アダパレンを調製するための方法
【課題】式(I)の化合物またはその塩の調製方法の提供。
【解決手段】Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得るステップを含む。
【解決手段】Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(I)の化合物を得るステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダパレンおよびその合成に有用な中間体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の化学式を有するアダパレン、すなわち6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸
【0003】
【化1】
は、米国特許第4,717,720号に開示され、皮膚科において、特に尋常性ざ瘡および乾癬の治療のために使用される。
【0004】
米国特許第4,717,720号によれば、合成は、触媒である遷移金属またはその錯体の存在下無水溶媒中で、式(A)の化合物のマグネシウム、リチウムまたは亜鉛誘導体と式(B)の化合物のカップリング反応によって行われる。
【0005】
【化2】
式中、XおよびYはCl、Br、FまたはI、Rは水素またはアルキル、Adは1−アダマンチルである。
【0006】
調製のコストを下げる目的で、代替の合成手法がいくつか提案されている。驚くべきことに、本発明の代替の合成法が特に有利であることが判明した。この方法は、中間体として入手が容易でコストの低い6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸アルキルエステルを利用し、良好な収率を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明はアダパレンおよびその合成に有用な中間体の合成法方法を提供することである、
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一目的は、式(I)の化合物またはその塩
【0009】
【化3】
(式中、Rは、H、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を調製する方法であって、
Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で、式(II)の化合物
【0010】
【化4】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、C1〜C8アルキル、アリール、アリール−C1〜C8アルキルであり、あるいはR1とR2が一緒になって−(CH2)m−V−(CH2)n−基を形成し、VはNR3またはC(R3)2であり、R3は水素、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルであり、mおよびnは、同じでも異なっていてもよいが、1または2である)を
式(III)の化合物
【0011】
【化5】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立にC1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)と反応させて、式(I)の化合物(式中、Rは、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を得るステップと、望むならば、Rが水素である式(I)の化合物またはその塩へ転換するステップとを含む方法である。
【0012】
式(I)の化合物の塩は、通常薬剤として許容される塩であり、たとえばアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩である。
【0013】
基またはアルキル残基は、直鎖でも分枝でもよい。C1〜C8アルキル基または残基は、好ましくはC1〜C4アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたは第三級ブチル、より好ましくはメチルまたはエチルである。
【0014】
アリール基は、たとえばフェニルまたはナフチルである。
【0015】
アリール−C1〜C8アルキル基は、好ましくはベンジルまたはフェネチル基である。
【0016】
Ni(II)の塩は、たとえば塩化、臭化、ヨウ化、酢酸、アセチル酢酸、炭酸または水酸化ニッケル(II)であり、好ましくは塩化ニッケルである。
【0017】
有機リガンドは、通常トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、dppp(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppe(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppf(ジフェニルホスフィノフェロセン)などのホスフィン、好ましくはトリシクロヘキシルホスフィンまたはトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンである。
【0018】
塩基性試剤は、直鎖や分枝の第三級アミンなどの有機塩基、具体的にはジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミン、あるいは炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、リン酸水素カリウムなどの無機塩基でよく、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、およびリン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、特に炭酸カリウムまたはリン酸カリウムがよい。
【0019】
反応は、有機溶媒、一般に、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル;あるいは前記溶媒の2種以上の、通常は2種もしくは3種の混合物、または1種もしくは複数の、通常は1種、2種もしくは3種の前記溶媒と水との混合物の存在下で行うことができる。反応は、好ましくはテトラヒドロフラン/水混合物中で行う。
【0020】
式(II)の化合物の式(III)の化合物に対する化学量論比は、約2〜0.5モル/モル、好ましくは2〜1モル/モル、より好ましくは1.3〜1モル/モルの範囲でよい。
【0021】
化合物(III)の塩基性試剤に対する化学量論比は、約1〜5モル/モル、好ましくは1.5〜2.5モル/モルの範囲である。
【0022】
ニッケル塩の式(III)の化合物に対する化学量論比は、約0.5〜0.01モル/モル、好ましくは0.08〜0.02モル/モルの範囲でよい。
【0023】
有機リガンドのニッケル塩に対する比は、約10〜2モル/モル、好ましくは6〜3モル/モルの範囲でよい。
【0024】
反応は、およそ0℃から反応混合物の還流温度まで、好ましくは30℃から還流温度までの温度、より好ましくは混合物の還流温度で行うことができる。
【0025】
Rが、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである式(I)の化合物の、Rが水素である別の化合物(I)またはその塩への転換は、公知の方法、たとえば米国特許第4,717,720号に開示の方法で行うことができる。
【0026】
またR1およびR2が水素である上記で定義の式(II)の化合物は、脱水ポリマーの形、通常は3量体(ボロキシン)と平衡に存在することができる。
【0027】
