説明

アゾ金属キレート色素及び光学記録媒体

【課題】光学記録媒体の記録層に適したアゾ金属キレート色素および光学記録媒体の提供。
【解決手段】式1で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなるアゾ金属キレート色素。式中、Rは置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖あるいは分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖或いは分岐のアルキル基であり、RとR、RとR6、とRは、互いに結合して環を形成していても良い。Yは少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基である上記式1で示されるアゾ系色素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射率の高いアゾ金属キレート色素およびこれを記録層に用いた光学記録媒体に関し、より詳しくは、高速記録が可能な光学記録媒体や、記録層を多層有する光学記録媒体の記録層に適したアゾ金属キレート色素および光学記録媒体(以下、「ディスク」又は「光ディスク」と記すことがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年コンピューターの高速化、ハードディスク容量の増大に伴い、取扱えるデータの大きさが増加してきた。それに対応するため、大容量化記録メディアとしてDVD−Rが開発されている。DVD−Rの記録層に用いる色素としてはシアニン系、金属キレート系色素等種々のものが提案されている。これらの色素のうち、耐光性、耐久性等の記録特性に優れる金属キレート色素を用いた光学記録媒体が多数提案されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
また、光学記録媒体に用いる色素としては、特許文献4〜特許文献6に記載されているようなピリミジン環をジアゾ成分に有する化合物も提案されている。しかしながら、特許文献4、特許文献5に記載されている化合物は、オーサリングと呼ばれる波長635nmのレーザーでの記録は可能であるが、DVD−Rに一般的に用いられる波長650nmのレーザーでは記録が困難であることが判明した。また、特許文献6にもピリミジン環をジアゾ成分に有する化合物を光学記録媒体に用いて1倍速相当で記録した例が報告されているが、記録感度は悪いものであった。
【0004】
【特許文献1】特開平03−268994号公報
【特許文献2】特開平11−166125号公報
【特許文献3】特開2000−309722号公報
【特許文献4】特開平10−157300号公報
【特許文献5】特開平10−181203号公報
【特許文献6】特開2002−092941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近はデータ量のさらなる増大に伴ない、光学記録媒体に情報を記録するための記録速度の高速化が重視されている。例えば、DVD−Rでは通常の記録速度が約3.5m/s(以下、1Xと称す場合がある)であるが、この8倍にあたる約28m/s(以下、8Xと称す場合がある)以上の速度で情報の記録が可能な光学記録媒体が要求されている。
しかしながら、このように高速で記録を行う場合、記録に用いる光の照射量(レーザーの場合のレーザーパワー)は、相対的に低下することとなる。従って、弱いレーザーパワーであっても記録が出来るような色素が求められている。
【0006】
一方、光学記録媒体の高容量化の手段としては、記録層を2層以上有するような多層記録媒体が提案されている。片面に記録層を多層有するような光学記録媒体の場合、記録・再生に用いる光は片面から入射されることになるが、入射面から遠い位置の記録層においては、照射されるレーザーパワーは低いものとなる。従って、多層記録媒体においても、弱いレーザーパワーで記録が出来るような高感度かつ、入射面から遠い位置の記録層に効率よく記録光が到達できるような吸収の少ない高反射率の色素が求められている。
しかしながら、上記のような要求を十分満足するような色素は、未だ明らかになっていないのが現状である。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、8倍速以上の高速での記録が可能な光学記録媒体や、記録層を2層以上有する多層記録媒体の記録層に適用可能なアゾ金属キレート色素を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上述したアゾ金属キレート色素を用いた光学記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、高感度かつ高反射率の特性を有するアゾ金属キレート色素を得ることを目標とした。具体的には、ピリミジン環をジアゾ成分に有するアゾと金属とのキレート色素に特定の構造を導入することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
かくして本発明によれば、下記一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなることを特徴とするアゾ金属キレート色素が提供される。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、Rは置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基である。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、RとR、RとR6、とRは、互いに結合して環を形成していても良い。Yは少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基である。上記一般式(1)の化合物からプロトンが脱離したものと金属からキレート色素を構成する。)
【0012】
また、前記金属は、Ni、Co、Cu又はPdの何れかであることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、下記一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物とNiとからなることを特徴とするアゾ金属キレート色素が提供される。
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(2)中、R11は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基である。R14は、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基である。R15〜R20は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。上記一般式(2)の化合物からプロトンが脱離したものと金属とからキレート色素を構成する。)
【0016】
また、前記一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物は、R11が炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、R12が無置換もしくはハロゲン置換のアルキル基又はアリール基、R13が水素原子、R14が炭素数1〜6の直鎖アルキル基又は炭素数3〜8の分岐アルキル基、R15〜R20が水素原子であることが好ましい。
【0017】
次に、本発明によれば、前述した一般式(1)又は一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなるアゾ金属キレート色素を含有する記録層を有することを特徴とする光学記録媒体が提供される。
ここで、本発明が適用される光学記録媒体は、記録層を2以上有し、少なくとも1つの記録層が一般式(1)又は一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなるアゾ金属キレート色素を含有することが好ましい。
また、光学記録媒体は、8倍速以上での記録が可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速記録が可能な光学記録媒体や、記録層を多層有する光学記録媒体の記録層に適したアゾ金属キレート色素および光学記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態という。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
以下、本実施の形態が適用されるアゾ金属キレート色素について説明する。
本実施の形態が適用されるアゾ金属キレート色素は、下記一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物と金属とがキレート結合することにより形成される。
一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物は、ピリミジン環をジアゾ成分とし、フッ素置換アルキルスルホニルアミノ基とアミノ基とを少なくとも有するカップラー成分が結合することにより形成される。このような構造のアゾ金属キレート色素を記録層に含有する光学記録媒体は耐候性に優れ、色素の高い吸光係数から反射率が向上する。さらに、上記ジアゾ成分のピリミジン環がエステル基で置換されていることにより、耐光性に優れる。これは電子吸引基がピリミジン環に置換することで、ピリミジン環の電子密度が低下し、キレートしている金属からの電子のバックドネーションが増加することにより安定化したためと考えられる。
【0021】
【化3】

