説明

アクリル樹脂板、アクリル樹脂積層体及び表示装置

【課題】透明性、耐衝撃性が良好かつ吸湿性の低いアクリル樹脂板を提供することであり、また該樹脂板の積層体及び表示装置を提供する。
【解決手段】炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)15〜50質量%、炭素数1〜5の直鎖または分岐した炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)45〜84質量%、及び下式(1)で表されるジ(メタ)アクリル酸エステル(C)0.5〜7質量%を含む重合性組成物を重合して得られるアクリル樹脂板。
CH=CR−COO−(CHCHCHCHO)−COCR=CH・・・(1)
但し、Rは水素原子又はメチル基、nは5〜16の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル樹脂板、アクリル樹脂積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は透明性に優れ、また、ガラスと比べて耐衝撃性に優れることから、CRTや液晶テレビ等の各種ディスプレイの前面板等に使用されると共に工業用資材、建築用資材等としても幅広く使用されている。しかしながら、アクリル樹脂は吸水性が高く、特にディスプレイ前面板に適用した場合には吸湿による反り等の形状変化が生じ易いという問題がある。
【0003】
アクリル樹脂の吸湿性を改善する方法の一つとしては、メタクリル酸メチルと脂環式炭化水素基がエステル結合したメタクリル酸エステルを共重合させる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、この方法では耐衝撃性が低下するという問題がある。
【0004】
また、アクリル樹脂の耐衝撃性を改善する方法の一つとして架橋性多官能モノマーを共重合する方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、架橋性多官能モノマーの構造によっては耐衝撃性改善効果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−314541号公報
【特許文献2】特開昭60−115605号公報
【特許文献3】特開昭62−232414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透明性、耐衝撃性が良好かつ吸湿性の低いアクリル樹脂板を提供することであり、また該樹脂板の積層体及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)15〜50質量%、炭素数1〜5の直鎖または分岐した炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)45〜84質量%、及び下式(1)で表されるジ(メタ)アクリル酸エステル(C)0.5〜7質量%を含む重合性組成物を重合して得られるアクリル樹脂板である。
CH=CR−COO−(CHCHCHCHO)−COCR=CH・・・(1)
但し、Rは水素原子又はメチル基、nは5〜16の整数を示す。
【0008】
また、本発明は、前記アクリル樹脂板の少なくとも一面に硬化層を有するアクリル樹脂積層体である。
【0009】
さらに、本発明は、前記アクリル樹脂積層体を表示部の保護部材として有する表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明性、耐衝撃性が良好かつ吸湿性の低いアクリル樹脂板を得ることができるので、本発明のアクリル樹脂板はCRT、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレイの前面板及び携帯電話、携帯ミュージックプレイヤー、モバイルパソコン等の情報端末の情報表示部の前面板、タッチパネルの保護板等に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)15〜50質量%、炭素数1〜5の直鎖または分岐した炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)45〜84質量%、及び下式(1)で表されるジ(メタ)アクリル酸エステル(C)1〜5質量%を含む重合性組成物を重合して得られるアクリル樹脂板である。
CH=CR−COO−(CHCHCHCHO)−COCR=CH・・・(1)
但し、Rは水素原子又はメチル基、nは5〜16の整数を示す。
(メタ)アクリル酸エステル(A)
(メタ)アクリル酸エステル(A)とは、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有する単量体のことである。
【0012】
(メタ)アクリル酸エステル(A)の具体例としては(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロデシル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。このうち吸湿性及び耐熱性の観点から、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルがより好ましい。また、これらの単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」あるいは「アクリ」のことをいう。
(メタ)アクリル酸エステル(B)
炭素数1〜5の直鎖または分岐した炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、などのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、これらの単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)
ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)とは、下式(1)で表されるポリブチレングリコール骨格を有する単量体のことである。
CH=CR−COO−(CHCHCHCHO)−COCR=CH・・・(1)
但し、Rは水素原子又はメチル基、nは5〜16の整数を示す。
【0013】
式(1)中のnが5以上では十分な耐衝撃性向上効果が得られ、またnが16以下では耐熱性や硬度が十分となるため好ましい。
【0014】
ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)はポリブチレングリコール骨格を有することで、低吸湿性を保ちつつ、耐衝撃性を向上させることができる。ポリブチレングリコール骨格の代わりに同じポリエーテル構造であるポリエチレングリコール骨格やポリプロピレングリコール骨格などを有するジ(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、耐衝撃性を向上できるが、吸湿性が悪化するという問題がある。
【0015】
ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)の具体例としては三菱レイヨン(株)製のアクリエステルPBOM(商品名)、日油(株)製のブレンマーPDT−650(商品名)などが挙げられる。
重合性組成物
前記重合性組成物の単量体成分の組成比としては(メタ)アクリル酸エステル(A)15〜50質量%、(メタ)アクリル酸エステル(B)45〜84質量%、及びジ(メタ)アクリル酸エステル(C)0.5〜7質量%である。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル(A)が15質量%未満では吸湿性の改善効果が十分ではなく、50質量%を超える場合は機械強度及び耐衝撃性が著しく低下する傾向にある。ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)が0.5質量%未満では耐衝撃性の向上効果が十分ではなく、7質量%を超える場合は耐熱性が大きく低下する傾向にある。ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)は1質量%以上であることが好ましく、また5質量%以下であることが好ましい。
【0017】
前記重合性組成物の重合反応形式としては、ラジカル重合、アニオン重合など公知の形式が挙げられる。中でも製造条件の点からラジカル重合が好ましい。
【0018】
ラジカル重合において使用できるラジカル重合開始剤は特に制限されない。具体例としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等の有機過酸化物系重合開始剤;等が挙げられる。これらは1種を単独で、または必要に応じて2種以上を併用することができる。ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体成分100重量部に対し、0.05〜1重量部とすることが好ましい。
【0019】
また、ラジカル重合開始剤以外に、必要に応じて、離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤などの添加剤を加えることもできる。
アクリル樹脂板
本発明のアクリル樹脂板は、前記重合性組成物を重合して得られる。
【0020】
ラジカル重合による重合方法としては塊状重合が好ましい。なかでも、鋳型に前記単量体を注入し、重合硬化して、鋳型から剥離する、いわゆる注型重合法が光学用途のように透明性を要求される用途には特に好ましい。
【0021】
塊状重合を行う場合は、前記単量体の一部をあらかじめ重合させた、アクリルシラップを原料として用いることが生産性や原料の取り扱い性の観点から好ましい。
【0022】
注型用の鋳型としては特に限定されず、所望の形状の樹脂成形物を得るために公知のものが使用できる。例えば無機ガラス、クロムメッキ金属板、ステンレス板等の板状体と軟質ガスケットで構成した鋳型や、同一方向へ同一速度で走行する一対のエンドレスベルトの相対する面とその両側辺部においてエンドレスベルトと同一速度で走行するガスケットで構成される鋳型が挙げられ、これらを使用すると板状の樹脂成形物が得られる。
【0023】
重合温度については特に制限はないが、塊状重合の場合、好ましくは40〜180℃、より好ましくは50〜160℃の範囲で重合を行う。また、重合時間は重合硬化の進行に応じて適宜選択することができる。
【0024】
得られるアクリル樹脂板の厚みとしては0.5〜10mmの範囲が好ましい。
アクリル樹脂積層体
前記アクリル樹脂板の少なくとも一面に硬化層を設けてアクリル樹脂積層体とすることができる。
【0025】
硬化層は、樹脂積層体表面の耐擦傷性を向上させるものであり、この耐擦傷性をもたらす各種の硬化性化合物からなる硬化性混合物を前記アクリル樹脂板の面上に硬化させたものが好ましい。硬化性混合物としては、後述する紫外線硬化性混合物のようなラジカル重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物や、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなど、縮重合系の硬化性化合物からなる硬化性混合物を挙げることができる。これらの硬化性化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化するか、或いは加熱により硬化するものである。これらの硬化性化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、複数の硬化性を有する化合物を組み合わせて用いてもよい。場合によっては、活性エネルギー線重合系の硬化性化合物と熱重合系の硬化性化合物とを組み合わせてもよい。なお、硬化性化合物単独で用いる場合も便宜的に「硬化性混合物」という。
【0026】
本発明において、硬化層は生産性、物性の観点から紫外線によって硬化された硬化層であることが好ましい。以下、紫外線硬化性混合物を硬化させて硬化層を形成する工程について説明する。
【0027】
紫外線硬化性混合物としては、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、及び光開始剤からなる紫外線硬化性混合物を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0028】
例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。
【0029】
前記の、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールのポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0030】