式(II)の化合物は、公知の方法に従って得ることができる。たとえば、R1およびR2が水素またはアルキルである化合物(II)は、3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンをn−BuLiと、次いでホウ酸トリアルキルと反応させることによって、または3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンをマグネシウムと反応させ、続いてホウ酸トリアルキルを付加して、対応するグリニャール試薬に変形することによって、また望むならば、アルキルエステルを加水分解することによって得ることができる。場合によっては、得られた酸を次いで、上記で定義の対応するエステル(II)に転換することができる。
【0028】
化合物(III)は、たとえばGreen, T. 「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版、Wiley社刊、197頁に教示されるように、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エステルから出発して、公知の方法に従って得ることができる。
【0029】
3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンおよび6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エステルは、市販の製品である。
【0030】
本発明の別の目的は、本発明の方法で得ることができ、本明細書で定義される、式(I)の純度が非常に高い結晶性の化合物またはその塩である。純度が非常に高い化合物とは、99.50%を超える、特に99.95%を超える純度のものをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0032】
実施例1
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸メチルエステル[アダパレンメチルエステル]の合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(20ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)をその混合物に加え、1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(7g;24.4mmol)、水(0.88g;48.8mmol)およびTHF(50ml)を加える。混合物を還流下で24時間加熱し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、pHを酢酸で7未満の値に調整する。温度15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それにより結晶性アダパレンメチルエステル(8.5g;20.08mmol)を収率82%で得る。
【0033】
1H NMR:(300MHz,DMSO),δ8.6(s,1H),δ8.3−7.8(m,6H),δ7.7−7.5(m,2H),δ7.1(d,1H),δ3.9(s,3H),δ3.85(s,3H),δ2(m,9H)、δ1.7(m,6H)。
【0034】
実施例2
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸ナトリウム塩[アダパレンナトリウム塩]の合成
アダパレンメチルエステル(7g;16.41mmol)、THF(42ml)、水(7ml)および50%重量/重量水酸化ナトリウム水溶液(1.44g;18.05mmol)を丸底フラスコに入れる。混合物を6時間還流し、次いで水(133ml)を加え、THFを残留含有量が約5%重量/重量になるまで留去し、温度約80℃に加熱し、固体を完全に溶解し、次いで15℃に冷却する。結晶化した生成物をろ過し、静置乾燥器内で温度50℃で真空乾燥し、アダパレンナトリウム塩(6.7g;15.42mmol)を収率94%で得る。
【0035】
実施例3
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸[アダパレン]の合成
アダパレンナトリウム塩(6.7g;15.42mmol)、THF(40ml)および水(7ml)を丸底フラスコに入れ、混合物を還流し、固体を完全に溶解する。得られる溶液を3%重量/重量酢酸水溶液中に滴下し、60〜70℃を超える温度に保って、アダパレン酸(6.3g;15.27mmol)を沈殿させ、その沈殿をろ過し、温度50〜60℃で真空乾燥する。収率は95%である。
【0036】
実施例4
アダパレンメチルエステルの合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(20ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)を加える。その混合物を1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(9.1g;31.8mmol)、水(10.53g;585.3mmol)およびTHF(50ml)を加える。混合物を24時間還流し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、酢酸でpH7未満に調整する。15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(9g;21.2mmol)を収率86%で得る。
【0037】
実施例5
アダパレンメチルエステルの合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(15ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)を加える。その混合物を1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、炭酸カリウム(6.75g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(9.1g;31.8mmol)、水(8.11g;450.5mmol)およびTHF(30ml)を加える。混合物を24時間還流し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、酢酸でpH7未満に調整する。15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(9.37g;21.96mmol)を収率90%で得る。
【0038】
実施例6
アダパレンメチルエステルの合成
6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、THF(70ml)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(7g;24.4mmol)、トリ(シクロヘキシル)ホスフィンを配位させた塩化ニッケル(0.83g;1.2mmol)およびトリ(シクロヘキシル)ホスフィン(1.37g;4.88mmol)を丸底フラスコに入れる。その混合物を24時間還流し、次いで温度50〜55℃に冷却し、水を加え、次いで15℃に冷却する。得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(8.1g;19.0mmol)を収率78%で得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダパレンおよびその合成に有用な中間体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の化学式を有するアダパレン、すなわち6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸
【0003】
【化1】
は、米国特許第4,717,720号に開示され、皮膚科において、特に尋常性ざ瘡および乾癬の治療のために使用される。
【0004】
米国特許第4,717,720号によれば、合成は、触媒である遷移金属またはその錯体の存在下無水溶媒中で、式(A)の化合物のマグネシウム、リチウムまたは亜鉛誘導体と式(B)の化合物のカップリング反応によって行われる。