【0022】
(一般式(1)中、Rは置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、RとR、RとR6、とRは、互いに結合して環を形成していても良い。Yは少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基であり、上記一般式(1)の化合物からプロトンが脱離したものと金属からキレート色素を構成する。)
【0023】
一般式(1)において、Rは置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基、又は置換されていてもよいシクロアルキル基である。Rとしては、例えば、置換されていない直鎖もしくは分岐のアルキル基、又は置換されていないシクロアルキル基、フッ素で置換された直鎖もしくは分岐のアルキル基、アルコキシ基で置換された直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。
【0024】
として好ましくは、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基等の炭素数が1以上4以下の直鎖もしくは分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3〜炭素数8のシクロアルキル基が挙げられる。
特に好ましくは、立体障害が小さいという理由から、メチル基、エチル基等の炭素数1〜炭素数2の直鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜炭素数6のシクロアルキル基が挙げられる。
のアルキル基又はシクロアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子の他、酸素や窒素、イオウ等典型元素を含む置換基等が挙げられるが、無置換であることが好ましい。
【0025】
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。ここで、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基としては、前記のRと同様のものが挙げられる。
アリール基としての芳香環は、例えば、ベンゼン、ナフタレン等が挙げられ、ヘテロ環基としてのヘテロ環としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン、フラン等の不飽和複素環;メルドラム酸、バルビツール酸、ピリドン、ピペリジン、モルフォリン、テトラヒドロフラン等の飽和複素環等が挙げられる。
【0026】
アリール基又はヘテロ環基に置換する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
中でも、R、Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロゲン置換アルキル基;フェニル基、ナフチル基等の芳香環;ペンタフルオロフェニル基等のハロゲン置換芳香環;ピリジン、ピリミジン等の不飽和複素環が好ましい。
【0027】
一般式(1)におけるピリミジン環がCOで置換されたジアゾ成分の具体的な化合物としては、下記の構造のものが好ましい事例として挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
一般式(1)におけるカップラー成分は、ベンゼン環がNHSOYで置換されている。ここでYは、少なくとも2個のフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基である。アルキル基としては、炭素数が1から6の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。Yのアルキル基としては、より好ましくは炭素数が1から3の直鎖アルキル基である。そして、置換されるフッ素原子の数は、通常2以上であり、一方、通常、7以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。Yとしては、具体的にはジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。Yとしては、特に好ましくは、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基が挙げられる。
【0030】
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基である。R、R、R、R及びRとしては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1から6の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシルメチル基等の炭素数3から8の分岐アルキル基が挙げられる。
【0031】
これらの直鎖及び分岐アルキル基は、さらに置換されていてもよい。直鎖又は分岐のアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニル基、ジアルキルアミノ基等が挙げられ、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1から8のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、シクロヘキシルメトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から9のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルメチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等の炭素数2から9のアルキルカルボニルオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロヘキシルメチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の炭素数2から9のアルキルカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルペンチルアミノ基等の炭素数2から16のジアルキルアミノ基;等が挙げられる。
【0032】
、R、R、R及びRとしては、好ましくは、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1から2のアルキル基である。上記アルキル基は無置換であることが好ましい。
【0033】
また、RとR、RとR6、とRは、それぞれ、互いに結合して環を形成していても良い。形成する環は限定されないが、例えば、飽和又は不飽和の3員環から8員環の炭素環又はヘテロ環が挙げられる。好ましい環としては、RとRもしくはRとRが互いに結合して5員環から7員環を形成し、一般式(1)に示された窒素原子以外が全て炭素で形成される飽和環が挙げられる。形成する環は置換基を有していても良い。最も好ましくは、RとRが互いに結合して5員環から7員環を形成し、一般式(1)に示された窒素原子以外が全て炭素で形成される飽和環であり、無置換もしくは1から3個のメチル基で置換されている場合である。
【0034】
一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物のうち、好ましい化合物として下記一般式(2)に示される化合物が挙げられる。
【0035】
【化5】

