説明

アスファルト乳剤硬化用添加剤及びアスファルト乳剤の硬化方法

【課題】長期にわたる貯蔵安定性を確保したアスファルト乳剤硬化用添加剤を提供する。
【解決手段】(A)カルシウムアルミネート類及びカルシウムスルホアルミネート類の少なくとも1種、(B)アルカリ金属塩、(C)凝結遅延剤、及び(D)エポキシ樹脂を含有することを特徴とするアスファルト乳剤硬化用添加剤。さらに(E)ポルトランドセメントおよび/または無水石膏または消石膏の配合が可能で、これらをアスファルト乳剤に添加混合することによりアスファルト乳剤を硬化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトを乳剤化したものを硬化させるための添加剤及びその硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは、粘性が高く作業性が悪いことから、通常加熱することによって可塑性を発現させて施工されている。これに対し、施工を容易とししかも常温での施工を可能とするため、アスファルトを界面活性剤によって乳剤化することが行われている。このように、環境負荷低減の観点から、施工時に加熱処理するものから、常温で扱えることと、施工時間の短縮ができ、特に3時間程度で開放使用可能とすることが求められている。
【0003】
常温で施工可能なアスファルト乳剤の硬化は、水分を消失させることによって結合組織が形成されるため、硬化時間は遅く、結合組織中に水分などが混入していることにより、骨材との付着性が低いことや強度の劣化などが指摘されている。これを改善する方策としては、エポキシ系樹脂を乳剤に混合させ、組織間隙に樹脂を含浸させることによって、硬化後の強度を高くし、物性を改善することが提案されている(例えば、特許文献5)。しかし、これらの方策を施しても、通常アスファルト乳剤の硬化時間は遅く、3時間で実用強度に到達させることはできない。
【0004】
一方、セメントのモルタルやコンクリートを速硬化させる水硬性組成物として、カルシウムアルミネート類は、初期強度の増進と速硬性能を発揮させるために無水石膏や、アルカリ金属塩すなわち炭酸ナトリウム、カリウムなどを添加することで、注水直後の強度発現性が著しく増加することは既に知られている。
また、アスファルトを乳剤とし常温で硬化させる際にもカルシウムアルミネート類を使用した例が知られており、舗装体用急硬性注入材、スラブ軌道用急硬性セメントアスファルトモルタル及び鉄道軌道用急硬性注入材などがある(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0005】
しかし、カルシウムアルミネート類は、初期強度増進のため水和活性が高められているため、以下のような性質を有することから、可使時間や硬化性状にばらつきが起こるなど品質上の安定性に課題があり、使用上の制約から屋外の現場で行われることの多いアスファルトの硬化用としては積極的に使用されてはいないのが実情である。
すなわち、カルシウムアルミネート類の活性の高い粉末を直接アスファルト乳剤に混合しハンドミキサーで混合させると、混合後直ちに凝集物(だま)が生成し、アスファルト乳剤との混合性が悪くなり、所定の凝結時間確保と強度発現性が得られなくなる。また、カルシウムアルミネート類は、初期強度増進のために水和活性を極めて高くしていることから、製造後3ヶ月も放置すれば、空気中の水分と二酸化炭素とが反応することによって、速硬性が著しく衰え、凝結時間の変化と初期強度が低くなるなど風化が起こり、長期にわたる貯蔵安定性が悪くなるという課題があった。速硬材の側ではこれら二つの課題が挙げられる。
水和活性の高い粉末は、アスファルト乳剤中の水と接触した瞬間に、水和反応によって凝集してしまうという欠点がある。このような凝集物の形成に対する対策としては、混練時に減水剤を添加することが挙げられるものの十分とはいえない。また、遅延剤を添加することで水和反応を抑制することが挙げられるが、遅延剤を添加することにより、だまの形成を抑制できても、練り直後からの硬化開始時間(可使時間)と、3時間での実用強度に到達する硬化時間との調整が困難となる。また、これらの対策両者とも、凝結時間の変化と初期強度が低くするような速硬材自身の風化に対する対策とはなっていない。
【0006】
カルシウムアルミネート類の風化に対する対策としては、古くから貯蔵場所の通風を少なくするなど設備的な対応が主であり、包装容器の密閉性保持のための材料の選定や構造上の工夫などが行われてきた。しかしながら、その効果は十分ではなく、あるいはその効果を高める上で多大な手間と設備が必要になるなど、実用性を欠くものであった。
そのため撥水剤を含有させることで、風化を遅れさせる方法や(例えば、特許文献1参照。)、特定の化学/鉱物組成とすること(例えば、特許文献2〜3参照。)、特定の溶解度パラメーターの溶液を加えてスラリー化する方法(例えば、特許文献4参照。)で、風化しにくくする方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2005−89230号公報
