説明

アダマンタンの2位酸化体の製法

【課題】ゼオライト触媒を用いて、アダマンタンから一段階でアダマンタンの2位酸化体(2−アダマンタノールや2−アダマンタノン)を製造する。
【解決手段】酸化剤として過酸化水素を使用し、触媒として鉄族金属含有ゼオライトベータを使用して、アダマンタンを酸化することから成るアダマンタンの2位酸化体を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一段階でアダマンタンの2位酸化体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンの2位酸化体は、濃硫酸を触媒及び酸化剤として用いてアダマンタンから一段階で製造することができる(非特許文献1等)。この方法以外にも、N−ヒドロキシフタルイミドと遷移金属錯体を用いてラジカル反応により酸素酸化するなどして、アダマンタンからアダマンタンの2位酸化体を得る方法が開発されている(非特許文献2、特許文献1等)。
また、アダマンタンの1位酸化体から2位酸化体を得る方法については多くの報告がある(特許文献2等)
一方、ゼオライト触媒を用いてシクロアルカン類を酸化する方法については多くの方法が開発されている(非特許文献3,4等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-249034
【特許文献2】特開2007-210947
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron. Vol.24, pp.53612-5368 (1968)
【非特許文献2】Tetrahedron. Vol.37, No.28, pp.4993-4996 (1996)
【非特許文献3】Journal of Catalysis 180, 132-141 (1998)
【非特許文献4】Chemistry Letters Vol.33, No.2, 198-199 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アダマンタンは1位が酸化されやすいので、アダマンタンを酸化すると、下式に示すように、通常は1位が水酸化される(1−アダマンタノール)(非特許文献2)。そのため、一旦1位酸化体を製造した後に、これを異性化して、2位酸化体(2−アダマンタノールや2−アダマンタノン)を得ることができる。
【化1】

また、濃硫酸を用いて一段階で2位酸化体を製造することができるが(非特許文献1等)、廃棄物や副産物の処理を必要とするなどの問題がある。工業的にはこの方法が用いられているが、経済的に合理的な代替法がないことによるためと考えられる。
そこで、本発明は、ゼオライト触媒を用いて、一段階でアダマンタンの2位酸化体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ゼオライト触媒は、その構造や金属種によって多種多様な触媒作用を有するため、反応物や反応機構に特異的な各種ゼオライト触媒が開発されている。その触媒作用は、金属種の触媒機能や、ゼオライトの孔径と反応物との適合性等に大きく影響される。例えば、シクロヘキサンの酸化に有用であるMFI型のゼオライト触媒TS−1(非特許文献3)は、そのゼオライト構造中の孔のサイズがシクロヘキサンに適合するためであり、より嵩の大きなアダマンタンには機能しないと考えられる。
本発明者らは、ゼオライトとしてβ型ゼオライト(即ち、ゼオライトベータ)を用い、これに金属種として鉄族金属を含有させることにより、アダマンタンから一段階で且つ高収率でアダマンタンの2位酸化体を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、酸化剤として過酸化水素を使用し、触媒として鉄族金属含有ゼオライトベータを使用して、アダマンタンを酸化することから成るアダマンタンの2位酸化体を製造する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ゼオライトベータの構造を示す図である。(1)は鉄族金属含有ゼオライトベータの骨格構造モデル([001]方向から見た図)、(2)はその[100]及び[010]方向から見たミクロ孔の形状と孔径(数値の単位はÅ)、(3)は[001]方向から見たミクロ孔の形状と孔径(数値の単位はÅ)を示す。
【図2】合成したままのFe含有ゼオライトベータのX線回折データである。