さらに、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物において、多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物と(メタ)アクリル酸の好ましい組合せとしては、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これら各化合物の組み合わせから、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が得られる。
【0031】
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モル当たり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系モノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;ウレタンポリ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0032】
紫外線硬化性混合物に用いる光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物;などが挙げられる。
【0033】
前記光開始剤の添加量は、紫外線硬化性混合物100質量%中、紫外線照射による硬化性の観点から0.1質量%以上が好ましく、紫外線による帯色の観点から10質量%以下が好ましい。また、前記光開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記硬化性混合物は、該硬化性混合物を含む硬化層形成用の塗料として使用することが好ましい。前記塗料には、必要に応じて、レベリング剤、導電性物質、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分をさらに添加できる。積層体の透明性の観点から、その添加量は硬化性混合物100質量%中、10質量%以下が好ましい。
【0035】
硬化層としては、その膜厚が1μm〜100μmであることが好ましい。かかる範囲においては、十分な表面硬度を有し外観も良好となる。膜厚が1μm〜30μmであることがより好ましい。
【0036】
アクリル樹脂板上に硬化層を積層する方法としては公知の方法を用いることができる。好ましい方法として例えばアクリル樹脂板上に硬化性混合物を塗布・硬化することで硬化層を積層する方法、あるいは硬化層が積層された鋳型に前記アクリルシラップを注入し注型重合を行い、重合後に鋳型を剥離することでアクリル樹脂板上に硬化層を転写積層させる方法が挙げられる。
【0037】
また、本発明のアクリル樹脂積層体においては、必要に応じて、アクリル樹脂板上、アクリル樹脂板と硬化層との間または硬化層上にその他の機能層を有していてもよい。
【0038】
その他の機能層としては、例えば、アクリル樹脂基材上または硬化層の表面に設けられる反射防止層、防汚層及び帯電防止層などが挙げられる。また、その他の機能層としては、例えば、各層間に設けられる帯電防止性能、飛散防止性能等を有する中間層などが挙げられる。
表示装置
本発明の表示装置は、本発明のアクリル樹脂積層体を表示装置の表示部の保護部材(前面板)として有するものである。
【0039】
前記樹脂積層体は透明性及び耐擦傷性、耐衝撃性に優れ、更に吸湿による形状変化が小さいため前記保護部材に好適に用いることができる。
【0040】
本発明の表示装置としては、例えば、情報表示部を有する、CRT、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレイ及び携帯電話、携帯ミュージックプレイヤー、モバイルパソコン等の情報端末及びタッチパネルが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、実施例及び比較例で使用した化合物の略号は以下の通りである。また、以下において「部」は「質量部」を示す。
MMA :メタクリル酸メチル
IBXMA :メタクリル酸イソボルニル
TBMA :メタクリル酸t−ブチル
TBCHMA:メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル
PBOM :ポリブチレングリコールジメタクリレート(商品名:アクリエステルPBOM、三菱レイヨン株式会社製)
NPG :ネオペンチルグリコールジメタクリレート
C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
TAS :コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合混合物
BEE :ベンゾインエチルエーテル
(1)全光線透過率及びヘーズ
日本電色工業(株)製のHAZE METER NDH2000(商品名)を用いてJIS K7136に示される測定法に準拠して、全光線透過率及びヘーズ値を測定した。
(2)吸水率
アクリル樹脂板から100mm×100mmの大きさの切片を切り出して得られた試験片を、80℃で72時間真空乾燥した。次いで、前記試験片を40℃の温水中に100時間浸漬し、試験前後における試験片の質量変化を測定し、吸水率を算出した。
(3)荷重たわみ温度
耐熱性を評価するために、JIS−K7207に示される測定方法に準拠して荷重たわみ温度を測定した。
(4)落球試験(耐衝撃性評価)
50mm×50mmの大きさに切断した樹脂板を試験片(サンプル)として使用した。サンプル支持台として直径20mmの円形の穴が空いた厚さ5mmのアクリル板を用い、支持台の穴がサンプル中央の下になるようにサンプルを設置し、サンプルの左右2辺をセロハンテープでサンプル支持台に固定した。
【0042】
23℃、相対湿度50%の条件下、ステンレス製球(球径16.0mmφ、質量16.7g)を樹脂板中央に落下させ、50%破壊高さ(試験片の数の50%が破壊するときの高さ)を求め、耐衝撃性を評価した。
(5)耐擦傷性
#000のスチールウールを装着した直径25.4mmの円形パッドをアクリル樹脂積層体の表面上に置き、9.8Nの荷重下で、前記表面上の20mmの距離を100回往復させて擦傷処理し、擦傷前と擦傷後のヘーズ値の差(Δヘーズ)を下式(2)より求め、耐擦傷性を評価した。
【0043】
[Δヘーズ(%)]=[擦傷後ヘーズ値(%)]−[擦傷前ヘーズ値(%)] ・・・(2)
(6)密着性
アクリル樹脂積層体の表面のクロスカット試験(JIS K5600−5−6)による観察に基づき、以下の基準により樹脂板と硬化層との密着性を評価した。
良好:硬化層の剥離無し。
不良:硬化層の剥離有り。
[実施例1]
二枚のステンレス(SUS304)板を対向させ、周囲を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した。
