説明

アクティブマトリクス型表示装置

【課題】 画素回路に映像信号として電流信号を書き込むアクティブマトリクス駆動方式の表示装置で、画素回路の異常に伴う表示不良の発生を防止する。
【解決手段】 供給電流に応じて発光する表示素子OELDを有する複数の画素部PXを基板上にマトリクス状に配設したアクティブマトリクス型表示装置において、一部の画素部には、この画素部の不良による尾を引いた輝線表示を防止するためのリペア処理が施されているとともに、前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して少なくとも一つのダミー画素部PX’が形成され、前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すようになされているアクティブマトリクス型表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELと称する)素子のような自己発光素子を含む表示画素をマトリクス状に配列して表示画面を構成したアクティブマトリクス型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置では、駆動電流がばらつくと、輝度むら等の画質不良が生じる。それゆえ、この表示装置でアクティブマトリクス駆動方式を採用した場合には、駆動電流の大きさを制御する駆動制御素子の特性が各画素間でほぼ同一であることが要求される。しかしながら、この表示装置では、通常、駆動制御素子をガラス基板などの絶縁体上に形成するため、その特性にばらつきを生じ易い。
【0003】
以下の特許文献1には、カレントコピー型の回路を画素回路に採用した有機EL表示装置が記載されている。このカレントコピー型の画素回路は、駆動制御素子であるnチャネル電界効果トランジスタ(FET)と、有機EL素子と、キャパシタと、出力制御スイッチと、映像信号供給制御スイッチと、ダイオード接続スイッチとを含んでいる。
【0004】
駆動制御素子のソースは低電位の第1電源線に接続されており、キャパシタは駆動制御素子のゲートと第1電源線との間に接続されている。出力制御スイッチは駆動制御素子のドレインと有機EL素子の陰極との間に接続されており、有機EL素子の陽極はより高電位の第2電源線に接続されている。映像信号供給制御スイッチは駆動制御素子のドレインと映像信号線との間に接続されており、ダイオード接続スイッチは駆動制御素子のドレインとゲートとの間に接続されている。
【0005】
このカレントコピー型の画素回路には、書込期間において、映像信号を電流信号Isigとして画素回路に供給する。書込期間に続く保持期間では、電流Isigとほぼ等しい大きさの駆動電流が、駆動制御素子のドレインとソースとの間に流れる。それゆえ、駆動制御素子の閾値Vthだけでなく移動度や寸法などが駆動電流に与える影響も排除することができる。
【0006】
ところで、アクティブマトリクス駆動方式の表示装置では、画素回路内での断線や短絡などに起因して、一部の画素が輝点又は滅点として視認されることがある。また、アクティブマトリクス駆動方式の表示装置では、走査信号線や映像信号線の断線などに起因して、画素の列又は行が輝線又は滅線として視認されることがある。
【0007】
本発明者は、本発明を為すに際し、画素回路に映像信号として電流信号を書き込むアクティブマトリクス駆動方式の表示装置では、画像中に上記の線状又は点状の輝度ムラに加え、輝線状又は滅線状に尾を引いた輝点を生じ得ることを見出している。
【特許文献1】米国特許第6373454号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、画素回路に映像信号として電流信号を書き込むアクティブマトリクス駆動方式の表示装置で、画素回路の異常に伴う表示不良の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係るアクティブマトリクス型表示装置は、 供給電流に応じて発光する表示素子を有する複数の画素部を基板上にマトリクス状に配設したアクティブマトリクス型表示装置において、前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して少なくとも一つのダミー画素部が形成され、前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すようになされているアクティブマトリクス型表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、画素回路に映像信号として電流信号を書き込むアクティブマトリクス駆動方式の表示装置で、画素回路の異常に伴う表示不良の発生を防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一態様に係る表示装置を概略的に示す平面図である。
図1に示すように、この表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、例えば、ガラス基板などの光透過性絶縁基板SUB上にマトリクス状に配列され表示領域を構成したm×n個の表示画素PX、表示画素PXの行毎に接続されているとともにそれぞれ独立してm本ずつ設けられた書込制御線SGおよび発光制御線BGと、表示画素PXの列毎にそれぞれ接続されたn本の映像信号線DLを有している。
また光透過性絶縁基板SUBの上端部には、尾を引いた輝点の発生を防止するためのn個のダミー画素PX’が図中横方向に配設されている。そして、そのそれぞれのダミー画素PX’に接続された書込制御線SG’とn本の映像信号線DLとが設けられている。
