説明

アクリル系保護フィルム

【課題】ゴム成分を含有していないにも関わらずフィルム長手方向の破断伸度が10%以上、幅方向の破断伸度が10%以上であり、長手方向及び幅方向の伸度異方性も小さく、さらには、位相差が小さく、偏光子保護フィルムとして適した性能を有するフィルムを製造できる。
【解決手段】アクリル系樹脂を含有する未延伸フィルムを延伸倍率150%以上、延伸速度5倍/分以上、かつ、当該フィルムのガラス転移温度より5℃低い温度以上で延伸する一軸目の延伸工程と、延伸倍率150%以上、延伸速度10倍/分以下、かつ、当該フィルムのガラス転移温以上、当該フィルムのガラス転移温度+10℃以内の温度で延伸する二軸目の延伸工程を含み、二軸目の延伸温度が、一軸目の延伸温度以上、(一軸目の延伸温度+10)℃以下であり、一軸目の延伸速度が二軸目の延伸速度の1.5倍以上、7倍以下であることを特徴とするアクリル系保護フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂含有フィルムを延伸してなる保護フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、ワードプロセッサ、携帯電話、携帯情報端末等に代表されるように、近年、電子機器はますます小型化している。上記例示した電子機器のように表示装置を備える電子機器では、軽量かつコンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
これら液晶表示装置には、その表示品位を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられている。さらに、これら液晶表示装置では、携帯情報端末や携帯電話向けに、該液晶表示装置をさらに軽量化するため、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムまたはシート(以下、特別に記載しない限り、シートおよびフィルムの区別は行わず、フィルムと記載する)を用いた液晶表示装置も実用化されている。
【0004】
この場合、上記樹脂フィルムは、偏光を扱うため、光学的に透明であり、かつ複屈折が小さく、さらに、光学的に均質であることが求められる。つまり、液晶表示装置において、ガラス基板の代わりに用いられる樹脂フィルムには、複屈折と厚みとの積で表される位相差が小さいことが要求されることに加えて、外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくいことが要求される。
【0005】
また、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種撮影装置、CDやDVD等の光ピックアップ装置、プロジェクター等のOA機器等では、従来ガラスレンズが用いられていた。しかし、近年、これらの機器に用いられるレンズは、軽量化を目的として、樹脂レンズへの置き換えが進んでいる。
【0006】
このような樹脂レンズは、温度や湿気等の使用環境による歪みによる焦点距離のズレの発生や射出成形等の加工時の応力発生等による位相差の影響を受けやすい。そのため、樹脂レンズにおいても、液晶表示装置等に用いられる樹脂フィルムと同様に、外部応力により位相差が変化しにくいことが要求されている。
【0007】
ところで、液晶表示装置においては、優れた光学特性を有する樹脂フィルムとしてアクリル系樹脂フィルムが知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0008】
特許文献1にはイミド樹脂を含有するアクリル系樹脂フィルムが、特許文献2にはラクトン環を含有するアクリル系樹脂フィルムが、特許文献3にはグルタル酸無水物を知られている。
【0009】
しかしながら、アクリル系樹脂フィルムは、フィルムにした場合、機械的強度が十分ではなく、その性質に改善の余地があった。
【0010】
これらの強度を改善する方法として、イミド樹脂含有フィルムを延伸して引張伸び、引張強度を改善する方法が知られている(特許文献4)。
【0011】
また、ラクトン環含有樹脂フィルムの可とう性を改善した、位相差フィルムの製造方法が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−317560
【特許文献2】特開2008−9378
【特許文献3】特開2007−254703
【特許文献4】特開平6−297558
【特許文献5】特開平2008−242426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献4は位相差が発現したり、フィルム長手方向と幅方向のそれぞれの引張強度、引張伸びに異方性があり問題があった。また、上記特許文献5は位相差フィルムを目的としており、特許文献5の方法を実施した場合、位相差が発現してしまうため、偏光子保護フィルムとして用いる場合には問題があった。本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は高い引張強度、引張伸びを有し、さらに、偏光子保護フィルムとして適した性能を有するフィルムの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、アクリル系樹脂からなるフィルムを特定の延伸方法で製造することにより、高い引張強度、引張伸びを有し、光学特性に優れたアクリル系保護フィルムが得られることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に関する。
【0015】
(i)アクリル系樹脂を含有する未延伸フィルムを延伸倍率150%以上、延伸速度5倍/分以上、かつ、当該フィルムのガラス転移温度より5℃低い温度以上で延伸する一軸目の延伸工程と、延伸倍率150%以上、延伸速度10倍/分以下、かつ、当該フィルムのガラス転移温以上、当該フィルムのガラス転移温度+10℃以内の温度で延伸する二軸目の延伸工程を含み、
二軸目の延伸温度が、一軸目の延伸温度以上、(一軸目の延伸温度+10)℃以下であり、一軸目の延伸速度が二軸目の延伸速度の1.5倍以上、7倍以下であることを特徴とするアクリル系保護フィルムの製造方法。
【0016】
(ii)アクリル系樹脂保護フィルムが、ゴム成分を含有しないことを特徴とする(i)記載の製造方法。
【0017】
(iii)アクリル系樹脂が、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、グルタルイミド系樹脂であることを特徴とする(i)または(ii)記載の製造方法。
【0018】
(iv)グルタルイミド系樹脂が、下記一般式(1)
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位と、下記一般式(2)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)で表される単位と、を含むことを特徴とする(i)〜(iii)記載の製造方法。
