説明

アダプタ分離型ディスクロータ

【課題】出来るだけ熱変形を防ぎながら、熱変形が発生しても、側方向ではないディスクの放射形方向に変形するアダプタ分離型ディスクロータを提供する。
【解決手段】本発明は、アダプタと、前記アダプタに結合され、キャリパによって制動するディスクを含むディスクロータであって、中心に結合ホールが形成された円盤形状のディスクと、前記ディスクの内周面に装着され、周囲に沿って第1ボルトホールが形成されたリング(ring)形状のサポート部材と、両側に開放した管形状であり、一端には前記サポート部材に密着するフランジが形成され、前記フランジには周囲に沿って第2ボルトホールが形成されたアダプタと、前記第1ボルトホールおよび第2ボルトホールに挿入され、前記サポート部材とアダプタを締結する固定ボルトと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動装置として装着されるアダプタ分離型ディスクロータに係り、より詳細には、キャリパによって制動するディスク部分とハブに連結するアダプタ部分との分離が可能なアダプタ分離型ディスクロータに関する。
【背景技術】
【0002】
バスおよびトラックなどのホイールハブに装着されるディスクロータは、車両の走行時にホイールパーツ(タイヤ、ホイール、ハブ)と共に回転する部品である。
図1に示すように、従来のディスクロータ25は、ディスク30とアダプタ10が一体成形された構造である。ディスクロータ25は、(ブレーキ)ライニング60を密着させることにより、摩擦力によって車両を制動させるようにキャリパ50がディスク30に結合し、ディスク30の一側には、ホイールとドライブシャフトを連結するハブ(図示せず)とボルト締結するようにアダプタ10が一体形成される。
【0003】
大型車両に用いられるディスクは、摩擦熱の冷却が容易に行われるように、2つの円盤の間にベンチレーションフィン(ventilation fins)70が挿入される構造であり、一側のディスク30にアダプタ10が一体成形される。
しかし、従来のように、アダプタ10とディスク30が一体に構成されたディスクロータ25は、制動による摩擦熱によって熱変形およびクラックが発生する可能性が高かった。さらに、ディスク30で発生した摩擦熱は、アダプタ10を介してハブまで熱伝導し、制動性能に悪影響を及ぼす可能性が高かった。
【0004】
特に、大型車両で発生する制動熱は、制動熱が車両の荷重に比例するため発熱量が大きい。しかし、アダプタ10とディスク30が一体に構成された場合、ディスク30とアダプタ10の間に熱伝導を防ぐ部品がなく、ディスク30が側方向であるアダプタ側(図1において矢印方向)に折れるような熱変形が発生する可能性があり、ディスク30表面に発生するクラックは、ブレーキライニング60の摩耗寿命を短縮させ、このような変形およびクラックは、ディスクロータ25の寿命だけでなく、ハブおよびキャリパの寿命も短縮させるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−232991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、出来るだけ熱変形を防ぎながら、熱変形が発生しても、側方向ではないディスクの放射形方向に変形するアダプタ分離型ディスクロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような目的を達成するためになされた本発明は、アダプタと、前記アダプタに結合され、キャリパによって制動するディスクを含むディスクロータであって、中心に結合ホールが形成された円盤形状のディスクと、前記ディスクの内周面に装着され、周囲に沿って第1ボルトホールが形成されたリング(ring)形状のサポート部材と、両側に開放した管形状であり、一端には前記サポート部材に密着するフランジが形成され、前記フランジには周囲に沿って第2ボルトホールが形成されたアダプタと、前記第1ボルトホールおよび第2ボルトホールに挿入され、前記サポート部材とアダプタを締結する固定ボルトと、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記サポート部材の一側面は、ギヤ歯(gear tooth)が突出した凹凸面で形成され、前記フランジの一側面は、前記ギヤ歯と噛み合う凹凸面で形成されることを特徴とする。
【0009】
前記ギヤ歯は、サポート部材の周囲に沿って形成され、両側面は傾斜面で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サポート部材が熱伝導遮断材機能を有することにより、ディスクロータの熱変形を防ぎ、また、ギヤ歯が噛み合って結合する構造であるため、回転力の損失を防ぎ、固定ボルトに加えられる荷重を分担する効果を有する。
