説明

アゾ金属キレート化合物、及びそれを用いた光学記録媒体

【課題】 波長520〜690nmの短波長レーザーでの記録および再生が可能で、標準の記録速度のみならず高速度の記録においても良好な記録特性を有し、高速度の記録後でもプリピット信号が十分大きく、アドレス情報が正確に得られると共に、耐久性に優れた高密度光記録媒体を提供する。
【解決手段】 互いに異なっていても、同一であっても良い2以上のアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成される金属キレート化合物であって、該アゾ化合物のうち少なくとも1つが下記一般式(1)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする金属キレート化合物、


(1)
(式中、環A、環Bはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環を表わし、環Cは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ金属キレート化合物を用いた、従来に比較して高密度に記録および再生可能な光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像、映像、音声等のデータを記録再生することのできる媒体として、有機色素を記録材料として用いるCD−Rが広く知られている。現在、扱われるデータ量の増大に伴い、CD−Rと比較して大容量な記録再生可能な光記録媒体の普及が望まれ、中でもCD−R同様有機色素を記録材料とするDVD−Rが、次世代を担う媒体として開発され、商品化されるに至っている。
【0003】
DVD−Rの一般的な構造は図1に示す通りであり、ランド7及びグル−ブ6を有する透明樹脂基板1の上に、記録層2、反射層3及び保護層(または接着層)4が形成され、場合によってはこれらの上に基板5が更に設けられる。
【0004】
DVD−Rでは高密度記録を行うためにレーザー光の発信波長が630nm〜680nm近傍とCD−Rの場合よりも短波長化している。このような短波長用途の有機色素系光記録媒体の色素としては、シアニン、アゾ、ポルフィリン系色素他、インジゴ類、ジオキサジン、クマリン、ペリレン、ナフトラクタム、トリフェニルメタン、サブフタロシアニン、ジベンゾピラン、ジピロメテン等が提案されている。
【0005】
現在、CD−Rにおける記録速度の高速化に見られるように、DVD−Rにおいても標準の記録速度に比べ、4倍速や8倍速、若しくはそれ以上の16倍速に対応した光記録媒体が望まれている。また、標準の記録速度から高速の記録速度のいずれの速度で記録しても良好な記録を行うことのできる光記録媒体の実現が望まれている。
【0006】
しかし、記録速度の高速化に伴い、ピット形成時の記録層色素の分解挙動を制御することは困難となり、これに起因する記録感度の悪化、ジッターの悪化等の問題を有している。また、標準速記録における記録特性と高速記録における記録特性は、トレードオフの関係にあり、いずれか一方の特性を満足するためには、他方の特性を犠牲にする必要があるという問題を有している。
【0007】
一方、DVD−Rの記録再生に際しては、アドレス情報を正確に得る必要がある。アドレス情報を得るために種々の構造を有する光記録媒体が提案されており、その一例として特許文献1(特開平9−326138号公報)に記載された光記録媒体がある。この光記録媒体は、蛇行したグル−ブを有し、隣り合ったグル−ブとグル−ブとを繋ぐランド部の切りかきとして所定間隔でプリピットが形成され、このプリピットから検出されるプリピット信号によってアドレス情報が得られるようになっており、トラックピッチが狭い場合でも情報を正確に得ることができるという利点がある。
【0008】
しかしながら、記録時に、グル−ブの記録層に記録ピットが形成されるとプリピットの側方にも記録ピットが形成されるためプリピットからの信号が小さくなる傾向にある。その結果、プリピット信号を正確に得られにくくなって未記録の場合よりも信号のエラ−が増加し、アドレス情報を正確に得ることが困難になるという問題がある。
さらに高速記録の際には、標準速の記録に比べ、高パワーのレーザーを照射するため、プリピットからの信号が小さくなる傾向は増大し、アドレス情報の獲得がますます困難となる。
【特許文献1】特開平9−326183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者の目的は、波長520〜690nmの短波長レーザーでの記録および再生が可能で、標準の記録速度のみならず高速度の記録においても良好な記録特性を有し、高速度の記録後でもプリピット信号が十分大きく、アドレス情報が正確に得られると共に、耐久性に優れた高密度光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有するアゾ金属キレート化合物を用いることにより、標準速記録における記録特性や、耐久性に優れるばかりでなく、高速記録時の記録特性、及びプリピット信号が良好な光記録媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
〔1〕互いに異なっていても、同一であっても良い2以上のアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成される金属キレート化合物であって、該アゾ化合物のうち少なくとも1つが下記一般式(1)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする金属キレート化合物、
【0012】
【化1】

(1)
(式中、環A、環Bはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環を表わし、環Cは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表わす。)
〔2〕一般式(1)において、環Bが下記一般式(2)で表されることを特徴とする〔1〕記載の金属キレート化合物、
【0013】
【化2】

(2)
(式中、環Dはそれが結合している窒素原子、及びカルボニル基を含む、置換基を有していてもよい複素環を表わす。)
〔3〕一般式(1)において、環Aが置換基を有していてもよい
イミダゾイル基、オキサゾイル基、チアゾイル基、
ピラゾイル基、イソオキサゾイル基、イソチアゾイル基、
トリアゾイル基、チアジアゾイル基、イソチアジアゾイル基、ピリジル基
である〔1〕または〔2〕記載の金属キレート化合物、
〔4〕下記一般式(3)で示されるアゾ金属キレート化合物、
【0014】
【化3】