さらに表示装置は、書込制御線SG、SG’および発光制御線BGを表示画素の行毎に順次駆動する走査信号線ドライバYDR、および複数の映像信号線DLを駆動する映像信号線ドライバXDRを備えている。
【0013】
図2は、図1の表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図3は、図1の表示装置の画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。なお、図2では、表示装置を、その表示面,すなわち前面又は光出射面,が下方を向き、背面が上方を向くように描いている。また、図3には、表示面側から見た画素の構造を描いている。
【0014】
基板SUB上には、図2に示すように、アンダーコート層UCとして、例えば、SiNx層とSiOx層とが順次積層されている。
【0015】
アンダーコート層UC上には、例えばチャネル及びソース・ドレインが形成されたポリシリコン層である半導体層SC、例えばTEOS(TetraEthyl OrthoSilicate)などを用いて形成され得るゲート絶縁膜GI、及び例えばMoWなどからなるゲートGが順次積層されており、それらはトップゲート型のTFTを構成している。この例では、これらTFTは、pチャネルTFTであり、図1及び図3の画素PXが含むDRTT、BCT、SST、TCT(後述)として利用している。
【0016】
ゲート絶縁膜GI上には、図1に示す発光制御線BG及び書込制御線SG並びに図1及び図3に示す電極E1がさらに配置されている。発光制御線BG及び書込制御線SG並びに電極E1は、ゲートGと同一の工程で形成可能である。
【0017】
発光制御線BG及び書込制御線SGは、図1に示すように、各々が画素PXの行方向(X方向)に延びており、画素PXの列方向(Y方向)に交互に配列している。これら発光制御線BG及び書込制御線SGは、走査信号線ドライバYDRに接続されている。
【0018】
電極E1は、DRTのゲートGに接続されている。電極E1は、後述するキャパシタCsの一方の電極として利用する。
【0019】
ゲート絶縁膜GI、ゲートG、発光制御線BG及び書込制御線SG、並びに電極E1は、図2に示す層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる。この層間絶縁膜IIのうち電極E1上の部分は、キャパシタCsの誘電体層として利用する。
【0020】
層間絶縁膜II上には、図2と図3とに示すソース電極SE及びドレイン電極DE、図1と図3とに示す映像信号線DL及び電源線PSL、並びに図3に示す電極E2が配置されている。これらは、同一工程で形成可能であり、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。
【0021】
ソース電極SE及びドレイン電極DEは、層間絶縁膜IIに設けられたコンタクトホールを介してTFTのソース及びドレインに電気的に接続されている。
【0022】
映像信号線DLは、図1及び図3に示すように、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。これら映像信号線DLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。
【0023】
電源線PSLは、この例では、図3に示すように、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。
【0024】
電極E2は、電源線PSLに接続されている。電極E2は、キャパシタCsの他方の電極として利用する。
【0025】
ソース電極SE、ドレイン電極DE、映像信号線DL、電源線PSL、及び電極E2は、図2に示すパッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNxなどからなる。
【0026】
パッシベーション膜PS上には、図2に示すように、前面電極として、光透過性の第1電極PEが互いから離間して並置されている。各第1電極PEは、画素電極であり、図2及び図3に示すように、パッシベーション膜PSに設けた貫通孔を介して、BCTのドレイン電極DEに接続されている。
【0027】
第1電極PEは、この例では陽極である。第1電極PEの材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電性酸化物を使用することができる。
【0028】
パッシベーション膜PS上には、さらに、図2に示す隔壁絶縁層PIが配置されている。隔壁絶縁層PIには、第1電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、第1電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIには、第1電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0029】
隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0030】
