説明

アスファルト組成物ならびに臭気の防止方法

【課題】アスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物などを混合した際の臭気の防止方法を提供する。
【解決手段】アスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物などを混合する際に活性白土を添加、使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト、含いおう重合体、活性白土を含有するアスファルト組成物、ならびに臭気の防止方法に関するものであり、臭気の少ないアスファルト組成物、アスファルト組成物の臭気防止方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトに廃タイヤ等を由来とするゴム粉末を添加してアスファルトラバーとなし、これをアスファルトバインダーとして舗装に使用することは特許文献1に知られている。また、廃棄物の有効利用という側面からも、アスファルトにゴムおよび/または熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等を添加して、これに砂利、砕石等の骨材を混合して舗装工事を行うことも知られている。かつまた、ゴムを添加したアスファルトが防水剤となることも知られている。
【0003】
【特許文献1】公開特許公報2006年第328139号
【0004】
舗装工事に使用する改質アスファルトは、当然のことながら添加されるゴムなどの含いおう重合体を溶解あるいは分散させ、これを施行現場まで加熱状態で輸送する必要がある。含いおう重合体の種類にもよるが、相容性の悪いアスファルトを使用した場合、200℃で8時間以上の製造時間が必要であることも希ではない。
【0005】
ここにおいて、改質アスファルトに含いおう重合体を使用した場合、イオウ分が熱分解し、あるいはアスファルト成分の炭化水素と反応することで臭気をともなった気体が発生することがある。これは低分子のイオウ化合物と想定され、特に有毒の硫化水素を含むことも予想される。
【0006】
しかも、この臭気はアスファルトの出荷に際の調製から施行現場において続けて発生するので、結果としてアスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等を添加して舗装工事の材料とすることが困難となっている。廃棄タイヤの安全な処分については、各界から要請されているものの、アスファルトへの添加による処分には問題があった。
【0007】
従って、アスファルトからの悪臭放出を安価かつ安全に減少させること、及びアスファルトの特性を改良することが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、アスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等を添加して舗装材料を提供するにあたり、臭気の発生を抑えた組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アスファルトに、ゴム、熱可塑性エラストマー、廃棄タイヤチップ等のゴム廃棄物、2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体のような廃棄物であってもよい含イオウ樹脂等を添加したものに活性白土を含有させてなるアスファルト組成物を提供するものである。また、本発明は、アスファルトへ含いおう重合体の一種類以上を配合するにあたり、活性白土を添加してなる臭気の有効な防止方法をも提供する。
【0010】
ここで、活性白土とは、シリカ70〜80%、アルミナ10〜20%、水分8% 残余をその他の酸化物で構成された市販の鉱産物である。一般に、酸性白土(モンモリロナイト系粘土)を硫酸で処理してモンモリロナイト結晶内に含まれるアルミニウム・鉄・マグネシウムの一部を溶出させ、新たに過剰珪酸状態の多孔質構造にすることで調製され、石油工業や油脂工業に主に利用されている。活性白土は比表面積が大きいことから吸着能と触媒能を利用して、石油および油脂の脱色精製や、動植物油、糖液、酒類などの脱色、ならびに重質油の分解触媒などに利用されている。
【0011】
また、この明細書でのアスファルトとしては、レーキアスファルト等の天然アスファルト、カットバックアスファルト、石油タール、ピッチ、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、プロパン脱瀝アスファルトなどの溶剤脱瀝アスファルト等の石油アスファルト、アスファルトセメントが挙げられ、これらのアスファルトは単独でも、2種以上を混合しても良い。
【0012】
アスファルトセメントは、室温で実質的に固体又は半固体であって加熱すると徐々に液化する材料のいずれかである。その主成分は瀝青であり、これらは、天然のものであっても石油精製の残留物として得られるものであってもよい。
【0013】
アスファルト組成物に添加されるゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等の例としては、ゴムとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのいおう加硫後の物品が例示される。廃棄タイヤとしては、タイヤチップが例示される。
【0014】
特に含イオウ樹脂としては、アニリン、イオウ、二硫化炭素を原料とする2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体であってもよい。この明細書では「2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体」という。この「重合体」の組成は単一ではなく、その成分は 炭素分 30〜40パーセント 水素分 0.5〜3パーセント 窒素分 3〜7パーセント 硫黄分 50〜66.5パーセントの重量比成分からなるものである。
【0015】
活性白土は、アスファルト100重量部に対して、0.01〜10重量部、更に0.1〜7重量部、特に0.5〜5重量部の比率で用いられることが好ましい。効果の発現の点から0.01重量部以上が好ましく、最終アスファルト製品の物性の点から10重量部以下が好ましい。
【0016】
ゴムおよび/または熱可塑性エラストマー、いおう樹脂は、合計で、アスファルト100重量部に対して、0.1〜30重量部、更に1〜20重量部の比率で用いられる。
【0017】
本発明の組成物には、本発明の効果を妨げない限り、種々の添加剤を配合することができる。配合する添加剤は特に限定はなく、一般にアスファルトに添加されている添加剤の中から適宣選択できる。
【0018】
添加剤の具体例としては、石粉、タルク、炭酸カルシウム等のフィラー、消石灰、アミン類、アミド類等の剥離防止剤、メチルセルロース等の繊維質補強材、粘度低下剤、粘度向上剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0019】