(v)グルタルイミド系樹脂が、下記一般式(3)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、R7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位をさらに含むことを特徴とする(i)〜(iv)に記載の製造方法。
(vi)正面位相差が5nm以下であり、フィルム長手方向の破断伸度が10%以上、幅方向の破断伸度が10%以上、フィルム長手方向の破断伸度/フィルムの幅方向の破断伸度が2以下であり、かつ、ゴム成分を含有しないことを特徴とするアクリル系保護フィルム。
(vii)二軸延伸で製造されることを特徴とするアクリル系保護フィルム。
(viii)(vii)に記載のアクリル系保護フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
(ix)(viii)に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明にかかるアクリル系保護フィルムは、ゴム成分を含有していないにも関わらずフィルム長手方向の破断伸度が10%以上、幅方向の破断伸度が10%以上であり、長手方向及び幅方向の伸度異方性も小さく、さらには、位相差が小さく、偏光子保護フィルムとして適した性能を有するフィルムを製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)アクリル系樹脂
本願においてアクリル系樹脂とは、アクリル系モノマーを主原料として得られる重合体、並びに、それらを変成及び/又は反応させた樹脂の総称である。
【0027】
本発明にかかるアクリル系樹脂をフィルムに成形することにより、複屈折と厚みとの積で表される位相差が小さく、かつ、外部の応力等により該位相差が変化しにくいフィルムを製造することができる。すなわち、本発明にかかるアクリル系樹脂は、光学用フィルムの製造用途、なかでも、位相差が小さいことを特徴とする光学フィルム、とりわけ偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。
【0028】
アクリル系樹脂は特に限定されるものではないが、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、グルタルイミド系樹脂であることが好ましい。ラクトン系樹脂としては、特に制限されないが、特開2008−9378記載の方法などに従って製造することができる。グルタル酸無水物樹脂としては、特に制限されないが、特開2007−254703記載の方法などに従って製造することができる。
【0029】
グルタルイミド系樹脂について、以下に詳述する。グルタルイミド系樹脂としては具体的には、例えば、下記一般式(1)
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2)
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミド系樹脂を好適に用いることができる。
【0034】
また、上記グルタルイミド系樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0037】
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基であることがより好ましい。
【0038】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0039】
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。
【0040】
また、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
【0041】
上記一般式(2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R6は水素またはメチル基であることが好ましく、R4は水素であり、R5はメチル基であり、R6はメチル基であることがより好ましい。
【0042】
上記グルタルイミド系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR4、R5、およびR6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0043】
上記グルタルイミド系樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含んでいてもよい。
【0044】
また、上記グルタルイミド系樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R7、およびR8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0045】
上記グルタルイミド系樹脂にアクリル酸エステル単位を含む場合は、その含有量が1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0046】
アクリル酸エステル単位が上記範囲内であれば、イミド樹脂は熱安定性に優れたものになるが、上記範囲を超えると熱安定性が悪くなり、樹脂製造時あるいは成形加工時に樹脂の分子量や粘度が低下して物性が悪化する傾向がある。
【0047】
上記グルタルイミド系樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、上記一般式(3)の含有量や一般式(1)R3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
【0048】
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミド樹脂の2重量%以上とすることが好ましく、2重量%〜95重量%とすることがより好ましく、2重量%〜90重量%とすることがさらに好ましく、2重量%〜80重量%とすることが特に好ましい。
【0049】
グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりすることがない。
【0050】
一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に脆くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0051】
上記グルタルイミド樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる物性に応じて適宜設定することが可能である。使用される用途によっては、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。
【0052】
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
【0053】
その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
【0054】
これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0055】