【図3】焼成後のFe含有ゼオライトベータのX線回折データである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いるゼオライトであるゼオライトベータは、12員環のチャンネルが三次元的に交わった構造をもつアルミノシリケートであり、多形A(polymorph A)と多形B(polymorph B)から成る。多形Aと多形Bの配列に規則性はないが、存在比(多形A/多形B)は約40/60である。多形Aのユニットセル(単位胞)はRSi64−nAl128(Rは陽イオンを表す。)という組成の正方晶系である。また多形Bは単斜晶系をもつ。
ゼオライトベータは、International Zeolite Association Structure Commission (IZA-SC)により"*BEA"の三文字コードが与えられており、下表に示す原子座標と結晶学的パラメーターで一義的に決まるトポロジーを有する。
【0009】
【表1】

注1)空間群P4122 (International Union of Crystallography (IUCr)の定めるNo. 91の空間群)格子定数a = 12.470Å, c = 26.331Å,α=β=γ= 90°
注2)T = Si又は金属M
【0010】
【表2】

注1)空間群C2/c(International Union of Crystallography (IUCr)の定めるNo.15の空間群)格子定数a = 17.630Å, b = 17.640Å,c = 14.420Å,α=γ=114.04°,β= 90°
注2)T = Si又は金属M
【0011】
また本発明で用いるゼオライトベータは下記の組成式で表される。
Si64−n128
式中、nは0.1〜8.0、好ましくは0.4〜2.0を表す。
MはFe、Co又はNiを表す。
鉄属金属(Fe、Co、Ni)は化学的性質が近似しているので、同様な触媒活性を有し、ゼオライトベータに組み込んだ場合にもその結晶構造は同様と考えられる。
【0012】
合成したままの(as-synthesized)X線回折データ(ピークが強度比10%以上のもの)は以下のとおりである。
2θ=7.76±0.10、21.52±0.10、22.56±0.10,25.44±0.10、27.00±0.10、29.64±0.10、30.60±0.10、33.52±0.10、43.80±0.10
また、焼結後(calcined)のX線回折データ(ピークが強度比10%以上のもの)は以下のとおりである。
2θ=7.64±0.10、13.44±0.10、21.32±0.10,22.36±0.10,25.28±0.10、27.08±0.10、28.68±0.10、29.56±0.10、33.28±0.10、43.44±0.10
【0013】
本願発明の鉄族金属含有ゼオライトベータの骨格を図1に示す。[100]又は[010]方向から見たミクロ孔の孔径は約6〜7Åであり、[001]方向から見たミクロ孔の孔径は5.6Åである(Ch. Baerlocher, L.B. McCusker, D.H. Olson, Atlas of zeolite framework types, 6th edn., Elsevier (2007).)。この孔径は、例えば、MFI型のゼオライト触媒TS−1の孔径(約5.1〜5.5Å)等に比べて大きく、このゼオライトはこの孔径に特異的な反応物の反応に触媒効果があると考えられる。
【0014】
この鉄族金属含有ゼオライトベータは次のようにして作製することができる。
1.シリカ源、鉄族金属の塩、フッ化水素酸及び水を混合して得たゲルを、オートクレーブ中で加熱する。このシリカ源としては、水ガラスやコロイド状シリカなどの無機シリカ源もしくはテトラエトキシシランなど有機シリカ源の他に、テトラエチルアンモニウム塩もしくはアンモニウム塩を構成する窒素原子に1〜3個のエチル基が付加した構造を含む四級アンモニウム塩(例.トリエチルメチルアンモニウム塩)の水溶液等を使用できる。また鉄族金属の塩としては、例えば、硝酸鉄や酢酸鉄を使用できる。
これらは、例えば、シリカ源に含まれるSi原子の1molに対して、水酸化テトラエチルアンモニウムを約0.1〜1.0mol、鉄族金属の塩を約1mmol〜0.1mol、フッ化水素酸を約0.1〜1.0mol、水を約5〜10mol用いてもよい。
加熱温度は好ましくは150〜200℃、より好ましくは150〜160℃で、加熱時間は好ましくは5〜14日間、より好ましくは7〜10日間である。
