説明

アスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置

【課題】 アスファルト乳剤撒布車に搭載した乳剤タンク内の乳剤を均一に且つ効率よく加熱してアスファルト乳剤の変質を防止すると共に良好な流動性を付与することができるアスファルト乳剤撒布装置における乳剤タンクの加熱装置を提供する。
【解決手段】 乳剤タンク1の下周部外周面に内部を温水室3に形成しているジャケット2を装着し、この温水室3の一端側から加熱手段によって一定温度に加熱されている温水を導入して、温水室3内を充満させた状態で流動させて温水室3の他端側から外部に導出させると共に再び温水室3内に導入させるようし、さらに、温水室3を仕切板4a〜4eによって複数の区画室3a〜3fに区画してこれらの仕切板を介して温水を上下方向に迂回するように他端側に向かって流動させ、乳剤タンク1を全面的に均一に加熱するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト乳剤散布車に搭載して路面にアスファルト乳剤を散布することにより舗装を行うアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクにおいて、この乳剤タンク内を一定の温度に保持するための加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト乳剤散布車に配設しているアスファルト乳剤散布装置は、散布車上に設置した乳剤タンク内のアスファルト乳剤を圧送ポンプにより、或いはコンプレッサからの高圧エアによる乳剤タンク内の加圧により、配管を通じて車体の後端下部に車体幅方向に配設した散布管に供給し、この散布管に長さ方向に等間隔毎に付設している開閉コックを開放させることにより、各開閉コックを介して散布管内に連結、連通している複数本の散布ノズルから路面にアスファルト乳剤を散布するように構成している。
【0003】
このようなアスファルト乳剤散布装置において、乳剤タンク内の乳剤は加熱によって流動性を付与しておく必要があるため、従来から乳剤タンク内に煙道を設けてオイルバーナ等で加熱、保温する方法が採用されているが、このような加熱手段ではタンク内の乳剤が高温煙道部による局部加熱によって変質して使用することができなくなる虞れがあった。特に、最近のアスファルト乳剤は、速乾性等の機能向上の要求によってその成分が複雑化しており、上記のような加熱手段ではこのようなアスファルト乳剤の変質を防止し、且つ良好な流動性を付与するように温度管理を行うことが困難であった。
【0004】
このため、例えば、特許文献1に記載されているように、乳剤タンクの外周面にジャケットを装着してこれらの乳剤タンクとジャケットとの対向面間の空間部を熱油貯留部に形成すると共にジャケットの外底面に電気ヒータ等の加熱手段を装着してこの加熱手段により熱油貯留部内の熱油を加熱してこの加熱された熱油によって乳剤タンク内に乳剤を加熱するように構成し、さらに、熱油貯留部と乳剤散布管とを熱油循環管路で接続して熱油を乳剤散布管に供給することにより散布管を一定の温度に加熱してアスファルト乳剤の流動性を保持しながら散布ノズルから散布するように構成した乳剤タンクの加熱装置が開発されている。
【特許文献1】特開2004−100145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような乳剤タンクの加熱装置によれば、電気ヒータ等の加熱手段をジャケットの外底面に装着しているので、乳剤タンクの外周面を囲むように設けているジャケット内の熱油貯留部の底部が集中的に加熱されることになって、乳剤タンク内の乳剤を均一に加熱することが困難であるばかりでなく、乳剤タンクに伝熱する熱効率も悪くて所定温度に加熱し得る乳剤タンクの容量が制限されるといった問題点がある。
【0006】