上記グルタルイミド系樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104〜5×105であることが好ましく、5×104〜3×105がさらに好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
【0056】
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0057】
また、上記グルタルイミド系樹脂のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、得られるアクリル系樹脂の適用範囲を広げることができる。
【0058】
一方、例えば、ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、耐熱性が要求される用途においては適用範囲が制限される。
【0059】
また、上記グルタルイミド系樹脂の酸価は特に限定されるものではないが、1.0mmol/g以下であることが好ましく、0.5mmol/g以下であることがより好ましい。酸価が上記範囲内であれば、得られるアクリル系樹脂の適用範囲を広げることができる。
【0060】
一方、例えば、酸価が上記範囲より大きいと、溶融押出時の樹脂の発泡が起こりやすくなり、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0061】
ここで、酸価とは、樹脂中でのカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量を表す。酸価は、例えば特開2005−23272に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0062】
上記グルタルイミド系樹脂において、一般式(1)〜(3)で表される単位の含有量(換言すれば、割合)は、特に限定されるものではなく、グルタルイミド系樹脂に要求される物性や、本発明にかかるアクリル系樹脂を成形してなるフィルムに要求される特性等に応じて決定すればよい。
【0063】
ここで、上記グルタルイミド系樹脂の製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
まず、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。製造方法としては特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。例えば、特開昭56−8404、特公平6−86492、特公昭52−32665などに記載の方法に準じて製造できる。(メタ)アクリル酸エステル重合体として、好ましくはポリメタクリル酸メチルである。
【0065】
本発明のグルタルイミド系樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合には、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとを共重合させ、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を製造する。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体は、例えば、特開昭57−149311、特開昭57−153009、特開平10−152505、特開2001−31046、特開2004−27191などに記載の方法に従って製造できる。
【0066】
本発明のグルタルイミド系樹脂がアクリル酸エステル単位を含む場合には、原料となる(メタ)アクリル酸エステル重合体中のアクリル酸エステル単位が1重量%未満であることが好ましく、0.5重量%未満であることがより好ましい。
【0067】
この工程において、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0068】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。複数種の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、最終的に得られるグルタルイミド樹脂に複数種類の(メタ)アクリル酸エステル単位を与えることができる。
【0069】
また、上記グルタルイミド樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとの重合割合を調整することにより、芳香族ビニル単位の割合を調整することができる。
【0070】
上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、および(メタ)アクリル酸エステル重合体の構造は、特に限定されるものではなく、イミド化反応が可能なものであればよい。具体的には、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
【0071】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
【0072】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体にイミド化剤を添加し、イミド化を行う。これにより、上記グルタルイミド系樹脂を製造することができる。
【0073】
上記イミド化剤は、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであれば特に制限されず、WO2005/054311記載のもの等が挙げられる。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
【0074】
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0075】
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0076】
また、常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
【0077】
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
【0078】
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド系樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
【0079】
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるグルタルイミド系樹脂の物性や、本発明にかかるアクリル系樹脂を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化する方法としては公知の技術を用いることができる。
【0081】