(3)
(式中、Y、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、C−R、N−Rを表わし(Rは水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基を表わす。)、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わし、RとR若しくはR、RとRは連結して5〜6員環を形成してもよく、環Dは前記と同じ意味を表わし、MはNi、CoまたはCuを表す。)
〔5〕基板上に少なくとも、有機色素を含有する記録層および反射層を有する光記録媒体であって、有機色素として〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の金属キレート化合物を少なくとも1種用いることを特徴とする光記録媒体、
に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規な金属キレート化合物を記録層として用いることにより、波長520〜690nmのレーザーで記録再生が可能であり、かつ耐久性に優れた高密度、高速記録に適した追記型光記録媒体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の金属キレート化合物とは、互いに異なっていても、同一であっても良い2以上のアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成される金属キレート化合物であって、該アゾ化合物のうち少なくとも1つが下記一般式(1)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする金属キレート化合物である。
【0018】
本発明の金属キレート化合物を形成するアゾ化合物において、下記一般式(1)で示されるアゾ化合物以外のアゾ化合物としては、公知のアゾ化合物であればよく、特に制限はない。
本発明における金属キレート化合物を形成するアゾ化合物として、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物についてより具体的に説明する。
【0019】
【化4】

(1)
(式中、環A、環Bはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環を表わし、環Cは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表わす。)
【0020】
一般式(1)で表されるアゾ化合物において、環Aは複素環であればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは芳香族複素環であり、これらの複素環は置換基を有していても良い。環Aとしては、5員環または6員環が好ましく、更に好ましくは、イミダゾイル基、オキサゾイル基、チアゾイル基、ピラゾイル基、イソオキサゾイル基、イソチアゾイル基、トリアゾイル基、チアジアゾイル基、イソチアジアゾイル基、ピリジル基であり、具体的には下記の構造が挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
式中Rは全て同じでも異なってもよく、
水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ホルミル基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;
メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;
アセチル基、プロピオル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等の炭素数2〜7のアシル基;
ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;
ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルアミノ基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基等の炭素数2〜8のジアルキルアミノ基;
メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルエチル基、フェノキシカルボニル基等の炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、tert−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等の炭素数1〜6のアルキルチオ基;
メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ペンタフルオロエチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基;
メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、sec−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基等の炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基を表わす。
【0023】
ここで、環Aが有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
好ましくは、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基が挙げられ、
より具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;
ホルミル基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基;
メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;
アセチル基、プロピオル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等の炭素数2〜7のアシル基;
ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;
ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基等の炭素数1〜6のアルキルアミノ基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基等の炭素数2〜8のジアルキルアミノ基;
メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルエチル基、フェノキシカルボニル基等の炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、tert−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等の炭素数1〜6のアルキルチオ基;
メチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ペンタフルオロエチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基等の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基;
メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、sec−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基等の炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基;
が挙げられる。
【0025】
一般式(1)で表されるアゾ化合物において、環Bは複素環であればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは4員環、5員環または6員環が挙げられる。これらの複素環は置換基を有していても良く、該置換基としては、環Aと同様の置換基が挙げられる。また環Bとして、更に好ましくは、下記の構造が挙げられる。
【0026】
【化6】

(2)
(式中、環Dはそれが結合している窒素原子、及びカルボニル基を含む、置換基を有していてもよい複素環を表わす。)
【0027】
一般式(2)において、環Dはそれが結合している窒素原子、及びカルボニル基を含む、置換基を有していてもよい複素環であればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは4員環、5員環または6員環が挙げられる。これらの複素環は置換基を有していても良く、該置換基としては、環Aと同様の置換基が挙げられる。また環Dとして、特に好ましいものとしては、下記の構造が挙げられる。
【0028】
【化7】

【0029】
式中Rは全て同じでも異なってもよく、具体的な例としては、前述のRと同様の置換基が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表されるアゾ化合物において、環Cは芳香族炭化水素環であり、これらの芳香族炭化水素環は置換基を有していても良い。環Cとしては、6員環が好ましく、特に下記一般式(4)
【0031】
【化8】

(4)
で表わされる構造が好ましい。
【0032】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わし、RとR若しくはR、RとRは連結して5〜6員環を形成してもよい。
【0033】
置換基R〜Rの具体的な例としては、
前記の炭素数1〜6のアルキル基;
前記の炭素数1〜6のアルコキシ基;
前記の炭素数6〜16のアリール基;
前記の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
とRが連結して5〜6員環を形成する具体例としては、
【0034】
【化9】

【0035】
等の基が挙げられる。
とR若しくはRが連結して5〜6員環を形成する具体例としては、
【0036】
【化10】

【0037】
等の基が挙げられる。
【0038】
式中、環B、RおよびRは前記と同じ意味を表し、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わす。
炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられ、炭素数6〜16のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数2〜6のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0039】
ここで環Cが有していてもよい置換基としては、前述の環Aに置換する置換基と同様のものが挙げられ、その具体例としても前述と同様な置換基が挙げられる。
【0040】
本発明において、アゾ化合物とのキレート化合物を生成させる金属塩の具体例としては、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Hf、Os、Pt、またはHgであり、特に、Co、Ni、Cuのアゾ金属キレート化合物は、光記録材料として光学特性が優れており好ましい。
【0041】
本発明の金属キレート化合物を形成するアゾ化合物として、下記一般式(3)で表されるアゾ金属キレート化合物についてより具体的に説明する。
【0042】
【化11】

(3)
(式中、Y、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、C−R、N−Rを表わし(Rは水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基を表わす。)、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わし、RとR若しくはR、RとRは連結して5〜6員環を形成してもよく、環Dは前記と同じ意味を表わし、MはNi、CoまたはCuを表す。)
【0043】
一般式(3)において、Y、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、C−R、N−Rを表わし、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基を表わす。
【0044】
また、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わし、RとR若しくはR、RとRは連結して5〜6員環を形成してもよく、具体例としては、前述の具体例が挙げられる。
【0045】
上記R、R、R、R、R及びRにおける各置換基の具体的な例としては、前述と同様の置換基が挙げられる。
【0046】
また、環Dは前記と同じ意味を表し、MはNi、CoまたはCuを表す。
【0047】
一般式(3)で示されるアゾ金属キレート化合物の特に好ましい例としては、下記のものが挙げられる。
表−1
【0048】
【表1−1】

