説明

アスパルテームとアスパルテーム誘導体の混晶およびその製造方法

【課題】N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの溶解性の改善。
【解決手段】N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混晶とすることによりN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの溶解性が著しく改善される 。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は甘味物質として知られるアスパルテーム(以下APMと略称することがある)とN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステル(以下HMP-APMと略称することがある)の混晶およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスパルテームは安全性および甘味の質に優れる低カロリー甘味料として知られ、現在広汎に使用されている。また近年、アスパルテームよりも甘味度に優れるアスパルテームの誘導体化合物が複数見出され報告されている(特許文献1〜3参照)。特にN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルは、甘味度が質量比でショ糖の約20,000倍と報告されており、優れた甘味料として期待される化合物である。
【0003】

【0004】
しかしながら、HMP-APMは水溶液に対する溶解度が著しく低いため、飲料や液状の食品への使用は不利である。通常、甘味料を飲料や液状の食品に用いる場合、まず甘味料の高濃度溶液を調製し、これを飲料や液状食品に添加することで所望の濃度に調整して最終製品を製造するため、該HMP-APMの溶解度の低さは重大な問題となる。従って、HMP-APMの溶解度を改善する方法の開発が求められていた。特許文献4には、HMP-APMのような溶解度の低いアスパルテーム誘導体をシクロデキストリンと混合して用いることにより溶解度を改善する方法が開示されている。しかしながらシクロデキストリンは甘味度がないため、HMP-APMをシクロデキストリンと混合して用いた場合、甘味度の低下は免れない。
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO94/11391号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO99/52937号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO00/00508号パンフレット
【特許文献4】特開2004−121222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、HMP-APMの水溶液に対する溶解性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、該HMP-APMをAPMとの混晶とすることにより、該HMP−APMの水溶液に対する溶解性が著しく向上することを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下の内容を含むものである。
【0008】
[1] N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混晶 。
[2] Cu−Kα線による粉末X線回折で得られるX線回折パターンにおいて、4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に回折角2θの特徴的ピークを有する、請求項1記載の混晶。
[3] Cu−Kα線による粉末X線回折で得られるX線回折パターンにおいて、6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に回折角2θの特徴的ピークを有する、請求項1記載の混晶。
[4] 混晶中に含まれる、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルのアスパルテームに対する比率が、質量比で0.02/100〜15/100である請求項1〜3記載の混晶。
[5] N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの混晶を製造するに当たり、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混合溶液を晶析後、析出した混晶を分離することを特徴とするN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混晶の製造方法。
[6] アスパルテームとN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとの初期濃度(質量%)の比が、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステル/アスパルテーム=0.05/100〜35/100である請求項5記載の製造方法。
[7] 溶媒が、水、エチルアルコール、メチルアルコール、およびこれらの任意の混合溶媒から選択される請求項5または6記載の製造方法。
[8] 冷却後に析出するアスパルテームが、溶媒1リットルに対して10グラム以上となるように初期濃度を設定し、溶液を見かけ上氷菓(シャーベット)状の疑似固相となるように、機械的攪拌等の強制流動を与えることなく、伝導伝熱により冷却し、疑似固相を生成させることを特徴とする請求項5〜7記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、HMP−APMの水溶液に対する溶解性が著しく改善された、HMP−APMとAPMの混晶、およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