すなわち、(1)押出機などを用い、溶融状態にある(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体をイミド化剤と反応させたり、(2)イミド化反応に対して非反応性溶媒を用いて、溶液状態の(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体にイミド化剤と反応させること等により、得られる。
【0082】
押出機を用いてグルタルイミド系樹脂を製造する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0083】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマー(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体)に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
【0084】
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
【0085】
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、原料である(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
【0086】
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜270℃にて行うことが好ましく、さらに200〜250℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が270℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるグルタルイミド系樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
【0087】
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
【0088】
押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
【0089】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008−273140に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
【0090】
また、押出機には、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
【0091】
また、上記グルタルイミド系樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0092】
上記グルタルイミド系樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
【0093】
具体的には、原料ポリマーを加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
【0094】
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
【0095】
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
【0096】
上説したような方法によれば、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位の比率が所望に制御されたグルタルイミド樹脂を容易に製造することができる。
【0097】
なお本発明はアクリル系樹脂に、可撓性を有する架橋粒子(ゴム成分)を含有しないことを特徴とする。ゴム成分を含有させることで、得られるフィルムの引張強度や伸びを改良する効果が得られるが、光学フィルムに要求される透明性が悪化したり、フィルムに含まれる異物が多くなったりすることがあり、好ましくない。
【0098】
本発明に用いられるアクリル系樹脂には、添加剤を含有させても良い。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、ラジカル捕捉剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤、およびフィラー等の従来公知の添加剤を挙げることができる。また、上説したアクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂などもまた、その他の添加剤として含有させることができる。なお、その他の添加剤は、任意成分であり、本発明にかかるアクリル系樹脂は、これらのその他の添加剤を含まなくてもよい。
【0099】
上記可塑剤は、特に限定されるものではなく、従来公知のあらゆる可塑剤を用いることができる。具体的には、例えば、アジピン酸ジ−n−デシル等の脂肪族二塩基酸系可塑剤やリン酸トリブチル等のリン酸エステル系可塑剤等を挙げることができる。
【0100】
本発明にかかるアクリル系樹脂に上記可塑剤を含有させることにより、該アクリル系樹脂を成形してなるフィルムにおいて、機械的特性を向上させることができる。
【0101】
一方、上記可塑剤の添加により、得られるフィルムのガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれたり、透明性が損なわれたりするといった問題が生じることがある。
【0102】
したがって、本発明にかかるアクリル系樹脂に上記可塑剤を含有させる場合、該アクリル系樹脂を成形してなるフィルムにおいて、フィルムの性能が妨げられない範囲で添加することが好ましい。
【0103】
上記可塑剤の含有量は、具体的には、アクリル系樹脂において、20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。
【0104】
上説したアクリル系樹脂以外の樹脂を、上記その他の添加剤として用いる場合、該樹脂は特に限定されるものではない。例えば、上説したアクリル系樹脂以外のアクリル系樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。中でも、上説したアクリル系樹脂以外のアクリル系樹脂を含有させることが好ましい。
【0105】
なお、その他の添加剤として含有させる樹脂は、単一種を単独で用いてもよいし、複数種類の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
その他の添加剤として、上記樹脂を添加する場合、アクリル系樹脂における含有量は、1重量%〜30重量%とすることが好ましく、2重量%〜20重量%とすることがより好ましく、3重量%〜10重量%とすることがさらに好ましい。
【0107】
一方、上記樹脂の含有量が上記範囲よりも多いと、上説したアクリル系樹脂および紫外線吸収剤の性能が十分に発揮されなくなる傾向がある。一方、上記樹脂の含有量が上記範囲よりも少ないと、上記樹脂の添加効果が得られにくくなることがある。
【0108】
上記フィラーは、特に限定されるものではなく、フィルムに用いられる従来公知のあらゆるフィラーを用いることができる。また、フィラーは、無機の微粒子であってもよいし、有機の微粒子であってもよい。