【0036】
(一般式(2)中、R11は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基であり、R12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基を表す。R14は、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、R15〜R20は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。上記一般式(2)の化合物からプロトンが脱離したものと金属からキレート色素を構成する。)
【0037】
一般式(2)においてR11は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基であり、具体的には前記一般式(1)におけるRと同様である。
【0038】
12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環であり、具体的には前記一般式(1)におけるR、Rと同様である。中でも、R12が無置換もしくはハロゲン置換のアルキル基又はアリール基であって、かつR13が水素原子であることが特に好ましい。
【0039】
14は、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基である。R14としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1から6の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシルメチル基等の炭素数3から炭素数8の分岐アルキル基等が挙げられる。これらのアルキル基は置換されていてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニル基、ジアルキルアミノ基などが挙げられ、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の炭素数1から炭素数8のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、シクロプロピルオキシカルボニル基、シクロヘキシルメトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から炭素数9のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルメチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等の炭素数2から炭素数9のアルキルカルボニルオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2−メチルブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロヘキシルメチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の炭素数2から炭素数9のアルキルカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルペンチルアミノ基等の炭素数2から炭素数16のジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、R14としては、炭素数1から炭素数6の無置換の直鎖アルキル基、又は炭素数3から炭素数8の無置換の分岐のアルキル基が好ましい。無置換の直鎖アルキル基を用いる場合、炭素数は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。また、R14の全炭素数は、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4以下である。R14として特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基である。
【0041】
15、R16、R17、R18、R19及びR20は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基を表す。直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基が特に好ましい。R15、R16、R17、R18、R19及びR20が炭素数1〜炭素数2のアルキル基である場合、炭素原子に結合している水素原子が他の置換基(例えばハロゲン原子)で置換されていてもよいが、無置換のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基が挙げられる。合成の容易さや立体構造の観点から、R15、R16、R17、R18、R19及びR20として最も好ましいのは、水素原子である。
【0042】
一般式(1)で表されるアゾ系色素化合物の分子量としては、通常、2,000以下である。なかでも、分子量が1,500以下のアゾ系色素化合物は、溶媒に対する溶解度が増大し、さらに、耐光性、耐候性、高反射率性に優れた色素が得られるので好ましい。一般式(1)で表されるアゾ系色素化合物のうち、化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
アゾ金属キレート色素に対しては、化学構造以外の制限は特にない。但し今後ますます必要とされる、短波長のレーザー光による記録再生可能な光学記録媒体への利用の点からは、色素単層膜について測定したときに波長700nm以下に吸収極大を有する色素がより好ましく、波長650nm〜500nmに吸収極大をもつ色素であれば更に好ましい。
【0046】
本発明のアゾ金属キレート色素において、一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物とキレートを形成する金属は限定されないが、Ni、Co、Cu又はPdの何れかであることが好ましく、特にNiが好ましい。金属として前記の金属を用いることにより、アゾ金属キレート色素の耐光性、耐候性等が向上する。これらの金属は3配座の配位子2個と6配位8面体構造の錯体を形成することができるため、本発明のアゾ金属キレート色素は極めて安定した記録材料になると考えられる。
【0047】
キレートを形成する金属の価数は特に限定されない。金属の有する+電荷と、配位子であるアゾ系色素化合物の有する−電荷がつりあわない場合には適当な対アニオンもしくはカチオンを用意すればよい。ただし本願の配位子2個と6配位8面体構造の錯体を形成するためには金属の価数は+2が好ましい。
本発明のアゾ金属キレート色素としては、一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物とNiとからなるキレート化合物が特に好ましい。
本発明のアゾ金属キレート色素を形成させる方法としては、溶媒中で配位子と金属塩を混合する方法が挙げられる。そのキレート形成の際には、上記一般式(1)又は一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物は、金属とキレートを形成するためプロトンが脱離される。脱離するプロトンは、当該アゾ系色素化合物の構造中のいずれのプロトンでも良いが、アミド部位の水素原子が好ましい。必要に応じてプロトン脱離を促進させるためにアミンやアルコキシド等の塩基を用いてもよい。
【0048】
以下、光学記録媒体について述べる。
本実施の形態が適用される光学記録媒体は、一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなるアゾ金属キレート色素を記録層に含有する。光学記録媒体の構成は限定されないが、通常、基板を有し、必要に応じて下引き層、反射層、保護層等を設けた層構成でも良い。好ましい層構成の一例としては、例えば、基板上に記録層、反射層および保護層を設けた光学記録媒体が挙げられる。
【0049】
以下、このような層構成を有する構造の光学記録媒体を例に、本実施の形態が適用される光学記録媒体について説明する。
本実施の形態が適用される光学記録媒体における基板の材料としては、基本的には、記録光及び再生光の波長で透明であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、非晶質ポリオレフィン等の高分子材料やガラス等の無機材料が利用される。高生産性、コスト、耐吸湿性、等の点からポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
これらの基板の材料は、射出成形法等により円盤状に基板として成形される。尚、必要に応じて、基板表面に案内溝やピットを形成することもある。このような案内溝やピットは、基板を成形するときに付与することが好ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を用いて付与することもできる。案内溝がスパイラル状の場合、この溝ピッチが0.4μm以上1.2μm以下程度であることが好ましく、特に好ましくは、0.6μm以上0.9μm以下程度である。
【0051】
溝深さは、AFM(原子間力顕微鏡)測定値で、通常100nm以上、200nm以下であり、特に、低速の1Xから高速の8X以上の範囲で記録可能であるためには、溝深さは150nm以上、180nm以下程度とすることが好ましい。溝深さが上記の下限値より大きい場合は、低速で変調度が出やすく、溝深さが上記の上限値より小さい場合は、充分な反射率を確保しやすい。溝幅は、AFM(原子間力顕微鏡)測定値で、通常0.20μm以上0.40μm以下である。高速記録用途には、溝幅は、0.28μm以上0.35μm以下とすることがさらに好ましい。溝幅が上記の下限値より大きい場合には、プッシュプル信号振幅が充分に得られやすい。また、基板の変形は記録信号振幅に大きく影響する。このため、溝幅を上記の下限値より大きくすれば、8X以上の高速で記録する場合において、熱干渉の影響を抑え、良好なボトムジッターを得ることが容易となる。さらに、記録パワーマージンが広くなり、レーザーパワーの変動に対する許容値が大きくなる等、記録特性や記録条件が良好となる。溝幅が前記の上限値より小さい場合には、1X等の低速記録において、記録マーク内の熱干渉を抑えることができ、良好なボトムジッター値が得られやすい。