さらに、電熱による加熱では乳剤の温度を上昇させるには時間がかかり過ぎるばかりでなく、電熱媒体が油であるから加熱時等に火災が発生する危険を伴う虞れがあり、また、ジャケット内の熱油貯留部と外部の乳剤散布管とを接続している熱油循環管路が不測に破損等して熱油が漏出すると、公害が発生するといった問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造によって乳剤タンク全体を均一に且つ効率よく加熱することができると共に火災や公害の発生をなくすることができるアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置は、請求項1に記載したように、アスファルト乳剤散布車に搭載したアスファルト乳剤タンクから乳剤圧送配管を通じて乳剤散布管にアスファルト乳剤を送り込み、この乳剤散布管に設けている複数本の散布ノズルからアスファルト乳剤を散布するように構成したアスファルト乳剤散布装置における上記乳剤タンクの加熱装置であって、乳剤タンクの外周面に内部を温水室に形成しているジャッケットを装着していると共に、乳剤タンクの長さ方向におけるこの温水室の一端部に導入口を、他端部に温水導出口を設けてこれらの温水導入口と温水導入口間を乳剤タンク外に配設している温水ポンプと加熱手段を備えた温水循環管路によって接続してあり、さらに、上記温水室内を乳剤タンクの長さ方向に所定間隔毎に配設した複数の仕切板によって複数の区画室に区画すると共に一端側の仕切板から他端側の仕切板に向かって上側流通口と下側流通口とを交互に設けて上記温水導入口から一端側の区画室に導入した温水を上記流通口を通じて各区画室を順次上下方向に迂回するように流動させながら温水導出口から導出させるように構成している。
【0009】
上記のように構成したアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置において、請求項2に係る発明は、上記乳剤タンクを円筒形状に形成してその外周面の下周部に接して内部を断面半円環状の温水室に形成している半円状に湾曲したジャケットを装着してあり、さらに、ジャッケットの外周面を含めて乳剤タンクの外周面を一定厚みの断熱層によって被覆していることを特徴とする。また、請求項3に係る発明は、上記温水循環管路の一部を乳剤散布管に貫通した状態で配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置によれば、乳剤タンクの外周面に装着しているジャケット内を温水室に形成してこの温水室に、乳剤タンク外に配管した温水循環管路中に配設している加熱手段によって加熱された温水を一端導入口から導入して該温水室内で充満させながら流動させ、他端導出口から上記温水循環管路に導出させるように構成しているので、温水加熱手段を乳剤タンク外の温水循環管路中に配設しているから、LPGガスや軽油等の燃焼効率のよい燃料を使用して短時間で効率よく所定温度に加熱しながら温水室内に送給することができる。
【0011】
さらに、この温水室内を乳剤タンクの長さ方向に所定間隔毎に配設した複数の仕切板によって複数の区画室に区画すると共に、一端側の仕切板から他端側の仕切板に向かって上側流通口と下側流通口とを交互に設けて上記温水導入口から一端側の区画室に導入した温水を上記流通口を通じて各区画室を順次上下方向に迂回するように流動させながら温水導出口から導出させるように構成しているので、温水室内全体に亘って一定温度の温水を流動させることができ、従って、この温水室を有するジャケットで被覆されている乳剤タンクに均等に伝熱して該乳剤タンク内の乳剤を均一に加熱することができ、局部的な加熱による乳剤の変質をなくすることができると共に良好な流動性を付与することができ、また、伝熱媒体は水であるから、火災の危険や漏水しても公害の発生などはなく、廃棄等も容易で安全性に優れている。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、上記乳剤タンクは円筒形状に形成されていて、その外周面の下周部に接して内部を断面半円環状の温水室に形成している半円状に湾曲したジャケットを装着しているので、温水を上記断面半円環状の温水室内で長さ方向にも周方向にも均一且つ円滑に流動させることができてジャケットが接している乳剤タンクに全面的に一定の温度を伝達することができると共に、構造が簡単で既設の円筒状乳剤タンクに対しても容易に組み込むことができる。