよい。垂直スタートパルス信号STVのパルス数をパルスカウンタ304でカウントすることで、消灯期間の長さを調節することができる。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図5は、この有機EL表示装置の等価回路図である。第2の実施形態では、駆動用TFT214をオフさせるためにプリチャージ用TFT220が設けられているが、本実施形態ではプリチャージ用TFT220及びプリチャージ信号線221が除去されている。また、第2の実施形態と同様に、垂直スタートパルス信号STVのパルス数をカウントするパルスカウンタ304が設けられている。制御回路306は、パルスカウンタ304が2個の垂直スタートパルス信号STVをカウントすると、それに基づいて、保持容量制御パルス信号SC1、SC2を生成する。すなわち、本実施形態では、保持容量制御パルス信号SC1、SC2をハイレベルに活性化することにより、駆動用TFT214をオフさせるものである。
【0034】
次に、第3の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法について、図面を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。1個目の垂直スタートパルス信号STVの立ち上がりに同期して、垂直駆動回路301からの画素選択信号G1,G2,G3が次々にパルス出力される。
【0035】
画素選択信号G1,G2,G3に応じて、第1行目、第2行目、第3行目の画素に次々に表示信号Dが書き込まれ、各行の発光期間が開始する。そして、2個目の垂直スタートパルス信号STVがハイレベルに立ち上がると、制御回路305から出力される第1行目の保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がる。これにより、保持容量218の容量結合効果により、駆動用TFT214のゲートの電位が保持容量制御パルス信号SC1のロウレベルからハイレベルへの電圧変化分ΔVに応じて上昇する。この電圧変化分ΔVが十分に大きければPチャネル型の駆動用TFT214がオフし、有機EL素子216の消灯期間が開始する。具体的には、Vs−Vg<Vtが成り立てば、駆動用TFT214はオフする。Vsは駆動用TFT214のソース電位であり、正電源電位PVddである。Vgは電圧変化分ΔVの受けて上昇したゲート電位、Vtは駆動用TFT214の閾値(threshold voltage)の絶対値である。
【0036】
そして、次の1垂直期間の開始時に発生するイネーブル信号ENBの立ち上がりからの所定の遅延時間後に、保持容量制御パルス信号SC1はハイレベルからロウレベルへ変化し、消灯期間が終了するように設定されている。
【0037】
第2行目の画素についても同様であり、1行目の保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がった後に、2行目の保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がり、第2行目の画素の発光期間が終了して消灯期間が開始する。また、第3行目の画素についても同様であり、2行目の保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がった後に、第3行目の保持容量制御パルス信号SC3がハイレベルに立ち上がり、第3行目の画素の発光期間が終了して消灯期間が開始する。第4行目以降の残りの画素についても同様の動作である。なお、本実施形態のように、プリチャージ用TFT220及びプリチャージ信号線221を除去した構成は、第1の実施形態に対しても適用することができる。
【0038】
次に、本発明の第4の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図7は、この有機EL表示装置の等価回路図である。第2の実施形態において、駆動用TFT214はPチャネル型であるが、本実施形態ではこれをNチャネル型で構成したものである。この変更に伴い、プリチャージ用TFT225の接続箇所も図7のように変更されている。
【0039】
次に、第4の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法について、図面を参照して説明する。図8は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。1個目の垂直スタートパルス信号STVの立ち上がりに同期して、垂直駆動回路301からの画素選択信号G1,G2,G3が次々にパルス出力される。
【0040】
これにより、第2の実施形態と同様に、第1行目、第2行目、第3行目の画素に次々に表示信号Dが書き込まれ、各行の発光期間が開始する。そして、2個目の垂直スタートパルス信号STVがハイレベルに立ち上がると、制御回路307から第1行目のプリチャージパルス信号PCG1が出力される。
【0041】
このプリチャージパルス信号PCG1に応じて、プリチャージ用TFT225がオンする。すると、駆動用TFT214のソースとゲートとは短絡され、駆動用TFT214のゲート電位はソース電位と同じ電位となり、駆動用TFT214はオフする。これにより、有機EL素子216は消灯するので、これで発光期間は終了し、消灯期間が開始し、この消灯期間は次の1垂直期間に画素選択信号G1がハイレベルに立ち上がるまで継続される。なお、このように、駆動用TFT214をNチャネル型で構成する点は第1の実施形態にも適用することができる。
【0042】
次に、本発明の第5の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について、図面を参照して説明する。図10は、有機EL表示装置の等価回路図である。本実施形態は、第3の実施形態と同様に、プリチャージ用TFT220及びプリチャージ信号線221が除去されている。第3の実施形態と異なるのは、垂直スタートパルス信号STVのパルス数をカウントするパルスカウンタ304が設けられていない点である。そして、制御回路308は、垂直スタートパルス信号STVの立ち下がりに同期して、保持容量制御パルス信号SC1、SC2を生成する。これらの保持容量制御パルス信号SC1、SC2をハイレベルに活性化することにより、駆動用TFT214をオフさせ、消灯期間を開始させる。
【0043】
次に、第5の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法について、図面を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。1個目の垂直スタートパルス信号STVのハイレベルへの立ち上がりに同期して、垂直駆動回路301からの画素選択信号G1,G2,G3が次々にパルス出力される。
【0044】
画素選択信号G1,G2,G3に応じて、第1行目、第2行目、第3行目の画素に次々に表示信号Dが書き込まれ、各行の発光期間が開始する。そして、垂直スタートパルス信号STVがロウレベルに立ち下がると、制御回路308から出力される第1行目の保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がる。これにより、保持容量218の容量結合効果により、駆動用TFT214のゲートの電位が保持容量制御パルス信号SC1のロウレベルからハイレベルへの電圧変化分ΔVに応じて上昇する。この電圧変化分ΔVが十分に大きければPチャネル型の駆動用TFT214がオフし、有機EL素子216の消灯期間が開始する。具体的には、Vs−Vg<Vtが成り立てば、駆動用TFT214はオフする。Vsは駆動用TFT214のソース電位であり、正電源電位PVddである。Vgは電圧変化分ΔVの受けて上昇したゲート電位、Vtは駆動用TFT214の閾値(threshold voltage)の絶対値である。そして、次の1水平期間の開始時に発生するイネーブル信号ENBの立ち上がりからの所定の遅延時間後に、保持容量制御パルス信号SC1はハイレベルからロウレベルへ変化し、消灯期間が終了するように設定されている。