さらに、石油系配合油と粘着付与剤樹脂類を、アスファルトに任意の割合で添加しても良い。粘着付与剤樹脂類としては、天然系樹脂及び合成系樹脂のいずれをも使用することができるが、天然系樹脂ではテルペン樹脂、合成系樹脂では石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂等の重合系樹脂を使用するのが良い。
【発明の効果】
【0020】
この発明の活性白土は、道路や他の応用のために用いられるアスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等を添加するにあたり、臭気の発生を抑えた組成物を提供することができる。この臭気の原因は、硫化水素や低級の含イオウ有機化合物が推定される。なお、含イオウ重合物を含むアスファルトを再利用する時点で臭気減少の目的で活性白土を添加することも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
実施例1
下記成分をミキサーに入れ、160℃、2500rpmで5分間混合後、200℃、4000rpmで5時間混合し、アスファルト組成物を得た。但し、アスファルトは、マントルヒーターで予め160℃で加熱溶融したものを用いた。このアスファルト組成物において、試験者によりアスファルト臭以外の臭気を測定した。製造直後から格別の臭気はなかった。また、活性白土を添加しない条件で臭気を測定したところ、試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0023】
アスファルト
(日石三菱石油社製60−80)100重量部
いおう加硫ゴム
(いおうをゴムに対して3%含むSBR) 8重量部
石油系配合油 (日石三菱石油製
コーモレックス) 5重量部
活性白土 (水澤化学工業株式会社製 ガレオンアース)8重量部
【0024】
実施例2
いおう加硫ゴムを廃タイヤチップ
(いおうをゴムに対して約2%含む)に変更した以外は実施
例1に準じて臭気を測定した。製造直後から臭気はなかった。また、活性白土を添加しない条件で臭気を測定したところ、試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0025】
実施例3
いおう加硫ゴムを、2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体 (いおうを約59%含む) 2重量部に変更した以外は実施例1に準じて臭気を測定した。製造直後から臭気はなかった。また、活性白土を添加しない条件で臭気を測定したところ、試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0026】
比較実施例4
活性白土を活性炭に変更した以外は実施例1に準じて臭気を測定した。試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0027】
比較実施例5
活性白土をゼオライトに変更した以外は実施例1に準じて臭気を測定した。試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0028】
実施例6
新アスファルト3部に、軟化剤0.1部と、2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体
(いおうを約59%含む)と活性白土をおのおの0.06部混合して、結合剤とした。
樹脂状重合体、活性白土とも、新アスファルトに対して2重量パーセントである。これを砕石27部 砂 17部 石粉 3部 再生骨材 50部と混合して舗装材としてのアスファルトコンクリートを調製した。試験道路に舗装施行したが、施行の前後に臭気はなかった。なお、活性白土を添加しない条件で試験道路に舗装施行したところ、施行の前後に試験者全員がイオウ系の臭気を感じた。
【0029】
実施例7
2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体 (いおうを約59%含む)と活性白土をおのおの0.12部混合した以外は実施例6に準じて試験道路に舗装施行した。施行の前後に臭気はなかった。活性白土を添加しない条件で試験道路に舗装施行したところ、施行の前後にイオウ系の臭気を感じた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明により、アスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤ、含イオウ樹脂等を添加して舗装工事や防水材などの材料とすることが容易となった。臭気のない材料の提供がなされるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、一種または二種以上の含いおう重合体、活性白土を含有するアスファルト組成物
【請求項2】
含いおう重合体がゴムおよび/または熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の組成物
【請求項3】
ゴムおよび/または熱可塑性エラストマーがゴム廃棄物である請求項2に記載の組成物
【請求項4】
ゴム廃棄物が廃棄タイヤチップである請求項3に記載の組成物
【請求項5】
含いおう重合体が含イオウ樹脂である請求項1に記載の組成物
【請求項6】
含イオウ樹脂が2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体である 請求項5に記載の組成物
【請求項7】
アスファルトへ、含いおう重合体の一種または二種以上を配合するにあたり、活性白土を添加してなる臭気の防止方法
【請求項8】
含いおう重合体がゴム、熱可塑性エラストマー、ゴム廃棄物、廃棄タイヤチップ、含イオウ樹脂、2−メルカプトベンゾチアゾール製造時の樹脂状重合体から選択された一種または二種以上である 請求項7に記載の方法
【請求項9】
活性白土を、アスファルト100重量部に対して0.01〜10重量部添加する請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
活性白土をアスファルトに添加することを特徴とする、アスファルトポリマー組成物を含むアスファルト製品からの臭気物質の放出を減少させる方法



【公開番号】特開2009−209184(P2009−209184A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50827(P2008−50827)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000176268)三新化学工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】