説明

アスベストの無害化処理方法及び無害化処理装置

【課題】 蒟蒻水和物を使用して、建造物等に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物に何ら添加剤を加えることなく、エネルギーコストを低く抑えて、しかも外部にアスベストを一切飛散することなくアスベストを確実に無害化する。
【解決手段】 少なくとも蒟蒻水和物のゲル化物及びアスベスト、セメント材又はアルカリ化合物を含有してなる前記アスベスト回収物を加熱炉中で加熱して水分を蒸発し、次いで前記のアルカリ性化合物存在下においてアスベストを熱処理する無害化処理方法。アスベスト回収物を熱処理する加熱炉と、加熱炉で発生する水蒸気を、開閉装置を備えた排気ダクトより導いて冷却して凝結水を分離する熱交換装置と、加熱炉の温度及び圧力を感知する温度センサー及び圧力センサーと、加熱炉内の温度及び圧力を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒟蒻水和物を使用して、建造物等に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物を無害化するアスベストの無害化処理方法及び無害化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は、天然の繊維状珪酸塩鉱物であり、その種類には、蛇紋岩に属するクリソタイル(温石綿・白石綿、Mg6Si4O10(OH)8)や角閃石に属するアモサイト(茶石綿、(Fe,Mg)7Si8O22(OH)2)、クロシドライト(青石綿、Na(Fe,Mg)3Fe2Si8O22(OH,F)2)などがある。アスベストは、断熱性、耐火性、防音性、電気絶縁性等に優れていることから建設資材はじめ自動車、電気製品など様々な用途に利用されてきた。特に建物の断熱材、防音材等として、壁面、天井などに吹き付けられる等して使用されてきた。しかし、アスベストは前記のように優れた特性を有する反面、微細な針状の繊維からなるアスベストの粉塵を吸い込むと、これら微細な針状繊維が肺に刺さって、石綿肺、肺癌、悪性中皮腫を引き起こす原因として問題視されている。
【0003】
現在、我が国では吹き付けアスベストの施工禁止、作業環境中のアスベストの濃度規制などの措置が取られ、アスベストの使用は見られなくなったが、なお吹き付けアスベスト等未処理の状態で多くは残留しており、経時損傷や劣化によりアスベストの粉塵が飛散する恐れがあることから、これらのアスベストの早急なる除去が求められている。アスベストの除去に当たっては、破砕粉塵が飛散して作業者が高濃度のアスベスト粉塵に被爆し、更に外部環境に飛散して二次的被害が発生することを防止するために、厳重な飛散防止措置が義務づけられている。アスベストが飛散することを防止するために、アスベストを予め湿潤させた後でケレン棒等で剥ぎ落とす方法によるが、従来アスベスト層を充分濡らし満足な除去作業ができるに足る湿潤剤が見つかっていなかった。
【0004】
しかし、近年、蒟蒻粉末を水に膨潤して得られる液状の蒟蒻水和物を使用して、建造物、その他のアスベスト施工面に付着しているアスベストを除去する方法が出現した。例えば、特許文献1又は特許文献2記載の方法によれば、蒟蒻粉末を水に膨潤して得られる液状の蒟蒻水和物をアスベスト層に吹き付けると、この蒟蒻水和物は壁面深部まで湿潤してアスベストの飛散を防止するとともに、蒟蒻水和物がセメント材のアルカリ化合物と接触してゲル化し、アスベストをコートして飛散防止効果を高め、且つ壁面との結着が緩みケレン棒による剥ぎ落とし作業が容易になる。このようにして剥ぎ落とされたアスベスト回収物は袋詰めされて適宜埋め立て処分等されている。
【特許文献1】特許第3816944号公報