【特許文献2】特開2001−316147号公報
【特許文献3】特開2002−3254号公報
【特許文献4】特開2005−187267号公報
【特許文献5】特開2001−131388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの方法のうち、撥水剤を添加したものは、水和活性を遅らせる目的で、水硬性物質の周囲をコーティングすることで、風化の原因となる水和活性を物理的に抑制することができるが、アスファルト乳剤中の水分との反応がスムースに行われず、凝結時間が遅れることや、更には3時間の所定強度が低下するなど、硬化性状を変化させる傾向があるという問題がある。
【0008】
また、特定の化学/鉱物組成を持たせることで、風化しにくくする方法では、風化は進んでも影響が出にくいように調整したのみで、根本的に風化を止めるというものではなく、これでもやはり長期に放置、特に気温や湿度が高いなど劣悪な環境で保管した場合には、十分な効果が認められないのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、アスファルト乳剤を速硬化するための添加剤であって、混練時の凝集物(だま)の生成を抑制し、かつ長期にわたる貯蔵安定性を確保したアスファルト乳剤硬化用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者は、カルシウムアルミネート類を含有する添加剤の長期保存安定性について種々検討したところ、アルカリ金属塩に加えて、凝結遅延剤及びエポキシ樹脂を配合すれば、無機材料系速硬材をそのまま添加した場合にくらべ、アスファルト乳剤との混練時における凝集物の生成を抑制させると同時に、混合がスムーズに行われ、分散性も良好となり、更には長期保存後であっても速硬性を維持することが可能であり、かつ強度発現性の劣化のないアスファルト乳剤硬化用添加剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)カルシウムアルミネート類及びカルシウムスルホアルミネート類の少なくとも1種、(B)アルカリ金属塩、(C)凝結遅延剤、並びに(D)エポキシ樹脂を含有することを特徴とするアスファルト乳剤硬化用添加剤を提供するものである。
また、本発明は上記アスファルト乳剤硬化用添加剤5〜30質量部及び水10〜70質量部を、アスファルト乳剤100質量部に添加混合することを特徴とするアスファルト乳剤の硬化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアスファルト乳剤硬化用添加剤は、アスファルト乳剤との混練時における凝集物の生成を抑制させると同時に、混合がスムーズに行われ、分散性も良好となり長期保存しても、注水後における凝結時間を変化させずに良好な速硬性が持続し、かつ強度発現性も劣化しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアスファルト乳剤硬化用添加剤に用いられる(A)カルシウムアルミネート類及びカルシウムサルホアルミネート類とは、CaOとAl23を主要化学成分とする化合物、及びCaO、Al23及びSO3を主要成分とする化合物、これらの化合物の固溶体、ガラス質もしくはこれらのいずれか1種以上を含む混合物の総称である。本発明では、そのいずれかであって、水和活性を有するものなら特に制限されず、例えば12CaO・7Al23、11CaO・7Al23・CaF2、4CaO・3Al23・SO3などを使用できる他、アルミナセメントも使用できる。本発明で使用するカルシウムアルミネート類及びカルシウムスルホアルミネート類の粒度は特に限定されるものではないが、望ましくはブレーン比表面積が3000〜8000g/cm2のものである。該ブレーン比表面積のカルシウムアルミネート粒又はカルシウムスルホアルミネート粒を用いることによって、アスファルト乳剤に高い急硬作用と短時間強度発現性を安定して付与することができる。
【0014】
本発明に用いられる(B)アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、硫酸塩などが挙げられる。アルカリ金属塩の配合量は、(A)カルシウムアルミネート類又はカルシウムスルホアルミネート類100質量部に対し、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部が更に好ましく、0.5〜3.0質量部が特に好ましい。アルカリ金属塩の配合量が少なすぎると所定の効果(速硬性)が得られず、多すぎる場合は、凝結時間が長くなったり、長期強度の伸びが小さくなるなどの弊害がおこる。
【0015】