【0052】
本実施の形態が適用される光学記録媒体には、アドレス情報、媒体の種類の情報、記録パルス条件、及び最適記録パワー等の情報を記録することができる。これらの情報を記録する形態としては、例えば、DVD−R、DVD+Rの規格書に記載されているLPPやADIPのフォーマット等を用いれば良い。
【0053】
本実施の形態が適用される光学記録媒体では、基板上、又は、必要に応じ下引き層等を設けた上に、上述したアゾ金属キレート色素を含有する記録層を形成する。このようなアゾ金属キレート色素を含有する記録層は高感度かつ高反射率が求められるが、本発明のアゾ金属キレート色素を含有する記録層はこれを満足することが出来る。特に、8X以上といった高速で記録することが可能な光学記録媒体や、後述する記録層を2以上有する多層媒体をも実現することが可能である。
【0054】
従来、高速記録に対応可能な記録層とする(色素を高感度化する)ためには、吸収波長を長波長化することにより、記録波長での吸収量を増大させていた。しかし、このような手法では、吸収量は増加するものの、反射率が低下するという問題があった。特に多層媒体では単層媒体よりも高い反射率が求められるため、より一層困難であった。
これに対し、本発明のアゾ金属キレート色素を含有する記録層を用いれば、高感度化、高反射率化の両立が可能である。本発明のアゾ金属キレート色素は、従来のアゾ金属キレート色素に比べて極めて高い吸光係数を有するため、屈折率の向上がはかられるので、吸収波長の長波長化に伴う反射率の低下を上回る反射率向上が見られると考えられる。
本発明のアゾ金属キレート色素は、更に12X以上、16X以上で記録することが可能な光学記録媒体に使用することもできる。その場合には他の色素との併用が好ましい。
【0055】
本実施の形態が適用される光学記録媒体における記録層の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている薄膜形成法が挙げられる。量産性、コスト面からスピンコート法が特に好ましい。
【0056】
スピンコート法による成膜の場合、回転数は500rpm〜10000rpmが好ましい。スピンコートの後、場合によっては、加熱又は溶媒蒸気にあてる等の処理を行っても良い。ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の塗布方法により記録層を形成する場合の塗布溶媒としては、基板を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。塗布溶媒としては、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
本発明において、記録層中の本発明のアゾ金属キレート色素の含有量は、本発明の効果が得られる限り特に限定されるものではないが、通常、0.1〜100重量%、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%である。
【0057】
記録層を成膜する際に、必要に応じて、上記の色素に、クエンチャー、紫外線吸収剤、接着剤等の添加剤を混合してもよい。又は、クエンチャー効果、紫外線吸収効果等各種の効果を有する置換基を上記色素に導入することも可能である。記録層の耐光性や耐久性向上のために加える一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート系、ビスジチオ−α−ジケトン系やビスフェニルジチオール系等のビスジチオール系、チオカテコール系、サリチルアルデヒドオキシム系、チオビスフェノレート系等の金属錯体が好ましい。またアミン系化合物も好適である。
【0058】
また、記録特性等の改善のために、他の色素を併用してもよい。さらに、高速記録と低速記録を両立できるように、本実施の形態が適用されるアゾ金属キレート色素と低速記録用の色素を併用しても良い。但し、その配合比率は、アゾ金属キレート色素の重量に対して60%未満、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。一方、上記低速記録用の色素を併用する場合には、配合比率は通常0.01%以上とする。低速記録用の色素の配合比率が過度に大きい場合には、8X以上高速記録に必要な記録感度が十分得られない可能性がある。本発明のアゾ金属キレート色素は他の高速記録用色素と併用しても良い。
【0059】
併用可能な色素としては、例えば、一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物と同系統のアゾ系色素化合物が挙げられる。また、併用可能な色素としては、上記特定の特性又は構造を有するアゾ金属キレート色素と同系統の、アゾ系色素又はアゾ系金属キレート色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ポルフィリン系色素、テトラピラポルフィラジン系色素、インドフェノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、インダンスレン系色素、インジゴ系色素、チオインジゴ系色素、メロシアニン系色素、ビスピロメテン系色素、チアジン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素、インドアニリン系色素等が挙げられ、他系統の色素でもよい。また、色素の熱分解促進剤としては、例えば、金属系アンチノッキング剤、メタロセン化合物、アセチルアセトナト系金属錯体等の金属化合物が挙げられる。
【0060】
さらに、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0061】
記録層(色素層)の膜厚は、特に限定するものではないが、好ましくは10nm以上300nm以下である。色素層の膜厚が前記の下限値より大きい場合は、熱拡散の影響を抑えることができ、良好な記録がしやすい。また、記録信号に歪みが発生しにくいため、信号振幅を大きくしやすい。色素層の膜厚が前記の上限値より小さい場合は、反射率を高くしやすく、再生信号特性を良好としやすい。
【0062】
また、記録層の溝部膜厚は、通常、30nm以上180nm以下、好ましくは、50nm以上90nm以下であり、溝間部膜厚は、通常、10nm以上100nm以下、好ましくは、30nm以上70nm以下である。溝部膜厚又は溝間部膜厚が上記の下限値より大きい場合には、アドレス情報(LPPやADIP)の振幅を大きくでき、エラーの発生を抑えやすい。溝部膜厚又は溝間部膜厚が上記の上限値より小さい場合には、記録マーク内の蓄熱の影響及びクロストークが大きくなるのを抑えることができ、ボトムジッターが良好となりやすい。
【0063】
本実施の形態が適用される光学記録媒体は、上述の特定の特性又は構造を有するアゾ金属キレート色素を含有する記録層と、上記基板に設けた溝形状と、を組み合わせることにより、反射率を40%以上とすることができる。このため、例えば、DVD−ROMと再生互換のあるDVD−R(規格上、DVD−R、DVD+Rの2つがあるが、以下、総称してDVD−Rと記載する。)を実現することができる。尚、反射率は、光ディスクの溝上にトラッキングをかけた場合の、650nm+10nm−5nmの波長範囲のレーザーをピックアップに搭載したディスク再生機(例えば、DVDプレーヤー、DVD−ROM検査機、DVDドライブ)で測定した反射率のことを言う。
【0064】
次に、記録層の上に、好ましくは、厚さ50nm〜300nmの反射層を形成する。反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta及びPdの金属を単独又は合金にして用いることが可能である。この中でも、Au、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。特に、Ag及びAg合金が、高反射率、高熱伝導度に優れ好ましい。また、これらの金属以外でも下記のものを含んでいてもよい。例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属を挙げることができる。これらの中でも、Agを主成分としているものは、コストが安い点、アゾ金属キレート色素と組み合わせたときに反射率が向上する傾向がある点、更に、後に述べる印刷受容層を設ける場合には地色が白く美しいものが得られる点、等から、特に好ましい。ここで主成分とは含有率が50%以上のものをいう。本発明のアゾ金属キレート色素は、Agとの物理的、化学的相互作用が小さいので、Agを用いた反射層を使用しても、光学記録媒体のライフ(経時的な安定性)が長い。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0065】
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板の上や反射層の下に、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系又は有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0066】