【0109】
無機の微粒子であるフィラーとしては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウム等の金属酸化物微粒子、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、およびケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩微粒子、並びに炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、およびリン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0110】
有機の微粒子であるフィラーとしては、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、および架橋スチレン系樹脂等の樹脂微粒子を挙げることができる。
【0111】
このようなフィラーを添加することにより、フィルムの滑り性を改善することができる。
【0112】
上記フィラーの添加量は特に限定されるものではないが、本発明にかかるアクリル系樹脂を成形して光学用フィルムとする場合、得られるフィルムの光学特性が著しく損なわない範囲とすることが好ましい。
【0113】
一般的には、本発明にかかるアクリル系樹脂において、上記フィラーの含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
(2)アクリル系樹脂を含有するフィルム(「原料フィルム」または「未延伸フィルム」という)
ここで、本発明にかかるアクリル系樹脂を含有するフィルムを製造する方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明にかかるアクリル系樹脂を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0114】
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形等を挙げることができる。
【0115】
また、本発明にかかるアクリル系樹脂を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本発明にかかるフィルムを製造することができる。
【0116】
中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0117】
以下、本発明にかかるフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明にかかるアクリル系樹脂を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
【0118】
本発明にかかるアクリル系樹脂を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明にかかるアクリル系樹脂を、押出機に供給し、該アクリル系樹脂を加熱溶融させる。
【0119】
アクリル系樹脂は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0120】
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明にかかるアクリル系樹脂)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
【0121】
次に、押出機内で加熱溶融されたアクリル系樹脂を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、アクリル系樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0122】
次に、Tダイに供給されたアクリル系樹脂を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜する。
【0123】
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備え
たフレキシブルロールであることが好ましい。
【0124】
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
【0125】
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
(3)アクリル系保護フィルムの製造方法
本発明は原料フィルムを特定の条件下により二軸延伸することでアクリル系保護フィルムを製造することができる。従来、延伸フィルムでは、位相差の発生を避けることが困難であったが、本発明にかかるアクリル系樹脂によれば、延伸処理を施しても位相差が実質的に発生させずに、機械的特性が向上した延伸フィルムを製造することができる。
【0126】
本発明は、アクリル系樹脂を含有する未延伸フィルムを延伸倍率150%以上、延伸速度5倍/分以上、かつ、当該フィルムのガラス転移温度より5℃低い温度以上で延伸する一軸目の延伸工程と、延伸倍率150%以上、延伸速度10倍/分以下、かつ、当該フィルムのガラス転移温以上、当該フィルムのガラス転移温度+10℃以内の温度で延伸する二軸目の延伸工程を含む。
【0127】
一軸目の延伸倍率は150%以上が好ましく、170%以上がより好ましい。一軸目の延伸倍率が150%未満であると得られえるフィルムの破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する傾向がある。
【0128】
一軸目の延伸速度は5倍/分以上が好ましく、8倍/分以上がより好ましい。一軸目の延伸速度が5倍/分未満であると得られるフィルムの破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する傾向がある。
【0129】
一軸目の延伸温度は(原料フィルムのガラス転移温度−5℃)以上が好ましく、(原料フィルムのガラス転移温度−2℃)以上がより好ましい。一軸目の延伸温度が(原料フィルムのガラス転移温度−5℃)未満であると延伸時にフィルムが破断することがあり好ましくない。
【0130】
二軸目の延伸倍率は150%以上が好ましく、170%以上がより好ましい。一軸目の延伸倍率が150%未満であると得られるフィルムの破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する傾向がある。
【0131】
二軸目の延伸速度は10倍/分以下が好ましく、8倍/分以下がより好ましい。二軸目の延伸速度が10倍/分より大きいと得られるフィルムの位相差が高くなり、フィルム光学特性が悪化する傾向がある。
【0132】
二軸目の延伸温度は原料フィルムのガラス転移温度以上が好ましく、(原料フィルムのガラス転移温度−2℃)以上がより好ましい。二軸目の延伸温度が原料フィルムのガラス転移温度以下であると得られるフィルムの位相差が高くなり、フィルム光学特性が悪化する傾向がある。
【0133】