【特許文献2】特公平4−51592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記アスベスト回収物は、アスベストが蒟蒻水和物のゲル化物でコートされているので、飛散することなく安全であるが、アスベスト回収物は概ね60%程度の水分を含み体積が嵩み、このまま埋め立て処分すると処分場の確保等の点で問題である。そこで、アスベスト回収物中に含まれる水分を蒸発させて減容するとともに、アスベスト自体を無害化するために、本願発明者は、鋭意研究した結果、前記アスベスト回収物を加熱炉で加熱処理することによって、アスベスト回収物中に含まれるアルカリ化合物又はセメント材を利用してアスベストの融点よりもかなり低い温度でアスベストを無害化することを知見して本発明に想到したものであって、本発明は、前記の問題点を解消するために、アスベスト回収物に何ら添加剤を加えることなく、エネルギーコストを低く抑えて、しかも外部にアスベストを一切飛散することなくアスベストを確実に無害化する処理方法及び無害化処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、蒟蒻粉末を水に膨潤して得られる液状の蒟蒻水和物を使用して、建造物、その他のアスベスト施工面に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物中のアスベストを無害化処理する方法であって、少なくとも蒟蒻水和物のゲル化物及びアスベストに加えてセメント材又はアルカリ化合物を含有してなる前記アスベスト回収物を加熱炉中で加熱して水分を蒸発し、次いで前記セメント材又はアルカリ性化合物存在下において前記アスベストを熱処理して無害化することを特徴とするアスベストの無害化処理方法とする(請求項1)。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記アスベスト回収物を加熱炉中で、100〜150℃で水分を蒸発させる蒸発工程と、次いで600〜900℃で加熱処理する熱処理工程を備えることを特徴とする前記のアスベストの無害化処理方法とすることが好ましい(請求項2)。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、蒟蒻粉末を水に膨潤して得られた液状の蒟蒻水和物を使用して、建造物、その他のアスベスト施工面に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物中のアスベストを無害化する熱処理装置であって、前記熱処理装置は、アスベスト回収物を熱処理する加熱炉と、加熱炉で発生する水蒸気を、開閉装置を備えた排気ダクトより導いて冷却して凝結水を分離する熱交換装置と、加熱炉の温度及び/又は圧力を感知する温度センサー及び/又は圧力センサーと、加熱炉内の温度及び/又は圧力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするアスベストの無害化処理装置とする(請求項3)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記加熱炉は、前記加熱炉には、熱源と、炉内を均一な温度に維持する熱風循環ファンと、アスベスト回収物を収納する容器と、温度センサー及び/又は圧力センサーと、アスベスト回収物から発生する水蒸気及び燃焼排ガスを排出するガス排出口と、が設けられてなることを特徴とする前記のアスベストの無害化処理装置とすることが好ましい(請求項4)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記加熱炉に設けられたガス排出口には水蒸気及び燃焼排ガスを熱交換装置に導く排気ダクトが取り付けられ、更に熱交換装置に導く排気ダクトの中間には、水蒸気及び燃焼排ガスを冷却するための空冷フィンが取り付けられており、該空冷フィンを経て熱交換装置で冷却されて凝結水が分離された余剰ガスを再び排気ダクトに戻すための循環パイプが熱交換装置と前記排気ダクトの中間に連結されてなることを特徴とする前記のアスベストの無害化処理装置とすることが好ましい(請求項5)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記熱交換装置は、中空円筒状の本体内部に冷却水を通すための細管を連通して多数設け、本体の内側に長軸方向に直角に適宜間隔をあけて複数枚の邪魔板が上下方向に互い違いに空隙を有して設けられてなり、該本体には、その一端近傍側壁にガス吸入口と他端部近傍側壁に余剰ガス排出口並びに何れか一端近傍側壁に凝結水排出口が設けられるとともに、前記細管に連通して冷却水を給水する冷却水吸入口と冷却水を排水する冷却水排出口が設けられてなり、該熱交換装置本体は、前記凝結水排出口が下方に位置するように地面に対して適宜角度をなして設置されることを特徴とする前記のアスベストの無害化処理装置とすることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