第1電極PE上には、活性層として、発光層を含んだ有機物層ORGが配置されている。発光層は、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層ORGは、発光層に加え、正孔注入層、正孔注入層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0031】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、背面電極である第2電極CEで被覆されている。第2電極CEは、画素PX間で互いに接続された共通電極であり、この例では光反射性の陰極である。第2電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、第1電極PE、有機物層ORG及び第2電極CEで構成されている。
【0032】
各画素PXは、有機EL素子OLEDと画素回路とを含んでいる。この例では、画素回路は、図1及び図3に示すように、画素スイッチSST(以下、SSTと称す)、駆動トランジスタDRT(以下、DRTと称す)、スイッチTCT(以下、TCTと称す)、出力スイッチBCT(以下、BCTと称す)、およびキャパシタCsを備えている。
上記の通り、この例では、DRT、BCT、SST及びTCTはpチャネルTFTである。また、この例では、SSTとTCTとは、DRTのドレインと映像信号線DLとDRTのゲートとの接続状態を、それらが互いに接続された第1状態と、それらが互いから遮断された第2状態との間で切り替えるスイッチ群を構成している。
【0033】
DRTとBCTと有機EL素子OLEDとは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、第1電源端子ND1は高電位電源端子であり、第2電源端子ND2は低電位電源端子である。
【0034】
BCTのゲートは、発光制御線BGに接続されている。SSTは映像信号線DLとDRTのドレインとの間に接続されており、そのゲートは書込制御線SGに接続されている。TCTはDRTのドレインとゲートとの間に接続されており、そのゲートは書込制御線SGに接続されている。キャパシタCsは、DRTのゲートと定電位端子ND1’との間に接続されている。
【0035】
この有機EL表示装置で画像を表示する場合、例えば、発光制御線BG及び書込制御線SGの各々を線順次駆動する。そして、或る画素PXに映像信号を書き込む書込期間では、まず、走査信号線ドライバYDRから、先の画素PXが接続された発光制御線BGにBCTを開く走査信号を電圧信号として出力し、続いて、先の画素PXが接続された書込制御線SGにスイッチSST及びTCTを閉じる走査信号を電圧信号として出力する。この状態で、映像信号線ドライバXDRから、先の画素PXが接続された映像信号線DLに映像信号を電流信号として出力し、DRTのゲート−ソース間電圧を、先の映像信号に対応した大きさに設定する。その後、走査信号線ドライバYDRから、先の画素PXが接続された書込制御線SGにスイッチSST及びTCTを開く走査信号を電圧信号として出力し、続いて、先の画素PXが接続された発光制御線BGにBCTを閉じる走査信号を電圧信号として出力する。
【0036】
BCTを閉じている有効表示期間では、有機EL素子OLEDには、DRTのゲート−ソース間電圧に対応した大きさの駆動電流が流れる。有機EL素子OLEDは、駆動電流の大きさに対応した輝度で発光する。
【0037】
さて、上記の通り、画素回路に映像信号として電流信号を書き込むアクティブマトリクス駆動方式の表示装置では、輝線状又は滅線状に尾を引いた輝点を生じ得る。本発明者は、この理由について詳細に調べた結果、以下の事実を見出した。
【0038】
例えば、M行目の発光制御線BG及び書込制御線SGとN列目の映像信号線DLとに接続された画素PXにおいて、DRTのソース−ドレイン間が短絡しているとする。この場合、その画素PXの有機EL素子OLEDは、有効表示期間において常に最大輝度で発光する。そのため、この画素PXは、輝点として視認される。
【0039】
また、この場合、先の画素PXの書込期間において、映像信号線ドライバXDRは、N列目の映像信号線DLを、第1電源端子ND1とほぼ等しい電位に設定する。すなわち、N列目の映像信号線DLの電位は、過剰に高くなる。映像信号線DLの配線容量は無視できない程度に大きいため、N列目の映像信号線DLの電位が適正な範囲内に回復するまでには、例えば、数十行分の書込期間が必要である。
【0040】
そのため、N列目の映像信号線DLに接続された画素PXのうち、M+1行目以降の数十個では、映像信号線ドライバXDRの出力よりも小さな信号が書き込まれることとなる。その結果、これら画素PXの輝度は、本来の輝度よりも低くなる。したがって、これら画素PXは、滅線として視認される。
【0041】
このような理由から、DRTのソース−ドレイン間が短絡すると、滅線状に尾を引いた輝点を生じるのである。なお、先の説明から分かるように、滅線の輝度は一定ではなく、通常、輝点側の端から他端に向けて高くなる。
【0042】
輝線状に尾を引いた輝点は、例えば、M行目の発光制御線BG及び書込制御線SGとN列目の映像信号線DLとに接続された画素PXにおいて、BCTのソース−ドレイン間が短絡している場合に生じる。
【0043】
すなわち、この場合、その画素PXの書込期間において、映像信号線ドライバXDRは、N列目の映像信号線DLを第2電源端子ND2よりも低い電位に設定する。そのため、その画素PXでは、DRTのゲート電位が非常に低くなる。したがって、その画素PXの有機EL素子OLEDは、有効表示期間において常に最大輝度で発光する。そのため、この画素PXは、輝点として視認される。
【0044】