また、二軸目の延伸温度は、一軸目の延伸温度以上、(一軸目の延伸温度+10)℃以下が好ましく、一軸目の延伸温度以上、(一軸目の延伸温度+8)℃以下がより好ましい。即ち、(二軸目延伸温度−一軸目延伸温度)℃は、0℃以上10℃以下が好ましく、0℃以上8℃以下がより好ましい。二軸目の延伸温度が一軸目延伸温度より低いと得られるフィルムの破断伸度が不十分となったり、延伸時にフィルムが破断することがあり、10℃より大きいと得られるフィルムの破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する傾向がある。
【0134】
さらに、一軸目の延伸速度は、二軸目の延伸速度に対して1.5倍以上7倍以下であることが好ましく、1.7倍以上6倍以下がより好ましい。一軸目の延伸速度が二軸目の延伸速度よりも1.5倍未満であると得られるフィルムの横手方向の破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する傾向があり、7倍より大きいと得られるフィルムの横手方向の破断伸度が不十分となり、フィルム強度が不足する場合がある。また、上記範囲外であると、フィルムの横手方向及び長手方向の破断伸度のバランスが悪い場合があり、このような二軸延伸フィルムを製品化する際に、破断伸度が良いフィルム方向に裂けが生じやすく好ましくない。
【0135】
上説した条件下で二軸延伸を施すことで、ゴム成分を配合せずにフィルム長手方向の破断伸度が10%以上、幅方向の破断伸度が10%以上、(長手方向の破断伸度/幅方向の破断伸度)が2以下、かつ正面位相差が10nm以下の光学用アクリル系二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0136】
原料フィルムを延伸する方式は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方式を用いればよい。具体的には、例えば、ロールを用いた縦延伸、テンターを用いた横延伸など、これらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
(4)アクリル系保護フィルム
本発明にかかるアクリル系保護フィルムは上記二軸延伸方法で製造することができる。得られる延伸フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10μm〜200μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、30μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0137】
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
【0138】
一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、延伸倍率が過大になり、ヘーズが悪化する傾向がある。
【0139】
本発明にかかる延伸フィルムは、ヘーズが1%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0140】
本発明にかかる延伸フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる延伸フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0141】
本発明にかかる延伸フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
【0142】
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる延伸フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0143】
また、本発明にかかる延伸フィルムは、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。
【0144】
より具体的には、面内位相差は原料フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm未満であることがさらに好ましい。また、面内位相差は延伸フィルムに関しては、10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0145】
また、厚み方向位相差は原料フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差は延伸フィルムに関しては、50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0146】
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる延伸フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる。
【0147】
一方、フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差が50nmを超えたりすると、本発明にかかる延伸フィルムを用いた偏光子保護フィルムを、液晶表示装置の偏光板として用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0148】
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。つまり、3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。
【0149】
Re=(nx−ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
【0150】
また、本発明にかかる延伸フィルムは、配向複屈折の値が、0〜0.1×10-3であることが好ましく、0〜0.01×10-3であることがより好ましい。
【0151】
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
【0152】
なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「配向複屈折」とは、アクリル系樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、前述のnx、nyを用いて説明すると、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
【0153】
本発明にかかる延伸フィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10-122/N以下であることが好ましく、10×10-122/N以下であることがより好ましく、5×10-122/N以下であることがさらに好ましい。
【0154】
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明にかかる延伸フィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0155】