【0005】
【化2】
式中、XおよびYはCl、Br、FまたはI、Rは水素またはアルキル、Adは1−アダマンチルである。
【0006】
調製のコストを下げる目的で、代替の合成手法がいくつか提案されている。驚くべきことに、本発明の代替の合成法が特に有利であることが判明した。この方法は、中間体として入手が容易でコストの低い6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸アルキルエステルを利用し、良好な収率を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明はアダパレンおよびその合成に有用な中間体の合成法方法を提供することである、
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一目的は、式(I)の化合物またはその塩
【0009】
【化3】
(式中、Rは、H、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を調製する方法であって、
Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で、式(II)の化合物
【0010】
【化4】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、C1〜C8アルキル、アリール、アリール−C1〜C8アルキルであり、あるいはR1とR2が一緒になって−(CH2)m−V−(CH2)n−基を形成し、VはNR3またはC(R3)2であり、R3は水素、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルであり、mおよびnは、同じでも異なっていてもよいが、1または2である)を
式(III)の化合物
【0011】
【化5】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立にC1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)と反応させて、式(I)の化合物(式中、Rは、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を得るステップと、望むならば、Rが水素である式(I)の化合物またはその塩へ転換するステップとを含む方法である。
【0012】
式(I)の化合物の塩は、通常薬剤として許容される塩であり、たとえばアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩である。
【0013】
基またはアルキル残基は、直鎖でも分枝でもよい。C1〜C8アルキル基または残基は、好ましくはC1〜C4アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたは第三級ブチル、より好ましくはメチルまたはエチルである。
【0014】
アリール基は、たとえばフェニルまたはナフチルである。
【0015】
アリール−C1〜C8アルキル基は、好ましくはベンジルまたはフェネチル基である。
【0016】
Ni(II)の塩は、たとえば塩化、臭化、ヨウ化、酢酸、アセチル酢酸、炭酸または水酸化ニッケル(II)であり、好ましくは塩化ニッケルである。
【0017】
有機リガンドは、通常トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、dppb(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、dppp(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、dppe(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、dppf(ジフェニルホスフィノフェロセン)などのホスフィン、好ましくはトリシクロヘキシルホスフィンまたはトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンである。
【0018】
塩基性試剤は、直鎖や分枝の第三級アミンなどの有機塩基、具体的にはジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミン、あるいは炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、リン酸水素カリウムなどの無機塩基でよく、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、およびリン酸カリウムまたはリン酸ナトリウム、特に炭酸カリウムまたはリン酸カリウムがよい。
【0019】
反応は、有機溶媒、一般に、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル;あるいは前記溶媒の2種以上の、通常は2種もしくは3種の混合物、または1種もしくは複数の、通常は1種、2種もしくは3種の前記溶媒と水との混合物の存在下で行うことができる。反応は、好ましくはテトラヒドロフラン/水混合物中で行う。
【0020】
式(II)の化合物の式(III)の化合物に対する化学量論比は、約2〜0.5モル/モル、好ましくは2〜1モル/モル、より好ましくは1.3〜1モル/モルの範囲でよい。
【0021】
化合物(III)の塩基性試剤に対する化学量論比は、約1〜5モル/モル、好ましくは1.5〜2.5モル/モルの範囲である。
【0022】
ニッケル塩の式(III)の化合物に対する化学量論比は、約0.5〜0.01モル/モル、好ましくは0.08〜0.02モル/モルの範囲でよい。
【0023】
有機リガンドのニッケル塩に対する比は、約10〜2モル/モル、好ましくは6〜3モル/モルの範囲でよい。
【0024】
反応は、およそ0℃から反応混合物の還流温度まで、好ましくは30℃から還流温度までの温度、より好ましくは混合物の還流温度で行うことができる。
【0025】
Rが、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである式(I)の化合物の、Rが水素である別の化合物(I)またはその塩への転換は、公知の方法、たとえば米国特許第4,717,720号に開示の方法で行うことができる。
【0026】
またR1およびR2が水素である上記で定義の式(II)の化合物は、脱水ポリマーの形、通常は3量体(ボロキシン)と平衡に存在することができる。
【0027】
式(II)の化合物は、公知の方法に従って得ることができる。たとえば、R1およびR2が水素またはアルキルである化合物(II)は、3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンをn−BuLiと、次いでホウ酸トリアルキルと反応させることによって、または3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンをマグネシウムと反応させ、続いてホウ酸トリアルキルを付加して、対応するグリニャール試薬に変形することによって、また望むならば、アルキルエステルを加水分解することによって得ることができる。場合によっては、得られた酸を次いで、上記で定義の対応するエステル(II)に転換することができる。
【0028】
化合物(III)は、たとえばGreen, T. 「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版、Wiley社刊、197頁に教示されるように、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エステルから出発して、公知の方法に従って得ることができる。
【0029】
3−(1−アダマンチル)−4−メトキシ−1−臭化ベンゼンおよび6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸エステルは、市販の製品である。
【0030】