【0049】
【表1−2】

【0050】
【表1−3】

【0051】
【表1−4】

【0052】
【表1−5】

【0053】
【表1−6】

【0054】
【表1−7】

【0055】
本発明の金属キレート化合物は、特に限定されないが、例えば、一般式(5)
【0056】
【化12】

(5)
(式中環Aは前記と同じ)
で示されるアミノ化合物を公知の方法によりジアゾ化し、一般式(6)
【0057】
【化13】

(6)
(式中環B、環Cは前記と同じ)
で示されるカップリング成分と反応させることにより合成される一般式(1)で示されるアゾ化合物に、メチルアルコール、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトンなどの有機溶媒中で金属化合物のメタノール溶液や水溶液を加えることにより得られる。
【0058】
本発明の金属キレート化合物において、特徴的な構造である一般式(6)で示されるカップリング成分は、特に限定されないが、例えば、一般式(7)で示されるアミン化合物と一般式(8)で示される塩化スルホニル化合物を、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基性化合物の存在下、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0059】
【化14】

(7)
(式中環Cは前記と同じ)
【0060】
【化15】

(8)
(式中環Bは前記と同じ)
【0061】
本発明の金属キレート化合物は、2以上のアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成されるが、アゾ化合物同士が同一であっても、互いに異なっていてもよい。互いに異なるアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成される金属キレート化合物は、上記方法によって得られた互いに異なるアゾ化合物の混合物に、メチルアルコール、エチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトンなどの有機溶媒中で金属化合物のメタノール溶液や水溶液を加えることにより得られる。
【0062】
本発明における光記録媒体に関し、その具体的な構成について以下に説明する。
【0063】
光記録媒体とは予め情報を記録されている再生専用の光再生専用媒体及び情報を記録して再生することのできる光記録媒体の両方を示すものである。但し、ここでは適例として後者の情報を記録して再生のできる光記録媒体、特に基板上に記録層、反射層を有する光記録媒体に関して説明する。本発明の光記録媒体は図1に示すような貼り合わせ構造を有している。すなわち、ランド7及びグル−ブ6を有する透明樹脂基板1の上に、記録層2、反射層3及び保護層(または接着層)4が形成され、場合によってはこれらの上に基板5が更に設けられる。ただし、記録層2の下または上に別の層があっても良く、反射層3の上に別の層があっても良い。ここでは、既存のDVDとの互換性のため、板厚が0.6mm、外径120mmΦ、内径15mmφの円盤状基板が2枚貼り合わされた構造である。
【0064】
次に、本発明の記録媒体の構成各層の必要特性及びその構成材料について説明する。
1)基板
基板の材質としては、基本的には記録光および再生光の波長で透明であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料やガラス等の無機材料が利用される。これらの基板材料は射出成形法等により円盤状に基板に成形される。基板表面には記録位置を表すプリグルーブやプリピット、一部再生専用情報等のためのプリピットを有していてもよい。これらのプリグルーブやプリピットは、射出成形法等により基板作製時にスタンパー原盤から転写付与する方法が通常とられる。また、レーザーカッティング法(プリライト)や2P(Photo Polymer)法により作製してもよい。
【0065】
基板の溝ピッチは0.7μm〜1.0μmであり、溝深さは100nm〜200nm、好ましくは140nm〜185nmである。溝幅は、0.25μm〜0.40μm、好ましくは0.30μm〜0.35μmである。溝深さが100nm未満の場合、トラッキングのためのプッシュプル信号振幅を得ることが困難になる傾向があり、200nmを越える場合は、射出成形時の転写プロセスが生産上実用的ではない。また、溝幅が0.25μm未満の場合、クロストークが悪化する傾向があり、0.4μmを越える場合、射出成形時の転写プロセスが生産上実用的ではない。これら溝形状は、He−Cdレーザーの照射による回折光解析またはAFM等のプロファイルから求められる。
【0066】
2)記録層
本発明においては、基板上に記録層を設けるが、本発明の記録層は、λmaxが450nm〜630nm付近に存在する一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物を含有する。中でも、520nm〜690nmより選択される記録および再生レーザー波長に対して適度な光学定数(光学定数は複素屈折率(n+ki)で表現される。式中のn、kは、実数部nと虚数部kとに相当する係数である。ここでは、nを屈折率、kを消衰係数とする。)を有する必要がある。
【0067】
一般に有機色素は、波長λに対し、屈折率nと消衰係数kが大きく変化する特徴がある。nが1.8より小さい値になると正確な信号読み取りに必要な反射率と信号変調度は得られず、kが0.40を越えても反射率が低下して良好な再生信号が得られないだけでなく、再生光により信号が変化しやすく実用に適さない。この特徴を考慮して、目的とするレーザー波長において好ましい光学定数を有する有機色素を選択し記録層を成膜することで、高い反射率を有し、かつ、感度の良い媒体とすることができる。
【0068】
本発明で使用する一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物は、通常の有機色素に比べ、吸光係数が高く、また置換基の選択により吸収波長域を任意に選択できるため、前記レーザー光の波長において記録層に必要な光学定数(nが1.8以上、且つ、kが0.04から0.40であり、好ましくは、nが2.0以上、且つ、kが0.04〜0.20)を満足する。
【0069】
更に、一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物は、記録レーザー照射時に発生する熱による分解が適度に促進され、高速記録時においても感度が良く、また熱干渉によるピットジッターの悪化が十分低く抑制できるため、標準の記録速度のみならず高速度の記録においても良好な記録特性を有する。
【0070】
一方、DVD−Rの記録再生に際しては、アドレス情報を正確に得る必要がある。その一例として、蛇行したグル−ブを有し、隣り合ったグル−ブとグル−ブとを繋ぐランド部の切りかきとして所定間隔でプリピットが形成され、このプリピットから検出されるプリピット信号によってアドレス情報を得る方法が提案されている。
【0071】
しかしながら、記録時に、グル−ブの記録層に記録ピットが形成されるとプリピットの側方にも記録ピットが形成されるためプリピットからの信号が小さくなる傾向にある。高速記録時にはその傾向は顕著となり、その結果、プリピット信号が正確に得られにくくなり未記録の場合よりも信号のエラ−が増加し、アドレス情報を正確に得ることが困難になるという問題がある。
【0072】
一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物は、前記のように記録レーザー照射時に発生する熱による分解が適度に促進され、高速度の記録後でもプリピット信号が十分大きいため、アドレス情報が正確に得られる極めて有用な化合物である。
【0073】
色素の熱による分解は、熱重量分析で測定することができる。高速記録時のピットジッターを良好化し、またプリピット信号を十分大きくするためには、窒素中での色素の熱重量分析において、主減量過程における減量が、総重量の55%未満であることが好ましい。本発明においては、いくつかの減量過程のうちで減量が15%以上の過程を主減量過程と呼ぶ。
【0074】
本発明の記録層においては、好ましくは、一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物1種を記録層として用いるが、記録特性などの改善のために、2種以上を混合したり、本発明のアゾ金属キレート化合物以外の色素と混合して用いてもよい。
【0075】
一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物を2種以上を混合して用いる場合のアゾ金属キレート化合物の混合割合については特に制限はされないが、前記の理由で、光学定数nが1.8以上、好ましくは2.0以上で、且つ、kが0.04から0.40であり、好ましくは0.04〜0.20になるように混合するのが好ましい。
【0076】
また、混合して用いてもよい本発明のアゾ金属キレート化合物以外の色素としては、波長450nm〜630nmに吸収極大を有し、520nm〜690nmでの屈折率が大きい色素が挙げられる。具体的には、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ポルフィリン系色素、アザポルフィリン系色素、テトラピラポルフィラジン系色素、インドフェノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、インダスレン系色素、インジゴ系色素、チオインジゴ系色素、メロシアニン系色素、チアジン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素等があり、複数の色素の混合であっても良い。これらの色素の混合割合は、0.1〜30%程度である。