また、この上記ジャッケットの外周面から乳剤タンクの外周面にかけて断熱層を層着しているので、温水室内を流動する温水を効率よく乳剤タンクに伝達することができると共に乳剤タンク内の乳剤を効果的に保温することができる。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記温水循環管路の一部を乳剤散布管に貫通状態で配設しているので、散布管内に供給されるアスファルト乳剤も温水によって適温に加熱されてアスファルト乳剤の変質による散布ノズルの詰まりを防止することができ、一定温度に保持されたアスファルト乳剤を散布ノズルから路面に向かって円滑に噴射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1はアスファルト乳剤散布車Aの簡略側面図であって、このアスファルト乳剤散布車Aの車体上にアスファルト乳剤タンク1(以下、単に乳剤タンクという)を搭載してあり、この乳剤タンク1内のアスファルト乳剤を圧送ポンプにより、或いはコンプレッサからの高圧エアによる乳剤タンク内の加圧により乳剤圧送配管12を通じて車体の後端下部に配設している路幅方向に長い管体からなるアスファルト乳剤散布管13(以下、単に乳剤散布管という)に送り込み、この乳剤散布管13に長さ方向に小間隔毎に装着している複数本の散布ノズル14からアスファルト乳剤を路面に散布するように構成している。
【0015】
上記乳剤タンク1は図2〜図4に示すように、両端開口部が鏡板によって密閉された一定長さを有する円筒形状に形成されてあり、その下半部の外周面、即ち、下周部外周面に半円形状に湾曲したジャケット2を略全長に亘って装着している。このジャケット2は、乳剤タンク1の外周径に等しい径でもって湾曲して乳剤タンク1の下周部外周面に全面的に接するように形成された半円形状の内側金属板2aと、この内側金属板2aの外周面上に一定間隔を存して重ねるように並設した半円形状の外側金属板2bとの両側上端間の開口部及び長さ方向の一端間と他端間との開口部を細長い端面板2c、2dによって密閉してなり、これらの内外金属板2a、2bと端面板2c、2dによって囲まれた空間内部を断面半円環形状の温水室3に形成している。
【0016】
なお、このように形成したジャケット2はその内側金属板2aを乳剤タンク1の下周部外周面に接して固着することにより乳剤タンク1に装着しているが、内側金属板2aに代えて乳剤タンク1の下周部をジャケット2の内側金属板として兼用してもよい。
【0017】
ジャケット2の中空内部によって形成された上記温水室3は、その長さ方向、即ち、乳剤タンク1の長さ方向に所定間隔毎に配設した仕切板4a〜4eによって複数の区画室3a〜3fに区画されていると共に、温水室3の一端側の区画室3aの下端部に温水導入口5aを、他端側の区画室3fの下端部に温水導出口5bをそれぞれ設けている。上記仕切板4a〜4eは温水室3と同一断面形状、即ち、半円環形状に形成されあり、その内外周端面をジャケット2の内外対向面に溶接等によって一体に固着している。
【0018】
さらに、これらの仕切板4a〜4eにおいて、一端側の仕切板4aから他端側の仕切板4eに向かって上側流通口6aと下側流通口6bとを交互に設けて上記温水導入口5aから一端側の区画室3aに導入した温水を上記流通口6a、6bを通じて各区画室3a〜3fを順次上下方向に迂回するように流動させながら温水導出口5dから導出させるように構成している。詳しくは、一端側の仕切板4aにおいてはその両側の上端部に流通口6aを設け、この仕切板4aに隣接する次の仕切板4bにおいてはその下端部に流通口6bを設け、以下、仕切板4c〜4eに順次、上側流通口6aと下側流通口6bを設けている。なお、下端に温水導入口5aを設けている一端区画室3a側に配した仕切板4aと、下端に温水導出口5bを他端区画室3f側に配した仕切板4eとには上側流通口6aがくるように流通口6a、6bが交互に設けられ、全ての区画室3a〜3eに温水が充満しながら摺動するように構成している。