本発明の別の目的は、本発明の方法で得ることができ、本明細書で定義される、式(I)の純度が非常に高い結晶性の化合物またはその塩である。純度が非常に高い化合物とは、99.50%を超える、特に99.95%を超える純度のものをいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0032】
実施例1
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸メチルエステル[アダパレンメチルエステル]の合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(20ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)をその混合物に加え、1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(7g;24.4mmol)、水(0.88g;48.8mmol)およびTHF(50ml)を加える。混合物を還流下で24時間加熱し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、pHを酢酸で7未満の値に調整する。温度15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それにより結晶性アダパレンメチルエステル(8.5g;20.08mmol)を収率82%で得る。
【0033】
1H NMR:(300MHz,DMSO),δ8.6(s,1H),δ8.3−7.8(m,6H),δ7.7−7.5(m,2H),δ7.1(d,1H),δ3.9(s,3H),δ3.85(s,3H),δ2(m,9H)、δ1.7(m,6H)。
【0034】
実施例2
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸ナトリウム塩[アダパレンナトリウム塩]の合成
アダパレンメチルエステル(7g;16.41mmol)、THF(42ml)、水(7ml)および50%重量/重量水酸化ナトリウム水溶液(1.44g;18.05mmol)を丸底フラスコに入れる。混合物を6時間還流し、次いで水(133ml)を加え、THFを残留含有量が約5%重量/重量になるまで留去し、温度約80℃に加熱し、固体を完全に溶解し、次いで15℃に冷却する。結晶化した生成物をろ過し、静置乾燥器内で温度50℃で真空乾燥し、アダパレンナトリウム塩(6.7g;15.42mmol)を収率94%で得る。
【0035】
実施例3
6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸[アダパレン]の合成
アダパレンナトリウム塩(6.7g;15.42mmol)、THF(40ml)および水(7ml)を丸底フラスコに入れ、混合物を還流し、固体を完全に溶解する。得られる溶液を3%重量/重量酢酸水溶液中に滴下し、60〜70℃を超える温度に保って、アダパレン酸(6.3g;15.27mmol)を沈殿させ、その沈殿をろ過し、温度50〜60℃で真空乾燥する。収率は95%である。
【0036】
実施例4
アダパレンメチルエステルの合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(20ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)を加える。その混合物を1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(9.1g;31.8mmol)、水(10.53g;585.3mmol)およびTHF(50ml)を加える。混合物を24時間還流し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、酢酸でpH7未満に調整する。15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(9g;21.2mmol)を収率86%で得る。
【0037】
実施例5
アダパレンメチルエステルの合成
塩化ニッケル(II)(0.158g;1.2mmol)およびTHF(15ml)を丸底フラスコに入れ、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(1.53g;7.3mmol)を加える。その混合物を1時間還流し、次いで温度50℃に冷却し、続いて6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、炭酸カリウム(6.75g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(9.1g;31.8mmol)、水(8.11g;450.5mmol)およびTHF(30ml)を加える。混合物を24時間還流し、次いで50〜55℃の温度に冷却し、水を加え、酢酸でpH7未満に調整する。15℃まで冷却した後、得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(9.37g;21.96mmol)を収率90%で得る。
【0038】
実施例6
アダパレンメチルエステルの合成
6−トシル−ナフタレン−2−カルボン酸メチル(8.7g;24.4mmol)、THF(70ml)、リン酸カリウム(10.38g;48.8mmol)、4−メトキシ−3−アダマンチルフェニルボロン酸(7g;24.4mmol)、トリ(シクロヘキシル)ホスフィンを配位させた塩化ニッケル(0.83g;1.2mmol)およびトリ(シクロヘキシル)ホスフィン(1.37g;4.88mmol)を丸底フラスコに入れる。その混合物を24時間還流し、次いで温度50〜55℃に冷却し、水を加え、次いで15℃に冷却する。得られる生成物をろ過し、それによりアダパレンメチルエステル(8.1g;19.0mmol)を収率78%で得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩
【化1】
(式中、Rは、H、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を調製する方法であって、
Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で、式(II)の化合物
【化2】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、C1〜C8アルキル、アリール、アリール−C1〜C8アルキルであり、あるいはR1とR2が一緒になって−(CH2)m−V−(CH2)n−基を形成し、VはNR3またはC(R3)2であり、R3は水素、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルであり、mおよびnは、同じでも異なっていてもよいが、1または2である)を
式(III)の化合物
【化3】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立にC1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)と