HMP−APMとAPMの混晶は、HMP−APMおよびAPMを含む溶液を晶析し、析出した結晶を分離することにより得ることできる。HMP−APMとAPMが単なる混合物であれば、粉末X線回折スペクトルにおいて、双方のX線回折ピークが現れるが、本発明においてHMP−APMおよびAPMを含む溶液を晶析することにより得られた結晶は、高速液体クロマトグラフィーの分析で双方が結晶中に含まれるにもかかわらず、粉末X線回折図においては、APMと同一の回折パターンを示すか、HMP−APMおよびAPM双方と異なる回折パターンを示し、両者の混晶であることが示される。本発明における混晶はCu−Kα線による粉末X線回折で得られるX線回折パターンにおいて、4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°付近に回折角2θの特徴的ピークを有するものと、6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°付近に回折角2θの特徴的ピークを有するものとが存在する。なお、粉末X線回折スペクトルにおける回折角(2θ)の値は、±0.2度程度の測定誤差を有し得るものであり、このような誤差が結晶形の同一性を否定するものでないことは明らかである。
【0011】
混晶中に含まれるHMP−APMとAPMの比率は、質量比で好ましくはHMP−APM/APM=0.02/100〜15/100、より好ましくは0.02/100〜6/100の範囲である。
【0012】
晶析に用いる溶媒としては水、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、エチルエーテル、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、ジクロロメタン、クロロホルムおよび1,2−ジクロロエタンまたはこれらの混合溶媒等を挙げることができるが、水が最も好ましい。
【0013】
晶析において、HMP−APMおよびAPMは粉末のものを溶媒に溶解しまたはスラリー状態とし該溶液またはスラリーを晶析に用いることができる。またHMP−APMおよびAPMの各製造過程で得られた溶解液またはスラリーを混合して晶析に用いてもよい。またHMP−APMを製造する過程で得られるHMP−APMおよびAPMを含む溶解液またはスラリーを晶析に用いてもよい。
【0014】
晶析は、冷却晶析、濃縮晶析、中和晶析等の何れの晶析方法を使用してもよいが、好ましくは冷却晶析を採用することができる。またAPMが多量に存在する系では、攪拌を行うと微細な結晶が生成することが知られており、静置晶析を行うか、静置晶析を行った後に、必要に応じて攪拌晶析をすることが望ましい。静置晶析は、特公平03−025438に記載されているように、冷却後に析出するアスパルテームが、溶媒1リットルに対して約10グラム以上となるように初期濃度を設定し、溶液を見かけ上氷菓(シャーベット)状の疑似固相となるように、機械的攪拌等の強制流動を与えることなく、伝導伝熱により冷却し、疑似固相を生成させる方法を採用することができる。
【0015】
晶析を行う溶液のAPMの初濃度は、好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%である。HMP−APMの初濃度は、APMの濃度(質量%)に対するHMP−APMの濃度(質量%)の比率(HMP−APM/APM)が0.05/100〜35/100の範囲となるよう設定するのが好ましく、0.2/100〜12/100の範囲に設定するのがさらに好ましい。HMP−APM/APMの値が35/100を超える場合、完全な混晶が形成されない傾向にある。
【0016】
晶析により得られたシャーベットまたはスラリーは、固液分離および乾燥、更に必要があれば造粒を行うことにより最終製品とすることができる。
【0017】
固液分離の方法としては、濾過や遠心分離などが挙げられる。得られた湿結晶は、真空乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥、スプレードライヤー、ミクロンドライヤーなどの公知の手段を用いて乾燥することができる。造粒方法としては乾式および湿式造粒などがあげられる。
【0018】
本発明の混晶は、甘味料として好適に使用され、さらに糖類(ショ糖、転化糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖等)、糖アルコール類(マルチトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール等)、オリゴ糖類、食物繊維、サッカリン、アセスルフェームK、スクラロース等の他の甘味料や、担体、増量剤、添加剤、香料等の他の任意の成分を配合して甘味料組成物とすることができる。
【0019】
本発明の混晶およびそれを含有する甘味料組成物は各種飲食物に配合して用いることができる。特にHMP−APMよりも遙かに溶解度が高いため容易に高濃度溶液を調製することができ、飲料、ゲル状食品、氷菓、アイスクリーム、アイスキャンディー等の液体から調製される食品の製造に好ましく用いることができる。飲料としては、珈琲飲料、野菜汁飲料、日本茶、中国茶、紅茶、乳飲料、スープ飲料、炭酸飲料、甘味飲料、果汁飲料、アルコール飲料等を挙げることができる。これらの他、粉末ジュース、粉末ココア、インスタント珈琲、チョコレート、チューインガム、健康食品、パン、ケーキ等の各種食品にも用いることができる。
【0020】
以下に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。なおCu−Kα線による粉末X線回折の測定は、スペクトリス株式会社製X線回折装置PW3050を用い、管球:Cu、管電流:30mA、管電圧:40kV、サンプリング幅:0.020°、走査速度:3°/min、波長:1.54056Å、測定回折角範囲(2θ):3〜30°の条件で測定した。また混晶中のHMP−APMとAPMの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析で得られるピーク面積を既知濃度のAPMおよびHMP−APMのピーク面積と比較することにより、質量%で算出した。また混晶中のHMP−APMとAPMの比率(HMP−APM/APM)は、HPLC分析により算出された濃度(質量%)の比により算出した。
【0021】
<参考例1>
APM6.16gに200mlの水を加え、撹拌して65℃で溶解した。その後、10℃まで静置晶析し、結晶を濾別した。得られた結晶を減圧乾燥することによって、APMのIB型結晶を得た。アスパルテームのIB型結晶の粉末X線回折スペクトルを図1に示す(特徴的ピークは2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に存在)。