反射層の上に形成する保護層の材料としては、反射層を外力から保護するものであれば特に限定しない。例えば、有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、SiO、SiN、MgF、SnO等が挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。UV硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料は単独で又は混合して用いてもよいし、1層だけでなく多層膜にして用いてもよい。
【0067】
保護層の形成の方法としては、記録層と同様に、スピンコート法やキャスト法等の塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。保護層の膜厚は、通常、0.1μm以上、100μm以下の範囲である。本実施の形態においては、保護層の膜厚は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、一方、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下とする。
【0068】
尚、本実施の形態は、上記の態様に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、光学記録媒体が2以上の複数の記録層を有していてもよい。また、反射層面に溝を持たないいわゆるダミー基板と呼ばれる基板を貼り合わせる、又は、反射層面相互を内側とし、対向させた2枚の光学記録媒体を貼り合わせる等の手段を用いてもよい。基板鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂、無機系薄膜等を成膜してもよい。さらに、反射層上に設けた保護層の上に、又は、反射層面に貼りあわせた基板の上等に、更に、印刷受容層を形成することもできる。
【0069】
(多層媒体)
本実施の形態が適用される光学記録媒体としては、記録層を2以上有する多層媒体としても好ましく適用することができる。多層媒体としては、光学記録媒体の両面から光を照射して記録、再生を行う媒体であっても、光学記録媒体の片面から光を照射して記録、再生を行う媒体であってもよい。中でも、片面から光を照射して記録、再生を行うタイプの媒体に好適に用いることが出来る。これは、本発明のアゾ金属キレート色素を含有する記録層が、高感度かつ高反射率であるためである。
【0070】
本実施の形態が適用される多層媒体は、記録層を2以上有するものであれば、記録層の数は限定されないが、通常2〜5層、好ましくは2〜3層である。また、層構成は限定されないが、通常、個々の記録層は中間層等の他の層を介して存在する。また、個々の記録層は、それぞれ反射層と組み合わせた層構成であることが好ましい。
記録層を2層有し、片面から光を照射して記録、再生を行う方式の多層媒体の層構成を例示すれば、基板/第1記録層/第1反射層/中間層/第2記録層/第2反射層/保護層といった構成が挙げられ、これら各層の間には、適宜、他の層を有していてもよい。
【0071】
本発明のアゾ金属キレート色素は、基板に一番近い記録層(第1記録層)に使用することが好ましい。本発明の色素は、記録レーザー波長における光吸収量が小さいことから、これをレーザー入射側に近い記録層に用いた場合、遠い側の記録層へ透過する光強度が相対的に増加し、その結果、遠い側の層の記録に要するレーザーパワーの減少を少なくすることができる。
【0072】
多層媒体において、2以上の記録層を介するための中間層は、単層膜で構成されていても多層膜であってもよい。中間層は、通常、透明かつ案内溝の形成が可能であり、また、接着力が高い樹脂から構成される。さらに、硬化接着時の収縮率が小さい樹脂を用いると、媒体の形状安定性が高く好ましい。
また、中間層は隣接する記録層にダメージを与えない材料からなることが望ましい。中間層を構成する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を挙げることができる。尚、中間層の材料は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中間層の材料の中でも、放射線硬化性樹脂が好ましく、その中でも、紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル系(ラジカル重合型の)紫外線硬化性樹脂とカチオン系(カチオン重合型の)紫外線硬化性樹脂が挙げられ、いずれも使用することができる。
【0073】
ラジカル系紫外線硬化性樹脂は、例えば、紫外線硬化性化合物(ラジカル系紫外線硬化性化合物)と光重合開始剤を成分として含む組成物が用いられる。ラジカル系紫外線硬化性化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。これらは、各々、一種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。尚、ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。
【0074】
光重合開始剤に制限はないが、例えば、分子開裂型又は水素引き抜き型のものが好ましい。本発明においては、ラジカル重合型のアクリル酸エステルを主体とする未硬化の紫外線硬化樹脂前駆体を用いて、これを硬化させて中間層を得ることが好ましい。
【0075】
一方、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、遊離した塩素および塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが好ましい。塩素の量は、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
また、カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0076】
中間層には、通常、前記した基板と同様に案内溝が形成されている。基板に形成された案内溝の形状と、中間層に形成された案内溝の形状は、同一であっても、異なっていてもよい。
中間層の膜厚は限定されないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常、100μm以下、好ましくは70μm以下である。中間層の膜厚は均一であることが望ましい。
【0077】
中間層の形成方法に制限はなく任意であるが、通常は、以下のようにして形成される。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いた中間層は、適当な溶剤に熱可塑性樹脂等を溶解して塗布液を調製する。そして、この塗布液を塗布し、乾燥(加熱)することによって、中間層を形成することができる。
一方、放射線硬化性樹脂を用いた中間層は、そのまま若しくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、この塗布液を塗布して適当な放射線を照射して硬化させることによって形成することができる。
【0078】
尚、塗布方法に制限はなく、例えばスピンコート法やキャスト法等の塗布法等の方法が用いられる。この中でも、スピンコート法が好ましい。特に、高粘度の樹脂を用いた中間層は、スクリーン印刷等によっても塗布形成できる。
本実施の形態が適用される多層媒体において、本発明のアゾ金属キレート色素は何れの記録層に用いても良い。
本発明において、多層記録層中の本発明のアゾ金属キレート色素の含有量は、本発明の効果が得られる限り特に限定されるものではないが、1つの記録層中には、通常、0.1〜100重量%、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%である。
【0079】
上記のようにして得られた光学記録媒体への記録は、通常、基板の両面又は片面に設けた記録層にレーザー光を当てることにより行う。レーザー光の照射された部分には、一般に、レーザー光エネルギーの吸収による分解、発熱、溶融等の記録層の熱的変形が起こる。記録された情報の再生は、通常、レーザー光により熱的変形が起きている部分と起きてない部分の反射率の差を読みとることにより行う。
【0080】
記録・再生に使用するレーザーに特に限定はないが、例えば、可視領域の広範囲で波長選択のできる色素レーザー、波長633nmのヘリウムネオンレーザー、最近開発されている波長680nm、660nm、650nm、635nm付近の高出力半導体レーザー、400nm近傍のブルーレーザー、波長532nmの高調波変換YAGレーザー等が挙げられる。中でも、軽量性、取り扱いの容易さ、コンパクト性、コスト等の点で、半導体レーザーが好適である。本実施の形態が適用される光学記録媒体は、これらから選択される一波長又は複数波長において高密度記録及び再生が可能となる。本発明のアゾ金属キレート色素にとって好ましい半導体レーザーの波長範囲は、600nm以上、700nm以下であり、より好ましくは630nm以上、680nm以下、さらに好ましくは640nm以上、680nm以下である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本実施の形態を具体的に説明する。但し、本実施例はその要旨を超えない限り本実施の形態を限定するものではない。
(実施例1)
(a)化合物製造例
(ジアゾカップリング)
構造式1bで示される化合物4.3gをエタノール11mlに溶解し、酢酸3.5g、ヨウ素0.04g、構造式1aで示される化合物2gを加えた。さらに30%過酸化水素水をエタノール11mlに溶解させたものを室温で滴下した。析出した固体を濾過、精製して下記構造式1cで示されるアゾ化合物1.7gを得た。
【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
【化10】