また、この場合、先の画素PXの書込期間において、N列目の映像信号線DLは過剰に低い電位に設定される。映像信号線DLの配線容量は無視できない程度に大きいため、N列目の映像信号線DLの電位が適正な範囲内に回復するまでには、例えば、数十行分の書込期間が必要である。
【0045】
そのため、N列目の映像信号線DLに接続された画素PXのうち、M+1行目以降の数十個では、映像信号線ドライバXDRの出力よりも大きな信号が書き込まれることとなる。その結果、これら画素PXの輝度は、本来の輝度よりも高くなる。したがって、これら画素PXは、輝線として視認される。
【0046】
このような理由から、BCTのソース−ドレイン間が短絡すると、輝線状に尾を引いた輝点を生じるのである。なお、先の説明から分かるように、輝線の輝度は一定ではなく、通常、輝点側の端から他端に向けて低くなる。
【0047】
本発明者は、以上の事実に基づいて、以下の方法をとり得ることに想到した。
すなわち、まず、通常の方法により、図1及び図2に示す構造を作製する。次に、修復工程を実施する。
【0048】
修復工程では、まず、画素PXの中から、輝線状又は滅線状に尾を引いた輝点として視認され得るものを選択する。なお、ここで選択するのは、輝点に対応した画素PXであって、輝線又は滅線に対応した画素PXではない。また、ここで着目する輝点は、Y方向に尾を引いているもののみである。
【0049】
次に、選択した画素PXにおいて、有機EL素子OLEDの第1電極CEを第1電源端子ND1に接続する第1導電路と、この第1導電路を映像信号線DLに接続する第2導電路との双方を断線させる。第1導電路は、例えば、BCTと有機EL素子OLEDの第1電極PEとを接続している部分で断線させる。第2導電路は、例えば、SSTと映像信号線DLとを接続している部分で断線させる。また、第1及び第2導電路は、例えば、それらの半導体層SCにレーザ光を照射することにより断線させる。
【0050】
選択した画素PXにおいて第1導電路を断線させると、その画素PXが含む有機EL素子OLEDは有効表示期間において発光しない。したがって、この画素PXが輝点として視認されることはない。
【0051】
また、選択した画素PXにおいて第2導電路を断線させると、その画素PXの書込期間において、これを接続した映像信号線DLの電位が第1電源端子ND1や第2電源端子ND2の電位の影響を受けることはない。したがって、この画素PXの影響で輝線又は滅線が生じることはない。
【0052】
この修復は、画素PXに以下の痕跡を残す。これについて、図4を参照しながら説明する。
【0053】
図4は、図3の画素に修復を施した後の構造を概略的に示す平面図である。
上記の通り、本態様では、輝線状又は滅線状に尾を引いた輝点として視認され得る画素PXを選択し、その画素PXにおいて第1及び第2導電路の双方を断線させる。したがって、完成した有機EL表示装置では、一部の画素PXは2箇所の断線部を含んでいる。
【0054】
例えば、第1導電路をBCTと有機EL素子OLEDの第1電極PEとを接続している部分で断線させ、第2導電路をSSTと映像信号線DLとを接続している部分で断線させた場合には、図4に示す構造が得られる。なお、半導体層SCがポリシリコンなどのように結晶質であり且つ半導体層SCの位置で断線させる場合、半導体層SCへのレーザ光照射によって、結晶質から非晶質への相変化を生じさせることができる。この場合、レーザ光照射による半導体層SCの物理的な切断が不完全であっても、その電気抵抗は著しく上昇するため、電気的な切断が不十分となることはない。
【0055】
以上説明したように、先の修復を行うと、画像中に輝線状又は滅線状に尾を引いた輝点が現れることを防止することが可能となる。しかし、このような修復を行っても、なお、薄い白尾が観測される場合があった。図5に薄い白尾が現れる状態を概略的に示す。
本発明者は、さらにこの白尾の原因について検討を重ね、以下の事実を見出した。
【0056】
上述の修復によって不良となった画素の画素回路は映像信号線DLから切り離されているため、この画素PXの書込期間において、映像信号線ドライバXDRは、映像信号電流をこの画素PXに流すことができない。そのため、映像信号線ドライバXDRは、所定の映像信号電流を流そうとして、映像信号線DLの電位を低く設定する。即ち、映像信号線DLの電位は本来の表示輝度よりも明るい信号電流を供給する状態に設定される。この映像信号線DLの電位低下が回復するためには、例えば、その後何行分かの書込期間が必要である。以降の何行分かの画素PXには、映像信号線ドライバXDRの出力よりも大きな信号が書き込まれることとなる。その結果、これら画素PXの輝度は、本来の輝度よりも高くなる。そのため、薄い白尾が観測される。
【0057】
本願発明者は、以上の事実に基づいて、ダミー画素PX’を用いて、画像中に薄い白尾が現れるのを防止する方法に想到した。
【0058】
図6は、ダミー画素と表示画素との等価回路を示す図である。
上述のように、ダミー画素PX’は画素PXの列毎に設けられている。
ダミー画素PX’の構成は、表示画素PXの構成のうち、有機EL素子OLED、出力スイッチBCTを除いた構成である。そして、DRT’のソースは高電位電源線ND1に接続され、SST’のドレインは映像信号線DLにされている。また、SST’のゲートとTCT’のゲートは共に走査信号線ドライバYDRの書込制御線SGに接続されている。
【0059】
次に、表示画素PXが正常である場合の、ダミー画素PX’と表示画素PXの動作について説明する。