【0022】
<参考例2>
APM9.00gに200mlの水を加え、撹拌して65℃で溶解した。その後30℃まで撹拌晶析し、結晶を濾別した。得られた結晶を減圧乾燥することによって、APMのIII型結晶を得た。アスパルテームのIII型結晶の粉末X線回折スペクトルを図2に示す(特徴的ピークは2θ=4.4°、5.6°、6.7°、10.5°、11.1°および18.3°に存在)。
【0023】
<参考例3>
国際公開第WO01/47949号パンフレットに記載の方法に準じてHMP−APMの結晶を得た。HMP−APM結晶の粉末X線回折スペクトルを図3に示す(2θ=8.2°、14.7°、19.1°、19.8°、20.5°および22.3°に存在)。
【実施例1】
【0024】
13.05g(44.34mmol)のアスパルテームと1.43g(3.12mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに300mlの水を加え、65℃で溶解させた。その後、10℃の恒温水層にて急冷し、静置晶析を行った。一晩、10℃にて静置した後、撹拌してスラリー化し、分離、乾燥することによって、HMP−APMとAPMの混晶(10.64g)を得た(HMP−APM/APM=6.63/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例2】
【0025】
9.63g(32.72mmol)のアスパルテームと1.50g(3.27mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと270mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(6.74g)を得た(HMP−APM/APM=9.52/100)。得られた結晶の粉末X線回折スペクトルは、2θ=6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に特徴的ピークが存在し、APM結晶およびHMP−APM結晶と異なるパターンを示した。図4に実施例2で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【実施例3】
【0026】
8.36g(28.39mmol)のアスパルテームと0.53g(1.15mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと190mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(7.52g)を得た(HMP−APM/APM=3.40/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。図5に実施例3で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【実施例4】
【0027】
実施例3で得られた混晶を、40℃の乾燥機で2時間放置後、粉末X線スペクトルを測定したところ、2θ=6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に特徴的ピークが存在し、APM結晶およびHMP−APM結晶と異なるパターンを示した。図6に実施例4で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【実施例5】
【0028】
4.83g(16.42mmol)のアスパルテームと0.19g(0.42mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと115mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(4.07g)を得た(HMP−APM/APM=2.05/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例6】
【0029】
2.77g(9.42mmol)のアスパルテームと0.06g(0.12mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと66mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(2.43g)を得た(HMP−APM/APM=1.11/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例7】
【0030】
9.55g(32.45mmol)のアスパルテームと0.12g(0.25mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと220mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(8.30g)を得た(HMP−APM/APM=0.67/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例8】
【0031】
9.80g(33.31mmol)のアスパルテームと0.062g(0.136mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと220mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(8.26g)を得た(HMP−APM/APM=0.38/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例9】
【0032】
8.82g(29.95mmol)のアスパルテームと0.007g(0.015mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと220mlの水を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(8.16g)を得た(HMP−APM/APM=0.21/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例10】