【0077】
更に、一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物の、520nm〜690nmから選択される記録及び再生レーザー波長に対してのkが小さい場合には、記録特性などの改善のために、波長600nm〜900nmに吸収極大を有する光吸収化合物と混合しても良い。具体的には、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ポルフィリン系色素、アザポルフィリン系色素、テトラピラポルフィラジン系色素、インドフェノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、インダスレン系色素、インジゴ系色素、チオインジゴ系色素、メロシアニン系色素、チアジン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等があり、複数の色素の混合であっても良い。これらの色素の混合割合は、0.1〜30%程度である。
【0078】
記録層を製膜する際に、必要に応じてクエンチャー、色素分解促進剤、紫外線吸収剤、接着剤、吸熱分解化合物などを混合するか、あるいは、そのような効果を有する化合物を一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物の置換基として導入することも可能である。
【0079】
クエンチャーの具体例としては、アセチルアセトナート系化合物、ビスジチオ−α−ジケトン系化合物やビスフェニルジチオール系化合物などのビスジチオール系化合物、チオカテコール系化合物、サリチルアルデヒドオキシム系化合物、チオビスフェノレート系化合物などの金属錯体が好ましい。また、アミン化合物も好適である。
【0080】
熱分解促進剤としては、例えば、金属系アンチノッキング剤、メタロセン化合物、アセチルアセトナート系金属錯体などの金属化合物が挙げられる。
【0081】
さらに、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤などを併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0082】
記録層を基板の上に成膜する際に、基板の耐溶剤性や反射率、記録感度などを向上させるために、基板の上に無機物やポリマーからなる層を設けても良い。
【0083】
記録層を設ける方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、キャスト法、浸漬法などの塗布法、スパッタ法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられるが、スピンコート法が簡便で好ましい。
【0084】
スピンコート法等の塗布法を用いる場合には、一般式(1)で示されるアゾ化合物と金属塩とから形成される金属キレート化合物を1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%となるように溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を用いるが、この際、溶媒は基板にダメージを与えないものを選ぶことが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタフルオロペンタノール、アリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラフルオロプロパノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、乳酸メチルなどのエステル系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いても良く、あるいは、複数混合しても良い。
【0085】
なお、必要に応じて、記録層の色素を高分子薄膜などに分散して用いたりすることもできる。
【0086】
また、基板にダメージを与えない溶媒を選択できない場合は、スパッタ法、化学蒸着法や真空蒸着法などが有効である。
【0087】
色素層の膜厚は、特に限定するものではないが、基板の案内溝(グルーブ)上の膜厚が30nm〜150nmの範囲が好ましく、基板の案内溝間(ランド)の膜厚は、10nm〜80nmの範囲が好ましい。グルーブの膜厚が150nmを越すと、最短ピットが潰れ、好ましくない。また、30nmよりも薄い場合、良好な記録感度、記録変調度が得られない。ランド上の膜厚は極力薄いことが特に好ましい。これらの記録層の膜厚制御は、上記の有機溶媒を複数混合して用いることで可能である。
【0088】
3)反射層
記録層の上に、好ましくは50nm〜300nmの厚さの反射層を形成する。反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、TaおよびPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。これ以外でも下記のものを含んでいても良い。例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属および半金属を挙げることができる。また、Auを主成分とするものは反射率の高い反射層が容易に得られるため好適である。ここで主成分というのは含有率が50%以上のものをいう。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0089】
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法などが挙げられる。また、基板の上や反射層の下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上などのために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0090】
反射率は、信号が再生できれば特に限定されないが、好ましくは30%以上65%未満であり、更に好ましくは、45%以上60%未満である。
【0091】
4)保護層
反射層の上の保護層の材料としては反射層を外力から保護するものであれば特に限定しない。有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂などを挙げることができる。また、無機物質としては、SiO、Si、MgF、SnOなどが挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶媒に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶媒に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成することができる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いても良く、1層だけでなく多層膜にして用いても良い。
【0092】
保護層の形成の方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法などの塗布法やスパッタ法や化学蒸着法などの方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
【0093】
保護層の膜厚は、一般には0.1μm〜100μmの範囲であるが、本発明においては、3μm〜30μmであり、より好ましくは5μm〜20μmである。
【0094】
保護層の上にさらにレーベルなどの印刷を行うこともできる。また、反射層面に保護シートまたは基板を張り合わせる、あるいは反射層面相互を内側とし対向させ、光記録媒体2枚を貼り合わせるなどの手段を用いても良い。また、基板鏡面側に、表面保護やごみ等の付着防止のために紫外線硬化性樹脂、無機系薄膜等を製膜しても良い。
【0095】
本発明でいう波長520nm〜690nmのレーザーは、特に制限はないが、例えば、可視光領域の広範囲で波長選択のできる色素レーザーや波長633nmのヘリウムネオンレーザー、波長680、650、635nm付近の高出力半導体レーザー、波長532nmの高調波変換YAGレーザーなどが挙げられる。本発明では、これらから選択される1波長または複数波長において高密度記録および再生が可能となる。
【0096】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0097】
<アゾ金属キレート化合物(3−23)の合成>
窒素雰囲気下、2−ブロモエタノール18.9gを乾燥テトラヒドロフラン150gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート21.3gを滴下し、1時間攪拌、反応した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−a)24.5g、トリエチルアミン36.7gを乾燥テトラヒドロフラン240gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、2時間攪拌した。析出した固体を濾別し、濾液を減圧濃縮し、2−プロパノール120gを装入、攪拌した。析出した結晶を濾過、2−プロパノールで洗浄、乾燥して、下記構造式(6−a)で示される化合物 32.9gを得た。
【0098】
【化16】