従来のアスベストの無害化処理方法では、アスベストを1500℃以上の高温で溶融ガラス化して無害化するものであったが、特殊耐熱材料を用いた溶融炉と付帯設備費及びエネルギーコストが嵩み、実用性に乏しいものであった。これに比較して、本発明のアスベストの無害化処理方法及び無害化処理装置は、100〜150℃での蒸発工程と、600〜900℃での熱分解工程を備え、従来の溶融処理法に比較してより低い温度で処理が可能であって設備費やエネルギーコストを低減する効果を奏する。また、アスベストに蒟蒻ゲル化物がコートされた状態にあるので処理過程においてアスベストが不意に飛散することがなく、確実に無害化される効果を奏する。熱処理後の残渣は溶融塊状化せずに、簡単に粒状化又は粉末化されるので、嵩張らずそのまま埋め立ても可能であるが、無害化されて安全なことから、土壌改良剤や充填剤或いは耐熱耐火材等として資源の有効利用に寄与する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、以下図に基づいて詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。 図1は、本発明のアスベスト無害化処理装置を示す説明図である。図2(a)は、熱交換装置を取着台に取り付けた状態を示す斜視図であり、同図(b)は、同じく熱交換装置本体の長軸方向を断面とした正面図であり、(c)は、熱交換装置本体の長軸方向に対して垂直方向に切断した断面図である。
【0014】
図1において、1は無害化処理装置であって、係る熱処理装置1は、アスベスト回収物Mを熱処理する加熱炉2と、加熱炉で発生する水蒸気を、開閉装置を備えた排気ダクト3により導いて冷却し、凝結水を分離する熱交換装置4と、加熱炉の温度及び圧力を感知する温度センサー2a及び圧力センサー2bと、炉内の温度及び圧力を制御する制御手段を組み込んでなる集中配電盤7とを備える。
【0015】
前記加熱炉2は、上方側壁に熱源のガスバーナー21,21が取り付けられるとともに、天井部に取り付けられた熱風循環ファン22により、炉内が均一な温度に維持され、加熱炉中間部の格子状ロースト部23上にアスベスト回収物Mを収納する原料ホッパー24が開閉扉25を介して出入可能に載置してあり、この原料ホッパー24上方近くに雰囲気温度と圧力を測定する温度センサー2a及び圧力センサー2bが設けられ、加熱炉の下方側壁には、アスベスト回収物から発生する水蒸気及び燃焼排ガスを排出するガス排出口26が設けられてなる。加熱炉は周囲の側壁が断熱材で覆われているが、外部との温度差によって周壁に結露を生じることを考慮して結露水を受ける結露入水槽27を設けることが好ましい。本実施形態では、熱源にLPGを使用しているが、熱源としてはLPGに限定されず、電熱や重油その他の化石燃料などを使用してもよい。また、加熱炉内に通気量を調節して空気を取り入れる通気口を別個に設けてもよい(図示せず)。
【0016】
前記加熱炉の下方側壁に設けられたガス排出口26にはベローズ31を介して水蒸気及び燃焼排ガスを熱交換装置4に導く排気ダクト3が取り付けられ、更に、排気ダクト3の中間の熱交換装置4の手前には、水蒸気及び燃焼排ガスを冷却するための複数の空冷フィン32,32が取り付けられており、該複数の空冷フィン32,32を経て熱交換装置4で冷却されて凝結水が分離され、余剰ガスを再び排気ダクト3の前方部に戻すための余剰ガス戻パイプ33が熱交換装置4の余剰ガス戻口45と排気ダクト3の前方部に逆止弁34を介して連結されてなる。排気ダクト3の更に前方部には、熱交換装置4に導入される水蒸気及び燃焼排ガスの流量を調節するための排気調節ダンパー35と、その前方には空気吸入口36が設けられ、水蒸気及び排気ガスを空気とともにブロワーによって熱交換機に圧送するように構成されている。
【0017】