本発明に用いられる(C)凝結遅延剤としては、アスファルト乳剤に使用可能なものであれば、いずれのものでも良い。例えばクエン酸、酒石酸に代表されるオキシカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものでは無く、硫酸塩等の無機系の遅延剤であっても良い。(C)凝結遅延剤は、(A)カルシウムアルミネート類又はカルシウムスルホアルミネート類、100質量部に対し0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部使用するのが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(D)エポキシ樹脂としては、水溶性エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する水溶性エポキシ樹脂がより好ましい。この(D)エポキシ樹脂の添加により、アスファルト乳剤硬化用添加剤の、長期保存による劣化が防止できる。この(D)エポキシ樹脂による長期保存性改善効果の作用機構は必ずしも明確ではないが、カルシウムアルミネート類又はカルシウムスルホアルミネート類を始めとする水硬性無機粒子の表層部をコーティングし、空気中の二酸化炭素との接触を妨げるために、炭酸化による風化を抑制することができるものと考えられる。また、該コーティング層は、アスファルト乳剤との混練時に混合をスムースにさせ、凝集物の生成を抑制させることに加え、水を加えた混練操作の過程で大半を消失させることができるので水和反応活性に支障をきたすことが無いものと考えられる。
【0017】
(D)エポキシ樹脂としては、アスファルト乳剤との混練時における混合をスムーズにおこなわせることと長期保存性改善効果の点から、エポキシ当量が10〜2000のものが好ましい。ここでエポキシ当量とは、分子量をエポキシ基の数で割った値、すなわちエポキシ基1個当たりの分子量をいう。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ハロゲン化ビスフェノールA、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ、ノボラック型多価フェノールエポキシ、クレゾール型多価フェノールエポキシ及び脂環状エポキシ樹脂等の水溶化エマルション;及びポリエチレングリコールジ(又はポリ)グリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジ(又はポリ)グリシジルエーテル、ポリグリセリンジ(又はポリ)グリシジルエーテル等からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。この中でも、特にビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、上記エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物も用いることができる。かかる(メタ)アクリル酸付加物としては、上記エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
これらの(D)エポキシ樹脂の含有量は、カルシウムアルミネート類又はカルシウムスルホアルミネート類100質量部に対し、3〜50質量部、更に5〜40質量部、特に5〜30質量部が好ましい。成分(D)が少なすぎると長期保存性改善効果が得られず、多すぎると粘度が高くなり、貯蔵やハンドリング性が低下する。
【0020】
本発明のアスファルト乳剤硬化用添加剤には、更に(E)ポルトランドセメント及び/又は(F)無水石膏を含有するのが好ましい。使用する無水石膏はII型無水石膏であれば特に限定されない。また、ポルトランドセメントはいずれの種類のものでも用いることができ、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱セメントなどが挙げられる。無水石膏及び/又はポルトランドセメントの使用量はカルシウムアルミネート類又はカルシウムスルホアルミネート類100質量部に対し10〜200質量部、特に20〜80質量部が好ましい。少なすぎると膨張などの障害が見られ、多すぎると速硬性の効果が得られない。
【0021】
本発明の添加剤は、本発明の効果を喪失しない限り前記の成分以外の成分を含有することができる。このような成分としては例えば、石灰石粉、スラグ、石炭灰、アスファルト乳剤に使用可能な分散剤等が挙げられる。
【0022】
本発明のアスファルト乳剤の硬化方法は、常温環境下で、例えばアスファルト乳剤100質量部に、前記のアスファルト乳剤硬化用添加剤5〜30質量部及び水10〜70質量部を添加して混練すれば良い。混練装置は特に限定されず、例えばハンドミキサー等を使用することができる。アスファルト乳剤硬化用添加剤5質量部未満の添加では、速硬性が得られないことがあり、多いと過膨張の虞があるので適当ではない。また、水の添加量が10質量部未満では、作業性が著しく悪く適当ではなく、70質量部を超える添加でも分離するため適当ではない。
【0023】