(7−a) (6−a)

水 95g、36%塩酸16.9gの混合溶液に下記構造式(5−a)で示される化合物 3.37gを溶解し、0−5℃にて18%亜硝酸ナトリウム水溶液10.7gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−a)で示される化合物 5.5g、尿素1.1g、酢酸ナトリウム10.6gをメタノール160gに溶解させ、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で3時間攪拌後、一晩放置した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、下記構造式(9−a)で示される化合物 8.07gを得た。
【0099】
【化17】

(5−a) (9−a)

次に、アセトン240gに式(9−a)で示される化合物 8.07gを溶解し、炭酸カリウム5.83g、ジメチル硫酸2.56gを加え、35−40℃にて1時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、化合物(10−a)5.91gを得た。
【0100】
【化18】

(10−a)

次に、メタノール230gに式(10−a)で示される化合物 5.91gを溶解し、50−55℃で10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 18.6gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。室温まで冷却後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−23)5.6gを得た。
【0101】
【化19】

(3−23)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0102】
元素分析値(C404018Ni)
【表2】

【0103】
MS(m/e) :1022(M
【0104】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において581.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は1.09×10ml/g.cmであった。
【実施例2】
【0105】
<アゾ金属キレート化合物(3−25)の合成>
窒素雰囲気下、2−ブロモエタノール2.31gを乾燥テトラヒドロフラン45gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート2.62gを滴下し、1時間攪拌、反応した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−b)3.00g、トリエチルアミン3.74gを乾燥テトラヒドロフラン30gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、2時間攪拌した。析出した固体を濾別し、濾液を減圧濃縮し、2−プロパノール20gを装入、攪拌した。析出した結晶を濾過、2−プロパノールで洗浄、乾燥して、下記構造式(6−b)で示される化合物 4.80gを得た。
【0106】
【化20】

(7−b) (6−b)

酢酸 23g、プロピオン酸23g、85%りん酸6.5gの混合溶液に下記構造式(5−b)で示される化合物 2.6gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸9.0gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−b)で示される化合物 4.00g、尿素0.77g、酢酸ナトリウム6.32gをメタノール80gに溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で2時間攪拌した後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、下記構造式(9−b)で示される化合物 3.10gを得た。
【0107】
【化21】

(5−b) (9−b)

次に、メタノール100gに式(9−b)で示される化合物 3.05gを溶解し、室温にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 10.8gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−25)2.7gを得た。
【0108】
【化22】

(3−25)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0109】
元素分析値(C303214Ni)
【表3】

【0110】
MS(m/e) :902(M
【0111】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において584.0nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は1.14×10ml/g.cmであった。
【実施例3】
【0112】
<アゾ金属キレート化合物(3−27)の合成>
酢酸 45g、プロピオン酸45g、85%りん酸13.0gの混合溶液に下記構造式(5−b)で示される化合物 5.2gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸18.0gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−a)で示される化合物 16.7g、尿素3.34g、酢酸ナトリウム20.2gをメタノール250gに溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で2時間攪拌した後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、下記構造式(9−c)で示される化合物 18.0gを得た。
【0113】
【化23】

(5−b) (9−c)

次に、メタノール150gに式(9−c)で示される化合物 5.00gを溶解し、室温にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 18.1gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−27)4.88gを得た。
【0114】
【化24】

(3−27)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0115】
元素分析値(C323614Ni)
【表4】