【0044】
この鋳型内に、(メタ)アクリル酸エステル(A)としてIBXMA30部及び(メタ)アクリル酸エステル(B)としてMMA67部、ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)としてPBOM3部、t−ヘキシルパーオキシピバレート0.2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.01部を含有する重合性組成物を注入し、対向するステンレス板の間隔を1.6mmとした。次いで、アクリル樹脂板の原料が注入された鋳型を70℃の水浴中で2時間、更に130℃の空気炉で1時間重合した後、冷却した。
【0045】
この後、ステンレス板から、重合して得られたアクリル樹脂板を剥離することにより、厚さ1mmのアクリル樹脂板を作製した。得られたアクリル樹脂板の全光線透過率、ヘーズ、吸水率、荷重たわみ温度、耐衝撃性について評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜7]
表1に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂板を作製した。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜7]
表1に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にしてアクリル樹脂板を作製した。評価結果を表1に示す。
【0046】
比較例1は重合性組成物中に(メタ)アクリル酸エステル(A)を含まないため、アクリル樹脂板の吸水率が高い。比較例2はジ(メタ)アクリル酸エステル(C)を含まないため、耐衝撃性が悪い。比較例3はジ(メタ)アクリル酸エステル(C)の含有量が多すぎるため、耐熱性が低い。比較例4は(メタ)アクリル酸エステル(A)の含有量が少ないため吸水率が高い。比較例5は(メタ)アクリル酸エステル(A)の含有量が多すぎるため、耐衝撃性が悪い。比較例6、7はジ(メタ)アクリル酸エステル(C)の構造が請求項に記載の構造と異なるため、耐衝撃性が悪い。
[実施例8]
型となるステンレス板上に、TAS50部、C6DA50部、BEE2部を含有する紫外線硬化性混合物を塗布した。
【0047】
紫外線硬化性混合物を含む塗膜上に、膜厚12μmのPETフィルムを重ね、JIS硬度40°のゴムロールを用い、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みが15μmとなるように過剰な塗料をしごき出しながら、気泡を含まないように圧着させた。尚、紫外線硬化性混合物を含む塗膜の厚みは、この紫外線硬化性混合物を含む塗料の供給量および展開面積から算出した。次いで、前記PETフィルムを介して出力40Wの蛍光紫外線ランプ(東芝(株)製、商品名:FL40BL)の下20cmの位置を0.3m/minのスピードで通過させて、紫外線硬化性混合物の硬化を行った。
【0048】
その後、前記PETフィルムを剥離し、ステンレス板の前記紫外線硬化性混合物塗布面を上にして、出力9.6kWの高圧水銀灯の下20cmの位置を3.0m/minのスピードで通過させて、紫外線硬化性混合物をさらに硬化させ、膜厚が13μmの硬化層を得た。尚、硬化層の膜厚は、得られた製品の断面の微分干渉顕微鏡写真から測定して求めた。
【0049】
前記硬化層が積層されたステンレス板を2枚用意し、ステンレス板の硬化層が内側になるように二枚のステンレス板を対向させ、周囲を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じ、注型重合用の鋳型を作製した。
【0050】
この鋳型内に、(メタ)アクリル酸エステル(A)としてIBXMA30部及び(メタ)アクリル酸エステル(B)としてMMA67部、ジ(メタ)アクリル酸エステル(C)としてPBOM3部、t−ヘキシルパーオキシピバレート0.2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1部を含有する混合物を注入し、対向するステンレス板の間隔を1.6mmとした。次いで、アクリル樹脂板の原料が注入された鋳型を70℃の水浴中で2時間、更に130℃の空気炉で1時間加熱し重合した後、冷却した。
【0051】
この後、ステンレス板から、重合して得られたアクリル樹脂板上の硬化層を剥離することにより、アクリル樹脂板の両面に硬化層が積層された厚さ1mmのアクリル樹脂積層体を作製した。得られたアクリル樹脂積層体の全光線透過率及びヘーズを前記の方法で評価した。結果を表1に示す。また、耐擦傷性及び硬化層とアクリル樹脂板との密着性を前記の方法で評価した。Δヘーズは0.1%であり耐擦傷性は良好であった。また密着性も良好であった。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、透明性、耐衝撃性が良好かつ吸湿性の低いアクリル樹脂板であるので、CRT、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プロジェクションテレビ等の各種ディスプレイの前面板及び携帯電話、携帯ミュージックプレイヤー、モバイルパソコン等の情報端末の情報表示部の前面板、タッチパネルの保護板等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A)15〜50質量%、炭素数1〜5の直鎖または分岐した炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)45〜84質量%、及び下式(1)で表されるジ(メタ)アクリル酸エステル(C)0.5〜7質量%を含む重合性組成物を重合して得られるアクリル樹脂板。
CH=CR−COO−(CHCHCHCHO)−COCR=CH・・・(1)
但し、Rは水素原子又はメチル基、nは5〜16の整数を示す。
【請求項2】
請求項1に記載のアクリル樹脂板の少なくとも一面に硬化層を有するアクリル樹脂積層体。
【請求項3】
請求項2に記載のアクリル樹脂積層体を表示部の保護部材として有する表示装置。

【公開番号】特開2012−188482(P2012−188482A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51236(P2011−51236)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】