前記熱交換装置4には、中空円筒状の本体41内部に冷却水を通すためのU字状の細管42が多数設けられており、このU字状細管42は仕切板61bによって所定位置に区画配置される。仕切板61bによって、熱交換装置本体41内部は水蒸気・排気ガス領域と冷却水領域に2分され、且つ、冷却水領域は、仕切板61aによって、冷却水吸入口46側と冷却水排出口47側に分離されている。また、本体の内側長軸方向に直角に適宜間隔をあけて複数枚の邪魔板43が上下方向に互い違いに空隙を有して設けられてなり、該本体には、その一端近傍側壁にガス吸入口44と他端部近傍側壁に余剰ガス戻口45並びに何れか一端近傍側壁に凝結水排出口53が設けられるとともに、前記仕切板61aによって分離された一方側に冷却水を給水する冷却水吸入口46と他方側に冷却水を排水する冷却水排出口47が設けられてなる。該熱交換装置本体41は、前記凝結水排出口53が下方に位置するように地面に対して適宜角度をなして設置される。また、熱交換装置本体41の地面に対して上方に位置する側壁には、ノズル式エジェクター等のエアー抜き59を取り付けることが好ましい。
【0018】
前記余剰ガス戻口45には余剰ガス戻パイプ33の一端が連結し、ガス吸入口44には排気ダクト3の一端が連結されている。冷却水吸入口46には冷却水吸入パイプ48の一端が連結し、該パイプの他端は冷却水調節バルブ49と冷却水循環ポンプ50を介して冷却水貯水タンク51に連結されている。冷却水排出口47には冷却水排出パイプ52の一端が連結し、該パイプの他端は逆止弁34を介して冷却水貯水タンク51の上方に開口された状態で配設されている。熱交換装置本体41の下方側壁には凝結水排出口53が穿設されており、該凝結水排出口53には凝結水調節バルブ55を介して凝結水排出パイプ54を連結し、熱交換装置本体41に溜まった凝結水は凝結水受槽56に排出される。更に、凝結水受槽56と冷却水貯水タンク51とは凝結水送出ポンプ57を介して凝結水送出パイプ58によって連結されており、熱交換装置4で分離された凝結水を冷却水として利用するように構成されている。
【0019】
次に、本発明のアスベストの無害化処理方法について説明する。本発明のアスベストの無害化処理方法に用いられるアスベスト回収物は、少なくとも蒟蒻水和物のゲル化物及びアスベストの他にセメント材又はアルカリ化合物を含有しているものが対象となる。即ち、蒟蒻粉末を水に膨潤して得られる液状の蒟蒻水和物がゲル化するのに必要なセメント材又はアルカリ化合物と、係るアルカリ化合物と接触して生じたゲル化物と、このゲル化物に取り込まれたアスベストを含有するアスベスト回収物が対象となる。セメント材としては、特に限定されないが、例えば、セメント材に含まれる珪酸(SiO)、生石灰(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)等があり、アルカリ化合物としては、例えば、Ca(OH)、NaCO,NaHCO、NaOH等のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物等がある。
【0020】
前記アスベスト回収物Mを原料ホッパー24に収納し、熱処理装置1の加熱炉2において、最初100〜150℃で約45〜50分間加熱して水分を蒸発させる(蒸発工程)。このとき、排気調節ダンパー35及び空気口を開放することによって発生した水蒸気は、排気ダクト3より熱交換装置4に導いて凝結水として回収される。水分の蒸発が進行して、温度センサー2a及び圧力センサー2bによってアスベスト回収物の水分が概ね蒸発したことを感知すると、約45〜50分かけて加熱炉の温度を約600〜900℃、経済性を考慮して好ましくは約600〜700℃に上昇させる(昇温工程)。次いで、排気調節ダンパー35及び空気口を閉じた状態で前記温度を維持して約2時間加熱処理する(熱処理工程)。以上の温度及び所要時間は、アスベスト回収物の量や含まれる水分量によって変動するので適宜調節することが好ましい。
【0021】
前記アスベスト回収物の処理工程において、例えば、セメント材に含まれる珪酸(SiO)とアルカリ化合物の炭酸ナトリウム(Na・CO)が反応して珪酸ナトリウム(NaO・SiO)が生成し、珪酸ナトリウム水溶液が加水分解によりNaO・2SiOとなる。NaO・2SiOとセメント材に含まれる生石灰(CaO)が反応して珪酸塩(CaO・SiO)とコロイド珪酸(Si(OH))を生成する。反応式は以下のとおりである。
NaCO+SiO→NaO・SiO+CO
2NaO・SiO+HO→NaO・2SiO+2NaOH
3NaO・2SiO+2CaO+7HO→2CaO・SiO+2Si(OH)
+2SiO+6NaOH
【0022】