【0085】
(含金化)
構造式1cで示されるアゾ化合物1.6gをテトラヒドロフラン16mlに溶解し、ここに酢酸ニッケル4水和物0.44gをメタノール4mlに溶解したものを室温で滴下した。析出した固体を濾過、乾燥し、アゾニッケルキレート色素1.5gを得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は581nm、グラム吸光係数は160L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は596nmであった。
【0086】
(b)記録例
このように調製したアゾ金属キレート色素1.5重量%のTFP(2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(以下、TFPという))溶液を、トラックピッチ0.74μm、溝深さ160nm、溝幅0.32μmの案内溝が形成された透明ポリカーボネート基板上にスピンコートし、80℃20分乾燥させた。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであった。この記録層の上に銀を120nmスパッタした後、紫外線硬化樹脂を厚さ3μmスピンコートし、さらに、溝を持たない透明ポリカーボネート基板を、接着剤をスピンコートした後に貼り合わせて光学記録媒体を製造した。
【0087】
この光学記録媒体に対し、波長650nm、開口数0.65の記録再生装置でDVD−R Specification for General Ver.2.1に準拠した記録パルスストラテジー条件を用い、記録速度28.0m/s(DVD−Rの8倍速:8Xに相当)、最短マーク長が0.4μmであるEFMプラス変調のランダム信号記録を行った。
その後、同じ評価機を用いて記録した部分の信号を3.5m/s(DVD−Rの1倍速に相当)で再生し、ボトムジッター(data to clock jitter)を測定した。また、同評価機から出力された電圧値を換算した値として反射率を測定した(反射率と電圧は比例する)。尚、ボトムジッター値は9.0%未満、さらに好ましくは8.0%未満であることが好ましい。反射率はより高い方が好ましい。
測定の結果、8X記録感度は、34.0mW、ボトムジッターは6.1%と良好であった。また反射率も52%と高い値が得られ、良好であった。
【0088】
(実施例2)
実施例1における構造式1bで示される化合物を下記の構造式2bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式2cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は583nm、グラム吸光係数は168L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は598nmであった。
【0089】
【化11】