一方、光弾性係数の絶対値が20×10-122/Nより大きいと、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
【0156】
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
【0157】
c=△n/△F
ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
【0158】
本発明にかかるフィルムは、必要に応じて、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させたりして用いることができる。
【0159】
本発明にかかる延伸フィルムは、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。具体的には、例えば、本発明にかかる光学用フィルムを、表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明にかかる延伸フィルムに表面処理を施すことが好ましい。上記表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理であることが好ましい。
【0160】
また、本発明にかかるフィルムにおいて、表面処理を施す場合、その表面処理の程度は特に限定されるものではないが、50dyn/cm以上であることが好ましく、50dyn/cm〜80dyn/cm以下であることがより好ましい。
【0161】
このような程度の表面処理であれば、従来公知の表面処理設備を用いて表面処理を施すことができる。
【0162】
このような表面処理を施すことにより、本発明にかかる延伸フィルムと、コーティングまたはラミネートされる別のフィルムとの間の相互の密着性を向上させることができる。
【0163】
なお、本発明にかかる延伸フィルムに対する表面処理の目的は、作用効果を目的とするものに限定されるものではない。つまり、本発明にかかる延伸フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。
【0164】
本発明にかかる延伸フィルムは、上説したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
【0165】
本発明の延伸フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【0166】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0167】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例におけるTGA測定、イミド化率の算出、スチレン量の算出、ガラス転移温度の決定、フィルムの厚み測定、並びに面内位相差測定は、以下の手順に従い行った。
【0168】
〔イミド化率の算出〕
生成物のペレットを塩化メチレンに溶解し、その溶液をSensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。
【0169】
得られたIRスペクトルより、1720cm-1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm-1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)との比からイミド化率(Im%(IR))を求めた。
【0170】
なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0171】
〔スチレン量の算出〕
原料樹脂(約10mg)を重クロロホルム(約4mL)に溶解し、その溶液をVarian社製NMR測定装置Gemini−300を用いて、1H−NMRスペクトルを測定した。
【0172】
得られた1H−NMRスペクトルより、δ=7.4〜6.8におけるスチレンユニットの芳香族由来のプロトンと、δ=3.8〜2.2におけるメタクリル酸メチルユニットのエステルに帰属されるプロトンの積分強度比から、スチレン量を決定した。
【0173】
〔酸価測定〕
樹脂0.3gを塩化メチレン37.5mLに溶解し、さらにメタノール37.5mLを加えた。次に0.1mmol%の水酸化ナトリウム水溶液5mLとフェノールフタレインのエタノール溶液数滴を加えた。次に0.1mmol%の塩酸を用いて逆滴定を行い、中和に要する塩酸の量から酸価を求めた。
【0174】
[破断伸度および破断強度]
JIS K7162に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−2000A形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)及び伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は1号形の形状にて、厚さが約40μm厚のものを用いた。試験は23℃にて50mm/秒の試験速度で行なった。
【0175】
〔ガラス転移温度〕
未延伸フィルム10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、株式会社島津製作所製DSC−50型)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
【0176】
〔厚み測定〕
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みを測定した。
【0177】
〔面内位相差測定〕
フィルムから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片を、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で面内位相差Reを測定した。
【0178】
〔製造例1〕
原料の樹脂として分子量10万のメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(スチレン量11モル%)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化樹脂を製造した。
【0179】
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230〜250℃、スクリュー回転数は150rpmとした。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下、「MS樹脂」ともいう)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して16重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(1)を得た。
【0180】