映像信号電流の書込時においては、走査信号線ドライバYDRは、発光制御線BGにオフ電位を設定してBCTを非導通状態とし、書込制御線SG、SG’にオン電位を設定してSST、SST’とTCT、TCT’を導通状態とする。そして映像信号線ドライバXDRが、映像信号線DLを介して映像信号電流を供給し、DRT、DRT’のゲートソース間電圧を保持可能なキャパシタCs、Cs’に書き込む。
このように、正常な表示画素PXとダミー画素PX’とではほぼ均等に信号電流が配分されるため、ダミー画素PX’が存在しない場合に対して、約2倍の信号電流で従来と同様の輝度を得ることができる。
【0060】
一方、表示画素PXがリペアされていた場合には、図6に示すように、映像信号ドライバXDRが供給する映像信号電流はダミー画素PX’に流すことができる。そのため、映像信号線ドライバXDRが映像信号線DLの電位を低く設定することがなくなり、リペア画素の存在に伴って現れる電位回復に伴う薄い白尾引きを防止することができる。
【0061】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態では、表示画素の構成が第1の実施の形態と異なっているがその他の構成は同一である。従って、第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0062】
図7は、第2の実施の形態の表示装置が備える表示画素PXの等価回路を示す図である。
図7の表示画素PXは、映像信号線DLとDRTのドレインとの間にSSTを接続する代わりに、SSTa及びSSTbをこの順に直列に接続している。これ以外の構成は従来と同様である。すなわち、第2の実施の形態ではスイッチ群を信号供給制御スイッチSST及びTCTで構成する代わりに、SSTa及びSSTb並びにTCTで構成している。このように、スイッチ群は3つ以上のスイッチで構成してもよい。
【0063】
なお、画素PXに図7の構造を採用した場合、そのリペアは、BCTと有機EL素子OLEDの第1電極PEとを接続している部分で断線させるとともに、図8に示す4つの個所のいずれか1つを切断することで対応可能である。
たとえば、SSTaと映像信号線DLとを接続している部分で断線させることができる。また、SSTaとSSTbとを接続している部分で断線させても良い。さらに、書込制御線SGとSSTaまたはSSTbのドレインを接続している部分で断線させても良い。
【0064】
第2の実施の形態の画素PXを用いた場合であっても、第1の実施の形態のダミー画素PX’と組合わせることにより白尾引きを防止することができる。ダミー画素PX’と第2の実施の形態の画素PXとを組合わせた動作は第1の実施の形態と同一であるためその詳細の説明は省略する。
【0065】
〔本実施の形態のバリエーション〕
本発明は、以上説明した各実施の形態に限られず、以下に示す種々のバリエーションで構成することが可能である。
【0066】
(1)ダミー画素PX’に設けたキャパシタCs’はキャパシタCsと同じ容量(キャパシタンス)でなくとも良い。さらにダミー画素PX’にはキャパシタCs’が設けられてなくても良い。表示画素PXがリペアされていた場合、映像信号電流を流せる状態が構成できれば所望の目的を達成することができるからである。
(2)ダミー画素PX’の設置個所は、光透過性絶縁基板SUBの上端部に限られず、下端部にあっても良い。原理的には、表示部以外であれば、光透過性絶縁基板SUB外に設けても良い。しかし、表示装置を製造する上では、光透過性絶縁基板SUB上で表示部に近接して設けることが好ましい。本表示装置のサイズの増加を抑制するためである。
【0067】
(3)ダミー画素PX’の行は1行のみを設けることに限られず、複数行を設け、ダミー画素行を適宜切替えて書き込みに使用することもできる。
例えば、ダミー画素行を2行設け、奇数行の画素PXに映像信号を書き込むときはダミー画素PX’の一つの行を選択し、偶数行の画素PXに映像信号を書き込むときはダミー画素PX’の他の行を選択しても良い。また、1行ごとにダミー画素行を切替えるのではなく、1フレーム毎にダミー画素行を切替えても良い。
このように切替えて使用すれば、ダミー画素PX’のTFTの劣化を抑制することができる。
【0068】
(4)表示画素PXのDRTのW/L比とダミー画素PX’のDRT’のW/L比とを異ならせることで白尾引きをより有効に低減することが可能である。即ち、表示画素PXのDRTのW/L比よりもダミー画素PX’のDRT’のW/L比を大きくする。
そうすると、表示画素PXが正常の場合には、映像信号はより多くダミー画素PX’に流れる。従って、表示画素PXがリペアされたときは、表示画素PXに流れていた電流もダミー画素PX’に流れるが、ダミー画素PX’に流れる電流の変化の割合は相対的に小さくなる。この結果、リペアされた画素に対して、ダミー画素PX’に書き込む際の信号電位の変化を更に抑制することができる。
【0069】
その他、本発明は前述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することできる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0070】
前述した実施形態では、画素回路を構成する薄膜トランジスタを全て同一の導電型、ここではPチャネル型で構成する場合について説明したが、これに限定されず、全てをNチャネル型の薄膜トランジスタで構成することも可能である。また、画素スイッチ、スイッチをNチャネル型の薄膜トランジスタ、駆動トランジスタおよび出力スイッチをPチャネル型の薄膜トランジスタでそれぞれ構成するなど、画素回路を異なる導電型の薄膜トランジスタを混在して形成することも可能である。