上式において、Naを一価の金属M(Na、K等)、Caを2価の金属M(Cu、Mg、Al等)に適用することができる。また、上記反応は、溶液中においてイオンが関与する反応即ちイオン反応(ionic reaction)に基づくものであり、アスベスト回収物中の蒟蒻ゲル化物が水分を多量に含み、この水分によってイオン反応の進行を可能ならしめるものである。更に、前記反応によって生じた珪酸塩(CaO・SiO)とコロイド珪酸(Si(OH))のガラス物質が次の熱処理工程において、アスベストの結晶表面に焼結されてアスベストを無害化する。
【0023】
また、アスベストは通常含水珪酸塩であり、アスベスト回収物の熱処理工程における高温処理により脱水現象に伴い結晶構造が分解し他の物質に変換する。例えば、アスベスト中のクリソタイル(温石綿・白石綿、Mg6Si4O10(OH)8)は、約600〜700℃で脱水分解して非結晶化する。アモサイト(茶石綿、(Fe,Mg)7Si8O22(OH)2)は、600℃で脱水を開始し900℃で結晶が崩壊し別物質となる。アスベストの無害化は、前記珪酸塩等のガラス物質の形成と併せて加熱処理に伴う脱水分解が進行することの機序に因るとされる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について以下に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。本実施例は、前記実施の形態に係るアスベスト無害化処理装置を使用して所定のアスベスト回収物を処理して得られた残渣をX線回折分析法によって分析した。分析試料の配合及び処理内容を下記の表1に示す。検体No.4-3-A及び検体No.4-3-Bには予め蒟蒻石綿1重量部に対して炭酸カルシウムが1重量部添加してあり、青石綿のみの検体No.4-1を比較試料とした。蒟蒻石綿からなる検体No.4-2-A、検体No.4-2-B、検体No.4-3-A及び検体No.4-3-Bについては、100〜150℃で約45〜50分間加熱(蒸発工程)、約45〜50分で約650℃に上昇させ(昇温工程)、次いで、排気調節ダンパー35及び空気口を閉じた状態で約2時間加熱処理した(熱処理工程)。比較試料(検体No.4-1)の場合は、蒟蒻ゲルを含まないので、約2時間加熱処理のみ行った。
【0025】
【表1】

【0026】
<分析結果>
分析結果を下記の表2に示す。表2の分析結果から、炭酸カルシウムを添加したものと添加しないものの何れもアスベストは不検出(定量下限値の1%未満)であった。これによって、アスベスト回収物には、炭酸カルシウムのようなカルシウム系の化合物を別途添加しなくても前記加熱処理によって充分に無害化することができることが確認できた。これに対して、アスベスト単独の比較試料の場合は、前記加熱処理では無害化されないことが確認された。
【0027】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係るアスベストの無害化処理方法及び無害化処理装置は、蒟蒻水和物を使用して、建造物等に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物に何ら添加剤を加えることなく、エネルギーコストを低く抑えて、しかも外部にアスベストを一切飛散することなくアスベストを確実に無害化することができるので、安全確保がますます重要視される中にあって極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るアスベスト無害化処理装置の全体を示す説明図である。
【図2】(a)は、熱交換装置を取着台に取り付けた状態を斜め上方から見た斜視図であり、(b)は、同じく熱交換装置本体の長軸方向を断面とした正面図であり、(c)は、熱交換装置本体の長軸方向に対して垂直方向に切断した断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:無害化処理装置、2:加熱炉、2a:温度センサー、2b:圧力センサー、21:ガスバーナー、22:熱風循環ファン、23:ロースト部、24:原料ホッパー、25:開閉扉、26:ガス排出口、27:結露入水槽、3:排気ダクト、31:ベローズ、32:空冷フィン、33:余剰ガス戻パイプ、34:逆止弁、35:排気調節ダンパー、36:ブロワー空気吸入口、37:ドレン、4