なお、結晶化促進のためゼオライトベータの結晶を加えてもよい。このゼオライトベータとしては、Si以外の金属を含まないゼオライトベータが好ましく、添加量は0.1〜10重量%程度である。
2.次に、ろ過して得られた結晶(as-synthesized)を焼成する。焼成温度は好ましくは500〜700℃、より好ましくは550〜600℃で、焼成時間は好ましくは1〜24時間、より好ましくは6〜12時間である。
【0015】
アダマンタンを酸化して2位酸化体を得る反応は、以下の条件で行うことができる。
溶媒は、アセトニトリルなどのシアン化アルキル類、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素類が好ましい。特にアセトニトリルやデカンは反応物であるアダマンタンをよく溶解するのでより好ましい。
反応物(アダマンタン)の濃度は、好ましくは10〜500mmol/L、より好ましくは20〜100mmol/Lである。
触媒の濃度は、好ましくは1〜50g/L、より好ましくは10〜20g/Lである。また、反応物(アダマンタン)1mmolに対して、より好ましくは0.1〜5.0g、より好ましくは1.0〜2.0gである。
酸化剤として過酸化水素を使用する。この過酸化水素の濃度は、好ましくは0.1〜1.0mol/L、より好ましくは0.2〜0.5mol/Lである。また反応物(アダマンタン1mmolに対して、好ましくは1〜20mmol、より好ましくは5〜10mmolである。
反応温度は、通常室温〜100℃、好ましくは50〜80℃である。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは12〜24時間である。
このような反応の結果、一段階でアダマンタンの2位酸化体を製造することができる。
【0016】
なお、2−アダマンタノールと2−アダマンタノンとの間の変換は公知の方法によって行うことができる。
例えば、2−アダマンタノールのメチルシクロヘキサン溶液に特定のロジウム担持ハイドロタルサイト触媒を加え、アルゴン雰囲気下、110℃で攪拌することにより、2−アダマンタノールから2−アダマンタノンを得ることができる(特開2008−246400等)。
また、2−アダマンタノンを、ホルムアミド化合物からなる活性化剤とトリクロロシランの混合物と接触させる等して、2−アダマンタノンを還元して2−アダマンタノールを得ることができる(特開2003−34658等)。
【実施例】
【0017】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例において、X線回折は以下の条件で測定した。
使用装置 : MAC Science社製MX-Labo粉末X線解析装置
X線源 : CuKα = 1.5405Å、印加電圧 : 40 kV、管電流: 20 mA
測定範囲 : 2θ = 2.040〜52.000deg
スキャン速度 : 2.000 degree/min、サンプリング間隔 : 0.040 degree
発散スリット: 1.00 degree、散乱スリット: 1.00 degree、受光スリット: 0.30 mm
縦型ゴニオメータ、モノクロメータ使用
測定方法:連続法
【0018】
合成例1
この合成例ではFe含有ゼオライトベータ(以下「Fe-beta」という。)を合成した。
300 mLフッ素樹脂製容器にテトラエトキシシラン(TEOS, Si(OEt)4, キシダ化学製)20.83 gを入れ、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(TEAOH, 35wt%,Aldrich)23.56 gを滴下し、90分間撹拌した。これに硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO3)3・9H2O,和光純薬工業製)0.408gを加えた後、ホットスターラーで撹拌しエタノールを蒸発させた。
これらの原料は以下の組成となるような物質量比で混合されている。
SiO2−0.01Fe(NO3)3・9H2O−0.55HF−0.55TEAOH−7.5H2O
その後、脱アルミニウム処理したゼオライトベータ(ズードケミー触媒製ゼオライトベータJRC-Z-HB25)を塩酸溶液中で加熱処理してアルミニウムを選択的に除去したゼオライトベータ)を原料中のSiO2に対して3.5wt%加え30分間撹拌した後、フッ化水素酸水溶液(HF,46wt%,和光純薬工業製)2.4gを加えた。混合したゲルを内容積125 mlのフッ素樹脂製内筒付のオートクレーブに移し、150℃、20 rpmの回転下で7日間結晶化を行った。生成物を遠心分離し、100℃のオーブンで乾燥し、白色固体(as synthesized Fe-beta)を得た。