【0019】
なお、上記上側の流通口6aは図2に示すように、仕切板の両側上端部に穿設した孔によって形成されているが、仕切板の両側の上端部を適宜長さだけ切除して温水室3の上端面との間に隙間を設け、この隙間を通じて該仕切板の上端面から隣接する区画室内に温水をオーバフローさせてもよい。
【0020】
図5は、上記ジャケット2内の温水室3に温水導入口5aを通じて一定温度に加熱された温水を導入し、この温水室3の区画室3a〜3f内を上下方向に迂回するように流動させながら温水導出口5bから導出させ、再び、温水室3に導入するための温水の循環管路図であって、アスファルト乳剤散布車Aの車体上における乳剤タンク1から離れた適所に温水ポンプ7と燃料の燃焼による加熱手段8とを設置し、これらの温水ポンプ7と加熱手段8とを循環管路9中に配設している。
【0021】
循環管路9は、温水ポンプ7の吸引口と上記ジャケット2内の温水室3の他端、即ち、温水室3の最下流側の区画室3fに接続している温水導出口5b間とを接続している温水導出管路部9aと、温水ポンプ7の吐出口に一端を接続し、他端をジャケット2内の温水室3の一端、即ち、温水室3の最上流側の区画室3aに接続している温水導入口5aに接続した温水供給管路部9bとからなり、この温水供給管路部9bの一部を乳剤散布管13内を長さ方向に貫通させていると共に乳剤散布管14から導出しているこの温水供給管路部9bの途中に温水を濾過するストレーナ10を配設してあり、さらに、ストレーナ10と上記温水導入口5a間の温水供給管路部9bの一部を加熱手段8の加熱部を貫通させてこの加熱手段8を通過中に管路中の温水を一定温度に加熱するように構成している。
【0022】
加熱手段8はLPGガスや軽油等の燃焼効率のよい燃料を燃焼させて、その燃焼熱によりこの加熱手段8の加熱部に配設した上記温水供給管路部9bの一部を効率よく加熱するように構成されてあり、さらに、この加熱手段8には自動温度制御機能を具備させている。なお、上記乳剤乳剤タンク1はその下周部に装着した上記ジャケット2を含めてその外周面を、図2で二点鎖線で示すように一定厚みの断熱層11により被覆している。なお、ジャケット2内に対して外部から開閉弁を備えて給水管(図示せず)を通じて水を供給可能に構成している。
【0023】
上記のように構成した乳剤タンクの加熱装置の作用を述べると、アスファルト乳剤散布車Aによる舗装時において、乳剤タンク1の下半部外周面に装着したジャケット2内の温水室3から循環管路9内に充満させている温水を温水ポンプ7を作動させることによって循環させ、加熱手段8によって一定温度(60〜70℃)に加熱された温水により、乳剤タンク1内のアスファルト乳剤を一定温度に保持する。
【0024】
詳しくは、温水ポンプ7の作動によって循環管路9の供給管路部9b内をジャケット2の一端温水導入口5aに向かって流通する温水が加熱手段8内を通過中にこの加熱手段8の燃焼熱によって一定温度に加熱されたのち、温水導入口5aからジャケット2内の温水室3における最初の区画室3a内に導入される。温水室3内には温水が一定の高さでもって充満してあり、区画室3a内に導入された温水によって該区画室3a内の温水の量が増大し、導入された量だけこの区画室3aを形成している最初の仕切板4aの上端部に設けている上側流通口6aから次の区画室3a内にオーパフローするように流入する。
【0025】
一方、ジャケット2の他端側においては、上記温水ポンプ7の吸引口側に温水導出管路部9aを介して連通している温水導出口5bから上記区画室3a内に供給される温水と同量の温水が流出し、従って、ジャケット2の温水室3内においては、上記温水導入口5a側の一端区画室3aを上流側として下流側でなる温水導出口5b側の他端区画室3fに向かって温水が流動することになる。
【0026】