【0116】
MS(m/e) :930(M
【0117】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において586.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は0.99×10ml/g.cmであった。
【実施例4】
【0118】
<アゾ金属キレート化合物(3−33)の合成>
窒素雰囲気下、2−ブロモエタノール4.62gを乾燥テトラヒドロフラン90gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート5.24gを滴下し、1時間攪拌、反応した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−c)5.04g、トリエチルアミン7.48gを乾燥テトラヒドロフラン60gに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、3時間攪拌した。析出した固体を濾別し、濾液を減圧濃縮し、2−プロパノール35gを装入、攪拌した。析出した結晶を濾過、2−プロパノールで洗浄、乾燥して、下記構造式(6−c)で示される化合物 6.74gを得た。
【0119】
【化25】

(7−c) (6−c)

酢酸 20g、プロピオン酸20g、85%りん酸5.8gの混合溶液に下記構造式(5−c)で示される化合物 2.6gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸4.68gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−c)で示される化合物 2.06g、尿素0.38g、酢酸ナトリウム3.11gをメタノール40gに溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で3時間攪拌した後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、下記構造式(9−d)で示される化合物 2.27gを得た。
【0120】
【化26】

(5−c) (9−d)

次に、メタノール150gに式(9−d)で示される化合物 2.25gを溶解し、室温にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 7.1gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−33)2.13gを得た。
【0121】
【化27】

(3−33)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0122】
元素分析値(C262614BrNi)
【表5】

【0123】
MS(m/e) :1006(M
【0124】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において593.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は0.76×10ml/g.cmであった。
【実施例5】
【0125】
<アゾ金属キレート化合物(3−24)の合成>
窒素雰囲気下、2−ブロモエタノール12.5gを乾燥テトラヒドロフラン250mlに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート14.2gを滴下し、30分間撹拌した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−d)18.8g、トリエチルアミン20.2gを乾燥テトラヒドロフラン150mlに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、3時間攪拌した。反応液を水1.5L中に排出し、トルエン500mlで抽出した。水洗した後、トルエン溶液を減圧濃縮し、メタノール50mlを装入、攪拌した。析出した結晶を濾過、メタノールで洗浄、乾燥し、下記構造式(6−d)で示される化合物 17.5gを得た。
【0126】
【化28】

(7−d) (6−d)

水 75ml、36%塩酸13mlの混合溶液に下記構造式(5−a)で示される化合物2.5gを溶解し、0−5℃にて18%亜硝酸ナトリウム水溶液8.0gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−d)で示される化合物 5.1g、尿素0.8g、酢酸ナトリウム7.5gをメタノール200mlに溶解させ、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、下記構造式(9−e)で示される化合物 7.2gを得た。
【0127】
【化29】

(5−a) (9−e)

次に、メタノール200ml、アセトン50mlの混合溶媒に式(9−e)で示される化合物 7.0gを溶解し、炭酸カリウム2.61g、ジメチル硫酸2.38gを加え、50℃にて1時間攪拌した。その後、10℃まで冷却し、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、化合物(10−b)6.63gを得た。
【0128】
【化30】

(10−b)

次に、メタノール150ml、テトラヒドロフラン150mlの混合溶媒に式(10−b)で示される化合物 6.2gを溶解し、50−55℃で10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 23.8gを滴下し、同温度で3時間攪拌した。室温まで冷却後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−24)4.8gを得た。
【0129】
【化31】

(3−24)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0130】
元素分析値(C424018Ni)
【表6】

【0131】
MS(m/e) :1046(M
【0132】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において583.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は1.02×10ml/g.cmであった。
【実施例6】
【0133】
<アゾ金属キレート化合物(3−28)の合成>
酢酸 15ml、プロピオン酸10mlの混合溶液に下記構造式(5−b)で示される化合物 1.0gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸3.4gを滴下した。同温度で1.5時間攪拌し、ジアゾ化した。下記構造式(6−d)で示される化合物 3.0g、尿素0.75g、酢酸ナトリウム7.5gをメタノール45ml、ジメチルホルムアミド10mlの混合溶媒に溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で2時間攪拌した後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、下記構造式(9−f)で示される化合物 1.8gを得た。
【0134】
【化32】

(5−b) (6−d) (9−f)

次に、メタノール50ml、テトラヒドロフラン20mlの混合溶媒に式(9−f)で示される化合物 1.8gを溶解し、50?55℃にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 9.0gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−28)1.3gを得た。
【0135】
【化33】

(3−28)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0136】
元素分析値(C343614Ni)
【表7】

【0137】
MS(m/e) :954(M+)
【0138】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において588.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は8.56×10ml/g.cmであった。
【実施例7】
【0139】
<アゾ金属キレート化合物(3−31)の合成>
窒素雰囲気下、2−ブロモエタノール9.1gを乾燥テトラヒドロフラン80mlに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート10.3gを滴下し、1時間撹拌した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−e)14.9g、トリエチルアミン17.7gを乾燥テトラヒドロフラン130mlに溶解し、0−5℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、2時間攪拌した。析出した固体を濾別し、濾液を減圧濃縮した。トルエン200mlを装入、再溶解し、水洗後トルエン溶液を減圧濃縮し、下記構造式(6−e)で示される化合物 20.1gを得た。
【0140】
【化34】

(7−e) (6−e)

水 100ml、36%塩酸17mlの混合溶液に下記構造式(5−a)で示される化合物3.3gを溶解し、0−5℃にて18%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。式(6−e)で示される化合物 7.1g、尿素1.0g、酢酸ナトリウム10.0gをメタノール270mlに溶解させ、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、下記構造式(9−g)で示される化合物 8.0gを得た。
【0141】
【化35】

(5−a) (9−g)

次に、メタノール200ml、アセトン50mlの混合溶媒に式(9−g)で示される化合物 7.7gを溶解し、炭酸カリウム2.78g、ジメチル硫酸2.54gを加え、50℃にて2時間攪拌した。その後、10℃まで冷却し、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、化合物(10−c)6.2gを得た。
【0142】
【化36】

(10−c)