【0033】
6.42g(21.81mmol)のアスパルテームと0.20g(0.22mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに180mlの水を加え、60℃で溶解させた。その後、5℃の恒温水槽にて急冷し、静置晶析を行った。一晩、5℃にて静置した後、分離、乾燥することによって、HMP−APMとAPMの混晶(5.20g)を得た(HMP−APM/APM=1.78/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例11】
【0034】
6.42g(21.81mmol)のアスパルテームと0.10g(0.22mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと180mlの水を用いる他は、実施例10と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(5.30g)を得た(HMP−APM/APM=1.00/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例12】
【0035】
15.41g(52.36mmol)のアスパルテームと0.15g(0.33mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと172mlの60%メタノール水溶液を用いる他は、実施例1と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(14.70g)を得た(HMP−APM/APM=0.36/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例13】
【0036】
13.55g(46.05mmol)のアスパルテームと1.39g(3.03mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに300mlの水を加え、65℃で溶解させた。その後、10℃/時間の割合で10℃まで冷却しながら撹拌晶析を行った。得られたスラリーを分離、乾燥することによって、HMP−APMとAPMの混晶(10.04g)を得た(HMP−APM/APM=5.30/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例14】
【0037】
8.86g(30.11mmol)のアスパルテームと0.52g(1.13mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと190mlの水を用いる他は、実施例13と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(6.45g)を得た(HMP−APM/APM=2.57/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例15】
【0038】
4.97g(16.87mmol)のアスパルテームと0.18g(0.39mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと112mlの水を用いる他は、実施例13と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(3.78g)を得た(HMP−APM/APM=1.53/100)。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。
【実施例16】
【0039】
150.15g(510.18mmol)のアスパルテームと9.45g(20.61mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに2920mlのH2Oを加え、65℃で溶解させた。その後、10℃の恒温水層にて急冷し、静置晶析を行った。一晩、10℃にて静置した後、撹拌してスラリー化し、分離、乾燥することによってHMP−APMとAPMの混晶を得た。得られた混晶の粉末X線回折ピークは、2θ=4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に特徴的ピークが存在し、APM(IB型結晶)と同一のパターンを示した。得られた結晶を、スクリーンフィルター(250μl)を用いて粉砕し、212、106、53、38、10μmのふるいで篩分した。それぞれの画分につき3つの試料を用意し、HPLCにて混晶中のHMP−APMとAPMの含有割合を分析した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から、各画分のアスパルテームおよびN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルの組成比が一定であり、均一に混合されていることがわかる。
【0042】
<比較例1>
87.34g(29.68mmol)のアスパルテームと2.70g(5.89mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルを1Lの蓋付き容器に入れ、卓上ボールミルを用いて30分間混合し、APMとHMP−APMの混合物を得た。得られた混合物の粉末X線回折スペクトルは、APM結晶(IB型結晶)とHMP−APM結晶のそれぞれに由来するピークが観察された。
【実施例17】
【0043】
13.05g(44.33mmol)のアスパルテームと1.43g(3.11mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに300mlの水を加え、68℃で溶解させた。その後、10℃の恒温水層にて急冷し、静置晶析を行った。一晩、10℃にて静置した後、撹拌してスラリー化し、分離、乾燥することによってHMP−APMとAPMの混晶(10.82g)を得た(HMP−APM/APM=6.29/100)。得られた結晶の粉末X線回折スペクトルは、2θ=6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に特徴的ピークが存在し、APMおよびHMP−APMと異なるパターンを示した。
【0044】
<比較例2>