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化MS樹脂(1)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して0.8重量部の炭酸ジメチルと0.2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化MS樹脂(2)を得た。
【0181】
さらに、イミド化MS樹脂(2)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(3)を得た。
【0182】
なお、イミド化MS樹脂(3)は、上説の実施形態に記載した一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位と、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位とが共重合したグルタルイミド樹脂に相当する。
【0183】
イミド化MS樹脂(3)について、上記の方法に従って、イミド化率およびガラス転移温度を測定した。その結果、イミド化率は70モル%、ガラス転移温度は140℃であった。
【0184】
〔製造例2〕
原料の樹脂を分子量10.5万のメタクリル酸メチル重合体(以下、「PMMA」ともいう)、イミド化剤のモノメチルアミンを2重量部に変更した以外は製造例1と同様の方法でイミド化PMMA樹脂(3)を得た。その結果、イミド化率は14モル%、ガラス転移温度は127℃であった。
【0185】
〔実施例1〕
製造例1で得られたイミド化MS樹脂(3)を、100℃で5時間乾燥後、40mmφ単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて260℃で押し出すことにより得られたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅300mm、厚み150μmの未延伸フィルムを得た。
【0186】
このフィルムについて、ラボ延伸機(バッチ式一軸延伸装置、熱風循環式、スリットノズル上下噴きつけ、温度分布±1℃)を用いて表1の条件下で二軸延伸フィルムを作成した。この二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性を表1に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
〔実施例2〜3〕
延伸条件を変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを作成し、得られた二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性測定した。延伸条件と二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性を表1に示す。
【0189】
〔実施例4〕
製造例1で得られたPMMAイミド化樹脂(3)を用いたことと、延伸条件を変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを作成し、得られた二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性測定した。延伸条件と二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性を表1に示す。
【0190】
〔比較例1〜6〕
延伸条件を変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを作成し、得られた二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性測定した。延伸条件と二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性を表1に示す。
【0191】
〔比較例7〕
製造例1で得られたPMMAイミド化樹脂(3)を用いたことと、延伸条件を変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを作成し、得られた二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性測定した。延伸条件と二軸延伸フィルムの機械特性および光学特性を表1に示す。
【0192】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂を含有する未延伸フィルムを延伸倍率150%以上、延伸速度5倍/分以上、かつ、当該フィルムのガラス転移温度より5℃低い温度以上で延伸する一軸目の延伸工程と、延伸倍率150%以上、延伸速度10倍/分以下、かつ、当該フィルムのガラス転移温以上、当該フィルムのガラス転移温度+10℃以内の温度で延伸する二軸目の延伸工程を含み、
二軸目の延伸温度が、一軸目の延伸温度以上、(一軸目の延伸温度+10)℃以下であり、一軸目の延伸速度が二軸目の延伸速度の1.5倍以上、7倍以下であることを特徴とするアクリル系保護フィルムの製造方法。
【請求項2】
アクリル系樹脂保護フィルムが、ゴム成分を含有しないことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
アクリル系樹脂が、ラクトン系樹脂、グルタル酸無水物系樹脂、グルタルイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
グルタルイミド系樹脂が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位と、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)で表される単位と、を含むことを特徴とする請求項1〜3記載の製造方法。
【請求項5】
グルタルイミド系樹脂が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4に記載の製造方法。
【請求項6】
正面位相差が5nm以下であり、フィルム長手方向の破断伸度が10%以上、幅方向の破断伸度が10%以上、フィルム長手方向の破断伸度/フィルムの幅方向の破断伸度が2以下であり、かつ、ゴム成分を含有しないことを特徴とするアクリル系保護フィルム。
【請求項7】
二軸延伸で製造されることを特徴とするアクリル系保護フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のアクリル系保護フィルムを用いてなることを特徴とする偏光子保護フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光子保護フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。

【公開番号】特開2010−240986(P2010−240986A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92365(P2009−92365)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】