【0071】
更に、薄膜トランジスタの半導体層は、ポリシリコンに限らず、アモルファスシリコンで構成することも可能である。表示画素を構成する自己発光素子は、有機EL素子に限定されず自己発光可能な様々な発光素子を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一態様に係る表示装置を概略的に示す平面図。
【図2】表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図3】表示装置の画素に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【図4】画素に修復を施した後の構造を概略的に示す平面図。
【図5】薄い白尾が現れる状態を概略的に示す図。
【図6】ダミー画素と表示画素との等価回路を示す図。
【図7】他の実施の形態の表示装置が備える表示画素の等価回路を示す図。
【図8】リペアのための切断個所を示す図。
【符号の説明】
【0073】
Cs…キャパシタ、Cs’…キャパシタ、DL…映像信号線、DRT…駆動トランジスタ、DRT’…ダミー駆動トランジスタ、ND1…第1電源端子、ND1’…定電位端子、ND2…第2電源端子、OLED…有機EL素子、PX…画素、PX’…ダミー画素、BG…発光制御線、SG…書込制御線、SG’…書込制御線、SUB…絶縁基板、BCT…出力スイッチ、SST…画素スイッチ、SST’…ダミー画素スイッチ、SSTa…画素スイッチ、SSTb…画素スイッチ、TCT…スイッチ、TCT’…ダミースイッチ、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電流に応じて発光する表示素子を有する複数の画素部を基板上にマトリクス状に配設したアクティブマトリクス型表示装置において、
前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して少なくとも一つのダミー画素部が形成され、
前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すようになされていることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項2】
基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の列毎に接続された複数の映像信号線と、それぞれ前記画素部の行毎に接続された複数の第1制御信号線および第2制御信号線とを備え、
各画素部は、低電位の第1電圧電源線と高電位の第2電圧電源線との間に接続され供給電流に応じて発光する表示素子と、前記第2電圧電源線と前記表示素子との間に接続されゲート制御電圧に応じて前記表示素子に供給される電流量を制御する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのドレインと前記表示素子との間に接続されているとともに前記第1制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御される出力スイッチと、前記駆動トランジスタのゲート、ソース間に接続される保持容量と、トランジスタにより形成され前記駆動トランジスタのドレインと前記映像信号線との間に接続されているとともに前記第2制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御され前記映像信号線からの映像信号を前記画素部に取り込む画素スイッチと、前記駆動トランジスタのゲート、ドレイン間に接続されているとともに、前記第2制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御されるスイッチとを有し、
前記複数の画素部の一部で、前記駆動トランジスタと前記表示素子とを接続する第1導電路と、前記画素スイッチと前記映像信号線とを接続する第2導電路との双方が断線しているアクティブマトリクス型表示装置において、
前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して少なくとも一つのダミー画素部が形成され、
前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すようになされていることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項3】
複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して形成された各ダミー画素部は、
前記第2電圧電源線に接続されゲート制御電圧に応じてオン、オフされるダミー駆動トランジスタと、
トランジスタにより形成され前記ダミー駆動トランジスタのドレインと前記映像信号線との間に接続されているとともに第3制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御され前記映像信号線からの映像信号を前記ダミー画素部に取り込むダミー画素スイッチと、
前記ダミー駆動トランジスタのゲート、ドレイン間に接続されているとともに前記第3制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御されるダミースイッチとを有することを特徴とする請求項2に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項4】
各ダミー画素部は、