また、本発明硬化方法の実施にあたっては、硬化成分として、アミン系化合物を添加するのが好ましい。当該アミン系化合物としては、脂肪族ジ(又はポリ)アミン、芳香族ジ(又はポリ)アミン、脂環式ジ(又はポリ)アミン、ポリアミドアミン及びこれらの変性(水溶化)物等広範なものが使用可能である。このようなアミン系化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン等の芳香族ジ(又はポリ)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ジ(又はポリ)アミン、水添ジアミノジフェニルメタン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン等の脂環式ジ(又はポリ)アミン、ポリアミドアミン{トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミンと長鎖の二塩基酸(ダイマー酸)の重縮合物で、ヘンケル社から販売されている「バーサミド140」が一般的}等の変性(水溶化)物等からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
【0024】
更に、本発明硬化方法には、一般に可撓性エポキシ樹脂と称されるものが使用可能である。このような可撓性エポキシ樹脂としては、例えば、アクリロニトリルゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び脂肪族不飽和化合物のエポキシ型(ポリブタジエン変性エポキシ樹脂)等からなる群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂が好適なものとして挙げられる。可撓性エポキシ樹脂を使用すると、硬化物の可撓性を付与するためのアミン系化合物の選択範囲が広くなる。
【0025】
本発明に使用されるアスファルト乳剤は、アスファルトと水を乳化剤の存在下に乳化させたものである。アスファルト乳剤に使用するアスファルトとしては、石油ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、カットバックアスファルト、天然アスファルト、石油タール、ピッチ、溶剤脱瀝アスファルト、重油等の中から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。また、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合物、クロロプレン共重合物等の合成ゴム及びポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合物等の高分子重合体、石油樹脂、熱可塑性樹脂等を混合した改質アスファルトも使用できる。アスファルト乳剤中のアスファルトの比率は40〜70質量%である。
【0026】
アスファルト乳剤に使用する乳化剤(界面活性剤の一種)としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両性乳化剤のいずれを使用してもよく、1種又は2種以上の多成分系であってもよい。
【0027】
アニオン性乳化剤としては、カルボン酸塩類、硫酸エステル塩類、スルホン酸エステル塩類、リン酸エステル塩類が挙げられ、これらのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物も含まれる。
【0028】
カチオン性乳化剤としては、アルキルアミン塩類、アルカノールアミン類、第四級アンモニウム塩類、アミンオキサイド系類、ポリエチレンポリアミン類が挙げられ、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加物も含まれる。ここで、四級塩でないカチオン性乳化剤の場合は、塩酸、酢酸、硝酸、スルファミン酸、ジメチル硫酸等で各々の酸付加塩の形で使用する。
【0029】
ノニオン乳化剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型乳化剤、及びグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール又はソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型乳化剤が挙げられる。
【0030】
両性乳化剤としては、アミノ酸型又はベタイン型のカルボン酸塩類等が挙げられる。この中でも、特にノニオン系乳剤が好ましい。乳化剤の使用量は、水とアスファルトとの合計に対して0.01〜10.0質量%、好ましくは0.05〜5.0質量%が適当である。
【0031】
本発明の硬化方法では、更に必要に応じてその他の添加剤として、触媒、減水剤、ラテックス、及び骨材である砂、砂利等を添加することができる。
【0032】
触媒としては、エポキシ樹脂の触媒として、通常用いられている物なら何でも使用でき、特に制限されるものではない。このような触媒としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン化合物、尿素メラミンホルムアルデヒド縮合物、ドデセニル無水こはく酸等の脂肪族酸及びその酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸及びその酸無水物、無水フタル酸等の芳香族酸及びその無水物、ハロゲン化酸及びその無水物、ジシアンジアミド及びその誘導体、BF3−アミン錯化合物等のハロゲン化ホウ素錯塩、モノブチルスズトリクロライド等の有機金属化合物、ポリチオール、フェノール及びその誘導体、多官能芳香族イソシアナート、芳香族ジイソシアナート、多官能脂肪族イソシアナート等のイソシアネート及びそのブロックイソシアネート、ケチミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びその誘導体などからなる群から選ばれる1種以上のものが挙げられる。