【0019】
得られたFe含有ゼオライトベータ(as synthesized Fe-beta)のX線回折スペクトルを図2に示し、X線回折データ(ピークが強度比10%以上のもの)を以下に示す。
2θ=7.76±0.10、21.52±0.10、22.56±0.10,25.44±0.10、27.00±0.10、29.64±0.10、30.60±0.10、33.52±0.10、43.80±0.10
その後580℃で4時間焼成し有機物成分を除去した。
得られたFe含有ゼオライトベータ(calcined Fe-beta)のX線回折スペクトルを図3に示し、X線回折データ(ピークが強度比10%以上のもの)を以下に示す。
2θ=7.64±0.10、13.44±0.10、21.32±0.10,22.36±0.10,25.28±0.10、27.08±0.10、28.68±0.10、29.56±0.10、33.28±0.10、43.44±0.10
【0020】
合成例2
本合成例では、合成例1と同様の方法で、Ga含有ゼオライトベータ(以下「Ga-beta」という。)、Sn含有ゼオライトベータ(以下「Sn-beta」という。)及びZr含有ゼオライトベータ(以下「Zr-beta」という。)を合成した。
合成例1で用いたTEOS、TEAOH及びHFを用い、Fe源の硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)の代わりに、Ga源として硝酸ガリウムn水和物(Ga(NO3)3・nH2O (n = 7-9),和光純薬工業製)Sn源として塩化スズ五水和物(SnCl4・5H2O,和光純薬工業製)、Zr源として塩化酸化ジルコニウム八水和物(ZrCl2O・8H2O,和光純薬工業製)を用いた。
これらの原料は以下の組成となるような量比で混合されている。
SiO2−0.01 M−0.54HF−0.54TEAOH−5.0H2O (M = Ga, Sn or Zr)
実施例では、これらを580℃で4時間焼成したものを用いた。
【0021】
合成例3
本合成例では、合成例1と同様の方法で、SiO2のみで構成されたゼオライトベータ(以下「Si-beta」という。)を合成した。
合成例1で用いたTEOS、TEAOH及びHFを用い、これらの原料は以下の組成となるような量比で混合されている。
SiO2−0.54HF−0.54TEAOH−5.0H2O
実施例では、これらを580℃で4時間焼成したものを用いた。
【0022】
合成例4
本合成例では、既報(J.R. Saxton, U.S. Patent 5,453,511 (1995))に従い、Ti含有ゼオライトベータ(以下「Ti-beta」という。)を合成した。
まず構造規定剤(4,4'-trimethylenebis(N-benzyl-N-methylpiperidinium) dihydroxide (TMBP2+(OH)2))を以下の手順で合成した。
1000 mLナスフラスコ中4,4'-trimethylenebis(1-methylpiperidine) (Aldrich ?98%) 22.4 g (94.0 mmol)を酢酸エチル500 mLに溶解し、撹拌しつつ、系内を無水状態に保ち、臭化ベンジル (TCI >98) 40.82 g (233.9 mmol)を滴下ロートより滴下した。滴下終了後、内壁に付着した臭化ベンジルを酢酸エチル(50 mL)とともに反応液に加え、室温で100時間撹拌した。このとき溶液は臭化ベンジルを加えるとすぐに白濁した。反応液をグラスフィルター(25G4)で吸引ろ過、酢酸エチル(500 ml)で洗浄後、真空乾燥し、白色の粗結晶を得た。粗結晶の収量は52.7 g(収率106%)であった。
【0023】