【0090】
【化12】

【0091】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同一の条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は34.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.2%、反射率は52%と良好な結果であった。
【0092】
(実施例3)
実施例1における構造式1bで示される化合物を下記の構造式3bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式3cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は584nm、グラム吸光係数は165L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は598nmであった。
【0093】
【化13】

【0094】
【化14】

【0095】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は33.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.3%、反射率は50%と良好な結果であった。
【0096】
(実施例4)
実施例1における構造式1bで示される化合物を下記の構造式4bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式4cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は586nm、グラム吸光係数は161L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は600nmであった。
【0097】
【化15】

【0098】
【化16】

【0099】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は34.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.1%、反射率は51%と良好な結果であった。
【0100】
(実施例5)
実施例1における構造式1aで示される化合物を下記の構造式5aに変更し、実施例1における構造式1bで示される化合物を構造式2bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式5cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は579nm、グラム吸光係数は205L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は598nmであった。
【0101】
【化17】

【0102】
【化18】

【0103】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は36.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.0%、反射率は54%と良好な結果であった。
【0104】
(実施例6)
実施例1における構造式1aで示される化合物を下記の構造式6aに変更し、実施例1における構造式1bで示される化合物を構造式2bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式6cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は582nm、グラム吸光係数は185L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は597nmであった。
【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は38.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.5%、反射率は51%と良好な結果であった。
【0108】
(実施例7)
実施例1における構造式1aで示される化合物を構造式6aに変更し、実施例1における構造式1bで示される化合物を構造式4bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式7cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は586nm、グラム吸光係数は183L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は600nmであった。
【0109】
【化21】

【0110】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は38.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.4%、反射率は50%と良好な結果であった。
【0111】
(比較例1)
実施例1における構造式1aで示される化合物を下記の構造式8aで示される化合物に変更し、実施例1における構造式1bで示される化合物を実施例2で使用した構造式2bで示される化合物に変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式8cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は568nm、グラム吸光係数は180L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は585nmであった。
【0112】
【化22】