前記ダミー駆動トランジスタのゲート、ソース間に接続されるダミー保持容量を更に有することを特徴とする請求項3に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項5】
前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して形成されるダミー画素部を複数行備え、
前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と適宜選択した行の対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すことを特徴とする請求項2又は3に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項6】
前記駆動トランジスタのW/L比よりも前記ダミー駆動トランジスタのW/L比が大きいことを特徴とする請求項3に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項7】
基板上にマトリクス状に配設された複数の画素部と、前記画素部の列毎に接続された複数の映像信号線と、それぞれ前記画素部の行毎に接続された複数の第1制御信号線および第2制御信号線とを備え、
各画素部は、低電位の第1電圧電源線と高電位の第2電圧電源線との間に接続され供給電流に応じて発光する表示素子と、前記第2電圧電源線と前記表示素子との間に接続されゲート制御電圧に応じて前記表示素子に供給される電流量を制御する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのドレインと前記表示素子との間に接続されているとともに前記第1制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御される出力スイッチと、前記駆動トランジスタのゲート、ソース間に接続される保持容量と、トランジスタにより形成され前記駆動トランジスタのドレインと前記映像信号線との間に接続されているとともに前記第2制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御され前記映像信号線からの映像信号を前記画素部に取り込む複数の画素スイッチと、前記駆動トランジスタのゲート、ドレイン間に接続されているとともに前記第2制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御されるスイッチとを有し、
前記複数の画素部の一部で、前記駆動トランジスタと前記表示素子とを接続する第1導電路が断線し、かつ前記画素スイッチと前記映像信号線とを接続する部分、前記画素スイッチ同士を接続している部分、一つの前記画素スイッチと前記第2制御信号線とを接続している部分の少なくとも一つが断線しているアクティブマトリクス型表示装置において、
前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して少なくとも一つのダミー画素部が形成され、
前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すようになされていることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項8】
複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して形成された各ダミー画素部は、
前記第2電圧電源線に接続されゲート制御電圧に応じてオン、オフされるダミー駆動トランジスタと、
トランジスタにより形成され前記ダミー駆動トランジスタのドレインと前記映像信号線との間に接続されているとともに第3制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御され前記映像信号線からの映像信号を前記ダミー画素部に取り込むダミー画素スイッチと、
前記ダミー駆動トランジスタのゲート、ドレイン間に接続されているとともに前記第3制御信号線からの制御信号によりオン、オフ制御されるダミースイッチとを有することを特徴とする請求項7に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項9】
各ダミー画素部は、
前記ダミー駆動トランジスタのゲート、ソース間に接続されるダミー保持容量を更に有することを特徴とする請求項8に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項10】
前記複数の画素部が形成するそれぞれの列に対応して形成されるダミー画素部を複数行備え、
前記画素部への映像信号書込み時期において、当該画素部と適宜選択した行の対応するダミー画素部とに同時に映像信号を流すことを特徴とする請求項7又は8に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項11】
前記駆動トランジスタのW/L比よりも前記ダミー駆動トランジスタのW/L比が大きいことを特徴とする請求項8に記載のアクティブマトリクス型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−316511(P2007−316511A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148183(P2006−148183)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】