さらに、前記ギヤ歯は、傾斜面が形成された構造であるため、ディスクとアダプタを組み合わせるときに容易に密着し、密着時の擦れなどを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のディスクロータの斜視図と、前記ディスクロータにキャリパが結合した様子を示す斜視図および前記ディスクロータの断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に係るディスクロータを示す斜視図および分解斜視図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態に係るディスクにサポート部材が結合した様子を示す斜視図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態に係るアダプタを示す斜視図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態に係るアダプタとサポート部材が結合した様子を示す側面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、従来一体製造されたハブ装着部分(アダプタ)とディスクとを分離して構成することにより、制動熱による熱変形を防ぎ、熱クラックを根本的に遮断する構造を有する。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態に係るアダプタ分離型ディスクロータについて詳細に説明する。
図2は、本発明の好ましい実施形態に係るディスクロータを示す斜視図および分解斜視図である。図2に示す通り、本発明のディスクロータは円盤形状であって、中心に結合ホール24が形成されたディスク30にリング形状のサポート部材20a、20bが結合されている。ディスク30は、従来の構造のように、熱排出がさらに効率的に行われるように、2つの円盤の間にベンチレーションフィン70が形成される構造を有する。
【0013】
サポート部材20a、20bは、ディスク30の内周面に固定して装着され、固定ボルト40が嵌合するように複数の第1ボルトホール21a、21bが周囲に沿って形成される。サポート部材20a、20bは、2つのリングが並んで配置された構造であるが、アダプタと結合する側にはギヤ歯(gear tooth)22が突出して形成される。
すなわち、図3に示すように、アダプタ10が密着する(図面上において前方に位置する)サポート部材20aの結合面は、ギヤ歯22が突出した凹凸面で形成される。また、ギヤ歯22は、サポート部材20aの周囲に沿って一定の間隔をおいて連続的に形成され、ギヤ歯22の両側面は傾斜面23で形成される。
【0014】
一方、車両のハブと結合するアダプタ10は、従来の構造のように、両側が開放した管形状で形成され、終端がサポート部材20aと結合するようにフランジ11が形成される。フランジ11は、サポート部材20aのギヤ歯22が噛み合う凹凸面で形成される。また、図4に示すように、フランジ11には、周囲に沿って第2ボルトホール12が形成される。第2ボルトホール12には、第1ボルトホール21a、21bを通して固定ボルト40が挿入される。さらに、アダプタ10の外周面には、剛性を補強するためにリブ(rib)13が追加で形成されてもよい。
【0015】
このような構成のディスク30とアダプタ10は、図5に示すように結合される。図に示す通り、サポート部材20a、20bがディスク30の内周面に結合され、アダプタ10のフランジ11がサポート部材20aに密着するように結合される。また、第1ボルトホール21a、21bと第2ボルトホール12を貫通して固定ボルト40が挿入されることにより、ディスク30とアダプタ10が結合される。
一方、サポート部材20aとアダプタ10は、ギヤ歯22によって噛み合い、回転力を伝達することができる状態であるため、固定ボルト40は、ギヤ歯22の大きさおよび形状に応じて直径がさらに小さくなるように設計されてもよい。
【0016】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0017】
10 アダプタ
11 フランジ
12 第2ボルトホール
13 リブ
20a、20b サポート部材
21a、21b 第1ボルトホール
22 ギヤ歯
23 傾斜面
24 結合ホール
30 ディスク
40 固定ボルト
70 ベンチレーションフィン





【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダプタと、前記アダプタに結合され、キャリパによって制動するディスクを含むディスクロータであって、
中心に結合ホールが形成された円盤形状のディスクと、
前記ディスクの内周面に装着され、周囲に沿って第1ボルトホールが形成されたリング(ring)形状のサポート部材と、
両側に開放した管形状であり、一端には前記サポート部材に密着するフランジが形成され、前記フランジには周囲に沿って第2ボルトホールが形成されたアダプタと、
前記第1ボルトホールおよび第2ボルトホールに挿入され、前記サポート部材とアダプタを締結する固定ボルトと、
を含むことを特徴とするアダプタ分離型ディスクロータ。
【請求項2】
前記サポート部材の一側面は、ギヤ歯(gear tooth)が突出した凹凸面で形成され、前記フランジの一側面は、前記ギヤ歯と噛み合う凹凸面で形成されることを特徴とする請求項1に記載のアダプタ分離型ディスクロータ。
【請求項3】
前記ギヤ歯は、サポート部材の周囲に沿って形成され、両側面は傾斜面で形成されることを特徴とする請求項2に記載のアダプタ分離型ディスクロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72904(P2012−72904A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211298(P2011−211298)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】