反応させて、式(I)の化合物(式中、Rは、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を得るステップと、望むならば、Rが水素である式(I)の化合物またはその塩へ転換するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記Ni(II)の塩が、塩化、臭化、ヨウ化、酢酸、アセチル酢酸、炭酸または水酸化ニッケル(II)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機リガンドがホスフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンおよびジフェニルホスフィノフェロセンから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィンおよびトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性試剤が、有機塩基または無機塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機塩基が、直鎖第三級アミンまたは分枝第三級アミンから選択され、前記無機塩基が、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムおよびリン酸水素カリウムから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記無機塩基が、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、およびリン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応を、有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物、または1種もしくは複数の有機溶媒と水との混合物の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物の式(III)の化合物に対する化学量論比が、約2〜0.5モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(III)の化合物の前記塩基性試剤に対する化学量論比が、約1〜5モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ニッケル塩の式(III)の化合物に対する化学量論比が、約0.5〜0.01モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記有機リガンドの前記ニッケル塩に対する比が、10〜2モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
99.5%を超える純度を有する、請求項1に記載の式(I)の結晶性化合物またはその塩。
【請求項1】
式(I)の化合物またはその塩
【化1】
(式中、Rは、H、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を調製する方法であって、
Ni(II)の塩、有機リガンドおよび塩基性試剤の存在下で、式(II)の化合物
【化2】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素、C1〜C8アルキル、アリール、アリール−C1〜C8アルキルであり、あるいはR1とR2が一緒になって−(CH2)m−V−(CH2)n−基を形成し、VはNR3またはC(R3)2であり、R3は水素、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルであり、mおよびnは、同じでも異なっていてもよいが、1または2である)を
式(III)の化合物
【化3】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立にC1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)と
反応させて、式(I)の化合物(式中、Rは、C1〜C8アルキル、アリールまたはアリール−C1〜C8アルキルである)を得るステップと、望むならば、Rが水素である式(I)の化合物またはその塩へ転換するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記Ni(II)の塩が、塩化、臭化、ヨウ化、酢酸、アセチル酢酸、炭酸または水酸化ニッケル(II)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機リガンドがホスフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリブチルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンおよびジフェニルホスフィノフェロセンから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホスフィンが、トリシクロヘキシルホスフィンおよびトリス−(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性試剤が、有機塩基または無機塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機塩基が、直鎖第三級アミンまたは分枝第三級アミンから選択され、前記無機塩基が、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムおよびリン酸水素カリウムから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記無機塩基が、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム、およびリン酸カリウムまたはリン酸ナトリウムから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応を、有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物、または1種もしくは複数の有機溶媒と水との混合物の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物の式(III)の化合物に対する化学量論比が、約2〜0.5モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(III)の化合物の前記塩基性試剤に対する化学量論比が、約1〜5モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ニッケル塩の式(III)の化合物に対する化学量論比が、約0.5〜0.01モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記有機リガンドの前記ニッケル塩に対する比が、10〜2モル/モルの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
99.5%を超える純度を有する、請求項1に記載の式(I)の結晶性化合物またはその塩。
【公開番号】特開2006−282667(P2006−282667A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92606(P2006−92606)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504407413)ディフアルマ ソシエタ ペル アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.P.A.
【出願人】(505433976)ランドベック ファマシュティカルズ イタリー ソシエタ ペル アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】LUNDBECK PHARMACEUTICALS ITALY S.P.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504407413)ディフアルマ ソシエタ ペル アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.P.A.
【出願人】(505433976)ランドベック ファマシュティカルズ イタリー ソシエタ ペル アチオニ (2)
【氏名又は名称原語表記】LUNDBECK PHARMACEUTICALS ITALY S.P.A.
【Fターム(参考)】
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