この際、上記一端側の区画室3aを区画している仕切板4aから他端側の区画室3fを区画している仕切板3eに向かって下流側の区画室内に通じる温水流通口が上下交互に設けられているので、図3に示すように、上流側の区画室3a内においては温水が上向きに流動し、最初の仕切板4aの上側流通口6aから次の区画室3b内に流入した温水はこの区画室3b内を下向きに流動して次の仕切板4bの下側に設けている流通口6bからさらに次の区画室3cの下端部内に流入してこの区画室3c内を上方に流動し、以下、下流側に向かって順次配設した区画室内を下向きと上向きとに交互に流動しながら最も下流側の区画室3fを下方に流動して温水導出口5bからジャケット2外の循環管路9における導出管路部9aに導出される。
【0027】
このように、ジャケット2の温水室3内においては温水が上記のように上流側から下流側に向かって上下方向に迂回しながら流動するので、温水室3内を長さ方向及び周方向に全面的に流動することになり、従って、ジャケット2を装着している乳剤タンク1の下周部が全面的に均一な温度でもって加熱されて乳剤タンク1内のアスファルト乳剤が適温にされ、アスファルト乳剤の成分が変質するのを防止しながらアスファルト乳剤に良好な流動性を付与する。
【0028】
一方、温水ポンプ7の吐出口から循環管路9における乳剤供給管路部9b内に圧送された温水は、乳剤散布管13を貫通している管路部を流通中にこの乳剤散布管13を加熱して該乳剤散布管13内のアスファルト乳剤を一定の温度に保温し、さらに、この乳剤散布管13からストレーナ10内を通過して加熱手段8に達し、この加熱手段8によって一定温度に加熱、調整されたのち、再び、上記温水導入口5aからジャケット2内の温水室3に導入されて、乳剤タンク1内のアスファルト乳剤の加熱、保温を行うものである。
【0029】
次に、この乳剤タンク1内のアスファルト乳剤をアスファルト乳剤散布車Aの後端に配設している上記乳剤散布管13に供給し、この乳剤散布管13に装着している散布ノズル14から路面に散布するアスファルト乳剤散布装置について簡単に説明すると、このアスファルト乳剤散布装置は、図6に示すように、上記乳剤タンク1の底部内と上記乳剤散布管13とを乳剤圧送配管12によって連結、連通していると共に、乳剤散布管13の両端部に戻り口15を設けてこの戻り口15に戻り管16の一端を連結、連通させ、この戻り管16の他端を乳剤タンク1の周壁を貫通して該乳剤タンク1内に連通させている。
【0030】
乳剤タンク1内の乳剤を乳剤圧送配管12に送り込むには、圧送ポンプを使用して行ってもよいが、図においては、コンプレッサ17(図1に示す)によって高圧エアを乳剤タンク1内に圧送し、その高圧エアによって乳剤タンク1内を加圧することにより乳剤タンク1内の乳剤を乳剤圧送配管12に圧送するように構成している。さらに、この乳剤圧送配管12中に三方切替弁18を介装してこの三方切替弁18により乳剤散布管13に乳剤タンク1側からのアスファルト乳剤又は上記コンプレッサ17側からの高圧エアを供給可能にしていると共に、上記戻し管16中に開閉弁19を介装している。また、乳剤タンク1に上記乳剤圧送配管12とは別に乳剤送排管20を連通させてあり、この乳剤送排管20に切替弁を介して乳剤手撒きバー21と乳剤送排ホース22とを接続している。
【0031】
このように構成したので、路面にアスファルト乳剤を散布するには、上記三方切替弁18によって乳剤タンク1内を乳剤圧送配管12を通じて乳剤散布管13に連通させた状態にすると共に戻り管16に介装している開閉弁19を閉じ、この状態にしてコンプレッサ17の作動により乳剤タンク1内に高圧エアを圧送すると、乳剤タンク1の下周部外周面に装着しているジャケット2の温水室3を流動する温水によって一定温度に保持されている乳剤タンク1内の乳剤が乳剤圧送配管12を通じて乳剤散布管13に圧送され、この乳剤散布管13に装着している多数の撒布ノズル14から路面に撒布されるものである。この際、乳剤散布管13も上述したように温水によって保温されてあり、撒布ノズル14から円滑に撒布することができる。
【0032】
この乳剤撒布作業中において、一次中断する場合には、各撒布ノズル14の開閉弁(図示せず)を閉じた状態にすると共に上記戻り管16中の開閉弁19を開くと、高圧エアによって乳剤圧送配管12に送り込まれる乳剤は、乳剤散布管13内を流通して戻り口15から戻り管16を通じて乳剤タンク1内に流入し、再び、乳剤圧送配管12側への循環する。