1000 mLナスフラスコ中でこの粗結晶をエタノール(140 mL)に溶解し、オイルバス(100℃)で加熱しながら撹拌し、均一な溶液(白濁)とした。放冷後、アセトン300 mLを3回に分けて加えた。これをグラスフィルター(25G4)で吸引ろ過し、アセトン(100 mL)で2回、ジエチルエーテル(40 mL)で5回洗浄し、真空乾燥した。再結晶(4,4'-trimethylenebis(N-benzyl-N-methylpiperidinium) dibromide)の収量は35.4 g(収率66%)であった。1000 ml ポリプロピレンボトル中で、この再結晶34.5 g (59.3 mmol)を蒸留水(100 mL)に溶解した。これに、イオン交換樹脂(三菱化学、DIAION、SA10A,OH形)131.9 g (237.4 mmol)と蒸留水(150 mL)を加え、穏やかに室温で72時間撹拌した。これを吸引ろ過、減圧濃縮し、蒸留水で希釈して4,4'-trimethylenebis(N-benzyl-N-methylpiperidinium) dihydroxideを得た。0.05 M HClで滴定した結果、濃度(TMBP2+として)0.4100 mmol/g、交換率69%であった。
【0024】
90 mL PFA容器にTi(OBu)4(TBOT、関東化学株式会社、>97%) 0.0768 g (0.0222 mmol)を入れ、TEOS 2.10 g (10 mmol)を加えて30分間撹拌した。次いで上記で得た構造規定剤TMBP2+(OH)2 (0.524 mmol/g as TMBP2+) 2.86 g (1.5 mmol)を加え、室温で一晩撹拌し、TEOSの加水分解により生じるエタノールを除去した。その後、エタノールとともに蒸発した分の水を加えて30分間撹拌した。ゲル組成比はSiO2−0.15 TMBP2+(OH)2−0.0222 (or 0.0111) TBOT−50 H2Oとした。調製したゲルを、23 mLオートクレーブに移し150℃で10日間結晶化を行った。得られた生成物を吸引ろ過し、蒸留水で洗浄し、80℃のオーブン中で乾燥し、淡褐色粉末(SiTi-Beta (as-synthesized)、Input Si/Ti=45) 0.58 gを得た。得られた淡褐色粉末0.50gを空気雰囲気下、550℃で8時間焼成し、白色粉末(Ti-beta (calcined))0.37gを得た。
【0025】
実施例1
この実施例では、触媒として上記合成例1〜4で合成した各種金属含有ゼオライトベータ及び市販のAl含有ゼオライトベータ(JRC-Z-HB25(ズードケミー触媒)、以下「Al-beta」という。)を用いた。
25 mLナス型フラスコ中で上記触媒50 mg、酸化剤として過酸化水素(31 wt%水溶液) 2.0 mmol、基質としてアダマンタン0.25 mmol、溶媒としてアセトニトリル5 mlを混合し70℃で18時間撹拌して反応を行った。反応終了後、反応器を氷冷し、内部標準物質としてn-デカン約0.1 gを加えてよく混合した後、遠心分離で反応溶液と触媒を分離した。
分離後、反応液をガスクロマトグラフ(島津製作所製GC-2014)で分析して、収率を算出した。
反応式と結果を以下に示す。
【化2】

【0026】
【表3】

触媒として本願発明の鉄族金属含有ゼオライトベータを用いた場合には、2位酸化体(2−アダマンタノール(2-ol)及び2−アダマンタノン(2-one))の収率は顕著に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤として過酸化水素を使用し、触媒として鉄族金属含有ゼオライトベータを使用して、アダマンタンを酸化することから成るアダマンタンの2位酸化体を製造する方法。
【請求項2】
前記鉄族金属が、Fe、Co又はNiである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉄族金属含有ゼオライトベータが、以下の組成式
Si64−n128
(式中、nは0.1〜8.0を表し、MはFe、Co又はNiを表す。)
で表され、下記の値
2θ=7.64±0.10、13.44±0.10、21.32±0.10,22.36±0.10,25.28±0.10、27.08±0.10、28.68±0.10、29.56±0.10、33.28±0.10、43.44±0.10
を含むX線回折パターン(焼結後、ピークが強度比10%以上のもの)で表わされる請求項1の製法。
【請求項4】
前記アダマンタンの2位酸化体が、2−アダマンタノール若しくは2−アダマンタノン又はこれらの混合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−62264(P2012−62264A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206658(P2010−206658)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】