【0045】
第2行目の画素についても同様であり、1行目の保持容量制御パルス信号SC1がハイレベルに立ち上がった後に、2行目の保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がり、第2行目の画素の発光期間が終了して消灯期間が開始する。また、第3行目の画素についても同様であり、2行目の保持容量制御パルス信号SC2がハイレベルに立ち上がった後に、第3行目の保持容量制御パルス信号SC3がハイレベルに立ち上がり、第3行目の画素の発光期間が終了して消灯期間が開始する。第4行目以降の残りの画素についても同様の動作である。
【0046】
また、上述した各実施形態は、表示装置が電圧駆動型画素回路で構成される場合を例として説明しており、各画素に供給される表示信号Dは電圧信号であるが、本発明は電流駆動型画素回路にも同様に適用することができる。この場合、表示信号Dは電流信号になる。
【0047】
上述した各実施形態によれば、垂直スタートパルス信号STVを利用することにより、各画素の有機EL素子216の発光期間を自由に調節することができる。かかる調整によって、表示パネルの表示ムラの低減、残像時間を低減して動画品位の向上を図ることができる。また、表示装置の開発段階で最適な発光期間を見出すことが可能になるので、開発期間の短縮、開発コストの低減にも効果がある。さらにこのような発光期間の制御方式を表示パネルのユーザーに解放することで、ユーザーは同一仕様の表示パネルを目的に合ったアプリケーションに応用することができる。例えば、動画表示が主であるビデオカメラ用の表示パネルには、動画応答性が良いように発光期間を短くし、スチルカメラ用の表示パネルにはフリッカー防止のため、発光期間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の等価回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の等価回路図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置の等価回路図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る表示装置の等価回路図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。
【図9】従来例に係る有機EL表示装置の等価回路図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る表示装置の等価回路図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング図である。
【符号の説明】
【0049】
210,210A,210B,210C 表示画素
211 画素選択信号線 212 表示信号線 213 画素選択用TFT
214 駆動用TFT 215 電源線 216 有機EL素子
217 保持容量線 218 保持容量 220 プリチャージ用TFT
221 プリチャージ信号線 301 垂直駆動回路
302 水平駆動回路 303 制御回路 304 パルスカウンタ
305,306,307,308 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素を備え、各画素は、画素選択用トランジスタと、発光素子と、前記画素選択用トランジスタを通して供給される表示信号に応じて前記発光素子を駆動する駆動用トランジスタとを備え、
さらに、垂直走査を開始させるための垂直スタートパルス信号に応じて前記駆動用トランジスタのオンオフを制御する制御回路を備えることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記垂直スタートパルス信号が第1のレベルから第2のレベルに変化するのに応じて、前記駆動用トランジスタをオフすることにより、前記発光素子を消灯させることを特徴とする請求項1に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記垂直スタートパルス信号の数をカウントするカウンタ回路を備え、前記カウンタ回路のカウント値が所定数に達したときに、前記駆動用トランジスタをオフすることにより、前記発光素子を消灯させることを特徴とする請求項1に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項4】
マトリクス状に配置された複数の画素を備え、各画素は画素選択用トランジスタと、発光素子と、前記画素選択用トランジスタを通して供給される表示信号に応じて前記発光素子を駆動する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲートと保持容量線の間に接続され、前記表示信号を保持する保持容量と、プリチャージパルス信号に応じてオンし前記駆動用トランジスタのソースとゲートとを短絡するプリチャージ用トランジスタと、
さらに、垂直走査を開始させるための垂直スタートパルス信号に応じて、前記プリチャージパルス信号を出力して前記プリチャージ用トランジスタを所定期間オンさせる制御回路と、を備えることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記プリチャージ用トランジスタが前記所定期間の経過後にオフしたときに、前記保持容量線に保持容量制御パルス信号を出力して、前記駆動用トランジスタのゲート電位をソース電位に対して変化させることを特徴とする請求項4に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記垂直スタートパルス信号が第1のレベルから第2のレベルに変化するのに応じて前記プリチャージパルス信号を出力することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記垂直スタートパルス信号の数をカウントするカウンタ回路と、前記カウンタ回路のカウント値が所定数に達したときに、前記プリチャージパルス信号を出力することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項8】
マトリクス状に配置された複数の画素を備え、各画素は画素選択用トランジスタと、発光素子と、前記画素選択用トランジスタを通して供給される表示信号に応じて前記発光素子を駆動する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタのゲートと保持容量線の間に接続され、前記表示信号を保持する保持容量とを備え、さらに垂直走査を開始させるための垂直スタートパルス信号が第1のレベルから第2のレベルに変化するのに応じて、前記保持容量線に保持容量制御パルス信号を出力することにより、前記駆動用トランジスタがオフするように、そのゲート電位をソース電位に対して変化させる制御回路を備えることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項9】
前記発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1,2,3,4,8のいずれか1項に記載のアクティブマトリクス型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−285210(P2006−285210A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27915(P2006−27915)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】