次に、メタノール130ml、テトラヒドロフラン130mlの混合溶媒に式(10−c)で示される化合物 5.6gを溶解し、50−55℃で10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 16.4gを滴下し、同温度で3時間攪拌した。室温まで冷却後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−31)3.8gを得た。
【0143】
【化37】

(3−31)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0144】
元素分析値(C444818Ni)
【表8】

【0145】
MS(m/e) :1078(M+)
【0146】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において586.0nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は1.04×10ml/g.cmであった。
【実施例8】
【0147】
<アゾ金属キレート化合物(3−32)の合成>
酢酸 35ml、プロピオン酸20mlの混合溶液に下記構造式(5−b)で示される化合物 2.2gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸7.3gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。下記構造式(6−e)で示される化合物 7.1g、尿素0.88g、酢酸ナトリウム8.8gをメタノール100mlに溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で2時間攪拌した後、水300mlに排出し、クロロホルム300mlで抽出、水洗した後、クロロホルム溶液を減圧濃縮した。その後、カラムクロマト精製により、下記構造式(9−h)で示される化合物 5.2gを得た。
【0148】
【化38】

(5−b) (6−e) (9−h)

次に、メタノール170ml、テトラヒドロフラン120mlの混合溶媒に式(9−h)で示される化合物 6.3gを溶解し、50−55℃にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 20.3gを滴下し、同温度で3時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−32)5.9gを得た。
【0149】
【化39】

(3−32)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0150】
元素分析値(C364414Ni)
【表9】

【0151】
MS(m/e) :986(M+)
【0152】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において592.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は1.02×10ml/g.cmであった。
【実施例9】
【0153】
<アゾ金属キレート化合物(3−71)の合成>
酢酸 30ml、プロピオン酸20ml、85%リン酸6.5gの混合溶液に下記構造式(5−d)で示される化合物 5.2gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸7.0gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。下記構造式(6−e)で示される化合物 4.2g、尿素0.72g、酢酸ナトリウム7.2gをメタノール100mlに溶解し、得られたジアゾ液と20%酢酸ナトリウム水溶液50gを0−5℃で同時に滴下装入した。同温度で4時間攪拌した後、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥し、化合物(9−i)3.6gを得た。
【0154】
【化40】

(5−d) (6−e) (9−i)

次に、メタノール70ml、テトラヒドロフラン70mlの混合溶媒に式(9−i)で示される化合物 3.3gを溶解し、50−55℃にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 9.0gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、アゾ金属キレート化合物(3−71)2.8gを得た。
【0155】
【化41】

(3−71)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0156】
元素分析値(C384412BrNi)
【表10】

【0157】
MS(m/e) :1140(M+)
【0158】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において607.5nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は9.12×10ml/g.cmであった。
【実施例10】
【0159】
<アゾ金属キレート化合物(3−51)の合成>
窒素雰囲気下、N−メチル−3−クロロプロピルアミン塩酸塩5.0gを乾燥テトラヒドロフラン50mlに溶解し、10℃に冷却した。同温度でクロロスルホニルイソシアナート5.4gを滴下し、1時間撹拌した。次に窒素雰囲気下、化合物(7−b)5.6g、トリエチルアミン7.0gを乾燥テトラヒドロフラン60mlに溶解し、10℃に冷却した。同温度で上記反応液を滴下し、1時間攪拌した後、1.5時間還流した。溶媒を減圧濃縮した後、トルエン150mlで抽出し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液70mlで洗浄、水洗した。トルエン溶液を減圧濃縮した後、カラムクロマト精製し、下記構造式(6−f)で示される化合物 5.5gを得た。
【0160】
【化42】

(7−b) (6−f)

酢酸 25ml、プロピオン酸15mlの混合溶液に下記構造式(5−b)で示される化合物 1.7gを溶解し、0−5℃にて40%ニトロシル硫酸5.4gを滴下した。同温度で1時間攪拌し、ジアゾ化した。下記構造式(6−f)で示される化合物 5.0g、尿素0.62g、酢酸ナトリウム7.0gをメタノール100mlに溶解し、得られたジアゾ液を0−5℃で滴下装入した。同温度で1時間攪拌した後、水75mlを添加し、析出した結晶を濾別、水洗、乾燥して、下記構造式(9−j)で示される化合物 3.2gを得た。
【0161】
【化43】

(5−b) (6−f) (9−j)

次に、テトラヒドロフラン100mlに式(9−j)で示される化合物 3.2gを溶解し、50−55℃にて10%酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液 10.0gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、クロロホルム100mlで抽出し、不溶物を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、カラムクロマト精製し、アゾ金属キレート化合物(3−51)2.1gを得た。
【0162】
【化44】

(3−51)