:熱交換装置、41:熱交換装置本体、42:細管、43:邪魔板、44:ガス吸入口、45:余剰ガス戻口、46:冷却水吸入口、47:冷却水排出口、48:冷却水吸入パイプ、49:冷却水調節バルブ、50:冷却水循環ポンプ、51:冷却水貯水タンク、52:冷却水排出パイプ、53:凝結水排出口、54:、凝結水排出パイプ、55:凝結水調節バルブ、56:凝結水受槽、57:凝結水送出ポンプ、58:凝結水送出パイプ、59:エアー抜き、60:取着台、61a,61b:仕切板、7:集中配電盤、M:アスベスト回収物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒟蒻粉末を水に膨潤して得られる液状の蒟蒻水和物を使用して、建造物、その他のアスベスト施工面に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物中のアスベストを無害化処理する方法であって、少なくとも蒟蒻水和物のゲル化物及びアスベストに加えてセメント材又はアルカリ化合物を含有してなる前記アスベスト回収物を加熱炉中で加熱して水分を蒸発し、次いで前記セメント材又はアルカリ性化合物存在下において前記アスベストを熱処理して無害化することを特徴とするアスベストの無害化処理方法。
【請求項2】
前記アスベスト回収物を加熱炉中で、100〜150℃で水分を蒸発させる蒸発工程と、次いで600〜900℃で加熱処理する熱処理工程を備えることを特徴とする請求項1記載のアスベストの無害化処理方法。
【請求項3】
蒟蒻粉末を水に膨潤して得られた液状の蒟蒻水和物を使用して、建造物、その他のアスベスト施工面に付着しているアスベストを除去する際に発生したアスベスト回収物中のアスベストを無害化する熱処理装置であって、前記熱処理装置は、アスベスト回収物を熱処理する加熱炉と、加熱炉で発生する水蒸気を、開閉装置を備えた排気ダクトより導いて冷却して凝結水を分離する熱交換装置と、加熱炉の温度及び/又は圧力を感知する温度センサー及び/又は圧力センサーと、加熱炉内の温度及び/又は圧力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とするアスベストの無害化処理装置。
【請求項4】
前記加熱炉には、熱源と、炉内を均一な温度に維持する熱風循環ファンと、アスベスト回収物を収納する容器と、温度センサー及び/又は圧力センサーと、アスベスト回収物から発生する水蒸気及び燃焼排ガスを排出するガス排出口と、が設けられてなることを特徴とする請求項3記載のアスベストの無害化処理装置。
【請求項5】
前記加熱炉に設けられたガス排出口には水蒸気及び燃焼排ガスを熱交換装置に導く排気ダクトが取り付けられ、更に熱交換装置に導く排気ダクトの中間には、水蒸気及び燃焼排ガスを冷却するための空冷フィンが取り付けられており、該空冷フィンを経て熱交換装置で冷却されて凝結水が分離された余剰ガスを再び排気ダクトに戻すための循環パイプが熱交換装置と前記排気ダクトの中間に連結されてなることを特徴とする請求項3記載のアスベストの無害化処理装置。
【請求項6】
前記熱交換装置は、中空円筒状の本体内部に冷却水を通すための細管を多数設け、本体の内側に長軸方向に直角に適宜間隔をあけて複数枚の邪魔板が上下方向に互い違いに空隙を有して設けられてなり、該本体には、その一端近傍側壁にガス吸入口と他端部近傍側壁に余剰ガス排出口並びに何れか一端近傍側壁に凝結水排出口が設けられるとともに、前記細管に連通して冷却水を給水する冷却水吸入口と冷却水を排水する冷却水排出口が設けられてなり、該熱交換装置本体は、前記凝結水排出口が下方に位置するように地面に対して適宜角度をなして設置されることを特徴とする請求項3記載のアスベストの無害化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−272558(P2008−272558A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280207(P2006−280207)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(506346071)株式会社エコネット・エンジニアリング (6)
【出願人】(597144819)株式会社まさなみ鉄工 (6)
【Fターム(参考)】