【0033】
これらの中でも、特にベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、ドデセニル無水こはく酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ジシアンジアミド、モノブチルスズトリクロライド、ピペラジン、2−メチルイミダゾール、2−エチルー4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール等が好ましい。
【0034】
減水剤としては、リグニンスルホン酸系、ナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系などが例示されるが、これらに限定されるものではない。このような減水剤は、例えば、三井化学社(商品名:メルフローJ)などから一般に市販されており、容易に入手できる。
【実施例】
【0035】
以下の材料を使用し、表1の配合量(質量部)となるように高速回転型ミキサ(ヘンシェルミキサー)で混練することで添加剤を作製した。なお、表1中、アスファルト乳剤への添加量は、アスファルト乳剤中のアスファルト100質量部に対する質量部である。
アルミナセメント:市販の太平洋アルミナセメント
カルシウムサルホアルミネート:石膏と生石灰及びアルミナ粉末を所定鉱物となるように調合、焼成し、ロータリーキルンで1330℃の焼成温度で焼成して得られた焼成物をブレーン比表面積が4000cm2/gとなるように粉砕して得たもの。
無水石膏:市販品
炭酸リチウム:市販試薬
炭酸ナトリウム:市販試薬
エポキシ樹脂:デナコールEX851(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)(長瀬化成社製)
普通ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
凝結遅延剤:(商品名:フローリック)
パラフイン:市販品
アスファルト乳剤 アスファルトにオレイン酸ナトリウムを加えて乳化させたもの。
【0036】
【表1】

【0037】
試験は、表1の配合で製造した添加剤を製造1ヶ月以内にアスファルト乳剤に添加したものと、放置し3ヶ月及び1年後にアスファルト乳剤に添加、水15%(対添加剤割合)とを混合し、練り混ぜ直後のフロー値及び硬化速度を評価した。フロー値の評価はφ50×50mmの円柱筒に混合したアスファルトを入れ、抜き取ったときにアスファルトが広がった直径を測定した。硬化速度は硬度計により計測される硬度を示す指標値の3時間後の値を測定した。硬度の計測は(株)テクロック社製の硬度計 デュロメータ−GS−701Nを用いた。
評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
本発明の添加剤を用いた場合のフロー値は、1ヶ月に比べ、3ヶ月、1年と放置時間が経過しても相違はない。比較例からわかるように、本発明でない添加剤を用いた場合のフロー値はやや大きくなる傾向が認められた。
圧縮強度は、比較例においては、1ヶ月に比べ、3ヶ月、1年と放置期間の経過とともに硬化速度も小さくなる傾向があるに対し、本発明の添加剤を用いた場合は相違ないか認められない。
また、凝結遅延剤を配合しなかった比較例7は、貯蔵安定性は良好であったが、硬化速度が速すぎるためハンドリング性が極めて悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルシウムアルミネート類及びカルシウムサルフォアルミネート類の少なくとも1種、(B)アルカリ金属塩、(C)凝結遅延剤、並びに(D)エポキシ樹脂を含有することを特徴とするアスファルト乳剤硬化用添加剤。
【請求項2】
更に(E)ポルトランドセメント及び/又は(F)無水石膏又は消石灰を含有する請求項1記載のアスファルト乳剤硬化用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアスファルト乳剤硬化用添加剤5〜30質量部及び水10〜70質量部を、アスファルト乳剤100質量部に添加混合することを特徴とするアスファルト乳剤の硬化方法。

【公開番号】特開2008−285535(P2008−285535A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130027(P2007−130027)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】