下記の分析結果より、目的物であることを確認した。
【0163】
元素分析値(C344216Ni)
【表11】

【0164】
MS(m/e) :956(M+)
【0165】
このようにして得られた化合物は、クロロホルム溶液中において578.0nmに吸収極大を示し、グラム吸光係数は8.26×10ml/g.cmであった。
【実施例11】
【0166】
次に、厚さ0.60mm、直径120mmΦのスパイラルグルーブ(ピッチ=0.74μm、深さ=165nm、幅=0.33μm)を有する射出成型ポリカーボネート基板に表2に記載した金属キレート化合物(3−1)をテトラフルオロプロパノールに溶解し(18g/L)、スピンコーティング法にてほぼ溝上膜厚80nm、溝間膜厚20nmとなるように調製し成膜した。80℃、2時間乾燥処理した後、AgPdCu反射膜をバルザース製スパッタ装置(CDI−900)を用い膜厚80nmで形成し、更にこの反射層上にはUV硬化樹脂:SD17(大日本インク製)を塗布し、UV硬化した後、この上に前記と同様0.6mm厚のポリカーボネート基板を貼り合わせJSR製KZ8681ラジカル重合接着剤によりUV光で貼り合わせた光記録媒体を作製した。
【0167】
得られた光記録媒体をパルステック工業社製ディスクテスターDDU1000:波長=661nm、NA=0.60にて、線速度=3.5m/s(DVD−R基準記録速度)、線速度=14m/s(DVD−R基準記録速度の4倍速スピード)、及び線速度=28m/s(DVD−R基準記録速度の8倍速スピード)にて各々DVDR対応のEFM+信号を記録した。記録条件はDVD−R規格書(ver2.0)記載のパルス条件を各々1倍速、4倍速、及び8倍速の高速駆動し各ピットに最適となるような調整を施し記録した。それら記録部位をDVD標準速度でジッター計測した。当該実施例に示すDVDR媒体では1倍速、4倍速、及び8倍速いずれにおいても良好なジッター値で幅広いパワーウインドウが確認できた。
【0168】
また、8倍速の記録を行った後の、ランドプリピット信号の開口率(AR)を測定した。開口率とは、ランドプリピット信号が最も小さくなったときの高さであり、記録後でもAR値が十分大きな値を示すことが確認できた。
【0169】
[実施例12〜45]
表1に記載した金属キレート化合物を適宜使用する以外は、実施例11と同様にして光記録媒体を作製した。
【0170】
これら光記録媒体を実施例11と同様にして評価を行ったところ、1倍速、4倍速、及び8倍速いずれにおいても良好なジッター値で幅広いパワーウインドウが確認できた。また、8倍速記録後のAR値も大きく、十分大きなランドプリピット信号が確認できた。
【0171】
[実施例46]
金属キレート化合物(3−8)と(3−9)の混合物(重量比8:2)をテトラフルオロプロパノールに溶解する以外は実施例11と同様にして光記録媒体を作製した。更に実施例11と同様にして評価を行ったところ、1倍速、4倍速、及び8倍速いずれにおいても良好なジッター値で幅広いパワーウインドウが確認できた。また、8倍速記録後のAR値も大きく、十分大きなランドプリピット信号が確認できた。
【0172】
[実施例47〜49]
表2に記載した金属キレート化合物の混合物を適宜使用する以外は、実施例46と同様にして光記録媒体を作製した。
【0173】
これら光記録媒体を実施例11と同様にして評価を行ったところ、1倍速、4倍速、及び8倍速いずれにおいても良好なジッター値で幅広いパワーウインドウが確認できた。また、8倍速記録後のAR値も大きく、十分大きなランドプリピット信号が確認できた。
【0174】
[比較例1]
下記構造式(a)の金属キレート化合物を用いて実施例11と同様にして光記録媒体を作製し、同様の評価を実施した。1倍速、4倍速は良好な信号特性が得られたが、記録感度に劣り、8倍速では良好な記録が行えなかった。
【0175】
【化45】

【0176】
[比較例2]
下記構造式(b)の金属キレート化合物を用いて実施例11と同様にして光記録媒体を作製し、同様の評価を実施した。1倍速、4倍速は良好な信号特性が得られたが、8倍速はジッター値が高く、信号品位が悪かった。また、8倍速記録後のAR値は小さく、ランドプリピット信号が小さかった。
【0177】
【化46】

【0178】
表2には、実施例11〜49、及び比較例1、2において、計測した1倍速、4倍速、及び8倍速のジッター、変調度、及び8倍速記録後のAR値の結果を示した。当該実施例に示すDVDR媒体では、1倍速、4倍速、及び8倍速いずれにおいても良好なジッター値で幅広いパワーウィンドウ、及び8倍速記録後の良好なAR値が確認できた。
表−2
【0179】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の金属キレート化合物を記録層として用いることにより、高密度光記録媒体である波長520〜690nmのレーザーで記録再生が可能で耐久性に優れた高密度、高速記録に適した追記型光記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】従来の光記録媒体および本発明の層構成を示す断面構造図である。
【符号の説明】
【0182】
1 基板
2 記録層
3 反射層
4 接着層
5 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なっていても、同一であっても良い2以上のアゾ化合物と2価以上の金属塩とから形成される金属キレート化合物であって、該アゾ化合物のうち少なくとも1つが下記一般式(1)で示されるアゾ化合物であることを特徴とする金属キレート化合物。
【化1】

(1)
(式中、環A、環Bはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環を表わし、環Cは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表わす。)
【請求項2】
一般式(1)において、環Bが下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載の金属キレート化合物。
【化2】

(2)
(式中、環Dはそれが結合している窒素原子、及びカルボニル基を含む、置換基を有していてもよい複素環を表わす。)
【請求項3】
一般式(1)において、環Aが置換基を有していてもよい
イミダゾイル基、オキサゾイル基、チアゾイル基、
ピラゾイル基、イソオキサゾイル基、イソチアゾイル基、
トリアゾイル基、チアジアゾイル基、イソチアジアゾイル基、ピリジル基
である請求項1または2記載の金属キレート化合物。
【請求項4】
下記一般式(3)で示されるアゾ金属キレート化合物。
【化3】

(3)
(式中、Y、Y、Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、C−R、N−Rを表わし(Rは水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、炭素数3〜7のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数2〜6のアルキルカルボニルアミノ基を表わす。)、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数2〜6のアルケニル基を表わし、RとR若しくはR、RとRは連結して5〜6員環を形成してもよく、環Dは前記と同じ意味を表わし、MはNi、CoまたはCuを表す。)
【請求項5】
基板上に少なくとも、有機色素を含有する記録層および反射層を有する光記録媒体であって、有機色素として請求項1〜4のいずれかに記載の金属キレート化合物を少なくとも1種用いることを特徴とする光記録媒体。










【図1】
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【公開番号】特開2006−77086(P2006−77086A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260982(P2004−260982)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】