2.89g(9.82mmol)のアスパルテームと1.50g(3.27mmol)の−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルに62.5mlの水と12.5mlのメタノールを加え、65℃で溶解させた。その後、10℃/時間で10℃まで冷却しながら撹拌晶析を行った。得られたスラリーを分離、乾燥することによって、3.51gの結晶を得た(HMP−APM/APM=61.35/100)。得られた結晶の粉末X線回折スペクトルは、2θ=4.3°、5.6°、6.7°、8.2°、10.5°、11.2°、14.7°、18.3°および19.8°に特徴的ピークが存在し、APM(III型結晶)とHMP−APM結晶のそれぞれに由来するピークが観察された。図7に比較例4で得られた混合物の粉末X線回折スペクトルを示す。
【実施例18】
【0045】
26.09g(88.66mmol)のアスパルテームと2.85g(6.22mmol)のN−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン−1−メチルエステルと300mlの60%メタノール水溶液を用いるほかは、実施例17と同様の操作によって、HMP−APMとAPMの混晶(24.80g)を得た(HMP−APM/APM=3.67/100)。得られた結晶の粉末X線回折スペクトルは、2θ=6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に特徴的ピークが存在し、APMおよびHMP−APMと異なるパターンを示した。
【実施例19】
【0046】
実施例2で得られた混晶および実施例16で得られた混晶および比較例1で得られた混合物および比較例2で得られた混合物を用いて、下記条件に従って溶解速度を測定し、APM結晶(IB型結晶)およびHMP−APM結晶と比較した。結果を表2に示す。
<日局13 一般試験法 溶出試験法 パドル法>
緩衝液 :900ml/水
温度 :25℃
撹拌回転数:100rpm
サンプル量:ショ糖10%の溶液と同等の甘味度を示す濃度に調製。
(実施例2の混晶=7.3mg/dl、実施例16の混晶=12.5mg/dl、比較例1の混合物=12.5mg/dl、比較例2の混合物=1.3mg/dl、APM結晶(IB型結晶)=50mg/dl、HMP−APM結晶=0.5mg/dl)
【0047】
【表2】

【0048】
表1から、HMP−APMとAPMの混晶によりHMP−APMの溶解性が著しく改善されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】APM(IB型結晶)の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図2】APM(III型結晶)の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図3】HMP−APM結晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図4】実施例2で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図5】実施例3で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図6】実施例4で得られた混晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
【図7】比較例2で得られた結晶の粉末X線回折スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混晶 。
【請求項2】
Cu−Kα線による粉末X線回折で得られるX線回折パターンにおいて、4.4°、7.4°、11.8°、14.9°、15.8°、16.3°、18.3°および21.2°に回折角2θの特徴的ピークを有する、請求項1記載の混晶。
【請求項3】
Cu−Kα線による粉末X線回折で得られるX線回折パターンにおいて、6.9°、10.6°、11.5°、16.3°および17.5°に回折角2θの特徴的ピークを有する、請求項1記載の混晶。
【請求項4】
混晶中に含まれる、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルのアスパルテームに対する比率が、質量比で0.02/100〜15/100である請求項1〜3記載の混晶。
【請求項5】
N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの混晶を製造するに当たり、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混合溶液を晶析後、析出した混晶を分離することを特徴とするN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとアスパルテームの混晶の製造方法。
【請求項6】
アスパルテームとN−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルとの初期濃度(質量%)の比が、N−[N−[3−(ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステル/アスパルテーム=0.05/100〜35/100である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
溶媒が、水、エチルアルコール、メチルアルコール、およびこれらの任意の混合溶媒から選択される請求項5または6記載の製造方法。
【請求項8】
冷却後に析出するアスパルテームが、溶媒1リットルに対して10グラム以上となるように初期濃度を設定し、溶液を見かけ上氷菓(シャーベット)状の疑似固相となるように、機械的攪拌等の強制流動を与えることなく、伝導伝熱により冷却し、疑似固相を生成させることを特徴とする請求項5〜7記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−96726(P2006−96726A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287584(P2004−287584)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】