【0113】
【化23】

【0114】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を実施した。この時、8X記録感度は43.0mW、1X再生時のボトムジッターは6.5%、反射率は50%となった。反射率とボトムジッタ−は良好なものの、実施例と比較して記録感度が悪い結果となった。
【0115】
(比較例2)
実施例1における構造式1aで示される化合物を下記の構造式9aに変更し、実施例1における構造式1bで示される化合物を下記の構造式9bに変更し、実施例1と同様の方法で反応させることにより、下記構造式9cで示されるアゾ化合物とニッケルとのアゾニッケルキレート色素を得た。
このアゾニッケルキレート色素のクロロホルム中での最大吸収波長は522nm、グラム吸光係数は146L/g・cm、塗布膜の吸収極大波長は561nmであった。
【0116】
【化24】

【0117】
【化25】

【0118】
【化26】

【0119】
上記色素を用いる以外は、実施例1と同様な条件で光学記録媒体を作成した。この記録層の溝間部膜厚は40nm、溝部膜厚は85nmであり、実施例1の色素とほぼ同一であった。
次に、実施例1と同様な条件でこのディスクについて記録再生を試みた。しかしながら、テスターの上限パワーである55mWをかけても8Xでは全く記録することができなかった。そこで反射率のみ測定したところ60%であった。
【0120】
実施例1〜実施例7と比較例1及び比較例2における結果を表1に示す。表1に示す結果から、実施例1〜実施例7は、比較例1及び比較例2と比べると、いずれも記録感度において優れた結果が得られることが分かる。
【0121】
【表1】

【0122】
(実施例8)
2層媒体を作製し、Layer0の記録特性を評価した。ここで、Layer0は基板に近い側の記録層(第1記録層)を意味し、Layer1はレーザー入射に遠い側の記録層(第2記録層)を意味する。
Layer0としては、前記の構造式2cで示されるアゾニッケルキレート色素と、下記構造式10cで示されるアゾ化合物と亜鉛とのアゾ亜鉛キレート色素とを、50:50(重量比)で混合したものを用いた。尚、Layer1としては、下記構造式10cで示されるアゾ化合物と亜鉛とのアゾ亜鉛キレート色素を用いた。
【0123】
また、第1反射層としてAgBi1.0合金を20nmの膜厚で形成し、第2反射層としてAgを120nmの膜厚で形成し、中間層として紫外線硬化性樹脂を50μmの膜厚で形成した。トラックピッチは何れも0.74μm、溝深さは何れも170nm、溝幅は何れも0.31μmとした。Layer0の溝間部膜厚は30nm、溝部膜厚は70nmであった。また、Layer1の溝間部膜厚は35nm、溝部膜厚は75nmであった。
【0124】
この光学記録媒体に対し、波長650nm、開口数0.65の記録再生装置でDVD+R 8.5Gbytes Basic Format Specifications version 1.1に準拠した記録パルスストラテジー条件を用い、記録速度46.1m/s(DVD+Rの12倍速:12Xに相当)、最短マーク長が0.44μmであるEFMプラス変調のランダム信号記録を行った。その後、同じ評価機を用いて記録した部分の信号を3.84m/sで再生し、ボトムジッター(data to clock jitter)を測定した。
評価の結果、Layer0の12X記録感度は53.0mW、1X再生時のボトムジッターは7.5%、反射率は17%と良好な結果であった。
【0125】
【化27】

【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、高速記録が可能な光学記録媒体や、記録層を多層有する光学記録媒体の記録層に適したアゾ金属キレート色素および光学記録媒体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアゾ系色素化合物と金属とからなることを特徴とするアゾ金属キレート色素。
【化1】

(一般式(1)中、Rは置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基である。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、RとR、RとR6、とRは、互いに結合して環を形成していても良い。Yは、少なくとも2つのフッ素原子で置換されている直鎖又は分岐のアルキル基である。上記一般式(1)の化合物からプロトンが脱離したものと金属とからキレート色素を構成する。)
【請求項2】
前記金属が、Ni、Co、Cu又はPdの何れかであることを特徴とする請求項1に記載のアゾ金属キレート色素。
【請求項3】
下記一般式(2)で示されるアゾ系色素化合物とNiとからなることを特徴とするアゾ金属キレート色素。
【化2】

(一般式(2)中、R11は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基又は、置換されていてもよいシクロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいヘテロ環基である。R14は、置換されていてもよい直鎖又は分岐のアルキル基である。R15〜R20は、それぞれ独立して、水素原子又は置換されていてもよい直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。上記一般式(2)の化合物からプロトンが脱離したものと金属とからキレート色素を構成する。)
【請求項4】
前記一般式(2)のR11が炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、R12が無置換もしくはハロゲン置換のアルキル基又はアリール基、R13が水素原子、R14が炭素数1〜6の直鎖アルキル基又は炭素数3〜8の分岐アルキル基、R15〜R20が水素原子であることを特徴とする請求項3に記載のアゾ金属キレート色素。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のアゾ金属キレート色素を含有する記録層を有することを特徴とする光学記録媒体。
【請求項6】
記録層を2以上有し、少なくとも1つの記録層が前記アゾ金属キレート色素を含有することを特徴とする請求項5に記載の光学記録媒体。
【請求項7】
8倍速以上での記録が可能であることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学記録媒体。

【公開番号】特開2008−106268(P2008−106268A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254899(P2007−254899)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】