【0033】
また、散布作業が終了したのち、三方切替弁18をコンプレッサ17側と乳剤圧送配管12とが連通するように切替え、全ての撒布ノズル14の開閉弁を閉じると共に戻り管16側の開閉弁19を開放させた状態にして乳剤圧送配管12に高圧エアを圧送すると、高圧エアが乳剤圧送配管12内から乳剤散布管13内、戻り管16を流通して、これらの管内の乳剤を乳剤タンク1内に回収すると共に高圧エアによってこれらの管内が洗浄される。
【0034】
さらに、戻り管16側の開閉弁19を閉じる一方、全ての撒布ノズル14の開閉弁を一斉に開いた状態にして乳剤圧送配管12内に高圧エアを供給すると、該高圧エアは乳剤散布管13内を通じて全ての撒布ノズル14から外部に噴出し、撒布ノズル14に残留しているアスファルト乳剤が外部に排出されると共に撒布ノズル14内が洗浄される。なお、上記手撒きバー21を使用しての乳剤の手撒きやこの手撒きバー21内の洗浄も上記同様にして高圧エアを使用することにより行うことができる。また、乳剤送排ホース22は乳剤タンク1内の乳剤を全て排出したり、乳剤タンク1内に乳剤を供給するために使用されるが、その詳細な作用は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】アスファルト乳剤散布車の簡略側面図。
【図2】ジャケット部分を断面した乳剤タンクの正面図。
【図3】そのジャケットの一部を切欠きした側面図。
【図4】乳剤タンクの下周面に装着するジャケットの簡略斜視図。
【図5】温水の循環管路図。
【図6】溶液散布装置の配管系統図。
【符号の説明】
【0036】
A アスファルト乳剤撒布車
1 乳剤タンク
2 ジャケット
3 温水室
3a〜3f 区画室
4a〜4e 仕切板
5a 温水導入口
5b 温水導出口
6a 上側流通口
6b 下側流通口
7 温水ポンプ
8 加熱手段
9 循環管路
12 乳剤圧送配管
13 撒布管
14 撒布ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト乳剤散布車に搭載したアスファルト乳剤タンクから乳剤圧送配管を通じて乳剤散布管にアスファルト乳剤を送り込み、この乳剤散布管に設けている複数本の散布ノズルからアスファルト乳剤を散布するように構成したアスファルト乳剤散布装置における上記乳剤タンクの加熱装置であって、乳剤タンクの外周面に内部を温水室に形成しているジャッケットを装着していると共に、乳剤タンクの長さ方向におけるこの温水室の一端部に導入口を、他端部に温水導出口を設けてこれらの温水導入口と温水導入口間を乳剤タンク外に配設している温水ポンプと加熱手段を備えた温水循環管路によって接続してあり、さらに、上記温水室内を乳剤タンクの長さ方向に所定間隔毎に配設した複数の仕切板によって複数の区画室に区画すると共に一端側の仕切板から他端側の仕切板に向かって上側流通口と下側流通口とを交互に設けて上記温水導入口から一端側の区画室に導入した温水を上記流通口を通じて各区画室を順次上下方向に迂回するように流動させながら温水導出口から導出させるように構成したことを特徴とするアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置。
【請求項2】
乳剤タンクは円筒形状に形成されていてその外周面の下周部に接して内部を断面半円環状の温水室に形成している半円状に湾曲したジャケットを装着してあり、さらに、ジャッケットの外周面を含めて乳剤タンクの外周面を一定厚みの断熱層によって被覆していることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置。
【請求項3】
散布管に温水循環管路の一部を貫通した状態で配設していることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト乳剤散布装置における乳剤タンクの加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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